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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
管理番号 1366771
審判番号 不服2019-8665  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-28 
確定日 2020-10-02 
事件の表示 特願2015-517086「横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日国際公開、WO2014/185410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年5月13日〔優先権主張 平成25年5月13日(JP)日本国〕を国際出願日とする特許出願であって、
平成30年6月18日付けの拒絶理由通知に対し、平成30年10月17日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、
平成31年3月25日付けの拒絶査定に対し、令和元年6月28日付けで審判請求と同時に手続補正がなされ、
令和2年2月7日付けの審判合議体による拒絶理由通知に対し、令和2年4月10日付けで意見書の提出とともに手続補正(以下「第3補正」ともいう。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明(以下「本1発明」?「本9発明」ともいう。)は、第3補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、
(B)ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、オキシラン基、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、トリアルコキシシリル基、及び重合性不飽和結合基から選ばれる少なくとも1種の置換基を1分子中に2個以上有する架橋性化合物、及び
(C)有機溶媒
を含有する重合体組成物であって、
前記(A)成分が、下記式(2)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH_(2)-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y_(1)は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5?8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2?6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR_(0)(式中、R_(0)は水素原子又は炭素数1?5のアルキル基を表す)、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y_(2)は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1?6のアルコキシ基を表すか、又はY_(1)と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0?2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す。)
で表される感光性側鎖を有し、
さらに、(A)成分が、下記式(21)?(31)(式中、A及びBは上記と同じ定義を有する;
Y_(3)は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R_(3)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、炭素数1?12のアルキル基、又は炭素数1?12のアルコキシ基を表す;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
lは1?12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)?(24)において、全てのmの合計は2以上であり、式(25)?(26)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1?3の整数を表す;
R_(2)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z_(1)、Z_(2)は単結合、-CO-、-CH_(2)O-、-CH=N-、-CF_(2)-を表す)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有し、
前記(A)感光性の側鎖型高分子が、感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得られ、
該光反応性側鎖モノマーが、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネンのラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖を形成する重合性基と、前記式(2)からなる側鎖を形成する部位とを有する構造を有し、
前記(B)架橋性化合物が、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンであり、
該(B)成分が重合体成分100質量部に対して、0.1?150質量部であり、
前記(C)有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記重合体組成物。
【化1】



【請求項2】
前記液晶性側鎖が、前記式(27)で表される側鎖である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、下記式(9)
(式中、A、X、Rは、上記と同じ定義を有し、
lは1?12の整数を表す;
mは、0?2の整数を表す。)
で表される感光性側鎖を有する請求項1?3のいずれか一項に記載の組成物。
【化2】

【請求項5】
[I] 請求項1?4のいずれか1項に記載の組成物を、横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法により製造された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板。
【請求項7】
請求項6記載の基板を有する横電界駆動型液晶表示素子。
【請求項8】
請求項6記載の基板(第1の基板)を準備する工程;
[I’] 第2の基板上に
(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、
(B)ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、オキシラン基、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、トリアルコキシシリル基、及び重合性不飽和結合基から選ばれる少なくとも1種の置換基を1分子中に2個以上有する架橋性化合物、及び
(C)有機溶媒
を含有する重合体組成物を、塗布して塗膜を形成する工程;
[II’] [I’]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III’] [II’]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する第2の基板を得る工程;及び
[IV] 液晶を介して前記第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、前記第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有することにより、横電界駆動型液晶表示素子を得る、該液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法により製造された横電界駆動型液晶表示素子。」

第3 令和2年2月7日付けの拒絶理由通知の概要
令和2年2月7日付けの拒絶理由通知(以下「先の拒絶理由通知」という。)には、理由1及び2として、次の理由が示されている。

理由1:
この出願の請求項1?9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由2:
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

そして、その「記」には、次の1.(1)の引用刊行物と、2.(4)の記載不備が指摘されている。

1.(1)引用刊行物
刊行物1:特開2008-276149号公報
刊行物2:特開2012-173609号公報
刊行物3:特開2012-98558号公報
刊行物4:国際公開第2012/002511号(原審の文献1に同じ。)
刊行物5:特許第3912284号公報

