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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1366753
審判番号 不服2020-336  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-10 
確定日 2020-10-20 
事件の表示 特願2016-564001「ファセット付き内面を有する保持リング」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日国際公開、WO2015/164149、平成29年 6月 1日国内公表、特表2017-514310、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年) 4月15日(パリ条約による優先権主張 2014年(平成26年) 4月22日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月15日 :翻訳文の提出
平成30年 4月13日付け:手続補正書の提出
平成31年 1月18日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 7月29日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 8月30日付け:拒絶査定
令和 2年 1月10日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 1年 8月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由2 本願請求項1-15に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載された周知技術に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特表2008-511983号公報
引用文献2 特開2002-326156号公報
引用文献3 特開平7-237121号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は,補正前の請求項1,11,15の保持リングに関する記載を限定し,補正後の請求項1,10,14とするものであるから,特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
また,審判請求時の補正は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,当該補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-14に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は,令和 2年 1月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-14は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
化学機械研磨に用いる保持リングであって,
化学機械研磨システムのキャリアヘッドに固定された上面,
研磨面に接触する底面,
上部外周で前記上面に連結され底部外周で前記底面に連結された外面,及び
上部内周で前記上面に連結され底部内周で前記底面に連結された,基板を保持するための内面
を有する,概して環状のプラスチック製の本体を有する保持リングであって,前記内面は前記底面に隣接した12から148の平面状ファセットを有し,前記基板が研磨中に,接触し隣り合うファセット対の間を移動することで,前記プラスチック製の本体の前記内面の摩耗が低減され,隣り合う平面状ファセットはコーナーで連結されており,前記底部内周は,前記コーナーで連結された前記平面状ファセットの直線状エッジを含む多角形を形成する,保持リング。
