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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C03C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C03C
管理番号 1366954
異議申立番号 異議2020-700066  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-07 
確定日 2020-08-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6556052号発明「自動車用フロントガラス用中間膜、ロール状体及び自動車用フロントガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6556052号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6556052号の請求項1?4に係る特許を維持する。 特許第6556052号の請求項5に対する特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6556052号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)4月9日(優先権主張 平成26年4月9日(JP)日本国)を国際出願日として特許出願され、令和1年7月19日にその特許権の設定登録がされ、同年8月7日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1?5に係る特許に対して、令和2年2月7日に特許異議申立人柴田留理子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年3月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月28日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされた。なお、本件訂正請求に対して申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はされなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である」
と記載されているのを、
「前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端部粗さが30μm以下である」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び4も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「凸部の先端部粗さが30μm以下であることを特徴とする請求項1記載の自動車用フロントガラス用中間膜。」
と記載されているのを、
「前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロントガラス用中間膜。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用フロントガラス用中間膜。」
と記載されているのを、
「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする自動車用フロントガラス用中間膜。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

ここで、訂正前の請求項2?5は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1?5は一群の請求項を構成するところ、上記訂正事項1?4に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1?5を請求の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の「凸部の先端部粗さが30μm以下である」との特定事項を直列的に付加して、訂正前の請求項1に記載された「凸部」の先端形状を減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載において、上記訂正事項1によって訂正された請求項1の記載と重複する「凸部の先端部粗さが30μm以下である」との記載を削除するともに、訂正前の請求項3の「凸部の先端の回転半径が20μm以上である」との特定事項の直列的に付加して、訂正前の請求項2に記載された「凸部」の先端形状を減縮するものであり、さらに、訂正前の請求項2の「請求項1記載」との不明瞭な記載を「請求項1に記載」に訂正するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3において、訂正前の請求項1を引用する部分のみを独立した形に書き下して引用関係を解消するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端部粗さが30μm以下である
ことを特徴とする自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項2】
前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項3】
少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の自動車用フロントガラス用中間膜を、前記自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に巻き取って成ることを特徴とするロール状体。」

2 取消理由の概要について
令和2年3月27日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1
発明の詳細な説明の段落【0002】?【0005】の記載からみて、本件発明の課題は、刻線状の凹部が形成された自動車用フロントガラス用中間膜を用いて、真空脱気法により自動車用フロントガラスを製造しようとすると、歩留まりが低下するとの問題があることである。
そして、発明の詳細な説明に記載された実施例1?26の中間膜であれば、自動車用フロントガラスの製造時のガラスと中間膜のずれの発生を抑えて、上記課題を解決できる範囲であると当業者が認識できるものである。
一方、訂正前の請求項1に係る発明では、凹部形状に関して、「底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している」ことを特定するのみであり、発明の詳細な説明の段落【0011】の記載からして、刻線状の凹部以外の凹部形状(例えば、格子状)を含むところ、発明の詳細な説明には、刻線状の凹部以外の凹部形状とした場合に、上記実施例と同様な効果が得られることについて記載されていないし、当業者にとって自明なことともいえないから、刻線状の凹部であることを特定しない請求項1に係る発明は、上記課題を解決できる範囲のものであると当業者が認識できない。
また、訂正前の請求項1に係る発明では、凸部の先端部粗さ及び先端の回転半径を特定していないところ、発明の詳細な説明の段落【0017】及び【0018】の記載によれば、凸部の先端部粗さ及び先端の回転半径は、ガラスと中間膜との摩擦力に影響を与えることからして、凸部の先端部粗さが上記実施例の数値範囲に比べて大幅に大きい場合や、凸部の先端の回転半径が上記実施例の数値範囲に比べて大幅に小さい場合には、上記実施例と同様な効果が得られると当業者が認識できないから、凸部の先端部粗さ及び先端の回転半径を特定しない請求項1に係る発明は、上記課題を解決できない態様を含み、上記課題を解決できる範囲のものであると当業者が認識できない。
したがって、訂正前の請求項1に係る発明、及び、これを引用する訂正前の請求項2?5に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許に係る出願時の技術常識に照らして当該課題を解決できると認識できる範囲のものでもない。
よって、訂正前の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである。

