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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10G
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 C10G
管理番号 1366484
審判番号 不服2019-10296  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-05 
確定日 2020-09-16 
事件の表示 特願2017-550141「炭化水素転化プロセスにおける混合のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月29日国際公開、WO2016/154424、平成30年 5月31日国内公表、特表2018-513892〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)3月24日(以下、「本件優先日」という。)、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月18日に意見書の提出とともに手続補正がされ、同年4月2日付で拒絶査定がされ、令和元年8月5日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和元年8月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年8月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正前(平成31年3月18日付け手続補正)の特許請求の範囲の請求項9は、本件補正により請求項8に記載された次のとおりに補正された。
「【請求項8】
加熱炭化水素流および超臨界流体を混合して、超臨界反応器の上流の完全に混合された流れを生じるための連続ミキサーであって:
ある本体長さおよびある本体直径を有する本体と;
前記本体に物理的に接続され、前記連続ミキサーに前記加熱炭化水素流を受け入れるように操作できる、ある入口直径を有する炭化水素入口と;
前記本体に物理的に接続され、かつ前記超臨界反応器に流体的に接続され、ある出口直径を有する混合された流れ出口と;
前記本体の中心を通って前記炭化水素入口から前記混合された流れ出口まで延びる横断軸と;
前記横断軸に対して垂直な断面軸と;
前記本体に物理的に接続された複数の流体ポートであって、前記複数の流体ポートが、前記横断軸に沿って配列されたポート配列で配置され、前記複数の流体ポートの各流体ポートが、あるポート直径を有し、各流体ポートが、1°から90°の間のポート角度を有し、前記超臨界流体が、前記複数の流体ポートを通じて注入される複数の流体ポートとを含み、前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板をさらに含む、連続ミキサー。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項9の記載は次のとおりである。
「【請求項9】
加熱炭化水素流および超臨界流体を混合して、超臨界反応器の上流の完全に混合された流れを生じるための連続ミキサーであって:
ある本体長さおよびある本体直径を有する本体と;
前記加熱炭化水素流が通って前記連続ミキサーに導入される、前記本体に物理的に接続された、ある入口直径を有する炭化水素入口と;
前記本体に物理的に接続され、かつ前記超臨界反応器に流体的に接続され、ある出口直径を有する混合された流れ出口と;
前記本体の中心を通って前記炭化水素入口から前記混合された流れ出口まで延びる横断軸と;
前記横断軸に対して垂直な断面軸と;
前記本体に物理的に接続された複数の流体ポートであって、前記複数の流体ポートが、前記横断軸に沿って配列されたポート配列で配置され、前記複数の流体ポートの各流体ポートが、あるポート直径を有し、各流体ポートが、あるポート角度を有し、前記超臨界流体が、前記複数の流体ポートを通じて注入される複数の流体ポートとを含む連続ミキサー。」

2 補正の適否について
(1)本件補正は、本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項である「炭化水素入口」について、「本体に物理的に接続され」、「連続ミキサーに加熱炭化水素流を受け入れるように操作できる」点を特定し、本体と、本体に接続される流体ポートとのなす角度である「ポート角度」について「1°から90°の間」であることを特定し、連続ミキサーは、「複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板をさらに含む」点を特定するものであって、補正前の請求項9に記載された発明と補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、本件補正後の請求項8に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、同法第29条第2項(進歩性)の観点から、以下、検討する。

(3)本件補正発明
本件補正後の請求項8に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載のとおりである。

