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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1366916
審判番号 不服2019-14149  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-24 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2019- 31288「光通信装置、光通信システム、光通信処理システム、及び光通信方法」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成31年2月25日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 5月23日付け:拒絶理由通知
令和 1年 7月 4日 :意見書・手続補正書の提出
令和 1年 8月13日付け:拒絶査定
令和 1年10月24日 :拒絶査定不服審判請求・手続補正書の提出

第2 令和1年10月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和1年10月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
対象情報の信号を含む可視光を照射可能な可視光照射装置と,
前記可視光を受光する受光部と,前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部と,を有する可視光通信装置と,
前記可視光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行い,前記処理を終了するとスリープ状態になる携帯端末と,
を有し,JEITA CP-1223規格に準拠しており,前記制御部がMPUにより動作することを特徴とする可視光通信処理システム。
【請求項2】
前記対象情報を前記携帯端末に送信する端子が,デジタル信号を入出力する端子である請求項1に記載の可視光通信処理システム。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のJEITA CP-1223規格に準じる可視光通信処理システムにより対象情報の信号を受信する可視光通信装置と通信可能な可視光通信用携帯端末であって,
前記可視光通信装置が,受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光通信装置が検出した前記対象情報が前記可視光通信装置から送信されると,前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理が終了するとスリープ状態になることを特徴とする可視光通信用携帯端末。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の令和1年7月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
光を利用する光通信により対象情報の信号を受信し,携帯端末と通信可能な光通信装置であって,
前記光を受光する受光部と,
前記受光部が受光した前記光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記光から検出した前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる前記携帯端末に,前記対象情報を送信する制御を行う制御部と,
を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
前記制御部が,MPUにより動作する請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記対象情報を前記携帯端末に送信する端子が,デジタル信号を入出力する端子である請求項1から2のいずれかに記載の光通信装置。
【請求項4】
対象情報の信号を含む光を照射可能な光照射装置と,
請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置と,
を有することを特徴とする光通信システム。
【請求項5】
対象情報の信号を含む光を照射可能な光照射装置と,
請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置と,
前記光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行い,前記処理を終了するとスリープ状態になる携帯端末と,
を有することを特徴とする光通信処理システム。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置を用いた光通信方法であって,
前記光通信装置の受光部により前記光を受光する受光工程と,
前記光通信装置の制御部により,前記受光部が受光した前記光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記光から検出した前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる前記携帯端末に,前記対象情報を送信する制御を行う制御工程と,
を含むことを特徴とする光通信方法。
【請求項7】
光を利用する光通信により対象情報の信号を受信する光通信装置と通信可能な携帯端末であって,
前記光通信装置が,受光した前記光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記光通信装置が検出した前記対象情報が前記光通信装置から送信されると,前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理が終了するとスリープ状態になることを特徴とする携帯端末。」

(3)本件補正の概要
上記(1),(2)より,本件補正は,本件補正前の「光通信装置」についての請求項1ないし3,「光通信システム」についての請求項4及び「光通信方法」についての請求項6を削除し,本件補正前の「光通信処理システム」に係る請求項5のうち請求項1及び2を引用するものを本件補正後の「可視光光通信処理システム」に係る請求項1に補正し,本件補正前の「携帯端末」に係る請求項7を本件補正後の「可視光通信用携帯端末」に係る請求項3に補正するとともに,本件補正後の請求項2は請求項1を引用し本件補正前の請求項3に記載した事項で限定したものである。

2 補正の適否
請求項1についての本件補正は,本件補正前の請求項1及び2を引用する請求項5(この項において「請求項5」という。)に記載された「光」,「光照射装置」及び「光通信装置」を,それぞれ「可視光」,「可視光照射装置」及び「可視光通信装置」に限定し,同じく「光を利用する光通信」を該光通信の1つの規格である「JEITA CP-1223規格に準拠しており」と限定するとともに,請求項1及び請求項2を引用しないものとするに際し,重複した記載である,光通信装置が「対象情報の信号を受信し,携帯端末と通信可能」であること,及び,携帯端末が「前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる」ことを削除するものであって,補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)の【請求項1】に記載したとおりのものであり,以下に再掲する。

(本件補正発明)
「対象情報の信号を含む可視光を照射可能な可視光照射装置と,
前記可視光を受光する受光部と,前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部と,を有する可視光通信装置と,
前記可視光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行い,前記処理を終了するとスリープ状態になる携帯端末と,
を有し,JEITA CP-1223規格に準拠しており,前記制御部がMPUにより動作することを特徴とする可視光通信処理システム。」

(2)引用発明と周知事項
ア 引用文献1の記載事項と引用発明
原査定の拒絶理由で引用された本願出願日前に頒布された特開2014-27643号公報(以下「引用文献1」という。)には,「空間光伝送を使用するコンテンツ提供システム」(【0001】)に関して図面とともに次の事項が記載されている。

