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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G02F
管理番号 1366960
異議申立番号 異議2019-700589  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-29 
確定日 2020-08-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6459160号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6459160号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6459160号の請求項1、3、5、6に係る特許を維持する。 特許第6459160号の請求項2及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6459160号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成25年2月15日に出願され、平成31年1月11日にその特許権の設定登録がされ、同年1月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和元年 7月29日 :特許異議申立人鈴木美香による請求項1ない
し6に係る特許に対する特許異議の申立て
(全請求項)
同年 9月 9日付け:取消理由通知(同年9月12日発送)
同年11月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月27日付け:通知書(同年12月2日発送)
同年12月24日 :特許異議申立人鈴木美香による意見書の提出
令和2年 1月16日付け:決定の予告(同年1月22日発送)
同年 3月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月27日付け:通知書(同年6月3日発送)

なお、特許異議申立人鈴木美香に対して、令和2年5月27日付けで期限を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人鈴木美香からは何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年3月23日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6を、次のとおり訂正しようとするものである(下線は、当審が付したものである。以下、同じ。)。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1ないし6について請求されたものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置されている、」
と記載されているのを

「前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置される、」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記高リタデーション配向フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して25?65度となるように配置される、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項3を独立形式に改め、

「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して10度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデ? ション配向フィルムの配向主軸と平行である場合を除く)。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下である請求項1、3又は4に記載の画像表示装置。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項5を独立形式に改め、

「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデ? ション配向フィルムの配向主軸と平行である場合を除く)。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1?5のいずれかに記載の画像表示装置。」と記載されているのを、「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1、3及び5のいずれかに記載の画像表示装置。」に訂正する。

2 各訂正事項の訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「3000nm以上150000nm以下」を「5177nm以上150000nm以下」に限定するとともに、高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸と、偏光子の偏光軸とが形成する角度を、それぞれ、「45度±10度以下」及び「5度以上30度以下」に特定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 新規事項追加の有無
(ア)本件特許明細書の表4には、試験NO.1ないし5における高リタデーションフィルムのリタデーションが「5177nm」であると記載されている。
(イ)本件特許明細書の【0021】には「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。尚、本書において、『以下』という用語は、『±』の次の数値にのみかかることを意味する。よって、例えば、前記『45度±20度以下』とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」と記載されている。
(ウ)本件特許明細書の【0019】には「そこで、これらの事情を総合的に勘案して、一実施形態において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角は、平行又は垂直から少しずれていることが好ましい。平行又は垂直の状態を基準(0度)として、前記角度のずれは、下限として好ましくは1度以上、好ましくは2度以上、好ましくは3度以上、好ましくは4度以上、好ましくは5度以上、上限として好ましくは45度以下、好ましくは44度以下、好ましくは43度以下、好ましくは42度以下、好ましくは41度以下、好ましくは40度以下である。これらの上限と下限は任意に組み合わせることができる。」
また、本件特許明細書の表4には、試験NO.2、3、11、12、27、28、32、33、35、36、38及び39における低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度は、10度又は30度であることが記載されている。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からして、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質拡張変更の有無
上記ア及びイに照らして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 上記アに照らせば、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3は、請求項間の引用を解消して、訂正前の請求項1を引用する請求項3を独立形式に改める訂正であって、
訂正前の請求項1の「3000nm以上150000nm以下」を「5177nm以上150000nm以下」に限定するとともに、高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸と、偏光子の偏光軸とが形成する角度を、それぞれ、「45度±5度以下」及び「10度以上30度以下」に特定するものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 新規事項追加の有無
(ア)本件特許明細書の表4には、試験NO.1ないし5における高リタデーションフィルムのリタデーションが「5177nm」であると記載されている。
(イ)本件特許明細書の【0021】には「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。尚、本書において、『以下』という用語は、『±』の次の数値にのみかかることを意味する。よって、例えば、前記『45度±20度以下』とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」と記載されている。
(ウ)本件特許明細書の【0019】には「そこで、これらの事情を総合的に勘案して、一実施形態において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角は、平行又は垂直から少しずれていることが好ましい。平行又は垂直の状態を基準(0度)として、前記角度のずれは、下限として好ましくは1度以上、好ましくは2度以上、好ましくは3度以上、好ましくは4度以上、好ましくは5度以上、上限として好ましくは45度以下、好ましくは44度以下、好ましくは43度以下、好ましくは42度以下、好ましくは41度以下、好ましくは40度以下である。これらの上限と下限は任意に組み合わせることができる。」
また、本件特許明細書の表4には、試験NO.2、3、11、12、27、28、32、33、35、36、38及び39における低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度は、10度又は30度であることが記載されている。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からして、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質拡張変更の有無
上記ア及びイに照らして、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 上記アに照らせば、訂正事項4は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
ア 訂正事項5は、請求項間の引用を解消して、訂正前の請求項1を引用する請求項5を独立形式に改める訂正であって、
訂正前の請求項1の「3000nm以上150000nm以下」を「5177nm以上150000nm以下」に限定するとともに、高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸と、偏光子の偏光軸とが形成する角度を、それぞれ、「45度」及び「5度以上30度以下」に特定するものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 新規事項追加の有無
(ア)本件特許明細書の表4には、試験NO.1ないし5における高リタデーションフィルムのリタデーションが「5177nm」であると記載されている。
(イ)本件特許明細書の【0021】には「高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。尚、本書において、『以下』という用語は、『±』の次の数値にのみかかることを意味する。よって、例えば、前記『45度±20度以下』とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」と記載されている。
(ウ)本件特許明細書の【0019】には「そこで、これらの事情を総合的に勘案して、一実施形態において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角は、平行又は垂直から少しずれていることが好ましい。平行又は垂直の状態を基準(0度)として、前記角度のずれは、下限として好ましくは1度以上、好ましくは2度以上、好ましくは3度以上、好ましくは4度以上、好ましくは5度以上、上限として好ましくは45度以下、好ましくは44度以下、好ましくは43度以下、好ましくは42度以下、好ましくは41度以下、好ましくは40度以下である。これらの上限と下限は任意に組み合わせることができる。」
また、本件特許明細書の表4には、試験NO.2、3、11、12、27、28、32、33、35、36、38及び39における低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度は、10度又は30度であることが記載されている。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)からして、訂正事項5は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質拡張変更の有無
上記ア及びイに照らして、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6は、訂正事項3により削除された請求項3の記載を引用しないように、引用する請求項の数を減らすものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

