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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1366746 |
審判番号 | 不服2019-16642 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-09 |
確定日 | 2020-10-01 |
事件の表示 | 特願2015-128105「研磨方法及び不純物除去用組成物並びに基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月12日出願公開、特開2017- 11225〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年) 6月25日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 3月 1日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月26日 :意見書,手続補正書の提出 令和 1年 9月20日付け:拒絶査定(原査定) 令和 1年12月 9日 :審判請求書,手続補正書の提出 第2 令和 1年12月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和 1年12月 9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(下線部は,補正箇所である。以下,「補正後の請求項1」という。) 「 【請求項1】 表面に有機膜を有する研磨対象物を,砥粒を含有する研磨用組成物を用いて研磨する研磨工程と, 前記研磨工程で研磨された前記研磨対象物を,有機化合物を含有する不純物除去用組成物を用いて研磨して,前記研磨対象物上に存在する不純物を除去する不純物除去工程と, を備え, 前記砥粒は無機粒子であり, 前記有機化合物は界面活性剤を有し, 前記界面活性剤は,ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン,ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸,ラウリルエーテルリン酸,ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンナフチルエーテル,及びポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテルのうちの少なくとも一種である研磨方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成31年 4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(以下,「補正前の請求項1」という。) 「 【請求項1】 表面に有機膜を有する研磨対象物を,砥粒を含有する研磨用組成物を用いて研磨する研磨工程と, 前記研磨工程で研磨された前記研磨対象物を,有機化合物を含有する不純物除去用組成物を用いて研磨して,前記研磨対象物上に存在する不純物を除去する不純物除去工程と, を備え, 前記砥粒は無機粒子であり, 前記有機化合物は界面活性剤及び水溶性高分子の少なくとも一方を有し, 前記界面活性剤は,親水基と,炭素数3以上の炭化水素基を有する疎水基と,を有し, 前記水溶性高分子は主鎖が疎水性である研磨方法。」 2 補正の目的 (1)本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「有機化合物」を,「界面活性剤」に限定するとともに,「界面活性剤」を「ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン,ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸,ラウリルエーテルリン酸,ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンナフチルエーテル,及びポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテルのうちの少なくとも一種」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものである。 そして,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることあは明らかである。 (2)したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。 3 独立特許要件 以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明 ア 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成31年 3月 1日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-268409号公報(平成17年 9月29日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同じ。) 「【0009】 本発明の他の態様にかかる研磨方法は,半導体基板上に堆積された有機膜を化学的機械的に研磨する方法であって,ターンテーブル上に貼付された研磨布上に,前記有機膜を有する半導体基板を当接させる工程,前記研磨布上に,一次粒子径が0.05μm以上5μm以下の樹脂粒子を含有する分散液を供給して前記有機膜を研磨する第1の研磨工程,および,前記第1の研磨工程に続いて,前記研磨布上に親水部を有する界面活性剤の溶液を供給して前記有機膜を研磨する第2の研磨工程を具備することを特徴とする。」 「【0050】 (実施形態2) 本実施形態においては,樹脂粒子を含有する分散液と界面活性剤を含有する溶液とを,研磨布上に順次供給する以外は前述の実施形態1のスラリーサンプル1を使用した場合と同様にして,レジスト膜の研磨を行なった。 