(2)取消理由2
訂正前の請求項1、4及び5に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、または、下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

(3)取消理由3
訂正前の請求項1、4及び5に係る発明は、下記の引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、または、下記の引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。

(引用文献一覧)
引用文献1:特開2001-261385号公報(甲第1号証)
引用文献2:特表平9-508078号公報(甲第2号証)

3 引用文献の記載事項について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審が付した。以下、同様である。)
ア 「【請求項1】 熱可塑性樹脂シートの両面に主凹部及び主凸部からなる多数のエンボスが形成された合わせガラス用中間膜であって、上記主凹部は、溝形状を有し、上記主凸部は、頭頂に上記主凹部及び主凸部より微細な副凹部及び副凸部が形成された平面部を有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。」
イ 「【0007】このため、例えば、特表平9-508078号公報等には、凹凸形状において溝形状を規則的に配置し、そのパターンを各面で25°以上に、より好ましくは90°にすることによってモアレ現象を解消する中間膜が開示されている。
【0008】上述の方法において、モアレ現象を解消するために90°の刻線を付与した形状は、刻線45°のロールを用いて熱転写されることが公知である。しかし、ロールの刻線の角度が大きくなるほど転写が容易でなくなる。一般には、転写流れに対して平行な縦刻線形状が最も容易に形成することができ、横刻線形状は転写の際に温度制御と高い圧力とを必要とする。」
ウ 「【0047】(実施例1?実施例5)
(1)合わせガラス用中間膜の作製
種々のエンボス形状が付与できるように、種々のエンボスロールを用意した。熱可塑性樹脂シートとして、DXN膜(可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート、Ra:3.5μm、Rz:42.5μm、Rvk:9.8μm、積水化学工業社製)を用意した。エンボスロールとゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、上記DXN膜をこの凹凸形状転写装置に下記転写条件で通し、両面にエンボス形状を有する合わせガラス用中間膜を作製した。
〔転写条件〕
DXN膜の温度:常温、DXN膜の副凹凸部の転写温度:130℃、エンボスロール温度:130℃、線速:10m/分、プレス線圧:500kPa
【0048】実施例1?実施例5で得られた合わせガラス用中間膜のエンボスの形状(凹凸部の形状)を表1に示した。又、図1に、実施例1及び実施例2で得られた合わせガラス用中間膜のエンボスの模様(凹凸部の模様)を、図2に、実施例3及び実施例4で得られた合わせガラス用中間膜のエンボスの模様(凹凸部の模様)を、図3に、実施例5で得られた合わせガラス用中間膜のエンボスの模様(凹凸部の模様)を模式的に示した。」
エ 「【0059】
【表1】


オ 「【0068】又、上記本発明の合わせガラス用中間膜を用いて作製された合わせガラスは、過酷な条件下においても気泡の発生による品質不良を殆ど生じない高品質のものであり、自動車、車輌、航空機、建築物等の窓ガラス用として好適に用いられる。」
カ 「【図3】