【請求項2】
前記底面は,前記外面から前記内面まで延びるチャネルを有し,各チャネルは,コーナーにおいて,前記本体の前記内面へと開かれた端部を有する,請求項1に記載の保持リング。
【請求項3】
前記内面は第1の数の平面状ファセットを有し,前記底面は第2の数のチャネルを有し,前記第1の数は前記第2の数の正の整数倍である,請求項2に記載の保持リング。
【請求項4】
前記第1の数が前記第2の数に等しい,請求項3に記載の保持リング。
【請求項5】
前記チャネルが,前記保持リングの中心を通って延びる半径線分に対し傾斜するように向けられている,請求項2に記載の保持リング。
【請求項6】
各コーナーは前記上面から前記底面まで延びており,各平面状ファセットは,前記上面によって形成された上部直線状エッジと,前記底面によって形成された底部直線状エッジと,2つのコーナーに沿った2つの直線状側部エッジとを有する,長方形又は正方形の形状を有している,請求項1に記載の保持リング。
【請求項7】
前記内面がトータルで18の平面状ファセットを有する,請求項1に記載の保持リング。
【請求項8】
前記底部内周が対称形状を有する,請求項1に記載の保持リング。
【請求項9】
前記保持リングの中心と平面状ファセットとの間の距離が約150mmから約155mmである,請求項1に記載の保持リング。
【請求項10】
基板受容面と,
前記基板受容面を囲む概して環状のプラスチック製の保持リングと
を有する,化学機械研磨装置に用いるキャリアヘッドであって,前記保持リングは,
上面,
研磨面に接触する底面,
上部外周で前記上面に連結され底部外周で前記底面に連結された外面,及び
上部内周で前記上面に連結され底部内周で前記底面に連結された,基板を保持するための内面を有し,前記内面は前記底面に隣接した12から148の平面状ファセットを有し,
前記基板が研磨中に,接触し隣り合うファセット対の間を移動することで,前記プラスチック製の本体の前記内面の摩耗が低減され,隣り合う平面状ファセットはコーナーで連結されており,前記底部内周は,前記コーナーで連結された前記平面状ファセットの直線状エッジを含む多角形を形成する,キャリアヘッド。
【請求項11】
前記底面は,前記外面から前記内面まで延びるチャネルを有し,各チャネルは,コーナーにおいて,前記保持リングの前記内面へと開かれた端部を有する,請求項10に記載のキャリアヘッド。
【請求項12】
前記内面は第1の数の平面状ファセットを有し,前記底面は第2の数のチャネルを有し,前記第1の数は前記第2の数の正の整数倍である,請求項11に記載のキャリアヘッド。
【請求項13】
前記第1の数が前記第2の数に等しい,請求項12に記載のキャリアヘッド。
【請求項14】
基板と研磨面との間の相対的な運動を作りだすことと,
前記基板を,プラスチック製の保持リングを用いて拘束することと
を含む研磨方法であって,前記保持リングは,
上面,
底面,
上部外周で前記上面に連結され底部外周で前記底面に連結された外面,及び
上部内周で前記上面に連結され底部内周で前記底面に連結された内面
を有し,前記内面は12から148の平面状ファセットを有し,
隣り合う平面状ファセットはコーナーで連結され,前記底部内周は,前記コーナーで連結された前記平面状ファセットの直線状エッジを含み,
前記基板と前記研磨面との間の前記相対的な運動が,拘束された前記基板を,前記保持リングの前記内面の2つ以上の平面状ファセットと同時に接触させることで,前記プラスチック製の保持リングの前記内面の摩耗が低減させる,方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0001】
本発明は,ウェーハの化学機械研磨装置に係り,特に,化学機械研磨装置で使用されるリテーニングリングに関する。」

