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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1366966
異議申立番号 異議2019-700332  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-24 
確定日 2020-09-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6409251号発明「接着用樹脂組成物、接着用フィルムおよびフレキシブル金属積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6409251号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正することを認める。 特許第6409251号の請求項1?3、5及び7?19に係る特許を維持する。 特許第6409251号の請求項4及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6409251号(以下「本件特許」という。)の請求項1?19に係る特許についての出願は、2015年12月8日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月8日(KR)韓国〕を国際出願日とする特願2017-521135号として特許出願されたものであって、平成30年10月5日に特許権の設定登録がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行され、その請求項1?19に係る発明の特許に対し、平成31年4月24日に岡林茂(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
令和元年 8月 8日付け 取消理由通知
同年11月 8日(受理日) 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年11月12日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月13日 意見書(特許異議申立人)
令和2年 2月 5日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月10日(受理日) 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 4月15日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、特許異議申立人は、令和2年4月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に応答しなかった。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和元年11月8日受け付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げされたものとみなされるところ、
令和2年4月10日に受理された訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は『特許第6409251号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-19について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?3からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「エポキシ樹脂10?80重量部」とあるのを、
訂正後の請求項1で「200g/eq?500g/eqのエポキシ当量のエポキシ樹脂20?80重量部」との記載に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?3、5及び7?19についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
訂正前の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項6を削除する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「エポキシ樹脂」について、エポキシ当量を「200g/eq?500g/eq」と特定し、含有量の下限を10重量部から20重量部とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、上記ア.に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項1は、本件特許明細書の段落0023の「エポキシ樹脂10?80重量部または20?60重量部を含んでもよい。」との記載、及び同段落0028の「前記接着用樹脂組成物の耐熱性を高めかつ、誘電率および誘電損失係数を低下させるために、200g/eq?500g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。」との記載に基づいて導き出されるものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2及び3について
ア.訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項2及び3は、上記ア.で述べたように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項2及び3は、訂正前の請求項4及び6を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)一群の請求項について
訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1?19について、その請求項2?19はいずれも請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?19に対応する訂正後の請求項1?19は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、訂正事項1?3による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1?3による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?19〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は容認し得るものであるから、本件訂正による訂正後の請求項1?19に係る発明(以下「本1発明」?「本19発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部;
200g/eq?500g/eqのエポキシ当量のエポキシ樹脂20?80重量部;
イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒0.05?5重量部;および
酸無水物系化合物10?80重量部;を含み、
乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物。
【請求項2】前記酸無水物系化合物は、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(Hexahydrophthalic Anhydride)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Methylhexahydrophthalic Anhydride)、メチルハイミック無水物(Methyl Himic Anhydride)、ナディックメチル無水物(NADIC Methyl Anhydride)、ナディック無水物(NADIC Anhydride)、およびドデセニル無水コハク酸からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項3】乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項4】 (削除)
【請求項5】前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部に対して、有機溶媒50?1,000重量部をさらに含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項6】 (削除)
【請求項7】前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、30,000?800,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項8】前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位5?50重量%含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項9】前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス-1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、および4-メチル-1,2,3,6テトラヒドロフタル酸からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項10】前記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項11】前記スチレン-マレイン酸無水物共重合体は、1,000?50,000の重量平均分子量を有する、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項12】前記スチレン-マレイン酸無水物共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位50重量%?95重量%を含む、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項13】請求項1に記載の接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用フィルム。
【請求項14】乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項15】前記接着用フィルムは、1μm?100μmの厚さを有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項16】ポリイミド樹脂フィルム;
銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および
前記ポリイミド樹脂フィルムおよび金属薄膜の間に形成された、請求項13から15のいずれか一項に記載の接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体。
【請求項17】前記ポリイミド樹脂フィルムは、1μm?50μmの厚さを有し、
前記ポリイミド樹脂フィルムは、フッ素系樹脂5?75重量%を含有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項18】前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで2.2?2.8の誘電率(Dk)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項19】前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。」

