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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1366910
審判番号 不服2019-8652  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-27 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2016-145784「組成物及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 27056〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は平成28年7月25日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年7月24日)の出願であって、平成30年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月23日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年3月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し令和元年6月27日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、令和2年3月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月2日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。

2 本件発明
本願の請求項1?13に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「 少なくとも1種類の重合性液晶化合物と光重合開始剤組成物とを含む組成物であって、
上記重合性液晶化合物は、式(I):
L-G-D-Ar-D-G-L (I)
(式(I)中、Arは置換基を有する又は無置換の芳香族複素環を表す。Dは、それぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。Gは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。Lは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、少なくとも1つが重合性基を有する。)
で表される化合物であって、
上記光重合開始剤組成物は、少なくとも1種類の光重合開始剤を含み、
上記光重合開始剤組成物は、極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)を有し、
少なくとも1種類の重合性液晶化合物の極大吸収波長をλ_(max)(LC)としたとき、
20nm<λ(B)-λ_(max)(LC)又は
20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)
を満たし、
上記少なくとも1種類の光重合開始剤が、分子内にオキシム構造を有し、
上記少なくとも1種類の重合性液晶化合物が、
300nm≦λ_(max)(LC)≦380nm、かつ
λ(A)<λ_(max)(LC)<λ(B)
を満たす、組成物。」

3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、理由2(進歩性)の概要は、本願の請求項1?14に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、引用文献1は主引用発明が記載された文献として引用されたものであり、引用文献2?5は、技術常識を示す文献又は周知技術を示す文献として引用されたものである。

引用文献1:特開2012-21068号公報
引用文献2:大和真樹,「光重合開始剤の現状と課題」,日本印刷学会誌,
社団法人日本印刷学会,2003年,第40巻,第3号,
第168?175頁
(https://doi.org/10.11413/nig1987.40.168)
引用文献3:特開平10-147783号公報
引用文献4:特開2001-100028号公報
引用文献5:特開2015-69157号公報

4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由において、主引用発明が記載された文献として引用され、先の出願前の平成24年2月2日に頒布された刊行物である、特開2012-21068号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。その他の文献についても同様である。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及び光学フィルムに関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光学フィルムでは、高湿高温の条件で保管した場合の耐性(耐湿熱性)について必ずしも十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の組成物は、式(A)で表される化合物、酸化防止剤及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0006】
【化1】

[式(A)中、X^(1)は、-S-、-O-又は-NR^(1)-を表す。R^(1)は、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基を表す。
Y^(1)は、炭素数6?12の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3?12の芳香族複素環式基を表す。
Q^(1)及びQ^(2)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?20の脂肪族炭化水素基、炭素数3?20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6?20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR^(2)R^(3)又は-SR^(2)を表し、Q^(1)及びQ^(2)は、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?6のアルキル基を表す。
D^(1)及びD^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-CS-O-、-CR^(4)R^(5)-、-CR^(4)R^(5)-CR^(6)R^(7)-、-O-CR^(4)R^(5)-、-CR^(4)R^(5)-O-CR^(6)R^(7)-、-CO-O-CR^(4)R^(5)-、-O-CO-CR^(4)R^(5)-、-CR^(4)R^(5)-O-CO-CR^(6)R^(7)-、-CR^(4)R^(5)-CO-O-CR^(6)R^(7)-、-NR^(4)-CR^(5)R^(6)-又は-CO-NR^(4)-を表す。
R^(4)、R^(5)、R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。
G^(1)及びG^(2)は、それぞれ独立に、炭素数5?8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-S-又は-NH-で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる-CH(-)-は、-N(-)-で置き換っていてもよい。
L^(1)及びL^(2)は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L^(1)及びL^(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する基を表す。]

(中略)

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐湿熱性に優れた光学フィルムを得ることができる。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
1.組成物
本発明の組成物は、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」という場合がある)、酸化防止剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む。
【0015】
1-1.化合物
本発明の組成物は、化合物(A)を含む。

(中略)

【0196】
1-2.酸化防止剤(B)
本発明の組成物は、酸化防止剤(B)を含む。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。中でも、光学フィルムの着色が少ないという点で、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0197】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、