(4)引用文献の記載事項(下線は当審が付与した。)
ア 原査定の理由に引用された引用文献1(国際公開第2014/138208号)には、「PROCESS TO UPGRADE AND DESULFURIZE CRUDE OIL BY SUPERCRITICAL WATER(液体および気体の間接的磁気処理のための方法および装置)」(発明の名称)について次の記載がある。翻訳文として特表2016-515151号公報を採用し、対応する記載を併記した。
a「 [014] In one aspect, the invention provides a process for removal of contaminants from a crude oil stream. As shown in Figure 1. In the process, a crude oil stream 140 is fed to a mixing apparatus 110. A supercritical water stream 130 is also fed to the mixing apparatus 110. The crude oil stream and the supercritical water stream are mixed in the mixing apparatus 1 10 to produce a mixed crude oil and supercritical water stream 120. The mixed crude oil and supercritical water stream is then fed to a physical filter 100 to remove solid compounds from the mixed crude oil and supercritical water stream. This filtering process produces a filtered mixed crude oil and supercritical water stream 150. The filtered mixed crude oil and supercritical water stream is then fed to a unit for further processing. In some embodiments, the unit is a desulfurization unit,supercritical water reactor unit, hydrotreating unit, hydrocracking unit and other such units.
(【0014】
1つの態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。図1に示す通り。プロセスでは、原油流140が混合装置110に供給される。超臨界水流130も混合装置110に供給される。原油流及び超臨界水流は、混合装置110で混合され、原油及び超臨界水流120が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器100に供給され、混合原油及び超臨界水流から固体化合物が除去される。この濾過プロセスにより、濾過済み混合原油及び超臨界水流150が生成される。次に、さらなる処理のために、濾過済み混合原油及び超臨界水流がユニットに供給される。一部の実施形態では、このユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、水素化分解ユニット及びその他の同様のユニットである。)」

b 「[022] The mixing apparatus 1 10 of the present invention can be any type of mixing apparatus known in the art. In some embodiments, the mixing apparatus is selected from a static mixer, an in-line mixer, agitator, in-line equipment that can enhance mixing (e.g. ultrasonic probe), in-line parts that can enhance mixing (e.g. orifice), and an impeller embedded mixer.
(【0022】
本発明の混合装置110は、当技術分野で既知のいかなる種類の混合装置でもよい。一部の実施形態では、混合装置は、静的混合器、インライン混合器、撹拌器、混合を強化できるインライン装置(例えば、超音波プローブ)、混合を強化できるインライン部品(例えば、開口部)および、羽根車組み込み混合器から選択される。)」

c 「 [032] In further embodiments, the crude oil stream 170 and the water stream 160 are independently preheated using heaters 190 and 180 to predetermined levels. The supercritical water stream 130 can be heated to about 374°C to 600°C. In some embodiment, the supercritical waterstream 130 can be heated to about 400°C to about 550°C. The crude oil stream 140 can be heated to about 10°C to about 300°C. In some embodiments, the crude oil stream 140 can be heated to about 50°C to about 200°C. Devices for heating the crude oil stream and water stream can be selected from any known devices in the art. Such devices include strip heaters, immersion heaters, and tubular furnaces. The heating device for the crude oil stream and the water stream can be the same or different.
(【0032】
さらなる実施形態では、原油流170及び水流160は、加熱器190及び180を使用して、所定のレベルにまで独立して事前加熱される。超臨界水流130は、約374?600℃にまで加熱され得る。一部の実施形態では、超臨界水流130は、約400?550℃にまで加熱され得る。原油流140は、約10?300℃にまで加熱され得る。一部の実施形態では、原油流140は、約50?200℃にまで加熱され得る。原油流及び水流を加熱する装置は、当技術分野で既知の任意の装置から選択されてもよい。当該装置には、帯状加熱器、浸漬加熱器及び管状炉が含まれる。原油流及び水流の加熱装置は、同じであっても、異なっていてもよい。)」

d 「 [040] In further embodiments, as shown in Figure 2, the filtered mixed crude oil and supercritical water stream 150 is fed to asupercritical water reactor 200. The supercritical water reactor 200 can be atubular type reactor, vessel type reactor, or others known in the art. In some embodiments, the supercritical water reactor can have an agitator. The supercritical reactor can be horizontal, vertical, or both. The supercritica lwater reactor can be two or more reactors arranged in series or parallel. The flow direction can be upflow or downflow, or a combination thereof.
(【0040】
さらなる実施形態では、図2に示すように、濾過済み混合原油及び超臨界水流150は、超臨界水反応炉200に供給される。超臨界水反応炉200は、円筒形反応炉、管形反応炉、または当技術分野で既知のその他の反応炉であってもよい。一部の実施形態では、超臨界水反応炉は、撹拌器を有していてもよい。超臨界反応炉は、水平、垂直またはその両方であってもよい。超臨界水反応炉は、直列または並列に配置された2つ以上の反応炉であってもよい。流れ方向は、上向きまたは下向き、またはこれらの組み合わせであってもよい。)」

