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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1366744
審判番号 不服2019-13528  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-09 
確定日 2020-10-01 
事件の表示 特願2015-185592「電流センサ及び分電盤」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日出願公開、特開2017- 58332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月18日にされた特許出願である。
平成31年4月12日付けで拒絶理由が通知(発送日:平成31年4月23日)された後、令和元年6月24日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がされ、同年7月9日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年7月16日に査定の謄本が送達された。
これに対して、令和元年10月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)がされた。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものである。本件補正前(令和元年6月24日付けの補正の後をいう。以下同じ。)及び本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正前
「【請求項1】
複数の測定部と演算部とを備え、
前記複数の測定部の各々は、分電盤内部に配設された複数の電路に流れる電流によって発生する磁束密度を測定しており、
前記演算部は、前記複数の測定部の測定結果と、前記複数の電路の各々に対する前記複数の測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記複数の電路の各々に流れる電流を求めるように構成され、
前記複数の電路が、単相3線式配線及び三相3線式配線のいずれかである3つの電路である場合に、前記複数の測定部の数が2つであり、
前記演算部は、2つの前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記2つの前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるように構成された
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記複数の電路が同一の直線上に並ぶように配置されており、
前記複数の測定部の各々は、前記複数の電路と同一の直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記複数の測定部のうち少なくとも1つの測定部は2つの磁気センサを有し、
前記演算部は、前記少なくとも1つの測定部の測定結果を、前記2つの磁気センサの測定結果から求めるように構成された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の電流センサと、前記電流センサが取り付けられるキャビネットとを備えたことを特徴とする分電盤。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
複数の測定部と演算部とを備え、
前記複数の測定部の各々は、分電盤内部に配設された複数の電路に流れる電流によって発生する磁束密度を測定しており、
前記演算部は、前記複数の測定部の測定結果と、前記複数の電路の各々に対する前記複数の測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記複数の電路の各々に流れる電流を求めるように構成され、
前記複数の電路が、単相3線式配線及び三相3線式配線のいずれかである3つの電路である場合に、前記複数の測定部の数が2つであり、
前記3つの電路の各々に対する2つの前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように、2つの前記測定部は配置されており、
前記演算部は、2つの前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記2つの前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるように構成された
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記複数の電路が同一の直線上に並ぶように配置されており、
前記複数の測定部の各々は、前記複数の電路と同一の直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
複数の測定部と演算部とを備え、
前記複数の測定部の各々は、分電盤内部に配設された複数の電路に流れる電流によって発生する磁束密度を測定しており、
前記演算部は、前記複数の測定部の測定結果と、前記複数の電路の各々に対する前記複数の測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記複数の電路の各々に流れる電流を求めるように構成され、
前記複数の電路が、単相3線式配線及び三相3線式配線のいずれかである3つの電路である場合に、前記複数の測定部の数が2つであり、
前記演算部は、2つの前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記2つの前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるように構成され、
前記複数の測定部のうち少なくとも1つの測定部は2つの磁気センサを有し、
前記演算部は、前記少なくとも1つの測定部の測定結果を、前記2つの磁気センサの測定結果から求めるように構成された
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の電流センサと、前記電流センサが取り付けられるキャビネットとを備えたことを特徴とする分電盤。」

2 本件補正の目的
本件補正における特許請求の範囲についての補正のうち、請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に記載した事項である「測定部」について、「前記3つの電路の各々に対する2つの前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように、2つの前記測定部は配置されており」との記載を追加して、その配置を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
次に示す引用文献1及び引用文献2は、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であるところ、その出願公開日はいずれも本願の出願日より前である。

引用文献1:特開2005-207791号公報
引用文献2:特開2008-058035号公報

(3)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の強さを検出する手段を用いて、複数の被測定電流導体のそれぞれに流れる電流の大きさを測定する電流測定装置および電流測定方法に関するものである。
また、本発明は、3相交流の各電源ラインに流れる3相交流電流の大きさをそれぞれ測定できる電流測定装置に関するものである。
さらに、本発明は、3相インバータの各相に流れる電流の大きさを測定できる電流測定装置に関するものである。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の電流測定装置の第1実施形態の構成について、図1および図2を参照して説明する。
この第1実施形態に係る電流測定装置は、図1および図2に示すように、3本の被測定電流導体21A,21B,21Cと、磁気検出手段である4個の磁気検出部22A,22B,22C,22Dと、電流算出手段である検出信号処理部23と、を備えている。
【0019】
被測定電流導体21A?21Cは、それぞれ横断面形状が円形で全体が直線状の導体からなり、測定対象の電流がそれぞれ流れるようになっている。その各被測定電流導体21A?21Cは、同一平面内(同一平面上)において、長さ方向が互いに平行になるように配置され、かつ、その配置間隔は所定間隔(この例では、2r)からなる。
磁気検出部22A?22Dは、被測定電流導体21A?21Cにそれぞれ電流が流れることによって各所定位置に生じる磁界の強さ(大きさ)をそれぞれ検出し、この検出強度に応じた検出信号を出力するものである。この磁気検出部22A?22Dの具体例については後述する。
【0020】
この磁気検出部22A?22Dと被測定電流導体21A?21Cとは、図1および図2に示すように、同一平面内において、同一の距離rをおいて、交互に配置されている。
すなわち、磁気検出部22Aは、被測定電流導体21Aの長手方向から直交する方向に、被測定電流導体21Aから距離rだけ離れた位置に配置されている。また、磁気検出部22Bは、被測定電流導体21Aと被測定電流導体21Bとの中間の位置に配置されている。さらに、磁気検出部22Cは、被測定電流導体21Bと被測定電流導体21Cとの中間の位置に配置されている。また、磁気検出部22Dは、被測定電流導体21Cから距離rだけ離れた位置に配置されている。
【0021】
検出信号処理部23は、磁気検出部22A?22Dからの各検出信号に対して、後述のように所定の演算処理を行い、これにより被測定電流導体21A?21Cに流れる各電流の大きさを求めるようになっている。この検出信号処理部23の具体的な構成は図4または図5からなるが、この点については後述する。
ここで、第1実施形態では、被測定電流導体21A,21B,21Cが、第1実施形態を構成するための要件になる場合とならない場合とがある。
【0022】
すなわち、要件となる場合には、測定対象の電流が流れる電流経路の3本の導体(図示せず)が途中で切断され、その各切断部に被測定電流導体21A?21Cが挿入されるとともに、その被測定電流導体21A?21C各両端がその各切断部と電気的に接続され、このような状態で使用されることになる。
一方、その条件とならない場合には、被測定電流導体21A?21Cは、測定対象の電流が流れる電流経路の3本の導体自身となる。従って、この場合には、第1実施形態は、磁気検出部22A?22Dと検出信号処理部23とからなり、これらがその電流経路の一部に組み込まれ、この組み込まれた状態で使用されることになる。
【0023】
なお、以上のような関係は、後述の各実施形態についても同様であり、その各説明は省略する。
次に、このような構成からなる第1実施形態を用いて、本発明の電流測定の原理について説明する。
図3に示すように、直線状の被測定電流導体1に流れる電流によってその電流導体の周囲に発生する磁場は、電流導体を中心として円形になる。そして、電流導体の長さ方向に直交する方向に、電流導体から距離rだけ離れた位置の磁束密度Bは、電流導体に流れる電流をI、真空の透磁率をμ_(0)、円周率をπとすると、ビオサバールの法則から、次の(1)式のようになる。
【0024】
【数1】

