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審決分類 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C11D
審判 一部無効 2項進歩性  C11D
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
管理番号 1366615
審判番号 無効2018-800006  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-01-26 
確定日 2020-10-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第4473278号発明「スクラブ石けんの製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4473278号は、平成19年1月31日に特願2007-22488号として出願され、平成22年3月12日に特許権の設定登録がなされたものであり、これに対して、平成30年1月26日に日本生化学株式会社により本件特許を無効にすることについての審判の請求がなされたところ、その審判における手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年1月26日 審判請求書及び甲第1?19号証提出(請求人)
同年2月16日 上申書及び甲第20?21号証提出(請求人)
同月26日 手続補正書、証拠申出書及び甲第22?24号証
提出(請求人)
同年5月18日 答弁書及び乙第1?2号証提出(被請求人)
同年6月26日 上申書及び甲第25?30号証提出(請求人)
同年8月13日 審理事項通知書(起案日)
同年9月26日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年10月10日 口頭審理・証拠調べ
同月22日 上申書提出(請求人)
同月31日 上申書提出(被請求人)

第2 本件発明
本件特許第4473278号の請求項1及び2に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本1発明」という。)。
「【請求項1】微粒火山灰に膨化処理を施した中空状のシラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬して、中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、その後、アルカリ溶液に脂肪酸を添加することにより、前記シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成するスクラブ石けんの製造方法。
【請求項2】前記アルカリ溶液には、前記シラスバルーンの重量に対して1/9?1/11重量部のグリセリンを添加することを特徴とする請求項1に記載のスクラブ石けんの製造方法。」

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
特許第4473278号発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の費用とする、との審決を求める。

2 無効理由の概要及び証拠方法
請求人は、以下の無効理由(1)?(4)を主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第30号証を提出した(以下、甲号証は、単に甲1などと記載することもある。)。

(1)無効理由1(主引用発明を甲1発明とする進歩性欠如)
本1発明は、甲1発明に、甲2、3記載の発明を単に組み合わせたもの、又は、甲1発明に甲2記載の発明及び周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5)を単に組み合わせたもの、であるから、進歩性を有しない発明であって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とされるべきである。
なお、口頭審理陳述要領書には、「甲1発明に甲2記載の発明及び周知技術(甲3、甲4、甲5)」(2頁13?14行)と記載されているが、請求人は、口頭審理において「周知技術」を示す文献について、「甲1」を追加し、上記のように訂正した。

(2)無効理由2(主引用発明を甲2発明とする進歩性欠如)
本1発明は、甲2発明及び甲3記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たもの、又は、甲2発明及び周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5、甲12、甲13、甲14)に基いて、当業者が容易になし得たもの、であるから、進歩性を有しない発明であって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とされるべきである。

(3)無効理由3(サポート要件違反及び明確性要件違反)
本件特許請求項1の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」、「中空内部にアルカリ溶液を浸透させ」との記載が、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、特許を受けようとする発明が不明確であるから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、本1発明は、特許法第123条第1項第4号に該当し、その特許は無効とされるべきである。

(4)無効理由4(実施可能要件違反及び明確性要件違反)
甲19に示すように、本件審判請求人が本件特許の明細書に基いて実験したところ、シラスバルーンの中空内部に石けんを形成することができなかったことから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本1発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであって、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本1発明を実施する上で、必要不可欠な条件、方法等が、発明特定事項として請求項1に記載されていないため、特許請求の範囲の記載が不明確であって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本1発明は、特許法第123条第1項第4号に該当し、その特許を無効とされるべきである。

(5)証拠方法(甲1?甲30)
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証:居福朋大、幡手泰男、吉田昌弘、河野恵宣、“シラスマイクロバルーンを含有する洗顔料に関する基礎的製造技術”、化学関連支部合同九州大会・外国人研究者交流国際シンポジウム講演予稿集、2005年、42巻、262頁
甲第2号証:特開平10-182264号公報
甲第3号証:特開平4-264200号公報
甲第4号証:特開2005-307058号公報
甲第5号証:特開2002-226359号公報
甲第6号証:木村邦夫、“シラス微粒中空ガラス”、工業材料 Vol.45 No.7、日刊工業新聞社、平成9年、表紙、目次、102?106頁、奥付
甲第7号証:特開平9-227200号公報
甲第8号証:木村邦夫、陣内和彦、諫山幸男、“シラスバルーンの密度と強度の測定について”、粉体工学研究会誌 Vol.12 No.9(1975)、粉体工学研究会、513?518頁
甲第9号証:田村健夫、廣田博、“香粧品科学-理論と実際-第2版”、フレグランスジャーナル社、平成8年、表紙、目次、282頁、奥付
甲第10号証:諫山幸男、陣内和彦、木村邦夫、“シラスの分離回収ならびにその有効利用”、浮選 Vol.23 No.3(’76-秋)、144?157頁
甲第11号証:特開2001-213992号公報
甲第12号証:袖山研一、“シラス利用の新しい展開”、[online]、平成23年3月、鹿児島県工業技術センター、目次、70?76頁、[2018年1月7日検索]、鹿児島県工業技術センターHP(https://www.kagoshima-it.go.jp/?page_id=8153)
甲第13号証:特開2000-136125号公報
甲第14号証:特開平1-215892号公報
甲第15号証:藤原光輝、“シラス多孔質ガラス(SPG)の応用”、NEW GLASS Vol.23 No.1 2008、28?33頁
甲第16号証:新村出、“広辞苑第四版”、株式会社岩波書店、平成3年、表紙、1340?1341頁、奥付
甲第17号証:福嶋葉子、“図解 たのしい科学あそび?化学編?”、東陽出版株式会社、平成12年、表紙、目次、14?21頁、奥付
甲第18号証:特許第4740373号公報
甲第19号証:堀口高英、“分析結果報告書”、株式会社UBE科学分析センター、平成28年9月27日
甲第20号証:被請求人代理人、“特許権に基づく製造販売禁止等請求事件(平成28年(ワ)第10759号)原告第5準備書面”、平成29年10月2日
甲第21号証:福嶋葉子、“図解 たのしい科学あそび?化学編?”、東陽出版株式会社、平成12年、表紙、目次、12?13頁、奥付
甲第22号証:請求人代理人、科学技術振興機構が運営するデータベースJ-GLOBALの検索結果の頁、[平成30年2月22日検索]、インターネット(http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902217172440186)
甲第23号証の1:請求人代理人、科学技術振興機構が運営するデータベースJ-STAGEの検索結果の頁、[平成30年2月22日検索]、インターネット(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/rpsj1954/-char/ja)
甲第23号証の2:請求人代理人、J-STAGEにおける『浮選』23巻3号の検索結果の頁、[平成30年2月22日検索]、インターネット(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/rpsj1954/23/3/_contents/-char/ja)
甲第24号証:請求人代理人、一般社団法人ニューガラスフォーラムのホームページ、[平成30年2月19日検索]、インターネット(http://www.newglass.jp/c2j.shtml及びhttp://www.newglass.jp/mag/TITL/maghtml/88.html)
甲第25号証:平成28年(ワ)第10759号事件の被告代理人、“第2準備書面”、平成28年12月2日
甲第26号証:平成28年(ワ)第10759号事件の原告代理人、“原告第2準備書面”、平成29年1月20日
甲第27号証:平成28年(ワ)第10759号事件の原告代理人、“原告第3準備書面”、平成29年3月2日
甲第28号証:平成28年(ワ)第10759号事件の被告代理人、“第3準備書面”、平成29年4月26日
甲第29号証:平成28年(ワ)第10759号事件の原告代理人、“原告第4準備書面”、平成29年6月27日
甲第30号証:平成28年(ワ)第10759号事件の被告代理人、“第4準備書面”、平成29年8月28日

なお、平成30年6月26日の上申書(請求人)に添付された甲第24?29号証の証拠番号は、甲第25?30号証に改められた。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
本件特許無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。

2 被請求人の反論及び証拠方法
被請求人は、以下の反論を主張し、証拠方法として乙第1号証?乙第2号証を提出した(以下、乙号証は、単に乙1などと記載することもある。)。

(1)無効理由1に対する反論
本1発明は、シラスバルーンの中空内部において鹸化反応を生起させてシラスバルーン内部に石けんを形成することに基本的な技術思想をおいている。
これに対して甲1は、すでに形成された石けん中にシラスバルーンを混合したシラス混入石けんであり、シラスバルーン中空内部では石けんが形成されていない。
甲2の開示技術はセラミック造粒体内に真空、常圧戻しの物理的手段で液体や石けんを収容することが開示されているだけである。すなわち、セラミック製造体内部に収容される石けんは収容される前にすでに完成した石けんとなっている。また、仮に石けんのかわりに液体がセラミック造粒体内部空間に内蔵されることが開示されているとしても、この液体をアルカリ溶液として、セラミック造粒体内部において内部収容のアルカリ液に後添加の脂肪酸で鹸化反応を生起させるという本件特許発明の技術などは全く開示されていない。
以上述べたように甲1?2の発明と甲3?5の周知技術を組み合わせても本1発明の「シラスバルーンの中空内部で鹸化反応を生起して石けんを形成する」という特徴的技術が完成しないことは明らかであり、請求人の無効主張には何ら理由がない。