(2)引用文献2の記載事項
ア 「【特許請求の範囲】
1.熱可塑性中間層において、その各面に形成されて互いに角度を成して配置された規則的チャネルパターンを有し、交差角度が少なくとも25度である熱可塑性中間層。
2.少なくとも片面上のチャネルが中間層の縁部に対して斜めに配置されている請求の範囲第1項に記載の中間層。
3.各面上のチャネルが中間層の縁部に対して斜めに配置されている請求の範囲第2項に記載の中間層。
・・・
7.熱可塑性材料がポリビニルブチラールを含む請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項のいずれか一項に記載の中間層。
8.交差角度が約90度である請求の範囲第7項に記載の中間層。
9.中間層の片面の表面に全面的に形成された連続開放チャネルの列と、
片面におけるチャネルから25度以上ずれた中間層の他の面の表面に全面的に形成された連続開放チャネルの類似パターンを含む、
熱可塑性中間層。
10.チャネルが互いに約100?350ミクロン離間した連続リッジによって画定される請求の範囲第9項に記載の中間層。」
イ 「発明の背景
本発明は、粗い表面を有する熱可塑性中間層(thermoplastlcinterlayer)に関し、さらに詳しくは、ガラスを有するプレラミネート(prelaminate)において最適に脱気するための特殊形状の粗い表面に関する。
ポリビニルブチラール(PVB)が代表的である熱可塑性中間層(ここでは「シート(sheet)」と呼ぶことがある)は、例えば車両の風防ガラスや建物の窓ガラスなどに使用される積層安全ガラス組立品の中で光学的に透明なガラスと共に使用するために知られている。」(第4頁第3?10行)
ウ 「図面の簡単な説明
発明の全体を説明するために、下記のような添付図面を参照する。
第1図は、本発明による中間層における表面粗さを作り出すための型押しシステム(embossing system)の概略図である。
第2図及び第3図は、拡大面積が第1図におけるAとして識別される、本発明の中間層部分の拡大部分概略平面図である。
・・・
第8図は、第3図のシートの拡大部分等角投影図である。」(第6頁第3?1
5行)
エ 「図面を参照すると、第2図、第3図、第8図、及び第9図における熱可塑性中間層10は、多数の平行な狭い開放(open top)平底(flat bottom)の直線脱気チャネル12を含んでおり、これらのチャネル12はその長さに沿って矢印14の方向に実質的に障害物はない。チャネル12の側部は、中間層10の片面18(第2図、第8図)の表面に斜めパターンに配列されかつ表面全体に形成された、連続し阻害されない規則的に離間したリッジ(ridge)16によって区切られている。すぐ隣りに隣接するリッジ16は互いに約100?350ミクロン離間しており(第2図における20)、リッジの高さはチャネル12の底部から上に約30?70ミクロンである(第8図における22)。これらの寸法関係は、本発明のモアレ防止態様から逸脱することなく、今定義した好ましい範囲から変化してもよい。図示された実施例では、中間層10の面18におけるチャネル12とリッジ16は、中間層10の直線縁部17に対して45度で(第2図)斜めに配置されている。
中間層10の他の面28の表面に全体的に形成されたリッジ26によって区分されたチャネル24(第8図)は、面18におけるものと同じであり、同様に縁部17に対して45度である(第3図)。しかし重要なことであるが、モアレを回避するために、中間層10の各面上におけるチャネルとリッジの列の規則的直線パターンが、少なくとも25度で、また好ましくは25度以上、最も好ましくは30度以上の角度で互いに交差するように、互いに配置されている。図示された実施例では、各面における同一のチャネルとリッジの列の規則的なパターンは、約90度の鋭角で互いに交差している(第3図、第8図)。」(第7頁第18行?第8頁第10行)
オ 「【図1】


