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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1366814 |
審判番号 | 不服2019-7799 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-12 |
確定日 | 2020-10-27 |
事件の表示 | 特願2018-138930「ドキュメント管理及びコラボレーション・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開、特開2019- 12529、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年11月10日に出願した特願2016-528236号(パリ条約による優先権主張2013年11月11日(以下,「優先日」という。),米国)の一部を平成30年7月25日に新たな特許出願としたものであって,平成30年10月4日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月7日に意見書とともに手続補正書が提出され,平成31年2月20日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月4日)がなされ,これに対して令和1年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年7月22日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,令和2年1月21日に上申書が提出され,同年5月27日付けで当審により拒絶の理由が通知され,同年8月25日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年2月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-13 ・引用文献等 1-5 <引用文献等一覧> 1.土井 健司,他4名,プレゼンテーション発表時のコメント収集に焦点をあてたアノテーションシステムCollabStickyの開発と評価,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム論文集,日本,社団法人情報処理学会,2007年 6月29日,159-164頁 2.特開2010-34920号公報 3.藤田 拓人,清水 豊,Amazon Kindleブック制作&出版 完全マニュアル,株式会社エムディエヌコーポレーション,2013年 7月21日,初版,p.162 4.特開2003-67330号公報 5.特開2005-228253号公報 第3 本願発明 本願請求項1乃至13に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明13」という。)は,令和2年8月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された,次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 少なくとも1つのアプリケーション・サービスを実装するように集合的に構成される、1つ以上のコンピューティング・デバイスを備えるシステムであって、前記アプリケーション・サービスは、 ドキュメント管理及びコラボレーション・システムへドキュメントをアップロードする第1要求を受信し、 前記第1要求の受信に同期して、ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を確保し、 前記ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって実行される同期クライアントに前記ストレージ位置を提供し、 前記ストレージ位置へ前記ドキュメントのアップロードが完了したことの表示を受信し、 前記ドキュメントの受信結果として、 前記ドキュメント用に、前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイと、前記ドキュメントの1つ以上の注釈を格納するために使用可能であるオーバーレイと、前記アンダーレイとは区別され前記共通フォーマットの座標系に基づいて生成される座標マップと、を生成させ、 ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの第2要求を受信し、 前記ドキュメントへのアクセスの第2要求に応答し、前記ユーザのユーザデバイスに関連するウェブ・アプリケーションへ提供される前記アンダーレイ、前記オーバーレイ及び前記アンダーレイに関連する前記座標マップを取得するため、前記ユーザに利用可能な前記ストレージ位置を転送し、 前記座標マップは、前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションの表示特性にかかわらず、前記オーバーレイに格納された情報を前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションに安定的に表示するように構成された、システム。 【請求項2】 前記ドキュメントは、ドキュメント・ディレクトリの1つ以上のフォルダのうちの1つのフォルダへの組み込み用として受信され、 前記アプリケーション・サービスはさらに、前記ドキュメントが、少なくとも前記フォルダ、前記ドキュメント・ディレクトリ及び前記ドキュメントにアクセスする権限を有する1以上のユーザと関連するように構成される、 請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記アプリケーション・サービスはさらに、前記ドキュメントのアップロードが完了したことの前記表示を受信する際、前記ドキュメントがアクティブであることをデータベースに表示させ、 前記ドキュメントは、アクティブになる際に、前記アンダーレイを生成するために利用されることが可能である、請求項1に記載のシステム。 