(2)無効理由2に対する反論
甲2にはセラミック造粒体の中空部で石けん形成のための鹸化反応を形成する技術は一切開示されていない。仮にセラミック造粒体中に石けんやアルカリ溶液が収納内蔵されているとしても、それは真空、常圧戻しという物理的手段で強制的に行われる技術にすぎず、実際には実現可能性に疑問のある技術である。
請求人は甲2のセラミック造粒体とシラスバルーンとは相違しないことを主張するために甲12、13、14のシラスの処理技術を掲げているが、甲12は本1発明の特許出願の後に公開されたものであり、無効資料とはなりえず、甲1はすでに完成した石けん中にシラスバルーンを混合したものに過ぎず、甲13も主成分のシラスバルーンに溶剤、植物性油、界面活性剤、水とを添加混合したハンドクリーナーであり、甲14も微粒シラスを焼成したものを添加した洗剤であり、いずれもすでにハンドクリーナーや洗剤等の石けん類似の生成品にシラスやシラスバルーンを「添加」「混合」するものである。甲1、13、14等はシラスやシラスバルーンを使った点においてのみ重複する技術であり、そのシラス等の使い方が生成済みの石けん類似のハンドクリーナーや洗剤と混合するだけの技術であるため、本1発明とは全く使い方が異なり、当業者が採用する技術の想到性はない。
さらに、請求人は本1発明と甲2とは、甲2に各成分の添加手順が具体的に示されていない点が相違点とし、甲3には石けん製造技術が開示されており、甲2記載の発明に甲3記載の発明を適用することに困難性はないと主張するが、これらの主張の中にはセラミック造粒体の中空内部で鹸化反応に基づく石けんを形成するという技術思想は全く含まれておらず、示唆もされていない。
以上述べたように甲2、3の発明に周知技術(甲1、12、13、14)を組み合わせても、本1発明は当業者が容易になし得るものではなく、請求人の無効主張には何ら理由がない。

(3)無効理由3に対する反論
請求項1の「微粒火山灰に膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」との記載により、シラスバルーンとは当然に多孔質の「シラスバルーン」を意味していることは明らかである。本1発明では、殊更にシラスバルーンの平均粒径を特定しなくても本1発明の効果を奏するに最適のシラスバルーンが用いられれば良く、その具体的実施例は充分に開示されている。必要なことは膨化処理を施して中空状のシラスバルーンと化したものを用いることであり、これにより本1発明に特有の「中空内部に石けんを形成する」ことができる。また、界面活性剤が使用されているため、シラスバルーン、アルカリ水溶液、脂肪酸溶液はスムーズに混ざることになり、シラスバルーンが「破壊されやすい」という製造環境が存在しない。さらに、請求項1の「浸透」の文言記載は、明細書段落0029に記載され、明確に使用されている。
よって、請求人の主張には全く理由がない。

(4)無効理由4に対する反論
甲19で観察された切断前というシラスバルーンには、外見上表面にクラックがないが、表面にクラックがなければ、そもそもシラスバルーンの内部に石けんが収納される余地はないのだから、実験の資料として完全に不適切であり、甲19は全く信用性がないというべきである。
よって、請求人の主張も全く理由がない。

(5)証拠方法(乙1?乙2)
被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
乙第1号証:友清芳二、“「火山灰でできたすごか石けん」の中に含まれるシラスバルーンの分析”、平成29年3月10日作成
乙第2号証:友清芳二、“「火山灰でできたすごか石けん」の中に含まれるシラスバルーンの分析(第2回)”、平成29年6月23日作成

なお、乙第1号証の作成日は、平成30年9月26日付けの口頭審理陳述要領書(被請求人)の第2頁第8行で釈明されたものである。

第5 当審の判断
1 無効理由1、2について
(1)甲1?5、12?14の記載事項
ア 甲1は、甲22を参酌するに、本件特許の出願日(平成19年1月19日)前の平成17年(2005年)に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記1a:第262頁第1?19行
「シラスマイクロバルーンを含有する洗顔料に関する基礎的製造技術
((株)天元)○居福朋大 (鹿児島大学)幡手泰男・吉田昌弘・河野恵宣)
[序論]
シラスは鹿児島県に広く形成される火山灰体積物で、主に二酸化ケイ素や酸化アルミなどを含有し、その有効な活用法が期待されている。中でも、ガラス質であるシラスを発砲させたシラスマイクロバルーンと呼ばれる微細中空球は高性能材料として、近年、研究が多くなされている。今回シラスマイクロバルーンが球形であること、またシラスが油分に対して強い吸着力を持つことに着目し、半固形洗顔石けんに含有させ、そのスクラブ的機能や洗浄力の向上が与えられることや、その基礎的な原料や製造技術の確立を目的とし、さらに付加価値を与えることを目指す。
[実験]
基本的な洗顔石けんは、C8?C18程度のある割合に混合している飽和・不飽和脂肪酸とアルカリのけん化により作られる。本実験ではシラスマイクロバルーンの混合し易い軟石けんのカリウム石けんの調整について検討した。石けんのけん化の反応速度に影響を及ぼす攪拌状態、反応温度、添加アルカリ水溶液濃度の影響を検討した。更に脂肪酸組成、界面活性剤の添加により石けんの仕上がりや使用感を検討した。更にシラスマイクロバルーンの混合量や添加方法を検討した。
[結果と考察]
各条件によるけん化度を測定し、もっとも効率の良い温度と攪拌条件を検討した。けん化効率に及ぼす脂肪酸組成による影響は少ないが、添加アルカリ水溶液濃度により大きな変化が現れた。シラスマイクロバルーンを添加することにより、空気の混入が起こり操作中に泡が生じ、仕上がり状態や使用感に差がでた。」

イ 甲2は、本件特許の出願前の平成10年7月7日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記2a:請求項7、8、10、13、15、16、23、25及び31
「【請求項7】粉末集合体のセラミックの球状殻の内部に球状空間を有し、かつその球状空間内に〔A〕液体、〔B〕ガス体及び〔C〕高温で液体又は気体となる固体からなる群から選ばれたものが充填されてなることを特徴とするセラミック造粒体。
【請求項8】セラミックの球状殻が、焼結されたセラミックであることを特徴とする請求項6又は7に記載のセラミック造粒体。…
【請求項10】球状のセラミック造粒体の殻が多孔質のものであることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載のセラミック造粒体。…
【請求項13】セラミック原料又はセラミックが、粘土、粘土鉱物、シャモット、珪砂、陶石、長石、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカ、ムライト、コーディエライト、アパタイト、高炉スラグ、シラス、フライアッシュ、フェライト、炭化珪素、窒化アルミニウム及び窒化珪素から選ばれた1種以上のものであることを特徴とする請求項6ないし12のいずれかに記載のセラミック造粒体…
【請求項15】セラミック造粒体が、〔1〕触媒担体、〔2〕セメントモルタル用又はコンクリート用混和材料、〔3〕軽量骨材、〔4〕肥料を含有してなる肥料、〔5〕土壌改良剤を含有してなる土壌改良材料、〔6〕発光物質を含有してなる発光材料、〔7〕燐光発生物質を含有してなる燐光発生材料、〔8〕pH調整物質を含有してなるpH調整材料、〔9〕昇華性物質を含有してなる昇華性物質放出、〔10〕香料を含有してなる香料徐放性製品で、〔11〕酵素を含有してなる酵素含有製品、〔12〕細菌類を含有してなる細菌類含有製品、〔13〕殺菌剤を含有してなる殺菌剤含有製品、〔14〕殺虫剤を含有してなる殺虫剤製品、〔15〕色材を含有してなる色材製品、〔16〕消化剤を含有してなる消化剤含有製品、〔17〕消火剤を含有してなる消火剤含有製品、〔18〕界面活性剤を含有してなる界面活性剤含有製品、〔19〕強磁性体材料を含有してなる強磁性体材料含有製品、〔20〕希土類磁石材料を含有してなる希土類磁石材料含有製品、〔21〕中性子吸収材を含有してなる中性子吸収材含有製品、〔22〕放射能放射材を含有してなる放射能放射材含有製品、〔23〕着色されたもの、〔24〕抗生物質を含有してなる抗生物質含有製品、〔25〕ホルモン物質を含有してなるホルモン含有製品、〔26〕水素吸蔵物質を含有してなる水素吸蔵物質含有製品、及び〔27〕高吸水性ポリマーを含有してなる高吸水性ポリマー含有製品からなる群から選ばれたいずれかのものであることを特徴とする請求項6ないし14のいずれかに記載のセラミック造粒体。
【請求項16】セラミックの球状殻が、多層構造のものであることを特徴とする請求項6ないし15のいずれかに記載のセラミック造粒体。…
【請求項23】請求項1ないし19のいずれかに記載の造粒体を液体中に浸漬し、内部の球状空間に液体を内蔵してなることを特徴とする造粒体。…
【請求項25】粉末体が、〔1〕医薬、〔2〕肥料、〔3〕食品、〔4〕セメント、〔5〕飼料、〔6〕色材、〔7〕農薬、〔8〕化粧料、〔9〕酵素含有物、〔10〕界面活性剤、〔11〕半導体、〔12〕金属、〔13〕多重カプセル構成物、〔14〕サーメット材、〔15〕塗料 コーティング材、〔16〕濾過材、〔17〕断熱材、〔18〕吸音材、〔19〕電波吸収材、〔20〕吸光材、〔21〕反射材、〔22〕交通標識表示材、〔23〕ボールベアリング、〔24〕バイオリアクター、〔25〕遠赤外線放射材、〔26〕電熱材、〔27〕軽量骨材、〔28〕球技材、〔29〕除湿材、〔30〕炉材、〔31〕エンジンルーム壁材、〔32〕ガスタービンルーム壁材、〔33〕裏貼(ライニング)材、〔34〕通気口材、〔35〕土壌材、〔36〕生体材 バイオセラミックス、〔37〕傾斜材、〔38〕アパタイト、〔39〕遅効性材料、〔40〕プラスチック、〔41〕感光材、〔42〕水素吸蔵材、〔43〕楽器材、〔44〕音響 スピーカ材、〔45〕オゾン分解材、〔46〕ホウロウ材、〔47〕釉薬材、〔48〕宇宙飛行材、〔49〕太陽炉材、〔50〕人工歯材、〔51〕タイル材、〔52〕顔料、〔53〕充填材料、〔54〕接着剤主成分、〔55〕超微粒子材料、〔56〕永久磁石材料、及び〔57〕形状記憶材料からなる群から選ばれたいずれかのものであることを特徴とする請求項1ないし24のいずれかに記載の造粒体。…
【請求項31】造粒体が、〔1〕医薬、〔2〕肥料、〔3〕食品、〔4〕セメント、〔5〕飼料、〔6〕色材、〔7〕農薬、〔8〕化粧料、〔9〕酵素含有物、〔10〕界面活性剤、〔11〕半導体、〔12〕金属、〔13〕多重カプセル構成物、〔14〕サーメット材料、〔15〕塗料コーティング材、〔16〕濾過材、〔17〕断熱材、〔18〕吸音材、〔19〕電波吸収材、〔20〕吸光材、〔21〕反射材、〔22〕交通標識表示材、〔23〕ボールベアリング、〔24〕バイオリアクター、〔25〕遠赤外線放射材、〔26〕電熱材、〔27〕軽量骨材、〔28〕球技材、〔29〕除湿材、〔30〕炉材、〔31〕エンジンルーム壁材、〔32〕ガスタービンルーム壁材、〔33〕裏貼(ライニング)材、〔34〕通気口材、〔35〕土壌材、〔36〕生体材用バイオセラミックス、〔37〕傾斜材、〔38〕アパタイト、〔39〕遅効性材料、〔40〕プラスチック材料、〔41〕感光材、〔42〕水素吸蔵材、〔43〕楽器材、〔44〕音響用スピーカ材、〔45〕オゾン分解材、〔46〕ホウロウ材料、〔47〕釉薬材料、〔48〕宇宙飛行材、〔49〕太陽炉材料、〔50〕人工歯材料、〔51〕タイル材料、〔52〕顔料、〔53〕充填材料、〔54〕接着剤主成分、〔55〕超微粒子材料、〔56〕永久磁石材料、及び〔57〕形状記憶材料からなる群から選ばれたいずれかのものであることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか、又は請求項28に記載の造粒体。」

