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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1366613
審判番号 不服2019-13524  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-09 
確定日 2020-10-13 
事件の表示 特願2015- 47444「警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開、特開2015-195017、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月10日の出願(優先権主張平成26年3月20日)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月12日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 7月10日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年10月 9日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和 2年 6月 5日付け:拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)
令和 2年 7月13日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 元年 7月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の下記の請求項に係る発明は、以下の引用文献に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1,5,7
・引用文献等A?D

・請求項8
・引用文献等A?E

・請求項9
・引用文献等A?D,F

引用文献等一覧
A.特開2008-275557号公報
B.特開2013-222257号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2013-187599号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2001-307261号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2003-187351号公報(周知技術を示す文献)
F.特開2011-243218号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願の下記の請求項に係る発明は、以下の引用文献に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?3
・引用文献1,2

引用文献等一覧
1.特開2001-307261号公報(原査定の引用文献D)
2.特開2013-222257号公報(原査定の引用文献B)

第4 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和 2年 7月13日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
建物の室内に設置される警報器本体と、
前記警報器本体内に設けられ、室内のガスを検出するガス検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、室内の温度を検出する温度検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部および前記湿度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、
前記警報器本体内に設けられ、各検出部の検出結果を記憶する記憶部と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果が前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている、警報器。
【請求項2】
前記報知手段は、前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果が所定時間継続して、前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている、請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記報知手段は、前記ガスに関する報知および前記熱中症予防に関する報知に加えて、少なくとも前記湿度検出部による検出結果に基づいて、空気乾燥に関する報知も行うように構成されている、請求項1または2に記載の警報器。
【請求項4】
室内に設置される警報器本体と、
前記警報器本体に設けられ、室内のガスを検出するガス検出部と、
前記警報器本体に設けられ、室内の温度を検出する温度検出部と、
前記警報器本体に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記警報器本体に設けられ、前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部および前記湿度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果が熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されており、
前記警報器本体に設けられ、室内の煙を検出する煙検出部をさらに備え、
前記湿度検出部の検出結果に基づいて、前記煙検出部による異常判定基準および判断頻度の少なくとも一方の変更を行うか、または、前記煙検出部の検出結果および前記湿度検出部の検出結果の両方に基づいて、煙と水蒸気との判別を行うように構成されている、警報器。
【請求項5】
室内に設置される警報器本体と、
前記警報器本体に設けられ、室内のガスを検出するガス検出部と、
前記警報器本体に設けられ、室内の温度を検出する温度検出部と、
前記警報器本体に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記警報器本体に設けられ、前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部および前記湿度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果が熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されており、
前記警報器の機能確認動作の開始命令を受け付けるための操作部をさらに備え、
検出結果が前記ガスに関する報知の報知閾値を超える状態で前記操作部の入力を受け付けた場合、前記機能確認動作を実行せず、検出結果が前記熱中症予防に関する報知の報知閾値を超える状態で前記操作部の入力を受け付けた場合、前記機能確認動作を実行するように構成されている、警報器。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1、引用発明について
令和 2年 6月 5日付けの当審拒絶理由に引用された特開2001-307261号公報(当審拒絶理由における引用文献1、原査定における引用文献D。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に搭載する緊急信号発生システムに関わり、より詳細には各種センサ信号に基づいて車両の緊急事態発生を判断し、緊急信号を発信する車両搭載緊急信号発信システムに係わる。」

