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審決分類 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:576  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1367003
異議申立番号 異議2020-700232  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-02 
確定日 2020-10-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6585025号発明「パーソナルビデオレコーダ機能を備えた双方向番組ガイド・システム及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6585025号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6585025号の請求項1?20に係る特許についての出願は、2002年(平成14年)2月21日(パリ条約による優先権主張2001年2月21日、米国、2001年2月27日、米国、2001年4月18日、米国、2001年5月14日、米国、2001年6月7日、米国、2001年6月28日、米国)を国際出願日とする特願2002-568833号の一部を数次の分割を経て平成28年12月27日に新たな特許出願としたものであって、令和元年9月13日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月2日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年 4月 2日:特許異議申立人による特許異議の申立て
令和2年 6月 5日:取消理由通知書
令和2年 9月 8日:特許権者による意見書の提出

第2 特許異議の申立てについて
1 本件発明
特許第6585025号の請求項1?20に係る特許発明(以下「本件発明1」?「本件発明20」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ただし、(1A)?(20B)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件1A」?「構成要件20B」という。

(本件発明1)
(1A)番組をバッファするためのシステムであって、前記システムは、
(1B)番組をバッファするように構成されたメモリと、
(1C)制御回路と
を備え、
(1C)前記制御回路は、
(1C-1)複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから現在受信されている第1の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-2)第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信することと、
(1C-3)前記第1のユーザリクエストに基づいて、前記第2の番組を受信し、前記第1の番組と並列に前記第2の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-4)前記第1の番組および前記第2の番組をバッファしている間において、
(1C-4-1)番組一覧表を見るための番組ガイドに入るための第2のユーザリクエストを受信すること、
(1C-4-2)前記第2のユーザリクエストを受信したことに応答して、一時点において前記第2の番組の再生を自動的に一時停止すること、
(1C-4-3)前記番組ガイドから出るための第3のユーザリクエストを受信すること、および、
(1C-4-4)前記第3のユーザリクエストを受信したことに応答して、前記バッファされた第2の番組を読み出すことによって、前記第2の番組の再生を前記一時点から自動的に再開すること
(1C)を行うことと
を実行するように構成されている、
(1A)システム。

(本件発明2)
(2A)前記第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストは、同調リクエストである、
(2B)請求項1に記載のシステム。

(本件発明3)
(3A)前記第1の番組をバッファすることは、前記第1の番組の以前に受信された部分を記憶することを含む、
(3B)請求項1に記載のシステム。

(本件発明4)
(4A)前記制御回路は、さらに、
前記第1の番組をバッファするための第1のストレージ・スペースを割り当てることと、
前記第2の番組をバッファするための第2のストレージ・スペースを割り当てることと
を実行するように構成されている、
(4B)請求項1に記載のシステム。

(本件発明5)
(5A)前記第1のストレージ・スペースおよび前記第2のストレージ・スペースは、パーソナルビデオレコーダ上にあり、前記パーソナルビデオレコーダは、ユーザ装置上に含まれている、
(5B)請求項4に記載のシステム。

(本件発明6)
(6A)前記第1のストレージ・スペースおよび前記第2のストレージ・スペースは、前記リモート・サーバ上にある、
(6B)請求項4に記載のシステム。

(本件発明7)
(7A)前記制御回路は、さらに、前記第1の番組をバッファするための前記第1のストレージ・スペースにストレージ・スペース・サイズを割り当てるように構成されており、前記ストレージ・スペース・サイズは、前記第1の番組において残っている時間に基づいて決定される、
(7B)請求項4に記載のシステム。

(本件発明8)
(8A)前記制御回路は、さらに、
前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2のストレージ・スペースを前記第1のストレージ・スペースと結合することと
を実行するように構成されている、
(8B)請求項4に記載のシステム。

(本件発明9)
(9A)前記制御回路は、さらに、
前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2の番組を前記第1のストレージ・スペースにバッファすることと
を実行するように構成されている、
(9B)請求項4に記載のシステム。

(本件発明10)
(10A)前記制御回路は、さらに、
前記ユーザが前記第2の番組の再生位置にアクセスすることを可能にする双方向インジケータを表示のために生成するように構成されている、
(10B)請求項1に記載のシステム。