「【0002】
半導体集積回路の微細化及び多層相互結合が要求されるにつれて,ある製造段階でウェーハの表面を平坦化したり,ウェーハの表面に形成された導電層を選択的に除去する必要がある。このような必要性により,最近,化学機械研磨(Chemical Mechanic Polishing;以下,“CMP”)が半導体集積回路の製造工程に広く用いられている。一般的に,CMP工程は,研磨パッドにスラリーを塗布し,ウェーハを研磨パッドと接触させ,ウェーハに圧力を加えた状態で,ウェーハ及び研磨パッドを相対的に移動させることによって,ウェーハの表面を平坦化したり,導電層を選択的に除去する。
図1は,CMP装置によるウェーハの研磨工程を示す概略断面図である。さらに詳細に説明すれば,プラテン(platen)10の上面に研磨パッド12を付着した後,スラリー14を研磨パッド12の上部に塗布し,ウェーハ16をスラリー14で覆われた研磨パッド12と接触させ,プラテン10に回転またはオービタル運動をさせ,次にウェーハ16と研磨パッド12と接触することによって,ウェーハ表面の平坦化が行われる。ここで,CMP工程中にウェーハに研磨圧力を印加し,回転運動をさせ,場合によってはウェーハを移送する組立て部分18を研磨ヘッド(polishing head)またはキャリア(carrier)18と言う。以降組立て部18は「キャリア」と称する。一般的に,キャリア18は,回転軸20から動力を伝達され,他のキャリア部品を固定できる空間を提供するキャリアベース22と,ウェーハ16の上面と接触してウェーハを回転させる間に,ウェーハに研磨圧力を印加するプレートまたはブラダー(bladder)のような圧力伝達手段24と,研磨時に摩擦力によるウェーハ16の離脱を防止するリテーニングリング(retaining ring)26とから構成されている。CMP工程中のリテーニングリング26の役割は,CMP工程中にウェーハ16の離脱を防止するだけでなく,研磨パッド12を所定の圧力で押して,ウェーハ16のエッジの付近で研磨パッド12の均一な変形を誘導することによって研磨均一度(uniformity)を向上させる。したがって,リテーニングリング26とも,スラリー14を覆われた研磨パッド12との間に摩擦を生じさせる。リテーニングリング26の下面に摩耗が起こる。
図2は,従来の技術によるリテーニングリングの一例を示す図面であって,リテーニングリング30全体が一体型になっている。リテーニングリング30をキャリアベース(表示なし)に固定するために,通常はねじを利用するが,このためにリテーニングリング30の上面にねじ孔32を形成する。リテーニングリング30のサイズは,内径,幅w及び厚さhで決まる。リテーニングリング30の内径は研磨されるウェーハの径によって決定される。幅wは,約10mmないし40mmであり,厚さhは,約10mmないし30mmである。リテーニングリング30は,一般的に,低い磨耗率及び高い耐久性を表すポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide;以下,“PPS”)やポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone;以下,“PEEK”)のようなプラスチックから製造される。
リテーニングリングの交換は,ほとんどリテーニングリングの下面の摩耗による研磨均一度の劣化またはウェーハリテーニング能力の低下によって行われる。一般的に,下面の摩耗が約500μmになれば,研磨均一度が劣化し始めるので,この時点を前後にリテーニングリングを交換する。したがって,リテーニングリングの厚さを考慮すると,リテーニングリングの極めて一部のみを利用し,その残りは捨てるので,不必要な資源の浪費や環境汚染の問題が生じる恐れがある。」

