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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1366911
審判番号 不服2019-8854  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-02 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2015-502420「バックコンタクト方式の太陽電池モジュール用導電性粒子、導電材料及び太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日国際公開、WO2015/105120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月7日(優先権主張 平成26年1月8日)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年10月15日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月19日 :意見書の提出
平成31年 3月27日付け:拒絶査定(同年4月2日送達)
令和 元年 7月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 3月25日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和2年5月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
バックコンタクト方式の太陽電池モジュールに用いられる導電性粒子であって、
基材粒子と、
前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、
前記導電部の外表面に複数の突起を有し、複数の前記突起の平均高さが、200nm以上、800nm以下であり、
10%圧縮したときの圧縮弾性率が1100N/mm^(2)以上、5000N/mm^(2)以下であり、
破壊歪が55%以上である、バックコンタクト方式の太陽電池モジュール用導電性粒子。」

第3 拒絶の理由
令和2年3月25日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

[理由1](進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(進歩性)について
・請求項 1-7
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.特開2013-207219号公報
2.特開2011-40189号公報
3.特開2001-155539号公報
4.特開2001-155540号公報
5.特開2005-327510号公報

第4 引用文献について
1 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(1)「【請求項6】
受光面と反対側の表面にセル側接続電極を有する太陽電池セルと、
回路基板と接続するため、前記セル側接続電極に貼り付けられ、前記回路基板と接続する表面に導電性樹脂層が位置する接続部材と、
を備えることを特徴とする太陽電池セル組立体。」

(2)「【0016】
図1に示す太陽電池モジュール50は、本実施形態の太陽電池モジュールの製造方法によって製造された太陽電池モジュールである。
太陽電池モジュール50の概略構成は、発電のための光を受光する受光面20bと反対側の裏面20cに配線用の接続電極20a(セル側接続電極)が複数設けられた太陽電池セル20と、太陽電池セル20を配線する基板部55(回路基板)と、基板部55および太陽電池セル20を電気的に接続する接続部10と、基板部55および太陽電池セル20上に積層されて太陽電池セル20を封止する封止材30と、封止材30上に積層された透光性基板40とを備える。
【0017】
太陽電池セル20は、受光面20bから入射した光を光電変換して発電を行う半導体素子である。太陽電池セル20の方式としては、裏面20cに接続電極20aが設けられた、いわゆるバックコンタクト方式の太陽電池セルであれば、適宜の方式のものを採用することができる。なお、図1は模式図のため、図示を簡略化しているが、接続電極20aの個数は、2以上の適宜個数を必要に応じて設けることができる。
接続電極20aは、例えば、直径w_(20a)の円形に形成され、材質は、例えば、銀ペーストを焼成したものからなる。
また、太陽電池セル20の平面視形状は、例えば平面視矩形状などの適宜形状を採用することができる。太陽電池セル20は図示左右方向および図示奥行き方向に複数のものが隙間をあけて隣り合わせに配置されており、これにより、平面視格子状をなして配置されている。
太陽電池セル20の平面視の大きさは、30cm角程度のことが多い。このため、太陽電池セル20の配列数は、太陽電池モジュール50の大きさにもよるが、例えば、1枚の基板部55に対して太陽電池セル20が数十枚配列される場合が多い。この場合、1つの太陽電池セル20に含まれる接続電極20aの個数は、多くても50個程度であることが多い。」