【0025】
次に、この(1)式を用いて、図1および図2に示す磁気検出部22A?22Dに生じる各磁束密度B1?B4を求めることにする。
いま、3本の被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる電流をそれぞれI_(1),I_(2),I_(3)とすると、磁気検出部22Aに生じる磁束密度B_(1)は、次の(2)式に示すように、電流I_(1),I_(2),I_(3)によって生じる磁束密度の和で表される。
【0026】
【数2】

【0027】
同様にして、磁気検出部22B,22C,22Dに生じる各磁束密度B_(2),B_(3),B_(4)は、次の(3)式、(4)式、および(5)式のようになる。
【0028】
【数3】

【0029】
【数4】

【0030】
【数5】

【0031】
ここで、(2)式、3)式、4)式、および(5)式を連立方程式として解くことにより、各被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)は、次の(6)式、(7)式、および(8)式のように表すことができる。
【0032】
【数6】

【0033】
【数7】

【0034】
【数8】

【0035】
このように、(6)式、(7)式、および(8)式によれば、被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)は、磁気検出部22A?22Dに生じる各磁束密度B_(1)?B_(4)の大きさの和や差により表されることがわかる。
換言すれば、磁気検出部22A?22Dに生じる各磁束密度B_(1)?B_(4)の大きさがわかれば、被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)の大きさは、その磁束密度B_(1)?B_(4)を演算処理することで求めることができる。
磁気検出部22A?22Dに、例えばホール素子のように印加される磁束密度の大きさに比例する検出信号が得られる磁電変換素子を用いると、ホール素子の検出信号(出力電圧VH)とその印加磁束密度Bとの間には、次の(9)式に示すような関係がある。
【0036】
【数9】

【0037】
ここで、K_(H)はホール素子の材料の物理的な性質や寸法などによって決まる定数、I_(C)はホール素子に流す制御電流である。
したがって、(6)式、(7)式、および(8)式に対して(9)式の関係を適用すれば、(6)式、(7)式、および(8)式は、(10)式、(11)式、および(12)式のように表すことができる。
【0038】
【数10】