2.(4)明細書の記載と側鎖型高分子の範囲について
本願請求項1の「式(2)…で表される感光性側鎖」及び「式(21)?(31)…からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖」の多数の選択肢、並びに式(2)と式(21)?(31)の組み合わせは、膨大な数の「側鎖型高分子」を表現し得るものとなっているのに対して、本願明細書の発明の詳細な説明には、その段落0194の「合成例2」の1種類の具体例(実施例5?17で用いられているメタクリルポリマーM2)のみが記載されているにすぎず、本願請求項3の「(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖」の各々、及び本願請求項4の式(9)の多数の選択肢についても十分な記載が見当たらない。このため、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その(A)成分の側鎖型高分子の範囲について「式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味」が「具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度」に記載されておらず、特許出願時の技術常識を参酌して「当該式が示す範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度」に十分な数の具体例が開示されているものでもないので、本願請求項1及び3?4並びにその従属項の全てが、上記『高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れ、向上した電圧保持率を有し、向上した密着性を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜の提供』という課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

第4 当審の判断
1.理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の適否判断の観点
一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(…)が証明責任を負うと解するのが相当である。…当然のことながら,その数式の示す範囲が単なる憶測ではなく,実験結果に裏付けられたものであることを明らかにしなければならないという趣旨を含むものである。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
また、一般に『特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならない。そして,本件訂正発明におけるメソゲン化合物a,a1,a2を定義する式IないしI’は,請求項によってその具体的内容を多少異にするものの,いずれも当該式を構成する重合性基P,スペーサー基Sp,結合基X,メソゲン基MG,末端基Rといった基本骨格部分において非常に多くの化合物を含む表現である上,これらに結合する置換基の選択肢も考慮すれば,その組み合わせによって膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている。このような場合に,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するためには,発明の詳細な説明は,上記式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該式が示す範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示して記載することを要するものと解するのが相当である。』とされている〔平成30年(行ケ)第10034号判決参照。〕。

(2)本願発明の解決しようとする課題
本願請求項1?9に係る発明の解決しようとする課題は、本願明細書の0016の「本発明は、高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れた、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子を提供することを目的とする。また、本発明の目的は、上記目的に加えて、液晶配向膜の膜密度を向上させて該液晶配向膜中に存在する不純物を液晶側に移動させることなく、向上した電圧保持率を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜を提供することにある。さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、液晶配向膜とシール剤との相互作用を高めることにより、向上した密着性を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜を提供することにある。」との記載を含む発明の詳細な説明の記載からみて『高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れ、向上した電圧保持率を有し、向上した密着性を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜の提供』にあるものと認められる。

(3)本願明細書の記載について
本願明細書の段落0109?0110には「液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の重合反応に用いる有機溶媒」の具体例として「ジオキサン」等が記載され、同段落0138には「本発明に用いられる重合体組成物に用いる有機溶媒」の具体例として「N-メチル-2-ピロリドン」等が記載され、同段落0140には「膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)」の具体例として「ブチルセロソルブ」等が記載され、同段落0192には「本実施例で用いる試薬の略号」として「THF:テトラヒドロフラン」と「NMP:N-メチル-2-ピロリドン」と「BC:ブチルセロソルブ」の3種類の「有機溶媒」が記載されている。
そして、同段落0193?0195には「合成例1…40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(A1)を得た。得られたメタクリレートポリマー粉末(A1)(6.0g)にNMP(29.3g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液にNMP(24.7g)、BC(40.0g)を加え攪拌することによりメタクリルポリマー溶液M1を得た。…合成例2…40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(A2)を得た。得られたメタクリレートポリマー粉末(A2)(6.0g)にNMP(54.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BC(40.0g)を加え攪拌することによりメタクリルポリマー溶液M2を得た。…実施例1…合成例1で得られたメタクリルポリマー溶液M1 5.0gに、T1 0.015gを加え、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤A1を得た。」との記載がなされている。
すなわち、本願明細書の実施例1の「液晶配向剤A1」では「NMP:N-メチル-2-ピロリドン」と「BC:ブチルセロソルブ」の2種類のみからなる「有機溶媒」が使用されているといえる。

また、同段落0188?0189には「実施例で使用するメタクリルモノマーMA1及びMA2」の化学式として「

」との記載がなされ、同段落0190には「実施例で使用する架橋剤T1?T14を以下に示す。なお、T1?T14は、次に示す方法によって合成した。T1:ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン(東京化成製)。…T3:N,N,N‘,N’-TETRAGLYCIDYL-4,4‘-DIAMINODIPHENYLMETHANE(Aldrich製)。」との記載がなされ、同段落0191にはT1?T3の化学式として「