イ 上記アに照らせば、訂正事項6は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明の認定
本件訂正は、上記「第2」のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)は、本件訂正後の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認められる。

[本件訂正発明1]
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く)。」

[本件訂正発明2]
削除

[本件訂正発明3]
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して10度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデ? ション配向フィルムの配向主軸と平行である場合を除く)。」

[本件訂正発明4]
削除

[本件訂正発明5]
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上40度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデ? ション配向フィルムの配向主軸と平行である場合を除く)。」

[本件訂正発明6]
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1、3及び5のいずれかに記載の画像表示装置。」

第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2、4ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)に対して、当審が令和2年1月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである(なお、一回目の訂正により請求項3は削除された。)。

【理由1】(進歩性欠如)
本件発明1、2、4ないし6は、当業者が甲第1号証に記載された発明、周知技術及び「甲第2号証に記載の技術事項」に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2、4ないし6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特開2011-107198号公報
甲第2号証:国際公開第2011/162198号

第5 【理由1】についての当審の判断
1 取消理由の「【理由1】(進歩性欠如)」について検討する。
(1)甲第1号証には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、
バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、
前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有す る高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。
【請求項2】
…… 。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の視認性改善方法を用いたことを特徴とする液晶表示装置。」

イ 「【発明の効果】
【0013】
本発明の方法では、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード光源において効率よく直線偏光を解消し、光源に近似したスペクトルが得られるため、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できる。」

ウ 「【0022】
上記効果を奏するために、本発明に用いられる高分子フィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有していなければならない。リタデーションが3000nm未満では、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。
【0023】
……
【0026】
本発明に用いられる高分子フィルムは、液晶セルの視認側に配した偏光板の視認側に、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して使用される。高分子フィルムを偏光板の視認側に配する方法は、偏光板の最外層に直接に高分子フィルムを積層しても構わないし、他の透明部材を介して配しても構わない。また、液晶表示装置の視認側最表面に高分子フィルムを設置、貼り合わせてもよい。高分子フィルムを直接、または他の透明部材を介して配する際は、粘着層を設けた高分子フィルムを用いることも好ましい態様である。
【0027】
高分子フィルムを配する際は、偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるようにすることが望ましい。これによりサングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができる。なお、上記角度は厳密に45度である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良い。前記角度の好ましい範囲は30?60度、より好ましくは40?50度である。」