摘記2b:段落0001?0002
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な造粒体に関し、特に球状の殻の内部に球状空間(中空部)を有してなる造粒体に関する。より好ましくは本発明は新規なセラミック造粒体に関し、特に球状の殻の内部に球状空間を有してなるセラミック造粒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来造粒体は、医薬工業分野、肥料工業分野、食品工業分野、飼料工業分野、農業分野、触媒工業分野、色材工業分野、窯業分野、セラミック工業分野、粉末冶金工業分野、洗剤工業分野、化粧品工業分野、プラスチック工業分野、バイオ工業分野等において広く使用されつつある。そして、それら造粒体は、転動造粒法、圧縮型造粒法、撹拌型造粒法、押出し造粒法、破砕型造粒法、流動層型造粒法、溶融造粒法、噴霧乾燥造粒法、液相造粒法、真空凍結造粒法、液中造粒法等によって製造される。しかしながら、それら造粒法によっては、中空の造粒体を得ることは容易でなく、わずかに噴霧乾燥造粒法等により中空のものが得られている。特に内部に球状空間を有する造粒体、特にはセラミック造粒体の提供は困難であった。」

摘記2c:段落0016及び0023?0024
「【0016】上記〔1〕医薬、〔2〕肥料、〔3〕食品、〔4〕セメント、〔5〕飼料、〔6〕色材、〔7〕農薬、〔8〕化粧料、〔9〕酵素含有物、〔10〕界面活性剤、〔11〕半導体、〔12〕金属、〔13〕多重カプセル構成物、〔14〕サーメット、〔15〕塗料 コーティング材、〔16〕濾過材、〔17〕断熱材、〔18〕吸音材、〔19〕電波吸収材、〔20〕吸光材、〔21〕反射材、〔22〕交通標識表示材、〔23〕ボールベアリング、〔24〕バイオリアクター、〔25〕遠赤外線放射材、〔26〕電熱材、〔27〕軽量骨材、〔28〕球技材、〔29〕除湿材、〔30〕炉材、〔31〕エンジンルーム壁材、〔32〕ガスタービンルーム壁材、〔33〕裏貼(ライニング)材、〔34〕通気口材、〔35〕土壌材、〔36〕生体材 バイオセラミックス、〔37〕傾斜材、〔38〕アパタイト、〔39〕遅効性材料、〔40〕プラスチック、〔41〕感光材、〔42〕水素吸蔵材、〔43〕楽器材、〔44〕音響用スピーカ材、〔45〕オゾン分解材、〔46〕ホウロウ材料、〔47〕釉薬材料、〔48〕宇宙飛行材、〔49〕太陽炉材料、〔50〕人工歯材料、〔51〕タイル材料、〔52〕顔料、〔53〕充填材料、〔54〕接着剤主成分、〔55〕超微粒子材料、〔56〕永久磁石材料、及び〔57〕形状記憶材料からなる群から選ばれたものとしては、当該分野で公知のものあるいはそれらを改良して得られたものであれば特に限定されないが、例えば、社団法人 日本化学会編、「化学便覧 応用編(改訂3版)」、丸善株式会社、昭和55年3月15日発行;社団法人 日本化学会編、「化学便覧 応用化学編」、丸善株式会社、昭和61年;社団法人 日本化学会編、「化学便覧 応用化学編(第5版)」、丸善株式会社、平成7年3月15日発行(第1分冊及び第2分冊)に記載されたもの、さらにはそれらで引用している文献(参考文献)に記載されたものであることができる。…
【0023】化粧料としては、基礎化粧品用物、…浴用化粧品用物、…香料などが挙げられる。基礎化粧品としては、例えばクリーム、乳液、化粧水などが挙げられ、メイクアップ化粧品としては、例えば白粉、口紅、ネイルエナメル、マスカラ、アイシャドウなどのアイメイクアップ類などが挙げられ、薬用化粧品としては、日焼け止め製品、サンタン製品、防臭化粧品などが挙げられる。毛髪用化粧品としては、例えばシャンプー、コールドウェーブローション、染毛料、ポマード、ヘアーリキッドなどが挙げられ、口腔用化粧品としては、歯みがき、口腔清浄剤、消臭剤などが挙げられる。
【0024】界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、…両性界面活性剤などが挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、セッケン、…N-(Z-スルホ)エチル-N-メチルアルカンアミド塩などが挙げられる。…界面活性剤は、洗浄剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、凝集剤、乳化剤、乳化破壊剤、可溶化剤、起泡剤、消泡剤、平滑剤、減摩剤、柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、殺菌剤、防錆剤などに用いられていることから、造粒体も同様な用途が期待できる。」

摘記2d:段落0028?0029
「【0028】本発明では好ましくはセラミック造粒体が得られる。セラミック原料粉末としては、粒径数μm?数100μmのものが好ましい。セラミック原料粉末としては、高温で焼結されるものであればよく、例えば粘土、粘土鉱物、シャモット、珪砂、陶石、長石、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカ、ムライト、コーディエライト、高炉スラグ、シラス、フライアッシュ、フェライト、アパタイト、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素等があり、通常1000?2000℃で焼結されるものである。
【0029】セラミック原料粉末には、成形時、乾燥時及び焼成時の形状維持及び強度保持ために、低温時における形状・強度維持のためのカルボキシメチルセルローズ、澱粉、水ガラス等の低温バインダ及び/又は焼成時の形状・強度維持のための釉薬フリット、フッ化カルシウム、ガラスフリット等の高温バインダを混合することが好ましい。なお、バインダは必ずしも必要でなく、バインダ無しでセラミック原料粉末のみを焼結することもできる。焼結は、焼結適温であることが好ましく、それにより粒子同志が点接触で接合されるため、焼結された球状のセラミック殻は多孔質、すなわち連通細孔の多孔質殻壁となり、その球状の多孔質殻壁を介して内部の球状空間と外部との間に気体、液体の流通が実現される。この流通性は、通常連通性細孔を通して徐々に流通されるため種々の機能効果を発揮させるものであり、種々の用途製品の提供を可能とする。例えば、内部の球状空間に充填された気体、例えば殺菌性ガスの塩素、反応性ガス等が徐々に流通・流出する。また、内部の球状空間に充填された液体、例えば香料、アルカリ液、酸液等のpH調整剤、殺菌剤液、金属塩溶液、有機溶剤等が、徐々に流通・流出する。さらに、内部の球状空間に充填された固体、例えば樟脳、固形香料、蝋材、肥料等が徐々に放出される。土壌中に埋設された本発明のセラミック造粒体中の肥料等は、雨水等の侵入により、徐々に土壌中へ溶出し、長期持続性の肥料となる。なお、内部の球状空間に液体、気体等を導入する方法としては、例えば真空チャンバー内に本発明の造粒体を入れ、内部の球状空間を真空とした後、その造粒体の周囲を液体又は気体で包囲し、常圧に戻すことで容易に実施することができる。固体の導入は、真空チャンバー内に入れた本発明の造粒体の周囲を高温加熱により液状化した蝋、アルミニウム、錫等の金属で包囲し、常圧に戻すことで容易に導入することができる。」

摘記2e:段落0043
「【0043】また、高周波誘電加熱は、周波数2450MHz前後、電力180?600W、通電加熱時間10分?60分間で実施されることが好ましい。さらに、高周波誘電加熱されて乾燥された球状の中空未焼成セラミック造粒体を焼成炉内で焼成することによって、焼結体とすることが好ましい。なお、セラミック原料は、粘土であること、粘土鉱物、シャモット、珪砂、陶石、長石、アルミナ、マグネシア、ムライト、ジルコニア、シリカ、アパタイト、高炉スラグ、シラス、フライアッシュ、炭化珪素、及び窒化珪素から選ばれた1種以上のものと粘結剤との混合物であることも好ましい。さらに、上記方法によって得られた未焼成セラミック造粒体は、雪だるま形成法(snow-ball法)等を採用して、その表面に同一物質又は他物質を被覆して、複層未焼成セラミック造粒体となし、更に高温焼成して複層セラミック造粒体とすこともできる。本発明で得られた球状の中空を有する造粒体は、多孔質体として形成することが可能であり、該造粒体を液体中に浸漬し、造粒体の殻に液体を含浸させることができるし、該造粒体を固体微粉末の懸濁液に浸漬し、乾燥して、造粒体の殻に固体微粉末を混在させた造粒体を得ることもできるし、該造粒体を液体中に浸漬し、内部の球状空間に液体を内蔵する造粒体を得ることもできるし、該造粒体をガス体中に放置し、内部の球状空間にガス体を内蔵する造粒体を得ることもできる。該造粒体に含浸された成分や該造粒体に内蔵された成分は、それを徐々に放出するようにすることが可能である。好ましい場合、該造粒体を浸漬せしめる液体としては、金属塩溶液などが挙げられる。本発明で得られた球状の中空部を有する造粒体は、より高温で焼結する、例えば、溶融焼結するなどして、その一部あるいは全部をガラス質にまで変性させ、無孔質体として形成することも可能である。」