」が記載され、同段落0200には「表1に示す組成を用いた以外、実施例1と同様な方法により、実施例2?18の液晶配向剤A2?A18を得、これを用いて液晶セル及び密着性評価用サンプルを調製した。また、実施例1と同様な方法により、電圧保持率(VHR)及び密着性を測定した。その結果も表1に示す。」との記載がなされ、同段落0202には「

」との記載がなされている。

なお、本1発明の「前記(A)感光性の側鎖型高分子が、感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得られ」る(A)成分に関して、
本願明細書の実施例1?17で用いられている「MA1」の光反応性側鎖モノマーは、本1発明の「式(2)」で表される感光性側鎖において、Aが「単結合」で、Dが「-O-」で、Sが「炭素数6のアルキレン基」で、Tが「単結合」で、Y_(2)が「2価のベンゼン環」で、Rが「ヒドロキシ基」で、l1及びl2が0である場合のものに該当し、
本願明細書の実施例5?17で用いられている「MA2」の液晶性側鎖モノマーは、本1発明の「式(27)」の液晶性側鎖において、Aが「-O-」で、lが「6の整数」で、m3が「1の整数」である場合のものに該当する。

また、本1発明の「前記(B)架橋性化合物が、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンであ」る(B)成分に関して、
本願明細書の段落0191のT1の化学式で表される架橋性化合物の化合物名は「トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン」であって、同段落0091の「T1:ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン」との記載に整合しないが、同段落0202のT1を使用する「実施例5」は本1発明の「ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン」を用いる具体例に該当するものと推認できる。また、同段落0202のT3を使用する「実施例7」は本1発明の「N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」を用いる具体例に該当する。

さらに、本1発明の「前記(C)有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、…3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る(C)成分に関して、
第3補正によって補正後の請求項1の記載に盛り込まれた当該(C)成分の選択肢に関する事項(IV)について、第3補正と同日付の意見書の第2頁では「上記(IV)は、本件明細書の段落[0110]に基づきます。」との釈明がなされているところ、
本願明細書の段落0110の記載は「液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の重合反応に用いる有機溶媒」の具体例についての記載となっており、第3補正による補正後の本1発明の「(C)有機溶媒」の選択肢には、同段落0202の表1の実施例1?17において用いられている有機溶媒の「ブチルセロソルブ」が含まれていない。

(4)対比・判断
明細書のサポート要件に適合するか否かについて「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か」を以下に検討する。
先ず、第3補正による補正後の本願請求項1の記載は「式(2)…で表される感光性側鎖」及び「式(21)?(31)…からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖」の非常に多くの側鎖を含む表現である上、その式(2)と式(21)?(31)の組み合わせによって膨大な数の「側鎖型高分子」を表現し得るものとなっている。
これに対して、本願明細書の発明の詳細な説明には、その段落0194の「合成例2」の1種類の具体例(メタクリルモノマーMA1とMA2を反応させて得られたメタクリルポリマー溶液M2)のみが記載されているにすぎない。

すなわち、本1発明の「

」で表される「式(2)」は、
その「A」と「B」と「D」の連結基として「A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH_(2)-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「S」の連結基として「Sは、炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「T」の連結基として「Tは、単結合または炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「Y_(2)」の連結基として「Y_(2)は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「R」の末端基として「Rは、ヒドロキシ基、炭素数1?6のアルコキシ基を表すか、又はY_(1)と同じ定義を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「Y_(1)」の末端基として「1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5?8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2?6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR_(0)(式中、R_(0)は水素原子又は炭素数1?5のアルキル基を表す)、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「X」の連結基として「Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
その「P」と「Q」の連結基として「P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
本1発明の「光反応性側鎖モノマー」の重合性基として「炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネンのラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖を形成する重合性基」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
本1発明の「液晶性側鎖モノマー」の側鎖として「式(21)?(31)」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
式(21)の「R_(2)」の末端基として「R_(2)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
式(22)の「Y_(3)」の末端基として「Y_(3)は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
式(23)?式(26)の「R_(3)」の末端基として「R_(3)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、炭素数1?12のアルキル基、又は炭素数1?12のアルコキシ基を表す;」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
式(23)の「Z_(1)」と式(24)の「Z_(2)」の連結基として「Z_(1)、Z_(2)は単結合、-CO-、-CH_(2)O-、-CH=N-、-CF_(2)-を表す…からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有し」という非常に多くの選択肢を含む表現となっており、
これらの組み合わせは膨大なものであるが、本願明細書の実施例では、本1発明の要件を満たす「側鎖型高分子」として1種類の具体例(メタクリルモノマーMA1とMA2を反応させて得られたメタクリルポリマー溶液M2)のみが記載されているにすぎない。