(本件発明11)
(11A)番組をバッファするための方法であって、前記方法は、
(11B)複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから現在受信されている第1の番組をメモリ内にバッファすることと、
(11C)第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信することと、
(11D)前記第1のユーザリクエストに基づいて、前記第2の番組を受信し、前記第1の番組のバッファリングと並列に前記第2の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(11E)前記第1の番組および前記第2の番組をバッファしている間において、
(11E-1)番組一覧表を見るための番組ガイドに入るための第2のユーザリクエストを受信すること、
(11E-2)前記第2のユーザリクエストを受信したことに応答して、一時点において前記第2の番組の再生を自動的に一時停止すること、
(11E-3)前記番組ガイドから出るための第3のユーザリクエストを受信すること、および、
(11E-4)前記第3のユーザリクエストを受信したことに応答して、前記バッファされた第2の番組を読み出すことによって、前記第2の番組の再生を前記一時点から自動的に再開すること
(11E)を行うことと
(11A)を含む、方法。

(本件発明12)
(12A)前記第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストは、同調リクエストである、
(12B)請求項11に記載の方法。

(本件発明13)
(13A)前記第1の番組をバッファすることは、前記第1の番組の以前に表示された部分を記憶することを含む、
(13B)請求項11に記載の方法。

(本件発明14)
(14A)前記第1の番組をバッファするための第1のストレージ・スペースを割り当てることと、
前記第2の番組をバッファするための第2のストレージ・スペースを割り当てることと
をさらに含む、
(14B)請求項11に記載の方法。

(本件発明15)
(15A)前記第1のストレージ・スペースおよび前記第2のストレージ・スペースは、パーソナルビデオレコーダ上にあり、前記パーソナルビデオレコーダは、ユーザ装置上に含まれている、
(15B)請求項14に記載の方法。

(本件発明16)
(16A)前記第1のストレージ・スペースおよび前記第2のストレージ・スペースは、前記リモート・サーバ上にある、
(16B)請求項14に記載の方法。

(本件発明17)
(17A)前記第1の番組をバッファするための前記第1のストレージ・スペースにストレージ・スペース・サイズを割り当てることをさらに含み、前記ストレージ・スペース・サイズは、前記第1の番組において残っている時間に基づいて決定される、
(17B)請求項14に記載の方法。

(本件発明18)
(18A)前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2のストレージ・スペースを前記第1のストレージ・スペースと結合することと
をさらに含む、
(18B)請求項14に記載の方法。

(本件発明19)
(19A)前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2の番組を前記第1のストレージ・スペースにバッファすることと
をさらに含む、
(19B)請求項14に記載の方法。

(本件発明20)
(20A)前記ユーザが前記第2の番組の再生位置にアクセスすることを可能にする双方向インジケータを表示のために生成することをさらに含む、
(20B)請求項11に記載の方法。

2 取消理由の概要
本件発明1?20に対して令和2年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

A(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

B(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

C(進歩性)
この出願の請求項1?20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由A、Bについて
(1)本件発明3について
本件発明3における
「前記第1の番組をバッファすることは、前記第1の番組の以前に受信された部分を記憶することを含む」
が明確でないから、本件発明3は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

(2)本件発明8について
本件発明8における
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2のストレージ・スペースを前記第1のストレージ・スペースと結合することと
を実行するように構成されている」
が明確でないから、本件発明8は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

(3)本件発明9について
本件発明9における
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2の番組を前記第1のストレージ・スペースにバッファすることと
を実行するように構成されている」
が明確でないから、本件発明9は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

(4)本件発明13について
本件発明13における
「前記第1の番組をバッファすることは、前記第1の番組の以前に表示された部分を記憶することを含む」
が明確でないから、本件発明13は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

(5)本件発明18について
本件発明18における
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2のストレージ・スペースを前記第1のストレージ・スペースと結合することと
をさらに含む」
が明確でないから、本件発明18は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

(6)本件発明19について
本件発明19における
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2の番組を前記第1のストレージ・スペースにバッファすることと
をさらに含む」
が明確でないから、本件発明19は明確でなく、発明詳細に記載されたものでもない。

●理由Cについて
〈引用文献等一覧〉
甲第1号証:特開平6-245157号公報
甲第2号証:特開平11-177962号公報
甲第3号証:特開2000-295558号公報