【請求項4】 前記1以上のコンピューティング・デバイスは、 前記ストレージ・サービスから前記ドキュメントを取得し、 前記取得したドキュメントに基づき前記アンダーレイを生成し、 前記アンダーレイを前記ストレージ・サービス中に格納させる、 ことにより、前記アンダーレイを生成するように構成されたコンピューティング・サービスをさらに実装するように集合的に構成される、請求項1から3のうちいずれか一項に記載のシステム。 【請求項5】 前記アプリケーション・サービスは、さらに、 ドキュメント・ディレクトリの1つ以上のフォルダに、前記ドキュメントの後続バージョンを組み込む要求を受信し、 前記ドキュメントの前記後続バージョンを前記共通フォーマットでレンダリングする、 ように構成される、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のシステム。 【請求項6】 前記ドキュメントへのアクセスの前記第2要求は、ユーザ認証情報と関連し、 前記アプリケーション・サービスはさらに、前記ユーザが前記ドキュメントにアクセスする権限を付与されることを検証するように構成される、 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のシステム。 【請求項7】 1つ以上のコンピューティング・デバイスによって実行される、ドキュメントの管理のための方法であって、前記方法は、 ドキュメント管理及びコラボレーション・システムへ前記ドキュメントをアップロードする第1要求を受信し、 前記第1要求の受信に同期して、ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を確保し、 前記ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって実行される同期クライアントに前記ストレージ位置を提供し、 前記ストレージ位置へ前記ドキュメントのアップロードが完了したことの表示を受信し、 前記ドキュメントの受信結果として、 前記ドキュメント用に、前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイと、前記ドキュメントの1つ以上の注釈を格納するために使用可能であるオーバーレイと、前記アンダーレイとは区別され前記共通フォーマットの座標系に基づいて生成される座標マップと、を生成させ、 ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの第2要求を受信し、 前記ドキュメントへのアクセスの第2要求に応答し、前記ユーザのユーザデバイスに関連するウェブ・アプリケーションへ提供させる前記アンダーレイ、前記オーバーレイ及び前記アンダーレイに関連する前記座標マップを取得するため、前記ユーザに利用可能な前記ストレージ位置を転送し、 前記座標マップは、前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションの表示特性にかかわらず、前記オーバーレイに格納された情報を前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションに安定的に表示することを可能とする、方法。 【請求項8】 前記ドキュメントは、ドキュメント・ディレクトリの1つ以上のフォルダのうちの1つのフォルダへの組み込み用として受信され、 前記方法はさらに、前記ドキュメントと、少なくとも前記フォルダ、前記ドキュメント・ディレクトリ及び前記ドキュメントにアクセスする権限を有する1以上のユーザとを関連させることを含む、 請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記方法はさらに、前記ドキュメントのアップロードが完了したことの前記表示を受信する際、前記ドキュメントがアクティブであることをデータベースに表示させることを含み、 前記ドキュメントは、アクティブになる際に、前記アンダーレイを生成するために利用されることが可能である、請求項7に記載の方法。 【請求項10】 前記ストレージ・サービスから前記ドキュメントを取得し、 前記取得したドキュメントに基づき前記アンダーレイを生成し、 前記アンダーレイを前記ストレージ・サービス中に格納させることにより、前記アンダーレイが生成される、請求項7又は請求項8に記載の方法。 【請求項11】 ドキュメント・ディレクトリの1つ以上のフォルダに、前記ドキュメントの後続バージョンを組み込む要求を受信し、 前記ドキュメントの前記後続バージョンを前記共通フォーマットでレンダリングすることをさらに含む、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の方法。 【請求項12】 前記ドキュメントへのアクセスの前記第2要求は、ユーザ認証情報と関連し、 前記方法はさらに、前記ユーザが前記ドキュメントにアクセスする権限を付与されることを検証することを含む、 請求項7から請求項11のうちいずれか1項に記載の方法。 【請求項13】 実行可能なインストラクションが集合的に格納された少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体において、 前記インストラクションが1つ以上のコンピューティング・デバイスで実行されると、前記1つ以上のコンピューティング・デバイスに、請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の方法を実行させるコードを含む、少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体。」 