「【0032】
以下,本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。このコンテンツ提供システムは,例えば美術館,博物館などにおいて,展示物の解説を行なう解説コンテンツなどを,携帯端末40を通して利用者に提供するシステムであり,図1に示すように,複数の場所に取り付けられ,自身のID情報(識別情報)を記憶するID情報記憶部8を有し,ID情報を重畳した空間光を投光する投光部2を設けた空間光送信器1と,複数のコンテンツ情報をID情報に対応して記憶するコンテンツ記憶手段を有し,コンテンツ記憶手段から読み出したコンテンツを,テキスト,画像,動画或いは音声として再生するコンテンツ再生手段を設けた携帯端末40と,携帯端末40に接続され,空間光送信器1の投光部2から投光された空間光を受光する受光部31を有し,受光部31の受光信号から空間光に重畳して送信されたID情報を復調して取得するID情報取得手段を設けた空間光受信器30と,を備えて構成される。
【0033】
このコンテンツ提供システムは,利用者が携帯端末40を携帯して,例えば各展示物の上方等に取り付けられた空間光送信器1の近傍に移動したとき,空間光受信器30の受光部31が,空間光送信器1から投光される空間光を受光する。空間光受信器30のID情報取得手段が,受光部31の受光信号から空間光に重畳されるID情報を復調して取得し,ID情報を携帯端末40に送出する。携帯端末40のコンテンツ再生手段は,入力されたID情報に基づき選択されたコンテンツを再生する。
【0034】
空間光を投光して空間光伝送を行なう空間光送信器1は,図2?図5に示すように,その本体ケース1aが,先端に投光部2を設けた電球型に形成され,空間光伝送としての可視光通信に必要な回路を本体ケース1a内に収納している。この空間光送信器1は,例えば美術館,博物館等の各展示物の近傍,つまり解説コンテンツを利用者に提供する場所に設置されるが,設置のための施工工事を簡単化し,且つ照明器具と兼用して,空間光送信器1を目障りや違和感なく簡単に設置できるように,電球型となっている。
【0035】(略)
【0036】
投光部2の投光素子3には,例えば白色光を投光する可視光発光ダイオードが使用され,図5に示すように,椀状の反射器19の中央にそのLEDモジュールが取り付けられ,投光部2の前面が透明板により覆われ,後述の如く,ID情報及び型式情報等の任意情報を含む伝送信号を重畳した可視光を前方に照射する。投光部2の投光素子3から照射される可視光は,例えば10?20度の角度範囲で上方から展示物近傍に向けて投光されるようになっている。
【0037】-【0041】(略)
【0042】
上記伝送信号生成部7及びID情報記憶部8は,ワンチップ型のマイクロコンピュータ10から構成され,予めメモリに記憶されたプログラムデータに基づき,上記副搬送波信号を,空間光送信器1のID情報により,例えば4値PPM変調(パルスポジション変調)にて変調し,変調された送信伝送信号を,投光駆動回路5に出力するように構成される。ワンチップ型のマイクロコンピュータ10,副搬送波発振器6,及び投光駆動回路5は,図5のように,本体ケース1a内の回路基板18に実装される。
【0043】
ID情報記憶部8は,コンテンツ提供システムで使用される各々の空間光送信器1のID情報(識別番号)を記憶する記憶部であり,各々の空間光送信器1が設置される場所を特定するID情報を書き込む記憶部でもある。ID情報記憶部8には,ID情報とともに,任意の追加情報を記憶することもできる。
【0044】
マイクロコンピュータ10の伝送信号生成部7は,図7に示すように,データフレームを作成し,プリアンブルとフレームタイプからなるスタートフレームに続き,ペイロードとして例えばID情報と型式情報のデータを配し,エンドフレームとしてチェック用にCRC(周期冗長コード)を配するように,伝送信号のデータフレームを生成する。
【0045】
さらに,伝送信号生成部7は,副搬送波発振器6から入力する副搬送波を,上記データフレームのデータ,つまり機器のID情報等を含むデータにより4値PPM変調して,情報伝送信号を出力するように構成される。4値PPMの変調回路は,伝送するデータを2ビット単位に区切り,例えば「00」を「1000」,「01」を「0100」,「10」を「0010」,「11」を「0001」とするように,4個の2ビットデータに応じて,符号の位置を特定するパルスを発生させ,副搬送波をそのデータパルスで変調するように動作する。これにより,データに拘わらず一定の照度の可視光を照射するようになっている。
【0046】-【0047】(略)
【0048】
一方,空間光受信器30は,利用者が携帯する携帯端末40に接続して使用され,接続形態はUSB接続である。図8に示すように,空間光受信器30はUSBデバイス機器として携帯端末40のUSB端子に接続され,携帯端末40がUSBホスト機器として,電源が携帯端末40から空間光受信器30に供給される。また,図8に示す如く,空間光受信器30には,携帯端末40が接続されるUSBポート39が設けられ,USB接続を制御するUSBコントローラ38が設けられる。
【0049】
USBコントローラ38は,USBポート39が携帯端末40のUSB端子に直接或いはUSBケーブルを介して接続され,電源が供給されたとき,シリアルデータインターフェースとして機能し,空間光受信器30の記憶部36に記憶されるID情報を読み出し,USBプロトコルにしたがって,ID情報を携帯端末40に出力する。なお,空間光受信器30をUSBホスト機器として構成し,USBデバイス機器となる携帯端末に電源を供給する構成とすれば,USBデバイス機能のみを有する携帯端末に対してUSB接続を行なってID情報を携帯端末に出力することもできる。
【0050】
図8に示す空間光受信器30の受光部31は,可視光を受光して受光信号を出力するフォトダイオード等の受光素子32を備え,空間光送信器1の投光部2から投光される可視光を受光し受光信号を出力する。空間光送信器1の投光素子3に,赤外線(近赤外光)を発光する赤外線発光ダイオードが使用される場合,空間光としての赤外線を受光する赤外線用フォトダイオードが受光素子32として使用される。
【0051】
受光部31には受光回路33が接続され,受光回路33は,受光素子32から出力される微弱な受光信号をアンプで増幅した後,コンパレータを通して,復調に必要なレベルのパルス信号に変換し,波形整形回路を通して波形整形した後,マイクロコンピュータ37の復調部34に出力するように構成される。
【0052】
復調部34,デジタル処理部35,及び記憶部36は,ワンチップ型のマイクロコンピュータ37から構成され,マイクロコンピュータ37は,取り込まれたパルス信号を復調部34で,PPM変調された伝送信号の復調を行い,4値のパルスの位置に基づき,伝送信号をデジタル信号に変換し,空間光送信器1から送信されたID情報を取得するようになっている。空間光受信器30の上記ID情報取得手段は,このような受光回路33,復調部34,及びデジタル処理部35から構成される。
【0053】(略)
【0054】
空間光受信器30には,USBポート39の接続部となるUSBコネクタ部が,例えば外部に突出する形態で設けられ,空間光受信器30はそのUSBコネクタ部を,携帯端末40に設けたUSBポート45のUSB端子に差し込み,或いはUSBケーブルを介して接続される。空間光受信器30は,受光部31及びマイクロコンピュータ37を含めて,例えばUSBスティックメモリ程度の大きさ,つまり携帯端末40の大きさより遥かに小形に形成することができる。このため,空間光受信器30は,携帯端末40のUSB端子に,そのUSBコネクタ部を直接差し込んだ状態で使用することができる。なお,空間光受信器30は,物理的には,携帯端末40のケースに内蔵することも可能である。
【0055】
携帯端末40は,無線LANに接続可能なPDA,タブレット型端末,或いは携帯電話通信網や無線LANに接続可能な携帯電話機から構成され,図9に示す如く,無線LAN43を通してインターネット等のネットワークに接続される。また,携帯端末40は,図10に示すように,マイクロコンピュータからなるプロセッサ48を主要部として構成され,例えば各種機能スイッチ入力用のタッチ入力が可能で,且つ動画,静止画,テキスト等を表示するタッチ感知ディスプレイ57,タッチ感知ディスプレイ57の制御を行なうディスプレイコントローラ56,USB接続が可能なUSBポート45及びUSBコントローラ44を備える。さらに,携帯端末40は,無線LANに或いは携帯電話通信網に接続するためのRF回路54を備え,周辺インターフェイス53及びRF回路54を通して,無線LANに或いは携帯電話通信網に接続可能である。
【0056】
また,携帯端末40の記憶部50には,ブラウザソフト,音声再生ソフトなどが予め記憶され,携帯端末40はネットワークを通して取り込んだテキスト,画像,動画,或いは音声を再生することができる。さらに,携帯端末40は,アプリケーションソフトウエアとして,ネットワーク上のコンテンツサーバ42からダウンロードした,上記ID情報に対応した複数のコンテンツを,上記コンテンツ記憶手段としての記憶部50に記憶するようになっている。さらに,図10に示す如く,携帯端末40には,コンテンツの音声信号を再生するためのオーディオ回路46及びディスプレイ57が上記コンテンツ再生手段として設けられ,オーディオ回路46の出力側には,スピーカー52が接続され,入力側にはマイク51が接続される。
【0057】
携帯端末40のプロセッサ48は,空間光受信器30から送出されたID情報を,USBポート45を通して取り込み,そのID情報に対応した記憶部50内のコンテンツ情報を選択して読み出し,そのコンテンツ情報の音声はオーディオ回路46を通してスピーカー52から再生し,コンテンツのテキスト,画像,或いは動画はディスプレイコントローラ56を通してディスプレイ57で表示するようになっている。なお,携帯端末40側では,USBポート45に空間光受信器30が接続されたとき,その接続を検知して,プラグアンドプレイで,コンテンツ提供用のソフトウエアを自動的に起動する構成とすることができる。」