【0039】
【数11】

【0040】
【数12】

【0041】
【数13】

【0042】
ここで、V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)は、磁気検出部22A?22Dにホール素子をそれぞれ用いた場合に、その各ホール素子の検出信号電圧(ホール電圧)である。
(10)式、(11)式、および(12)式によれば、磁気検出部22A?22Dのホール素子の各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を、検出信号処理部23で演算処理すれば、被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)の大きさを求めることができる。
【0043】
なお、検出信号処理部23が行う実際の信号処理では、(13)式に示すように、(10)式、(11)式、および(12)式に共通な係数項は、計算する必要がない。したがって、その(13)式に示す共通係数を除いた演算処理を、(10)式、(11)式、および(12)式に対して行えば、検出信号処理部23からは被測定電流I_(1),I_(2),I_(3)に正確に比例した値が得られる。
【0044】
図1に示す検出信号処理部23は、磁気検出部22A?22Dの各検出信号に対して、アナログ演算処理をするようにしても良いし、または、その磁気検出部22A?22Dの各検出信号を、A/Dコンバータなどによりディジタル信号にいったん変換後に、ディジタル論理回路、マイクロプロセッサ、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)などでディジタル演算処理するようにしても良い。
【0045】
次に、図1に示す検出信号処理部23の具体的な構成例について、図4および図5を参照して説明する。
図4は、磁気検出部22A?22Dの磁電変換素子にホール素子を使用し、検出信号処理部23がそのホール素子の検出電圧に対してアナログ信号処理をする場合の構成例である。
この検出信号処理部23Aは、図4に示すように、差動増幅器51A?51Dと、アナログ増幅器52A?52Rと、加算回路53A?53Cと、アナログ増幅器54A?54Cと、を備えている。
差動増幅器51A?51Dは、磁気検出部22A?22Dに使用されるホール素子からの各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を取り込み、その各ホール電圧を所定倍にそれぞれ差動増幅するようになっている。
【0046】
差動増幅器51A?51Dで差動増幅された各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)は、アナログ増幅器52A?52Rによって、(10)式、(11)式、および(12)式の右辺の括弧内に示される係数に応じた倍率(例えば、「5V_(H1)」の場合には、ホール電圧V_(H1)をアナログ増幅器52Aで5倍)で増幅されるようになっている。
すなわち、ホール電圧V_(H1)は、アナログ増幅器52Aで5倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Gで1倍されて加算回路53Aに入力されるようになっている。また、ホール電圧V_(H1)は、アナログ増幅器52Aで5倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Kで1倍されて加算回路53Bに入力されるようになっている。さらに、ホール電圧V_(H1)は、アナログ増幅器52Oで1倍されて、加算回路53Cに入力されるようになっている。
【0047】
ホール電圧VH2は、アナログ増幅器52Bで3倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Hで-1倍されて加算回路53Aに入力されるようになっている。また、ホール電圧VH2は、アナログ増幅器52Bで3倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Eでさらに3倍に増幅され、かつ、アナログ増幅器52Lで1倍されて加算回路53Bに入力されるようになっている。さらに、ホール電圧VH2は、アナログ増幅器52Pで1倍されて加算回路53Cに入力されるようになっている。
【0048】
ホール電圧V_(H3)は、アナログ増幅器52Iで-1倍されて、加算回路53Aに入力されるようになっている。また、ホール電圧V_(H3)は、アナログ増幅器52Cで3倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Fでさらに3倍に増幅され、かつ、アナログ増幅器52Mで-1倍されて加算回路53Bに入力されるようになっている。さらに、ホール電圧V_(H3)は、アナログ増幅器52Cで3倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Qで1倍されて加算回路53Cに入力されるようになっている。
【0049】
ホール電圧V_(H4)は、アナログ増幅器52Jで-1倍されて、加算回路53Aに入力されるようになっている。また、ホール電圧V_(H4)は、アナログ増幅器52Dで5倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Nで-1倍されて加算回路53Bに入力されるようになっている。さらに、ホール電圧V_(H4)は、アナログ増幅器52Dで5倍に増幅されたのち、アナログ増幅器52Rで-1倍されて加算回路53Cに入力されるようになっている。
【0050】
加算回路53Aは、アナログ増幅器52G,52H,52I,52Jの各出力を加算し、その加算信号をアナログ増幅器54Aに出力するようになっている。また、加算回路53Bは、アナログ増幅器52K,52L,52M,52Nの各出力を加算し、その加算信号をアナログ増幅器54Bに出力するようになっている。さらに、加算回路53Cは、アナログ増幅器52O,52P,52Q,52Rの各出力を加算し、その加算信号をアナログ増幅器54Cに出力するようになっている。
【0051】
アナログ増幅器54Aは、加算回路53Aの出力を1/2倍して、これを出力電圧VOUT1として出力するようになっている。また、アナログ増幅器54Bは、加算回路53Bの出力を1/5倍して、これを出力電圧VOUT2として出力するようになっている。
さらに、アナログ増幅器54Cは、加算回路53Cの出力を1/2倍して、これを出力電圧VOUT3として出力するようになっている。
【0052】
ここで、アナログ増幅器54A,54B,54Cの各増幅度「1/2」、「1/5」、「1/2」は、(10)式、(11)式、および(12)式の右辺の括弧外の各係数に、それぞれ対応する。
このような信号処理により、アナログ増幅器54A,54B,54Cから出力される各出力電圧VOUT1,VOUT2,VOUT3は、被測定電流I1,I2,I3に正確に比例した値となる。
【0053】
図5は、磁気検出部22A?22Dの磁電変換素子にホール素子を使用し、検出信号処理部23がそのホール素子の検出電圧に対してディジタル信号処理をする場合の構成例である。
この検出信号処理部23Bは、図5に示すように、差動増幅器51A?51Dと、A/Dコンバータ(アナログ・ディジタル変換器)61A?61Dと、ROM(リード・オンリ・メモリ)62と、マイクロプロセッサ(またはDSP:ディジタル・シグナル・プロセッサ)63と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)64と、D/Aコンバータ(ディジタル・アナログ変換器)65A?65Cと、を備えている。
【0054】
差動増幅器51A?51Dは、磁気検出部22A?22Dに使用されるホール素子からの各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を取り込み、その各ホール電圧を所定倍にそれぞれ差動増幅するようになっている。
A/Dコンバータ61A?61Dは、差動増幅器51A?51Dで差動増幅されたアナログ形態の各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を、例えば10ビットのディジタル信号( ディジタル値) にそれぞれ変換するようになっている。
ROM62は、後述のように、マイクロプロセッサ(またはDSP)63が行う演算処理の手順を示すプログラムコードが格納されている。
【0055】
マイクロプロセッサ(またはDSP)63は、A/Dコンバータ61A?61Dでディジタル値に変換された各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を用いて、(10)式、(11)式、および(12)式の右辺の各演算を行うようになっている。
RAM64は、ROM62に格納されるプログラムコードに従って、マイクロプロセッサ(DSP)63が上記の演算を実行する際に、演算途中の値や演算結果を一時的に格納するために使用される。
マイクロプロセッサ63による演算が終了すると、その各演算結果は、例えば10ビットのディジタル信号(ディジタル値)で、対応するD/Aコンバータ65A?65Cに出力されるようになっている。
【0056】
そこで、D/Aコンバータ65A?65Cは、そのディジタル値からなる各演算結果を、アナログ電圧にそれぞれ変換し、出力電圧VOUT1,VOUT2,VOUT3を出力するようになっている。この結果、D/Aコンバータ65A?65Cから出力される各出力電圧VOUT1,VOUT2,VOUT3は、被測定電流I_(1),I_(2),I_(3)に正確に比例した値となる。
【0057】
以上説明したように、図5に示す検出信号処理部23Bでは、マイクロプロセッサ63からの演算処理結果を、デジタル値からアナログ値に変換するD/Aコンバータ65A,65B,65Cを設けるようにしたが、D/Aコンバータ65A,65B,65Cを省略してデジタル値で出力するようにしても良い。このようにデジタル値で出力すると、この出力されたデジタル値を、マイクロプロセッサなどでさらに演算できる上に、制御などに利用することもでき便宜である。
【0058】
この第1実施形態の説明では、説明を分かりやすくするために、被測定電流導体21A?21Cの形状や配置位置、および磁気検出部22A?22Dの配置位置などについては、上記のような条件を導入した。
しかし、ビオサバールの法則を用いれば、任意の形状の電流導体に流れる電流によって生じる任意の位置における磁束密度を求めることができる。また、被測定電流導体の個数と等しい個数か、あるいはそれよりも多い個数の磁気検出部を設ければ、(2)式?(5)式に示したような測定対象となる電流に関する1次方程式が、被測定電流導体の数以上に得られる。
【0059】
一般に、求めたい変数の数以上の1次方程式からなる連立方程式は、数学的に必ず解くことができる。従って、本発明は、被測定電流導体の形状、配置位置、および磁気検出部22A?22Dの配置位置にかかわらず適用できることは明らかである。
また、第1実施形態では、磁気検出部22A?22Dに使用する磁電変換素子として、ホール素子を使用するようにした。しかし、磁電変換素子として、ホール素子の他に、MR素子(磁気抵抗素子)、MI素子(磁気インピーダンス素子)などが使用できる。さらに、これらの磁電変換素子とIC処理回路とを組み合わせた磁気センサICなど、印加される磁束密度に対して検出信号が一意に定まるものであれば、磁気検出部として使用できる。
【0060】
なお、磁気検出部22A?22Dに使用する磁電変換素子として、ホール素子を使用するのが以下の点で好ましい。すなわち、ホール素子は使用が容易で、印加された磁束密度と検出信号との関係が(9)式のように線形であるため、検出信号処理部23の信号処理が容易になるためである。
ところで、被測定電流導体21A?21Cに流れる各電流を測定するのに必要な磁気検出部の個数は、上記のように被測定電流導体21A?21Cと同数、すなわち3個で可能である。
【0061】
しかし、第1実施形態では、上記のように磁気検出部を4個設けるようにし、これにより、外部磁界Hextによる影響を排除することができるので、その原理について以下に説明する。
上記の説明では、3本の被測定電流導体21A?21Cに流れる電流I_(1),I_(2),I_(3)によって4つの磁気検出部22A?22Dに生じる各磁束密度は、(2)式、(3)式、(4)式、および(5)式で与えられるものとした。しかし、外部磁界Hextが存在する場合には、磁気検出部22A?22Dに生じる各磁束密度は、(14)式、(15)式、(16)式、および(17)式で表現することができる。