(3)「【0018】
本実施形態の基板部55は、図1に示すように、バックシート54、基材51、絶縁性接着剤層52、アルミニウム電極53(回路基板側接続電極)、およびソルダーレジスト5が、この順に積層されたものである。
【0019】
バックシート54は、基板部55の積層方向における一方の外表面を構成して、基板部55の内部、および太陽電池モジュール50との内部に、水分や酸素等が侵入することを抑制するためのシート状部材である。このため、バックシート54は、シールド材としてのバリア機能を有している。
バックシート54の材質としては、水分や酸素に対する遮断性に優れた適宜の樹脂材料、アルミニウム箔、もしくはアルミニウム箔と適宜の樹脂との複合積層フィルムを使用することができる。
【0020】
基材51は、バックシート54上に積層して形成され、絶縁性接着剤層52を介してアルミニウム電極53を支持する部材であり、本実施形態では、
可撓性を有するシート状部材で構成される。また、基材51は、電気絶縁性に優れる材料からなることが好ましい。
例えば、基材51は、樹脂材料を、シート状もしくはフィルム状に形成したものを採用することができる。
基材51の材料としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ウレタン、エポキシ、メラミン、スチレンなどの樹脂材料、またはこれらを共重合した樹脂材料を用いることが可能である。
また、基材51の材料は、断熱性や弾力性や光学特性の制御のため、必要に応じて、有機フィラーまたは無機フィラー等を混入した材料を用いることも可能である。
また、基材51は、上記の樹脂材料を複数積層させた積層フィルムや、上記の樹脂材料の層と、例えばアルミニウム箔等の金属箔とを積層させた複合積層フィルムを採用することも可能である。
また、例えば、上記の複合積層フィルムを用いる場合など、基材51が太陽電池モジュール50の外表面として必要な強度や水分や酸素の遮断性を有している場合には、バックシート54を削除し、基材51がバックシート54の機能を兼ねる構成としてもよい。
【0021】
絶縁性接着剤層52は、基材51の表面に、アルミニウム電極53を固定するための層状部であり、例えば、硬化性樹脂であるウレタン、アクリル、エポキシ、ポリイミド、オレフィン、またはこれらを共重合した硬化型接着剤を硬化させることで形成されている。硬化型接着剤の種類は特に限定されず、例えば、熱硬化型接着剤、UV硬化型接着剤などを好適に採用できる。また、絶縁性接着剤層52として段階硬化型でない接着剤層を用いても良い。
【0022】
アルミニウム電極53は、太陽電池セル20を配線する配線パターンを形成するもので、太陽電池セル20の接続電極20aの配置に応じて、適宜の平面視形状を備え、絶縁性接着剤層52を介して、基材51に積層され、基材51と一体に接合されている。
アルミニウム電極53の配線パターンとしては、本実施形態では、一例として、プラス電極とマイナス電極とに対応する櫛歯状パターン同士がそれぞれの櫛歯の間に貫入するように配置されたパターンを採用している。すなわち、アルミニウム電極53は、図1の図示奥行き方向に細長い線状に延され、図1の図示左右方向にプラス電極とマイナス電極が交代に隣り合って配列されている。以下では、図1における図示奥行き方向をアルミニウム電極53の長手方向、図示左右方向を短手方向と称する。」

(4)「【0026】
導電性樹脂層3Aは、金属層4のアルミニウム電極53側の表面と、アルミニウム電極53とを接続するものであり、素子実装に使用される導電性接着剤もしくは導電性接着フィルムを使用することができる。
導電性樹脂層3Aの一例としては、熱硬化性樹脂であるウレタン、アクリル、エポキシ、ポリイミド、オレフィン、またはこれらを共重合した硬化型接着剤に、導電性粒子を含有させた構成を挙げることができる。
導電性粒子としては、例えば、銅粒子、亜鉛粒子、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、もしくは高分子粒子表面にこれらと同様な金属のめっきを施した粒子を挙げることができる。
また、導電性樹脂層3Aを低コスト化するためには、安価な亜鉛粒子、ニッケル粒子もしくはその両方を含有することが望ましい。
特に、導電性樹脂層3Aが、銀粒子、亜鉛粒子、ニッケル粒子を含有する場合、それぞれの剛性が高いため、例えば、アルミニウムや銅に押圧されると、これらの表面に形成されている酸化被膜が突き破られる。このため、酸化被膜が形成されていても容易に電気接続をとることができる。」

(5)「【0045】
このような太陽電池モジュール50によれば、接続部10によって、太陽電池セル20と基板部55とが接続されているため、太陽電池セル20と基板部55とを電気的に接続する際に、従来使用していたはんだや、銀ペーストを使用せずに、その電気抵抗が小さい導通を得られる。
また、アルミニウム電極53は表面に酸化膜が生じるため、はんだづけ等では特殊な処理が必要となるのに対して、本実施形態では、導電性樹脂層3A、3Bを用いることで、酸化膜除去のための表面処理等を行うことなく、良好に電気的な接続を行うことができる。このため、電気的な接続の工程が簡素化される。
また、金属層4によって電極間距離h_(10)を容易に調整することができる。このため、例えば、ソルダーレジスト5等によって、電極間距離が大きく取る必要がある場合でも、容易に組み立てを行うことができる。
また、接続部10が金属層4を導電性樹脂層3A、3Bで挟み込む積層構成を採用しているため、柔軟性を備えた接合を行うことができる。このため、太陽光の熱による基板間の熱膨張による変形を吸収することができ、破損を防ぐことが可能になる。」