第4 引用例 1 引用例1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,“土井 健司,他4名,プレゼンテーション発表時のコメント収集に焦点をあてたアノテーションシステムCollabStickyの開発と評価,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム論文集,日本,社団法人情報処理学会,2007年 6月29日,159-164頁”(以下,「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) A 「3.システムの概要 前述のように,既存のシステムではプレゼンテーション中に参加者から意見を取得することは不十分であった.そこで本研究では,プレゼンテーション時のコメントの抽出に特化した付箋システムの提案を行う. …(中略)… 6. CollabStickyの開発 6.1 システムの構成 開発にあたりJavaScriptを用いることで付箋の動的な作業を実現し,HTTPを用いてサーバに情報の送信を行った.サーバは,Apache + Tomcat で構築し,PostgreSQLと連携してJSPを用いてWebアプリケーションとして開発した.システムの構成図を図4に示す.また,プレゼンテーションファイルを自動でシステムに組み込む機溝として,プレゼンテーション変換サーバをアプリケーションサーバとは別に準備をした.」(160ページ左欄2行乃至161ページ右欄15行) B 「 ![]() 図4」(161ページ右欄) C 「○2 プレゼンテーションファイル提示機能 図6は本システムのプレゼンテーション選択ページである.ログインに成功すると,プレゼンテーションを選択するページに遷移する.付箋システムで用いるプレゼンテーションファイルは,画像データに変換される.また,変換後の画像情報はデータベースに格納される.その際,データベースに保持された画像情報はプレゼンテーションファイルごとに存在する.ユーザは該当するプレゼンテーションを選択することによって,簡単にCollabStickyを利用することができる.」(162ページ左欄7乃至16行。なお,○2は,○の中に数字の2を表す。以下,同様。) D 「 ![]() 図6」 E 「○3 プレゼンテーションファイルアップロード機能 図7は本システムのプレゼンテーションアップロードページである.アップロードに成功したプレゼンテーションファイルのスライドは,サーバ内で画像ファイルに変換される.そして,変換後のフォルダの位置,名前などの情報をDBにアップロードする.」(162ページ左欄17乃至22行) F 「 ![]() 図7」 G 「○4 インターフェース部 本項では,利用画面をスライド表示部,コメント入力部の2つに分けて説明する. ○5 スライド表示部 プレゼンテーションのスライドが表示される.スライド表示部の任意の箇所をクリックすることで,付箋の投稿が可能となっている.また,現在表示しているスライド番号とプレゼンデーションのIDからデータベースに投稿されているか調べ,該当するコメントが存在する場合コメントを記入した付箋の表示を行う. ○6 コメント入力部 スライド表示部から受け取った座標をもとにコメントの入力を行う.入力されたコメントは,データベースに送信する.」(162ページ左欄23行乃至右欄8行) 2 引用発明 ア 上記記載事項Aの「本研究では,プレゼンテーション時のコメントの抽出に特化した付箋システムの提案を行う」との記載,及び「システムの構成図を図4に示す」との記載から,引用例1に記載された“システム”は,“付箋システム”であることを読取ることができる。 また,上記記載事項Bの図4から,“投稿者及び閲覧者側のクライアントPC上にブラウザが設けられる”態様を読取ることができる。そして当該投稿者及び閲覧者は,当該クライアントPC上のブラウザを操作するユーザであることは明らかである。 さらに,上記記載事項Aの「サーバは,Apache + Tomcat で構築し,PostgreSQLと連携してJSPを用いてWebアプリケーションとして開発した」との記載,及び上記記載事項Bの図4から,“アプリケーションサーバにDBが設けられる”態様が読み取れ,“別途プレゼンテーション変換プログラムが存在する機器が当該アプリケーションサーバと接続される”態様を読取ることができ,上記記載事項Aの「プレゼンテーション変換サーバをアプリケーションサーバとは別に準備をした」との記載からみて,当該機器は,プレゼンテーション変換サーバを表すものと認められる。 以上を総合して,引用例1には,“ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPCと,DBが設けられたアプリケーションサーバと,前記アプリケーションサーバに接続されるプレゼンテーション変換サーバとからなる付箋システム”が記載されているといえる。 イ 上記記載事項Cの「図6は本システムのプレゼンテーション選択ページである」との記載,及び上記記載事項Dの図6から,引用例1には,“プレゼンテーション選択ページには,プレゼンテーションが表示され”ることが記載されているといえる。 ウ 上記記載事項Cの「付箋システムで用いるプレゼンテーションファイルは,画像データに変換される」との記載,「変換後の画像情報はデータベースに格納される」との記載,及び「ユーザは該当するプレゼンテーションを選択する」との記載から,上記アの「DB」及び「付箋システム」に関する認定事項を踏まえると,引用例1には,“前記付箋システムで用いるプレゼンテーションファイルは,画像データに変換され,変換後の画像情報は前記DBに格納され,ユーザは該当するプレゼンテーションを選択”することが記載されているといえる。 エ 上記記載事項Eの「図7は本システムのプレゼンテーションアップロードページである」との記載,及び上記記載事項Fの図7から,“ファイルアップロードページがユーザに対して提示され,当該ページにプレゼンテーションファイルをアップロードすることができるものである”ことが読み取れることから,引用例1には,“ユーザにはファイルアップロードページが提示され,前記ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイルをアップロード”することが記載されているといえる。 