摘記2f:段落0053
「【0053】
【発明の効果】本発明の粉末集合体よりなる球状殻の内部に球状空間を有してなる新規な造粒体は、優れた医薬工業製品、肥料製品、食品製品、飼料製品、農業製品、触媒製品、窯業製品、セラミック製品、粉末冶金製品、洗剤製品、プラスチック製品、バイオ工業製品等として、例えば触媒、軽量材料、防音材料、マイクロカプセル、軽量骨材等として使用できる。特には本発明の球状殻の内部に球状空間を有してなる新規なセラミック造粒体は、優れた触媒製品、窯業製品、セラミック製品、バイオ工業製品等として使用できる。特に、造粒体の殻が多孔質壁で構成された造粒体は、内部の球状空間と外部との間を気体、液体が徐々に流通するため、内部に充填された気体、液体が徐々に外部へ放出されるため、種々の有用な用途に適用できる。」

ウ 甲3は、本件特許の出願前の平成4年9月18日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記3a:請求項1?2
「【請求項1】アルカリ物質に脂肪酸を添加して石けんを生成せしめる工程と、生成した石けんを造粒する工程とを同時または連続して行うことを特徴とする高密度粒状石けんの製造方法。
【請求項2】アルカリ物質に各種の添加剤を混在させる請求項1記載の高密度粒状石けんの製造方法。」

摘記3b:段落0008?0010
「【0008】本発明において用いる脂肪酸としては、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が7?21程度のものを使用し、アルカリ物質としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、モルホリン、アルカリの炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0009】また各種の添加剤としては、石けん以外の界面活性剤、硫酸ナトリウム、アルミノケイ酸塩,EDTA、CMC、ポリエチレングリコール、着色剤、蛍光増白剤、PC、PB、酵素、香料、水等が挙げられる。
【0010】本発明においては、まず造粒機の中に所定の配合割合のアルカリ物質と各種の添加剤を入れ、1?2分混合する。つぎに攪拌を継続しながら40?80℃に加温した脂肪酸を噴霧しながら添加し、中和により石けんを生成させながら造粒を完了させる。また別の容器で石けんを生成させ、この石けんを連続して造粒する方法でも差し支えない。」

エ 甲4は、本件特許の出願前の平成17年11月4日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記4a:段落0012?0015
「【0012】本発明者らは、機械練りにおける透明性の不足が、脂肪酸石鹸の製造工程、すなわち中和あるいはケン化工程にあるのではないかと考えた。
【0013】すなわち、従来の石鹸の製造方法は、脂肪酸及び油脂の一方あるいは両方をあらかじめ加温融解しておき、ここにアルカリ性物質を添加して、中和あるいはケン化するものであるが、反応生成物である脂肪酸塩の融点が原料である脂肪酸や油脂よりも10-50℃上昇するため、反応生成物が固化する現象が発生する。
【0014】この現象が発生すると、生成物が遮蔽壁となり、脂肪酸あるいは油脂とアルカリ性物質の接触が不十分となり、十分な攪拌がともなったとしても不均一反応になっているものと考えられる。
その結果、最終製品のPHを9-10のアルカリ性に制御したとしても、未中和の脂肪酸や油脂が過剰な部分と、アルカリ性物質が過剰な部分とが偏在し、不透明の原因になっているものと考えられる。
【0015】本発明はこのような考えを前提とし、発想の逆転によってなされたもので、従来とはまったく逆に、アルカリ性物質を溶解しておいた溶液の中に脂肪酸および油脂の一方あるいは両方を添加して中和あるいはケン化を行うことにより、不均一な部分がなくなり、本目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。」

オ 甲5は、本件特許の出願前の平成14年8月14日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記5a:段落0012?0013
「【0012】本発明の脂肪酸石鹸系洗顔クリームには、本発明を損なわない範囲で通常使用される成分、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1、3-ブチレングリコール、エリスリトール等の多価アルコール類、グルコース、シュークロース、マルトース等の糖類、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール類、アシルグリシン塩、アルキルリン酸塩、アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩等のアニオン界面活性剤、カルボベタイン、アミドベタイン等の両性界面活性剤、アルキルグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、その他スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、モノステアリン酸グリセリン等のエモリエント成分、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等の水溶性高分子類、ジステアリン酸エチレングリコール等のパール化剤、抗炎症効果、細胞賦活効果や美白効果のある薬剤、色素、香料、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0013】本発明の脂肪酸石鹸系洗顔クリームは、常法に従って製造することができ、例えば、脂肪酸をアルカリ剤で鹸化して製造する場合は、アルカリ剤、水、多価アルコール等を加熱し溶解した水相に、加熱し溶解した脂肪酸等を添加し、中和することにより得ることができる。また、脂肪酸石鹸チップを用いる場合は、脂肪酸石鹸チップ、脂肪酸、多価アルコール、水等を加熱し溶解することにより得ることができる。」

カ 甲12には、次の記載がある。

摘記12a:第72頁右欄第1行?第73頁左欄第13行
「3.3 淘汰されたシラス
鹿児島市吉田地区や宮崎県えびの市周辺には、細砂から微砂の粒度分布を有する自然水の作用で淘汰されたシラス(吉田シラス、加久藤シラス:図7)が産出する^(5))。これらは、火山ガラス成分を90%以上含むこと、強熱減量が約4%以上であることを特徴としている。これらのシラスは、シラスバルーン、研磨材、シラス多孔質ガラス(SPG)、シラスオパール^(14))、シラスガラス製品、シラスセラミック浄化材^(15))、陶器瓦、台所用クレンザー、洗顔料などの用途がある。
シラスバルーンとは、シラスを熱処理して発泡させた微細な風船状の粒径20μm?1.4mm程度のものであり、低かさ比重、不燃性、高融点、低熱伝導率、無色、無害、有毒ガスの発生がない、低価格という特徴をもつ。図8に加久藤シラスを焼成発泡させたシラスバルーンを示す。シラスバルーンの原料としては、南九州のシラス以外に福島県の中野白土や東北・北海道の火山灰などが用いられている。
シラスバルーンは、年間14,250t(1991年)生産されているが、日本工業規格の区分が無い。製造各社会わせて50種類以上の品種があり、価格差も大きいが、一般的には10kg当たり1000?2000円台(工場出荷単価)である^(16)、17))。」

摘記12b:第73頁右欄下から13行?第74頁左欄第16行
「鹿児島県工業技術センターでは、地元企業と共同で1992年に平均粒径20μm以下の微粒シラスバルーンを開発した。図11に毛髪に付着させた微粒シラスバルーンの電子顕微鏡写真を示す。微粉砕シラスに撥水処理を行い、原料粉体の流動性を向上させて媒体流動床炉により焼成発泡し、低かさ密度の製品を製造可能とした。現在、10kg当たり5000?8000円(工場出荷単価)で販売されている^(16)、17))。
その他にも、アルミナ基板の低誘電率化の方法として微粒シラスバルーンを用いて材料内部への気孔の導入を図ったシラス/アルミナ系軽量複合体^(19))、微粒シラスバルーンを気孔形成材として陶器素地に添加して製造した高気孔率と高強度を両立させた軽量陶器^(20))、1000℃以上の耐火性を有する耐熱性バルーン^(21))などを開発している。
1998年には、微粒シラスバルーンを配合した洗顔料が鹿児島県内企業により製品化された(図12)。その後、シラス微粉を配合したものなど各種製品が開発され、現在では5社が製造販売しており、年間10億円規模の火山灰化粧品市場に成長している。
宮崎県工業技術センターで開発されたシラス多孔質ガラス(SPG)は、孔径制御された貫通細孔からなるAl_(2)O_(3)・SiO_(2)系ガラスである。シラス、石灰、ホウ酸からなる基礎ガラスを熱処理により相分離させて生成する。SPGを利用した膜乳化技術により、マイクロ/ナノサイズのエマルションや粒子、カプセルなど食品、医療、化粧品分野への展開のほか、ナノバブル生成やマイクロハンダボールの開発に成功している^(22))。」

キ 甲13は、本件特許の出願前の平成12年5月16日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記13a:請求項1
「【請求項1】粒径40μm?300μmのシラスバルーンを主成分とし、これに溶剤と植物性油と界面活性剤と水を添加して混合し粘性液状にしたことを特徴とするハンドクリーナー。」

ク 甲14は、本件特許の出願前の平成1年8月29日に頒布された刊行物であって、次の記載がある。

摘記14a:第1頁左下欄第7行?右下欄第11行
「この発明は、使いやすい、効果の高い、無公害洗剤の製法に関するものである。
従来の化学洗剤は、使いやすく、効果も高いのであるが、一方では公害の懸念が高い。又天然磨粉は、器が傷つきやすいことや、洗浄力が劣るなどの欠点がある。
本発明は、この欠点を除き、使いやすくて効果が高く、しかも無公害の洗剤を作るものである。
即ち、本剤の原料である硅酸白鉱(1)(5?6万年前の火山噴出物が、数万年間海で洗われ、分粒沈澱を繰返し堆積したといわれる微粒シラス)を水分が30パーセント以下になるまで予備乾燥(2)して、これを回転ラム型焼成炉(3)で溶融点寸前の高熱(700?800℃)で長時間焼成(水分が0.3%以下になるまで)すると雑物質はすべて燃消し純度の高い硅酸粉体となり、これは油性や微細物質に対して極めて強力な吸着力をもつようになる。
更に長期間変質しないことにもなる。
一方、焼成炉内で飛散する超微粉は、連動する集塵機(4)に吸収して除去し、更にメッシュの細かい篩機(5)にかけて夾雑物を除去すると焼成微粉は、0.02?0.05ミリに斉一化され、転がり性の高い粒子群となる。
これに少量の植物脂肪酸(6)を添加するとソフトな肌ざわりの洗剤(8)ができる。
従ってこの洗剤は、強力な吸着力をもったミクロの粒子が、転がりながら磨くから、軽い力で、器を傷つけずに、すばらしい洗磨力を発揮し、しかも手肌にやさしく、公害のおそれもない。」