そして、例えば、上記「A」の連結基の多数の選択肢における「単結合」等と「-O-CO-CH=CH-」等とが、相互に類似した化学構造を有するといえる合理的な根拠は見当たらず、これら多数の選択肢の各々が相互に同等の特性や有用性を示し得るといえる「試験結果」や「作用機序」の説明なども本願明細書の発明の詳細な説明の記載に見当たらないので、本願出願時の「技術常識」を参酌しても、本願明細書の実施例7等で用いられた「メタクリルモノマーMA1とMA2を反応させて得られたメタクリルポリマー」という「側鎖型高分子」と、他の選択肢の「側鎖型高分子」の全てが、同様の特性や有用性を組成物に付与できると認識することはできない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、その(A)成分の「側鎖型高分子」の範囲について「式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味」が「具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度」に記載されているとはいえず、特許出願時の技術常識を参酌して「当該式が示す範囲内であれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度」に十分な数の具体例が開示されているものでもないので、本願請求項1及びその従属項の全てが、上記『高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れ、向上した電圧保持率を有し、向上した密着性を有する横電界駆動型液晶素子及び該素子のための液晶配向膜の提供』という課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

(5)審判請求人の主張について
令和2年4月10日付けの意見書の第12頁において、審判請求人は『本願は、特定の「感光性側鎖」、すなわち「式(2)で表される感光性側鎖」、特定の「架橋性化合物」及びその特定の量、特定の「有機溶媒」の組合せにより、効果が発揮されるものであり、液晶性側鎖は「式(21)?(31)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖」が存在すること及び該液晶性側鎖が液晶性側鎖モノマー由来であることを満たせば、すなわち請求項1に規定されていることを満たせば、その効果が発揮されるものです。したがって、「(4)明細書の記載と側鎖型高分子の範囲について」という項目に関しては、「液晶性側鎖」について限定しなくともサポート要件を満たすものと確信いたします。』と主張している。
しかしながら、本願明細書の実施例7等で用いられた「メタクリルモノマーMA1とMA2を反応させて得られたメタクリルポリマー」という「側鎖型高分子」で得られた結果を、本1発明の膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている「側鎖型高分子」の全ての選択肢にまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できるといえる具体的な根拠は見当たらないので、上記主張は採用できない。

(6)サポート要件のまとめ
以上総括するに、本1発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1及びその従属項の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

2.理由1(進歩性)について
(1)引用刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開2008-276149号公報
刊行物2:特開2012-173609号公報
刊行物3:特開2012-98558号公報
刊行物4:国際公開第2012/002511号
刊行物5:特許第3912284号公報

上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「【請求項1】光反応性基を有し、かつそれらが少なくとも1つの水素結合部位により、2量体を形成する側鎖と、光反応性を有さず、少なくとも1つの水素結合部位により、2量体を形成する側鎖とを含有することを特徴とする高分子フィルム。」

摘記1b:段落0015
「【0015】また、このような光反応性高分子は、液晶性を損なわない程度に耐熱性を向上させるための架橋剤を添加することや、液晶性を損なうことなく液晶性を示さない単量体を感光性の重合体に共重合してもかまわない。」

摘記1c:段落0016?0020及び0024
「【0016】本発明の光学素子の実施例において用いた光配向材の原料化合物に関する合成方法を以下に示す。
(単量体1)…化学式3に示される単量体1を合成した。【化3】

【0017】
(単量体2)…化学式4に示される単量体2を合成した。【化4】

【0018】…単量体1を…重合することにより重合体1を得た。この重合体1は135℃から187℃の温度範囲で液晶相を示した。…
【0019】…単量体2を…重合することにより感光性の重合体2を得た。この重合体2も液晶相を示した。
【0020】…単量体1と単量体2をモル比8:2で1,4-ジオキサン中に溶解し、反応開始剤としてAIBNを添加して重合することにより感光性の重合体3を得た。この重合体3も液晶相を示した。…
【0024】(実施例1)重合体3を1,4-ジオキサンに溶解し溶液を調整した。この溶液をカバーガラス基板上にスピンコーターを用いて約1.7μmの厚みとなるよう塗布した。…このように作製した液晶セルを偏光顕微鏡で観察すると低分子液晶が配向していることが確認された。」