オ 上記記載事項Eの「アップロードに成功したプレゼンテーションファイルのスライドは,サーバ内で画像ファイルに変換される」との記載,及び「変換後のフォルダの位置,名前などの情報をDBにアップロードする」との記載から,上記アの「DB」に関する認定事項を踏まえると,引用例1には,“アップロードに成功したプレゼンテーションファイルのスライドはサーバ内で画像ファイルに変換され,変換後のフォルダの位置,名前などの情報を前記DBにアップロード”することが記載されているといえる。 カ 上記記載事項Gの,「スライド表示部の任意の箇所をクリックすることで,付箋の投稿が可能となっている」との記載,及び「現在表示しているスライド番号とプレゼンデーションのIDからデータベースに投稿されているか調べ,該当するコメントが存在する場合コメントを記入した付箋の表示を行う」との記載から,上記アの「DB」に関する認定事項を踏まえると,引用例1には,“スライド表示部の任意の箇所をクリックすることで,付箋の投稿が可能となっていて,現在表示しているスライド番号とプレゼンデーションのIDから前記DBに投稿されているか調べ,該当するコメントが存在する場合コメントを記入した付箋の表示を行う”ことが記載されているといえる。 キ 以上上記ア乃至カより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPCと,DBが設けられたアプリケーションサーバと,前記アプリケーションサーバに接続されるプレゼンテーション変換サーバとからなる付箋システムであって, プレゼンテーション選択ページには,プレゼンテーションが表示され, 前記付箋システムで用いるプレゼンテーションファイルは,画像データに変換され,変換後の画像情報は前記DBに格納され,ユーザは該当するプレゼンテーションを選択し, ユーザにはファイルアップロードページが提示され,前記ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイルをアップロードし, アップロードに成功したプレゼンテーションファイルのスライドはサーバ内で画像ファイルに変換され,変換後のフォルダの位置,名前などの情報を前記DBにアップロードし, スライド表示部の任意の箇所をクリックすることで,付箋の投稿が可能となっていて,現在表示しているスライド番号とプレゼンデーションのIDから前記DBに投稿されているか調べ,該当するコメントが存在する場合コメントを記入した付箋の表示を行う 付箋システム。」 3 引用例2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2010-34920号公報(平成22年2月12日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 H 「【0042】 携帯電話器30のコンテンツアップロードアプリケーションは、コンテンツ/ファイルサーバ18からのアップロード許可に応じて,先に指定したコンテンツをコンテンツ/ファイルサーバ18に送信、即ちアップロードする(S50)。 【0043】 アップロードが完了すると、携帯電話器30のコンテンツアップロードアプリケーションは、セッション管理システム24にアップロード完了を通知する(S51)。 【0044】 セッション管理システム24は、アップロード完了通知に応じて、帯域制御システム16に帯域の解放を指示する(S52)。帯域制御システム16は、セッション管理システム24からの帯域解放の指示に応じて、先に確保した帯域を解放する(S53)。 【0045】 このようにして、本実施例では、アクセスポイント22を経由して携帯電話器30からコンテンツ/ファイルサーバ18にコンテンツをアップロードする際に、予め、アクセスポイントからコンテンツ/ファイルサーバ18までの通信路の帯域を確保しているので、迅速にコンテンツをアップロードできる。また、携帯電話器30がアクセスポイント22と比較的高速の通信方式で接続できることから、携帯電話通信網を介するよりも短時間でコンテンツをアップロードすることができる。無線通信距離が短いことも、アップロード時間の短縮に寄与する。 【0046】 携帯電話器を使用する実施例を説明したが、より一般的な携帯情報端末であってもよい。」 I 「 ![]() 図4」 4 引用例3に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,“藤田 拓人,清水 豊,Amazon Kindleブック制作&出版 完全マニュアル,株式会社エムディエヌコーポレーション,2013年 7月21日,初版,p.162”(以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 J 「ここまで設定したらアップロードにかかりましょう。[参照]ボタン○16をクリックして、PCに保存してあるWordファイルまたはEPUBファイルを選択し、[アップロード]ボタン○17をクリック。「アップロード中」、「コンテンツをKindleフォーマットに変換中」の表示が「アップロード、変換に成功しました」○18と変わればOK。プレビュー表示することができるようになります。」(162ページ右欄15乃至24行) 5 引用例4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2003-67330号公報(平成15年3月7日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 K 「【0004】以下、オンラインアルバムサービスを例に用いて説明する。図14はこのオンラインサービスを説明するための図である。