以下、甲第1号証?甲第3号証を「甲1」?「甲3」という。

3 当審の判断
(1)理由A、Bについて
ア 本件発明3及び本件発明13について
本件発明3が引用する請求項1に記載のシステムは、「現在受信されている第1の番組を前記メモリ内にバッファする」(構成要件1C-1)ものであり、本件発明3の「前記第1の番組をバッファすることは、前記第1の番組の以前に受信された部分を記憶することを含む」は、第1の番組について、以前に受信された部分を記憶することを規定しているものである。
「第1の番組」について、現在受信されている第1の番組をバッファすること及び第1番組の以前に受信された部分を記憶することは、普通に理解でき、明確である。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落0030には、
「現在の番組についてのバッファは、ユーザがその番組を録画するように選択したとき、録画の一部として用いることができる。バッファされている番組は、現在放送中のその番組の映像を録画すると共に、バッファされたその番組の以前の部分を保存することによって、録画することができる。本双方向テレビ・アプリケーションは、放送が終了した番組についてのバッファを保持しておくことができる。ユーザは、現在番組バッファに記憶されている番組一覧表を見ることができる。ユーザがその番組を録画するように選択すると、本双方向テレビ・アプリケーションは、番組のバッファを録画として保存する。その番組が終わった後でも、この選択は行うことができる。」(下線は当審で付与した。)
と記載されており、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載されていると認められる。
本件発明13も同様である。
したがって、本件発明3及び本件発明13は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 本件発明8及び本件発明18について
本件発明8の
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2のストレージ・スペースを前記第1のストレージ・スペースと結合することと
を実行するように構成されている」
の文言自体は明確であり、本件発明8は明確である。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落0328には、「必要に応じて、同じ番組に関する別々のバッファが1つのバッファに結合されてもよい。」と記載され、同段落0333には、「ステップ7302において、ユーザは、チャンネルを変えて、異なる番組を見ることができる。ステップ7304において、複数のチューナに2つの番組を同時にバッファさせることによって、番組は並列的にバッファされる。」と記載されており、また、同じ番組を別のチャンネルで放送されることも想定されるから、本件発明8は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
本件発明18も同様である。
したがって、本件発明8及び本件発明18は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 本件発明9及び本件発明19について
本件発明9の
「前記第2の番組が前記第1の番組であることを決定することと、
前記第2の番組を前記第1のストレージ・スペースにバッファすることと
を実行するように構成されている」
の文言自体は明確であり、本件発明9は明確である。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落0328には、「バッファが既に存在する番組をユーザが再び見始めたときには、本双方向テレビ・アプリケーションは新しいバッファを作成しない。本双方向テレビ・アプリケーションは、その番組を単に現存するバッファに記憶する。」と記載され、同段落0333には、「ステップ7302において、ユーザは、チャンネルを変えて、異なる番組を見ることができる。ステップ7304において、複数のチューナに2つの番組を同時にバッファさせることによって、番組は並列的にバッファされる。」と記載されており、本件発明9は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
本件発明19も同様である。
したがって、本件発明9及び本件発明19は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(2)理由Cについて
ア 甲各号証の記載事項及び甲各号証に記載された発明

ア-1 甲1
(ア)甲1の記載事項

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は映像および音声情報を処理するテレビ受像機および映像音響システムに関し、特に放送されている番組の受信をしながら、該放送されている番組の一時的な停止、遅延、逆戻り、圧縮、編集等を行ない得るシステムに関する。

【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のテレビ受像機あるいは映像音響システムは、
放送された番組の映像および音響信号を含むテレビ信号を受信するテレビ受信手段(22)と、
テレビ信号の記録と再生を同時にかつ独立に行ない得る記録再生手段(3)と、
再生されたテレビ信号の映像信号により表わされる映像を表示する映像表示手段(24、25)と、
再生されたテレビ信号の音声信号により表わされる音声を出力する音声出力手段(26、27a、27b)と、
上記記録再生装置による再生の停止および再開を制御するための制御入力手段(23)と
を備えたものである。
【0021】
記録再生装置に、常時は記録後直ちにあるいは予め定められた時間遅れで再生を行なわせ、制御入力手段(23)の操作により再生の態様の変更が要求された後は、制御入力手段(23)の操作に従って再生を行なわせるための制御手段(2)を設けることが望ましい。
【0022】
また、テレビ受信手段が二つ以上のチャンネルを同時に選択できるものであるのが望ましく、また記録再生装置が2つ以上のチャンネルのテレビ信号を同時の記録できるものであるのが望ましい。
【0023】
【作用】
上記のテレビ装置や映像音響システムは、同時に記録および再生する能力を有するため、放送中の番組を受けながら、その番組の記録再生を行いまた番組の進行を一時止めてしかる後進行を再開させることもできる。これにより、放送された番組の進行を使用者の都合に併せて任意の時間シフトさせるための一時的メモリなしバッファとして用いることができる。また、「ジャンプ」により、番組の進行を速める(即ち番組の興味のない部分の再生を省略して先へ進む)を行なうことも、あるいは逆戻り(後ろ向きのジャンプ)を行なって番組の一部を再度見ることも可能である。
【0024】
【実施例】
実施例1
図5は、本発明の一実施例のテレビ受像機を示す。図示の如く、このテレビ受像機は、記録処理回路1と、制御回路2と、映像および音声信号を含むテレビ信号を記録再生する記録再生装置3と、放送されたテレビ信号を受信するためのアンテナ21と、所望のチャンネルのテレビ信号を選択するテレビチューナ22と、操作部23と、映像回路24と、テレビ受像管(CRT)25と、音声回路26と、スピーカ27aおよび27bとを備えている。