カ 「【図2】


キ 「【図3】



4 取消理由の検討
(1)取消理由1について
ア 本件発明1、2、4について
発明の詳細な説明の実施例には、表面に付与された凹凸形状が、底部が連続した溝形状である刻線状の凹部が並列した凹凸であり、該凸部の先端部の曲率半径が22μm(実施例21)?85μm(実施例15?17)の範囲であり、該凸部の先端部粗さが0.2μm(実施例12?14)?25μm(実施例15?17)の範囲であり、該凹部の中間膜製造時の膜の流れ方向に対する傾きが35°(実施例4、7、11、14、17、22、26)?80°(実施例1、5、8、12、15、23)の範囲である中間膜が具体的に記載され、ガラスと中間膜との摩擦力が170g(実施例4、11、26)?280g(実施例12)の範囲であって、該傾きが0°(比較例2、4、5、7)?20°(比較例1、3、6、8、10)の範囲である比較例の中間膜の摩擦力より大きくなることも具体的に記載されているから、実施例の中間膜であれば、自動車用フロントガラスの製造時のガラスと中間膜のずれの発生を抑えて、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるものである。
そして、上記実施例及び比較例の記載によれば、底部が連続した溝形状の凹部の傾きが大きくなるにつれて、摩擦力が大きくなることや、当該傾きが35°以上の状態における摩擦力であれば、ずれの発生を抑制できることが理解できるから、底部が連続した溝形状の凹部として、実施例のような特定の傾きを有する凹部が存在していれば、それ以外の傾きの凹部の存在に関わらず、上記実施例と同様な効果が得られることを当業者であれば認識できる。
また、上記実施例の記載や、発明の詳細な説明の「本発明の中間膜においては、上記凸部の先端部粗さが30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、更に好ましくは11μm以下である。これにより、ガラスと中間膜間の摩擦力が大きくなり、真空脱気法により自動車用フロントガラスを製造する際にガラスと中間膜とがずれてしまうのをより効果的に防止することができる。」(段落【0018】)との記載を参酌すれば、凸部の先端部粗さが30μm以下であれば、上記実施例と同様な効果が得られることを、当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載から本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものといえる。
また、本件発明1を引用する本件発明2及び4についても、同様に、発明の詳細な説明の記載から本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものといえる。

イ 本件発明3、4について
上記アで検討したとおり、底部が連続した溝形状の凹部として、実施例のような特定の傾きを有する凹部が存在していれば、それ以外の傾きの凹部の存在に関わらず、上記実施例と同様な効果が得られることを当業者であれば認識できるし、また、実施例の記載、及び、発明の詳細な説明の「本発明の中間膜においては、上記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることが好ましい。これにより、ガラスと中間膜間の摩擦力が大きくなり、真空脱気法により自動車用フロントガラスを製造する際にガラスと中間膜とがずれてしまうのをより効果的に防止することができる。」(段落【0018】)との記載を参酌すれば、凸部の先端の回転半径が20μm以上であれば、上記実施例と同様な効果が得られることも、当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明3は、発明の詳細な説明の記載から本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものといえる。
また、本件発明3を引用する本件発明4についても、同様に、発明の詳細な説明の記載から本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものといえる。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載された発明といえるから、取消理由1に理由はない。