図14(a)はサイトhttp://www.abcdef.comにおけるオンラインアルバムサービス機能を利用するためのトップページhttp://www.abcdef.com/album/create/にアクセスし、このトップページがWebブラウザに表示された様子を示す図である。同ページにおいてユーザは、(1)ページ要素131にアルバムタイトルを入力し、(2)ページ要素132にアルバムの補足説明を入力し、(3)ページ要素133にアルバム閲覧用パスワードを入力する。そして、ページ要素134のプッシュボタンをマウスクリックすると、図14(b)に示すような画像指定用ページに移動する。この画像指定用ページでは、まず(4)アップロードしたい画像データのパスをページ要素135に入力し、次に(5)画像に個別に付加したいコメントがあればそれをページ要素136に入力する。その後、ページ要素137のアップロードボタンをマウスクリックすると、前記(4)で指定した画像のアップロード処理が実行される。以上の操作をアップロードしたい画像の枚数分だけ繰り返し、すべての画像のアップロードが終了した時点でページ要素138の終了ボタンをマウスクリックするとアルバム作成の操作は終了し、作成したアルバムの内容が表示される(図15(a)参照)。」 L 「 ![]() 図14」 6 引用例5に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,優先日前に既に公知である,特開2005-228253号公報(平成17年8月25日公開。以下,これを「引用例5」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 M 「【0065】 次に、図24を参照して実習手段113が提示する画面の一例を説明する。 【0066】 ステップS303において、学生端末3などから成果物を実習成果物138に登録する場合に提示する成果物登録画面P301である。成果物登録画面P301において、テーマ名、テーマ概要などの実習テーマに関する情報と、成果物のタイトル、コメントなどその実習中に発生した成果物に関する情報とを入力させる。又、文書ファイル、画像ファイルなどの電子ファイルについては、アップロードボタンB301をクリックさせることにより、当該電子ファイルを学生端末3などからプロジェクト科目支援サーバ1のメモリにアップロードすることができる。登録ボタンB302がクリックされると、成果物登録画面P301で入力された情報と、アップロードされメモリに格納された電子ファイルが、実習成果物138に登録される。」 N 「 ![]() 図24」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (あ)引用発明の「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPC」,「DBが設けられたアプリケーションサーバ」及び「前記アプリケーションサーバに接続されるプレゼンテーション変換サーバ」は複数のコンピューディング・デバイスであるといえ,これらからなる引用発明の「付箋システム」は,本願発明1と,“少なくとも1つのアプリケーション・サービスを実装するように集合的に構成される,1つ以上のコンピューティング・デバイスを備えるシステム”である点で一致する。 (い)引用発明は,「ユーザにはファイルアップロードページが提示され,前記ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイルをアップロード」するものであり,当該「プレゼンテーションファイル」は,本願発明1の「ドキュメント」に対応するものといえる。そして,引用発明における「プレゼンテーションファイルをアップロードする操作」は,システムに対して何らかの要求を行っていて,そのことをユーザから受信しているといえることから,引用発明と本願発明1とは,“システムへドキュメントをアップロードする第1要求を受信”する点で一致する。 (う)引用発明は,「プレゼンテーション選択ページには,プレゼンテーションが表示され」るとともに,「ユーザにはファイルアップロードページが提示され,前記ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイルをアップロード」するものであるところ,当該「ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作」をするためには,当該「プレゼンテーション」が格納されている位置,すなわちストレージ位置が「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPC」に提供されるものと認められるから,引用発明と本願発明1とは,“クライアントにストレージ位置を提供”する点で一致する。 (え)以上,(あ)乃至(う)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 少なくとも1つのアプリケーション・サービスを実装するように集合的に構成される,1つ以上のコンピューティング・デバイスを備えるシステムであって,前記アプリケーション・サービスは, システムへドキュメントをアップロードする第1要求を受信し, クライアントにストレージ位置を提供する,システム。 〈相違点1〉 本願発明1の「ドキュメントをアップロード」するシステムが,「ドキュメント管理及びコラボレーション・システム」であるのに対し,引用発明は,「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPCと,DBが設けられたアプリケーションサーバと,前記アプリケーションサーバに接続されるプレゼンテーション変換サーバとからなる付箋システム」である点。 〈相違点2〉 本願発明1のクライアントは,「ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって実行される同期クライアント」であるのに対し,引用発明のクライアントは,「付箋システム」を構成する1要素である「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPC」である点。 