イ 原査定の理由に引用された引用文献6(特開昭60-187325号公報)には、「分散混合器への流体注入方法及びその装置」(発明の名称)について次の記載がある。
a 「本発明の特徴は、注入流体導入用ヘッダから主流体通過用導管の管壁に接続された複数の流体注入ノズルが設けられた分散混合器への流体注入装置において、前記注入ノズルごとにノズル口を開閉する弁が設けられていること、および注入流体導入用ヘッダから主流体通過用導管の管壁に接続された複数の流体注入ノズルを介して分散混合器に流体を注入する方法において流体注入開始・終了時において各ノズルに設けられた弁を所定の順に従い又は同時に開閉することにある。」(2頁左上欄6?15行)
b 「第1図において、本発明に係る流体注入装置が使用される分散混合器10は複数の注入ノズル21が接続された注入部11と後続するスタティックミキサー部12とから基本的に構成され、両部分は導管13を本体としており、注入部11の管壁には注入口22が複数開口しており、注入部11の導管13内にはスパイラルエレメント14が嵌装されている。」(2頁右上欄9?16行)
c 「注入ノズル21は2つ以上設けられ、分散混合器10の注入部11のスパイラルエレメント14により区画される各管室に少なくとも一つのノズル口22が開口する。実際の注入ノズル21は、目的に応じて数及び配置が選択され、管壁の円周方向及び軸方向の間隔又は適当なラセン回転角度間隔をもって配される。
注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、軸方向断面においては第1図に例示する通り、主流体の流れの向きに軸に対して所定角度傾斜することが好ましい。軸に直行する断面における注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、管壁に直交する角度をもって足りる(取付の容易性と効果上)が、スパイラルエレメント14の捩りの方向に管壁接線に対し所定角度斜交して取付けることもできる。この注入ノズル21の口径、数は混合すべき注入流体の流量に応じて定められ、一般に注入流体の注入速度は主流体の流速よりも実質上大きなことが好ましいが、混合の必要に応じて適宜選択される。」(2頁左下欄19行?右下欄18行)
d 「



(5)引用発明の認定
ア 引用文献1の【0014】には、原油流140と超臨界水流130とを混合する混合装置110が記載されている。また、混合装置110によって生成された混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器100に供給されることが記載されている。
また、【0032】には、「さらなる実施形態」では、原油流170及び水流160は、加熱器190及び180を使用して、所定のレベルにまで独立して事前加熱されることが記載されている。
そして、【0040】には、図2に示された「さらなる実施形態」では、濾過済み混合原油及び超臨界水流150は、超臨界水反応炉200に供給されることが記載されている。
そうすると、図2に示された「さらなる実施形態」に用いられる混合装置110について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用発明
「事前加熱された原油流140と超臨界水流130とを混合する混合装置110であって、混合装置110によって生成された混合原油及び超臨界水流は、物理的濾過器100に供給され、濾過済み混合原油及び超臨界水流150は、超臨界水反応炉200に供給されるものである、混合装置110」

(6)対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「事前加熱された原油流140」、「超臨界水流130」及び「超臨界水反応炉200」は、本件補正発明の「加熱炭化水素流」、「超臨界流体」及び「超臨界反応炉」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「混合装置110」は、「超臨界水反応炉200」の上流に置かれていることは明らかであることから、引用発明の「混合装置110によって生成された混合原油及び超臨界水流は、物理的濾過器100に供給され、濾過済み混合原油及び超臨界水流150は、超臨界水反応炉200に供給される」構成は、本件補正発明の「超臨界反応器の上流」の配置に相当する。さらに、引用発明の「混合原油及び超臨界水流」は、本件補正発明の「超臨界反応器の上流の」「混合された流れ」に相当する。
そして、本件補正発明の「連続ミキサー」と引用発明の「混合装置110」とは、混合装置はミキサーとも呼べるから、「ミキサー」である点で共通する。

イ 一致点
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「 加熱炭化水素流および超臨界流体を混合して、超臨界反応器の上流の混合された流れを生じるためのミキサー。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。