上記記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「投光部2を設けた空間光送信器1と,コンテンツ記憶手段とコンテンツ再生手段を設けた携帯端末40と,受光部31とID情報取得手段を設けた空間光受信器30と,を備え(【0032】),
前記空間光送信器1は,投光部2の投光素子3には,白色光を投光する可視光発光ダイオードが使用され,ID情報を含む伝送信号を重畳した可視光を前方に照射し(【0036】),
前記空間光受信器30は,
受光部31が,空間光送信器1の投光部2から投光される可視光を受光し受光信号を出力し(【0050】),
受光部31には受光回路33が接続され,受光回路33は,受光素子32から出力される微弱な受光信号をアンプで増幅した後,コンパレータを通して,復調に必要なレベルのパルス信号に変換し,波形整形回路を通して波形整形した後,マイクロコンピュータ37の復調部34に出力するように構成され(【0051】),
復調部34,デジタル処理部35,及び記憶部36は,ワンチップ形のマイクロコンピュータ37から構成され,マイクロコンピュータ37は,取り込まれたパルス信号を復調部34で,PPM変調された伝送信号の復調を行い,4値のパルスの位置に基づき,伝送信号をデジタル信号に変換し,空間光伝送器1から送信されたID情報を取得するようになっており,空間光受信器30の上記ID情報取得手段は,このような受光回路33,復調部34,及びデジタル処理部35から構成され(【0052】),
USBコントローラ38は,空間光受信器30の記憶部36に記憶されるID情報を読み出し,USBプロトコルにしたがって,ID情報を携帯端末40に出力し(【0049】),
前記携帯端末40は,アプリケーションソフトウエアとして,ネットワーク上のコンテンツサーバ42からダウンロードした,上記ID情報に対応した複数のコンテンツを,上記コンテンツ記憶手段としての記憶部50に記憶するようになっており(【0056】),そのID情報に対応した記憶部50内のコンテンツ情報を選択して読み出し,そのコンテンツ情報の音声はオーディオ回路46を通してスピーカー52から再生し,コンテンツのテキスト,画像,或いは動画はディスプレイコントローラ56を通してディスプレイ57で表示するようになっている(【0057】),
空間光伝送を使用するコンテンツ提供システム。」