「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による車両搭載緊急信号発信システムの第一の実施例のシステム構成図である。図2は、本発明による車両搭載緊急信号発信システムの第二の実施例の要部ブロック図である。まず、車両搭載緊急信号発信システムの構成と動作を概略説明する。実施例の車両搭載緊急信号発信システムは、車両における緊急事態の発生に備え、車両事故の衝撃を検出する衝撃センサ2aを有するセンサ手段2と、補助検出センサ手段8と、複数の検出信号を選択入力するセンサ選択部3aと補助センサを選択入力する入力選択部3bと選択入力された検出信号が緊急事態レベルを越えているを判断する緊急判断部3cと該緊急判断部の判断条件を記憶している判断条件メモリ3dとを有する緊急判断手段3と、緊急判断手段が緊急事態と判断した時、緊急信号を発生する緊急信号発生部4aと装置のIDを記憶しているIDメモリ4cとを有する緊急信号発生手段4と、緊急時に閃光を発光する閃光発生部5aと音声信号を外部機器に出力する音声信号出力部5bとを有する緊急信号出力手段5と、カレンダデータを生成するカレンダ11と、ブラックボックス1内各部のシーケンスプログラムを記憶しているシステムメモリ12と、該シーケンスプログラムに沿って各部に制御指令を行う緊急制御部6と、外部電源の遮断に備える二次電池7と、これら各手段を収納する耐熱性、耐水性、対衝撃性を有する耐久容器1Aでなるブラックボックス1とで標準構成されている。
【0012】 センサ手段2は該当車両の事故や車内環境を常時検出して、緊急判断手段3に入力する。緊急判断手段3は、判断条件メモリ3dに記憶している判断条件に基づいて、検出信号が緊急事態レベルを越えているかどうかの判断をする。緊急事態と判断した時には、緊急信号発生手段4は緊急信号を発生し、緊急信号出力手段5は該緊急信号を光や音などの手段で外部に信号出力する。
【0013】 図2を用いて詳細説明する。第二の実施例の車両搭載緊急信号発信システムのセンサ手段2には、車両室内の温度を検出する温度センサ2b、車両室内の空気組成を検出するガス検出センサ2c、車両室内への浸水を検出する浸水検出センサ2d、車両火災を検出する火災検出センサ2eなどが追加設置されている。

「【0016】 又、ブラックボックス1には、車両の時系列の各種センサデータを循環的に記憶している循環レコーダ10a、車両の走行データを循環的に記憶している走行路レコーダ10bなどが追加設置されている。これらのレコーダには設置した車両の走行経路や緊急事態に至る経過のデータが巡回的に記憶されており、事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る。
【0017】 さらに、緊急信号発生手段4には、緊急状態のメッセージデータを生成する緊急データ生成部4b、循環レコーダを巡回的に再生する巡回生成制御部4d、外部機器より受信した検索制御信号に応答して循環レコーダ10aもしくは走行路レコーダ10bの再生データを送信する緊急応答部4eなどが追加設置されている。
【0018】 動作の詳細を説明する前に、本発明によるブラックボックス1を解説する。本願のブラックボックスの各機能部は、車両衝突事故、車両水没事故、トンネル崩落による土砂埋没事故、車両火災事故などから保全ため、航空機などに搭載されているのと同様、耐久容器1Aに収納されている。さらに、外部供給電源が切断することを前提に、二次電池7が内蔵されており、約48時間の内部動作を保証している。
【0019】 センサ手段2からのセンサ検出信号はセンサ選択部3aで、補助センサ8からの入力信号は入力選択部3bで選択入力される。前述のセンサ検出信号および入力信号は、判断条件メモリ3dに記憶している判断条件に基づいて、緊急判断部3cが緊急状態か否かを判断する。緊急判断の判断条件は、車両に加わる衝撃値で規定する車両衝撃値条件、車内の室温と車内の有人状態とを組合せて検出し、熱射病の可能性を判断する熱射病判断条件、車内のCO濃度を検出し、CO中毒の可能性を判断するCO中毒判断条件、車内への浸水を検出し、車両の水没の可能性を判断する車両浸水判断条件、車内の温度や発煙などの検出により、車両の火災発生を判断する車両火災判断条件、車両事故の発生による車両破損を判断する車両破損判断条件、車内への不審者の進入やエンジンキーなしのエンジン始動など車両犯罪の可能性を判断する車両犯罪判断条件、車内の正規の走行路からの遺脱や迷走など居眠り運転の可能性を判断する居眠り判断条件、もしくは、車内の土石による埋没の可能性を判断する土砂埋没判断条件などが組合せて選択される。
【0020】 主な判断条件を詳細説明する。車両衝撃値条件は、車両の衝突、ガケや橋梁からの墜落などによる衝撃加速度の上限値で判断する。熱射病判断条件は、停車中の車内の室温が45度以上で且つ人や動物が車内におり、且つ設定時間以上(例えば10分以上)この状態が継続した時、緊急事態と判断するものである。
【0021】 CO中毒判断条件は、エンジンを停止せずに車内で仮眠している時に、排気管などから漏れたCOガスを検出し、設定濃度以上の値となった時、緊急事態と判断するものである。車両浸水判断条件は、車両が川や海などに転落して、車内に水が浸入した状態を想定しており、設定量以上の浸水量もしくは水圧値となった時、緊急事態と判断するものである。」