第4 取消理由通知の概要
本件訂正の直前に、当審が令和2年2月5日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

本件特許の訂正前の請求項1及びその従属項に記載された発明は、エポキシ当量が「200g/eq?500g/eq」のものに限定されていないことから、当該発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
したがって、本件特許は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものではなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

第5 当審の判断
1.特許法第36条第6項第1号について
本件訂正の訂正事項1により、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明のエポキシ当量が「200g/eq?500g/eq」のものに限定された。
してみると、本件特許は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものではないとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。
なお、特許異議申立人は、令和2年4月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答していない。

2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由(進歩性)の概要
特許異議申立人が主張する申立理由(進歩性)は、
「本件特許発明1-4、6-10、13-16、18、19は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明ともいう。以下、同様。)及び甲第1号証に紐付けられる甲第2号証に記載された事項(甲2事項ともいう。以下、同様。)、又は、甲1発明及び甲2事項並びに甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件特許発明5は、甲1発明及び甲2事項並びに甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件特許発明11、12は、甲1発明及び甲2事項並びに甲4発明若しくは周知技術に基づいて、又は、甲1発明及び甲2事項、甲3発明並びに甲4発明若しくは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件特許発明17は、甲1発明及び甲2事項並びに甲8発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲2事項、甲3発明並びに甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。」から、
本件特許発明1-19は、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に違反するというものである。

(2)引用刊行物及びその記載事項
甲第1号証:特開2006-9015号公報
甲第2号証:特開昭50-130898号公報
甲第3号証:国際公開第2014/147903号
甲第4号証:特表2012-530807号公報
甲第5号証:特開平9-25349号公報
甲第6号証:特開平10-17685号公報
甲第7号証:特開平10-17686号公報
甲第8号証:特開平4-328161号公報

甲第1号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1、3、4及び7
「【請求項1】電子部品とコンダクタ・トラックを接合するための、少なくとも
a)酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-、及び
b)エポキシド化合物、
からなる、接着剤を有する熱活性化できる接着テープ。…
【請求項3】エポキシド化合物がエポキシ樹脂及び/またはエポキシ化ポリマ-である、請求項1又は2のいずれかの熱活性化できる接着テープ。
【請求項4】接着剤が粘着性付与樹脂、促進剤、染料、カ-ボンブラック、及び/または金属粉末を含んでなる、請求項1-3のいずれか1つの熱活性化できる接着テープ。…
【請求項7】接着剤が更なる酸無水物を含んでなる、請求項1-6のいずれか1つの熱活性化できる接着テープ。」

摘記1b:段落0001
「【0001】本発明は、電子部品(electronic component)及び柔軟なプリントコンダクタ・トラック(conductor track)(柔軟な印刷回路板、FPCB)を接合するための、高温で低流動性の熱活性化できる接着剤に関する。」

摘記1c:段落0020
「【0020】…用いるブロックコポリマ-の少なくとも1画分は、酸で変性または酸無水物で変性されていなければならず、この変性は不飽和モノカルボン酸及びポリカルボン酸または無水物、例えばフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸または無水シトラコン酸、好ましくは無水マレイン酸の遊離基グラフト共重合により本質的に行われる。この酸及び/または酸無水物の画分は、全ブロックコポリマ-に基づいて、好ましくは0.5-4重量%である。」

摘記1d:段落0028
「【0028】すでに言及した酸変性のまたは酸無水物変性のビニル芳香族ブロックコポリマ-の他に、高度の架橋を達成し、かくして均一な、更なる改良された付着を達成するために、更なる酸または酸無水物を添加することもできる。これとの関連において、米国特許第3970608A号に記述されているようなモノマ-の酸無水物及び酸ばかりでなく、酸変性のまたは酸無水物変性のポリマ-、更に酸無水物含有のコポリマ-、例えばISPからガントレツ(GantrezTM)の名で入手できるポリビニルメチルエ-テル-無水マレイン酸コポリマ-も使用できる。」