上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項3
「【請求項3】一般式(I)【化1】

…で示される繰り返し単位を有する共重合性(メタ)アクリル酸ポリマーを含んでなる,位相差フィルム用組成物。」

摘記2b:段落0022及び0043
「【0022】本発明に係る光反応性基を有する液晶性ポリマー(以下,単に「液晶性ポリマー」ということがある。)としては,例えば,液晶性高分子のメソゲン成分として多用されているビフェニル基,ターフェニル基,ナフタレン基,フェニルベンゾエート基,アゾベンゼン基,これらの誘導体などの置換基(メソゲン基)と,シンナモイル基,カルコン基,シンナミリデン基,β-(2-フェニル)アクリロイル基,桂皮酸基,これらの誘導体などの光反応性基を併せ有する構造の側鎖を有し,アクリレート,メタクリレート,マレイミド,N-フェニルマレイミド,シロキサンなどの構造を主鎖に有するポリマーを挙げることができる。…
【0043】本発明に係る液晶性ポリマーは,溶媒に溶解して,位相差フィルム用組成物とすることができる。さらに,当該組成物には,光重合開始剤,界面活性剤等の他,光及び熱により重合を起こさせる重合性組成物に通常含まれる成分を適宜添加してもよい。」

上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:請求項4
「【請求項4】架橋剤をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の液晶配向剤。」

摘記3b:段落0002?0003
「【0002】…視角依存性の少ないIPS(In-Plane Switching)型素子…が開発されている。…
【0003】これらの液晶表示素子にて使用される液晶配向膜は、…液晶配向剤を基板に塗布した後、これを加熱することにより形成される。」

摘記3c:段落0018、0106?0110
「【0018】また、上記液晶配向剤は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。これにより、電圧保持率などの電気特性が向上する。…
【0106】…エポキシ化合物を液晶配向膜の架橋剤として用いることにより、液晶配向膜における機械的強度の向上を図ることができる。また、電圧保持率などの電気特性を向上させることができる。…
【0107】上記エポキシ化合物としては、例えば…N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン…などを好ましいものとして挙げることができる。
【0108】これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1?30重量部である。
【0109】…また、官能性シラン化合物は、液晶配向膜と基板との接着性向上を目的として使用することもできる。
【0110】上記官能性シラン化合物としては、例えば…N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、…3?グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。」

上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0111
「[0111]液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。例えば、…N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。…これらの化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1?30質量部であることが好ましく、より好ましくは1?20質量部である。」

摘記4b:段落0212及び0277
「[0212][化65]

[0277](実施例30)液晶配向剤(B)10.0gに対して上記で得られた重合性化合物(RM20)を0.06g(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(B20)を調製した。」

上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:請求項4
「【請求項4】請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の液晶配向処理剤を基板上に塗布、焼成後、ラビング処理を行って形成される横電界駆動用液晶配向膜。」

摘記5b:段落0005?0006、0030及び0043
「【0005】一方で、液晶配向膜は、液晶配向剤を印刷し、乾燥、焼成を行った後にラビング処理を行って形成されるのが一般的であるが、横電界方式液晶セルでは、基板の片側のみに電極構造を有するため基板の凹凸が大きく、また、窒化珪素などの絶縁体が基板表面に形成されていることもあり、従来の配向剤と比較してより印刷性に優れた液晶配向処理剤が求められている。…
【0006】即ち、横電界方式用液晶配向膜では、残像や焼き付きを低減させるだけではなく、印刷性や耐ラビング性に優れた液晶配向処理剤により形成される液晶配向膜が求められていた。…
【0030】また、上記ポリマーの樹脂膜と、基板の密着性をさらに向上させる目的で、得られたポリマー溶液に官能性シラン含有化合物またはエポキシ基含有化合物などを添加剤として加えることもできる。その具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、…N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げることができる。これら官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物は、全ポリマー溶液の重量に対して0.1?30重量%であることが好ましく、より好ましくは1?20重量%である。…
【0043】本発明の液晶配向処理剤は、横電界駆動液晶表示素子の液晶配向膜として使用した際に、印刷性に優れ、ラビングによるダメージが少なく、かつ横電界方式特有の残像や焼き付きの防止に対して優れており、表示品位の高い液晶表示素子を得ることができる。」