(6)「【0058】
第4変形例の製造方法は、図7に主要部を示す太陽電池モジュール90を製造する方法である。
太陽電池モジュール90は、上記第2変形例の太陽電池モジュール70から金属層4、導電性樹脂層3Bを削除したものであり、接続電極20aとアルミニウム電極53との間の電極間距離を、導電性樹脂層3Aの厚さt_(3A)で十分な場合に好適な例である。
このような構成の太陽電池モジュール90は、上記第2変形例の製造方法において、接続部材16に代えて、導電性樹脂層3Aを太陽電池セル20に貼り合わせて、太陽電池セル組立体20Cを形成し、太陽電池セル組立体20Cをソルダーレジスト5を除く基板部55に接続することにより、製造する。
本変形例の製造方法は、接続部材として導電性樹脂層3Aのみを用いた製造方法になっている点のみが、上記第2変形例と相違する。
したがって、上記第2変形例と同様に、太陽電池セル20と基板部55とを導電性樹脂層3Aを介して接続するときに、容易かつ効率的に接続することができ、接続不良を低減することができる。」

(7)図7の記載から、接続電極20aを表面に有する太陽電池セル20が見て取れる。

(8)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「バックコンタクト方式の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールの導電性樹脂層3Aが、含有する導電性粒子であって、
導電性粒子は、銅粒子、亜鉛粒子、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、もしくは高分子粒子表面にこれらと同様な金属のめっきを施した粒子を挙げることができ、
導電性樹脂層3Aが、銀粒子、亜鉛粒子、ニッケル粒子を含有する場合、それぞれの剛性が高いため、アルミニウムや銅に押圧されると、これらの表面に形成されている酸化被膜が突き破られ、
このため、酸化被膜が形成されていても容易に電気接続をとることができ、
接続電極20aを表面に有する太陽電池セル20と、絶縁性接着剤層52を介してアルミニウム電極53を支持する可撓性を有するシート状部材で構成される基材51、絶縁性接着剤層52、アルミニウム電極53が、この順に積層されたものである基板部55とを、接続する導電性樹脂層3Aが、熱硬化性樹脂である硬化型接着剤に、導電性粒子を含有させ、太陽電池セル20と基板部55とを導電性樹脂層3Aを介して接続するときに、容易かつ効率的に接続することができ、接続不良を低減することができる、
導電性粒子。」

2 引用文献2
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)「【0024】
本発明に係る導電性粒子は、上記特定の重合体粒子の表面が、複数の突起を表面に有する導電層により被覆されているので、加圧により導電性粒子を圧縮させて電極間を電気的に接続する際に、電極の表面の酸化被膜を充分に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明では、少なくとも2つの環構造を有する脂環式化合物であるモノマーを重合させることにより得られた重合体粒子を用いているので、電極間を電気的に接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積を大きくすることができ、導通信頼性を高くすることができる。導電性粒子と電極との接触面積を大きくすることができるので、1つではなく複数の突起により、電極の表面の酸化被膜が排除されやすい。このため、電極の表面の酸化被膜を効率的に除去でき、電極間の接続抵抗値を低くすることができる。
【0026】
また、上記重合体粒子を用いた上記導電性粒子を用いて、プリント基板とガラス基板との電極間を接続した場合には、プリント基板の電極又はガラス基板の電極に、導電性粒子が接触した圧痕が形成されやすくなる。このため、プリント基板とガラス基板との電極間の導電信頼性を高めることができる。特に、上記プリント基板が2層フレキシブルプリント基板の場合に、電極間の導通信頼性を高めることができる。」

(2)「【0030】
図1に示すように、導電性粒子1は、重合体粒子2と、該重合体粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを備える。導電性粒子1は、重合体粒子2の表面2aに複数の芯物質4を備える。導電層3は、芯物質4を被覆している。芯物質4を導電層3が被覆していることにより、導電層3が複数の突起3bを表面3aに有する。突起3bは、導電層3の外側の表面3aに形成されている。芯物質4により導電層3の表面3aが隆起されており、突起3bが形成されている。」