摘記1e:段落0033
「【0033】…促進剤として公知の化合物を添加することにより、反応速度を更に増加させることが可能である。可能な促進剤の例は、次のもの、
-第3級アミン、例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノ-ル及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノ-ル、
-三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体、
-置換イミダゾ-ル、
-トリフェニルホスフィン、
を含む。」

摘記1f:段落0034
「【0034】理想的には、酸変性及び/または酸無水物変性の弾性体及びエポキシ樹脂は、エポキシド基及び無水物基のモル画分が丁度当量であるような割合で使用される。低度の変性の弾性体を使用する場合、また低エポキシド当量の低分子量エポキシ樹脂を使用する場合、このとき使用されるエポキシ樹脂の量は、非常に低く、変性されたスチレンブロックコポリマ-に基づいて10重量%未満である。しかしながら酸無水物基及びエポキシド基の比は、広範に変えることができる。十分な架橋のためには、これらの2つの基のいずれもが4倍モル過剰量以上で存在すべきでない。」

摘記1g:段落0038
「【0038】…実施例1 クレイトンFG1901(ブロックポリスチレン30重量%及び無水マレイン酸約2重量%を含む無水マレイン酸で変性されたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマ-)92.5g及びベイクライトEPR191(エポキシ樹脂)7.5gの混合物を、トルエンに溶解し、この溶液から1.5g/m^(2)でシリコ-ン処理した剥離紙にコーティングし、110℃で15分間乾燥した。この接着剤層の厚さは25μmであった。」

甲第2号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1
「1.アセチレン?共役ジエンランダム共重合体のエポキシ化体100重量部に対し、明細書記載のエポキシ基硬化剤の少なくとも1つ0.1?1000重量部を配合してなる新規エポキシ化体硬化組成物。」

摘記2b:第3頁左上欄第12行?第5頁左上欄第1行
「本発明の組成物の(B)成分は(A)成分共重合体エポキシ化体のエポキシ基と反応して、架橋硬化させるものであつて、一般のエポキシ樹脂に対して用いられる硬化剤一般を用いることができる。そあれらの具体例を次にあげる。
(1)エポキシ基を開環重合させる塩基性触媒。…トリメチルアミン…等の第三アミン等、更にエポキシ基と化学量論的に反応して第三アミンを生成する第二アミンもこの分類に含まれる。このような第二アミンの例は、例えば…エチルメチルイミダゾール等である。…
(3)エポキシ基と化学量論的に反応する化合物。…分子内に2個以上の活性水素基をもつ活性水素化合物及び酸無水物等である。…酸無水物の例としては、例えば、無水フタル酸、…無水マレイン酸?スチレン共重合物、…無水メチルナジック酸等の無水アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタル酸、…無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、…等の酸無水物及びそれらの共融混合物等がある。」

摘記2c:第5頁左上欄第8?11行
「上述のエポキシ基硬化剤のうち、(1)および(2)の群に属する硬化剤は触媒的に作用するので、ごく少量の使用量でよく、通常0.1?10重量部程度が用いられ、好ましくは0.2?5重量部である。」

摘記2d:第5頁左上欄第17行?右上欄第2行
「エポキシ基硬化剤の(3)の群に属する硬化剤は(A)成分のエポキシ基と当量反応を行うものであるから、その配合量は(A)成分量と(B)の(3)の両成分の当数量によつてきめられる。従つて(B)成分(3)群化合物の適当量は、(A)成分100重量部当り、10?1000重量部である。」

甲第3号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記3a:請求項1、3及び5
「[請求項1]カルボキシル基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する接着剤組成物であって、
前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記カルボキシル基含有スチレン系エラストマー(A)100質量部に対して1?20質量部であり、かつ、周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電率が2.5未満であることを特徴とする接着剤組成物。…
[請求項3]上記カルボキシル基含有スチレン系エラストマー(A)が、…スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体…を、不飽和カルボン酸で変性したものである請求項1又は2に記載の接着剤組成物。…
[請求項5]周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電正接が、0.01未満である請求項1?4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。」