(中略)
【0074】
このように、(21)式、(22)式、および(23)式は、上記の(6)式、(7)式、および(8) 式と同一である。従って、図1に示す検出信号処理部23として、図4に示す検出信号処理部23A、および図5に示す検出信号処理部23Bを使用することができる。
以上説明したように、この第1実施形態によれば、被測定電流導体の周囲を囲む磁気コアが不要となるので、複数の被測定電流導体に流れる各電流の大きさを測定する場合に、電流測定装置の小型軽量化を実現できる。
また、この第1実施形態によれば、外部磁界の影響を排除できるので、被測定電流導体に流れる各電流の大きさを正確に測定できる。」

「【0091】
(第5実施形態)
以上説明した第1?第4実施形態では、被測定電流導体に流す被測定電流は、直流電流または交流電流のいずれであっても良い。また、図1、図9、および図12に示す各実施形態は、被測定電流導体が3本であるので、3種類の電流の各大きさを測定することができる。その3種類の電流として、例えば、3相交流の各電源ラインに流れる各相の交流電流、または3相インバータの各相に流れる電流がある。
【0092】
そこで、第5実施形態では、図1の第1実施形態を、その3種類の電流を測定する場合に適用した場合の構成例について説明する。
この場合には、その構成は第1実施形態と基本的に同一であり、以下の点で異なっている。すなわち、3相交流の各電源ラインに流れる各交流電流(相電流)を測定する場合には、図1の被測定電流導体21A?21Cに、被測定電流としてその各交流電流を流すようになっている。
【0093】
また、磁気検出部22A?22Dは、被測定電流導体21A?21Cにそれぞれ交流電流が流れることによって生じる磁界の強さを検出し、その検出に応じた検出信号を出力するようになっている。さらに、検出信号処理部23は、その磁気検出部22A?22Dからの各検出信号に対して所定の演算処理を行い、これにより被測定電流導体21A?21Cに流れる各交流電流の大きさを求めるようになっている。
【0094】
一方、3相インバータの各相に流れる電流を測定する場合には、図1の被測定電流導体21A?21Cに、その各相に流れる電流を流すようになっている。また、磁気検出部22A?22Dは、被測定電流導体21A?21Cにそれぞれ電流が流れることによって生じる磁界の強さを検出し、その検出に応じた検出信号を出力するようになっている。さらに、検出信号処理部23は、その磁気検出部22A?22Dからの各検出信号に対して所定の演算処理を行い、これにより被測定電流導体21A?21Cに流れる3相インバータの各電流の大きさを求めるようになっている。」

「【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば商用の3相交流電流の流れる分電盤や回路ブレーカ、3相の電流で運転される電動機やインバータ制御装置、さらには多数の配線からなる機器内配線など、複数の電流導体に流れる電流を同時に測定する必要のある場合に、好適に利用できる。」

「【0096】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す斜見図である。
【図2】その第1実施形態の正面図である。」

「【図1】



【図2】


(イ)引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電流測定装置であって、(【0018】)
3本の被測定電流導体21A,21B,21Cと、磁気検出手段である4個の磁気検出部22A,22B,22C,22Dと、電流算出手段である検出信号処理部23とを備え、(【0018】)
3本の被測定電流導体21A?21Cは、それぞれ横断面形状が円形で全体が直線状の導体からなり、測定対象の電流がそれぞれ流れるようになっており、各被測定電流導体21?21Cは、同一平面内(同一平面上)において、長さ方向が互いに平行になるように配置され、かつ、その配置間隔は2rであり、(【0019】)
磁気検出部22A?22Dと被測定電流導体21A?21Cとは、同一平面内において、同一の距離rをおいて、交互に配置されており、磁気検出部22Aは、被測定電流導体21Aの長手方向から直交する方向に、被測定電流導体から距離rだけ離れた位置に配置され、磁気検出部22Bは、被測定電流導体21Aと被測定電流導体21Bとの中間の位置に配置され、磁気検出部22Cは、被測定電流導体21Bと被測定電流導体21C との中間の位置に配置され、磁気検出部22Dは、被測定電流導体21Cから距離rだけ離れた位置に配置され、(【0020】)
磁気検出部22A?22Dには、印加される磁束密度の大きさに比例する検出信号が得られる磁電変換素子であるホール素子が用いられ、被測定電流導体21A?21Cにそれぞれ電流が流れることによって各所定位置に生じる磁界の強さ(大きさ)をそれぞれ検出し、この検出強度に応じた検出信号を出力するものであり、(【0019】、【0035】)
検出信号処理部23は、差動増幅器と、A/Dコンバータ(アナログ・ディジタル変換器)と、ROM(リード・オンリ・メモリ)と、マイクロプロセッサ(またはDSP:ディジタル・シグナル・プロセッサ)と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)と、D/Aコンバータ(ディジタル・アナログ変換器)と、を備えており、検出信号処理部は磁気検出部の磁電変換素子であるホール素子の検出電圧に対してディジタル信号処理をし(【0053】)、
マイクロプロセッサ(またはDSP)63は、A/Dコンバータ61A?61Dでディジタル値に変換された各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を用いて、(10)式、(11)式、および(12)式の右辺の各演算を行って、被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)の大きさを求めるようになっており(V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)はそれぞれ磁気検出部22A?22Dにホール素子をそれぞれ用いた場合における各ホール素子の検出信号電圧(ホール電圧)を表す)、(【0038】-【0040】、【0042】、【0055】)