「【0004】
本発明は,前記問題点を解決するためになされたものであって,ウェーハの側面及び研磨パッドと接触するリテーニングリングの下部を複数の断片から構成して,リテーニングリングの再使用時に捨てられる部分を最小化して浪費を防止し,下部の交換時に生じうる熱膨張の差による変形を除去することにより,リテーニングリングの再使用時に研磨均一度を向上させることをその目的とする。」

「【0006】
以下,添付された図面を参照して,本発明に係るリテーニングリングについて詳細に説明する。しかし,本発明の実施形態は,当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって,図面における要素の形状などは,さらに明確な説明を強調するために誇張されており,図面上で同じ符号で表示された要素は,同じ要素を示す。
図7及び図8は,本発明に係るウェーハリテーニングリング90を示す図面であって,複数のリテーニング断片100が,略環状を有するベースリング200に付着されている。リテーニング断片100は,CMP工程中にウェーハの側面を支持することによってウェーハの離脱を防止する役割を行い,ベースリング200は,リテーニング断片が付着されている場所であって,図7をひっくり返した図面である図8に示すように,上面にねじ孔210が形成されることによって,ねじを利用してキャリアベース(図示せず)に固定させる。リテーニング断片100の他の役割は,CMP工程中に研磨パッドを所定の圧力で押して,ウェーハエッジの付近で研磨パッドの変形を均一化することである。
図9ないし図11は,本発明に係るリテーニングリングを構成するリテーニング断片の一例を示す斜視図である。まず,図9に示すように,リテーニング断片100は,内側の半径がR_(i)である弧と,外側の半径がR_(o)である弧とによって定義される面を備える。ここで,内側の半径がR_(i)である弧によって定義されるリテーニング断片100の内面は,CMP工程中にウェーハの側面と接触する。したがって,内側半径R_(i)は,研磨されるウェーハの半径より約0.5mmないし2mm大きいことが望ましい。外側半径R_(o)は,内側半径R_(i)より約10mmないし40mm大きくてもよい。リテーニング断片100の厚さtは,約0.5mmないし5mmでありうる。図10は,リテーニング断片102の他の例を示す図面であって,リテーニング断片102の内面は,前述のように,半径R_(i)である弧によって定義される面からなるが,リテーニング断片102の外面は,弧によって定義されず,図10に示すように,平面(例えば,P_(1)及びP_(2))から構成されることができる。図11は,リテーニング断片103のさらに他の例を示す図面であって,リテーニング断片103の内面及び外面が弧によって定義されず,それぞれ平面P_(3)及びP_(4)により構成された場合を示している。このように,リテーニング断片103の内面が一つ以上の平面(例えば,P_(3))から構成されるためには,リテーニングリング(図示せず)の中心Cからリテーニング断片103の両端までの二つの直線(点線で表示される)がなす角度θが,20゜より小さいことが望ましい。言い換えれば,約18個以上のリテーニング断片からリテーニングリングを構成するとき,図11に示すように,リテーニング断片103の内面が一つ以上の平面(例えば,P_(3))からなることができる。
断片の形状は,従来の技術によるリングの形態に比べて,そのサイズが小さいため加工しやすい。特に,厚さが薄い場合,リング状には製作することが難しく,また,製作後にも破損しやすいが,断片の形態に製作すれば,このような問題点が減少する。リテーニングリングの交換時期が,約500μmの摩耗が起こったときであるので,リテーニングリングを,薄いリテーニング断片及びベースリングから構成して使用した後,摩耗されたリテーニング断片のみを交換すれば,捨てられる部分を減らすことができるようになる。リテーニング断片を薄型にしたときに得られる他の長所は,研磨時にリテーニングリングに加えられる圧力によるサイズの変化が少ないため,耐摩耗性には優れているが,圧縮性が高いので,変形しやすい物質もリテーニング断片として使用することができる。図面を参照して説明すれば,図12に示すように,圧縮性(compressibility)の高い物質からなるリテーニング断片120が,圧力P下では圧力方向及び圧力に垂直の方向に変形されたリテーニング断片120’になるが,リテーニング断片が厚い場合には,圧縮される厚さ及び側面の膨張程度が大きいため,CMP工程時にウェーハのリテーニングに問題を起こす。一方,図13に示すように,リテーニング断片130が薄い場合には,圧力Pにより変形されたリテーニング断片130’の圧縮された厚さ及び側面の膨張程度が小さいため,ウェーハのリテーニングに問題を起こさない。
