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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1366574
審判番号 不服2019-12850  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2020-10-13 
事件の表示 特願2016-568796「渦電流測定値を調整すること」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日国際公開、WO2015/123000、平成29年 3月 2日国内公表、特表2017-506438、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年1月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月12日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成30年10月22日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年1月24日付けで手続補正がされ,令和元年5月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和元年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和元年5月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-15に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるか,引用文献1,2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法29条1項3号に該当するか,同条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特許第5108757号公報
2.米国特許第7016795号明細書

第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は,平成31年1月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
研磨プロセス中に研磨を制御する方法であって,
研磨プロセスを受けている基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)の測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取ることと,
前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,
前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,
前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成することと,
前記調整された測定された厚さに基づいて,研磨終点又は研磨パラメータの調整を検出することと
を含む,方法。」

なお,本願発明2-15の概要は以下のとおりである。
本願発明2-9は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10-12は,それぞれ本願発明1,2,5に対応するコンピュータプログラム製品の発明である。
本願発明13-15は,それぞれ本願発明1,2,5に対応する研磨システムの発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。)
「【請求項1】
ターゲット基板上の導電材料から形成される導電膜の厚さを決定する方法であって,
前記ターゲット基板の位置の近くに渦電流センサを配置するステップと,
前記渦電流センサを使用して,測定温度において,電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答を測定するステップと,
前記ターゲット基板の前記導電材料に類似する導電材料から形成される導電膜を有する較正基板を提供するステップと,
前記較正基板の較正温度での導電膜厚,及び,前記測定温度での導電膜厚を測定し,前記較正温度及び前記測定温度の間の前記較正基板の導電膜厚測定値の変化から温度依存補償因数を定めるステップと,
前記温度依存補償因数を使用して前記ターゲット基板の電気的応答を補正し,それによって補正された電気的応答を取得するステップと,
前記補正された電気的応答を使用して前記ターゲット基板上の導電膜の厚さを決定するステップと,
を備え,
前記温度依存補償因数を定めるステップは,前記ターゲット基板の前記電気応答の測定の前後における,前記較正基板の前記測定温度での導電膜厚測定値を平均化することを含み,前記平均化が温度ドリフトに起因する誤差を削減する,ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度依存補償因数が,温度の変化に応じて前記較正基板の導電材料の抵抗率の変化に関連する請求項1に記載の方法。」

「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板製造において金属は特に重要な材料である。例えば,デュアルダマシンとして知られている製造方法では,誘電体層がビアホールを充填する導電性の栓によって電気的に接続されている。一般的には,開口部は,通常はTaNまたはTiNの障壁で裏打ちされている誘電体層に形成された後,導電パターンの2つのセットの間での電気接触を可能にする他の導電材料(例えば,アルミニウム(Al),銅(Cu),タングステン(W)等)で充填される。これは,例えばソース領域/ドレイン領域等の基板上の2つのアクティブな領域の間に電気接点を確立する。誘電体層の表面の過剰な導電材料は,通常は化学機械研磨(CMP)で除去される。その後,銅を覆うために窒化ケイ素または炭化ケイ素のブランケット層が蒸着される。
【0004】
その後,プロセスが許容パラメータの範囲内にあることを保証するために,多くの場合には基板上の特定の点で導電層の電気膜/層の特性(厚さ,シート抵抗等)を決定することが重要である。測定の1つの方法は,渦電流センサを使用することである。通常,渦電流は,交番磁界によって導電媒質の中で誘発される電流である。
・・・
【0008】
一般的には,センサの磁場(渦電流摂動)に対する電気的応答,したがってその精度は,センサの基板に対する近接(基板近接応答)によって影響を及ぼされる。すなわち,励磁プローブ場は限られた空間的広がりとなり,その大きさは,プローブから位置が拡大するにつれて減少し,測定されている第2の導体により引き起こされる全体的な渦電流摂動も,第2の導体がプローブからさらに遠くに移動するにつれて減少する。したがって,渦電流センサは近接性と電気膜特定の両方に敏感である場合がある。一般的には,報告される値にその後誤差を引き起こす可能性のある,近接性によって生じる電気的応答(基板近接応答)の部分から,電気膜特性のセットによって生じる電気的応答(電気膜特性応答)の部分を隔離することは困難である。
【0009】
加えて,ある特定の基板の電気膜特性のセットはそれ自体可変である場合がある。例えば,センサの電気的応答は導電膜の抵抗率によって影響を及ぼされる可能性がある。すなわち,渦電流信号の変動はおもに膜抵抗率の逆数に比例している。(特殊電気抵抗としても知られている)電気抵抗は,一般的には材料がどれほど強力に電流の流れに対抗するのかを示している。低い抵抗率は,一般的には電子の移動を容易に可能にする材料を示す。しかしながら,抵抗率は,一般的には温度にも依存している。
【0010】
ここで図1を参照すると,渦電流センサの簡略図が示されている。一般的には,センサのコイルインピーダンス102の変化は,センサ(コイル)と基板106の間の距離104を変えることによって生じる。ターゲット材抵抗率と透磁率の電気パラメータが測定されるセンサの摂動を決定する可能性があるので,センサシステムは一般的にはターゲット材について較正される。
・・・
【0012】
理論上,測定を行う前に周期的にセンサシステム(センサ,基板幾何学形状及び基板の扱い,段移動等)を定期的に較正することによって,近接性誤差は,基板がセンサ間の既知の位置に設置されるときに,採取された1組の測定値を平均することによって相殺されてよい。しかしながら実際には,渦電流センサを測定される導電層に対して反復自在に正確に配置することは多くの場合非常に困難である。
・・・
【0014】
加えて,同時複数センサの近接誤差が実質的に最小限に抑えられる場合にも,さまざまな時点で測定を行うことが依然として望ましい場合がある(例えば,連続測定)。例えば,センサは多くの場合センサスイングアーム上に位置しているので,基板表面全体でセンサスイングを移動するときに両方のセンサの位置合わせをすることは不便である可能性がある。すなわち,2台のセンサは,それらが,ターンテーブル上の基板の回転に接しているベクトルに平行に線を形成するようにセンサスイングアーム上に配置されてよい。センサアームは回転する基板全体で揺動するので,センサ線と接線ベクトル間の角度は,両方のセンサを同時に基板上の同じ点の上に配置できない点まで増加してよい。さらに,センサスイングアーム構造自体が,互いの上にセンサを配置することを妨げる可能性がある。つまり1台のセンサからの干渉(例えばストローク)が両方のセンサの同時使用を妨げることがある。
・・・
【0016】
本発明は,前記に鑑みて,基板上の導電層に対する電気的応答を最適化するための方法,及びその装置を提供することを目的とする。」