「【0024】 緊急判断部3cが緊急事態発生と判断すると、緊急信号発生部4aは音声や光などの緊急制御信号を発生し、緊急データ生成部4bはIDメモリ4cに記憶している装置IDを付加した文書形式の緊急データを生成する。緊急制御信号と緊急データが生成されると、緊急信号出力手段4eは、複数の方法により出力する。
【0025】 閃光発生部5aは、フラッシュ状の閃光を継続的に発光するものである。音声信号出力部5bは、緊急データ生成部4bが生成した緊急データを、図示していない音声合成手段を用いて音声信号に変換した後、音声出力端子を経由して、該当車両の音響装置に入力される。運転者や同乗者に緊急事態の警告を行う。音波出力部5cは、衝撃音、サイレン音、打撃音などの音波を出力するもので、該当車両が土砂に埋没したり水没した際、埋没場所を表示することが出来る。
【0026】 表示信号出力部5eは、緊急データ生成部4bが生成した緊急データを、図示していない画像生成成手段を用いて、画像信号に変換した後、映像出力端子を経由して該当車両の表示装置31に入力され、運転者や同乗者に緊急事態の警告を行う。
【0027】 超長波の電磁波伝送手段を利用した電磁波送受信部5eは、該当車両が土砂に埋没したり水没した際に、ブラックボックス1との通信を可能とする有効な通信手段である。
【0028】 無線送受信部5fは、携帯電話やPHSなどにより公衆回線NET経由で、センター登録メモリ10cに予め登録された通報センターにダイアルアップして、緊急事態を自動通報するものである。」


以上の記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 センサ手段2と、検出信号が緊急事態レベルを越えているを判断する緊急判断部3cを有する緊急判断手段3と、緊急信号発生手段4と、音声信号を外部機器に出力する音声信号出力部5bを有する緊急信号出力手段5と、カレンダ11と、システムメモリ12と、緊急制御部6と、二次電池7と、これら各手段を収納するブラックボックス1とで標準構成されて事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システムであって(【0011】)、
センサ手段2には、車両室内の温度を検出する温度センサ2b、車両室内の空気組成を検出するガス検出センサ2cが追加設置され(【0013】)、
ブラックボックス1には、車両の時系列の各種センサデータを循環的に記憶している循環レコーダ10aが追加設置され(【0016】)、
緊急信号発生手段4には、緊急状態のメッセージデータを生成する緊急データ生成部4bが追加設置され(【0017】)、
緊急判断部3cが緊急状態か否かを判断する緊急判断の判断条件は、車内の室温と車内の有人状態とを組合せて検出し、熱射病の可能性を判断する熱射病判断条件、車内のCO濃度を検出し、CO中毒の可能性を判断するCO中毒判断条件、などが組合せて選択され(【0019】)、
熱射病判断条件は、停車中の車内の室温が45度以上で且つ人や動物が車内におり、且つ設定時間以上(例えば10分以上)この状態が継続した時、緊急事態と判断するものであり(【0020】)、
CO中毒判断条件は、エンジンを停止せずに車内で仮眠している時に、排気管などから漏れたCOガスを検出し、設定濃度以上の値となった時、緊急事態と判断するものであり(【0021】)、
緊急データ生成部4bは緊急データを生成し(【0024】)、音声信号出力部5bは緊急データを音声信号に変換し、
緊急信号出力手段5は、該当車両の音響装置に入力されて運転者や同乗者に緊急事態の警告を行い(【0025】)、衝撃音、サイレン音、打撃音などの音波を出力して、該当車両が土砂に埋没したり水没した際、埋没場所を表示し、超長波の電磁波伝送手段を利用してブラックボックス1との通信を可能とし、予め登録された通報センターにダイアルアップして、緊急事態を自動通報する、車両搭載緊急信号発信システム。」