摘記3b:段落0001
「[0001]本発明は、接着性及び誘電特性に優れ、電子部品、特に、フレキシブルプリント配線板(以下「FPC」ともいう)の関連製品の製造に適した接着剤組成物に関するものである。また、本発明は、この接着剤組成物を用いて得られたカバーレイフィルム、フレキシブル銅張積層板及びボンディングシートに関する。」

摘記3c:段落0005
「[0005]このようなFPC関連製品に使用される接着剤としては、…特許文献3には、スチレン-マレイン酸共重合体/エポキシ樹脂系接着剤が開示されている。これらの文献に記載されている接着剤組成物は、ゴムやエラストマー成分のカルボキシル基とエポキシ樹脂との反応性を利用することにより、速やかな硬化反応を実現し、接着性にも優れているため、広く利用されている。」

摘記3d:段落0020?0021及び0023
「[0020]…本発明で使用されるエポキシ樹脂(B)は、接着剤硬化物の耐熱性と高い接着性を発現するための役割を担っている。…
[0021]更に、エポキシ樹脂の例として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、…ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、…ビフェニル型エポキシ樹脂、…等を用いることができる。これらの中でも、誘電特性に優れた接着剤組成物が得られることから、ジシクロペンタジエン等の脂環骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。…
[0023]上記エポキシ樹脂(B)の含有量は、上記カルボキシル基含有スチレン系エラストマー(A)100質量部に対して1?20質量部であることが必要である。前記含有量は、3?15質量部であることが好ましい。この含有量が1質量部未満であると、十分な接着性と耐熱性が得られない場合がある。一方、この含有量が20質量部を超えると、はく離接着強さが低下したり、硬化物の誘電率が高くなったりする場合がある。」

摘記3e:段落0029、0032?0033及び0041
「[0029]上記硬化促進剤は、カルボキシル基含有スチレン系エラストマーとエポキシ樹脂との反応を促進させる目的で使用するものであり、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤等を使用することができる。…
[0032]イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール…等が挙げられる。
[0033]本発明の接着剤組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1?10質量部の範囲に入るように用いることが好ましい。特に好ましくは、2?5質量部の範囲である。硬化促進剤の含有量が1?10質量部の範囲であれば、優れた接着性及び耐熱性を有する。…
[0041]…ポリイミドフィルム…の厚さは、通常、10?125μmである。」

摘記3f:段落0055?0060
「[0055]…(1)スチレン系エラストマーa1
旭化成ケミカルズ社製の商品名「タフテックM1913」(マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体)を用いた。この共重合体の酸価は10mgKOH/gであり、スチレン/エチレンブチレン比は30/70であり、重量平均分子量は15万である。…
[0056]…(1)エポキシ樹脂b1
DIC社製 商品名「EPICLON HP-7200」(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂)を用いた。…
[0057]…(1)硬化促進剤 四国化成社製 商品名「キュアゾールC11-Z」(イミダゾール系硬化促進剤)を用いた。…(4)溶剤 トルエン及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤(質量比=90:10)を用いた。
[0058]…実施例1?7、比較例1?3
撹拌装置付き1000mlフラスコに、上記の原料を表1に示す割合で添加し、室温下で6時間撹拌して溶解することにより、固形分濃度20%の液状接着剤組成物を調製した。得られた液状接着剤組成物を用いて、上記の各種評価を行った。
[0059][表1]

[0060]上記表1の結果から、実施例1?7の接着剤組成物は、すべての特性において優れたものであることが分かる。一方、比較例1及び2は、エポキシ樹脂(B)の含有量が本発明の範囲の上限から外れるため、接着性や誘電特性に劣る。また、比較例3は、スチレン系エラストマーがカルボキシル基を有しないため、接着性、はんだ耐熱性及び樹脂流れ出し性に劣る。」