(2)取消理由2について
ア 引用文献1に記載された発明(引用1発明)について
引用文献1には、上記3(1)アによれば、熱可塑性樹脂シートの両面に、頭頂に平面部を有する主凸部及び主凹部からなる多数のエンボスが形成された合わせガラス用中間膜であって、前記主凹部は溝形状を有する合わせガラス用中間膜が記載され、上記3(1)オによれば、当該合わせガラス用中間膜を用いて、自動車窓ガラス用の合わせガラスを作製することが記載されている。
また、引用文献1には、上記3(1)ウ及びエによれば、当該合わせガラス用中間膜の実施例5として、凹凸形状転写装置を用いて、熱可塑性樹脂シートの両面にエンボス形状を有する合わせガラス用中間膜を作製したこと、該エンボス形状が刻線状の模様であって、規則的に、90°回転に配置されていること、及び、前記主凸部の頭頂の平面部のRaが2.0μm、Rzが50.2μmであることが記載され、さらに、上記3(1)カによれば、該エンボス形状の刻線状の模様が平行であることが見て取れる。
さらに、引用文献1には、上記3(1)イによれば、中間膜の各面に90°の刻線を付与した形状は、刻線45°のロールを用いて熱転写したものであることが記載されており、中間膜の各面の刻線は、それぞれ、転写流れ方向に対して45°の傾きを有することが示唆されている。
したがって、引用文献1の上記記載を、実施例5の合わせガラス中間膜に注目して整理すると、引用文献1には、
「熱可塑性樹脂シートの両面に、頭頂に平面部を有する主凸部及び主凹部からなる多数のエンボスが形成されており、該主凹部は溝形状を有し、該エンボスは刻線状の模様が規則的に平行に配置されている、自動車窓用の合わせガラス用中間膜であって、
各面の刻線状の主凹部の傾きは、転写流れ方向に対して45°であり、
前記主凸部の頭頂の平面部のRaが2.0μm、Rzが50.2μmである、
自動車窓用の合わせガラス用中間膜。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用1発明の対比
引用1発明の「両面に、頭頂に平面部を有する主凸部及び主凹部からなる多数のエンボスが形成されて」いること、「該主凹部は溝形状を有し、該エンボスは刻線状の模様が規則的に平行に配置されている」こと、「自動車窓用の合わせガラス用中間膜」は、それぞれ、本件発明1の「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有して」いること、「前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している」こと、「自動車用フロントガラス用中間膜」に相当する。
また、引用1発明の「転写の流れ方向」は、本件発明1の「自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向」に相当するから、引用1発明の「各面の刻線状の主凹部の傾きは、転写流れ方向に対して45°である」ことは、本件発明1の「前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である」ことを満足する。
よって、本件発明1と引用1発明は、
「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である
自動車用フロントガラス用中間膜」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件発明1では、「凸部の先端部粗さが30μm以下である」のに対して、引用1発明では、「主凸部の頭頂の平面部のRaが2.0μm、Rzが50.2μmである」点。

(イ)相違点1の検討
本件発明1の「凸部の先端部粗さ」は、本件特許明細書の段落【0019】及び【0065】の記載からみて、JIS B-0601(1994)に準じる方法により得られる「Rz」であり、本件発明1は、凸部の先端部粗さRzが30μm以下であることを特定するものといえる。
一方、引用1発明は、主凸部の頭頂の平面部のRzが50.2μmであるから、上記相違点1は実質的なものである。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明といえない。
次に、相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討するに、引用文献1には、主凸部の頭頂の平面部のRzを、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために調整することについて記載も示唆もされていない。
また、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために、自動車用フロントガラス用中間膜の凸部の先端部粗さを30μm以下とすることが、周知技術であるともいえる証拠もない。
よって、引用1発明の主凸部の先端粗さRzを30μm以下とすることは、当業者が容易になし得たことといえない。
したがって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、引用1発明の「主凸部の頭頂の平面部のRaが2.0μm」であることが、本件発明1の「凸部の先端部粗さが30μm以下である」ことを満足する旨を主張している(特許異議申立書第16頁第17?28行)。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、本件発明1の「凸部の先端部粗さ」は、「Rz」であるから、申立人の上記主張は採用できない。

ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記イに示した理由と同様の理由により、引用文献1に記載された発明といえないし、また、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 小括
以上で検討したとおりであるから、取消理由2に理由はない。