「【0023】
理論によって拘束されることを望まない一方で,センサ電気的応答を最適化するために,基板電気膜特性の変動が補償されてよいことが発明者によって理解される。実施形態では,既知の温度での基準基板サンプルのセンサ電気的応答は未知の温度でのターゲット基板のセンサ電気的応答を補正するために使用されてよい。実施形態では,基準基板の導電層材料は,ターゲット基板の導電層材料に実質的に類似している。
【0024】
実施形態では,基準基板とターゲット基板は実質的に類似した測定プロトコルを使用して測定される。例えば,基準基板とターゲット基板は,ほぼ同じ近接で,及びほぼ同じ測定サイト(幾何学形状)等で同じ渦電流測定技法を使用して測定されてよく,その結果,基準基板とターゲット基板の間の主要な変数は温度である。ある実施形態では,基板が異なる抵抗率の温度係数のある2枚の導電膜を有する場合,測定値のセットは所望される膜厚の実質的に温度に依存しない値を引き出すためにさまざまな温度で採取されてよい。」

「【0027】
加えて,ある特定の基板の電気膜特性のセットはそれ自体可変である場合がある。例えば,センサの電気的応答は導電膜の抵抗率によって影響を及ぼされる可能性がある。すなわち,渦電流信号の変動はおもに膜抵抗率の逆数に比例している。(特殊電気抵抗としても知られている)電気抵抗は,一般的には材料がどれほど強力に電流の流れに対抗するのかを示している。低い抵抗率は,一般的には電子の移動を容易に可能にする材料を示す。しかしながら,抵抗率は,一般的には温度にも依存している。
【0028】
一般的には,各センサ応答Rは,複数の基本変数の関数としてモデル化でき,
R(-)=R(d,p,S,ρ(T)) [方程式1]
ここではdは測定される膜厚であり,pは近接であり,Sは一般的には,測定される膜による特定の渦電流プローブの場の検出された摂動の,便宜上の測定単位への変換についてのすべての情報に対する応答の関数依存性を示す速記の表記であるセンサシリアルナンバーであり,ρ(T)は温度依存抵抗率である。ある実施形態では,便宜上の測定単位はボルト(V)である。すべてのセンサが同じセンサシリアルナンバーを有すると仮定すると,方程式1はさらに以下に簡略化されてよい。
R(-)=R(d,p,ρ(T)) [方程式2]
したがって,基板上の導電膜の厚さdは以下のようにモデル化されてよい。
d=f(R(d,p,ρ(T))) [方程式3]」

「【0031】
ここで図3を参照すると,基板上の導電層(つまりCu等)の厚さを決定するためのある特定の基板温度(較正温度)での3つの較正曲線のセットが,本発明の一実施形態に従って示されている。横軸は渦電流センサによって測定されるような電圧応答(V)302を示すが,縦軸はオングストローム(A)で測定される厚さ304を示す。この例では,高い方の応答電圧が小さい方の厚さに相互に関連する。較正曲線は,例えば,測定される膜がないシステム内で取得されるその最大電圧で各プローブ応答電圧を相殺することによって,応答電圧が減少する同じ目的のために作成されてもよい。 」

「【0036】
しかしながら,較正温度で基板を測定することが実際的ではない場合がある。例えば,基板プロセスは,基板が較正温度より実質的に高い温度まで加熱されることを必要とする可能性がある。その後,測定値のセットを採取するためだけに基板が冷却するのを待機すると,実質的には生産スループットが下がる可能性がある。しかしながら,温度は導電膜の根本的な抵抗率に影響を及ぼす可能性があり,したがって測定される渦電流応答に影響を及ぼす。
【0037】
ここで図4,本発明のある実施形態に従って200分に渡って約21℃と約23℃の間で循環されるCuを備える導電膜のある基板の簡略図を参照する。右側縦軸404が渦竜システムによって報告されているオングストローム(A)で導電膜厚を表す一方,横軸406は分単位で時間を表し,左縦軸402は度(℃)単位で基板温度を表す。プロット410が渦電流システムによって測定される報告されている導電膜厚の対応する変化を示す一方で,プロット408は約200分間隔での基板と膜温度の変化を表す。この例では,Cuは0.0035/摂氏度の温度係数(α)を有する。基板温度408が一方向で移動し,増減するにつれて,(渦電流応答で測定されるような)対応する導電膜厚は反対方向で移動する。例えば,約60分(412)では,対応する導電膜厚は約9536Aである一方,基板温度は約21.58℃である。しかしながら,約68分では,対応する導電膜厚は約21.68Aである一方,基板温度は約22.10℃である。
【0038】
ここで図5,本発明のある実施形態に従って200分に渡って約21℃と約23℃の間で循環される,Siを備える導電膜のある基板の簡略図を参照する。右縦軸504がオングストローム(A)で導電膜厚を表す一方で,横軸506は分単位で時間を表し,左縦軸502は度(℃)で基板温度を表す。プロット510が測定された導電膜厚の対応する変化を示す一方で,プロット508は約200分間隔で基板温度の変化を表す。この例では,Siは-0.011/摂氏度という温度係数(α)を有する。基板温度508が一方向で移動し,増減するにつれて,(渦電流応答で測定されるような)対応する導電膜厚は反対方向で移動する。例えば,約60分(512)では,対応する導電膜厚は約14.15Aである一方,基板温度は約21.63℃である。しかしながら,約68分では,対応する導電膜厚は約13.1Aである一方,基板温度は約22.12℃である。」

