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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C03C
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 C03C
管理番号 1366773
審判番号 不服2019-13895  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-18 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 特願2017-227491「無アルカリガラス板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日出願公開、特開2018- 35068、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月17日を出願日とする特願2013-216016号の一部を、平成29年11月28日に特願2017-227491号として新たな特許出願としたものであって、平成29年11月28日付けで上申書及び手続補正書が提出され、平成30年11月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年 1月 8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年 2月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年 3月 8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和 1年 7月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年10月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 1年10月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲において、請求項7を変更する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)からなるものである。
補正前の請求項7及び補正後の請求項7は、それぞれ以下のとおりである。
(1)補正前の請求項7
「SrOの含有量が1モル%以下であることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載の無アルカリガラス板。」

(2)補正後の請求項7(当審注:下線部は補正箇所であり、当審が付与した。)
「B_(2)O_(3)の含有量が0.99モル%以上であることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載の無アルカリガラス板。」

2 本件補正の適否
本件補正事項は、補正前の請求項7の「SrOの含有量が1モル%以下である」との発明特定事項を削除する補正を含むものである。
そして、「SrOの含有量が1モル%以下である」との発明特定事項を削除する補正により、補正後の請求項7に係る発明は、「SrOの含有量」が1モル超のものを含むものとなるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも該当しない。

3 小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
前記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲に係る発明は、平成31年 3月 8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」?「本願発明11」という。)。
「【請求項1】
ガラス組成として、モル%で、SiO_(2) 66?78%、Al_(2)O_(3) 11.82?15%、B_(2)O_(3) 0.1?1.8%、MgO 0?5%、CaO 5.42?7.9%、SrO 0?1.34%、BaO 1?8%、RO(ここで、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 14?18%を含有し、実質的にアルカリ金属酸化物を含有せず、歪点が725℃より高く、液相温度が1260℃未満であることを特徴とする無アルカリガラス板。
【請求項2】
B_(2)O_(3)の含有量が0.5モル%以上であることを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス板。
【請求項3】
La_(2)O_(3)の含有量が0?1モル%であり、且つY_(2)O_(3)の含有量が0?1モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無アルカリガラス板。
【請求項4】
ガラス組成として、更に、SnO_(2)を0.001?1モル%含むことを特徴とする請求項1?3の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項5】
ヤング率が78GPaより大きいことを特徴とする請求項1?4の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項6】
ヤング率/密度が29.5GPa/g・cm^(-3)より大きいことを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項7】
SrOの含有量が1モル%以下であることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項8】
10^(2.5)ポアズにおける温度が1720℃以下であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項9】
液相温度における粘度が10^(4.8)ポアズ以上であることを特徴とする請求項1?8の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項10】
オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1?9の何れかに記載の無アルカリガラス板。
【請求項11】
有機ELデバイスに用いることを特徴とする請求項1?10の何れかに記載の無アルカリガラス板。」

第4 原査定の理由の概要
引用文献4:国際公開第2013/130695号
引用文献6:国際公開第2012/103194号

原査定の理由は、本願発明1?11は、引用文献6に記載された発明、又は引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)引用文献4の記載事項及び引用文献4に記載された発明
(ア)引用文献4には以下の(4a)?(4c)の記載がある。(当審注:下線は当審が付した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)
(4a)「1. A glass substantially free of alkalis comprising, in mole percent on an oxide basis: Si0_(2) 69-72.5, A1_(2)0_(3) 11-13.5, B_(2)0_(3) 1-5, MgO 3-5, CaO 4-6.5, SrO 0-3, BaO 1.5-5, where Si0_(2), Al_(2)O_(3), B_(2)O_(3), MgO, CaO, SrO and BaO represent the mole percents of the oxide components.」(特許請求の範囲)
(当審訳:1.酸化物に基づくモルパーセントで表して、69?72.5%のSiO_(2)、11?13.5%のAl_(2)O_(3)、1?5%のB_(2)O_(3)、3?5%のMgO、4?6.5%のCaO、0?3%のSrO、および1.5?5%のBaOを含んでなることを特徴とする、アルカリを実質的に含まないガラス。)