(3)「【0056】
圧縮回復率(%)=[(L_(1-)L_(2))/L_(1)]×100
L_(1):負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでのまでの圧縮変位
L_(2):負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの圧縮変位
重合体粒子2の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、196?6,860N/mm^(2)の範囲内であることが好ましい。10%K値のより好ましい下限は980N/mm^(2)であり、より好ましい上限は4,900N/mm^(2)である。重合体粒子の直径が20%変位したときの圧縮弾性率(20%K値)は、196?6,860N/mm^(2)の範囲内であることが好ましい。20%K値のより好ましい下限は600N/mm^(2)であり、さらに好ましい下限は980N/mm^(2)であり、より好ましい上限は4,900N/mm^(2)であり、さらに好ましい上限は3,900N/mm^(2)である。重合体粒子の直径が30%変位したときの圧縮弾性率(30%K値)は、196?6,860N/mm^(2)の範囲内であることが好ましい。30%K値のより好ましい下限は600N/mm^(2)であり、さらに好ましい下限は980N/mm^(2)であり、より好ましい上限は4,900N/mm^(2)である。
【0057】
圧縮弾性率(10%K値、20%K値及び30%K値)が低すぎると、圧縮された際に重合体粒子が破壊されることがある。圧縮弾性率(10%K値、20%K値及び30%K値)が高すぎると、電極間の接続抵抗値が高くなることがある。」^( )

(4)「【0074】
導電層3の厚みは、5?70,000nmの範囲内にあることが好ましい。導電層3の厚みのより好ましい下限は10nmであり、さらに好ましい下限は20nmであり、より好ましい上限は40,000nmであり、より好ましい上限は500nmであり、さらに好ましい上限は200nmである。導電層3の厚みが薄すぎると、導電性が充分に得られないことがある。導電層3の厚みが厚すぎると、重合体粒子2と導電層3との熱膨張率の差が大きくなり、導電層3が重合体粒子2から剥離しやすくなることがある。導電層3の厚みは、突起3bが形成されていない部分の厚みを示す。また、導電層3が積層構造を有する場合には、導電層3の厚みは、各導電層の厚みの合計を示す。」

(5)「【0077】
隆起している突起3bの平均高さは、20?300nmの範囲内であることが好ましい。突起3bの平均高さの好ましい下限は40nm、好ましい上限は200nmである。突起3bの平均高さが大きすぎると、酸化被膜又は樹脂層の排除性が低下することがある。突起3bの平均高さが小さすぎると、導電性粒子1と電極との接触が阻害され、接続抵抗値が高くなりやすくなる。突起3bの平均高さは、導電性粒子1の1個あたりの突起平均高さを算出した後、導電性粒子1の50個のそれぞれの平均高さを算術平均した値である。上記の導電性粒子1の1個あたりの突起平均高さとは、最も外側の表面を形成する導電性膜またはメッキ被膜の突起が形成されていない部分を基準表面として、突起として現れている部分の高さを測定し、それを算術平均した値である。」

(6)図1は、以下のとおりである。

(7)上記記載から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「重合体粒子2と、該重合体粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを備え、導電層3が複数の突起3bを表面3aに有する導電性粒子1であって、
隆起している突起3bの平均高さは、20?300nmの範囲内であり、
重合体粒子2の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、下限は980N/mm^(2)であり、上限は4,900N/mm^(2)であり、
導電層3の厚みは、5?70,000nmの範囲内にあり、
導電性粒子1は、重合体粒子2の表面が、複数の突起3bを表面に有する導電層3により被覆されているので、加圧により導電性粒子1を圧縮させて電極間を電気的に接続する際に、電極の表面の酸化被膜を充分に排除でき、このため、電極間の導通信頼性を高めることができる、
導電性粒子1。」

第5 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
1 引用発明1の「バックコンタクト方式の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールの導電性樹脂層3Aが、含有する」は、本願発明の「バックコンタクト方式の太陽電池モジュールに用いられる」、「バックコンタクト方式の太陽電池モジュール用」に、
引用発明1の「導電性粒子」は、本願発明の「導電性粒子」に、
引用発明1の「『導電性粒子』の『導電』部分」は、本願発明の「導電部」に、
それぞれ相当する。

2 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「バックコンタクト方式の太陽電池モジュールに用いられる導電性粒子であって、
導電部を備えた、
バックコンタクト方式の太陽電池モジュール用導電性粒子。」

【相違点】
導電性粒子が、本願発明は「基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、前記導電部の外表面に複数の突起を有し、複数の前記突起の平均高さが、200nm以上、800nm以下であり、10%圧縮したときの圧縮弾性率が1100N/mm^(2)以上、5000N/mm^(2)以下であり、破壊歪が55%以上である」のに対し、引用発明1はそのようなものか明らかでない点。