甲第4号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記4a:段落0004?0005及び0010
「【0004】エポキシ含有積層板の調製では、熱硬化樹脂を形成するためにエポキシ組成物を架橋結合させるために、エポキシ樹脂組成物にハードナー(「硬化剤」または「架橋剤」とも呼ばれる)を組み入れることは、従来行われている。エポキシ樹脂のための種々のハードナーが一般に知られており、アミン、…無水物、カルボン酸、…が挙げられる。…
【0005】電気積層板産業の最近の傾向では、より低い誘電率(Dk)および誘電正接(Df(dissipation factor))を含む向上した誘電特性;高いガラス転移温度(Tg)および熱分解温度(Td)を含む優れた熱的特性;ならびに十分な加工性を有する材料が必要とされている。積層板の特性を向上させるための1つの既知の手法は、難燃性のエポキシ樹脂を、スチレン-無水マレイン酸コポリマー(SMA)などの無水物ハードナーで硬化することから成る。…
【0010】…スチレンと無水マレイン酸のコポリマーは、10,000から50,000の範囲にある分子量(Mw)を有することが可能であり、…市販例としては、…SMA EF60およびSMA EF80が…入手可能である。」

摘記4b:段落0057
「【0057】本発明のハードナー組成物を使用する場合、積層板の誘電特性、特に誘電率(Dk)もまた向上する。標準的なFR4と比較する場合、本発明の積層板は、常に優れている。Dkは、約4.0より著しく低い。一実施形態では、Dkは約3.8未満であり、別の実施形態では、Dkは約3.6未満である。これらのDkの範囲は、積層板の特定の構成、樹脂含量および周波数範囲の文脈の中で割り当てられる。誘電正接Dfは、一般に、試験周波数1GHzにおいて約0.015未満、好ましくは約0.010未満であり、より好ましくは約0.007未満である。」

甲第5号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記5a:段落0009
「【0009】…本発明者等は、種々検討した結果、特定のスチレンと無水マレイン酸からなる共重合物を特定のエポキシ樹脂の必須の硬化剤として用い、特定のスチレン系化合物を添加し、かつ、特定の溶剤を用いたエポキシ樹脂組成物が、基材への含浸性ならびに塗工性が良好で、電気積層板用途に十分適用可能であり、また、該樹脂組成物を用いた積層板は、誘電率及び誘電正接が低く、かつ高耐熱性であり、難燃性付与が可能な積層板を得ることを見い出し本発明を完成するに至った。」

摘記5b:段落0018及び0020
「【0018】本発明のエポキシ樹脂硬化剤(II)は、スチレン及び無水マレイン酸を必須成分として得られる共重合樹脂であって、スチレンと無水マレイン酸のモル比が9:1?5:5、酸価100?600mgKOH/g、数平均分子量1,000?3,000であり、1分子中に少なくとも1個の酸無水物基を有する共重合体を主な硬化剤とし、エポキシ基に対する酸無水物基のモル比が0.3?1.5の範囲である。…
【0020】エポキシ基に対する酸無水物基のモル比が、0.3未満では、誘電特性に向上は少なく、発明効果が消失する。」

摘記5c:段落0022
「【0022】本発明では、該樹脂組成物の硬化速度を、適宜調節するために硬化促進剤を添加することを妨げない。これらは、エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に用いられているものであれば特に限定されない。代表的な例としては、イミダゾール類及びその誘導体ならびに第3アミン類などが挙げられる。」

甲第6号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記6a:段落0007、0012?0013及び0027
「【0007】…エポキシ樹脂に、硬化剤として、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とを必須成分としてなる共重合樹脂…を使用したエポキシ樹脂組成物…から得られる積層板は、誘電率及び静電正接が低く、…耐熱性が良好である…
【0012】…スチレンと無水マレイン酸との構成比率(モル)が9:1?5:5…であり、1分子中に少なくとも1個の酸無水物基を有する共重合樹脂である。
【0013】…エポキシ基に対する酸無水物基のモル比が…0.3未満では誘電特性の向上は少なく、…
【0027】…スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂」