「【0048】
ここで図6,本発明の一実施形態に従って温度係数αを,実質的にCuを備える導電膜の平均厚さに比較する簡略図を参照する。横軸606はオングストローム(A)単位の測定された平均導電膜厚を示す。左縦軸602は,膜スタックとの基板の有効温度係数(α)を示す。横線610は,Cuの温度係数0.0035/摂氏度の名目値を示す。曲線612は,膜スタックのある基板のための有効アルファの変動を示す。右縦軸604は,オングストローム(A)単位の3σ変動性の削減を示すことが,本発明の履行で観察された。すなわち,渦電流の改善は,室温での2-3℃の変動の補正によって生じる厚さ反復性を報告した。この改善が点プロット608として示されている。」

「【0059】
本発明の1つの実施形態に従って,ここで図7,ターゲット基板上の導電材料から形成される導電膜の厚さを決定する簡略な方法を参照する。初めは,702では,第1の渦電流センサがターゲット基板の位置のセットの近くに配置される。実施形態では,位置のセットは1つのみである。次に,704で,電流測定値値と電流測定値の少なくとも1つを含むセンサ電気的応答のセットが測定される。次に,706では,電気的応答のセットは,温度依存補償因数を使用して補正される。一般に,温度依存補償因数は,別の基板から派生して温度変化に依存している。最後に,708で,厚さは電気的応答の補正された第1のセットを使用して決定される。」

「【0061】
本発明の優位点は,基板上の導電層のセットに対する電気的応答を最適化するための方法及び装置を含む。追加の優位点は近接補正及びさらに高い基板測定スループットを精緻化するための相対的に安価な装置の使用を含む。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ターゲット基板上の導電材料から形成される導電膜の厚さを決定する方法であって,
前記ターゲット基板の位置の近くに渦電流センサを配置するステップと,
前記渦電流センサを使用して,測定温度において,電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答を測定するステップと,
前記ターゲット基板の前記導電材料に類似する導電材料から形成される導電膜を有する較正基板を提供するステップと,
前記較正基板の較正温度での導電膜厚,及び,前記測定温度での導電膜厚を測定し,前記較正温度及び前記測定温度の間の前記較正基板の導電膜厚測定値の変化から温度依存補償因数を定めるステップと,
前記温度依存補償因数を使用して前記ターゲット基板の電気的応答を補正し,それによって補正された電気的応答を取得するステップと,
前記補正された電気的応答を使用して前記ターゲット基板上の導電膜の厚さを決定するステップと,
を備え,
前記温度依存補償因数は,温度の変化に応じて前記較正基板の導電材料の抵抗率の変化に関連するものであり,
前記温度依存補償因数を定めるステップは,前記ターゲット基板の前記電気応答の測定の前後における,前記較正基板の前記測定温度での導電膜厚測定値を平均化することを含み,前記平均化が温度ドリフトに起因する誤差を削減する,方法。」

さらに,上記引用文献1には次の技術的事項が記載されていると認められる。
・引用文献1に記載された発明が解決しようとする課題は,基板上の導電層に対する電気的応答を最適化するための方法,及びその装置を提供することにあって,
例えば,デュアルダマシンとして知られている製造方法では,誘電体層がビアホールを充填する導電性の栓によって電気的に接続されており,一般的には,開口部は,通常はTaNまたはTiNの障壁で裏打ちされている誘電体層に形成された後,導電パターンの2つのセットの間での電気接触を可能にする他の導電材料で充填され,基板上の2つのアクティブな領域の間に電気接点を確立し,誘電体層の表面の過剰な導電材料が,通常は化学機械研磨(CMP)で除去され,銅を覆うために窒化ケイ素または炭化ケイ素のブランケット層が蒸着された後に,プロセスが許容パラメータの範囲内にあることを保証するために,渦電流センサを使用して,基板上の特定の点で導電層の電気膜/層の特性(厚さ,シート抵抗等)を決定されるところ,
一般的には,センサの磁場(渦電流摂動)に対する電気的応答,したがってその精度は,センサの基板に対する近接(基板近接応答)によって影響が及ぼされ,したがって,渦電流センサは近接性と電気膜特定の両方に敏感であるが,一般的には,報告される値にその後誤差を引き起こす可能性のある,近接性によって生じる電気的応答(基板近接応答)の部分から,電気膜特性のセットによって生じる電気的応答(電気膜特性応答)の部分を隔離することは困難であり,
加えて,例えば,センサの電気的応答は導電膜の抵抗率によって影響を及ぼされる可能性があるところ,抵抗率は,一般的には温度にも依存しており,
理論上,測定を行う前に周期的にセンサシステム(センサ,基板幾何学形状及び基板の扱い,段移動等)を定期的に較正することによって,近接性誤差は,基板がセンサ間の既知の位置に設置されるときに,採取された1組の測定値を平均することによって相殺されるが,実際には,渦電流センサを測定される導電層に対して反復自在に正確に配置することは多くの場合非常に困難であるという課題を解決しようとするものであること。