(中略)

等が挙げられる。

(中略)

【0206】
1-3.光重合開始剤(C)
本発明の組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカルを発生し、化合物(A)の重合を開始しうる化合物である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。
【0207】
前記アルキルフェノン化合物としては、α-アミノアルキルフェノン化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アルコキシアルキルフェノン化合物が挙げられる。前記α-アミノアルキルフェノン化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン等が挙げられる。前記α-アミノアルキルフェノン化合物は、イルガキュア(登録商標)369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオール(登録商標)BEE(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。
【0208】
前記α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。前記α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア184、2959、127(以上、BASFジャパン(株)製)、セイクオールZ(精工化学社製)等の市販品を用いてもよい。前記α-アルコキシアルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記α-アルコキシアルキルフェノン化合物は、イルガキュア651(以上、BASFジャパン(株)製)等の市販品を用いてもよい。
【0209】
前記アルキルフェノン化合物としては、α-アミノアルキルフェノン化合物が好ましく、式(C-1)で表される化合物がより好ましい。これらの化合物であると、得られる光学フィルムの耐熱性、耐湿熱性に優れる。
【0210】
【化128】

[式(C-1)中、Q^(3)は、水素原子又はメチル基を表す。]
【0211】
前記ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
前記ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
前記オキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE-01、OXE-02(以上、BASFジャパン社製)、N-1919(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。
【0212】
前記光重合開始剤は、前記アセトフェノン化合物、前記ベンゾイン化合物、前記ベンゾフェノン化合物、前記オキシム化合物等を、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも光重合開始剤としてアセトフェノン化合物を用いることが好ましい。前記アセトフェノン化合物の使用量は、光重合開始剤全量に対して、90質量部以上であることが好ましく、光重合開始剤全量がアセトフェノン化合物であることがより好ましい。

(中略)

【0229】
1-5.有機溶剤
本発明の組成物は、溶媒を含んでいてもよい。有機溶剤としては、化合物(A)等、組成物の構成成分を溶解し得る有機溶剤であり、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、

(中略)

;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;

(中略)

;等が挙げられる。

(中略)

【0231】
本発明の組成物は、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、カイラル剤等の添加剤を含んでいてもよい。

(中略)

【0233】
1-7.レベリング剤
レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系、パーフルオロアルキル系等が挙げられる。具体的には、例えば、

(中略)

、BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353、BYK-361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。これらレベリング剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」

ウ 「【実施例】
【0270】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。

(中略)

【0280】
2.組成物の調製
表1に示す各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して組成物を調製した。
(合議体注:上記「表1」は、「表2」の誤記である。)
【0281】
【表2】

【0282】
表中のA11-1、v-1、B-1、B-2、C-1?C-10、BYK361Nは以下の化合物を表す。
【0283】
化合物(A);
A11-1:合成例1で得られた化合物(A11-1)
v-1:式(v-1)で表される化合物
【0284】
【化134】

【0285】
光重合開始剤(B);
B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)
【0286】
【化135】


(中略)

【0289】
酸化防止剤(C);
C-1:2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(東京化成工業製)

(中略)

レベリング剤;
BYK361N(ビックケミージャパン社製)」

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載事項ウの表2に基づけば、実施例1に係る組成物は、化合物(A)として、「A11-1」を27質量%、光重合開始剤(B)として「B-1」を2.7質量%、酸化防止剤(C)として「C-1」を0.3質量%、レベリング剤として「BYK361N」を0.1質量%、溶剤として「シクロペンタノン」を69.9質量%の各成分を混合して得られたものと理解できる。
そうすると、引用文献1の記載事項ウに基づけば、引用文献1には、実施例1に係る組成物に関する発明として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下に示す各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して調製した組成物。
化合物(A);以下の化合物であるA11-1を27質量%

光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)を2.7質量%

酸化防止剤(C);C-1:2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(東京化成工業製)を0.3質量%
レベリング剤;BYK361N(ビックケミージャパン社製)を0.1質量%
溶剤;シクロペンタノンを69.9質量%」