甲第7号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記7a:段落0007及び0029
「【0007】…エポキシ樹脂に、硬化剤として、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とを必須成分としてなる共重合樹脂…を使用し…たエポキシ樹脂組成物…から得られる積層板は、誘電率及び誘電正接が低く、かつ耐熱性…が良好である…
【0029】…スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂」

甲第8号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記8a:段落0009
「【0009】…本発明の組成物において上記のフッ素樹脂は、…ポリイミド1
00重量部に対して1?100重量部…の割合で配合されることが好ましい。」

(3)甲第1号証に記載された発明
摘記1aの【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】及び【請求項7】の記載から、甲第1号証の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7には、請求項4に係る構成を「c)」、請求項7に係る構成を「d)」とすれば、
「電子部品とコンダクタ・トラックを接合するための、少なくとも
a)酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-、
b)エポキシ樹脂及び/又はエポキシ化ポリマーであるエポキシド化合物、
c)粘着性付与樹脂、促進剤、染料、カーボンブラック、及び/又は金属粉末、並びに、
d)酸無水物、からなる接着剤を有する熱活性化できる接着テープ。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
本1発明の「ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体」と甲1発明の「a)酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-」とは、「コポリマー」は共重合体のことを意味するから、両者は「共重合体」である点で共通する。
本1発明の「200g/eq?500g/eqのエポキシ当量のエポキシ樹脂」と甲1発明の「b)エポキシ樹脂及び/又はエポキシ化ポリマーであるエポキシド化合物」とは、「エポキシ樹脂」である点で共通する。
甲1発明の「促進剤」には、「第3級アミン、例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノ-ル及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノ-ル」、「三ハロゲン化ホウ素-アミン錯体」、「置換イミダゾ-ル」(甲第1号証の【0033】)が含まれるから、本1発明の「イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒」に相当する。
甲1発明の「酸無水物」は、本1発明の「酸無水物系化合物」に相当する。
甲1発明の「接着剤」は、本1発明の「接着用樹脂組成物」に相当する。

してみると、本1発明と甲1発明とは、
「共重合体;エポキシ樹脂;イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒;および酸無水物系化合物;を含む、接着用樹脂組成物。」という点において一致し、次の(α)?(ε)の5つの点において一応相違する。

(α)「エポキシ樹脂」について、本1発明では、「200g/eq?500g/eqのエポキシ当量のエポキシ樹脂20?80重量部」であることが特定されるのに対し、甲1発明の「b)エポキシ樹脂及び/又はエポキシ化ポリマーであるエポキシド化合物」は、そのエポキシ当量及び含有量は不明な点。
(β)「共重合体」について、本1発明1では、「ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明は、「酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-」であり、含有量は不明な点。
(γ)「硬化触媒の配合量」について、本1発明では、「0.05?5重量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明の「促進剤」の含有量は不明な点。
(δ)酸無水物系化合物の含有量が、本1発明では、「10?80重量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明は「酸無水物」の含有量は不明な点。
(ε)本1発明は、「乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する」ことが特定されているのに対して、甲1発明の「乾燥状態および5GHzでの誘電率(Dk)」は不明な点。