2.引用文献2について
令和 2年 6月 5日付けの当審拒絶理由に引用された特開2013-222257号公報(当審拒絶理由における引用文献2、原査定における引用文献B。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0063】
次に、上述した本装置1の動作の一例を、図を参照しながら説明する。
本実施の形態では、熱中症になり易い環境であるか否かを報知する装置(以下、「熱中症指標計」という。)を一例として説明する。
【0064】
<熱中症指標計>
まず、図4に示すように、制御部6が、電源スイッチ4がonされた状態であるか否か判断する(S10)。
その結果、制御部6が、電源スイッチ4がonされた指示を受け付けた場合(YES)、制御部6は、計時部92から経過時間の計測情報を得て、予め設定された所定時間の計測を開始する(S20)。すなわち、図10(A)に示すように、電源スイッチ4が「OFF」の位置から「ON」の位置へ移動する操作が行われると、電源スイッチ4がonされたことになり、以後、電源スイッチ4が「ON」の位置から「OFF」の位置へ戻されない(移動されない)限りonされた状態を維持する。
一方、制御部6が、電源スイッチ4がonされた指示を受け付けていない場合(NO)、制御部6は、電源スイッチ4がonされた状態であるか否か再度判断する(S10)。
【0065】
引き続き、制御部6は、予め設定された所定時間が経過したか否か判断する(S30)。
その結果、制御部6が、所定時間が経過したと判断した場合(YES)、制御部6は、温度検知部としての温度センサ21と湿度検知部としての湿度センサ22での測定を指示し、温度センサ21は、筐体10の開口部12より取り込まれた空気の気温測定を開始すると共に、湿度センサ22も、同空気の湿度測定を開始する(S40)。
【0066】
一方、制御部6が、未だ所定時間が経過していないと判断した場合(NO)、制御部6は、予め設定された所定時間が経過したか否かの判断を繰り返す(S30)。
したがって、制御部6は、電源スイッチ4がonされた状態であれば、計測した経過時間に基づいて一定時間ごとに、温度センサ21と湿度センサ22での測定を継続的に実行する。
【0067】
そして、制御部6は、測定の指示に基づいて温度センサ21及び湿度センサ22での測定結果を受け付け、まず、気温は0℃以上50℃以下であるか否か判断する(S50)。
その結果、制御部6は、気温が0℃以上50℃以下であると判断した場合(YES)、制御部6は、引き続き湿度は20%以上90%以下であるか否か判断する(S60)。
【0068】
制御部6は、湿度が20%以上90%以下であると判断した場合(YES)、指標ランク情報記憶部31を参照して、温度センサ21から得た気温情報及び湿度センサ22から得た湿度情報とに基づいて、所定の指標ランクを特定する(S70)。
指標ランクの特定は、測定した気温及び湿度の環境情報と、これにより特定される熱中症の指標を示す指標ランクとを関連付けたデータテーブルに基づいて行うことができる。
このデータテーブルは、説明の便宜上、たとえば、図7において指標ランク特定表として示すことができる。
【0069】
図7に示す指標ランク特定表は、横軸に気温が示され、縦軸に湿度が示され、これら気温と湿度の交点において指標値ランクが示された一覧表となっている。
図7において、気温は、説明の関係上20℃から45℃までの範囲において、5℃間隔ずつ20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃として設定されている。この気温の設定間隔は任意であり、温度センサ21で検知可能な気温情報の範囲において、1℃間隔であっても良いし、0.1℃や0.5℃、2℃といった任意の間隔で設定したものとしても良い。
湿度は、0%から100%の範囲において、10%間隔ずつ0%、10%、20%・・・80%、90%、100%として設定されている。この湿度の設定間隔も任意であり、湿度センサ22で検知可能な湿度情報の範囲において、1%間隔であっても良いし、2%や5%といった任意の間隔で設定したものとしても良い。
【0070】
また、指標値ランクは、「ほぼ安全」を意味する「A」、「注意」を意味する「B」、「警戒」を意味する「C」、「厳重警戒」を意味する「D」、「危険」を意味する「E」、として規定されることが示されている。具体的には、たとえば、気温が20℃、湿度が50%の場合(以下、説明の便宜上、気温と湿度の順番で座標のように「20,50」として記す。)、指標ランクは「A」となっている。同様に、「25,60」の場合、指標ランクは「B」であり、「30,60」の場合、指標ランクは「C」であり、「30,70」の場合、指標ランクは「D」であり、「35,80」の場合、指標ランクは「E」となっている。
【0071】
この指標ランクは、たとえば、従来から知られているWBGTを求める所定の式によって算出した指標を基に区分しても良いし、所定の式に独自の係数を加減乗除して算出した指標を基に区分しても良い。また、気温と湿度の経験値から指標ランクを定めて区分するようにしても良い。
【0072】
制御部6は、指標ランクを特定した後、環境報知情報記憶部32を参照して指標ランクに基づいて、第一環境報知情報としての基本環境報知情報を特定する(S80)。
基本環境報知情報の特定は、指標ランクと、これに応じた基本環境報知情報とを関連付けたデータテーブルに基づいて行うことができる。このデータテーブルは、説明の便宜上、図9において環境報知情報特定表として示すことができる。図9に示す環境報知情報特定表は、LED71の色彩を変化させる場合の基本環境報知情報の報知方法が示された一覧表となっている。
【0073】
図9においては、報知手段を発光器(LED)及び警報器(ブザー)とし、基本環境報知情報として、指標値ランクに応じて点灯するLEDの色彩が変化すると共に、ブザーの発鳴有無及び発鳴の仕方を規定したものとして示されている。たとえば、指標値ランクが「A」であれば、LEDが緑色に点灯し、ブザーは発鳴しない、指標値ランクが「B」であれば、LEDが黄緑色に点灯し、ブザーは発鳴しない、指標値ランクが「C」であれば、LEDが黄色に点灯し、ブザーは発鳴しない、指標値ランクが「D」であれば、LEDが橙色に点灯すると共に、ブザーは短く5回発鳴する、そして、指標値ランクが「E」であれば、LEDが赤色に点灯すると共に、ブザーは10秒間連続して発鳴する、といった指示を行うことが示されている。」