【0007】
リテーニング断片は,耐摩耗性に優れており,化学的に不活性物質であるPPS,PEEK,ポリエステル(polyester),ポリアミド-イミド(polyamide-imide)またはポリウレタン(polyurethane)などのプラスチックから形成されうる。
リテーニング断片が付着されるベースリングは,耐食性に優れたステンレススチールのような金属,PPSのようなプラスチック,またはアルミナのようなセラミックから形成されることができる。ベースリングは,図7に示すように,一体型であってもよく,図14に示すように,下部ベースリング202と上部ベースリング204とが付着されてベースリング206をなすように,2つ以上のリングが付着されて形成されてもよい。このとき,リテーニング断片100が付着され,かつスラリーと接触する上部ベースリング204は,PPSのようなプラスチックからなり,キャリアベースと連結される下部ベースリング202は,ステンレススチールのような金属からなることが望ましい。以下の図面では,図面の簡略化のために,一体型のベースリングのみを示す。
リテーニング断片をベースリングに付着する方法としては,エポキシ,シリコンまたはパラフィンのような接着剤を使用するが,ベースリングを再使用するためには,摩耗されたリテーニング断片を分離しなければならず,そのためには,高温で溶解または分解可能な接着物質または特定の溶剤に溶解される接着物質を使用することが望ましい。リテーニング断片をベースリングに付着するとき,迅速に断片をベースリングにアラインするために,図15に示すリテーニング断片104の付着面に一つ以上の凸部140や,図16に示すような凹部150を形成する。これに対応するベースリングの構造は,図17及び図18に示すように,リテーニング断片が付着されるベースリング200の付着面に凹部220や凸部230を形成して,リテーニング断片104の凸部140とベースリング200の凹部220とが一致するか,またはリテーニング断片104の凹部150とベースリング200の凸部230とが一致すればアラインさせる。リテーニング断片104及びベースリング200に形成される凹部及び凸部の形状は,円筒形,四角柱形であるか,または図19及び図20に示すように,隆線形の凸部142や溝状の凹部152を有することができる。
図21ないし図23は,ベースリング200に付着されるリテーニング断片106,108,109の数による形状の一例を示す下面図であって,リテーニング断片の数は,リテーニングリング90のサイズ,リテーニング断片106,108,109の厚さ及び材質などによって4個ないし72個にする。リテーニングリング90のサイズが大きくなるほど,すなわち,研磨しようとするウェーハのサイズが大きくなるほど,また,リテーニング断片の厚さが薄くなるほど,リテーニング断片のサイズを縮小させ,その数を増加させることが望ましい。特に,複数(例えば,18個以上)のリテーニング断片からリテーニングリングを構成するとき,図23に示すように,ウェーハと接触するリテーニング断片109の内面を平面にすることができる。全てのリテーニング断片をベースリング200に付着したとき,リテーニング断片106,108,109の間に隙間150を有するようにリテーニング断片のサイズを定めることが望ましいが,これは,リテーニング断片106,108,109をベースリング200から分離するとき,作業を容易にする空間と,リテーニング断片106,108,109が熱膨張により膨張できるスペースを提供するためのものであり,また,CMP工程時にスラリーの流入を促すためのものである。隙間150の幅は,1mmないしは5mmであることが望ましい。リテーニング断片106,108,109の間の隙間150は,図21ないし図23に示すように,リテーニングリング90の中心に向ってもよく,図24に示すように,非対称型のリテーニング断片110を付着すれば,隙間160は,リテーニングリング90の中心から離れた所に向うことができる。
図25は,ベースリング250の付着面に形成された溝260を示す図面である。リテーニング断片が薄い場合,リテーニング断片が,平坦なベースリングの付着面に付着されれば,リテーニング断片の間に形成される隙間の深さも浅くなり,これにより,CMP工程時にスラリーが内部に十分に供給されないこともある。これを改善するために,図25に示すように,まず,ベースリング250の付着面に溝260を形成し,図26に示すように,リテーニング断片100を付着すれば,リテーニング断片100の間の隙間270の深さは,リテーニング断片100の厚さより深くなる。
一方,本発明は,前述の実施形態に限定されるものではなく,本発明の思想を逸脱しない範囲内で多様な変化及び変形が可能である。」