〈相違点3〉 本願発明は,「アプリケーション・サービス」が,「ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって実行される同期クライアント」に「ストレージ位置を提供」するのに対し,引用発明は,「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPC」に「ストレージ位置」が提供されることが特定されていない点。 〈相違点4〉 本願発明1が,「前記ドキュメントの受信結果として」,「前記ドキュメント用に、前記ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイと、前記ドキュメントの1つ以上の注釈を格納するために使用可能であるオーバーレイと、前記アンダーレイとは区別され前記共通フォーマットの座標系に基づいて生成される座標マップと、を生成させ」るものであり,さらに「前記座標マップは、前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションの表示特性にかかわらず、前記オーバーレイに格納された情報を前記ユーザデバイスに関連する前記ウェブ・アプリケーションに安定的に表示するように構成された」ものであるのに対し,引用発明は,「前記システムで用いるプレゼンテーションファイルは,画像データに変換され,変換後の画像情報は前記DBに格納され」たり,「アップロードに成功したプレゼンテーションファイルのスライドはサーバ内で画像ファイルに変換され,変換後のフォルダの位置,名前などの情報を前記DBにアップロード」するものであるが,本願発明1の「ドキュメントの共通フォーマットであるアンダーレイ」,「ドキュメントの1つ以上の注釈を格納するために使用可能であるオーバーレイ」及び「前記アンダーレイとは区別され前記共通フォーマットの座標系に基づいて生成される座標マップ」に相当するものを生成させることが特定されていない点。 〈相違点5〉 本願発明1が,「前記第1要求の受信に同期して、ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を確保し」,「前記ストレージ位置へ前記ドキュメントのアップロードが完了したことの表示を受信」するものであるのに対し,引用発明は,「ユーザにはファイルアップロードページが提示され,前記ファイルアップロードページにプレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイルをアップロード」するものの,「ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を確保」することや,「前記ストレージ位置へ前記ドキュメントのアップロードが完了したことの表示を受信」することが特定されていない点。 〈相違点6〉 本願発明1が,「ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの第2要求を受信し」,「前記ドキュメントへのアクセスの第2要求に応答し、前記ユーザのユーザデバイスに関連するウェブ・アプリケーションへ提供される前記アンダーレイ、前記オーバーレイ及び前記アンダーレイに関連する前記座標マップを取得するため、前記ユーザに利用可能な前記ストレージ位置を転送」するものであるのに対し,引用発明は,「プレゼンテーション選択ページには,プレゼンテーションが表示され」,「ユーザは該当するプレゼンテーションを選択」するものであり,「ユーザにより開始される前記ドキュメントへのアクセスの第2要求」を受信することや,当該「第2要求に応答」することなどが特定されていない点。 (2) 相違点についての判断 事案に鑑み,先に相違点3及び5について検討する。 引用発明は,「プレゼンテーション選択ページには,プレゼンテーションが表示され」ていて,上記記載事項Dの図6を参照すると,すでにアップロードされた「プレゼンテーション」が並んでいて,これは,上記記載事項Fの図7にあるような「ファイルアップロードページ」に対して,ユーザが「プレゼンテーションファイルをアップロードする操作をすることによって,当該プレゼンテーションファイル」がすでに「アップロード」された結果,表示されるものであることが理解されるものの,当該「プレゼンテーションファイル」を「アップロード」するために,ストレージ位置を確保した上で「ブラウザが設けられるユーザが操作するクライアントPC」に提供することまでの開示は無く,また当該ストレージ位置へ「プレゼンテーションファイル」が「アップロード」された後に,当該アップロードが完了したことを示す情報がユーザに提供されることも記載されていない。 そしてこのことは,その他上記第2 2乃至6に示した引用例2乃至引用例5にも記載も示唆もされておらず,当該事項が本願優先日前に周知技術であったと認めるに足る証拠も無い。 したがって,引用発明からは,当業者といえども相違点3に係る構成を導き出すことは容易とまではいえず,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至引用例5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2乃至6について 本願発明2乃至6は,本願発明1を直接または間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至引用例5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明7について 本願発明7は,本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至引用例5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明8乃至13について 