以上の記載からみて、引用文献2には、「温度検知部が測定した気温および湿度検知部が測定した湿度に基づいて、熱中症になり易い環境であるか否かを報知すること」が、記載されている。

3.引用文献3について
原査定に引用された特開2008-275557号公報(原査定における引用文献A。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0024】
図1は本発明によるガス警報器の実施形態を示したブロック図である。図1 において、本実施形態のガス警報器は監視制御部10を有し、監視制御部10に対しセンサ動作回路14を介して電気化学式ガスセンサ12を接続し、またガス警報器の設置環境の温度と湿度を検出する温度センサ16と湿度センサ18を接続し、更に警報回路部20を接続している。
【0025】
監視制御部10にはCPU24が設けられ、CPU24に対してはAD変換部26を介して、電気化学式ガスセンサ12のセンサ動作回路14より得られるCOガスのガス濃度に対応したCOガス検出信号をサンプリングして取り込んでいる。
【0026】
またCPU24に対しAD変換部28が設けられ、温度センサ16の検出温度及び湿度センサ18の検出湿度をサンプリングして、温度データ及び湿度データとして取り込んでいる。
【0027】
またCPU24に対してはタイマ部30と不揮発メモリ32が設けられる。タイマ部30は、監視制御部10のガス監視制御に必要な年、月、日、時、分を含む時刻情報を生成してCPU24に供給する。
【0028】
不揮発メモリ32は例えばEEPROMであり、本実施形態のガス監視制御における電気化学式ガスセンサ12の検出感度の補正に必要な補正係数二次元テーブル40と日変化率テーブル(期間変化率テーブル)42を格納している。
【0029】
CPU24にはプログラムの実行により実現される機能として、補正係数決定部34、補正部36及びガス濃度判定部38が設けられている。補正係数決定部34は、温度センサ16の検出温度、湿度センサ18の検出湿度、及びこれらの検出温度と検出湿度の少なくともいずれか一方が変化してからの経過期間例えば経過日数に基づいて、センサ動作回路14を介して得られる電気化学式ガスセンサ12からのCOガス検出信号を補正するための補正係数を決定する。
【0030】
補正部36は、センサ動作回路14から出力される電気化学式ガスセンサ12のCOガス検出信号に補正係数決定部34で決定された補正係数を乗じて補正されたCOガス検出信号を生成する。
【0031】
ガス濃度判定部38は、補正部36から得られた補正済みのCOガス検出信号即ちCOガス濃度を示す信号を、予め定めた警報閾値と比較し、警報閾値を超えた場合に警報回路部20に警報動作信号を出力し、警報回路部20に設けている音響警報出力部による音響警報、更にはLEDなどによる警報表示灯の動作を行う。
【0032】
なお図1の実施形態における各部に対する電源供給は、図示しない例えば電池電源により行われる。また図1の実施形態の各回路部はガス漏れ警報器の筐体に組み込まれており、住戸内の例えば台所に設置されてCOガスの監視制御を行うことになる。」