商用の3相交流電流の流れる分電盤に設けられ(【0095】)、3つの被測定電流導体21A?21Cに3相交流が流れる(【0092】)、
電流測定装置。」

イ 引用文献2
(ア)引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。
「【0004】
特許文献1には、等間隔に配置された3 本の導体に流れる各電流を検出するために4個の磁気センサを備える構成が記載されている。4個の磁気センサは、等間隔に配置されている。ここで、磁気センサの個数を測定対象の導体の本数よりも多くすることにより、外部の磁界(すなわち、測定対象の3本の導体に流れる電流以外の要因によって発生する磁界)の影響を相殺している。そして、各磁気センサの出力信号に基づいて所定の演算を行うことにより、各導体を流れる電流が算出される。
【特許文献1】特開2005-207791号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、各磁気センサの特性が均一でない場合、各磁気センサと測定対象の導体との間隔(磁気センサの配置)が均等でない場合、外部磁界が均一でない場合には、電流を正確に測定することができない。また、磁気センサの個数が導体の本数より多くなるという問題もある。さらに、スイッチング電源によって生成される交流を測定する場合には、そのスイッチングに起因するノイズの影響を受けるおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、コアレス電流センサを利用した電流測定装置の測定精度の向上および小型/軽量化を図ることである。」
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電流測定装置は、総和がゼロとなる電流が流れる3本の導体の各導体の電流値を測定することを前提とし、前記3本の導体に対して所定の相対位置に配置される第1および第2のコアレス電流センサと、各導体を介して流れる電流値と各コアレス電流センサの出力信号との間の関係を表す係数を保持する保持手段と、前記3本の導体を介して流れる電流値の総和がゼロであることを利用して、前記第1および第2のコアレス電流センサの出力信号および前記保持手段に保持されている各係数に基づいて、各導体を介して流れる電流値を算出する算出手段、を有する。
【0008】
上記電流測定装置においては、各導体を介して流れる電流値と各コアレス電流センサの出力信号との間の関係が予め得られている。よって、3本の導体を介して流れる電流値の総和がゼロであることを利用すれば、測定対象の導体の数(すなわち、3本)よりも少ない個数(すなわち、2個)のコアレス電流センサで、各導体を介して流れる電流を測定することができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の電流測定装置は、総和がゼロとなる電流が流れる3本の導体の各電流を測定する形態を前提とする。そして、以下では、電源装置からモータに供給される3相交流の各相の電流を測定する実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の電流測定装置の使用例を示す図である。図1において、電源装置1は、3相交流(U相、V相、W相)を生成してモータ4に供給する。ここで、電源装置1は、複数のスイッチング素子を含んで構成されるインバータ回路2、およびインバータ回路2を制御する制御部3を備えるスイッチング電源である。そして、電源装置1とモータ4との間は、3本の導体(5U、5V、5W)により接続されている。
【0016】
電流測定装置10は、コアレス電流センサ11A、11B(第1および第2のコアレス電流センサ) 、および信号処理部12を含んで構成され、導体5 U(第1の導体)、導体5V(第2の導体)、導体5W(第3の導体)を介して流れる電流をそれぞれ測定する。
コアレス電流センサ11A、11Bは、特に限定されるものではないが、例えば、ホール素子を利用して構成され、磁束密度に対応する電圧を出力する。信号処理部12(算出手段)は、例えばマイコンであり、コアレス電流センサ11A、11Bからの出力信号に基づいて導体5U、導体5V、導体5Wを介して流れる電流をそれぞれ算出する。ここで、信号処理部12は、コアレス電流センサ11A、11Bにより得られる電圧信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータを内蔵していてもよい。また、信号処理部12は、電源装置1の動作を制御するマイコンの一部機能として提供されるようにしてもよく、その場合、そのマイコンによって制御部3および信号処理部12が実現されるようにしてもよい。
【0017】
図2は、コアレス電流センサの配置について説明する図である。なお、この実施例において、導体5U、導体5V、導体5Wは、それぞれバスバーであり、互いに平行に等間隔に配置されているものとする。また、各導体5U、5V、5Wを介して流れる電流は、特に限定されるものではないが、例えば、数A?数百Aである。
【0018】
コアレス電流センサ11A、11Bは、それぞれ、導体5U、5V、5Wに対して所定の相対位置に配置される。図2に示す例では、導体5U、5V間にコアレス電流センサ11Aが配置され、導体5V、5W間にコアレス電流センサ11Bが配置されている。ここで、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、例えば、略同一平面内に配置される。この場合、コアレス電流センサ11Aは、導体5U、5Vから等距離に配置されることが好ましく、コアレス電流センサ11Bは、導体5V、5Wから等距離に配置されることが好ましい。ただし、図2に示す配置は一実施例であり、コアレス電流センサ11A、11Bは、感度の低下を考えなければ、互いに同じでない所望の2点に配置することができる。
【0019】
コアレス電流センサ11A、11Bを上述のようにして導体5U、5V、5Wに対して所定の相対位置に配置した後、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、その相対位置を保持するように樹脂等によって固定される。さらに、その樹脂の外側には、外部磁束を遮蔽するためのシールド部材が設けられる。シールド部材は、例えば、鉄板である。
【0020】
図3は、実施形態の電流測定装置による測定方法を説明する図である。以下では、電源装置1からモータ4に向かう方向を「正(+)」とする。
<準備>
実施形態の電流測定装置10は、導体5U、5V、5Wを介して流れる電流を測定する前の準備段階において、その測定に必要な係数を取得し、信号処理部12が備える記憶領域(保持手段)に保持する。ここで、この記憶領域は、不揮発性メモリまたはレジスタ等のハードウェア資源である。なお、準備段階において、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、既に、上述のようにして樹脂等によって固定されているが、導体5U、5V、5Wに電源装置1 およびモータ4 は接続されていない。また、上述したように、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、シールド部材により遮蔽されているので、外部磁界の影響は無視できるものとする。
【0021】
一般に、導体に電流Iが流れたとき、その導体から距離rだけ離れた位置における磁束密度Bは、下式で表される。ここで、μ_(0)は、透磁率である。
【0022】
【数1】