・センサ電気的応答を最適化するために,基板電気膜特性の変動が補償されてよく,実施形態では,ターゲット基板の導電層材料に実質的に類似している導電層材料を備えた基準基板サンプルの既知の温度でのセンサ電気的応答を,未知の温度でのターゲット基板のセンサ電気的応答を補正するために使用していること。

・加えて,ある特定の基板の電気膜特性のセットはそれ自体可変である場合があり,例えば,センサの電気的応答は導電膜の抵抗率によって影響を及ぼされる可能性があり,抵抗率は,一般的には温度にも依存していること。

・実施形態に従った,ターゲット基板上の導電材料から形成される導電膜の厚さを決定する方法は,第1の渦電流センサをターゲット基板の位置のセットの近くに配置し,次に,電流測定値と電流測定値の少なくとも1つを含むセンサ電気的応答のセットを測定し,次に,電気的応答のセットを,一般に,別の基板から派生して温度変化に依存している温度依存補償因数を使用して補正し,最後に,厚さを電気的応答の補正された第1のセットを使用して決定するものであること。

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。(日本語訳は当審で作成した。)
「Interpreting signals from eddy current sensors may be difficult due to a number of factors. Interpreting signals from a particular sensor may be difficult due to sensor-to-sensor differences, such as the way in which the coils are wound on the sensor core, slight differences in core dimensions or other dimensions, and batch-to-batch variations in core materials. For a particular sensor, a change in the distance between the sensor and the wafer has a strong impact on measured signals (the "lift-off effect"). Process conditions, such as a change in temperature of the sensor due to heat produced by polishing, may also have an impact on the eddy current signal. Finally, ambient conditions, such as the temperature and humidity may have an effect on the eddy current signal. One or more of these factors may lead to different signal strengths and/or phase values for a given conductive layer profile. 」(第4欄7?22行)
(日本語訳:渦電流センサからの信号の解釈は,多数の要因のために困難である。特定のセンサからの信号の解釈は,センサのコアにコイルが巻かれる方法,コアの寸法または他の寸法のわずかな差,およびコア材料のバッチ間のばらつきなど,センサ対センサの差のために困難であり得る。特定のセンサの場合,センサとウエハとの間の距離の変化は,測定された信号に強い影響を及ぼす(リフトオフ効果)。研磨によって生成される熱によるセンサの温度の変化などのプロセス条件は,渦電流信号に影響を及ぼし得る。最後に,温度および湿度などの周囲条件は,渦電流信号に影響を及ぼし得る。これらの要因のうちの一つまたは複数は,所与の導電層プロファイルについて異なる信号強度および/または位相値をもたらすことができる。)

「In an implementation, an eddy current sensor is provided in a chemical mechanical polishing apparatus such as a CMP apparatus 20 of FIGS. 1 and 2A. A description of a similar polishing apparatus 20 can be found in U.S. Pat. No. 5,738,574, the entire disclosure of which is incorporated herein by reference. 」(第4欄23?28行)
(日本語訳:実装において,渦電流センサは,図1および図2AのCMP装置20のような化学機械研磨装置内に設けられる。同様の研磨装置20についての説明は,米国特許5,738,574に記載されており,その開示全体を本明細書に援用する。)

「Returning to FIGS. 2A and 3, an in-situ eddy current monitoring system 40, which can function as an endpoint detector, includes a drive system 48 to induce eddy currents in a metal layer on the substrate and a sensing system 58 to detect eddy currents induced in the metal layer by the drive system. The monitoring system 40 includes a core 42 positioned in recess 26 to rotate with the platen, a drive coil 44 wound around one part of core 42, and a sense coil 46 wound around second part of core 42. For drive system 48, monitoring system 40 includes an oscillator 50 connected to drive coil 44. For sense system 58, monitoring system 40 includes a capacitor 52 connected in parallel with sense coil 46, an RF amplifier 54 connected to sense coil 46, and a diode 56. The oscillator 50, capacitor 52, RF amplifier 54, and diode 56 can be located apart from platen 24, and can be coupled to the components in the platen through a rotary electrical union 29.
Referring to FIG. 5, in operation the oscillator 50 drives drive coil 44 to generate an oscillating magnetic field 48 that extends through the body of core 42 and into the gap 46 between the two poles 42a and 42b of the core. At least a portion of magnetic field 48 extends through thin portion 36 of polishing pad 30 and into substrate 10. If a metal layer 12 is present on substrate 10, oscillating magnetic field 48 generates eddy currents in the metal layer 12. The eddy currents cause the metal layer 12 to act as an impedance source in parallel with sense coil 46 and capacitor 52. As the thickness of the metal layer changes, the impedance changes, resulting in a change in the Q-factor of the sensing mechanism. By detecting the change in the Q-factor of the sensing mechanism, the eddy current sensor can sense the change in the strength of the eddy currents, and thus the change in thickness of metal layer 12. 」(第5欄29?61行)
(日本語訳:図2Aおよび図3に戻ると,終点検出器として機能することができるインサイチュ渦電流監視システム40は,基板上の金属層に渦電流を誘導する駆動システム48と,駆動システムによって金属層に誘導される渦電流を検出する検出システム58とを含む。監視システム40は,プラテンと共に回転するために凹部26内に配置されたコア42と,コア42の一方の部分に巻かれた駆動コイル44と,コア42の第2の部分に巻かれた感知コイル46とを含む。駆動システム48の場合,監視システム40は,駆動コイル44に接続された発振器50を含む。感知システム58の場合,監視システム40は,感知コイル46に並列に接続されたコンデンサ52と,感知コイル46に接続されたRF増幅器54と,ダイオード56とを含む。振動子50,コンデンサ52,RF増幅器54,およびダイオード56は,プラテン24から離れて配置することができ,回転電気ユニオン29を介してプラテン内の構成要素に結合することができる。
図5を参照すると,動作中,発振器50は,駆動コイル44を駆動して,コア42の本体を通ってコアの2つの磁極42aと42Bとの間のギャップ46に延びる振動磁界48を生成する。磁場48の少なくとも一部は,研磨パッド30の薄い部分36を通って基板10内に延びる。金属層12が基板10上に存在する場合,振動磁界48は,金属層12内に渦電流を生成する。渦電流は,金属層12を,センスコイル46及びコンデンサ52と並列にインピーダンス源として機能させる。金属層の厚さが変化すると,インピーダンスが変化し,検知機構のQ値が変化する。検出機構のQ値の変化を検出することにより,渦電流センサは渦電流の強度の変化,したがって金属層12の厚さの変化を感知することができる。」