(2)刊行物1に記載された発明
摘記1aの「光反応性基を有し…2量体を形成する側鎖と、光反応性を有さず…2量体を形成する側鎖とを含有する…高分子フィルム。」との記載、及び
摘記1cの「光配向材の原料化合物」である「液晶相」を示す「感光性の重合体3」を「1,4-ジオキサンに溶解」して調整した実施例1の「溶液」についての記載からみて、刊行物1には、
『化学式3に示される単量体1

と、化学式4に示される単量体2

をモル比8:2で重合することにより得られる液晶相を示す、光反応性基を有する側鎖を含有する光反応性高分子(重合体3)と、1,4-ジオキサンとを含む光配向材。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本1発明と刊1発明とを対比する。
刊1発明の「液晶相を示す、光反応性基を有する側鎖を含有する光反応性高分子(重合体3)」は、本1発明の「(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子」に相当する。
刊1発明の「1,4-ジオキサン」は、本1発明の「(C)有機溶媒」及び「前記(C)有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である」に相当する。
刊1発明の「化学式3に示される単量体1」に由来する「光反応性基」を有する「側鎖」は、本願明細書の実施例の「メタクリルモノマーMA1」と合致する単量体によって得られる側鎖に対応するものであって、本1発明の式(2)において、Sが炭素数6のアルキレン基であり、Aが単結合を表し、Tが単結合であり、Dが-O-を表し、Y_(2)が2価のベンゼン環であり、Rがヒドロキシ基を表し、l1が0であるものに相当し、
刊1発明の「化学式3に示される単量体1」は、重合性基として「メタクリレート」残基を有するので、本1発明の「該光反応性側鎖モノマーが、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネンのラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖を形成する重合性基と、前記式(2)からなる側鎖を形成する部位とを有する構造を有し」に相当し、
刊1発明の「化学式4に示される単量体2」に由来する「側鎖」は、本願明細書の実施例の「メタクリルモノマーMA2」と合致する単量体によって得られる側鎖に対応するものであって、刊行物1の段落0019(摘記1b)の「重合体2も液晶相を示した」との記載や、刊行物2の段落0022(摘記2b)の「液晶性ポリマー…液晶性高分子のメソゲン成分として多用されている…置換基(メソゲン基)…の構造を主鎖に有するポリマー」との記載にあるように「液晶性」を有する側鎖であることが明らかであるところ、本1発明の式(27)において、lが6の整数を表し、Aが-O-を表し、m3が1の整数を表するものに相当し、
刊1発明の「化学式3に示される単量体1…と、化学式4に示される単量体2…をモル比8:2で重合することにより得られる…光反応性高分子(重合体3)」は、本1発明の「前記(A)感光性の側鎖型高分子が、感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得られ」に相当する。
刊1発明の「…とを含む光配向材」は、その組成に「光反応性高分子(重合体3)」という「重合体」の成分が含まれていることから、本1発明の「重合体組成物」に相当する。

してみると、本1発明と刊1発明は『(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、及び
(C)有機溶媒
を含有する重合体組成物であって、
前記(A)成分が、下記式(2)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH_(2)-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1?12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y_(1)は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5?8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2?6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR_(0)(式中、R_(0)は水素原子又は炭素数1?5のアルキル基を表す)、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y_(2)は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1?6のアルコキシ基を表すか、又はY_(1)と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環であり、Pの数が2以上となるときは、P同士は同一でも異なっていてもよく、Qの数が2以上となるときは、Q同士は同一でも異なっていてもよい;
l1は0または1である;
l2は0?2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す。)
で表される感光性側鎖を有し、
さらに、(A)成分が、下記式(21)?(31)(式中、A及びBは上記と同じ定義を有する;
Y_(3)は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、炭素数1?5のアルキル基、又は炭素数1?5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R_(3)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、-CH=C(CN)_(2)、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5?8の脂環式炭化水素、炭素数1?12のアルキル基、又は炭素数1?12のアルコキシ基を表す;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
lは1?12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)?(24)において、全てのmの合計は2以上であり、式(25)?(26)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1?3の整数を表す;
R_(2)は、水素原子、-NO_(2)、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5?8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z_(1)、Z_(2)は単結合、-CO-、-CH_(2)O-、-CH=N-、-CF_(2)-を表す)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有し、
前記(A)感光性の側鎖型高分子が、感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得られ、
該光反応性側鎖モノマーが、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネンのラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖を形成する重合性基と、前記式(2)からなる側鎖を形成する部位とを有する構造を有し、