(4b)「[00038] In addition to the glass formers (SiO_(2), Al_(2)O_(3), and B_(2)O_(3)), the glasses described herein also include alkaline earth oxides. In one aspect, at least three alkaline earth oxides are part of the glass composition, e.g., MgO, CaO, and BaO, and, optionally, SrO. The alkaline earth oxides provide the glass with various properties important to melting, fining, forming, and ultimate use. Accordingly, to improve glass performance in these regards, in one aspect, the (MgO+CaO+SrO+BaO)/Al_(2)0_(3) ratio is greater than or equal to 1.05. As this ratio increases, viscosity tends to increase more strongly than liquidus temperature, and thus it is increasingly difficult to obtain suitably high values for T_(35k)-T_(liq). Thus in another aspect, ratio (MgO+CaO+SrO+BaO)/ Al_(2)0_(3) is less than or equal to 1.4. …
[00039] For certain embodiments of this invention, the alkaline earth oxides may be treated as what is in effect a single compositional component. This is because their impact upon viscoelastic properties, liquidus temperatures and liquidus phase relationships are qualitatively more similar to one another than they are to the glass forming oxides SiO_(2), Al_(2)O_(3), and B_(2)O_(3). However, the alkaline earth oxides CaO, SrO and BaO can form feldspar minerals, notably anorthite (CaAi_(2)Si_(2)0_(8)) and celsian (BaAi_(2)Si_(2)0_(8)) and strontium-bearing solid solutions of same, but MgO does not participate in these crystals to a significant degree. … In this sense, the addition of small amounts of MgO benefits melting by reducing melting temperatures, benefits forming by reducing liquidus temperatures and increasing liquidus viscosity, while preserving high annealing point and, thus, low compaction.
[00040] …As noted above, additions of MgO can destabilize feldspar minerals, and thus stabilize the liquid and lower liquidus temperature. However, once MgO reaches a certain level, mullite, Al_(6)Si_(2)O_(13), may be stabilized, thus increasing the liquidus temperature and reducing the liquidus viscosity. Moreover, higher concentrations of MgO tend to decrease the viscosity of the liquid, and thus even if the liquidus viscosity remains unchanged by addition of MgO, it will eventually be the case that the liquidus viscosity will decrease. Thus in another aspect, 0.2 < MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO) < 0.35. …