(2)甲1、甲2に記載された発明(甲1発明、甲2発明)の認定
ア 甲1発明
甲1の「ガラス質であるシラスを発砲させたシラスマイクロバルーンと呼ばれる微細中空球は高性能材料として」という記載において、ガラス質であるシラスを「発泡させ」て、シラスマイクロバルーンと呼ばれる微細中空球が得られるのであるから、「発砲」は「発泡」の誤記と認められる。
そうすると、摘記1aから、甲1には、「ガラス質であるシラスを発泡させた、微細中空球のシラスマイクロバルーンを含有させた、半固形洗顔石けんについて、脂肪酸、アルカリ水溶液、添加物として界面活性剤、シラスマイクロバルーンを用いて該半固形洗顔石けんを製造する方法。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
また、甲1には、得られた洗顔石けんに対し、「更にシラスマイクロバルーンの混合量や添加方法を検討した。」という記載があることから、甲1発明において、更に、シラスマイクロバルーンの添加方法について検討することの技術的示唆がなされている発明も、甲1に記載されているといえる。

イ 甲2発明
甲2には、その請求項7から、粉末集合体のセラミックの球状殻の内部に球状空間を有し、かつその球状空間内に液体が充填されたセラミック造粒体が記載されているといえる。
そして、請求項23から、セラミック造粒体は、セラミック造粒体を液体に浸漬し、内部の球状空間に液体を内蔵したものといえる。
ここで、請求項15では、セラミック造粒体が、界面活性剤を含有してなる界面活性剤含有製品であるとされているから、セラミック造粒体の内部の球状空間には、界面活性剤が充填されているといえ、段落0024から、界面活性剤は、例えば、セッケンであるといえる。
また、段落0029から、セラミック造粒体に充填される液体には、アルカリ液が含まれる。
そうすると、甲2には、「セラミック造粒体を界面活性剤、例えばセッケン、アルカリ液の液体中に浸漬し、その内部の球状空間に前記液体を内蔵したセラミック造粒体の製造方法。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)無効理由1(主引用発明を甲1発明とした進歩性欠如)について
ア 対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ガラス質であるシラスを発泡させた、微細中空球のシラスマイクロバルーン」について、「ガラス質であるシラス」、「発泡」及び「微細中空」は、本1発明の「微粒火山灰」、「膨化処理」及び「中空」にそれぞれ相当するから、本1発明の「微粒火山灰に膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」に相当する。
また、本件明細書の段落0003には、「固形状や半固形状の石けんは、保形成が高く、液状の石けんに比して沈殿が生じないことから、水に不溶な粒子を混入し、いわゆるスクラブ石けんとして多く利用されている。」と記載され、半固形状の石けんに、水に不溶な粒子を混入したものはスクラブ石けんといえるところ、甲1発明の「半固形洗顔石けん」は、水に不溶であるシラスマイクロバルーンを含むことから、本1発明の「スクラブ石けん」に相当する。
そして、甲1発明の「脂肪酸」、「アルカリ水溶液」、「界面活性剤」及び「シラスマイクロバルーン」の各々は、本1発明の「脂肪酸」、「アルカリ溶液」、「界面活性剤」及び「シラスバルーン」の各々に相当し、両者は「脂肪酸、アルカリ溶液、界面活性剤、シラスバルーンを用いる」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲1発明は「微粒火山灰に膨化処理を施した中空状のシラスバルーン、界面活性剤、アルカリ溶液、脂肪酸を用いるスクラブ石けんの製造方法。」という点において一致し、次の相違点1-1及び1-2において相違する。

相違点1-1:
本1発明は、シラスバルーンの中空内部にも石けんが形成されるのに対し、甲1発明の半固形洗顔石けんでは、シラスマイクロバルーンの内部に石けんが形成されているかどうか不明な点。

相違点1-2:
石けんの形成について、本1発明では、「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬して、中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、その後、アルカリ溶液に脂肪酸を添加することにより、前記シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成する」ものであって、「シラスバルーン」が浸漬される対象が「界面活性剤を含有するアルカリ溶液」と特定され、しかも、該浸漬と、「アルカリ溶液に脂肪酸を添加すること」の順序が規定されているのに対し、甲1発明の「半固形洗顔石けん」は、どのように形成されるのかは不明な点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。
甲1には、甲1発明において、更に、シラスマイクロバルーンの添加方法について検討することの技術的示唆がなされているといえるところ、甲1には、石けんの形成における「界面活性剤を含有するアルカリ溶液」及び「脂肪酸」に関する記載はなく、シラスマイクロバルーンと石けんの形成工程とに関連する記載は見出すことができない。
また、甲1と同様に、甲2にも、セラミック造粒体と石けんの形成工程とに関連した記載は見出すことができない。
そして、甲3の請求項1には「アルカリ物質に脂肪酸を添加して石けんを生成せしめる工程」についての記載があり、同段落0010には「まず造粒機の中に所定の配合割合のアルカリ物質と各種の添加剤を入れ、…つぎに…脂肪酸を噴霧しながら添加し、中和により石けんを生成させながら造粒を完了させる」ことについての記載があり、
甲4の段落0015には「アルカリ性物質を溶解しておいた溶液の中に脂肪酸…を添加して…ケン化を行う」との記載があり、
甲5の段落0013には「本発明の脂肪酸石鹸系洗顔クリームは、…アルカリ剤…を加熱し溶解した水相に、…脂肪酸等を添加し、中和することにより得ることができる」との記載があるが、
甲3?5に記載されたものは「シラスバルーン」の「中空内部にアルカリ溶液を浸透」させるものではなく、甲3?5に、「アルカリ溶液に脂肪酸を添加して石けんを形成する工程」(以下、「甲3?5の工程」という。)が記載されているとしても、「甲3?5の工程」は、「シラスマイクロバルーン」といった中空体との関連を含むものではない。
そうすると、仮に、「甲3?5の工程」を甲1発明に適用することが可能だとしても、甲1発明において、「シラスマイクロバルーン」の浸漬は、「アルカリ溶液」、「脂肪酸」、又は、「アルカリ溶液に脂肪酸を添加したもの」のいずれに対しても行うことが想定され得るものであり、甲3?5の記載を参照しても、甲1発明において、「アルカリ溶液」及び「脂肪酸」に対する「シラスバルーン」を浸漬する対象やその順序は、不明というほかない。
これに対し、本件明細書段落0032?0033には、「アルカリ火山灰溶液を調製した際に、シラスバルーン表面のクラック(割れ目)や孔からアルカリ溶液が内部に侵入し、シラスバルーン内部はアルカリ溶液で満たされることとなる。
この際、アルカリ溶液には、界面活性剤を添加しているため、アルカリ溶液の表面張力が弱められて、シラスバルーン表面の微細なクラックからシラスバルーン内部へ、アルカリ溶液を容易に浸入させることができる。」(下線は当審が付与した。)と記載されるように、本1発明は、「シラスマイクロバルーン」の添加が、「脂肪酸」に対して行われた場合や、「アルカリ溶液に脂肪酸を添加し」たものに対して行われた場合と比較して、「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬」することで、「中空内部にも石けんを形成する」ことができるのであるから、仮に、「甲3?5の工程」を甲1発明に適用することが可能だとしても、相違点1-2に係る「中空内部にも石けんを形成する」の点も容易に想到できるとはいえない。
そして、本1発明は、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えることで、「シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成することができるため、微粒火山灰の中空内部に内包された石けんを形成することができ、火山灰を含有しながらも、皮膚に対して刺激が少なく、しかも、徐放性を有し、高い洗浄効果を備えながらも、良好な泡持ちを有するスクラブ石けんを製造することができる」という、甲1発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。
このため、甲1発明に、甲2?3に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術を組み合わせたとしても、上記相違点1-2についての構成を容易に想到できるとはいえない。

したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本1発明が、甲1発明、甲2及び甲3記載の発明、並びに周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5)に基づいて当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「本件特許発明の発明特定事項である『シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に添加する』ことは、甲1の『セッケンの仕上げや使用感の向上に、界面活性剤の添加、シラスマイクロバルーンの混合量や添加方法が影響する』との技術的示唆により、シラスバルーンの性質に基いてなされたに過ぎず、当業者が容易に想到し得るものである。」(審判請求書36頁14?19行)と主張している。
しかしながら、本1発明のように、「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に添加する」ことによって、そうでない場合と比較して、「セッケンの仕上げや使用感の向上」が得られるかどうかは、甲1の記載からは不明であり、甲2?5の記載を参照しても、甲1発明において、どのようにすれば、「セッケンの仕上げや使用感の向上」が得られるかは明らかではない。
そうすると、甲1発明及び甲2?5の記載からは、「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に添加する」ことが、当業者に容易に想到し得ることであるとすることはできず、請求人の上記主張は採用することができない。

エ 無効理由1のまとめ
以上のとおり、本1発明は、甲1発明に、甲2、3記載の発明を単に組み合わせたもの、又は、甲1発明に甲2記載の発明及び周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5)を単に組み合わせたもの、であるとすることはできない。
よって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではないから、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1には理由がない。