(3)取消理由3について
ア 引用文献2に記載された発明(引用2発明)について
引用文献2には、上記3(2)アによれば、各面に互いに角度を成して配置された規則的チャネルパターンを有し、規則的チャネルパターンは、全面的に形成された連続開放チャネルと連続リッジの列とからなり、各面の連続開放チャネルは中間層の縁部に対して斜めに配置され、各面の連続開放チャネルの交差角度が少なくとも25度である熱可塑性中間層が記載され、上記3(2)イによれば、当該熱可塑性中間層は、車両の防風ガラス用の積層安全ガラス組立品に使用されることが記載されている。
また、引用文献2には、上記3(2)ウ?キによれば、該熱可塑性中間層の実施例として、各面に多数の平行な狭い開放平底の直線脱気チャネルを含み、該チャネルの側部はリッジによって区切られており、該チャネル及びリッジは、直線縁部に対して45度で斜めに配置されている熱可塑性中間層が記載されている。
したがって、引用文献2の上記記載を、実施例の熱可塑性中間膜に注目して整理すると、引用文献2には、
「熱可塑性中間層の各面に互いに角度を成して配置された規則的チャネルパターンを有し、規則的チャネルパターンは、全面的に形成された多数の平行な狭い開放平底の直線脱気チャネルと、該チャネルの側部を区切る連続リッジとからなり、該チャネル及びリッジは、直線縁部に対して45度で斜めに配置されている、車両の防風ガラス用の熱可塑性中間層。」
の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用2発明の対比
引用2発明の「全面的に形成された多数の平行な狭い開放平底の直線脱気チャネル」は、本件発明1の「多数の凹部」であって、「前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している」ことに相当する。
また、引用2発明の「該チャネルの側部を区切る連続リッジ」、「車両の防風ガラス用の熱可塑性中間層」は、それぞれ、本件発明1の「多数の凸部」、「自動車用フロントガラス用中間膜」に相当する。
さらに、引用2発明の「直線縁部」は、上記3(2)ウ及びカ?クに摘示した引用文献2の記載からみて、本件発明1の「自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向」に相当するから、引用2発明の「該チャネル及びリッジは、直線縁部に対して45度で斜めに配置されている」ことは、本件発明1の「前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である」ことを満足する。
よって、本件発明1と引用2発明は、
「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である
自動車用フロントガラス用中間膜」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点2)
本件発明1では、「凸部の先端部粗さが30μm以下である」のに対して、引用2発明では、「リッジ」の先端部粗さが明らかでない点。

(イ)相違点2の検討
上記相違点2は実質的なものであるから、本件発明1は、引用文献2に記載された発明といえない。
次に、相違点2に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討するに、引用文献2には、リッジの先端部の表面粗さを、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために調整することについて記載も示唆もされていない。
また、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために、自動車用フロントガラス用中間膜の凸部の先端部粗さを30μm以下とすることが、周知技術であるともいえる証拠もない。
よって、本件発明2は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、引用2発明に、引用文献1に記載の、凸部の先端表面粗さについての技術的事項を適用して、凸部の先端部粗さが30μm以下とすることは当業者が容易になし得ることである旨を主張している(特許異議申立書第18頁第23行?第19頁第7行)。
しかしながら、上記(2)イで検討したとおり、引用文献1には、凸部の先端部粗さ(Rz)を30μm以下とする技術的事項は記載されていないから、申立人の上記主張は採用できない。

ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記イに示した理由と同様の理由により、引用文献2に記載された発明といえないし、また、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 小括
以上で検討したとおりであるから、取消理由3に理由はない。

5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条に係る申立理由について
ア 申立理由の概要
申立人は、下記の甲第1号証及び甲第2号証を証拠方法として、次の(ア)?(エ)の申立理由を主張している(特許異議申立書第第16頁第17?28行、第17頁第21行?第18頁第6行、第18頁第23行?第19頁15行)。
(ア)訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、または、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(イ)訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(ウ)訂正前の請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。
(エ)訂正前の請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2001-261385号公報(引用文献1)
甲第2号証:特表平9-508078号公報(引用文献2)

イ 甲第1号証に記載された発明との対比と検討
(ア)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(引用文献1)には、上記4(2)アで認定したとおり、引用1発明が記載されているといえる。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記4(2)イで示した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明といえないし、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件発明3について
本件発明3と引用1発明とを対比すると、本件発明3と引用1発明の相当関係は、上記4(2)イ(ア)での検討と同様であるから、本件発明3と引用1発明は、
「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である
自動車用フロントガラス用中間膜」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点3)
本件発明3では、「凸部の先端の回転半径が20μm以上である」のに対して、引用1発明では、「主凸部の頭頂」の回転半径が明らかでない点。
そこで、上記相違点3について検討するに、引用文献2には、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために、自動車用フロントガラス用中間膜の凸部の回転半径が20μm以上とすることが記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術であるともいえる証拠もないから、引用1発明において、主凸部の頭頂の回転半径を20μm以上とすることは当業者が容易に想到し得たことといえない。
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
また、本件発明3を引用する本件発明4について検討しても、本件発明4は、本件発明3の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