(3)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由において、技術常識を示す文献として引用され、先の出願前の平成15年に、頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、大和真樹著,「光重合開始剤の現状と課題」,日本印刷学会誌,社団法人日本印刷学会発行,2003年,第40巻,第3号,第168?175頁には、以下の記載事項がある。




(第170頁 図7)

(4)引用文献3の記載事項
当審拒絶理由において、技術常識を示す文献として引用され、先の出願前の平成10年6月2日に頒布された刊行物である、特開平10-147783号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「【0043】また、上述した液晶材料本体20_(1),第1の重合開始剤22_(1)、および第2の重合開始剤23_(1)の光吸収波長領域について、図3を参照して説明する。図3は、横軸を波長(右に行くほど長波長)に、縦軸を吸光強度にしている。また、図中、符号Aは、液晶材料本体20_(1)の光吸収スペクトルであり、符号A_(W)は、液晶材料本体20_(1)の光吸収波長領域である。符号Bは、液晶材料本体20_(1)に対して相溶性が悪い第1の重合開始剤22_(1)の光吸収スペクトルであり、符号B_(W)は、第1重合開始剤22_(1)の光吸収波長領域である。符号Cは、液晶材料本体20_(1)に対して相溶性の良い第2の重合開始剤23_(1)の光吸収スペクトルであり、符号C_(W)は、第2の重合開始剤23_(1)の光吸収波長領域である。
【0044】この図から明らかなように、液晶材料本体20_(1)の光吸収波長領域A_(W)が最も短波長側にある。第1の重合開始剤22_(1)の光吸収波長領域B_(W)は光吸収波長領域A_(W)と交差しているものの、光吸収波長領域A_(W)より長波長側に延出した波長域B_(WL)を有している。第2の重合開始剤23_(1)の光吸収波長領域C_(W)は光吸収波長領域A_(W),B_(W)と交差しているものの、これら光吸収波長領域A_(W),B_(W)よりさらに長波長側に延出した波長域C_(WL)を有している。
【0045】第2の重合開始剤22_(1)の光吸収波長領域C_(W)は、その波長領域中央に、第2の重合開始剤23_(1)によってほとんど吸収不可能な波長域D_(W)が存在している。波長域D_(W)は、光吸収波長領域B_(W)の波長域B_(WL)とほぼ同じ波長域となっている。
【0046】なお、各光吸収波長領域A_(W),B_(W),C_(W)は、ギャップ13μmの石英セルに、上記した液晶材料本体20_(1)、第1の重合開始剤22_(1),および第2の重合開始剤23_(1)をそれぞれ充填した状態で測定した結果であって、光吸収波長領域A_(W)の長波長側端部A_(We)は330nmであり、光吸収波長領域B
の長波長側端部B は360nmであり、光吸収波長領域C_(W)の長波長側端部C_(We)は410nmである。
【0047】したがって、各長波長側端部A_(We),B_(we),C_(we)には、A_(We)<B_(we)<C_(we)の関係があり、波長域B_(WL)は330?360nmの範囲であり、波長域C_(WL)は360?410nmの範囲となっている。
【0048】各光吸収波長領域A_(W),B_(W),C_(W)がこのように設定されているので、液晶材料24_(1)に対して波長域B_(WL)の光線を照射すると、その光線は第2の重合開始剤23_(1)や液晶材料本体20_(1)にほとんど吸収されずに、第1の重合開始剤22_(1)だけに選択的に吸収される。また、液晶材料24_(1)に対して波長域C_(WL)の光線を照射すると、その光線は第1の重合開始剤22_(1)や液晶材料本体20_(1)にはほとんど吸収されずに、第2の重合開始剤23_(1)だけに選択的に吸収される。」

イ 「【図3】



(5)引用文献4の記載事項
当審拒絶理由において、技術常識を示す文献として引用され、先の出願前の平成13年4月13日に頒布された刊行物である、特開2001-100028号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の記載事項がある。