(4)無効理由2(主引用発明を甲2発明とした進歩性欠如)について
ア 対比
本1発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「セラミック造粒体」は、甲2の請求項7、8、10、13、23及び31(摘記2a)の「粉末集合体のセラミックの球状殻の内部に球状空間を有し、かつその球状空間内に〔A〕液体、…が充填されてなる…セラミックの球状殻が、焼結されたセラミックである…球状のセラミック造粒体の殻が多孔質のものである…セラミック原料…が…シラス…である…造粒体を液体中に浸漬し、内部の球状空間に液体を内蔵してなる…造粒体が…〔10〕界面活性剤…である…造粒体。」との記載、並びに甲2の段落0024(摘記2c)の「界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤…などが挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、セッケン…などが挙げられる。…界面活性剤は、洗浄剤…などに用いられていることから、造粒体も同様な用途が期待できる。」との記載にあるように、具体的には「粉末集合体のセラミックの球状殻の内部に球状空間を有し、かつその球状空間内に液体が充填されてなり、セラミックの球状殻が焼結されたセラミックであり、球状のセラミック造粒体の殻が多孔質のものであり、セラミック原料がシラスであり、造粒体が界面活性剤である造粒体」であるといえるものであって、セラミックの原料が「シラス」であり、セラミック造粒体の殻が「多孔質」であり、セラミックの球状殻が「焼結されたセラミック」であるとともに「内部に球状空間」を有するものであるから、本1発明の「微粒火山灰」を原料とした「中空状のシラスバルーン」に相当するといえる。
また、甲2発明において、「セッケン」の「液体中に浸漬」してその内部の球状空間に「液体を内蔵」することは、石けんを含むセラミック造粒体の製造方法といえるから、甲2発明の「製造方法」は、本1発明の「石けんの製造方法」に相当するといえる。
そして、甲2発明の「界面活性剤」、「セッケン」及び「アルカリ液」は、本1発明の「界面活性剤」、「石けん」及び「アルカリ液」にそれぞれ相当する。
また、甲2発明は、セッケン及びセラミック造粒体を含むから、上述したように、本件明細書の段落0003の記載から、甲2発明の「セラミック造粒体」は、本1発明の「スクラブ」に相当し、甲2発明の「セラミック造粒体の製造方法」は、本1発明の「スクラブ石けんの製造方法」に相当する。
そして、本1発明と甲2発明とは、スクラブの中空内部に石けんを収容する点で共通する。
そうすると、本1発明と甲2発明とは、
「微粒火山灰を原料とした中空状のシラスバルーンにおいて、前記シラスバルーンの中空内部に石けんを収容したスクラブ石けんの製造方法。」である点で一致し、次の相違点2-1、2-2で相違が認められる。

相違点2-1:
中空状のシラスバルーンについて、本1発明は、「膨化処理を施した」ものであるのに対し、甲2発明の「セラミック造粒体」は、「膨化処理を施した」ものかどうかは不明な点。

相違点2-2:
石けんの形成について、本1発明では、「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬して、中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、その後、アルカリ溶液に脂肪酸を添加することにより、前記シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成する」ものであって、「シラスバルーン」が浸漬される対象が「界面活性剤を含有するアルカリ溶液」と特定され、しかも、該浸漬と、「アルカリ溶液に脂肪酸を添加すること」との順序が規定されているのに対し、甲2発明の「セッケン」は、どのように形成されるのかは不明な点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。
上記相違点1-2の検討において述べたように、甲1?5からは、「アルカリ溶液」及び「脂肪酸」に対する「シラスバルーン」の添加時期は、不明というほかない。
また、甲12の第73?74頁には「1992年に平均粒径20μm以下の微粒シラスバルーンを開発した。…1998年には、微粒シラスバルーンを配合した洗顔料が鹿児島県内企業により製品化された」との記載があり、
甲13の請求項1には「粒径40μm?300μmのシラスバルーンを主成分とし、これに溶剤と植物性油と界面活性剤と水を添加して混合し粘性液状にしたことを特徴とするハンドクリーナー。」との記載があり、
甲14の第1頁には「微粒シラス…を…溶融点寸前の高熱(700?800℃)で長時間焼成…すると…純度の高い硅酸粉体となり、…ソフトな肌ざわりの洗剤(8)ができる。」との記載があるものの、いずれも、「アルカリ溶液」及び「脂肪酸」に対する「シラスバルーン」の添加時期を開示するものではない。
そして、上記相違点1-2の検討において述べた理由と同様に、本1発明は、シラスバルーンを、「脂肪酸」などではなく、「界面活性剤を含有するアルカリ溶液」に浸漬することで、「中空内部にも石けんを形成する」ことができるのであるから、「アルカリ溶液」及び「脂肪酸」に対する「シラスバルーン」の添加時期を開示するものではない甲1?5及び12?14によっては、相違点2-2に係る「中空内部にも石けんを形成する」の点を容易に想到できるとはいえない。
そして、本1発明は、上記相違点2-2に係る発明特定事項を備えることで、「シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成することができるため、微粒火山灰の中空内部に内包された石けんを形成することができ、火山灰を含有しながらも、皮膚に対して刺激が少なく、しかも、徐放性を有し、高い洗浄効果を備えながらも、良好な泡持ちを有するスクラブ石けんを製造することができる」という、甲2発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。
このため、甲2発明に、甲3に記載された発明及び本件特許の出願時における周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5、甲12、甲13、甲14)を組み合わせたとしても、上記相違点2-2についての構成を容易に想到できるとはいえない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本1発明が、甲2発明、甲3記載の発明、及び周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5、甲12、甲13、甲14)に基づいて、当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成30年9月26日付けの口頭審理陳述要領書(請求人)の第9頁第18?31行において「(i)甲2には、「セラミック造粒体を界面活性剤、例えばセッケン、アルカリ液の液体中に浸漬し、その内部の球状空間に前記液体を内蔵したセラミック造粒体」が示されています。そして、アルカリ液が内蔵されたセラミック造粒体の内部に、脂肪酸が添加されれば(甲2発明に甲3発明を適用し、または甲2発明に周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5)を適用することにより)、…このセラミック造粒体の内外に、アルカリ溶液と脂肪酸との両者が混在することとなり、鹸化反応により、セラミック造粒体外部に基材石けんを形成すると同時に、セラミック造粒体内部には内包石けんが形成されます。(ii)このように、セラミック造粒体内部の内包石けんは、セラミック造粒体の内外に、アルカリ溶液と脂肪酸との両者が混在する結果として、必然的に(自然現象、化学反応として)起こるものであり、被請求人が主張する「セラミック造粒体の中空内部で鹸化反応に基づく石けんを形成する」点に、創作困難性を見出すことはできません。」と主張している。
しかしながら、甲2発明の「造粒体の内部の球状空間に液体を導入する方法」における「液体」としては、「界面活性剤、例えばセッケン、アルカリ液」のうち、「界面活性剤」、「セッケン」、「アルカリ液」のいずれも想定されるものであり、これらの中から「界面活性剤」と「アルカリ液」を選択し、しかも、「界面活性剤を含有するアルカリ溶液」に特定する動機付けは見当たらない。
なお、甲2の段落0029の「内部の球状空間に充填された液体、例えば…アルカリ液、酸液等のpH調整剤」との記載にある「アルカリ液」が、甲2発明の「造粒体の内部の球状空間に液体を導入する方法」における「液体」であると仮定しても、当該「アルカリ液」は「pH調整剤」として「造粒体の内部の球状空間」に導入がなされているものであるから、当該「pH調整剤」として導入されている「アルカリ液」に、更に「脂肪酸」を添加すべき動機付けは見当たらず、仮に「脂肪酸」を添加したとしても、「石けん」を形成できるとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

エ 無効理由2のまとめ
以上のとおり、本1発明は、甲2発明及び甲3記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たもの、又は、甲2発明及び周知技術(甲1、甲3、甲4、甲5、甲12、甲13、甲14)に基いて、当業者が容易になし得たもの、であるとすることはできない。
よって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではないから、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由2には理由がない。

2 無効理由3、4について
(1)本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、次の記載がある。

摘示A:解決しようとする課題
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】しかしながら、上記従来の火山灰を混入したスクラブ石けんでは、その洗浄性の高さから、皮脂や汚れを素早く皮膚から掻き取って、泡中に溶解することとなるため、起泡性が減衰しやすく、洗浄の際に泡持ちが悪いという問題があった。
【0008】また、火山灰は顕微鏡などで観察すると、比較的鋭利な形状であるため、洗浄時の泡立ちが悪い場合、皮膚表面を細かく傷つけてしまうおそれがあった。
【0009】本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、高い洗浄効果を有しながらも、泡持ちが良く、しかも、皮膚に対して刺激が少ない固形状または半固形状のスクラブ石けんの製造方法及びスクラブ石けんを提供する。」

摘示B:発明の効果
「【発明の効果】
【0013】請求項1に記載のスクラブ石けんの製造方法では、微粒火山灰に膨化処理を施した中空状のシラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬して、中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、その後、アルカリ溶液に脂肪酸を添加することにより、前記シラスバルーンの外部において石けんを形成するとともに、中空内部にも石けんを形成することとしたため、微粒火山灰の中空内部に内包された石けんを形成することができ、火山灰を含有しながらも、皮膚に対して刺激が少なく、しかも、徐放性を有し、高い洗浄効果を備えながらも、良好な泡持ちを有するスクラブ石けんを製造することができる。」

摘示C:界面活性剤を有するアルカリ溶液の利点
「【0032】この方法によれば、アルカリ火山灰溶液を調製した際に、シラスバルーン表面のクラック(割れ目)や孔からアルカリ溶液が内部に浸入し、シラスバルーン内部はアルカリ溶液で満たされることとなる。
【0033】この際、アルカリ溶液には、界面活性剤を添加しているため、アルカリ溶液の表面張力が弱められて、シラスバルーン表面の微細なクラックからシラスバルーンの内部へ、アルカリ溶液を容易に浸入させることができる。」