(2)上記(1)を参酌すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「化学機械研磨(CMP)装置で使用されるリテーニングリングにおいて,
リテーニングリングは,複数のリテーニング断片が,略環状を有するベースリングに付着されており,
リテーニング断片は,CMP工程中にウェーハの側面を支持することによってウェーハの離脱を防止する役割を行い,ベースリングは,キャリアベースに固定され,
リテーニング断片は,CMP工程中に研磨パッドを所定の圧力で押し,
約18個以上のリテーニング断片からリテーニングリングを構成するとき,ウェーハと接触するリテーニング断片の内面を平面にすることができ,
リテーニング断片は,プラスチックから形成され,
リテーニング断片が付着されるベースリングは,PPSのようなプラスチックから形成され,
全てのリテーニング断片をベースリングに付着したとき,リテーニング断片の間に隙間を有することが望ましく,
該隙間は,リテーニング断片をベースリングから分離するとき,作業を容易にする空間と,リテーニング断片が熱膨張により膨張できるスペースを提供するためのものであり,また,CMP工程時にスラリーの流入を促すためのものであること。」

2 その他の文献について
(1)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0024】図1は,本発明の実施の形態に係るガラス基板研磨装置の主要部の部分切り欠き斜視図である。
【0025】本発明の実施の形態に係るガラス基板研磨装置は,鋳鉄製の水平な上定盤21と,同じく鋳鉄製の水平な下定盤22とを備える両面ラッピングマシン20である。上定盤21のラッピング面はピッチ20mmの格子状に幅2.5mmの溝が切られており,下定盤22のラッピング面はピッチ30mmの格子状に幅2.5mmの溝が切られている。また,上定盤21は,回転支持軸23を有し,この回転支持軸23の回りにスラリー状のアルミナ砥粒研磨剤の供給口24が16個等角度間隔で設けられている。
【0026】上定盤21は,上から見て時計回りに(以下,時計回り及び反時計回りという場合は全て上から見た回転方向をいう。)16?18rpmで,下定盤22は,反時計回りに50?55rpmで回転する。
【0027】下定盤22の中心部には,太陽歯車25が配されており,同外周部には,内歯歯車26が配されている。また,下定盤22上には,太陽歯車25及び内歯歯車26の双方に噛合する遊星歯車を備えるガラス基板研磨用キャリア(以下,単に「キャリア」という)27が5個配されている。キャリア27は,図2に示すようにガラス基板ワーク30を収容する研磨孔としてのホール28を,例えば7個周方向に等角度間隔で備えている。本実施の形態では,ホール28の半径を「R」,ガラス基板ワーク30の半径を「r」とし,ガラス基板ワーク30の半径rに対するホール28の半径Rの割合を「R/r」で表す。」

「【0052】本実施の形態では,ホール28を円形にしていたが,図4に示すように,ホール28は多角形でもよく,上述した効果を奏することができる。この場合,多角形の内接円31の半径をホール28の半径Rとする。」






(2)上記(1)の記載から,上記引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「水平な上定盤と,水平な下定盤とを備える両面ラッピングマシンの下定盤上に配されるキャリアにおいて,
キャリアは,ガラス基板ワークを収容する研磨孔としてのホールを備え,
ホールは多角形でもよいこと。」

(3)原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,円形の半導体基板(シリコン,ガリウム,ヒ素等)のラッピングに使用するキャリアの改良に係り,キャリアホールの形状を多角形とし,ラッピング時における基板端面の変形,摩耗を低減させ,その後の半導体基板の製造工程での欠けの発生などの欠陥発生を著しく低減でき,プロセスでのパーティクルの発生を低減できる半導体基板のラッピング用キャリアに関する。
【0002】
【従来の技術】薄板基板を研磨するための一般的な遊星歯車式の両面ラップ盤は,例えば,昇降自在の上定盤4と該上定盤に対向する固定の下定盤5を有し,上下定盤4,5間にワークたる半導体基板3を保持するための,複数の円形キャリアホール2を有する図7に示すごときキャリア1を複数枚配置し,各キャリア1が外側のインターナルギア(図示せず)と中心側の太陽ギヤ6と噛合して,図8及び図9に示すごとく自転公転可能となし,また上下の定盤も所要回転数で回転し,キャリア1内のワークは所要圧で加圧される上定盤4と下定盤5間で,所要砥粒の懸濁液にてラッピングする構成からなる。」