【0023】
また、コアレス電流センサとして、磁束密度Bに比例する電圧Vを出力する磁気センサを使用する場合、磁束は、下式によって電圧に変換される。ここで、Ksは、磁気センサの感度を表す比例定数である。
V = Ks × B
そして、まず、導体5Vおよび導体5Wに流れる電流をゼロに保持した状態で、導体5Uに既知の基準電流I_(u0)を流す。ここで、磁気センサの出力電圧は磁束密度に比例し、その磁束密度は導体を介して流れる電流に比例する。よって、コアレス電流センサ11Aの出力電圧Vua、およびコアレス電流センサ11Bの出力電圧Vubは、それぞれ下式により表される。
Vua= Kua× I_(u0)
Vub= Kub× I_(u0)
ここで、係数Kuaおよび係数Kubは、それぞれ下式により表される。
【0024】
【数2】

【0025】
なお、係数Ksaは、コアレス電流センサ11Aの感度を表す定数であり、係数Ksbは、コアレス電流センサ11Bの感度を表す定数である。また、距離ruaは、導体5Uとコアレス電流センサ11Aとの間の距離を表し、距離rubは、導体5Uとコアレス電流センサ11Bとの間の距離を表す。
【0026】
このように、導体5Uのみに基準電流を流した状態でコアレス電流センサ11A、11Bの出力電圧を検出することにより、2つの係数Kua、Kubが得られる。ここで、これらの係数(Kua、Kub)は、各センサの感度(Ksa、Ksb)および電流の流れている導体と各センサとの間の距離(rua、rub)の影響を含んでいる。したがって、製造ばらつき等によってコアレス電流センサ1 1A、11Bの感度が誤差を持っていたとしても、或いは、導体5Uとコアレス電流センサ11A、11Bとの間の距離が適正距離からずれていたとしても、コアレス電流センサ11A、11Bの出力電圧を実測すれば、導体を介して流れる電流とコアレス電流センサの出力信号との間の関係を表す係数を取得することができる。
【0027】
同様に、導体5Vのみに基準電流Iv0を流した状態で、下式によって表されるコアレス電流センサ11A、11Bの出力電圧を検出する。
Vva = Kva × Iv_(0)
Vvb = Kvb × Iv_(0)
これにより、導体5Vを介して流れる電流とコアレス電流センサ11A、11Bの出力信号との間の関係を表す2つの係数Kva、Kvbが得られる。
【0028】
また、導体5Wのみに基準電流I_(w0)を流した状態で、下式によって表されるコアレス電流センサ11A、11Bの出力電圧を検出する。
Vwa = Kwa ×I_(w0)
Vwb = Kwb ×I_(w0)
これにより、導体5Wを介して流れる電流とコアレス電流センサ11A、11Bの出力信号との間の関係を表す2つの係数Kwa、Kwbが得られる。
【0029】
上述のようにして得られた6個の係数(Kua、Kub、Kva、Kvb、Kwa、Kwb)は、信号処理部12が備える記憶領域に書き込まれる。
<測定>
電源装置1からモータ4へ電力を供給するときに導体5U、5V、5Wを介して流れる電流を測定するためには、信号処理部12は、コアレス電流センサ11A、11Bの出力電圧を読み込む。このとき、コアレス電流センサ11Aは、導体5Uを介して流れる電流Iuに起因して発生する磁束、導体5Vを介して流れる電流Ivに起因して発生する磁束、導体5Wを介して流れる電流Iwに起因して発生する磁束の影響を受ける。したがって、コアレス電流センサ11Aの出力電圧Vaは、下記(1)式により表される。
Va = Kua × Iu +Kva × Iv + Kwa× Iw ・・・( 1 )
同様に、コアレス電流センサ11Bの出力電圧Vbは、下記(2)式により表される。
Vb = Kub × Iu +Kvb × Iv + Kwb× Iw ・・・( 2 )
ここで、係数Kua、Kub、Kva、Kvb、Kwa、Kwbは、準備段階において取得して保持しておいた値が使用される。
【0030】
ところで、電源装置1からモータ4へ向かう方向に流れる電流の総和は、ゼロになる。
すなわち、下記(3)式が成立する。
Iu + Iv +Iw = 0 ・・・( 3 )
したがって、(3)式を利用して(1)式および(2)式から「Iv」を消去すると、下記の(4)式および(5)式が得られる。
Va = (Kua-Kva) × Iu + (Kwa-Kva) × Iw ・・・( 4 )
Vb = (Kub-Kvb) × Iu + ( Kwb-Kvb) × Iw ・・・( 5 )
そして、上記(3)?(5)式より、電流Iuおよび電流Iwが得られる。
【0031】
【数3】

【0032】
さらに、上記(3)の関係を考慮すれば、電流Ivも得られる。
このように、実施形態の電流測定装置10によれば、各導体(5U、5V、5W)を介して流れる電流(Iu 、Iv 、Iw )は、先に取得して保持してある6個の係数(Kua、Kub、Kva、Kvb、Kwa、Kwb)を利用するので、コアレス電流センサ11A、11Bの
出力信号(Va、Vb)に基づいて算出することができる。」