【0026】
本実施例で用いる制御回路2は、記録再生装置3を第1のモード(追従再生モード)と第2のモード(非追従再生モード)のいずれかで再生動作させることができる。
【0027】
追従再生モードにおいては、記録したばかりのテレビ信号の再生を行なう。例えば、常時(電源投入時)は、記録後直ちに(最小の遅延時間で)または所定の遅延時間で、再生を行なうこととし、操作部23の操作により再生の態様の変更が要求された後は、操作部の操作に従って再生を行なうよう構成することができる。操作部23の操作により行ない得る操作には、再生の停止、再開、前向きのジャンプ、後ろ向きのジャンプが含まれる。追従再生モードにおいては、上記受信されたテレビ信号の記録に対する再生の遅れ時間を記憶し、該遅れ時間以上の前向きのジャンプが要求されたときに、受信されたテレビ信号を記録後直ちにあるいは予め定められた時間遅れで再生を行なう状態に戻す。これにより、直前に記録されたテレビ信号以外の信号を再生を行なわない。

【0030】
操作部23としては、例えば、図6に示すリモコン(リモートコントロールユニット)28が用いられる。このリモコン28は以下のキーを有する。

【0039】
放送されたテレビ番組はアンテナ21およびチューナ22で受信される。チューナ22は、操作部23の制御キーを用いて選択されたチャンネルのテレビ信号を選択する。選択されたチャンネル入力映像信号Vinおよび入力音声信号Ainは、チューナ22から出力され、記録処理回路1に入力される。入力映像信号Vinおよび入力音声信号Ainは、光映像ディスクへに記録される信号と同様の信号スペクトルを有する記録信号RECに変換される。変換された信号は記録再生装置3に記録される。

【0042】
テレビ番組を見ていた視聴者が、用事のため、例えば電話を受けるため、テレ受像機から離れなければならない場合を想定しよう。説明を簡単にするため、操作部23が図6に示すリモコン28で構成されていると仮定する。テレビ受像機から離れる前に、視聴者はリモコン28の「TV-PAUSE」キーを押す。これにより、番組の進行を止めることができる。用事が終って、番組の再開を希望するときには、再び「TV-PAUSE」キーを押す。すると、番組の再生が再開される。この再生は、番組の進行を止めた箇所から始まる。従って視聴者はテレビ受像機から離れていた間に放送された部分を見損うことがない。

【0046】
記録と再生を同時に行ない得る上記実施例のテレビ受像機は下記の様な利点を持つ。例えば、一時停止機能を利用することにより、視聴者は番組の受信中に番組を一時的に停止させることができる。従って、用事、例えば電話を受けるために番組の視聴を中断しなければならないときに、テレビ受像機から離れる前に番組の進行を停止させ、テレビ受像機に戻った後で番組の進行を再開させることができ、テレビ受像機から離れていた間に放送された部分を見損うことがない。視聴者はまた、ジャンプの機能を用いることにより番組を圧縮することができる。
上記の実施例では、記録光ヘッドおよび再生光ヘッドは図2に示すように対向して配置されている。しかし、これとは異なる配置であっても良い。また記録再生装置3として、書換を容易にするための消去ヘッド等を備えたものであっても良い。