「【0008】すなわち,この発明は,上下定盤間にキャリアを装着してラッピング加工を行うラッピング装置で,円形の半導体基板を収納するラップキャリアの各ホールの形状を多角形としたことを特徴とする半導体基板のラッピング用キャリアである。
【0009】また,この発明は,上記の構成において,多角形内で接触するウエーハの2点間の距離が当該ウエーハの直径の1/5?1/6となるように選定された辺数の多角形であることを特徴とするオリエンテーションフラットを有する基板用のラッピング用キャリア,多角形内で接触するウエーハの2点間の距離が当該ウエーハの直径の1/3?1/4となるように選定された辺数の多角形であることを特徴とするノッチを有する基板用のラッピング用キャリア,を併せて提案する。
【0010】この発明において,多角形の辺の数は円形の半導体基板のオリエンテーションフラットの長さ及び直径等を考慮して,例えば現状のサイズの基板では,5角形?18角形より,適宜選定すればよい。特に効果的に研磨を行うためには,発明者の実験結果から,多角形内で接触するウエーハの2点間の距離が当該ウエーハの直径の1/3?1/6となるように選定された辺数の多角形とすることが望ましく,現在実用化されている直径が4インチ,5インチ,6インチ,8インチのいずれの半導体基板でもラップキャリアのホール内で自由に回転するようになるため,半導体基板端面のある一部分だけの変形,摩耗が低減でき,さらに,実用化が検討されている10インチ,12インチ,あるいはそれ以上の半導体基板の場合も同様である。さらに,オリエンテーションフラットを有する基板の場合,上記の2点間距離を当該ウエーハの直径の1/5?1/6として,所定の辺数の多角形,例えば,15角形?18角形より,適宜選定すると,最もよい効果を得ることができる。また,ノッチを有する基板用の場合,上記の2点間距離を当該ウエーハの直径の1/3?1/4として,所定の辺数の多角形,例えば,9角形?12角形より,適宜選定すると,最もよい効果を得ることができる。
【0011】この発明において,ラッピング用キャリアの材質はステンレススチール,合成樹脂など公知の材質からラッピング加工条件に応じて,耐ラッピング液性,強度,硬度,粗度などを考慮して適宜選定すればよい。
【0012】
【作用】この発明によるラッピング用キャリアの作用を図面に基づいて詳述する。図1はこの発明によるラッピング用キャリアを研磨装置に装着した例を示す上面説明図であり,図2のA,B,Cはこの発明によるラッピング用キャリアを用いて研磨した際のキャリアホール内での半導体基板の動きを説明する上面説明図である。図1に示すごとく,ここではラッピングキャリア10の各キャリアホール11の形状は6角形となっており,その中にOF部を有する円形の半導体基板3を装入する。ラッピングに際しては,キャリア10及び上定盤,下定盤5の運動方向により,各半導体基板3がある一定方向に押しつけられるが,キャリアホール11の形状が6角形となっているために,半導体基板3はキャリアホール11に2点で支持され,キャリア10の公転に伴うその支持方向の変化と,押しつけられる方向により,図2のA,B,Cに示すように半導体基板3は自転する。このことにより,半導体基板3の厚みバラツキ,上下定盤4,5の精度等にかかわらず,半導体基板3は強制的に自転させられ,半導体基板3端面のあらゆる部分でキャリアホール11に接触し,端面の一部分だけの変形および摩耗は防止される。」





(4)上記(3)の記載を参酌すると,上記引用文献3には次の事項(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「上下定盤間にキャリアを装着してラッピング加工を行うラッピング装置で,円形の半導体基板を収納するラップキャリアの各ホールの形状を多角形とし,
多角形の辺の数は円形の半導体基板のオリエンテーションフラットの長さ及び直径等を考慮して,5角形?18角形より,適宜選定すればよく,
半導体基板はキャリアホールに2点で支持され,キャリアの公転に伴うその支持方向の変化と,押しつけられる方向により自転すること。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明における「リテーニングリング」は,略環状を有する「ベースリング」に「複数のリテーニング断片」が付着しており,全体として「略環状」の形状を有していると認められる。
また,引用発明において,「リテーニング断片」は,プラスチックから,「ベースリング」も,PPSのようなプラスチックから形成される点が記載されている。

ここで,引用発明の「リテーニリングリング」を構成する「ベースリング」のキャリアベースに固定される「上面」が,本願発明1の「化学機械研磨システムのキャリアヘッドに固定された上面」に,引用発明の「リテーニリングリング」を構成する「リテーニリング断片」の研磨パッドを所定の圧力で押す面が,本願発明1の「研磨面に接触する底面」に,それぞれ相当し,引用発明の「リテーニリングリング」を構成する「ベースリング」及び「リテーニリング断片」の外面が,本願発明1の「上部外周で前記上面に連結され底部外周で前記底面に連結された外面」に相当する。
また,引用発明の「リテーニリングリング」を構成する「リテーニリング断片」は,CMP工程中にウェーハの側面を支持することによってウェーハの離脱を防止する役割を行うことから,引用発明の「リテーニリングリング」を構成する「ベースリング」及び「リテーニリング断片」の内面が,本願発明1の「上部内周で前記上面に連結され底部内周で前記底面に連結された,基板を保持するための内面」に対応する。