[00041] Calcium oxide present in the glass composition can produce low liquidus temperatures (high liquidus viscosities), high annealing points and moduli, and CTE's in the most desired ranges for flat panel applications, specifically, AMLCD applications. It also contributes favorably to chemical durability, and compared to other alkaline earth oxides, it is relatively inexpensive as a batch material. However, at high concentrations, CaO increases the density and CTE. Furthermore, at sufficiently low Si0_(2) concentrations, CaO may stabilize anorthite, thus decreasing liquidus viscosity. …
[00042] SrO and BaO can both contribute to low liquidus temperatures (high liquidus viscosities) and, thus, the glasses described herein will typically contain at least both of these oxides. However, the selection and concentration of these oxides are selected in order to avoid an increase in CTE and density and a decrease in modulus and annealing point. The relative proportions of SrO and BaO can be balanced so as to obtain a suitable combination of physical properties and liquidus viscosity such that the glass can be formed by a downdraw process.」
(当審訳:[00038] ガラス形成剤(SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3))に加えて、本明細書に記載されるガラスは、アルカリ土類酸化物も含む。一態様において、少なくとも3つのアルカリ土類酸化物、例えば、MgO、CaOおよびBaOと、任意選択でSrOが、ガラス組成物の一部である。アルカリ土類酸化物は、ガラスに、溶融、清澄、成形および最終用途にとって重要な様々な特性を与える。したがって、これらに関して、ガラス性能を改善するには、一態様において、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al_(2)O_(3)比は、1.05以上である。この比率が増加すると、液相線温度よりも強く粘度が増加する傾向があり、したがって、T_(35k)-T_(liq)に関して適切に高い値を得ることはますます困難である。したがって、別の態様において、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al_(2)O_(3)比は1.4以下である。…
[00039] 本発明の特定の実施形態について、アルカリ土属酸化物は、事実上、単一組成成分として処理されてもよい。これは、粘弾特性、液相線温度および液相関係に対する影響が、ガラス形成酸化物SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)に対してよりも、互いに対して定量的により類似しているからである。しかしながら、アルカリ土属酸化物CaO、SrOおよびBaOは、長石鉱物、特に、灰長石(CaAl_(2)Si_(2)O_(8))およびセルシアン(BaAl_(2)Si_(2)O_(8))およびこのストロンチウム含有固溶体を形成することができるが、MgOは有意な程度までこれらの結晶に関与しない。…この意味で、少量のMgOの添加は、高い焼き鈍し点と低圧密を保ちつつ、溶融温度を下げることによる溶解の利点、液相温度を下げ、液相線粘度を上げることによる成形の利点が得られる。
[00040] …上記したように、MgOの添加は、長石鉱物を不安定にする可能性があり、したがって、液体およびより低い液相線温度を安定させる。しかしながら、一旦MgOが特定のレベルに達したら、ムライト、Al_(6)Si_(2)O_(13)は安定化し得、したがって、液相線温度を増加させて、液相線粘度を低下させる。そのうえ、MgOの濃度が高いほど、液体の粘度を低下させる傾向があり、したがって、たとえ液相線粘度がMgOの添加によって不変のままであったとしても、それは、最終的には、液相線粘度が低下するケースとなる。したがって、別の態様において、0.2≦MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)≦0.35である。…
[00041] ガラス組成物中に存在する酸化カルシウムは、フラットパネル用途、特に、AMLCD用途について、最も望ましい範囲の低液相線温度(高液相線粘度)、高い焼き鈍し点および弾性率、ならびにCTEを生じることができる。また、化学的耐久性にも寄与するため好ましく、他のアルカリ土類酸化物に比べて、バッチ材料としては比較的安価である。しかしながら、高濃度において、CaOは、密度およびCTEを増加させる。さらに、十分に低いSiO_(2)濃度において、CaOは、灰長石を安定化させて、液相線粘度が減少する。…
[00042] SrOおよびBaOは、両者共、低液相線温度(高液相線粘度)に寄与し、したがって、本明細書に記載されるガラスは、典型的に、これらの酸化物のうち少なくとも1つを含有する。しかしながら、これらの酸化物の選択および濃度は、CTEおよび密度の増加、ならびに弾性率および焼き鈍し点の減少を排除するように選択される。SrOとBaOの相対的な比率を釣り合わせて、物理特性と液相線粘度の好適な組合せが得られるようにし、ガラスがダウンドロー法により形成できるようにする。)