以上の記載より、引用文献3には、「住宅内の台所に設置されるガス警報器と、前記警報器の筺体に組み込まれ、ガスを検出する電気化学式ガスセンサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、温度を検出する温度センサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、湿度を検出する湿度センサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、前記ガスセンサの検出結果に基づいてガスに関する報知を行う警報回路部と、を備えたガス警報器」が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定に引用された特開2013-187599号公報(原査定における引用文献C。以下、「引用文献4」という。)には、【0130】、【0149】、【0150】の記載からみて、「湿度、湿度および人の存否を示す値を分析して、人が在室しており、かつ、熱中症が危惧される環境を判断する」という技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定に引用された特開2003-187351号公報(原査定における引用文献E。以下、「引用文献5」という。)には、【0014】?【0022】の記載からみて、「住宅内の異常の有無の判断方法として、煮炊き時に煙センサ値が閾値を超えても、湯気により湿度センサ値は閾値以上となるので、火災とみなす誤判断を防止する」という技術的事項が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定に引用された特開2011-243218号公報(原査定における引用文献F。以下、「引用文献6」という。)には、【0085】の記載からみて、「火災警報時に警報停止スイッチ20が操作されると警報を停止し、通常状態で警報停止スイッチ20が操作されると機能点検を実施して結果を報知する」という技術的事項が記載されていると認められる。


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「車両室内」は、「室内」ではあるが、本願発明1の「建物の室内」とは異なる。
引用発明の「ガス検出センサ」、「温度センサ」は、それぞれ、本願発明1の「ガス検出部」、「温度検出部」に対応する。
引用発明の「各種センサデータを循環的に記憶している循環レコーダ」は、本願発明1の「各検出部の検出結果を記憶する記憶部」に対応する。
一般に、熱射病は熱中症の一種で重症のもの(広辞苑)であるから、引用発明の「熱射病」は、本願発明1の「熱中症」に含まれる。また、引用発明の、熱射病判断条件により緊急事態と判断して出力される音声信号は、熱射病の可能性を示すものであるから、本願発明1の「熱中症予防に関する報知」に対応する。
引用発明において、CO中毒判定条件におけるCOガスは、「ガス検出センサ」により検出されるものであり、熱射病判断条件における「室温」は、「温度センサ」により検出されるものである。また、引用発明の「音響装置」は、緊急事態と判断したときに生成される緊急データが音声信号に変換されて入力され、緊急事態の警告を行うから、本願発明1の「報知手段」に対応する。
引用発明の「車両搭載緊急信号発信システム」と本願発明1の「警報器」とは、いずれも「装置」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 室内のガスを検出するガス検出部と、
室内の温度を検出する温度検出部と、
前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、
各検出部の検出結果を記憶する記憶部と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部の検出結果が前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている、装置。」