前記(C)有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記重合体組成物。
【化1】



』という点において一致し、次の〔相違点〕においてのみ一応相違する。

〔相違点〕本1発明は「(B)ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、オキシラン基、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、トリアルコキシシリル基、及び重合性不飽和結合基から選ばれる少なくとも1種の置換基を1分子中に2個以上有する架橋性化合物」として「前記(B)架橋性化合物が、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」を「該(B)成分が重合体成分100質量部に対して、0.1?150質量部」の量で有するのに対して、刊1発明は「架橋性化合物」を有するものではない点。

(4)判断
上記〔相違点〕について検討するに、刊行物1の段落0015(摘記1b)には「光反応性高分子は…耐熱性を向上させるための架橋剤を添加」との記載があるので、刊行物1には、刊1発明の組成に架橋剤(架橋性化合物)を更に添加することについての明示的な記載があるといえるところ、
刊行物3の段落0106?0108(摘記3c)の「エポキシ化合物を液晶配向膜の架橋剤として用いる…N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン…これらエポキシ化合物の配合割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1?30重量部である。」との記載、
刊行物4の段落0111(摘記4a)の「液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン…が挙げられる。…これらの化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1?30質量部であることが好ましく、より好ましくは1?20質量部である。」との記載、及び
刊行物5の段落0030(摘記5b)の「基板の密着性をさらに向上させる目的で…エポキシ基含有化合物などを添加剤として加える…その具体例としては…N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げることができる。…エポキシ基含有化合物は、全ポリマー溶液の重量に対して0.1?30重量%であることが好ましく、より好ましくは1?20重量%である。」との記載にあるように、
液晶配向剤に用いる「架橋剤」として「N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」等のエポキシ化合物を「重合体の合計100重量部に対して…0.1?30重量部」程度の量で用いることは普通に知られているから、
刊行物1に記載された「架橋剤」の種類として、刊行物3?5などに記載される「N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」などの周知慣用の架橋剤を採用し、その量として「重合体の合計100重量部」に対して「0.1?30重量部」程度を採用することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。
また、刊行物3の段落0106(摘記3c)の「エポキシ化合物を液晶配向膜の架橋剤として用いることにより、液晶配向膜における機械的強度の向上を図ることができる。また、電圧保持率などの電気特性を向上させることができる。」との記載からみて、本1発明に格別の効果があるとも認められない。
したがって、本1発明は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)審判請求人の主張について
令和2年4月10日付けの意見書の第10頁において、審判請求人は「引例1?引例5は、いずれも所定の「架橋性化合物」(上記構成i)を所定量(上記構成j)用いること、及び所定の有機溶媒(上記構成k)を用いることを開示も示唆もしていません。」と主張しているが、刊行物3?5には「N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン」を所定量用いることが記載されており、刊1発明の「1,4-ジオキサン」は、本1発明の「有機溶媒」の選択肢にある「ジオキサン」と合致するものなので、当該主張は採用できない。
また、同意見書の第10頁において、審判請求人は「引例3は、上述したとおり、比較的高沸点溶媒である「NMP」(N-メチル-2-ピロリドン)を用いないことを開示しており、本発明の所定の有機溶媒(上記構成k)を用いることにはいわゆる阻害要因があります。よって、拒絶理由通知書に指摘されているように、引例1と引例3とを組み合わせることはできません。」と主張しているが、本1発明は「有機溶媒」が「ジオキサン」などの1種であれば「N-メチル-2-ピロリドン」でなくても良いものであり、刊行物1及び3に記載された発明の有機溶媒は「N-メチル-2-ピロリドン」でなくても良いものであるから、刊行物1に記載の発明に、刊行物3に記載の発明を組み合わせることに「阻害要因」があるとはいえず、上記主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条の規定により特許をすることができないものであるから、同法第49条第2号に該当する。
また、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、同法第49条第4号に該当する。
したがって、その余の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-07-22 
結審通知日 2020-07-27 
審決日 2020-08-18 
出願番号 特願2015-517086(P2015-517086)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C09K)
P 1 8・ 537- WZ (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 古妻 泰一
木村 敏康
発明の名称 横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 田村 慶政  
代理人 紺野 昭男  
代理人 井波 実  
代理人 紺野 昭男  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 田村 慶政  
代理人 井波 実  

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