イ 周知事項1
本願出願前に出願公開された特開2004-21476号公報には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0005】
(中略)携帯端末装置ではバッテリーにより長時間の使用が可能であることが求められており,省電力化の実現が重要なファクターとなっている。そこで,動作していない状態では自動的にスリープ状態にして電源をオフし,割り込み信号により起動し電源をオンするようにして省電力化を図っている。」

また,本願出願前に出願公開された特開2019-18636号公報(2019年2月7日出願公開)には,以下の事項が記載されている。
(イ)「【0071】
例えば,制御部104は,通常,携帯端末100Aを省電力の状態であるスリープ状態に制御する。制御部104は,制御装置30Aからリクエスト信号を受信すると,携帯端末100Aをスリープ状態から起動状態に制御する。制御部104は,制御装置30Aから送信されたリクエスト信号の受信に応じて,応答信号を送受信103に送信させる。応答信号は,携帯端末100Aの記憶装置に記憶された識別情報を含む信号である。」

また,本願出願前に出願公開された特開2011-15368号公報には,以下の事項が記載されている。
(ウ)「【0100】
携帯端末200cから接続要求を受信した携帯端末200aは,既に携帯端末200bとの間で接続が確立しているため,接続できない旨のエラー応答を携帯端末200cへ送信する(ステップS311)。エラー応答を受信した携帯端末200cは,携帯端末200aから接続要求を受信するまでスリープ状態となる(ステップS312)。」

また,本願出願前に出願公開された特開2014-53676号公報には,以下の事項が記載されている。
(エ)「【0046】
時間計測手段15によりステップS13から計測している時間が記憶部5に保存されている所定時間Bを経過したと制御部3が判定した時(ステップS16YES),端末処理手段18は,起動手段12により携帯端末装置1を起動状態へと遷移させ,データ送受信を行うアプリケーションを起動させる(ステップS17)。そして,端末処理手段18はデータ送受信手段13によるデータ送受信を行わせる(ステップS18)。端末処理手段18は,データ送受信手段13に係る処理が終了すると,アプリケーションを終了させ,携帯端末装置1をスリープ状態にする(ステップS19)。」