(相違点)
相違点(1):「装置」について、本願発明1は、「建物の室内に設置される警報器本体」を備える「警報器」であるのに対して、引用発明は、車両の音響装置が運転者や同乗者に緊急事態の警告を行う「車両搭載緊急信号発信システム」である点。
相違点(2):本願発明1の「ガス検出部」、「温度検出部」は警報器本体内に設けられているのに対して、引用発明は、センサ手段に設けられている点。
相違点(3):本願発明1は、「警報器本体内に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部」を備え、報知手段は、「警報器本体内に設けられ」、「温度検出部及び湿度検出部の検出結果に基づいて」、熱中症予防に関する報知を行い、「温度検出部および湿度検出部の検出結果」が熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うのに対して、引用発明は、温度センサの検出結果である車内の室温に基づいて、熱射病判断を行い警告する点。
相違点(4):「記憶部」について、本願発明1は、「警報器本体内に設けられ」ているのに対して、引用発明は、車両搭載緊急信号発信システムを構成する「ブラックボックス」に設置されている点。

(2)判断
相違点(1)について、検討する。
引用発明は、「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」に関する技術であるから、車両に搭載されて車両の緊急事態レベルに基づいて緊急信号を発信して事故や車両犯罪の解析に役立てるものであり、建物の室内に設置することは想定されておらず、本願発明1の「建物の室内に設置される警報器本体」を備える「警報器」とは、対象が異なるものである。
そして、車両に搭載される緊急信号を発信するシステムを、建物の室内に設置することは、引用文献2?6に記載されるものではなく、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2及び3も、本願発明1の構成をすべて備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4について
(1)対比
本願発明4と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 室内のガスを検出するガス検出部と、
室内の温度を検出する温度検出部と、
前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部の検出結果が前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている、装置。」

相違点(1):「装置」について、本願発明4は、「室内に設置される警報器本体」を備える「警報器」であるのに対して、引用発明は、車両の音響装置が運転者や同乗者に緊急事態の警告を行う「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」である点。
相違点(2):本願発明4の「ガス検出部」、「温度検出部」は警報器本体に設けられているのに対して、引用発明は、センサ手段に設けられている点。
相違点(3):本願発明4は、「警報器本体に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部」を備え、報知手段は、「警報器本体に設けられ」、「温度検出部及び湿度検出部の検出結果に基づいて」、熱中症予防に関する報知を行い、「温度検出部および湿度検出部の検出結果」が熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うのに対して、引用発明は、温度センサの検出結果である車内の室温に基づいて、熱射病判断を行い警告する点。
相違点(4):本願発明4は、「警報器本体に設けられ、室内の煙を検出する煙検出部をさらに備え」、「前記湿度検出部の検出結果に基づいて、前記煙検出部による異常判定基準および判断頻度の少なくとも一方の変更を行うか、または、前記煙検出部の検出結果および前記湿度検出部の検出結果の両方に基づいて、煙と水蒸気との判別を行うように構成されている」のに対して、引用発明は、当該構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点(1)、(4)について先に検討する。
引用文献5には、「住宅内の異常の有無の判断方法として、煮炊き時に煙センサ値が閾値を超えても、湯気により湿度センサ値は閾値以上となるので、火災とみなす誤判断を防止する」という技術的事項が記載されるが、引用発明の「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」は,「住宅内」における、「煮炊き時」は想定されるものでなく、組み合わせる動機付けがない。
また、相違点(1)、(4)に係る構成は、上記引用文献2?4,6には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明5について
本願発明5と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 室内のガスを検出するガス検出部と、
室内の温度を検出する温度検出部と、
前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行うとともに、前記ガス検出部、前記温度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行う報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記温度検出部の検出結果が前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている、装置。」