ウ 相違点
本件補正発明は、ミキサーが「ある本体長さおよびある本体直径を有する本体と;
前記本体に物理的に接続され、前記連続ミキサーに前記加熱炭化水素流を受け入れるように操作できる、ある入口直径を有する炭化水素入口と;
前記本体に物理的に接続され、かつ前記超臨界反応器に流体的に接続され、ある出口直径を有する混合された流れ出口と;
前記本体の中心を通って前記炭化水素入口から前記混合された流れ出口まで延びる横断軸と;
前記横断軸に対して垂直な断面軸と;
前記本体に物理的に接続された複数の流体ポートであって、前記複数の流体ポートが、前記横断軸に沿って配列されたポート配列で配置され、前記複数の流体ポートの各流体ポートが、あるポート直径を有し、各流体ポートが、1°から90°の間のポート角度を有し、前記超臨界流体が、前記複数の流体ポートを通じて注入される複数の流体ポートとを含み、前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板をさらに含む、連続ミキサー」であり、「超臨界反応器の上流の」「混合された流れ」が完全に混合されたものであることが特定されているのに対し、引用発明の「混合装置110」や「混合原油及び超臨界水流」は、そのようなものかどうかは不明な点。

エ 以下、相違点について検討する。
引用文献6には、分散混合器10が、複数の注入ノズル21が接続された注入部11と後続するスタティックミキサー部12とから基本的に構成され、両部分は導管13を本体としており、注入部11の管壁には注入口22が複数開口しており、注入部11の導管13内にはスパイラルエレメント14が嵌装されていることが記載されている。ここで、注入部11の管壁の「管」とは、主流体通過用導管を表すことは明らかである。
また、注入ノズル21は2つ以上設けられ、分散混合器10の注入部11のスパイラルエレメント14により区画される各管室に複数のノズル口22が開口することが記載されている。
そして、注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、導管13の軸に直行する断面における注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、管壁に直交する角度か、又は、主流体の流れの向きに軸に対して所定角度傾斜したものであることが記載されている。

そうすると、引用文献6には、主流体通過用導管内に、スパイラルエレメント14を設け、スパイラルエレメント14により区画される、主流体通過用導管の各管室に複数の注入ノズル21の開口であるノズル口22を有した分散混合器10であって、軸に直行する断面における注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、管壁に直交する角度か(90°)主流体の流れの向きに軸に対して所定角度傾斜したもの(90°未満)であることが記載されているといえる。

そこで、本件補正発明の「連続ミキサー」と引用文献6に記載された「分散混合器10」とを対比すると、引用文献6に記載された「流体通過用導管」の入口、「分散混合器10」の出口、「主流体通過用導管の軸」、「複数の注入ノズル21の開口であるノズル口22」、「主流体通過用導管の軸に直行する断面における注入ノズル21の導管13に対する取付角度は、管壁に直交する角度か主流体の流れの向きに軸に対して所定角度傾斜したものである」構成、「主流体通過用導管の各管室」及び「スパイラルエレメント14」は、本件補正発明の「ある入口直径を有する炭化水素入口」、「ある出口直径を有する混合された流れ出口」、「横断軸」、「複数のあるポート直径を有」する「流体ポート」、「各流体ポートが、1°から90°の間のポート角度を有」する構成、「複数の流体ポートのそれぞれの間」及び「制流板」にそれぞれ相当する。
したがって、引用文献6には、本件補正発明の「連続ミキサー」自体の構成は開示されているといえる。

一方、引用文献1には、「本発明の混合装置110は、当技術分野で既知のいかなる種類の混合装置でもよい。一部の実施形態では、混合装置は、静的混合器、インライン混合器、撹拌器、混合を強化できるインライン装置(例えば、超音波プローブ)、混合を強化できるインライン部品(例えば、開口部)および、羽根車組み込み混合器から選択される。」(【0032】)と記載されており、引用発明の「混合装置110」には、いかなる混合装置も用いることができるものであって、しかも、混合を強化したものも用いられるといえることから、引用文献1には、引用文献6に開示された上記のスパイラルエレメント14を備え、複数のノズル口22を有した分散混合器10を採用し、混合を完全なものとすることについて示唆されているといえる。

してみると、引用発明において、主流体は原油流140であることから、混合装置110において、引用文献6に記載された分散混合器10を用いて、上記相違点に係る発明特定事項を備えることは当業者が容易に想到し得ることである。