「In operation, CMP apparatus 20 uses monitoring system 40 to determine when the bulk of the filler layer has been removed and the underlying stop layer has been exposed. Monitoring system 40 can as be used to determine the amount of material removed from the surface of the substrate. A general purpose programmable digital computer 90 can be connected to amplifier 56 to receive the intensity signal from the eddy current sensing system. Computer 90 can be programmed to sample amplitude measurements from the monitoring system when the substrate generally overlies the core, to store the amplitude measurements, and to apply the endpoint detection logic to the measured signals to detect the polishing endpoint. Possible endpoint criteria for the detector logic include local minima or maxima, changes in slope, threshold values in amplitude or slope, or combinations thereof. 」(第6欄50?65行)
(日本語訳:動作中,CMP装置20は,監視システム40を使用して,充填層の大部分が除去され,下にある停止層が露出された時点を決定する。監視システム40は,基板の表面から除去される材料の量を決定するために使用することができる。汎用プログラマブルデジタルコンピュータ90は,渦電流検出システムから強度信号を受信するために増幅器56に接続することができる。コンピュータ90は,基板が一般にコア上にあるとき,監視システムから振幅測定値をサンプリングし,振幅測定値を記憶し,研磨終点を検出するために測定信号に終点検出ロジックを適用するようにプログラムすることができる。検出器論理に関する可能な終点基準は,局所的最小値又は最大値,勾配の変化,振幅又は傾斜の閾値,又はそれらの組み合わせを含む。」

「Referring to FIGS. 7D and 8, eventually the bulk portion of conductive layer 16 is removed, leaving conductive interconnects 16' in the trenches between the patterned insulative layer 14. At this points, the coupling between the conductive portions in the substrate, which are generally small and generally non-continuous, and sensor circuit 58 reaches a minimum. Consequently, the Q-factor of the sensor circuit reaches a maximum value (although not as large as the Q-factor when the substrate is entirely absent). This causes the amplitude of the output signal from the sensor circuit to plateau. Thus, by sensing when the amplitude of the output signal is no longer increasing and has leveled off (e.g., reached a local plateau), computer 90 can sense a polishing endpoint. Alternatively, by polishing one or more test substrates, the operator of the polishing machine can determine the amplitude of the output signal as a function of the thickness of the metal layer. Thus, the endpoint detector can halt polishing when a particular thickness of the metal layer remains on the substrate. Specifically, computer 90 can trigger the endpoint when the output signal from the amplifier exceeds a voltage threshold corresponding to the desired thickness. 」(第8欄6?27行)
(日本語訳:図7Dおよび図8を参照すると,導電層16のバルク部分が除去され,パターニングされた絶縁層14の間のトレンチ内に導電配線16が残される。この時点で,一般的に小さく一般的には不連続である基板内の導電部分とセンサ回路58との間の結合は最小に達する。したがって,センサ回路のQ値は,最大値に達する(基板が完全にない場合はQ値ほど大きくない)。これは,センサ回路からの出力信号の振幅を平坦にする。したがって,出力信号の振幅がもはや増加しておらず,横ばっている(例えば,局所プラトーに到達している)とき,コンピュータ90は,研磨終点を検知することができる。あるいは,一つ以上の試験基板を研磨することによって,研磨機のオペレータは,金属層の厚さの関数として出力信号の振幅を決定することができる。したがって,終点検出器は,金属層の特定の厚さが基板上に残っているときに研磨を停止することができる。具体的には,コンピュータ90は,増幅器からの出力信号が所望の厚さに対応する電圧閾値を超えたときに,終点をトリガすることができる。」

「A chemical mechanical polishing apparatus such as CMP apparatus 20 of FIG. 1 above with an in-situ eddy current monitoring system such as system 40 of FIGS. 2A and 3 can be used to detect induced eddy currents in a conductive layer in order to, for example, measure the thickness of the conductive layer. However, a number of factors may prevent accurate determination of the thickness of a conductive layer (or alternatively, whether a desired endpoint in a process has been reached). First, differences among different sensors and their positioning within a chemical mechanical polishing apparatus may lead to different results. Second, differences in the measurements obtained by a particular sensor at different times and processing conditions--i.e., sensor drift--may lead to inaccurate results. Sensor drift maybe caused by a number of factors, including changes in temperature. For example, during a chemical mechanical polishing process, significant heat may be generated as the shiny polishes the wafer. The heat may cause an increase in the temperature of various components of the eddy current measuring system and polishing system. The temperature increase may lead to a change in the measured signal. 」(第9欄30?50行)
(日本語訳:例えば,導電層の厚さを測定するために,図2のCMP装置20のような化学機械研磨装置を使用して,導電層中の誘導渦電流を検出するために,図1A及び3のシステム40のようなインサイチュ渦電流監視システムを使用することができる。しかしながら,多数の要因は,導電層の厚さの正確な決定を防止することができる(あるいは,プロセスにおける所望の終点に到達したかどうか)。第1に,異なるセンサと化学機械研磨装置内での位置決めとの相違は,異なる結果につながる可能性がある。第2に,異なる時間および処理条件で特定のセンサによって得られた測定値の差,すなわち,センサドリフトは不正確な結果につながる可能性がある。センサドリフトは,温度の変化を含む多くの要因によって引き起こされ得る。例えば,化学機械研磨プロセス中に,光沢研磨材がウェハを研磨するにつれて,著しい熱が発生する可能性がある。熱は,渦電流測定システム及び研磨システムの様々な構成要素の温度上昇を引き起こす。温度上昇は,測定信号の変化につながる可能性がある。」