上記(ア)ないし(エ)に記載されているように,「省電力のため,処理が終了するなどにより動作していない状態ではスリープ状態になる携帯端末。」(以下「周知事項1」という。)は,周知である。

ウ 周知事項2
本願出願前に出願公開された特開2015-118909号公報には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0004】
位置情報に代表される特定の情報を各所で発信するネットワークシステムについては現在位置を端末で容易に確認可能になることから新たな用途の開発が期待され,そのようなネットワークシステムの利用については今後社会的ニーズが増すと考えられる。本発明者は,可視光通信の標準仕様である可視光ビーコンシステム(Visible Light Beacon System)としての規格(JEITA CP-1223,2013年5月,http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/CP-1223)などを満足するLED照明器具(LEDランプ)なども開発されつつあることに鑑み,LEDランプに位置情報等の発信機能を搭載して利用することの優位性を見出した。伝送方式は例えば論理反転した4PPM(4値Pulse Position Modulation)の明暗のスロット数に応じてデータ値を決める方式であり,LEDランプを用いるのに好適である。」


また,本願出願前に出願公開された特開2017-123145には,以下の事項が記載されている。
(イ)「【0028】
携帯端末100と印刷装置150間の通信(特に,少なくとも携帯端末100から印刷装置150への通信)として,可視光通信を用いる。
可視光通信とは,LED(Light Emitting Diode)などが発光する可視光の強度を変化させて変調させることによる通信をいう。例えば,標準規格として,以下のものがある。
・JEITA CP-1221/1222/1223(電子情報技術産業協会)
片方向4.8kbpsの主に照明光通信用である。
JEITA CP-1221 可視光通信システム 2007年3月
http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/CP-1221
JEITA CP-1222 可視光IDシステム 2007年6月
http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/CP-1222
JEITA CP-1223 可視光ビーコンシステム 2013年5月
http://www.jeita.or.jp/japanese/standard/book/CP-1223
可視光源から,簡単な情報やその可視光源に固有なID情報を放射送信させることで,ものの識別,位置情報の提供,各種案内システムの構築など様々な応用を図るものである。」

上記(ア),(イ)に記載されているように,「LEDランプを用いて,2013年5月に制定されたJEITA CP-1223規格に準拠した可視光通信によりID情報を伝送すること。」(以下「周知事項2」という。)は,周知である。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「ID情報」,「伝送信号」及び「可視光」は,それぞれ本件補正発明の「対象情報」,「信号」及び「可視光」に相当するから,引用発明の「投光部2の投光素子3」が「ID情報を含む伝送信号を重畳した可視光を前方に照射」する「空間光送信器1」は,本件補正発明の「対象情報の信号を含む可視光を照射可能な可視光照射装置」に相当する。

イ 引用発明の「受光素子32」を備え,「空間光送信器1の投光部2から投光される可視光を受光し受光信号を出力」する「受光部31」は,本件補正発明の「前記可視光を受光する受光部」に相当する。
また,引用発明の「空間光受信器30の記憶部36に記憶されるID情報を読み出し,USBプロトコルにしたがって,ID情報を携帯端末40に出力」する「USBコントローラ38」は,前記「ID情報」が「ID情報取得手段」が「取得する」「空間光伝送器1から送信されたID情報」であるから,本件補正発明の「前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部」に相当する。
そして,前記「受光部」と前記「制御部」を有する点で,引用発明の「空間光受信器30」は本件補正発明の「可視光通信装置」に相当する。

ウ 引用発明の「アプリケーションソフトウエアとして,ネットワーク上のコンテンツサーバ42からダウンロードした,上記ID情報に対応した複数のコンテンツを,上記コンテンツ記憶手段としての記憶部50に記憶するようになっており,そのID情報に対応した記憶部50内のコンテンツ情報を選択して読み出し,そのコンテンツ情報の音声はオーディオ回路46を通してスピーカー52から再生し,コンテンツのテキスト,画像,或いは動画はディスプレイコントローラ56を通してディスプレイ57で表示するようになっている」「携帯端末40」は,本件補正発明の「前記可視光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行」う「携帯端末」に相当する。

エ 引用発明の「空間光伝送を使用するコンテンツ提供システム」は,「空間光」が「可視光」であるから,本件補正発明の「可視光光通信処理システム」に相当する。

上記アないしエより,本件補正発明と引用発明は以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>
「対象情報の信号を含む可視光を照射可能な可視光照射装置と,
前記可視光を受光する受光部と,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部と,を有する可視光通信装置と,
前記可視光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行う携帯端末と,
を有する可視光通信処理システム。」