相違点(1):「装置」について、本願発明5は、「室内に設置される警報器本体」を備える「警報器」であるのに対して、引用発明は、車両の音響装置が運転者や同乗者に緊急事態の警告を行う「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」である点。
相違点(2):本願発明5の「ガス検出部」、「温度検出部」は警報器本体に設けられているのに対して、引用発明は、センサ手段に設けられている点。
相違点(3):本願発明5は、「警報器本体に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部」を備え、報知手段は、「警報器本体に設けられ」、「温度検出部及び湿度検出部の検出結果に基づいて」、熱中症予防に関する報知を行い、「温度検出部および湿度検出部の検出結果」が熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うのに対して、引用発明は、温度センサの検出結果である車内の室温に基づいて、熱射病判断を行い警告する点。
相違点(4):本願発明5は、「前記警報器の機能確認動作の開始命令を受け付けるための操作部をさらに備え」、「検出結果が前記ガスに関する報知の報知閾値を超える状態で前記操作部の入力を受け付けた場合、前記機能確認動作を実行せず、検出結果が前記熱中症予防に関する報知の報知閾値を超える状態で前記操作部の入力を受け付けた場合、前記機能確認動作を実行するように構成されている」のに対して、引用発明は、当該構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点(4)について先に検討する。
引用文献6には、「火災警報時に警報停止スイッチ20が操作されると警報を停止し、通常状態で警報停止スイッチ20が操作されると機能点検を実施して結果を報知する」という技術的事項が記載されるが、本願発明5の相違点(4)に係る、「ガスに関する報知の報知閾値を超える状態」では機能確認動作を実行せず、「熱中症予防に関する報知の報知閾値を超える状態」では機能確認動作を実行することが、開示されるものではないし、引用発明は「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」であるから、何かの操作によって警報を停止することは、そもそも想定されていない。
また、相違点(4)に係る構成は、上記引用文献2?5には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明5は、当業者であっても引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
原査定は、引用文献A(引用文献3)を主引例とするものである。
ここで、引用文献Aには、上記第5の3.のとおり「住宅内の台所に設置されるガス警報器と、前記警報器の筺体に組み込まれ、ガスを検出する電気化学式ガスセンサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、温度を検出する温度センサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、湿度を検出する湿度センサと、前記警報器の筺体に組み込まれ、前記ガスセンサの検出結果に基づいてガスに関する報知を行う警報回路部と、を備えたガス警報器」(以下、「引用文献A記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

本願発明1と引用文献A記載の発明とを対比すると、本願発明1と引用文献A記載の発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「建物の室内に設置される警報器本体と、
前記警報器本体内に設けられ、室内のガスを検出するガス検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、室内の温度を検出する温度検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、室内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記警報器本体内に設けられ、前記ガス検出部の検出結果に基づいてガスに関する報知を行う報知手段と、を備え、る警報器」

相違点(1):「報知手段」について、本願発明1では、「前記ガス検出部、前記温度検出部および前記湿度検出部のうち、少なくとも前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果に基づいて、熱中症予防に関する報知を行」い、「前記温度検出部および前記湿度検出部の検出結果が前記熱中症予防に関する報知条件に該当した場合に、報知動作を行うように構成されている」のに対して、引用文献A記載の発明では、当該構成を有していない点。
相違点(2):本願発明1は、「前記警報器本体内に設けられ、各検出部の検出結果を記憶する記憶部」を備えるのに対して、引用文献A記載の発明では、明記されていない点。

相違点(1)について検討する。
引用文献Aに記載されるガス警報器は、ガス検出信号を補正するために、温度センサと湿度センサを設けたものである(【0029】)。しかし、ガスに関する報知を行うガス警報器において、熱中症予防に関する報知を行うことは、引用文献B?C,E?Fには、記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
また、引用文献Dには、上記第5の1.の「事故や車両犯罪の解析に役立てることが出来る車両搭載緊急信号発信システム」に関する技術が記載されているが、当該技術は、車両に搭載されて車両の緊急事態レベルに基づいて緊急信号を発信して事故や車両犯罪の解析に役立てるものであるから、室内に設置することは想定されておらず、引用文献A記載の発明とは対象が異なるものであり、引用文献A記載の発明に適用する動機付けが存在しない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献A記載の発明、引用文献B?Fに記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

本願発明2及び3も、本願発明1の構成をすべて備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献A記載の発明、引用文献B?Fに記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明4及び5についても、「警報器」において、上記相違点(1)に係る構成を有するものであるから、本願発明1と同様の理由により、容易に発明できたものであるとはいえない。

また、原査定における引用文献Dを主引例としても、「第5」,「第6」に記載したとおり、容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって、本願発明1?5は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Fに基づいて、容易に発明できたものとはいえず、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-24 
出願番号 特願2015-47444(P2015-47444)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 衣鳩 文彦
丸山 高政
発明の名称 警報器  
代理人 宮園 博一  

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