(5)判断
ア 事案に鑑み、相違点(α)について検討する。
甲第1号証の段落0034(摘記1f)の「低度の変性の弾性体を使用する場合、また低エポキシド当量の低分子量エポキシ樹脂を使用する場合、このとき使用されるエポキシ樹脂の量は、非常に低く、変性されたスチレンブロックコポリマーに基づいて10重量%未満である。」と記載されており、使用されるエポキシ樹脂の量は、スチレンブロックコポリマーの10重量%未満、すなわち、スチレンブロックコポリマー100重量部に対して10重量部未満となることが記載されている。
また、同段落0038(摘記1g)に記載の「実施例1」は、甲1発明の具体例といえるところ、甲1発明の「酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-」に相当する「無水マレイン酸約2重量%を含む無水マレイン酸で変性されたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー」100重量部(92.5g)に対して、「エポキシ樹脂」は約8.1重量部(7.5g÷92.5g×100%)用いられている。
ここで、上記「実施例1」は、「無水マレイン酸約2重量%を含む無水マレイン酸で変性されたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー」を用いているところ、段落0020(摘記1c)には、「酸無水物の画分は、全ブロックコポリマ-に基づいて、好ましくは0.5-4重量%である」という記載があることから、当該「無水マレイン酸」の含有量を2倍(4重量%)としたものを仮定すると、段落0034(摘記1f)の「酸変性及び/または酸無水物変性の弾性体及びエポキシ樹脂は、エポキシド基及び無水物基のモル画分が丁度当量であるような割合で使用される。」という記載から、「エポキシ樹脂」の含有量は、上記「実施例1」のそれの2倍、すなわち、約16.2重量部(2×約8.1重量部)となることになる。
しかしながら、仮に、そのようなことが可能だとしても、依然として、「エポキシ樹脂」の含有量は、本1発明の「20?80重量部」の範囲のものとはならない。
また、甲第1?8号証には、「酸変性もしくは酸無水物変性ビニル芳香族ブロックコポリマ-100重量部」に対して、「エポキシ樹脂」の含有量を「20?80重量部」の範囲のものとすることについては、記載も示唆もない。
さらに、甲1発明において、「エポキシ樹脂」の含有量を「20?80重量部」の範囲のものとした接着剤がどのような特性を有するものとなるかは、当業者にとって明らかなものとはいえない。
そうすると、甲1発明の「エポキシ樹脂」の含有量を、本1発明の「20?80重量部」の範囲に変更する、動機付けがあるとはいえず、上記(α)の相違点に係る構成を導き出すことがは当業者にとって容易想到であるということはできない。

イ.特許異議申立人の主張について
この点に関して、令和元年12月13日付けの意見書の第2頁の「4-1-1.エポキシ樹脂の配合量について」の項において、特許異議申立人は「甲第1号証の段落[0034]には『酸無水物基及びエポキシド基の比は、広範に変えることができる。十分な架橋のためには、これらの2つの基のいずれもが4倍モル過剰量以上で存在すべきでない。』と記載されており、甲1発明は、少なくとも4倍モル過剰量未満のエポキシ樹脂の使用を許容していると言える。同段落によれば、エポキシ樹脂は『エポキシド基及び無水物基のモル画分が丁度当量であるような割合で使用される』ことから、『丁度当量』使用されることが前提の甲第1号証の実施例1に基づけば、少なくとも、16.216×4=64.864重量部未満の『エポキシ樹脂』の使用を許容されることになる。すなわち、甲1発明は、依然として本件発明1の『20?80重量部』で使用される場合を含むため、エポキシ樹脂の配合量において、実質的な差異はないと思料する。」と主張する。
しかしながら、上記主張は、上記「実施例1」において、無水マレイン酸の含有量を2倍にしたものにおいて、さらに、エポキシド基を酸無水物基の4倍にするということを前提としているところ、上記段落0034の記載は、酸無水物基及びエポキシド基の比の上限について述べたものにすぎず、無水マレイン酸の含有量を取り得る最大のものとしたものにおいて、さらに、エポキシド基を酸無水物基の4倍にすることが許容されるものであることまでも意味するものとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

ウ.本1発明の効果について
令和元年11月7日付けの意見書の第18及び21頁において、特許権者は『本特許権者らは、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部に対して、エポキシ樹脂が20?80重量部を含むときに、製造した接着フィルムの乾燥状態および5GHzでの誘電率Dkおよび誘電損失係数Dfを測定する追加の実験を行った。…なお、下記追加の実施例3?6は、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部に対して、エポキシ樹脂をそれぞれ20、40、60および80重量部含むものである。…
上記実施例3?6の結果を下記表に示す。また、本願明細書段落0073の表2に記載の実施例1?2および比較例1?3の結果も比較のために記載する。