「The calibration process used above may be used with a drift compensation process. As stated above, as a particular sensor is used during polishing or other semiconductor process, the received signal may drift due to one or more factors. For example, as the system heats up during polishing, the size and/or position of the wafer, elements of the eddy current sensing system, and components of the chemical mechanical polishing system may change, which may cause the received signal to drift up or down. Further, the core's permeability and loss generally depend on temperature, and thus the core's magnetic properties are another source of temperature-dependent drift. In order to accurately determine a thickness of a conductive layer, or to determine whether an endpoint or other point in a semiconductor process has been reached, a method for drift compensation may be used. 」(第11欄34?49行)
(日本語訳:上記で使用される較正プロセスは,ドリフト補償プロセスと共に使用され得る。上述したように,研磨中またはその他の半導体プロセス中に特定のセンサが使用されると,受信信号は一つまたは複数の要因によってドリフトする可能性がある。例えば,システムが研磨中に加熱すると,ウェハのサイズおよび/または位置,渦電流検出システムの要素,および化学機械研磨システムの構成要素が変化する可能性があり,これは,受信信号を上下にドリフトさせる可能性がある。さらに,コア透磁率および損失は,一般に温度に依存するので,コア磁気特性は温度依存ドリフトの別の原因である。導電層の厚さを正確に決定するために,または半導体プロセスにおける終点または他の点に到達したか否かを決定するために,ドリフト補償のための方法が使用され得る。」

「However, the signal may change for other reasons as well. As mentioned above, as polishing progresses, the temperature of the wafer typically increases. The time-dependent increase in temperature may cause the signal to change over time. Other factors may contribute to signal drift as well. 」(第12欄1?5行)
(日本語訳:しかしながら,信号は他の理由でも変化し得る。上述のように,研磨が進むにつれて,ウェハの温度は典型的には増加する。時間依存的な温度上昇は,信号を経時的に変化させる。他の要因も信号ドリフトに寄与し得る。)

「FIG. 13 shows a process 1300 that may be used to process amplitude data obtained from an eddy current monitoring system. Raw data is received from eddy current monitoring system (1310). A signal offset is subtracted from the raw data, which is then multiplied by a slope to produce calibrated data (1320). A difference between a first off-wafer scan and a second off-wafer scan is then subtracted from the calibrated data to produce calibrated data with reduced drift (1330). The calibrated data with reduced drift may then be used to monitor and/or change the semiconductor process (1340).」(第13欄4?14行)
(日本語訳:図13は,渦電流監視システムから得られた振幅データを処理するために使用され得るプロセス1300を示す。生データは,渦電流監視システム(1310)から受信される。信号オフセットは生データから減算され,その後,勾配によって乗算されて較正データを生成する(1320)。次に,第1のウエハ外走査と第2のウエハ外走査との間の差が較正されたデータから差し引かれ,低減されたドリフトを有する較正データが生成される(1330)。ドリフトが低減された較正データは,半導体プロセスを監視及び/又は変更するために使用される(1340)。)















したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「動作中のCMP装置が,監視システムを使用して,充填層の大部分が除去され,下にある停止層が露出された時点を決定する方法であって,
前記監視システムは,基板の表面から除去される材料の量を決定するために使用することができるものであり,渦電流検出システムから強度信号を受信するために増幅器に接続された汎用プログラマブルデジタルコンピュータが,前記監視システムからの振幅測定値をサンプリングし,振幅測定値を記憶し,研磨終点を検出するために測定信号に終点検出ロジックを適用するようにプログラムされており,検出器論理に関する可能な終点基準は,局所的最小値又は最大値,勾配の変化,振幅又は傾斜の閾値,又はそれらの組み合わせを含むものであり,
具体的には,前記コンピュータが,前記増幅器からの出力信号が所望の厚さに対応する電圧閾値を超えたときに,終点をトリガする方法であって,
例えば,導電層の厚さを測定するために,前記CMP装置のような化学機械研磨装置を使用して,導電層中の誘導渦電流を検出するために,インサイチュ渦電流監視システムを使用するものであり,
実装において,前記渦電流センサは,CMP装置のような化学機械研磨装置内に設けられており,
前記渦電流センサは渦電流の強度の変化,したがって金属層の厚さの変化を感知することができるものであり,
前記方法においては,ドリフト補償プロセスと共に,較正プロセスが使用されるものであり,
渦電流監視システムから得られた振幅データを処理するために使用されるプロセスは,渦電流監視システムから受信される生データから,信号オフセットを減算し,その後,勾配によって乗算されて較正データを生成し,次に,第1のウエハ外走査と第2のウエハ外走査との間の差が較正されたデータから差し引かれ,低減されたドリフトを有する較正データを生成し,ドリフトが低減された較正データを,半導体プロセスを監視及び/又は変更するために使用するものである
方法。」