摘示D:アルカリ溶液と脂肪酸溶液の添加順序の利点
「【0040】例えば仮に、脂肪酸溶液とシラスバルーンとを混合し、次いで、アルカリ溶液を添加した場合、シラスバルーンの内部にある脂肪酸溶液と、シラスバルーン内に浸入してきたアルカリ溶液とが、シラスバルーンの表面で石けんを形成してしまい、アルカリ溶液の更なる浸入を妨げるため、シラスバルーン中心部の脂肪酸溶液が未反応となりやすく、内包石けんが形成されにくいため好ましくない。
【0041】一方、本願発明の如く、アルカリ溶液とシラスバルーンとを混合してアルカリ火山灰溶液を調製し、次いで、脂肪酸溶液を徐々に添加した場合は、シラスバルーンの表面で石けんを形成しても、反応当初は高濃度のアルカリ溶液が脂肪酸溶液に比して多量にあるため、速やかに石けん分子が分散することとなり、シラスバルーン内部に脂肪酸溶液が入るのを妨げることがない。」

摘示E:シラスバルーン特有の多孔質が活かされない事例
「【0043】また、固形状または半固形状の基材石けんに、シラスバルーンを混入させただけでは、単にシラスバルーンの表面に基材石けんが付着するのみであり、粘度の高い基材石けんがシラスバルーンの中空内部に入って内包石けんとなることはない。
【0044】このようなスクラブ石けんにあっては、泡持ちが悪く、シラスバルーン特有の多孔質が生かされているとは言い難い。」

摘示F:内包石けんの徐放による泡持ちの向上
「【0047】一方、本発明に係るスクラブ石けんの製造方法によれば、シラスバルーン内に固形または半固形の石けんを内包させた内包石けんを形成することができるため、石けん成分をシラスバルーン内から徐放することができ、確実に泡持ちを向上させることができる。」

摘示G:アルカリ溶液の浸透工程(ステップS4)
「【0049】図1は、本実施形態に係るスクラブ石けんの処方を示した図であり、図2は、本実施形態に係るスクラブ石けんの製造方法を示したフローである。…
【0061】そこで、調合タンク内で撹拌を行うためには、まず、プラネタリーミキサー等で液中及び液面を穏やかに撹拌(例えば、20?40rpm程度)し、次いで、ディスパー等により、強力な渦流を発生させて液中に巻き込むように撹拌混合(例えば、800?1200rpm程度)を行って浸透工程を実施する(ステップS4)。
【0062】浸透工程において、このような撹拌をおこなうことで、シラスバルーンや白色顔料が粉塵として宙に舞うことを防止することができる。
【0063】また、界面活性剤を含有するアルカリ溶液にシラスバルーンを添加した当初の時点で、できるだけ空気を抱き込ませずに撹拌を行うことができるため、シラスバルーンの中空内部まで、効率よく界面活性剤を含有するアルカリ溶液を浸透させることができる。
【0064】仮に、界面活性剤を含有するアルカリ溶液にシラスバルーンを添加した当初より、強力な撹拌を行うと、シラスバルーンは空気を抱き込んで溶液中に懸濁されることとなるため、シラスバルーンの中空内部に効率よく溶液を浸透させることが困難となる。」

摘示H:図2(スクラブ石けんの製造方法を示すフロー)




(2)無効理由3(明確性要件及びサポート要件)について
ア 請求人の主張
無効理由3について、請求人は、次の(ア)?(エ)について主張している。
(ア)無効理由3a
本件特許の請求項1の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」との記載に関し、甲2(第13頁右欄第30?33行)に「造粒体は…無孔質体として形成する」と記載されているように、シラスを加熱により変性させたものは無孔質体として形成され、シラスバルーンは無孔質体であると考えられるのに、本件特許明細書の段落0044では「シラスバルーン特有の多孔質」と記載され、多孔質のシラスバルーンを用いることが前提となっている。このように、当該「シラスバルーン」が「無孔質」を意味するのか「多孔質」を意味するのか不明確であり、特許法第36条第6項第2号に違反する(審判請求書の第51頁第8行?第52頁第7行)。
また、甲10の第154頁左欄第9?12行に「シラスバルーンには…孔を全く有しないものが混在している」と記載されているように、シラスバルーンには多孔質でないものが含まれるため、同項第1号に違反する(口頭審理陳述要領書第12頁第27?29行)。

(イ)無効理由3b
本件特許の請求項1の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」との記載に関し、甲6の第102頁左欄第10?18行に「シラスバルーンの弱点は…セメントなどと混合されるときに壊れやすい.…さらに微細化することができれば,強度も上がり,…最近開発されている20μm以下のシラス微粒中空ガラスについて紹介する」と記載されているように、シラスバルーンは、平均粒径が約30μm以上である場合には、破壊されやすいという性質があるのに、当該「シラスバルーン」の「平均粒径」が特定されず、拡張ないし一般化したシラスバルーンが対象とされている点において、明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているから、特許法第36条第6項第1号に違反する(審判請求書の第52頁第23行?第53頁第22行)。

(ウ)無効理由3c
本件特許の請求項1の「中空内部にアルカリ溶液を浸透させ」との記載に関し、本件特許明細書の段落0033の「浸入」は、請求項1の「浸透」と異なる文言を用いており、それらが意味しているとことは、異なるものと思料される。一方、シラスバルーンは無孔質体(多孔質体ではない)と考えられるから、アルカリ溶液がシラスバルーンの殻をしみとおることはなく、どのように「浸透」するのか不明確であり、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に違反する(審判請求書の第55頁第17行?第56頁第2行)。

(エ)無効理由3d
本件特許の請求項1の「アルカリ溶液に脂肪酸を添加することにより」との記載に関し、本件特許明細書の段落0041に「脂肪酸を徐々に添加した場合は…シラスバルーン内部に十分な量の内包石けんを形成することができる。」と記載され、当該「脂肪酸を添加する」は「脂肪酸溶液を徐々に添加する」ことを特定する必要があるから、特許法第36条第6項第1号に違反する。また、当該「脂肪酸を添加する」は、どのように添加するか、不明確であるため、同項第2号に違反する(平成30年10月22日付け上申書の第2頁第8行?第3頁第23行)。

イ 当審の判断
(ア)本1発明の課題と解決手段について
本件特許明細書の段落0007?0009(摘示A)の「従来の火山灰を混入したスクラブ石けんでは、その洗浄性の高さから、皮脂や汚れを素早く皮膚から掻き取って、泡中に溶解することとなるため、起泡性が減衰しやすく、洗浄の際に泡持ちが悪いという問題があった。…また、火山灰は顕微鏡などで観察すると、比較的鋭利な形状であるため、洗浄時の泡立ちが悪い場合、皮膚表面を細かく傷つけてしまうおそれがあった。…本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、高い洗浄効果を有しながらも、泡持ちが良く、しかも、皮膚に対して刺激が少ない固形状または半固形状のスクラブ石けんの製造方法及びスクラブ石けんを提供する。」との記載からみて、本1発明が解決しようとする課題は「高い洗浄効果を有しながらも、泡持ちが良く、しかも、皮膚に対して刺激が少ない固形状または半固形状のスクラブ石けんの製造方法の提供」にあるものと認められる。
そして、本件特許明細書の段落0033(摘示C)には「アルカリ溶液には、界面活性剤を添加しているため、アルカリ溶液の表面張力が弱められて、シラスバルーン表面の微細なクラックからシラスバルーンの内部へ、アルカリ溶液を容易に浸入させることができる。」と記載されていて、本1発明の「シラスバルーンを、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に浸漬させ」るという発明特定事項に関する作用機序が理解できる。
また、同段落0041(摘示D)には「アルカリ溶液とシラスバルーンとを混合し…次いで、脂肪酸溶液を徐々に添加した場合は、…反応当初は高濃度のアルカリ溶液が脂肪酸溶液に比して多量にあるため、速やかに石けん分子が分散することとなり、シラスバルーン内部に脂肪酸溶液が入るのを妨げることがない。」と記載されていて、本1発明の「中空内部にアルカリ溶液を浸透させ、その後、アルカリ溶液に脂肪酸を添加する」という発明特定事項に関する作用機序が理解できる。
そして、同段落0047(摘示F)には「本発明に係るスクラブ石けんの製造方法によれば、シラスバルーン内に固形または半固形の石けんを内包させた内包石けんを形成することができるため、石けん成分をシラスバルーン内から徐放することができ、確実に泡持ちを向上させることができる。」と記載されていて、本1発明の「シラスバルーンの…中空内部にも石けんを形成する」という発明特定事項に関する作用機序が理解できる。
また、同段落0008(摘示A)の「火山灰は顕微鏡などで観察すると、比較的鋭利な形状であるため、洗浄時の泡立ちが悪い場合、皮膚表面を細かく傷つけてしまうおそれがあった。」という問題点は、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」が「比較的鋭利な形状」になく、これにより皮膚に対する悪影響が少なくできると直ちに認識できるので、本1発明が上記課題のうちの「皮膚に対して刺激が少ない」という課題の解決に寄与するものといえる。
そして、同段落0007(摘示A)の「起泡性が減衰しやすく、洗浄の際に泡持ちが悪い」という問題点は、本1発明の「中空内部にも石けんを形成する」ことにより石けん成分を徐放することができるようになり、泡持ちが向上すると直ちに認識できるので、本1発明が上記課題のうちの「高い洗浄効果を有しながらも、泡持ちが良く」という課題の解決に寄与するものといえる。
してみると、本1発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(イ)無効理由3aについて
無効理由3aは「シラスバルーンは無孔質体であると考えられる」ということを前提にしたものであるが、甲10の第154頁左欄第9?12行の「シラスバルーンには,水の通る孔を有するもの,水は通らないが空気の通る孔を有するもの,及び孔を全く有しないものが混在している」との記載にあるように、通常のシラスバルーンは「多孔質」のものと「無孔質」のものとが混在しているものとして認識され、無孔質体のみであるとは解せない。
また、甲2の「造粒体は…溶融焼結するなどして、その一部あるいは全部をガラス質にまで変性させ、無孔質体として形成することも可能である」との記載は、造粒体を「溶融焼結」すれば、その一部又は全部を「無孔質体」として形成することも「可能」であるという可能性を述べているにすぎないので、甲2を根拠に、本1発明の「膨化処理」を施したシラスバルーンの全部が、無孔質体のみであると解することはできない。
さらに、請求人が示した主張及び立証を精査しても、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」について、これが「無孔質体」のみからなるといえる根拠を見出すことはできず、そのような技術常識があるということもできない。
してみると、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」について、これを「多孔質」のものとして特定せずとも、水や空気が通る「孔」が存在することは明らかであって、本件特許明細書の段落0032(摘示C)の「シラスバルーン表面のクラック(割れ目)や孔からアルカリ溶液が内部に浸入し、シラスバルーン内部はアルカリ溶液で満たされる」という作用機序を奏し得ることは明らかである。
そして、上記(ア)に示したように、本件特許の請求項1に記載された発明特定事項を具備すれば、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」を「多孔質」のものとして特定せずとも、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるといえるから、本件特許の請求項1の記載がサポート要件を満たしていないとはいえない。
また、通常のシラスバルーンは「多孔質」のものと「無孔質」のものが混在しているものとして普通に認識されており、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」との記載を「多孔質」のものに限定しなければ、その記載が不明確になるとはいえないので、本件特許の請求項1の記載が明確性要件を満たしていないとはいえない。
したがって、上記無効理由3aには理由がない。