エ 「【0034】
本発明における高分子フィルムは、粘着剤層、離型層、帯電防止層などの当該フィルム上に形成される層との接着性、耐水性、耐薬品性等を改良する目的で、フィルム表面を公知の方法で表面処理、すなわちコロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中など)や易接着処理を行なってもよい。易接着処理は、公知の各種の方法を用いることができ、フィルム製造工程中で、あるいは一軸または二軸延伸後のフィルムに公知の各種易接着剤を塗布する方法などが好適に採用される。
【0035】
本発明に用いられる高分子フィルムの厚みは任意であるが、25?500μmの範囲であることが好ましい。25μmを下回る厚みのフィルムでも、原理的には3000nm以上のリタデーションを得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。特に好ましい厚みの下限は35μmである。一方、500μmを超えるフィルムは非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。特に好ましいフィルム厚みの上限は350μmである。」

オ 「【0048】
実験例2
ここでは、高分子フィルムとして配向ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた例を示す。
ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを700部、および酢酸マンガン4水塩を0.16部をエステル交換反応缶に仕込み、120?210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.13部、正リン酸を0.017部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出し固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を得た。
【0049】
固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを幅方向に100℃で4.0倍延伸した後、150℃で熱固定を行い、更に130℃から100℃に冷却しながら、幅方向に3%弛緩処理を行い、厚さ38μmの配向PETフィルム(PETフ
ィルム-1)を得た。
【0050】
また、PETフィルム-1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚さ200μmの配向PETフィルム(PETフィルム-2)を得た。
【0051】
PETフィルム-1と同様の方法を用いて作成した未延伸フィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.4倍延伸して、厚さ700μmの配向PETフィルム(PETフィルム-3)を得た。
【0052】
上記の方法で得られた配向PETフィルムの特性を表1に示した。また、これらのフィルムを、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)、及び冷陰極管をバックライト光源とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)の上に置き、それぞれサングラスを通して画面を見た時の様子を表2に示した。
【0053】
上記の結果より、作成したフィルムは、白色LEDをバックライト光源として用いた場合には視認性改善効果が得られるものの、冷陰極管をバックライト光源として用いた場合には視認性の改善効果が得られないことが解った。
【0054】
【表1】(横長に表記した。)

【0055】
【表2】(横長に表記した。)



カ 「【0056】
本発明の液晶表示装置の視認性改善方法は、屋外で用いられる液晶表示装置、例えば車、船、飛行機などの計器盤、車載カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話やパソコンなどのモバイル機器、あるいはビル、スーパーなどで用いられるデジタルサイネージなどに好適に利用可能である。」

(2)甲第1号証に記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、甲1号証には、
「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置であって(請求項5)、
バックライト光源は、白色発光ダイオードであり、
前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配した(請求項1)、
液晶表示装置。」(請求項1-5)が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イの記載からして、
上記アの「白色発光ダイオード」は、連続的で幅広い発光スペクトルを有することが理解できる。

ウ 上記(1)ウの記載からして、以下のことが理解できる。
(ア)上記アの「偏光板の視認側」とは、具体的には、少なくとも、以下の二箇所であること。
a 偏光板の最外層
b 液晶表示装置の視認側最表面

(イ)上記アの「高分子フィルム」は、粘着層を介して「液晶表示装置の視認側最表面」に貼り合わせてもよいこと。

エ 上記(1)エ及びオの記載からして、
上記アの「3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルム」は、
厚み35?350μmの6000nm?30000nmのリタデーションを有する一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
具体的には、例えば、表1及び表2に示された「PETフィルム-2」、つまり、「厚み200μm、リタデーション21520nm(Nx1.5902、Ny1.6978、Nz1.5147)を有するPETフィルム」であってもよいものと認められる。

オ 上記アの「凡そ45度」は、厳密に45度であってもよいこと。

カ 上記(1)カの記載からして、上記アの「液晶表示装置」は、例えば、携帯電話やパソコン等のモバイル機器であってもよいものと認められる。

キ 上記アないしカより、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する携帯電話やパソコン等のモバイル機器であって、
前記バックライト光源は、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードであり、
視認側最表面に、厚み35?350μmの6000?30000nmのリタデーションを有する一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、例えば、厚み200μm、リタデーション21520nm(Nx1.5902、Ny1.6978、Nz1.5147)を有するPETフィルムを、その遅相軸と前記偏光板の吸収軸とのなす角が厳密に45度となるように粘着層を介して貼り合わせた、携帯電話やパソコン等のモバイル機器。」