(4c)「 [00059] As can be seen in Table 1, the exemplary glasses have density, CTE, annealing point and Young's modulus values that make the glasses suitable for display applications, such as AMLCD substrate applications,…

[00070]


」(26頁)
(当審訳:[00059] 表1から分かるとおり、例示のガラスは、AMLCD用途などのディスプレイ用途に好適なガラスを製造する密度、CTE、焼き鈍し点およびヤング率の値を有し、


)

(イ)前記(ア)(4a)、(4c)によれば、引用文献4にはアルカリを実質的に含まない「ガラス」が記載されており、このうち実施例7に注目すると、前記「ガラス」は、酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.38%のSiO_(2)、12.24%のAl_(2)O_(3)、1.75%のB_(2)O_(3)、4.18%のMgO、5.33%のCaO、1.26%のSrO、3.72%のBaO、0.11%のSnO_(2)、0.01%のFe_(2)O_(3)、0.01%のZrO_(2)を含んでなり、歪点が741℃であり、液相線温度が1190℃であるものであり、AMLCD用途などのディスプレイ用途に好適なガラスを製造する密度、CTE、焼き鈍し点およびヤング率の値を有するものである。

(ウ)すると、引用文献4には、
「酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.38%のSiO_(2)、12.24%のAl_(2)O_(3)、1.75%のB_(2)O_(3)、4.18%のMgO、5.33%のCaO、1.26%のSrO、3.72%のBaO、0.11%のSnO_(2)、0.01%のFe_(2)O_(3)、0.01%のZrO_(2)を含んでなり、
歪点が741℃であり、液相線温度が1190℃であり、
AMLCD用途などのディスプレイ用途に好適なガラスを製造する密度、CTE、焼き鈍し点およびヤング率の値を有する、アルカリを実質的に含まないガラス。」の発明(以下、「引用4発明」という。)が記載されているといえる。

(2)引用文献6の記載事項及び引用文献6に記載された発明
(ア)引用文献6には以下の(6a)?(6c)の記載がある。
(6a)「A glass comprising in mol percent on an oxide basis:
70≦SiO_(2)≦74.5
10.5≦Al_(2)O_(3)≦13.5
0≦B_(2)O_(3)≦2.5
3≦MgO≦7
3≦CaO≦7
0≦SrO≦4
1.5≦BaO≦6
0≦SnO_(2)≦0.3
0≦CeO_(2)≦0.3
0≦As_(2)O_(3)≦0.5
0≦Sb_(2)O_(3)≦0.5
0.01≦Fe_(2)O_(3)≦0.08
F+Cl+Br≦0.4
a) 1.05≦(MgO+CaO+SrO)/Al_(2)O_(3)≦1.7
b) 0.2≦MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)≦0.45
whereAl_(2)O_(3), MgO, CaO, SrO and BaO represent the mol percents of the representative oxide components.」(当審注:「≦」は「<」の下に「-」と表記されている。)
(当審訳:酸化物基準のモルパーセントで表して、
70≦SiO_(2)≦74.5
10.5≦Al_(2)O_(3)≦13.5
0≦B_(2)O_(3)≦2.5
3≦MgO≦7
3≦CaO≦7
0≦SrO≦4
1.5≦BaO≦6
0≦SnO_(2)≦0.3
0≦CeO_(2)≦0.3
0≦As_(2)O_(3)≦0.5
0≦Sb_(2)O_(3)≦0.5
0.01≦Fe_(2)O_(3)≦0.08
F+Cl+Br≦0.4
を含むガラス:ここで、
a) 1.05≦(MgO+CaO+SrO)/Al_(2)O_(3)≦1.7
b) 0.2≦MgO/(MgO+CaO+SrO+BaO)≦0.45
式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrOおよびBaOは、代表的な酸化物成分のモルパーセントを表す。)

(6b)「[0031] Alkaline earth oxides, MgO, CaO, SrO and BaO, are essential constituents for manufacturing. …However, MgO and CaO increase density much more slowly than the large alkaline earths, Sr and Ba, and thus the relative proportions of the alkaline earths can be manipulated to obtain an optimal combination of Young's modulus and density, consistent with fusion compatibility. In one embodiment, the specific modulus is greater than 30 GPa cm^(3)/gm. In another emdodiment, the specific modulus is greater than 31 GPa cm^(3)/gm. In yet another embodiment, the specific modulus is greater than 31.5 GPa cm^(3)/gm.

[0034] … Because hexacelsian is substantially a barium-strontium aluminosilicate, with comparatively low CaO and BaO, it is generally desirable to have CaO concentrations comparable to the combined concentration of BaO+SrO. As a result of these considerations, the inventive glass will have BaO between 1.5 and 6 mol%, SrO between 0 and 4 mol%, and CaO between 3 and 7 mol%. Compositions within these limits have attractive physical properties and liquidus viscosities suitable for down draw processes such as the fusion process.」
(当審訳:[0031] アルカリ土類酸化物のMgO、CaO、SrOおよびBaOは、製造にとって必須成分である。…しかしながら、MgOおよびCaOは、大きいアルカリ土類であるSrおよびBaよりもずっとゆっくりと密度を増加させ、それゆえ、アルカリ土類の相対比を操作して、フュージョン法の適合性に呼応した、ヤング率と密度の最適な組合せを得ることができる。1つの実施の形態において、比弾性率は30GPacm^(3)/g超である。別の実施の形態において、比弾性率は31GPacm^(3)/g超である。さらに別の実施の形態において、比弾性率は31.5GPacm^(3)/g超である。