上記追加の実施例3?6において、ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部に対して、エポキシ樹脂の含有量が20?80重量部の範囲内で、本願発明に係る接着用樹脂組成物は、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有し、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有し、誘電率(Dk)及び誘電損失係数(Df)の点で優れた効果を有する。』と主張する。
してみると、上記追加の実施例3?6の試験結果にあるように、本1発明は、上記(α)の相違点に係る「20?80重量部」のエポキシ樹脂の配合量という構成を具備することにより、誘電率(Dk)及び誘電損失係数(Df)の点で優れた効果を有するに至ったものと理解でき、甲第1?8号証の全てを精査しても、このような効果を当業者が予測できるといえる記載は、示唆を含めて見当たらない。

エ.本1発明の進歩性についてのまとめ
以上総括するに、本1発明と甲1発明は、少なくとも上記(α)の相違点を有し、この相違点は、甲第1?8号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても容易に導き出し得るものではないから、上記(α)の相違点に係る構成を想到し、その効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記(β)?(ε)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1?8号証の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。

オ.本2?本3、本5及び本7?本19発明について
本2?本3、本5及び本7?本19発明は、本1発明を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものである。
してみると、本1発明の進歩性が甲第1?8号証によって否定できない以上、本2?本3、本5及び本7?本19発明が、甲第1?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。

カ.申立理由(進歩性)のまとめ
以上、特許異議申立人が主張する申立理由(進歩性)には理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の請求項1?3、5及び7?19に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1?3、5及び7?19に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項4及び6は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項4及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部;
200g/eq?500g/eqのエポキシ当量のエポキシ樹脂20?80重量部;
イミダゾール系化合物、イミン系化合物、およびアミン系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む硬化触媒0.05?5重量部;および
酸無水物系化合物10?80重量部;を含み、
乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸無水物系化合物は、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(Hexahydrophthalic Anhydride)、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Methylhexahydrophthalic Anhydride)、メチルハイミック無水物(Methyl Himic Anhydride)、ナディックメチル無水物(NADIC Methyl Anhydride)、ナディック無水物(NADIC Anhydride)、およびドデセニル無水コハク酸からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項3】
乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体100重量部に対して、有機溶媒50?1,000重量部をさらに含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、30,000?800,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項8】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物が0.1重量%?15重量%結合されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位5?50重量%含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項9】
前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス-1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、および4-メチル-1,2,3,6テトラヒドロフタル酸からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、およびジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項11】
前記スチレン-マレイン酸無水物共重合体は、1,000?50,000の重量平均分子量を有する、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項12】
前記スチレン-マレイン酸無水物共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位50重量%?95重量%を含む、請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の接着用樹脂組成物の硬化物を含み、乾燥状態および5GHzで2.8以下の誘電率(Dk)を有する、接着用フィルム。
【請求項14】
乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項15】
前記接着用フィルムは、1μm?100μmの厚さを有する、請求項13に記載の接着用フィルム。
【請求項16】
ポリイミド樹脂フィルム;
銅、鉄、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、金、およびこれらの2種以上の合金からなる群より選択された1種以上を含む金属薄膜;および
前記ポリイミド樹脂フィルムおよび金属薄膜の間に形成された、請求項13から15のいずれか一項に記載の接着用フィルム;を含むフレキシブル金属積層体。
【請求項17】
前記ポリイミド樹脂フィルムは、1μm?50μmの厚さを有し、
前記ポリイミド樹脂フィルムは、フッ素系樹脂5?75重量%を含有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項18】
前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで2.2?2.8の誘電率(Dk)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項19】
前記接着用フィルムは、乾燥状態および5GHzで0.010以下の誘電損失係数(Df)を有する、請求項16に記載のフレキシブル金属積層体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-25 
出願番号 特願2017-521135(P2017-521135)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 蔵野 雅昭
木村 敏康
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6409251号(P6409251)
権利者 ▲広▼▲東▼生益科技股▲ふん▼有限公司
発明の名称 接着用樹脂組成物、接着用フィルムおよびフレキシブル金属積層体  
代理人 龍華国際特許業務法人  
代理人 龍華国際特許業務法人  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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