(イ)引用文献2の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「(本審決で引用する引用文献1の)特開2005-207791号公報に記載の電流測定装置は、等間隔に配置された3本の導体に流れる各電流を検出するために4個の磁気センサを備えている。外部の磁界(すなわち、測定対象の3本の導体に流れる電流以外の要因によって発生する磁界)の影響を相殺しているが、磁気センサの個数が導体の本数より多くなるという問題もある。」(【0004】、【特許文献1】、【0005】)
「電流測定装置は、総和がゼロとなる電流が流れる3本の導体の各導体の電流値を測定することを前提とする。3本の導体を介して流れる電流値の総和がゼロであることを利用すれば、測定対象の導体の数(すなわち、3本)よりも少ない個数(すなわち、2個)のコアレス電流センサで、各導体を介して流れる電流を測定することができる。」(【0007】、【0008】)
「外部磁束を遮蔽するためのシールド部材が設けられ、総和がゼロとなる電流が流れる3本の導体の各導体の電流値を測定する電流測定装置であって、(【0007】、【0019】)
ホール素子を利用して構成され、磁束密度に対応する電圧を出力する2個のコアレス電流センサ11A、11B(第1および第2のコアレス電流センサ)、および信号処理部12を含んで構成され、(【0016】)
3本の導体である、導体5U、導体5V、導体5Wは、それぞれバスバーであり、互いに平行に等間隔に配置されており(【0017】)、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、略同一平面内に配置され、コアレス電流センサ11Aは、導体5U、5Vから等距離に配置され、コアレス電流センサ11Bは、導体5V、5Wから等距離に配置され(【0018】)、
信号処理部12(算出手段) は、例えばマイコンであり、コアレス電流センサ11A、11Bからの出力信号に基づいて導体5U、導体5V、導体5Wを介して流れる電流をそれぞれ算出する、(【0016】)
電流測定装置。」


(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「磁気検出手段である4個の磁気検出部22A,22B,22C,22D」は、本件補正発明の「複数の測定部」に相当する。
そして、引用発明の「差動増幅器と、A/Dコンバータ(アナログ・ディジタル変換器)と、ROM(リード・オンリ・メモリ)と、マイクロプロセッサ(またはDSP:ディジタル・シグナル・プロセッサ)と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)と、D/Aコンバータ(ディジタル・アナログ変換器)と、を備えており」「磁気検出部の磁電変換素子であるホール素子の検出電圧に対してディジタル信号処理を」する「電流算出手段である検出信号処理部23」は、本件補正発明の「演算部」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「複数の測定部と演算部とを備え」る点で一致する。

イ 引用発明の「被測定電流導体21A,21B,21C」は、本件補正発明の「複数の電路」に相当する。引用発明の電流測定装置は、「商用の3相交流電流の流れる分電盤に設けられて」おり、「磁気検出部22A?22Dには、印加される磁束密度の大きさに比例する検出信号が得られる磁電変換素子であるホール素子が用いられ、被測定電流導体21A?21Cにそれぞれ電流が流れることによって各所定位置に生じる磁界の強さ(大きさ)をそれぞれ検出し、この検出強度に応じた検出信号を出力するものであ」るから、本件補正発明と引用発明は、「複数の測定部の各々は、分電盤内部に配設された複数の電路に流れる電流によって発生する磁束密度を測定して」いる点で一致する。

ウ 引用発明の「ホール素子の検出信号電圧(ホール電圧)」である「V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)」は、本件補正発明の「複数の測定部の測定結果」に相当する。引用発明の「検出信号処理部23」の構成要素である「マイクロプロセッサ(またはDSP)63」は、「A/Dコンバータ61A?61Dでディジタル値に変換された各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)を用いて、(10)式、(11)式、および(12)式の右辺の各演算を行って、被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I1,I2,I3の大きさを求めるようになっており」、ここで、(式10)から(式12)における「V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)」の係数は、「3本の被測定電流導体21A?21Cは、それぞれ横断面形状が円形で全体が直線状の導体からなり、測定対象の電流がそれぞれ流れるようになっており、各被測定電流導体21A?21Cは、同一平面内(同一平面上)において、長さ方向が互いに平行になるように配置され、かつ、その配置間隔は2rであり、」、「磁気検出部22A?22Dと被測定電流導体21A?21Cとは、同一平面内において、同一の距離rをおいて、交互に配置されており、磁気検出部22Aは、被測定電流導体21Aの長手方向から直交する方向に、被測定電流導体から距離rだけ離れた位置に配置され、磁気検出部22Bは、被測定電流導体21Aと被測定電流導体21Bとの中間の位置に配置され、磁気検出部22Cは、被測定電流導体21Bと被測定電流導体21Cとの中間の位置に配置され、磁気検出部22Dは、被測定電流導体21Cから距離rだけ離れた位置に配置され」ていることを前提に、ビオバールの法則から導かれているものであるから、引用発明の電流測定装置において、「検出信号処理部23」は、「各ホール電圧V_(H1),V_(H2),V_(H3),V_(H4)」と、「磁気検出部22A?22Dと被測定電流導体21A?21C」との間の距離rとに基づいて、「被測定電流導体21A,21B,21Cに流れる各電流I_(1),I_(2),I_(3)の大きさを求める」ものであるということができる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「演算部は、複数の測定部の測定結果と、複数の電路の各々に対する複数の測定部の相対的な位置情報とに基づいて、複数の電路の各々に流れる電流を求めるように構成され」る点で一致する。

エ 引用発明の電流測定装置においては、「商用の3相交流電流の流れる分電盤に設けられ、3つの被測定電流導体21A?21Cに3相交流が流れる」とされているから、3相3線式配線を測定対象とするものであるということができる。そして、磁気検出手段である磁気検出部22A,22B,22C,22Dは4つ備えている。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「複数の電路が、単相3線式配線及び三相3線式配線のいずれかである3つの電路である場合に、測定部の数が複数である」限りにおいて一致する。