2 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載の技術
(1)第2号証には、下記の記載がある。
「[0042] 本発明者等は、保護フィルムの機械的強度を維持しつつ、虹斑の発生を抑制する手段として、保護フィルムのリタデーション(面内リタデーション)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比が特定の範囲に収まるように制御することを見いだした。厚さ方向位相差は、フィルムを厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折率ΔNyz、Δyzにそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られる位相差の平均を意味する。面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの差が小さいほど、観察角度による複屈折の作用は等方性を増すため、観察角度によるリタデーションの変化が小さくなる。さのため、観察角度による虹状の色斑が発生し難くなると考えられる。
[0043] 本発明のポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.500以上、さらに好ましくは0.600以上である。上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性をまし、観察角度による虹状の色斑が発生し難くなる。そして、完全な1軸性(1軸対称性)フィルムでは、上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は、2.0となる。しかし、前述のような完全な1軸性(1軸対称性)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する。
[0044] 一方、本発明のポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下である。観察角度による虹状の色斑発生を完全に抑制するためには、上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が2.0である必要はなく、1.2以下で十分である。また、上記比率が1.0以下であっても、液晶表示装置に求められる視野角特性(左右180度、上下120度程度)を満足することは十分に可能である。」

(2)甲第2号証に記載の技術事項
上記(1)の記載からして、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲第2号証に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「ポリエステルフィルムのリタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)を、1.0?1.2程度にすることで、観察角度による色斑発生が生じ難くなること。」

3 【理由1】(進歩性欠如)
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
(ア)引用発明の「連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード」は、本件訂正発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に相当する。
以下、同様に、
「液晶セル」は、「画像表示セル」に、
「携帯電話やパソコン等のモバイル機器」は、「画像表示装置」に、それぞれ、相当する。

(イ)引用発明の「液晶セルの視認側に配した偏光板」が、「偏光子」を備えていることは明らかであるから、引用発明においては、「液晶セル」よりも視認側に偏光子が配置されているといえる。

(ウ)引用発明の「厚み35?350μmの6000?30000nmのリタデーションを有する一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件訂正発明1の「5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)」に相当する。

(エ)引用発明の「一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、その遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が厳密に45度となるように粘着層を介して視認側最表面に貼り合わせたものであるから、
本件訂正発明1と引用発明とは、「高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置され」ている点で一致する。

(オ)上記の検討からして、本件訂正発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される配向フィルム、
を有し、
前記配向フィルムは、5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10以下となるように配置される、画像表示装置。」

(カ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
配向フィルムに関して、
本件訂正発明1は、
a 「少なくとも2枚の配向フィルム」であって、
b 「配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり」、
c 「高リタデーション配向フィルムは、低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され」、
d 「低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置され」、
e 「但し、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く」のに対して、
引用発明は、低リタデーション配向フィルムを備えることにつき明示されておらず、上記aないしeに係る構成を備えていない点。

イ 判断
(ア)上記<相違点1>について検討する。
a まず、上記<相違点1>のうち、aないしcについて検討する。
(a)引用発明は、携帯電話やパソコン等のモバイル機器であるところ、「タッチパネルを有する携帯電話やパソコン等のモバイル機器」は、下記の文献に記載されているように、本件の優先日(2013年2月8日)前によく知られていることである(以下「周知技術」という。)。
文献a:特開2008-276729号公報(【0100】、図6(a))
文献b:特開2008-257494号公報(【0107】、図1(a))
文献c:国際公開第2012/161078号([0002]、図15)
文献d:国際公開第2010/074144号(【0039】及び図2A)
文献e:東洋紡株式会社 ニュースリリース 「LED光源の特徴を生かして虹むらを解消したポリエステルフィルムを開発」 2013年2月5日

ちなみに、文献bの図1(a)は、以下のものである。

4 タッチパネル(入力パネル)
4s 主面
8a 前面側ガラス基板
8b 背面側ガラス基板
12a、12b 面状電極(透明導電膜)
15 緩衝部材(スペーサ)
30 フィルム部材(PET)