さらに,上記引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
・前記渦電流センサからの信号の解釈は,多数の要因のために困難であり,特定のセンサからの信号の解釈は,センサのコアにコイルが巻かれる方法,コアの寸法または他の寸法のわずかな差,およびコア材料のバッチ間のばらつきなど,センサ対センサの差のために困難であり,また,特定のセンサの場合,センサとウエハとの間の距離の変化は,測定された信号に強い影響(リフトオフ効果)を及ぼし,さらに,研磨によって生成される熱によるセンサの温度の変化などのプロセス条件は,渦電流信号に影響を及ぼし,しかも,温度および湿度などの周囲条件は,渦電流信号に影響を及ぼすことから,これらの要因のうちの一つまたは複数が,所与の導電層プロファイルについて異なる信号強度および/または位相値をもたらすことことが知られており,例えば,化学機械研磨プロセス中に,光沢研磨材がウェハを研磨するにつれて,著しい熱が発生する可能性があり,この熱は,渦電流測定システム及び研磨システムの様々な構成要素の温度上昇を引き起こし,この温度上昇は,測定信号の変化につながる可能性があること。

・研磨中またはその他の半導体プロセス中に特定のセンサが使用されると,受信信号は一つまたは複数の要因によってドリフトする可能性があり,例えば,システムが研磨中に加熱すると,ウェハのサイズおよび/または位置,渦電流検出システムの要素,および化学機械研磨システムの構成要素が変化する可能性があり,これは,受信信号を上下にドリフトさせる可能性があり,また,コア透磁率および損失は,一般に温度に依存するので,コア磁気特性は温度依存ドリフトの別の原因となること。

・導電層の厚さを正確に決定するために,または半導体プロセスにおける終点または他の点に到達したか否かを決定するために,ドリフト補償のための方法が使用されるところ,信号は他の理由でも変化し得るものであり,研磨が進むにつれて,ウェハの温度は典型的には増加し,時間依存的な温度上昇は,信号を経時的に変化させる等,他の要因も信号ドリフトに寄与し得るものであること。

第5 引用文献1を主引例とした場合の対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明1の「ターゲット基板」,及び「導電膜」は,それぞれ,本願発明1の「基板」,及び「導電層」に相当する。

イ また,引用発明1の「渦電流センサ」は,「ターゲット基板上の導電材料から形成される導電膜の厚さ」を得るために,「電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答を測定する」装置であるから,モニタリングシステムの一種といえる。

ウ さらに,引用発明1の「渦電流センサ」からは,「電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答」が,前記「測定」を実行した時刻における測定値として得られることは明らかである。
そして,引用発明1の「電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答」と,本願発明1の「厚さthick(t)の測定値」とは,厚さthick(t)に関係する測定値である点で一致する。
そうすると,引用発明1の「前記渦電流センサを使用して,測定温度において,電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答を測定するステップ」と,本願発明1の「研磨プロセスを受けている基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)の測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取ること」とは,基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)に関係する測定値を,モニタリングシステムから受け取る点で一致する。

エ したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)に関係する測定値を,モニタリングシステムから受け取ること,
を含む,方法。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は,「研磨プロセス中に研磨を制御する方法」であって,「研磨プロセスを受けている基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)の測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取」り,「調整された測定された厚さに基づいて,研磨終点又は研磨パラメータの調整を検出することとを含む,方法」であるのに対し,
引用発明1は,「渦電流センサを使用して,測定温度において,電圧測定値と電流測定値の少なくとも1つを含む前記ターゲット基板上の前記導電膜の電気的応答を測定するステップ」を備えた方法であって,「研磨プロセスを受けている基板の導電層」の「厚さthick(t)の測定値」を,「インシトゥ」モニタリングシステムから受け取るものではなく,さらに,「調整された測定された厚さに基づいて,研磨終点又は研磨パラメータの調整を検出」し,「研磨プロセス中に研磨を制御する」構成も備えていない点。

(相違点2)
本願発明1は,「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」という構成を備えるのに対し,
引用発明1は,「前記ターゲット基板の前記導電材料に類似する導電材料から形成される導電膜を有する較正基板を提供するステップと,前記較正基板の較正温度での導電膜厚,及び,前記測定温度での導電膜厚を測定し,前記較正温度及び前記測定温度の間の前記較正基板の導電膜厚測定値の変化から温度依存補償因数を定めるステップと,前記温度依存補償因数を使用して前記ターゲット基板の電気的応答を補正し,それによって補正された電気的応答を取得するステップと,前記補正された電気的応答を使用して前記ターゲット基板上の導電膜の厚さを決定するステップと」を備えた方法であって,「前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算」し,「前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整」する構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
新規性について
上記のとおり,本願発明1と,引用発明1との間には相違点1,及び2が存在するから,本願発明1は,引用文献1に記載された発明ではない。