(ウ)無効理由3bについて
無効理由3bは「平均粒径が約30μm以上である場合には、破壊されやすいという性質がある」ということに依拠したものであるが、本1発明は、粒径が大きく、破壊され、中空状でないシラスバルーンを用いるものとして特定されるものではなく、シラスバルーンの粒径が大きいと破壊されやすいことがあるとしても、本1発明は「中空状のシラスバルーン」を発明特定事項としたものであって、シラスバルーンの全部が中空状でなくなるほどにまで破壊される場合を含むものではない。
そして、シラスバルーンの平均粒径が約30μm以上であっても、その「中空状のシラスバルーン」としての形態が保持されていれば、上記課題を解決できることは明らかであって、上記(ア)に示したように、本件特許の請求項1に記載された発明特定事項を具備すれば、本1発明の「膨化処理を施した中空状のシラスバルーン」の「平均粒径」を特定せずとも、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるといえるから、本件特許の請求項1の記載がサポート要件を満たしていないとはいえない。
したがって、上記無効理由3bには理由がない。

(エ)無効理由3cについて
「特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」とされているところ〔平成21年(行ケ)第10434号、平成22年8月31日、知財高裁判決言渡〕、本1発明の「浸透」という用語と、本件特許明細書の「浸入」という用語は、両者とも「内部へ入る」ことを意味することが明らかであって、明細書において異なる用語が使用されているとしても、そのことが「第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である」とまではいえない。
そして、そもそも本件特許の請求項1に記載された「中空内部にアルカリ溶液を浸透させ」との記載それ自体は明確であるから、本件特許の請求項1の記載が明確性要件を満たしていないとはいえない。
また、例えば、甲10の第38頁第9?12行の「シラスバルーンには,水の通る孔を有するもの…が混在している」との記載からも明らかなように、請求人の「シラスバルーンは無孔質体(多孔質体ではない)と考えられる」との主張は前提において誤りがあるので、どのように「浸透」するのか不明確であるとはいえない。
したがって、上記無効理由3cには理由がない。

(オ)無効理由3dについて
本件特許明細書の段落0040(摘示D)の「脂肪酸溶液とシラスバルーンとを混合し、次いで、アルカリ溶液を添加した場合、…シラスバルーン中心部の脂肪酸溶液が未反応となりやすく、内包石けんが形成されにくいため好ましくない。」との記載にあるように、脂肪酸溶液の混合後にアルカリ溶液を添加した場合には内包石けんが形成されにくくなるのに対して、同段落0041(摘示D)の「アルカリ溶液とシラスバルーンとを混合してアルカリ火山灰溶液を調製し、次いで、脂肪酸溶液を徐々に添加した場合は、…速やかに石けん分子が分散することとなり、シラスバルーン内部に脂肪酸溶液が入るのを妨げることがない。」との記載にあるように、アルカリ溶液の混合後に脂肪酸溶液を添加した場合には内包石けんが効果的に形成されるという作用機序が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。
してみると、この作用機序についての記載に接した当業者にしてみれば、本1発明の「高い洗浄効果を有しながらも、泡持ちが良く、しかも、皮膚に対して刺激が少ない固形状または半固形状のスクラブ石けんの製造方法の提供」という課題を解決するためには、アルカリ溶液と脂肪酸溶液の添加順序を特定することが特に重要であると認識され、その添加の程度は、当業者が適宜設定する程度の技術的事項にすぎない。
また、本件特許の請求項1に記載された「脂肪酸を添加する」という発明特定事項の意味の解釈において、当該「添加」の意味する範囲に「中空内部に石けんを形成できない条件での添加」までもが包含されるものとして解釈することが、当業者の技術常識からみて合理的かつ常識的であるとはいえず、例えば「一気に注ぐ場合など」の添加のうち、本1発明の「中空内部にも石けんを形成する」という発明特定事項を満たさない程度のものが、本1発明の範囲に含まれると解することができない。
さらに、上記(ア)に示したように、本件特許の請求項1に記載された発明特定事項を具備すれば、本1発明の「脂肪酸」の「添加」の程度を特定せずとも、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるといえるから、本件特許の請求項1の記載がサポート要件を満たしていないとはいえない。
そして、そもそも本件特許の請求項1に記載された「脂肪酸を添加する」との記載それ自体は明確であって、どのように添加するかは、当業者が適宜設定する程度の技術的事項にすぎないから、本件特許の請求項1の記載が明確性要件を満たしていないとはいえない。
したがって、上記無効理由3dには理由がない。

ウ 無効理由3のまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえない。
また、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとはいえないから、特許法第123条第1項第4号に該当せず、理由3には理由がない。

(3)無効理由4について
ア 請求人の主張
無効理由4について、請求人は、次の(ア)及び(イ)について主張している。

(ア)無効理由4a
甲19に示すように、審判請求人が本件特許明細書に基づいて実験したところ、シラスバルーンの中空内部に石けんを形成することができなかったから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載たものでなく、本1発明についての特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(審判請求書の第4頁第5?11行及び第58頁第2?7行)。

(イ)無効理由4b
本件特許の請求項1の記載は、その発明を実施する上で、必要不可欠な条件、方法等が発明特定事項として記載されてなく、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない(審判請求書の第58頁第8?13行)。

イ 当審の判断
(ア)無効理由4aについて
甲19(株式会社UBE科学分析センター分析結果報告書)の試験は、その参考図2に示される次の工程を経て試料を製造したものである。
○アラノンALE(界面活性剤)、精製水等を乳化釜に入れる(界面活性剤・他水溶液調整工程)
○界面活性剤・他水溶液調整工程の後、ウィンライト(シラスバルーン)を乳化釜にいれ、よく混ざるまで攪拌する(シラスバルーン添加工程)
○シラスバルーン添加工程の後、水酸化カリウムを投入後、85℃まで温度上昇する(アルカリ剤添加工程)
○アルカリ剤添加工程の後、ルナック、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸の脂肪酸を溶解槽で85℃溶解後、投入し、85?90℃・真空で、20分ケン化攪拌する(脂肪酸添加工程)
○脂肪酸添加工程の後、ダイヤノールCDEを20分添加攪拌し、ロイヤルゼリーエキス等を5分添加攪拌する(増泡剤・美容成分・防腐剤添加工程)

すなわち、本件特許明細書の実施例の方法は、その段落0061(摘示G)の「まず、プラネタリーミキサー等で液中及び液面を穏やかに撹拌(例えば、20?40rpm程度)し、次いで、ディスパー等により、強力な渦流を発生させて液中に巻き込むように撹拌混合(例えば、800?1200rpm程度)を行って浸透工程を実施する(ステップS4)」との記載にあるとおりの「浸透工程」を実施することにより、同段落0063(摘示G)の「シラスバルーンの中空内部まで、効率よく界面活性剤を含有するアルカリ溶液を浸透」させているのに対して、甲19の試験は、その「アルカリ剤添加工程」の段階において、本件特許明細書の「ステップS4」の「浸透工程」に相当する工程(中空内部にアルカリ溶液を浸透させる工程)が実施されていないという点において、本1発明の実施例の製造方法を忠実に再現した実験になっていない。
してみると、甲19の試験結果は、本1発明の「実施可能要件の適否」の判断に採用するまでもないものである。
したがって、上記無効理由4aには理由がない。

(イ)無効理由4bについて
本件特許の請求項1の記載に、その発明を実施する上で、必要不可欠な条件、方法等が発明特定事項として記載されているか否かは、特許を受けようとする発明が明確であるか否かの「明確性要件の適否」に関係がない。
したがって、上記無効理由4bには理由がない。

イ 無効理由4のまとめ
以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許の請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に適合しないとはいえない。
また、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていないとはいえないから、特許法第123条第1項第4号に該当せず、理由4には理由がない。

第6 むすび
以上検討したように、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-15 
結審通知日 2019-03-20 
審決日 2019-04-02 
出願番号 特願2007-22488(P2007-22488)
審決分類 P 1 123・ 536- Y (C11D)
P 1 123・ 537- Y (C11D)
P 1 123・ 121- Y (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中根 知大藤原 浩子  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 木村 敏康
佐々木 秀次
登録日 2010-03-12 
登録番号 特許第4473278号(P4473278)
発明の名称 スクラブ石けんの製造方法  
代理人 澤田 優子  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 佐藤 史肇  
代理人 渡邊 敏  
代理人 市川 泰央  
代理人 木下 茂  
代理人 山上 祥吾  
代理人 市川 泰央  
代理人 渡邊 敏  
代理人 久米川 正光  
代理人 山上 祥吾  
代理人 松尾 憲一郎  
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