「【0020】ディスコティック液晶性分子の紫外線吸収波長は、側鎖のシンナモイル基に由来し、ほとんどのディスコティック液晶性分子の紫外線極吸収波長は、300乃至320nmの範囲にある。従って、本発明で好ましく用いられる光重合開始剤としては、光重合開始剤の紫外線極大吸収波長がこの範囲に存在しないものを用いる。即ち、光重合開始剤としては、光重合開始剤の紫外線極大吸収波長がこの範囲と15nm以上異なるものを用いることが好ましく、20nm以上異なるものを用いることが特に好ましい。
【0021】上記の光重合開始剤としては、330乃至400nmの波長の範囲(好ましくは、350乃至400nmの波長の範囲)の紫外線に対するモル吸光係数(ε)が50乃至500000の範囲(好ましくは、100乃至300000の範囲)にあるものを用いることが特に好ましい。即ち、光重合開始剤の紫外線主吸収あるいは副吸収の何れが、330乃至400nmの波長の範囲に存在していてもよい。」

5 対比
本件発明と引用発明とを対比する。

(1)重合性液晶化合物
引用発明の「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」は、その化学構造からみて、本件発明の「重合性液晶化合物」に相当する。また、引用発明の「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」は、本件発明の「上記重合性液晶化合物は、式(I)・・・で表される化合物」とする要件を満たしている。

(2)光重合開始剤
引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、技術的にみて、本件発明の「光重合開始剤」に相当する。また、引用発明は、「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」を含むものであるから、本件発明の「少なくとも1種類の光重合開始剤を含み」とされる「光重合開始剤組成物」を含んでいるといえる。

(3)組成物
引用発明の「組成物」は、上記「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」及び「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」を含むものである。そうすると、引用発明の「組成物」は、本件発明の「少なくとも1種類の重合性液晶化合物と光重合開始剤組成物とを含む組成物」に相当する。

(4)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「少なくとも1種類の重合性液晶化合物と光重合開始剤組成物とを含む組成物であって、
上記重合性液晶化合物は、式(I):
L-G-D-Ar-D-G-L (I)
(式(I)中、Arは置換基を有する又は無置換の芳香族複素環を表す。Dは、それぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。Gは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。Lは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、少なくとも1つが重合性基を有する。)
で表される化合物であって、
上記光重合開始剤組成物は、少なくとも1種類の光重合開始剤を含む組成物。」である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1]重合性液晶化合物が、本件発明は、極大吸収波長λ_(max)(LC)が「300nm≦λ_(max)(LC)≦380nm」を満たすのに対し、引用発明は、「化合物A11-1」の極大吸収波長λ_(max)(LC)が明らかでない点。
[相違点2]光重合開始剤組成物が、本件発明は「極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)を有し」、少なくとも1種類の重合性液晶化合物の極大吸収波長λ_(max)(LC)に対し、「20nm<λ(B)-λ_(max)(LC)」又は「20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)」を満たすとともに、「λ(A)<λ_(max)(LC)<λ(B)」を満たすのに対し、引用発明は、光重合開始剤の極大吸収波長が明らかでなく、上記要件を満たすものであるか不明である点。
[相違点3]少なくとも1種類の光重合開始剤が、本件発明は、「分子内にオキシム構造を有し」ているのに対し、引用発明は、「式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」が分子内にオキシム構造を有さない点。

6 判断
(1)[相違点1]について
引用発明の「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」は、本願の明細書段落【0158】?【0160】の記載に基づけば、本願の実施例及び比較例において用いられる「重合性液晶A」と同一の化学構造を有するものであって、極大吸収波長λ_(max)(LC)が、「350nm」であるといえる。
そうすると、引用発明の「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」は、本件発明の極大吸収波長λ_(max)(LC)が、「300nm≦λ_(max)(LC)≦380nm」とする要件を満たすと考えられる。
したがって、上記[相違点1]は実質的な相違点ではない。

(2)[相違点2]及び[相違点3]について
ア 光重合開始剤イルガキュア369の極大吸収波長
引用文献2には、イルガキュア369を含む光重合開始剤の吸収特性が以下の図7に示されている。