<相違点1>
本件補正発明は,「前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部」を備えるのに対し,引用発明は,このような制御部が特定されていない点。
この点に加え,本件補正発明では,「前記制御部がMPUにより動作する」のに対し,引用発明では,この点が特定されていない点。

<相違点2>
本件補正発明の携帯端末は,「前記処理を終了するとスリープ状態になる」のに対し,引用発明では,この点が特定されていない点。

<相違点3>
本件補正発明は,「JEITA CP-1223規格に準拠して」いるのに対し,引用発明では,この点が特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
(ア)まず,相違点1に係る「前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部」について検討すると,本願明細書(【0035】-【0042】)には,図4A及び図4Bとともに,「受光部111が受光した可視光がID情報の信号を含むか否かを判定し,可視光がID情報の信号を含むと判定した場合に,ID情報を携帯端末300に送信する処理の流れ」(【0035】)が記載され,この処理の流れにおいて,「制御部122は,P=0に初期化すると,フレームのN番目に得られたバイトを保存して(S116)」(【0041】),及び,「制御部122は,N=0に初期化するとCRCの演算を行い,終端部のCRCと一致するか否かを判定する(S119)。制御部122は,一致すると判定すると,携帯端末300にデータを送信し(S120),処理を図4AのS102に戻す。」(【0042】)と,記載されている。ここで,光照射装置が送信するフレーム構造のデータは,「スタート部と,16バイトのID情報のデータからなる情報部(ペイロード)と,2バイトのチェック用のCRC(周期冗長コード)からなる終端部とを配」(【0026】)したものである。
そうすると,相違点1に係る制御部の「前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う」ことは,本願明細書に記載された,受光した可視光から得られるフレームの終端部のCRCと,CRCの演算した結果とが一致すると判定した場合に,携帯端末300にID情報を送信することに対応するものといえる。

(イ)一方,引用発明の空間光受信器30は,「受光部31には受光回路33が接続され,受光回路33は,受光素子32から出力される微弱な受光信号をアンプで増幅した後,コンパレータを通して,復調に必要なレベルのパルス信号に変換し,波形整形回路を通して波形整形した後,マイクロコンピュータ37の復調部34に出力するように構成され,
復調部34,デジタル処理部35,及び記憶部36は,ワンチップ形のマイクロコンピュータ37から構成され,マイクロコンピュータ37は,取り込まれたパルス信号を復調部34で,PPM変調された伝送信号の復調を行い,4値のパルスの位置に基づき,伝送信号をデジタル信号に変換し,空間光伝送器1から送信されたID情報を取得するようになっており,空間光受信器30の上記ID情報取得手段は,このような受光回路33,復調部34,及びデジタル処理部35から構成され」ており,また,引用発明が可視光に重畳したID情報を含む前記伝送信号は,「スタートフレームに続き,ペイロードとして例えばID情報と形式情報のデータを配し,エンドフレームとしてチェック用にCRC(周期冗長コード)を配するように,伝送信号のデータフレームを生成」(引用文献1の【0044】)したものであるから,CRCの機能も考慮すると,引用発明の「ID情報取得手段」が取得するID情報は,デジタル処理部35が,エンドフレーム(終端部)のCRCと,CRCの演算した結果とが一致することの判定を行い,その結果一致すると判定した場合に得られるものといえる。
そして,引用発明は,USBコントローラ38が,取得したID情報を携帯端末40に出力するものである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)より,引用発明の「ID情報取得手段」と「USBコントローラ38」とを合わせたものは,実質的に本件補正発明の「制御部」の「前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う」機能を有するといえる。そして,引用発明は,前記「ID情報取得手段」の「復調部34」及び「デジタル処理部35」は,「記憶部36」とともに「ワンチップ型のマイクロコンピュータ37から構成され」るところ,「USBコントローラ38」を前記「マイクロコンピュータ37」で動作するようにすることで,「ID情報取得手段」と「USBコントローラ38」を「マイクロコンピュータ37」で動作するようにすることは,当業者が容易に想到し得るものである。この場合,「マイクロコンピュータ37」は,本件補正発明の「MPUにより動作する」「制御部」といえる。

イ 相違点2について
引用発明の「携帯端末40」は,「無線LANに接続可能なPDA,タブレット型端末,或いは携帯電話通信網や無線LANに接続可能な携帯電話機から構成され」(【0055】)る一般的な携帯端末といえる。そして,省電力のための「スリープ機能」は,一般的な携帯端末40が通常備えている機能であるところ,上記(2)イのとおり,「省電力のため,処理が終了するなどにより動作していない状態ではスリープ状態になる携帯端末。」(周知事項1)は周知である。
そうすると,引用発明の携帯端末40において,消費電力を低減することは周知の課題であるから,上記周知事項1を採用して「前記処理を終了するとスリープ状態になる」ようにすることは,当業者が適宜になし得ることである。