(b)してみると、引用発明の「携帯電話やパソコン等のモバイル機器」を、例えば、上記文献bの図1(a)に示された「『4タッチパネル(入力パネル)』を有するモバイル機器」とすることは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得ることである。
その際、引用発明の「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、視認側最表面に貼り合わせられるものであるから、図1(a)に示された「30 フィルム部材(PET)」に倣って、粘着層を介して「4タッチパネル(入力パネル)」の視認側最表面に貼り合わせることは当然のことである。

(c)上記(b)のようにした引用発明の「携帯電話やパソコン等のモバイル機器」は、視認側に「高リタデーション配向フィルム」を、光源側に「31 背面側フィルム部材(PET)」を備えたものとなる。

(d)次に、本件訂正発明1において、「(光源側に)400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)」を採用する技術的意義を本件特許明細書の記載を参酌して検討する。

本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0005】
…しかしながら、現在流通しているフィルムの多くは、リタデーションの値が3000nm未満のフィルムであり、前記方法では、そのようなフィルムを画像表示装置に使用することができないという問題がある。」

「【0014】
<配向フィルムの位置関>
画像表示装置には、種々の目的で配向フィルムが使用され得る。尚、本書において、配向フィルムとは、複屈折性を有する高分子フィルムのことを意味する。画像表示装置は、視認性を改善するという観点から、少なくとも2枚の配向フィルムを備え、そのうち少なくとも1つの配向フィルムは3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であることが好ましい。また、残る配向フィルムのリタデーションは、特に制限されないが、少なくとも1つの配向フィルムは、3000nm未満のリタデーションを有するフィルム(低リタデーション配向フィルム)であることが好ましい。……。
【0015】
高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムが設けられる位置は、視認側偏光子(8)より視認側である限り特に制限されないが、高リタデーション配向フィルムは、低リタデーション配向フィルムより視認側に設けられることが好ましい。高リタデーション配向フィルムが低リタデーション配向フィルムより視認側に設けられる場合、この関係が維持される限り両フィルムの位置は特に制限されず、例えば、図1の液晶表示装置において下記表1に例示するような配置を取ることができる。」

「【0031】
低リタデーション配向フィルムのリタデーションは、3000nm未満であれば特に制限されない。本発明に好適に用いられる低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上である。虹斑が効果的に改善されるという点では、好ましくは800nm以上、好ましくは1000nm以上、好ましくは1300nm以上である。また、低リタデーション配向フィルムのリタデーションの上限は、高リタデーション配向フィルムとの組合せで虹斑の抑制が可能であるという観点から、3000nm未満、2500nm未満、又は2300nm未満である。画像表示装置が低リタデーション配向フィルムを2枚以上有する場合、それらのリタデーションは同一であっても異なっていてもよい。」

上記記載からして、「低リタデーション配向フィルム」とは、画像表示装置の内部で種々の目的で使用されている多数の配向フィルムのうち、(高リタデーション配向フィルムのように)リタデーションが3000nm以上とならない配向フィルムのことである。また、下限値を400nmとした点に格別の技術的意義は認められない。
そうすると、上記技術的意義は、画像表示装置内部の複数の配向フィルムを、「高リタデーション配向フィルム」と「現在流通している3000nm未満の配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)」とに区別することにあるものと解される。
一方、文献bには、図1(a)に示された「31 背面側フィルム部材(PET)」のリタデーションを特段制御することは記載されていないから、「現在流通している3000nm未満の配向フィルム」であると解される。

(e)上記検討からして、
引用発明において、上記<相違点1>のうち、aないしcを採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になしえたことである。

b 次に、上記<相違点1>のうち、「d 『低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置され』」について検討する。
引用発明の「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、直線偏光の偏光を解消するものである。
してみると、光路中に、上記「31 背面側フィルム部材(PET)」を挿入した際に、上記「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の作用を阻害しないように、言い換えれば、「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過する光の偏光状態が維持されるように、上記「31背面側フィルム部材(PET)」の配向主軸を「偏光子の偏光軸(透過軸)」に対して「垂直又は平行」となるように配置することが自然であり、5度以上30度以下となるように配置する動機が生じるものではない。
また、特許異議申立人の提出した他の各甲号証の記載を見ても、そのことを動機づける記載はない。

(イ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件訂正発明3について
ア 対比
(ア)本件訂正発明3と引用発明とを対比すると、以下の点で一致する。
<一致点>
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される配向フィルム、
を有し、
前記配向フィルムは、5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置される、画像表示装置。」