【0051】 図5を参照して本実施形態の方法を説明すると,ターンテーブル42上でのレジスト膜の研磨は,樹脂粒子分散液による第1の研磨と,これに引き続いた界面活性剤溶液による第2の研磨との2工程で行なわれることになる。第2の研磨が終了すると,ウエハー42は洗浄部41に搬送されて,両面ロール洗浄機47においてロールスポンジにより純水洗浄が行なわれる。ロールスポンジ洗浄後のウエハーは,前述と同様にペンシルスポンジ洗浄およびスピン乾燥を経て,アンロードされる。 【0052】 樹脂粒子分散液を用いた第1の研磨の結果,研磨布およびウエハーの表面には,レジスト削りカスが付着することがある。こうした削りカスは,界面活性剤溶液を用いた第2の研磨を行なうことにより,上述したようなメカニズムにしたがって除去される。」 イ 以上で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「 半導体基板上に堆積された有機膜を化学的機械的に研磨する方法であって, 一次粒子径が0.05μm以上5μm以下の樹脂粒子を含有する分散液を供給して前記有機膜を研磨する第1の研磨工程, 前記第1の研磨工程に続いて,前記研磨布上に親水部を有する界面活性剤の溶液を供給して前記有機膜を研磨する第2の研磨工程を具備し, 第2の研磨によりレジスト削りカスが除去される, 研磨方法。」 (2)その他の文献に記載されている技術事項 ア 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された特開2009-070904号公報(以下,「周知例2」という。)の,段落0001には「本発明は,研磨用組成物及び研磨用組成物を用いた被研磨物の製造方法に関し,特に化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing,以下CMPと記す)に好適に用いられる研磨用組成物,および該研磨用組成物を用いた被研磨物の製造方法に関する。」,段落0015には,「本発明の研磨用組成物には,研磨速度を向上させる観点から,さらに砥粒を添加しても良い。砥粒としてはコロイダルシリカ,コロイダルアルミナ,セリア等の無機砥粒,アクリル樹脂粒子等の有機砥粒,及び/又は無機粒子と有機粒子とからなる複合砥粒を用いることができる。」と記載されている。 イ 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された特開2006-228955号公報(以下,「周知例3」という。)の段落0003には「一般的なCMP用スラリーではアルミナやシリカ等の無機粒子を水中に分散させたスラリーが主に検討されている。しかしながら,金属層及び酸化金属層は硬度が低い物もあり,それよりも硬度の高い無機粒子で研磨をすると金属層,酸化金属層表面に引っかき傷(スクラッチ)が発生したり,粒子自体が層中に埋没されたりといった問題が発生することがある。これらの問題を回避するため,硬度の低い有機樹脂からなる粒子を研磨剤として用いたスラリー等も検討されている。」と記載されている。 ウ 以上ア-イで示した事項から,周知例2,3には,次の技術事項(以下,「周知技術1」という。)が記載されているものと認められる。 「化学機械研磨に用いられる砥粒として,無機粒子や有機粒子を用いること。」 エ 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,周知技術を示す文献である特開2005-260213号公報(以下,「周知例4」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 「【0009】 本発明の半導体デバイス用基板洗浄液は,半導体デバイス用基板の洗浄液において,以下の成分(a),(b),(c),及び(d)を含み,かつpHが1.5以上6.5未満であることを特徴とする。 成分(a):有機酸 成分(b):有機アルカリ成分 成分(c):界面活性剤 成分(d):水 【0010】 この半導体デバイス用基板洗浄液は,表面に金属配線や,低誘電率絶縁膜を有する半導体デバイス用基板の洗浄に特に好適である。」 「【0015】 本発明の半導体デバイス用基板の洗浄方法は,このような本発明の半導体デバイス用基板洗浄液を用いて,半導体デバイス用基板,特に表面にCu膜と低誘電率絶縁膜とを有し,かつ,CMP処理後の半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする。」 「【0030】 本発明において,成分(c)として使用する界面活性剤は特に限定されず,アニオン系界面活性剤,ノニオン系界面活性剤,カチオン系界面活性剤,両性界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては,アルキルスルホン酸及びその塩,アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩,アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩,アルキルメチルタウリン酸及びその塩,アルキル硫酸エステル及びその塩,アルキルエーテル硫酸エステル及びその塩,スルホコハク酸ジエステル及びその塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのアルキレンオキサイド型界面活性剤などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては,アミン塩型界面活性剤や第4級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては,アミノ酸型両性界面活性剤やベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。中でもアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。