オ 引用発明の電流測定装置においては、「3本の被測定電流導体21A?21Cは、それぞれ横断面形状が円形で全体が直線状の導体からなり、測定対象の電流がそれぞれ流れるようになっており、各被測定電流導体21A?21Cは、同一平面内(同一平面上)において、長さ方向が互いに平行になるように配置され、かつ、その配置間隔は2rであり、」「磁気検出部22A?22Dと被測定電流導体21A?21Cとは、同一平面内において、同一の距離rをおいて、交互に配置されており、磁気検出部22Aは、被測定電流導体21Aの長手方向から直交する方向に、被測定電流導体から距離rだけ離れた位置に配置され、磁気検出部22Bは、被測定電流導体21Aと被測定電流導体21Bとの中間の位置に配置され、磁気検出部22Cは、被測定電流導体21Bと被測定電流導体21Cとの中間の位置に配置され、磁気検出部22Dは、被測定電流導体21Cから距離rだけ離れた位置に配置され」ているから、引用発明において、3つの被測定電流導体電路の各々に対する4つ磁気検出部の相対的な位置が既知の位置となるように、4つの磁気検出部は配置されているということができる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「3つの電路の各々に対する測定部の相対的な位置が既知の位置となるように、測定部は配置されて」いる限りにおいて一致する。

カ 上記「ウ」の点も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記演算部は、複数の前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記複数の前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるように構成された」限りにおいて一致する。

ク 引用発明の「電流測定装置」は、本件補正発明の「電流センサ」に相当し、本件補正発明と引用発明は電流センサである点において一致する。

(5)一致点及び相違点
前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「複数の測定部と演算部とを備え、
前記複数の測定部の各々は、分電盤内部に配設された複数の電路に流れる電流によって発生する磁束密度を測定しており、
前記演算部は、前記複数の測定部の測定結果と、前記複数の電路の各々に対する前記複数の測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記複数の電路の各々に流れる電流を求めるように構成され、
前記複数の電路が、単相3線式配線及び三相3線式配線のいずれかである3つの電路である場合に、前記複数の測定部の数が複数であり、
前記3つの電路の各々に対する前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように、前記測定部は配置されており、
前記演算部は、複数の前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記複数の前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるように構成された
ことを特徴とする電流センサ。」

イ 相違点
本件補正発明では、複数の測定部の数が2つであって、3つの電路の各々に対する前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように配置されている測定部は2つであり、演算部が、2つの前記測定部の測定結果と、前記3つの電路の各々に対する前記2つの前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、前記3つの電路の各々に流れる電流を求めるのに対して、
引用発明では、磁気検出部の数が4つであり、3つの電路の各々に対する前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように配置されている測定部は4つであり、検出信号処理部が、4つの磁気検出部の測定結果と、3つの電路の各々に対する4つの磁気検出部の相対的な位置情報とに基づいて、3つの電路の各々に流れる電流を求める点。

(6)相違点についての判断
引用文献2においては、引用発明が記載された、本審決で引用する引用文献1である、特開2005-207791号公報に記載の電流測定装置について、4個の磁気センサを備えており、外部の磁界の影響を相殺しているが、磁気センサの個数が導体の本数より多くなるという問題もある点が述べられている。そして、3本の導体を介して流れる電流値の総和がゼロであることを利用すれば、測定対象の導体の数である3本よりも少ない個数である、2個の磁気センサで各導体を介して流れる電流を測定することができることが記載されている。
そして、より具体的には、次の技術事項(以下「技術事項A」という。)が記載されている。
「外部磁束を遮蔽するためのシールド部材が設けられ、総和がゼロとなる電流が流れる3本の導体の各電流を測定する電流測定装置であって、
ホール素子を利用して構成され、磁束密度に対応する電圧を出力する2個のコアレス電流センサ11A、11B(第1および第2のコアレス電流センサ)、および信号処理部12を含んで構成され、
3本の導体である、導体5U、導体5V、導体5Wは、それぞれバスバーであり、互いに平行に等間隔に配置されており、導体5U、5V、5W、およびコアレス電流センサ11A、11Bは、同一平面内に配置され、コアレス電流センサ11Aは、導体5U、5Vから等距離に配置され、コアレス電流センサ11Bは、導体5V、5Wから等距離に配置され、
信号処理部12(算出手段)は、例えばマイコンであり、コアレス電流センサ11A、11Bからの出力信号に基づいて導体5U、導体5V、導体5Wを介して流れる電流をそれぞれ算出する、
電流装置。」
してみれば、引用文献2に記載の示唆にしがって、引用発明における、磁気センサの個数が導体の本数より多くなるという課題を解決するために、電路が三相3線式であるから3本の電路に流れる電流の総和がゼロとなっている引用発明に、引用文献2に記載の上記の技術事項Aを適用して、外部磁束を遮蔽するためのシールド部材を設けつつ、測定部として、電路の間にある2つの測定部を選択して、測定部を2つとし、演算部が、2つの測定部の測定結果と、3つの電路の各々に対する複数の前記測定部の相対的な位置情報とに基づいて、3つの電路の各々に流れる電流を求めるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(7)作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明と引用文献2に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものは認められない。

(8)独立特許要件についての判断のまとめ
よって、本件補正発明は、引用発明と引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願に係る発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1から請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」などという。)は、上記第2の1(1)の請求項1から請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由2の概要
本願発明1及び2は、それぞれ、以下の引用文献1及び引用文献2に記載された発明、本願発明4は引用文献1から引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2005-207791号公報(前掲)
引用文献2:特開2008-058035号公報(前掲)
引用文献3:特開2014-025706号公報

3 引用文献に記載された発明等
上記引用文献1には、前記第2の3(3)ア(イ)において記載したとおりの引用発明が記載されている。また、上記引用文献2には、前記第2の3(3)イ(イ)において記載したとおりの技術事項が記載されている。

4 対比・判断
本願発明1は、本件補正発明の「測定部」の配置に関する特定である「前記3つの電路の各々に対する2つの前記測定部の相対的な位置が既知の位置となるように、2つの前記測定部は配置されており、」という特定を省いたものである。
そして、本願発明1の構成を全て含み、さらに上記の特定を付加した本件補正発明は、前記第2の3のとおり、引用発明と、引用文献2に記載の技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本願発明1も同様に、引用発明と、引用文献2に記載の技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-30 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-17 
出願番号 特願2015-185592(P2015-185592)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 孝明  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 岡田 吉美
中澤 真吾
発明の名称 電流センサ及び分電盤  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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