上記、引用文献2の記載に基づけば、引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、少なくとも320nm付近を含む複数の極大吸収波長を有するといえる(本願の表1からも、イルガキュア369が320nmに極大吸収波長を有することが理解できる。)。また、引用発明の「化合物(A);以下の化合物であるA11-1」の極大吸収波長λmax(LC)は、前記(1)に記載したとおり、「350nm」であるから、引用発明における、化合物(A)の極大吸収波長「λ_(max)(LC)」と光重合開始剤(B)の極大吸収波長「λ(A)」との差「λ_(max)(LC)-λ(A)」は、「30nm」である。
そうすると、引用発明の「光重合開始剤(B);B-1:式(B-1)で表される化合物(イルガキュア369;BASFジャパン(株)製)」は、本件発明における「極大吸収波長λ(A)」を有しているとの要件及び「20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)」との要件を満たしているといえる。

イ 光重合開始剤を併用(組成物とする)こと又は変更すること
引用文献1の記載事項ウには、「本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。」(段落【0270】)と記載されている。また、引用文献1の記載事項イには、光重合開始剤について、「本発明の組成物は光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカルを発生し、化合物(A)の重合を開始しうる化合物である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。」(段落【0206】)、「前記オキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE-01、OXE-02(以上、BASFジャパン社製)、N-1919(ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。」(段落【0211】)、「前記光重合開始剤は、前記アセトフェノン化合物、前記ベンゾイン化合物、前記ベンゾフェノン化合物、前記オキシム化合物等を、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」(段落【0212】)と記載されている。
そして、光重合開始剤を選択するにあたり、重合させようとする化合物の極大吸収波長を避けた、短波長側及び長波長側のいずれかに極大吸収波長を有する光重合開始剤を選択することは、技術常識であるといえる。例えば、引用文献3には、記載事項アに「液晶材料本体20_(1)の光吸収波長領域A_(W)が最も短波長側にある。第1の重合開始剤22_(1)の光吸収波長領域B_(W)は光吸収波長領域A_(W)と交差しているものの、光吸収波長領域A_(W)より長波長側に延出した波長域B_(WL)を有している。第2の重合開始剤23_(1)の光吸収波長領域C_(W)は光吸収波長領域A_(W),B_(W)と交差しているものの、これら光吸収波長領域A_(W),B_(W)よりさらに長波長側に延出した波長域C_(WL)を有している。」(段落【0044】)、「各光吸収波長領域A_(W),B_(W),C_(W)がこのように設定されているので、液晶材料24_(1)に対して波長域B_(WL)の光線を照射すると、その光線は第2の重合開始剤23_(1)や液晶材料本体20_(1)にほとんど吸収されずに、第1の重合開始剤22_(1)だけに選択的に吸収される。また、液晶材料24_(1)に対して波長域C_(WL)の光線を照射すると、その光線は第1の重合開始剤22_(1)や液晶材料本体20_(1)にはほとんど吸収されずに、第2の重合開始剤23_(1)だけに選択的に吸収される。」(段落【0048】)と記載されており、引用文献4には、「ディスコティック液晶性分子の紫外線吸収波長は、側鎖のシンナモイル基に由来し、ほとんどのディスコティック液晶性分子の紫外線極吸収波長は、300乃至320nmの範囲にある。従って、本発明で好ましく用いられる光重合開始剤としては、光重合開始剤の紫外線極大吸収波長がこの範囲に存在しないものを用いる。即ち、光重合開始剤としては、光重合開始剤の紫外線極大吸収波長がこの範囲と15nm以上異なるものを用いることが好ましく、20nm以上異なるものを用いることが特に好ましい。」(段落【0020】)と記載されている。
そして、例えば、特開2015-69125号公報には、「オキシム化合物は、350nm?500nmの波長領域に極大吸収波長を有することが好ましく、360nm?480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることがより好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。・・・(中略)・・・オキシム化合物としては、IRGACURE OXE01、及び、IRGACURE OXE02などの市販品(いずれも、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司社製)も好適に使用できる。」(段落【0177】)と記載されており、特開2014-153592号公報には、「このような、波長370?450nmの光に感度を有する光重合開始剤としては、上記した光重合開始剤のなかでも、アシルフォスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、鉄アレーン錯体系化合物、チタノセン系化合物などが、好ましい光重合開始剤である。」(段落【0079】)と記載されている。これらの記載に基づけば、先の出願前において、「イルガキュアOXE-02」等のオキシム構造を有する光重合開始剤が、370nmより長波長側(あるいは、少なくとも「化合物(A)」の極大吸収波長である350nmより長波長側)に極大吸収波長を有することは、当業者に既に知られていたことが理解される。
そうすると、上記引用文献1における示唆に基づいて、引用発明の光重合開始剤として、イルガキュア369に加えて、市販品であって極大吸収波長が化合物(A)と異なる「イルガキュアOXE-02」等のオキシム化合物を併用して光重合開始剤組成物とすることや、イルガキュア369を「イルガキュアOXE-02」等のオキシム化合物に変更して用いることは、当業者が適宜試みることであるといえる。そして、引用発明の「光重合開始剤(B)」として、「イルガキュアOXE-02」等のオキシム化合物を採用することにより、本件発明の上記[相違点2]に係る構成を具備することとなる。