更に好ましくは炭素数8?12のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキルメチルタウリン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキル硫酸エステル及びその塩,炭素数8?12のアルキルエーテル硫酸エステル及びその塩,炭素数8?12のスルホコハク酸ジエステル及びその塩が挙げられる。これらの界面活性剤成分は,1種を単独で使用してもよいし,2種以上を任意の割合で併用してもよい。」 「【0055】 また,本発明の洗浄液は,表面に低誘電率層間絶縁膜を有する半導体デバイス用基板の洗浄にも好適に使用される。低誘電率材料としては,Polyimide,BCB(Benzocyclobutene),Flare(Honeywell社),SiLK(Dow Chemical社)等の有機ポリマー材料やFSG(Fluorinated silicate glass)などの無機ポリマー材料,BLACK DIAMOND(Applied Materials社),Aurora(日本ASM社)等のSiOC系材料が挙げられる。中でも,Flare,SiLK,BLACK DIAMOND,Aurora等の疎水性の強い低誘電率絶縁膜でも本洗浄液を使用すると,基板表面の汚染を短時間で除去できる。 【0056】 表面にCuや低誘電率絶縁膜を有する基板の洗浄を行う工程としては,特に,Cu膜に対してCMP(Chemical Mechanical Polishing)を行った後の洗浄工程,配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が挙げられ,上記の効果を奏する本発明の洗浄液が好適に使用される。 【0057】 CMP工程では,研磨剤を用いて基板をパッドに擦り付けて研磨が行われる。研磨剤成分としては,研磨粒子,酸化剤,分散剤やその他添加剤が含まれる。研磨粒子としては,コロイダルシリカ(SiO_(2)),フュームドシリカ(SiO_(2)),アルミナ(Al_(2)O_(3)),セリア(CeO_(2))などが挙げられる。酸化剤としては,過酸化水素,過硫酸アンモニウム,硝酸鉄,ヨウ素酸カリウムなどが挙げられる。分散剤としては,界面活性剤,KOH,アンモニア,アミンなどが挙げられる。その他添加剤としては,有機酸(クエン酸やキナルジン酸等)や防食剤などが挙げられる。特に,Cu膜のCMP研磨では,Cu膜が腐食しやすく,防食剤を入れることが重要であり,防食剤の中でも防食効果の高いアゾール系防食剤が好ましく用いられる。アゾールとは,ヘテロ原子を2個以上含む5員環芳香族化合物で,ヘテロ原子の少なくとも1個は窒素原子である化合物の総称である。窒素以外のヘテロ原子としては,酸素と硫黄のものが良く知られている。窒素のみの複素環では,ジアゾール系やトリアゾール系,テトラゾール系が挙げられる。窒素と酸素の複素環では,オキサゾール系やイソオキサゾール系,オキサジアゾール系が挙げられ,窒素と硫黄の複素環では,チアゾール系やイソチアゾール系,チアジアゾール系が挙げられる。その中でも特に,防食効果に優れるベンゾトリアゾール(BTA)系の防食剤が好ましく用いられる。また,研磨剤はその組成により酸性,中性,アルカリ性と様々なpHのものがあり,目的に応じて選択できる。」 オ 以上エで示した事項から,周知例4には,次の技術事項(以下,「周知技術2」という。)が記載されているものと認められる。 「 表面にCu膜と低誘電率絶縁膜とを有し,かつ,CMP処理後の半導体デバイス用基板を洗浄する半導体デバイス用基板の洗浄方法において, 低誘電率材料としては,有機ポリマー材料が挙げられ CMP工程では,研磨剤を用いて基板をパッドに擦り付けて研磨が行われ, 研磨剤成分としては,研磨粒子が含まれ, 研磨粒子としては,コロイダルシリカ(SiO_(2)),フュームドシリカ(SiO_(2)),アルミナ(Al_(2)O_(3)),セリア(CeO_(2))などが挙げられ, 表面にCuや低誘電率絶縁膜を有する基板の洗浄を行う工程には,界面活性剤を含む半導体デバイス用基板洗浄液が使用され, 界面活性剤として使用するノニオン系界面活性剤としては,ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられること。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「半導体基板」は,その上に「有機膜」が堆積されているから,本件補正発明の「表面に有機膜を有する研磨対象物」に相当する。 (イ)引用発明において,「樹脂粒子」が「砥粒」であることは明らかであるから,引用発明の「一次粒子径が0.05μm以上5μm以下の樹脂粒子を含有する分散液」は,本件補正発明の「研磨用組成物」と,「砥粒を含有する研磨用組成物」である点で一致する。 そして,引用発明の「一次粒子径が0.05μm以上5μm以下の樹脂粒子を含有する分散液を供給して前記有機膜を研磨する第1の研磨工程」は,本件補正発明の「研磨工程」と,「砥粒を含有する研磨用組成物を用いて研磨する研磨工程」である点で一致する。 (ウ)引用発明において,「親水部を有する界面活性剤」は「有機化合物」であることは明らかであり,引用発明の「親水部を有する界面活性剤の溶液」は,本件補正発明の「不純物除去用組成物」と,「有機化合物を含有する不純物除去用組成物」である点で一致する。 そして,引用発明の「第2の研磨工程」は,「レジスト削りカスが除去される」ものであるから,引用発明の「前記第1の研磨工程に続いて,前記研磨布上に親水部を有する界面活性剤の溶液を供給して前記有機膜を研磨する第2の研磨工程」は,本件補正発明の「不純物除去工程」と,「前記研磨工程で研磨された前記研磨対象物を,有機化合物を含有する不純物除去用組成物を用いて研磨して,前記研磨対象物上に存在する不純物を除去する不純物除去工程」である点で一致する。 イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 <一致点> 「 表面に有機膜を有する研磨対象物を,砥粒を含有する研磨用組成物を用いて研磨する研磨工程と, 前記研磨工程で研磨された前記研磨対象物を,有機化合物を含有する不純物除去用組成物を用いて研磨して,前記研磨対象物上に存在する不純物を除去する不純物除去工程と, を備え, 前記有機化合物は界面活性剤を有する研磨方法。」 <相違点1> 砥粒に関して,本件補正発明は,「無機粒子」と特定されているのに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。 <相違点2> 界面活性剤に関して,本件補正発明は,「ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン,ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸,ラウリルエーテルリン酸,ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンナフチルエーテル,及びポリオキシエチレンラウリン酸アミドエーテルのうちの少なくとも一種である」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点1-2について検討する。 ア 相違点1について 周知技術1にあるように,化学的機械的に研磨する工程において用いられる砥粒として,無機粒子も有機粒子も周知のものである。 また,周知技術2にあるように,化学的機械的に研磨する工程において,研磨剤の研磨粒子としてシリカ,アルミナ,セリア等の金属酸化物からなる無機粒子を用いることも,周知の技術である。 引用発明と周知技術1,2とは,どちらも,化学的機械的に研磨対象物を研磨するものであり,引用発明の樹脂粒子と,周知技術1の砥粒,周知技術2の研磨粒子とは,研磨に用いられる砥粒であるという作用・機能が共通するものであるから,砥粒としていずれを採用するのかは,当業者が実施に当たり適宜選択し得る設計的事項である。 そうすると,引用発明においても,砥粒として周知技術1,2に記載された無機粒子を採用することにより,上記相違点1に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 周知技術2にあるように,化学的機械的に研磨する工程の後の工程に使用される洗浄液に含まれる界面活性剤として,ポリオキシエチレンアルキルエーテルは,周知のものである。 引用発明と周知技術2とは,どちらも,表面に有機膜を有する研磨対象物を研磨するものであり,引用発明の親水部を有する界面活性剤の溶液と,周知技術2の半導体デバイス用基板洗浄液とは,洗浄工程に使用される洗浄液であり,その作用・機能が共通するものであるから,引用発明においても,界面活性剤として周知技術2のポリオキシエチレンアルキルエーテルを採用することにより,上記相違点2に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 (5)小括 上記で検討したごとく,相違点1-2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び周知技術1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 補正却下の決定のむすび 以上から,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 1年12月 9日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年 4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記「第2 令和 1年12月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(1) 本件補正について(補正の内容)」の「(2)本件補正前の特許請求の範囲」に,補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,以下のとおりである。 (1)この出願の請求項1に係る発明は,下記の引用例1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用例1: 特開2005-268409号公報 3 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1は,前記「第2 令和 1年12月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記「第2 令和 1年12月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明に関する限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 令和 1年12月 9日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」に記載したとおり,引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記限定事項を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術1,2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-07-22 |
結審通知日 | 2020-07-28 |
審決日 | 2020-08-12 |
出願番号 | 特願2015-128105(P2015-128105) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 正和 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 小川 将之 |
発明の名称 | 研磨方法及び不純物除去用組成物並びに基板及びその製造方法 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 山田 勇毅 |