ウ 相違点3について
上記(2)ウのとおり,「LEDランプを用いて,2013年5月に制定されたJEITA CP-1223規格に準拠した可視光通信によりID情報を伝送すること。」(周知事項2)は本件出願前に周知である。
そうすると,引用発明は,投光部2の投光素子3は可視光発光ダイオードを使用したものであり,可視光によりID情報を伝送するものであるから,上記周知事項2を採用して,引用発明の空間光伝送を使用する方式を「JEITA CP-1223の規格に準拠」したものとすることは,当業者が適宜になし得ることである。

エ 小括
したがって,本件補正発明は,引用発明,周知事項1及び周知事項2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は,審判請求の理由の(3)(iii)において以下の点を主張する。(ア,イ,ウは,便宜上当審で項分けしたもの。下線は審判請求の理由の記載のとおり。)
ア 「引用文献1に記載の発明は,可視光通信装置から送信された前記対象情報に対応する処理を行い,前記処理を終了するとスリープ状態になる携帯端末を有すること,及びそうして初めて,通信装置から対象情報を携帯端末が受信しない間は,携帯端末がスリープ状態になるため,携帯端末の消費電力を大幅に低減することができるという有利な効果を奏することについて記載も示唆もされておらず,本願発明に対する動機づけが」ないこと。
イ 「引用文献1の優先日は2012年6月22日,出願日は2012年11月13日であり,引用文献1の出願時において「JEITA CP-1223規格」は発行されていないので,引用文献1は,「JEITA CP-1223規格」が適用されず,その前に制定されている参考資料2(「JEITA CP-1222 可視光IDシステム」 社団法人 電子情報技術産業協会,2007年6月発行)が適用されると考えられ」ること。
ウ 「「JEITA CP-1223規格」に準拠している本願発明は,「JEITA CP-1222規格」に準拠している引用文献1に記載の発明に比べて,低消費電力を実現することができ,処理速度,及び処理効率が大幅に向上することが明らかで」あること。

上記アについて検討すると,引用発明は,本件補正発明と同様に,ID情報(対象情報)の取得を,携帯端末40(携帯端末)ではなく,携帯端末40と通信可能な空間光受信器30(可視光通信装置)で行うため,ID情報を取得するための処理を携帯端末40(携帯端末)で行わないから,携帯端末40は,常にID情報を取得する処理を行うための消費電力を必要としない。そして,前記空間光受信器30が携帯端末40に前記ID情報を出力するまでは,携帯端末40をスリープ状態にできることは,上記(4)イで説示したとおりであるから,請求人が主張する「可視光ID検出部を携帯端末の外部の可視光通信装置に設けることにより,可視光通信装置から対象情報を携帯端末が受信しない間は,携帯端末をスリープ状態にしておくことができるので,接続した携帯端末の消費電力を大幅に下げることができ」るという本件補正発明の効果は,引用発明と周知事項1の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。
よって,上記アの主張は採用できない。

上記イ,ウについて検討すると,上記(4)ウで説示したとおり,JEITA CP-1223規格は,本願出願日前に周知の規格であり,引用発明に当該規格を採用することを阻害する要件はない。また,請求人が主張する「「JEITA CP-1223規格」に準拠している本願発明は,「JEITA CP-1222規格」に準拠している引用文献1に記載の発明に比べて,低消費電力を実現することができ,処理速度,及び処理効率が大幅に向上する」という本件補正発明の効果は,引用発明と周知事項2の奏する効果から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって,上記イ,ウの主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年10月24日にされた手続補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和1年7月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記2[理由]1(2)の【請求項1】に記載したとおりのものであり,以下に再掲する。

(本願発明)
「光を利用する光通信により対象情報の信号を受信し,携帯端末と通信可能な光通信装置であって,
前記光を受光する受光部と,
前記受光部が受光した前記光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記光から検出した前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる前記携帯端末に,前記対象情報を送信する制御を行う制御部と,
を有することを特徴とする光通信装置。」

2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前に,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない,というものを含むものである。