オ 本件補正発明の効果について
本願明細書には、「炭化水素転化反応において超臨界流体の効果を最大にするためには、高温で運転される反応器にかける前に、炭化水素原料を超臨界流体と非常に良好に混合しなければならない。」(【0007】)、「この結果は、超臨界流体、この実施例では水、と炭化水素とのよりよい混合を実現する連続ミキサー140が、生成物のより高い液収率および改善された品質をもたらすことを示す。」(【0089】)と記載されており、本願明細書には、本件補正発明によって、炭化水素原料を超臨界流体とが非常に良好に混合され、生成物のより高い液収率および改善された品質をもたらすことが記載されているといえる。

しかしながら、引用発明も、引用文献6に記載された分散混合器10も、ミキサーや混合器である以上、いずれも、もともと、非常に良好に混合することは意図されているものであるし、引用文献6に開示された分散混合器10は本件補正発明の連続ミキサーと同様な構成を有するものであるから、本件補正発明が、引用発明及び引用文献6に記載されたものと比較して、非常に良好に混合する点において、格別顕著な作用効果を奏するものであるということはできない。
また、本件補正発明の「生成物のより高い液収率および改善された品質をもたらす」という効果は、「超臨界反応器」について特段の特定がないことから、本件補正発明が直ちに奏するものとはいえないし、仮に、本件補正発明の「連続ミキサー」によって、そのような効果を奏するものだとしても、本件補正発明の「連続ミキサー」自体は、引用文献6に記載されているのであり、非常に良好な混合が行われれば、「生成物のより高い液収率および改善された品質をもたらす」ことは明らかであるから、そのような効果は、当業者が予測可能であって格別顕著のものとはいえない。

3 審判請求人の主張に対して
ア 審判請求人は、審判請求書の(4-2)において、「上記引用文献3?6には、確かに一般的な連続ミキサー(スタティックミキサー)が記載されている。しかしながら、・・・補正した本願請求項8に係る発明の重要な特定事項である「1°から90°の間のポート角度を有」すること、および「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板をさらに含む」ことについても記載も示唆もない。」と主張する。
イ 「ポート角度」について
前記2(4)イに摘記したように、引用文献6には、「注入ノズル21の導管13に対する取付角度」についての記載がある。審判請求人の主張は採用できない。
ウ 「制流板」について
(ア)本願明細書の段落【0068】には、「本発明の少なくとも1つの実施形態において、連続ミキサー140の本体141は制流板1415を含む。特定の理論によって制限されることなく、制流板はミキサー内流れ32の不安定性を増大させ、したがって、混合を促進すると考えられる。・・・本発明の少なくとも1つの実施形態において、制流板1415はオリフィス板であり、オリフィス直径は本体直径よりも小さい。・・・」と記載されており、制流板はミキサー内の不安定性を増大させるものであることが読み取れる。
(イ)本件補正発明における「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板」という特定は、「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に」のみ「設置された制流板」と特定されているわけではなく、「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置されて」いれば足りる。
(ウ)そして、前記2(4)イに摘記したように、引用文献6におけるスパイラルエレメント14は、複数の流体ポートにわたって連続的に設置されているから、「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板」に相当するものである。
(エ)前記アの審判請求人の主張は、本願発明の特定事項を、例えばオリフィス板のように、「前記複数の流体ポートのそれぞれの間に」のみ「設置された制流板」と狭く解釈した主張と解されるから、理由がない。

4 補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年8月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項9に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?19に係る発明は、本件優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献>
1.国際公開第2014/138208号
2.特表2011-504963号公報
3.特開2010-201331号公報
4.米国特許出願公開第2014/0187456号明細書
5.米国特許出願公開第2012/0156783号明細書
6.特開昭60-187325号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、6の記載事項は、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「炭化水素入口」について、「本体に物理的に接続され」、「連続ミキサーに加熱炭化水素理由を受け入れるように操作できる」点を削除し、本体と、本体に接続される流体ポートとのなす角度である「ポート角度」について「1°から90°の間」であることを削除し、連続ミキサーは、「複数の流体ポートのそれぞれの間に設置された制流板をさらに含む」点を削除するものであるから、本件補正発明が、前記第2の[理由]2(6)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1、6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1、6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献1、6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-04-07 
結審通知日 2020-04-14 
審決日 2020-04-28 
出願番号 特願2017-550141(P2017-550141)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10G)
P 1 8・ 56- Z (C10G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 川端 修
日比野 隆治
発明の名称 炭化水素転化プロセスにおける混合のための方法  
代理人 永岡 儀雄  
代理人 小池 成  
代理人 渡邉 一平  

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