すると,引用発明の「化学機械研磨装置(CMP)で使用されるリテーニングリング」が,本願発明1の「化学機械研磨に用いる保持リング」及び「概して環状のプラスチック製の本体を有する保持リング」に対応すると認められる。

イ 引用発明の「リテーニング断片」は,約18個以上の場合には,その内面を平面にすることができるから,この時の「リテーニング断片」の「内面」は,本願発明1の「底面に隣接した」「平面状のファセット」である点で一致する。
また,「リテーニング断片」の「内面」が平面である時,引用発明の「リテーニングリング」の底部外周は,「直線状のエッジ」を含み,その形状が多角形を形成することは明らかである。

ウ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 化学機械研磨に用いる保持リングであって,
化学機械研磨システムのキャリアヘッドに固定された上面,
研磨面に接触する底面,
上部外周で前記上面に連結され底部外周で前記底面に連結された外面,及び
上部内周で前記上面に連結され底部内周で前記底面に連結された,基板を保持するための内面
を有する,概して環状のプラスチック製の本体を有する保持リングであって,前記内面は前記底面に隣接した18以上の平面状ファセットを有し,前記底部内周は,前記平面状ファセットの直線状エッジを含む多角形を形成する,保持リング。」

(相違点)
(相違点1)平面上ファセットに関して,本願発明1は,「12から148」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点2)本願発明1は,「前記基板が研磨中に,接触し隣り合うファセット対の間を移動することで,前記プラスチック製の本体の前記内面の摩耗が低減され」ると特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点3)本願発明1は,「隣り合う平面状ファセットはコーナーで連結され」ると特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点3について
事案に鑑みて,相違点3について最初に検討する。
引用発明において,平面を有する「リテーニング断片」は,「全てのリテーニング断片をベースリングに付着したとき,リテーニング断片の間に隙間を有する」ことから,隣り合う「リテーニリング断片」の平面が,連結されるものではない。
ここで,引用文献2記載事項や引用文献3記載事項のように,上下の定盤間にキャリアを装着してラッピング加工を行うラッピング装置のキャリアにおいて,キャリアのホールの形状を多角形にすることが周知技術であったとしても,このキャリアは「化学機械研磨システムのキャリアヘッド」に固定されるものではなく,ラッピング装置の上下の定盤間に装着される「キャリア」に関する技術事項を,引用発明の化学機械研磨システムのキャリアヘッドに固定される「リテーニング断片」に採用する動機があるとはいえない。
また,引用発明において「リテーニリング断片」の「隙間」は,「リテーニング断片をベースリングから分離するとき,作業を容易にする空間と,リテーニング断片が熱膨張により膨張できるスペースを提供するためのものであり,また,CMP工程時にスラリーの流入を促すためのものである」から,該「隙間」をなくし,隣り合う「リテーニリング断片」の内面を連結することには,阻害要因がある。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2記載事項,引用文献3記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

ウ また,引用文献3記載事項は,上記アで検討したように,上下の定盤間にキャリアを装着してラッピング加工を行うラッピング装置におけるキャリアに関するものであり,本願発明1のように化学機械研磨システムのキャリアヘッドに固定される「保持リング」に関するものではなく,当業者であっても,引用文献3記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-9について
本願発明2-9は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2記載事項,引用文献3記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明10-14について
本願発明10-13は,概略,本願発明1の保持リングを有するキャリアヘッドに関する発明であり,本願発明14は,概略,本願発明1の保持リングを用いた研磨方法に関する発明であり,どちらも,本願発明1の「隣り合う平面状ファセットはコーナーで連結され」るという技術事項を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2記載事項,引用文献3記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由2について
本願発明1-14は,上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点3に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-30 
出願番号 特願2016-564001(P2016-564001)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和湯川 洋介中田 剛史  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小川 将之
発明の名称 ファセット付き内面を有する保持リング  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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