引用文献1:特開2014-27643号公報

3 引用文献1の記載事項と引用発明2
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1の記載事項は,前記第2[理由]2(2)に記載したとおりであり,同記載からみて引用文献1には,「空間光受信器30」についての以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「受光部31とID情報取得手段とUSBコントローラ38とを備え(【0032】,【0049】),
受光部31が,空間光送信器1の投光部2から投光されるID情報を含む伝送信号を重畳した可視光(【0036】)を受光して受光信号を出力し(【0050】),
受光部31には,受光回路33が接続され,受光回路33は,受光素子32から出力される微弱な受光信号をアンプで増幅した後,コンパレータを通して,復調に必要なレベルのパルス信号に変換し,波形整形回路を通して波形整形した後,マイクロコンピュータ37の復調部34に出力するように構成され(【0051】),
復調部34,デジタル処理部35,及び記憶部36は,ワンチップ形のマイクロコンピュータ37から構成され,マイクロコンピュータ37は,取り込まれたパルス信号を復調部34で,PPM変調された伝送信号の復調を行い,4値のパルスの位置に基づき,伝送信号をデジタル信号に変換し,空間光伝送器1から送信されたID情報を取得するようになっており,空間光受信器30の上記ID情報取得手段は,このような受光回路33,復調部34,及びデジタル処理部35から構成され(【0052】),
USBコントローラ38は,空間光受信器30の記憶部36に記憶されるID情報を読み出し,USBプロトコルにしたがって,ID情報を携帯端末40に出力し(【0049】),
空間光受信器30。」

4 対比
本願発明と引用発明2を対比する。

ア 引用発明2の「可視光」,「ID情報」,「伝送信号」及び「携帯端末40」は,それぞれ本願発明の「光」,「対象情報」,「信号」及び「携帯端末」に相当し,引用発明2の「空間光受信器30」は本願発明の「光通信装置」対応する。
そして,引用発明2の「空間光送信器1の投光部2から投光されるID情報を含む伝送信号を重畳した可視光を受光して受光信号を出力」することは,本願発明の「光を利用する光通信により対象情報の信号を受信」することといえ,引用発明2の「ID情報を携帯端末40に出力」することは,本願発明の「携帯端末と通信可能」であることといえる。

イ 引用発明2の「可視光を受光」する「受光部31」は,本願発明の「前記光を受光する受光部」に相当する。

ウ 引用発明2の「空間光受信器30の記憶部36に記憶されるID情報を読み出し,USBプロトコルにしたがって,ID情報を携帯端末40に出力」する「USBコントローラ38」は,前記「ID情報」が「ID情報取得手段」が「取得する」「空間光伝送器1から送信されたID情報」であるから,本願発明の「前記光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部」に相当する。

上記アないしウより,本願発明と引用発明2は以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>
「光を利用する光通信により対象情報の信号を受信し,携帯端末と通信可能な光通信装置であって,
前記光を受光する受光部と,
前記光から検出した前記対象情報を送信されると前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部と,
を有する光通信装置。」

<相違点1>
本願発明は,「前記受光部が受光した前記可視光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記可視光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記可視光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う制御部」を備えるのに対し,引用発明2は,このような制御部が特定されていない点。

<相違点2>
本願発明の「携帯端末」は,「前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる」のに対し,引用発明2では,この点が特定されていない点。

5 判断
(1)相違点1について
上記第2[理由]2(4)アの本件補正発明と引用発明1の相違点1についての検討のとおり,引用発明2の「ID情報取得手段」と「USBコントローラ38」とを合わせたものは,実質的に本願発明の「制御部」の「前記受光部が受光した前記光が前記対象情報の信号を含むか否かを判定し,前記光が前記対象情報の信号を含むと判定した場合に,前記光から検出した前記対象情報を携帯端末に送信する制御を行う」機能を有するといえる。そして,引用発明2は,前記「ID情報取得手段」の「復調部34」及び「デジタル処理部35」は,「記憶部36」とともに「ワンチップ型のマイクロコンピュータ37から構成され」るところ,「USBコントローラ38」を前記「マイクロコンピュータ37」で動作するようにすることで,「ID情報取得手段」と「USBコントローラ38」を「マイクロコンピュータ37」で動作する「制御部」とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
本願発明は「光通信装置」についての発明であるところ,相違点2に係る「携帯端末」が「前記対象情報を送信されると前記対象情報に応じた処理を開始し,前記処理を終了するとスリープ状態になる」ことは,本願発明の「光通信装置」の構造,機能等を何ら特定するものではないから,相違点2は,実質的な相違点ではない。(審査基準第III部第2章第4節4.1.2 「他のサブコンビネーション」に関する事項が,「他のサブコンビネーション」のみを特定する事項であって,請求項に係るサブコンビネーションの発明の構造,機能等を何ら特定していない場合,4.2.2 請求項中に記載された「他のサブコンビネーション」に関する事項がサブコンビネーションの発明の構造,機能等を何ら特定していない場合を参照。)

(3)小括
したがって,本願発明は,引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-28 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2019-31288(P2019-31288)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 対馬 英明  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 衣鳩 文彦
中野 浩昌
発明の名称 可視光通信処理システム及び可視光通信用携帯端末  
代理人 流 良広  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 廣田 浩一  
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