進歩性について
事案にかんがみ,最初に,相違点2について検討する。
引用発明1においては,「ターゲット基板の前記導電材料に類似する導電材料から形成される導電膜を有する較正基板」の「較正温度及び前記測定温度の間の前記較正基板の導電膜厚測定値の変化から」定められる「温度依存補償因数」を用いて,ターゲット基板上の導電膜の厚さが決定されるのであるから,引用発明1において,本願発明1のように,「前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算する」必要があるとは認めることはできない。
さらに,引用発明1において,「ターゲット基板の前記導電材料に類似する導電材料から形成される導電膜を有する較正基板」の「較正温度及び前記測定温度の間の前記較正基板の導電膜厚測定値の変化から」定められる「温度依存補償因数」を用いて,「ターゲット基板の電気的応答を補正し」,ターゲット基板上の導電膜の厚さを決定することに替えて,本願発明1のように,「前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρTを計算」し,「前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整」することが,当業者において容易になし得たことであるとは,引用文献1及び2に記載された技術的事項からは認めることはできない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-9について
本願発明2-9も,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,本願発明2-9は,引用文献1に記載された発明ではなく,また,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明10-12について
本願発明10-12は,本願発明1,2,5に対応するコンピュータプログラム製品の発明であり,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,本願発明10-12は,引用文献1に記載された発明ではなく,また,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明13-15について
本願発明13-15は,本願発明1,2,5に対応する研磨システムの発明であり,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,本願発明13-15は,引用文献1に記載された発明ではなく,また,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 引用文献2を主引例とした場合の対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明2の「CMP装置」は,研磨装置の一種であるから,引用発明2の「動作中のCMP装置が,監視システムを使用して,充填層の大部分が除去され,下にある停止層が露出された時点を決定する方法」は,以下の相違点3,4を除き,「研磨プロセス中に研磨を制御する方法」である点で本願発明1と一致する。

イ また,引用発明2の「インサイチュ渦電流監視システム」は,本願発明1の「インシトゥモニタリングシステム」に相当する。

ウ さらに,引用発明2の「インサイチュ渦電流監視システム渦電流センサ」からは,「渦電流の強度の変化」すなわち「振幅データ」が,「前記監視システムからの振幅測定値をサンプリング」した時刻における測定値として得られることは明らかである。
そして,引用発明2の「振幅データ」と,本願発明1の「厚さthick(t)の測定値」とは,厚さthick(t)に関係する測定値である点で一致する。
そうすると,引用発明2の「渦電流監視システムから」の「生データ」の「受信」と,本願発明1の「研磨プロセスを受けている基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)の測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取ること」とは,基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)に関係する測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取る点で一致する。

エ したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「研磨プロセス中に研磨を制御する方法であって,
研磨プロセスを受けている基板の導電層の時刻tにおける厚さthick(t)に関係する測定値を,インシトゥモニタリングシステムから受け取ることと,
前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,
前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成することと,
前記調整された測定された厚さに基づいて,研磨終点又は研磨パラメータの調整を検出することと
を含む,方法。」

(相違点)
(相違点3)
本願発明1は,「厚さthick(t)の測定値」を,インシトゥモニタリングシステムから受け取る」ものであるのに対し,
引用発明2は,「振幅データ」を,インサイチュ渦電流監視システムから受け取るものである点。

(相違点4)
本願発明1は,「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」という構成を備えるのに対し,
引用発明2は,そのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案にかんがみ,最初に,相違点4について検討する。
ア 引用発明2において,本願発明1のように,「前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算する」必要があるとは認めることはできない。

イ さらに,上記第4の2のとおり,引用文献2には,研磨によって生成される熱によるセンサの温度の変化などのプロセス条件は,渦電流信号に影響を及ぼし,しかも,温度および湿度などの周囲条件は,渦電流信号に影響を及ぼすことから,これらの要因のうちの一つまたは複数が,所与の導電層プロファイルについて異なる信号強度および/または位相値をもたらすことが知られており,例えば,化学機械研磨プロセス中に,光沢研磨材がウェハを研磨するにつれて,著しい熱が発生する可能性があり,この熱は,渦電流測定システム及び研磨システムの様々な構成要素の温度上昇を引き起こし,この温度上昇は,測定信号の変化につながる可能性があること,及び,
研磨中またはその他の半導体プロセス中に特定のセンサが使用されると,受信信号は一つまたは複数の要因によってドリフトする可能性があり,例えば,システムが研磨中に加熱すると,ウェハのサイズおよび/または位置,渦電流検出システムの要素,および化学機械研磨システムの構成要素が変化する可能性があり,これは,受信信号を上下にドリフトさせる可能性があり,また,コア透磁率および損失は,一般に温度に依存するので,コア磁気特性は温度依存ドリフトの別の原因となること,並びに,
導電層の厚さを正確に決定するために,または半導体プロセスにおける終点または他の点に到達したか否かを決定するために,ドリフト補償のための方法が使用されるところ,信号は他の理由でも変化し得るものであり,研磨が進むにつれて,ウェハの温度は典型的には増加し,時間依存的な温度上昇は,信号を経時的に変化させる等,他の要因も信号ドリフトに寄与し得るものであることは記載されており,渦電流信号に影響を及ぼす要素の一つとして,ウェハの温度が想定されていることは理解されるものの,これらの記載に基づいて,当業者が,直ちに,引用発明2において,本願発明1のように,「前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算」し,「前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整」することを想到し得たとは認めることはできない。

ウ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-9について
本願発明2-9も,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,本願発明2-9は,当業者であっても,引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明10-12について
本願発明10-12は,本願発明1,2,5に対応するコンピュータプログラム製品の発明であり,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,本願発明10-12は,当業者であっても,引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明13-15について
本願発明13-15は,本願発明1,2,5に対応する研磨システムの発明であり,本願発明1の「前記研磨プロセスの温度をモニタするように構成されたセンサから,前記基板の前記導電層が研磨を受けている間に測定され且つ前記導電層に対応付けられた,前記時刻tにおける測定された温度T(t)を受け取ることと,前記測定された温度T(t)における前記導電層の抵抗率ρ_(T)を計算することと,前記計算された抵抗率ρ_(T)を用いて,前記厚さの前記測定値を調整し,調整された測定された厚さを生成すること」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,本願発明13-15は,当業者であっても,引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-15は,引用文献1に記載された発明ではなく,しかも,当業者が引用発明1又は引用発明2と,引用文献1,2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-28 
出願番号 特願2016-568796(P2016-568796)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 和俊  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 加藤 浩一
西出 隆二
発明の名称 渦電流測定値を調整すること  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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