[0034] …ヘキサセルシアンは、CaOとBaOが比較的少ない、実質的にバリウム・ストロンチウムアルミノケイ酸塩であるので、CaO濃度をBaO+SrOの総濃度に匹敵させることが一般に望ましい。これらの検討の結果として、本発明のガラスは、1.5モル%と6モル%の間のBaO、0モル%と4モル%の間のSrO、および3モル%と7モル%の間のCaOを有する。これらの範囲内の組成物は、フュージョン法などのダウンドロー法に適した、興味深い物理的性質および液相線粘度を有する。)

(6c)「

」(33頁)
(当審訳:

)

(イ)前記(ア)(6a)、(6c)によれば、引用文献6には「ガラス」が記載されており、このうち実施例87に注目すると、前記「ガラス」は、酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.28%のSiO_(2)、12.27%のAl_(2)O_(3)、1.72%のB_(2)O_(3)、4.19%のMgO、5.34%のCaO、1.29%のSrO、3.76%のBaO、0.12%のSnO_(2)、0.02%のFe_(2)O_(3)、0.01%のZrO_(2)を含んでなり、歪み点が743℃であるものである。

(ウ)すると、引用文献6には、
「酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.28%のSiO_(2)、12.27%のAl_(2)O_(3)、1.72%のB_(2)O_(3)、4.19%のMgO、5.34%のCaO、1.29%のSrO、3.76%のBaO、0.12%のSnO_(2)、0.02%のFe_(2)O_(3)、0.01%のZrO_(2)を含んでなり、
歪点が743℃である、ガラス。」の発明(以下、「引用6発明」という。)が記載されているといえる。

2 対比・判断
(1)本願発明1と引用6発明との対比・判断
(1-1)対比
(ア)本願発明1と引用6発明とを対比すると、引用6発明において、「酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.28%のSiO_(2)、12.27%のAl_(2)O_(3)、1.72%のB_(2)O_(3)、4.19%のMgO」、「1.29%のSrO、3.76%のBaO」「を含」むことは、本願発明1において、「ガラス組成として、モル%で、SiO_(2) 66?78%、Al_(2)O_(3) 11.82?15%、B_(2)O_(3) 0.1?1.8%、MgO 0?5%」、「SrO 0?1.34%、BaO 1?8%」「を含有」することに合致する。
また、引用6発明において、「歪点が743℃である」ことは、本願発明1において、「歪点が725℃より高い」ことに合致する。

(イ)前記(ア)によれば、本願発明1と引用6発明とは、
「ガラス組成として、モル%で、SiO_(2) 66?78%、Al_(2)O_(3) 11.82?15%、B_(2)O_(3) 0.1?1.8%、MgO 0?5%、SrO 0?1.34%、BaO 1?8%を含有し、歪点が725℃より高いガラス。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明1は、「ガラス組成として、モル%で」、「CaO 5.42?7.9%」「を含有」する、との発明特定事項を有するのに対して、引用6発明は、「5.34%のCaO」「を含む」点。

相違点2:本願発明1は、「RO(ここで、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 14?18%を含有」する、との発明特定事項を有するのに対して、引用6発明は、前記発明特定事項を有することが記載されていない点。

相違点3:本願発明1は、「液相温度が1260℃未満である」、との発明特定事項を有するのに対して、引用6発明は、液相温度が明らかでない点。

相違点4:本願発明1は、「無アルカリガラス板」に係る発明であるのに対して、引用6発明は「ガラス」に係る発明である点。

(1-2)判断
(ア)まず、前記(1-1)(イ)の相違点1について検討すると、前記1(2)(ア)(6b)([0031])によれば、引用6発明において、MgOおよびCaOは、大きいアルカリ土類であるSrおよびBaよりもずっとゆっくりと密度を増加させ、それゆえ、アルカリ土類の相対比を操作して、フュージョン法の適合性に呼応した、ヤング率と密度の最適な組合せを得ることができるものである。
そして、引用6発明において、ヤング率と密度の最適な組合せを得るために、SrまたはBaと、Caとを置換して、例えばSrを0.08モル%減らして1.21モル%とするか、またはBaを0.08モル%減らして3.68モル%とした上で、CaOを0.08モル%増やして5.42モル%としたとき、いずれの場合であっても、置換後の引用6発明の「ガラス」のCaOの含有量は、SrOまたはBaOの含有量と合わせて、本願発明1の「無アルカリガラス板」と合致する。