本願発明8乃至13は,本願発明7を直接または間接的に引用するものであるから,本願発明7と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至引用例5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 当審拒絶理由の概要 1 特許法17条の2第3項について 当審より,令和2年8月25日付けの手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)前の請求項1に「ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を受信し」との事項を追加する補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでない旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に示すとおり補正され,当該事項につき,当初明細書等の段落0050及び0052の記載に基づき,「前記ストレージ位置へ前記ドキュメントのアップロードが完了したことの表示を受信し」と補正され,本拒絶理由は解消した。 2 特許法36条6項1号について 当審より,本件補正前の請求項1の「ストレージ・サービスに格納される前記ドキュメント用のストレージ位置を受信し」との記載は,発明の詳細な説明に対応する記載は認められないから,請求項1に記載の発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない旨の拒絶理由を通知したが,上記1と同様,当該事項は当初明細書等の発明の詳細な説明に記載されたものとなり,本拒絶理由は解消した。 3 特許法36条6項2号について (1)当審より,本件補正前の請求項1の「前記ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって同期クライアントに前記ストレージ位置を提供することによって、前記同期クライアントに前記ストレージ位置に前記ドキュメントをアップロードさせ」との記載における「前記ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステム」とは,具体的にいずれの構成を指しているのか,不明確である旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に示すとおり補正され,当該事項につき,「前記ドキュメント管理及びコラボレーション・システムとは異なるコンピュータシステムによって実行される同期クライアントに前記ストレージ位置を提供し」と補正され,本拒絶理由は解消した。 (2)当審より,本件補正前の請求項1の「前記同期クライアントから、前記ストレージ位置での前記ドキュメントのストレージの成功を表示するメッセージを受信し」との記載における「ストレージ位置での前記ドキュメントのストレージの成功を表示するメッセージ」とは,具体的にどのような態様かつ内容のメッセージであり,また,「同期クライアント」から当該「ストレージ位置での前記ドキュメントのストレージの成功を表示するメッセージ」を「受信」するとは具体的にどのような動作を意味しているのか,不明確である旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に示すとおり補正され,本拒絶理由は解消した。 4 特許法36条4項1号について 当審より,本件補正前の請求項1の「前記同期クライアントから、前記ストレージ位置での前記ドキュメントのストレージの成功を表示するメッセージを受信し」との記載に関し,発明の詳細な説明には,段落0073に同様の文言がそのまま記載され,また,段落0051に「アプリケーション・サービス610は、ドキュメント・アップロードが完了する表示を受信する。」との記載はあるものの,「同期クライアント」から「ストレージ位置での前記ドキュメントのストレージの成功を表示するメッセージ」を「受信」することについて,具体的にどのように行うかについて記載は認められず,よって,本願の発明の詳細な説明は,当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない旨の拒絶理由を通知したが,上記第3に示すとおり補正され,また令和2年8月25日付け意見書において,当初明細書等の段落0051に,「アプリケーション・サービス610は、ドキュメント・アップロードが完了する表示を受信する。」と記載されている旨の釈明がなされ,本拒絶理由は解消した。 第7 原査定についての判断 令和2年8月25日付けの補正により,補正後の請求項1乃至13は,上記第5 1(1)に示した相違点3に係る構成を有し,当該構成は,原査定における引用文献1乃至5には記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1乃至13は,当業者であっても,原査定における引用文献1乃至5に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-07 |
出願番号 | 特願2018-138930(P2018-138930) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(G06F)
P 1 8・ 561- WY (G06F) P 1 8・ 537- WY (G06F) P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 打出 義尚 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
小林 秀和 山崎 慎一 |
発明の名称 | ドキュメント管理及びコラボレーション・システム |
代理人 | 伊藤 信和 |