(3)効果について
本件発明の奏する効果は、本願明細書の段落【0010】の記載に基づけば、「転写時の転写欠陥が少ない光学異方性層を形成することができる」というものであると認められる。
一方、引用発明も、本件発明と同じ重合性液晶化合物と、本件発明における「20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)」との要件を満たす光重合開始剤を含む組成物である。そして、本願明細書の「λ(A)<λ(B) 20nm<λ(B)-λ_(max)(LC)又は20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)」及び「上記式を満たすことにより、上記光重合開始剤及び重合性液晶化合物に光を照射した場合に、重合性液晶化合物の光吸収に阻害されることなく、光重合開始剤の光吸収が行われ、重合反応を開始するのに十分な量のラジカルが発生するため、重合反応を好適に行うことができる。」(段落【0049】)、「本発明によれば、重合性液晶化合物が十分に硬化することができる。従って、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成することができる組成物、及び光学異方層を備える表示装置等を提供することができる。」(段落【0173】)との記載に基づけば、引用発明も、光を照射した場合に、重合性液晶化合物の光吸収に阻害されることなく、光重合開始剤の光吸収が行われ、重合反応を開始するのに十分な量のラジカルが発生するため、重合反応を好適に行うことができるものであり、その結果、重合性液晶化合物が十分に硬化することができるものである。そうすると、本件発明の奏する効果は、引用発明の効果と同様のものであって、格別なものということができない。

7 請求人の主張
審判請求人は、令和2年6月2日の意見書において、引用文献3について「1回の光照射にて、重合性液晶化合物の極大吸収波長の短波長側および超波長側における広範な範囲の波長の光を効率的に利用することができることは記載も示唆もされていません。」とし、また、引用文献4について「重合性液晶化合物の極大吸収波長の短波長側および長波長側のそれぞれの極大吸収波長を有する重合開始剤組成物を使用することは記載も示唆もされていません。」とし、「引用文献1?5の記載に基づいて、重合性液晶化合物の重合の進行が不十分となることを防止し、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成するために、上記「20nm<λ(B)-λ_(max)(LC)又は20nm<λ_(max)(LC)-λ(A)」の要件に加えて、上記「λ(A)<λ_(max)(LC)<λ(B)」の要件を充足することに想倒することは容易ではありません。」、「また、本願発明が、上記要件を充足することによって、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成できるという効果を奏することは、引用文献1?5の記載からは予測できないと考えます。」と主張している。
しかしながら、前記6(2)イに記載したとおり、引用発明の光重合開始剤(B)として、「イルガキュアOXE-02」等のオキシム化合物を採用することにより、本件発明の上記[相違点2]に係る構成を具備することとなる。また、引用文献3及び引用文献4には、液晶材料と重合開始剤の光吸収波長領域が異なることが好ましいことが記載されている。重合開始剤の光吸収波長領域を、液晶材料の光吸収波長領域の短波長側及び長波長側のいずれとするか、あるいは、両方とするかは、重合に用いる光源の特性に応じて当業者が適宜選択し得ることに過ぎない。そして、その効果も当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1の記載事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-31 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-21 
出願番号 特願2016-145784(P2016-145784)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
P 1 8・ 537- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 大思清水 督史  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 宮澤 浩
神尾 寧
発明の名称 組成物及び表示装置  
代理人 鶴田 健太郎  
代理人 長谷川 和哉  
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