(イ)一方、前記(6b)([0034])によれば、引用6発明においては、ヘキサセルシアンは、CaOとBaOが比較的少ない、実質的にバリウム・ストロンチウムアルミノケイ酸塩であるので、CaO濃度をBaO+SrOの総濃度に匹敵させることが一般に望ましいものである。
ここで、前記(ア)の置換前の引用6発明の「ガラス」においては、CaO濃度が5.34モル%、BaO+SrOの総濃度が3.76+1.29=5.05モル%であり、CaO濃度とBaO+SrOの総濃度の差が5.34-5.05=0.29モル%であったのが、前記(ア)の置換後の引用6発明の「ガラス」においては、CaをSrまたはBaのいずれと置換したとしても、CaO濃度は5.34+0.08=5.42モル%、BaO+SrOの総濃度は5.05-0.08=4.97モル%となり、CaO濃度とBaO+SrOの総濃度の差は5.42-4.97=0.45モル%となる。
すると、前記(ア)の置換後は、置換前よりも、CaO濃度とBaO+SrOの総濃度の差が0.29モル%から0.45モル%に乖離するものである。

(ウ)前記(イ)によれば、前記(ア)の置換により、CaO濃度とBaO+SrOの総濃度が乖離するものであり、これは、CaO濃度をBaO+SrOの総濃度に匹敵させることが一般に望ましい、とされる引用6発明の特性を損なうものとなるので、引用6発明において前記(ア)の置換を行うことを、当業者が容易になし得るとはいえない。

(エ)前記(ウ)によれば、引用6発明において、「ガラス」を、「ガラス組成として、モル%で」、「CaO 5.42?7.9%」「を含有」する、との前記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、当業者が容易になし得るとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明2?11と引用6発明との対比・判断
本願発明2?11は、いずれも、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本願発明2?11と引用6発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(1)(1-1)(イ)の相違点1の点で相違する。
そうすると、前記(1)(1-2)(エ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明2?11を、引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明1と引用4発明との対比・判断
(3-1)対比
(ア)本願発明1と引用4発明とを対比すると、引用4発明において、「酸化物に基づくモルパーセントで表して、71.38%のSiO_(2)、12.24%のAl_(2)O_(3)、1.75%のB_(2)O_(3)、4.18%のMgO」、「1.26%のSrO、3.72%のBaO」「を含」むことは、本願発明1において、「ガラス組成として、モル%で、SiO_(2) 66?78%、Al_(2)O_(3) 11.82?15%、B_(2)O_(3) 0.1?1.8%、MgO 0?5%」、「SrO 0?1.34%、BaO 1?8%」「を含有」することに合致する。
また、引用4発明において、「歪点が741℃であり、液相線温度が1190℃である」ことは、本願発明1において、「歪点が725℃より高く、液相温度が1260℃未満である」ことに合致し、引用4発明における「アルカリを実質的に含まないガラス」は、本願発明1における、「実質的にアルカリ金属酸化物を含有」しない「無アルカリガラス」に相当する。

(イ)前記(ア)によれば、本願発明1と引用4発明とは、
「ガラス組成として、モル%で、SiO_(2) 66?78%、Al_(2)O_(3) 11.82?15%、B_(2)O_(3) 0.1?1.8%、MgO 0?5%、SrO 0?1.34%、BaO 1?8%を含有し、実質的にアルカリ金属酸化物を含有せず、歪点が725℃より高く、液相温度が1260℃未満である、無アルカリガラス。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1’:本願発明1は、「ガラス組成として、モル%で」、「CaO 5.42?7.9%」「を含有」する、との発明特定事項を有するのに対して、引用4発明は、「5.33%のCaO」「を含む」点。

相違点2’:本願発明1は、「RO(ここで、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 14?18%を含有」する、との発明特定事項を有するのに対して、引用4発明は、前記発明特定事項を有することが記載されていない点。