(イ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点2>
配向フィルムに関して、
本件訂正発明3は、
a 「少なくとも2枚の配向フィルム」であって、
b 「配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり」、
c 「高リタデーション配向フィルムは、低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され」、
d 「低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して10度以上30度以下となるように配置され」、
e 「但し、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く」のに対して、
引用発明は、低リタデーション配向フィルムを備えることにつき明示されておらず、上記aないしeに係る構成を備えていない点。

イ 判断
(ア)上記<相違点2>について検討する。
a 上記<相違点2>のaないしcは、上記<相違点1>のaないしcと実質 的に同じである。
よって、引用発明において、上記<相違点2>のうち、aないしcに係る本件訂正発明3の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。

b 次に、上記<相違点2>のうち、「d 『低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して10度以上30度以下となるように配置され』」について検討する。
引用発明の「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、直線偏光の偏光を解消するものである。
してみると、光路中に、上記「31 背面側フィルム部材(PET)」を挿入した際に、上記「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の作用を阻害しないように、言い換えれば、「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過する光の偏光状態が維持されるように、上記「31背面側フィルム部材(PET)」の配向主軸を「偏光子の偏光軸(透過軸)」に対して「垂直又は平行」となるように配置することが自然であり、10度以上30度以下となるように配置する動機が生じるものではない。
また、特許異議申立人の提出した他の各甲号証の記載を見ても、そのことを動機づける記載はない。

(イ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件訂正発明5について
ア 対比
(ア)引用発明の「連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード」は、本件訂正発明5の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に相当する。
以下、同様に、
「液晶セル」は、「画像表示セル」に、
「携帯電話やパソコン等のモバイル機器」は、「画像表示装置」に、それぞれ、相当する。

(イ)引用発明の「液晶セルの視認側に配した偏光板」が、「偏光子」を備えていることは明らかであるから、引用発明においては、「液晶セル」よりも視認側に偏光子が配置されているといえる。

(ウ)引用発明の「厚み35?350μmの6000?30000nmのリタデーションを有する一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件訂正発明2の「5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)」に相当する。

(エ)引用発明の「厚み35?350μmの6000?30000nmのリタデーションを有する一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の比(Re/Rth)が所定値であることは、明らかである。

(オ)引用発明の「一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、その遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が厳密に45度となるように粘着層を介して視認側最表面に貼り合わせたものであるから、
本件訂正発明2と引用発明とは、「高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置されている」点で一致する。

(カ)上記の検討からして、本件訂正発明5と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
画像表示セル、
前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
前記偏光子より視認側に配置される配向フィルム、を有し、
前記配向フィルムは5177nm以上150000nm以下のリタデーション
を有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比が、所定値であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、画像表示装置。」

(キ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点3>
配向フィルムに関して、
本件訂正発明5は、
a 「少なくとも2枚の配向フィルム」であって、
b 「配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり」、
c 「高リタデーション配向フィルムは、低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され」、
d 「低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して5度以上40度以下となるように配置され」、
e 「但し、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く」、
f 「高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比が、0.2以上1.2以下であ」るのに対して、
引用発明は、低リタデーション配向フィルムを備えることにつき明示されておらず、上記aないしfに係る構成を備えていない点。

イ 判断
(ア)上記<相違点3>について検討する。
a 上記<相違点3>のaないしcは、上記<相違点1>のaないしcと実質的に同じである。
よって、引用発明において、上記<相違点3>のうち、aないしeに係る本件訂正発明5の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。

b 次に、上記<相違点3>のうち、「d 『低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して5度以上40度以下となるように配置され』」について検討する。
引用発明の「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、直線偏光の偏光を解消するものである。
してみると、光路中に、上記「31 背面側フィルム部材(PET)」を挿入した際に、上記「厚み35?350μmの…一軸延伸又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の作用を阻害しないように、言い換えれば、「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過する光の偏光状態が維持されるように、上記「31背面側フィルム部材(PET)」の配向主軸を「偏光子の偏光軸(透過軸)」に対して「垂直又は平行」となるように配置することが自然であり、5度以上40度以下となるように配置する動機が生じるものではない。
また、特許異議申立人の提出した他の各甲号証の記載を見ても、そのことを動機づける記載はない。

(イ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることがてきたものであるとはいえない。

(4)本件訂正発明6について
ア 本件訂正発明6は、本件訂正発明1、本件訂正発明3又は本件訂正発明5の発明特定事をすべて備え、さらに、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイォードである」との限定を付したものであるところ、上記(1)ないし(3)で検討したように、本件訂正発明1、本件訂正発明3又は本件訂正発明5は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることがてきたものであるとはいえない。

イ よって、本件訂正発明6は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 【理由1】(進歩性欠如)のまとめ
本件訂正発明1、本件訂正発明3、本件訂正発明5及び本件訂正発明6に係る特許は、「【理由1】(進歩性欠如)」によっては取り消すことができない。

第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 【理由2】(サポート要件違反)
(1)特許異議申立人鈴木美香は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、課題を解決することができない発明を含むから、訂正前の請求項1ないし6に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。
具体的には、サングラス等の偏光フィルムを介して視認した際の干渉色(即ち、虹斑)による視認性の低下を改善するためには、高リタデーション配向フィルムと低リタデーション配向フィルムのリタデーション差、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と低リタデーション配向フィルムの配向主軸とのなす角度、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角度を特定する必要があるというものである(特許異議申立書第37頁上段)。

(2)しかしながら、本件訂正により、高リタデーション配向フィルムと低リタデーション配向フィルムのリタデーション差が2177nm以上であることが実質的に特定された。
さらに、本件訂正により、高リタデーション配向フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角度、及び、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角度も特定された。ところで、本件訂正により特定された(高リタデーション及び低リタデーション)配向フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角度について、本件特許明細書には、その角度が偏光軸からどちらの方向にとった角度なのか(つまり、時計回り方向の角度なのか、反時計回り方向の角度なのか等)は明記されていないものの、本件特許明細書の【0120】等の記載からして、偏光軸をx軸とするとともに偏光軸に垂直な方向をy軸としつつ、高リタデーション配向フィルムの配向主軸を第1象限に配置するとすれば、低リタデーション配向フィルムの配向主軸も第1象限に配置するような方向にとった角度(同じ方向の角度)、を意味すると解される。
以上によれば、本件訂正後の請求項1,3,5,6の記載が、発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかである。よって、「【理由2】(サポート要件違反)」は解消された。

2 【理由3】(明確性要件違反)
(1)特許異議申立人鈴木美香は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし6に係る発明の「リタデーション」が如何なる波長のリタデーションであるのか不明であるから、訂正前の請求項1ないし6に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する(特許異議申立書第38頁中段)。

(2)しかしながら、本件特許明細書に、測定波長について特段明記されていない場合は、屈折率は、ナトリウムD線(589nm)により測定されることは、当業者の技術常識である。
また、本件特許明細書の【0117】には「尚、リタデーション(Re)及び厚さ方向リタデーション(Rth)は、次の通り測定した。即ち、二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向主軸方向を求め、配向主軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)として求めた。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。また、リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)、(△Nyz×d)の平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。」と記載され、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)を用いて測定することが開示されている。
そして、上記アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)の光源が「D線波長近似」の「LED」であることは、当業者によく知られていることである。

(3)よって、本件訂正発明1、3、5及び6の記載は明確であって、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすことから、特許異議申立人の主張は、採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1、本件訂正発明3、本件訂正発明5及び本件訂正発明6に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
他に本件訂正発明1、本件訂正発明3、本件訂正発明5及び本件訂正発明6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び4に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人鈴木美香による特許異議の申立てについて、請求項2及び4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±10度以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度±5度以下となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して10度以上30度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く)。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子より視認側に配置される少なくとも2枚の配向フィルム、
を有し、
前記少なくとも2枚の配向フィルムのうち1枚は5177nm以上150000nm以下のリタデーションを有するフィルム(高リタデーション配向フィルム)であり、
残る配向フィルムの少なくとも1枚は、400nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルム(低リタデーション配向フィルム)であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、前記低リタデーション配向フィルムより視認側に配置され、
前記高リタデーション配向フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下であり、
前記高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置され、
前記低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して5度以上40度以下となるように配置される、
画像表示装置(但し、前記高リタデーション配向フィルムの配向主軸と前記低リタデーション配向フィルムの配向主軸とが平行である場合を除く)。
【請求項6】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1、3及び5のいずれかに記載の画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-18 
出願番号 特願2013-28290(P2013-28290)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G02F)
P 1 651・ 121- YAA (G02F)
P 1 651・ 537- YAA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯野 光司  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 山村 浩
星野 浩一
登録日 2019-01-11 
登録番号 特許第6459160号(P6459160)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 画像表示装置  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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