第6 判断
1 相違点について
(1)引用発明1、引用発明2は、ともに、電極の表面に生成される酸化被膜を突き破り、電極間の導通信頼性を高めるとの課題を有し、電極の表面に生成される酸化被膜を突き破るために、電極間に、このような突き破りを可能とする導電性粒子を用いているものと解される。
また、引用発明1には、導電性粒子として高分子粒子表面にニッケルのめっきを施した粒子を用いるという例も特定されている。
そうすると、引用発明1、引用発明2は課題が共通しており、また、引用発明1に当該特定がされていることから、引用発明1の導電性粒子として、引用発明2の導電性粒子を採用することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
ここで、引用文献2の【0077】には「突起3bの平均高さが小さすぎると、導電性粒子1と電極との接触が阻害され、接続抵抗値が高くなりやすくなる。」と記載されていることから、引用発明1の導電性粒子として、引用発明2の導電性粒子を採用する際には、当業者は、引用発明1のアルミニウムの電極の酸化膜の厚さ等を考慮し、突起の平均高さが導電性粒子と電極との接触を阻害しない突起の高さを当然に選択するといえる。そして、引用発明2には、突起3bの平均高さとして「200?300nm」についても特定されていることから、当該突起3bの平均高さを、選択することに困難性はない。
更に、引用文献2の【0057】には「圧縮弾性率(10%K値、20%K値及び30%K値)が低すぎると、圧縮された際に重合体粒子が破壊されることがある。圧縮弾性率(10%K値、20%K値及び30%K値)が高すぎると、電極間の接続抵抗値が高くなることがある。」と記載されていることから、引用発明1の導電性粒子として、引用発明2の導電性粒子を採用する際には、当業者は、破壊されず、電極間の接続抵抗値が低くなる導電性粒子を当然に選択するといえる。そして、引用発明2には、「重合体粒子2の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)は、下限は980N/mm^(2)であり、上限は4,900N/mm^(2)であり」と特定されていることから、導電性粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率として、1100N/mm^(2)以上、5000N/mm^(2)以下を、選択することに困難性はない。
そうすると、引用発明1の導電性粒子として引用発明2の導電性粒子を採用するにあたり、10%圧縮したときの圧縮弾性率及び突起の平均高さとして、相違点に係る程度の値を選択することは、当業者が適宜なし得たことである。

(2)ところで、引用発明1の導電性粒子は、酸化被膜を突き破るものであることから、酸化被膜を突き破ることができるような壊れにくいものであると考えるのが自然である。
そして、導電性粒子の破壊歪が、55%以上であることは、周知技術(必要ならば、引用文献3(特に、【0011】参照。)、引用文献4(特に、【0011】参照。)、引用文献5(特に、【0053】参照。)を参照されたい。)である。
そうすると、引用発明1の当該壊れにくい導電性粒子として、破壊歪が、55%以上であるものを採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)上記(1)及び(2)から、引用発明1に引用発明2及び周知技術を採用し、導電性粒子として、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、前記導電部の外表面に複数の突起を有し、複数の前記突起の平均高さが、200nm以上、300nm以下であり、10%圧縮したときの圧縮弾性率が1100N/mm^(2)以上、4900N/mm^(2)以下であり、破壊歪が55%以上であるものを採用すること、つまり、相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。

2 効果について
そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、引用発明1に、上記引用発明2及び上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

第7 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年5月27日付けの意見書において、「しかしながら、引用文献2にも、突起の平均高さについて、『隆起している突起3bの平均高さは、20?300nmの範囲内であることが好ましい。突起3bの平均高さの好ましい下限は40nm、好ましい上限は200nmである。』(段落[0077])旨が記載されているにすぎません。上記の記載より、引用文献2においては、突起の平均高さの最も好ましい範囲は、『40nm以上、200nm以下』であり、実際に、引用文献2の実施例では、突起の高さが、20nm、60nm、80nm、180nmの導電性粒子が開示されております。」旨主張している。

しかしながら、本願発明における「導電部の外表面に複数の突起を有し、複数の前記突起の平均高さが、200nm以上」との特定については、上記第6の1で検討したとおりである。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-22 
結審通知日 2020-07-28 
審決日 2020-08-19 
出願番号 特願2015-502420(P2015-502420)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 バックコンタクト方式の太陽電池モジュール用導電性粒子、導電材料及び太陽電池モジュール  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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