相違点4’:本願発明1は、「無アルカリガラス板」に係る発明であるのに対して、引用4発明は「アルカリを実質的に含まないガラス」に係る発明である点。

(3-2)判断
(ア)まず、前記(3-1)(イ)の相違点1’について検討すると、前記1(1)(ア)(4b)によれば、引用4発明は、ガラス形成剤(SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3))に加えて、アルカリ土類酸化物も含むものであり、ガラス性能を改善するには、一態様において、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al_(2)O_(3)比は1.05以上であり、別の態様において、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al_(2)O_(3)比は1.4以下であり、アルカリ土属酸化物は、粘弾特性、液相線温度および液相関係に対する影響が、ガラス形成酸化物SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)に対してよりも、互いに対して定量的により類似するものである。
一方、アルカリ土属酸化物CaO、SrOおよびBaOは、長石鉱物、特に、灰長石(CaAl_(2)Si_(2)O_(8))およびセルシアン(BaAl_(2)Si_(2)O_(8))およびこのストロンチウム含有固溶体を形成することができるが、MgOは有意な程度までこれらの結晶に関与しないものであり、少量のMgOの添加は、高い焼き鈍し点と低圧密を保ちつつ、溶融温度を下げることによる溶解の利点、液相温度を下げ、液相線粘度を上げることによる成形の利点が得られるものであるが、一旦MgOが特定のレベルに達したら、ムライト、Al_(6)Si_(2)O_(13)は安定化し得、したがって、液相線温度を増加させて、液相線粘度を低下させ、MgOの濃度が高いほど、液体の粘度を低下させる傾向があるものである。
また、酸化カルシウムは、フラットパネル用途、特に、AMLCD用途について、最も望ましい範囲の低液相線温度(高液相線粘度)、高い焼き鈍し点および弾性率、ならびにCTEを生じることができ、化学的耐久性にも寄与するが、高濃度において、CaOは、密度およびCTEを増加させ、さらに、十分に低いSiO_(2)濃度において、CaOは、灰長石を安定化させて、液相線粘度が減少する、との作用を有し、SrOおよびBaOは、両者共、低液相線温度(高液相線粘度)に寄与し、これらの酸化物の選択および濃度は、CTEおよび密度の増加、ならびに弾性率および焼き鈍し点の減少を排除するように選択されるものであり、SrOとBaOの相対的な比率を釣り合わせて、物理特性と液相線粘度の好適な組合せが得られるようにし、ガラスがダウンドロー法により形成できるようにする、との作用を有するものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲4発明においては、アルカリ土類酸化物であるMgO、CaO、SrO及びBaOは、粘弾特性、液相線温度および液相関係に対する影響が、ガラス形成酸化物SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)に対してよりも、互いに対して定量的により類似しているものであるが、もともと、AMLCD用途などのディスプレイ用途に好適なガラスを製造する密度、CTE、焼き鈍し点およびヤング率の値を有する引用4発明において、殊更、CaOをそのほかのアルカリ土類酸化物と置換して、含有量を5.42?7.9%とする理由は存在しないし、甲第4号証には、CaOをそのほかのアルカリ土類酸化物と置換して、含有量を5.42?7.9%とすることが記載も示唆もされるものでもない。

(ウ)前記(イ)によれば、引用4発明において、CaOをそのほかのアルカリ土類酸化物と置換して、含有量を5.42?7.9%とする動機付けは存在しないから、「ガラス」を、「ガラス組成として、モル%で」、「CaO 5.42?7.9%」「を含有」する、との前記相違点1’に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとすることを、当業者が容易になし得るとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本願発明2?11と引用4発明との対比・判断
本願発明2?11は、いずれも、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本願発明2?11と引用4発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(3)(3-1)(イ)の相違点1’の点で相違する。
そうすると、前記(3)(3-2)(ウ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明2?11を、引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)小括
したがって、前記第4の原査定の理由は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるので、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-13 
出願番号 特願2017-227491(P2017-227491)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C03C)
P 1 8・ 57- WY (C03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 金 公彦
村岡 一磨
発明の名称 無アルカリガラス板  
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