ウ 甲第2号証に記載された発明との対比と判断
(ア)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証(引用文献2)には、上記4(3)アで認定したとおり、引用2発明が記載されているといえる。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであり、少なくとも、上記4(3)イ(ア)に示した相違点2で引用2発明と相違している。そして、上記4(3)イ(イ)及び(ウ)で検討したとおり、甲第2号証(引用文献2)及び甲第1号証(引用文献1)には、ガラスと中間膜とのずれを抑制するために、自動車用フロントガラス用中間膜の凸部の先端部粗さを30μm以下とすることが記載も示唆もされていないから、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(ウ)本件発明3について
本件発明3と引用2発明とを対比すると、本件発明3と引用2発明の相当関係は、上記4(3)イ(ア)での検討と同様であるから、本件発明3と引用2発明は、
「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満である
自動車用フロントガラス用中間膜」
の点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点4)
本件発明3では、「凸部の先端の回転半径が20μm以上である」のに対して、引用2発明では、「リッジ」の先端の回転半径が明らかでない点。
そこで、上記相違点4について検討するに、引用文献2には、連続リッジの先端部のガラスと中間膜とのずれを抑制するために、自動車用フロントガラス用中間膜の凸部の先端の回転半径が20μm以上とすることが記載されていないし、また、当該技術的事項が公知技術であるともいえる証拠もないから、引用2発明において、凸部の回転半径が20μm以上とすることを当業者が容易に想到し得ることといえない。
したがって、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
また、本件発明3を引用する本件発明4について検討しても、本件発明4は、本件発明3の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記理由と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

エ 小括
以上で検討したとおりであるから、申立人が主張する上記申立理由は理由がない。

(2)特許法第36条第6項第2号に係る申立理由について
申立人は、訂正前の請求項1に記載された「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している」とは、いかなる表面形状を規定するものであるのか不明であるから、訂正前の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第19頁第27行?第20頁末行)。
この点について検討するに、本件特許明細書の段落【0011】に「上記凹凸の形状は、少なくとも溝形状を有すればよく、例えば、刻線状、格子状等の、一般的に合わせガラス用中間膜の表面に付与される凹凸の形状を用いることができる。」と記載されているように、本件発明の合わせガラス用中間膜の表面形状は、格子状を含む一般的な凹凸形状を示していることは明らかであるし、さらに、当該凹凸形状の一部の底部が連続した溝形状の凹部が、隣接する凹部と平行して規則的に並列している凹凸形状であることも明らかであるから、本件発明は明確である。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項5に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端部粗さが30μm以下である
ことを特徴とする自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項2】
前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項3】
少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有しており、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している自動車用フロントガラス用中間膜であって、
前記底部が連続した溝形状の凹部の傾きが、該自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に対して35°以上、90°未満であり、
前記凸部の先端の回転半径が20μm以上であることを特徴とする自動車用フロントガラス用中間膜。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の自動車用フロントガラス用中間膜を、前記自動車用フロントガラス用中間膜製造時の膜の流れ方向に巻き取って成ることを特徴とするロール状体。
【請求項5】 (削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-13 
出願番号 特願2015-522311(P2015-522311)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C)
P 1 651・ 853- YAA (C03C)
P 1 651・ 857- YAA (C03C)
P 1 651・ 851- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 政志  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 川村 裕二
宮澤 尚之
登録日 2019-07-19 
登録番号 特許第6556052号(P6556052)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 自動車用フロントガラス用中間膜、ロール状体及び自動車用フロントガラス  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
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