【0051】
実施例3
図8は本発明の他の実施例を示す。図7と同じ符号は、同一または対応する回路または部材を示す。図7と同様、図5のアンテナ21、映像回路24、CRT25、音声回路26、スピーカ27aおよび27b、制御回路2および操作部23は省略されている。制御回路2からの制御線も省略されている。
【0052】
本実施例のチューナ22は複数のチャンネルのテレビ信号(言換えれば、複数の番組)を選択し、選択されたチャンネルのテレビ信号を出力することができる。図示の例では、2つのチャンネルのテレビ信号が同時に選択されており、第1の選択されたチャンネルの映像信号Vin1および音声信号Ain1および第2の選択されたチャンネルの映像信号Vin2および音声信号Ain2が共に出力される。図5や図7の単一の記録処理回路1の代りに一対の記録処理回路1aおよび1bが設けられている。
【0053】
本実施例の記録再生装置3は2チャンネルのテレビ信号を記録することができる。
【0054】
切換器32aはチューナ22からの出力Vin1およびVin2ならびに再生処理回路6の出力Voutの何れかを選択して映像回路24に出力する。切換器32bはチューナ22からの出力Ain1およびAin2ならびに再生処理回路6の出力Aoutの何れかを選択して音声回路26に出力する。切換器32aおよび32bは制御回路2に制御される。切換器32aがチューナ22の出力Vin1を選択しているときには切換器32bもチューナ22の出力Ain1(Vin1と関連する)を選択し、切換器32aがチューナ22の出力Vin2を選択しているときには切換器32bもチューナ22の出力Ain2(Vin2と関連する)を選択し、切換器32aが再生処理回路6の出力Voutを選択しているときには切換器32bも再生処理回路6の出力Aout(Voutと関連する)を選択するように、制御が行なわれる。このようにして、互いに関連する映像および音声信号、Vin1およびAin1、Vin2およびAin2またはVoutおよびAoutが切換器32aおよび32bから映像回路24および音声回路26に供給される。

【0056】
本実施例の記録再生装置3は図9に示すような構成のものである。図示のようにこの記録再生装置は図2の示すのと同様の部材(同じ符号で示されている)を備えている。図示のように、部材7?13の他に、第2の記録増幅器107および第2の記録光ヘッド108が設けられている。これらは、記録増幅器7および記録光ヘッド8と同様である。二つの記録増幅器7および107、ならびに二つの記録光ヘッド8および108を有するので、記録処理回路1aおよび1bからの二つの記録信号REC1およびREC2を同時に記録することができる。再生光ヘッド11は記録光ヘッド8および108で記録された信号の再生に用いられる。
【0057】
再生信号PBは再生処理回路6に供給される。再生処理回路6はこれに基づき映像および音声信号VoutおよびAoutを発生する。
【0058】
本実施例によれば、二つのチャンネルのテレビ信号を同時に記録することができる。このような構成は、同時に放送される二つの番組を共に記録する場合に便利である。

【0063】
実施例5
図11は本発明の他の実施例の映像音響システムを示す。この映像音響システムは、記録再生装置を内蔵したテレビ受像機のほか、テレビ電話機30aと切換器32aおよび32bとを備えている。図5と同じ符号は、同一または対応する回路または部材を示す。図5のアンテナ21、映像回路24、CRT25、音声回路26およびスピーカ27aおよび27bは省略されている。制御回路2からの制御線も省略されている。テレビ受像機を構成する回路は鎖線29で示されている。テレビ電話機30aは電話回線31を介して他のテレビ電話機30bに接続可能である。
【0064】
切換器32aは再生処理回路6の出力Voutまたは電話機30aの出力を選択して、映像回路24に供給する。切換器32bは再生処理回路6の出力Aoutまたは電話機30aの出力を選択して、音声回路26に供給する。切換器32aおよび32bは、操作部23における手入力に応じて動作する制御回路2により制御される。切換器32aおよび32bは互いに独立に制御される。例えば、切換器32aが電話機30aの出力を選択してCRT25に表示させ、切換器32bが再生処理回路6の出力を選択することもある。

【0066】
図12は本実施例で用いられるリモコン28の他の例を示す。このリモコン28は図6のものと同様であるが、「TELE」キーを備えている点で異なる。この「TELE」キーは電話の呼出しの受信を指令し、あるいは電話での通話を終了させるときに用いられる。
【0067】
他の電話機30bから電話の呼出しがあると、電話機30aの呼出しの鈴が鳴る。また、「呼び出し」および「発呼者の識別情報」を示す信号が制御回路2に送られる。制御回路2は発呼者の識別情報を映像回路24に送る。映像回路26はこの識別情報を表示する。この表示は記録再生装置3で再生されている番組の映像に重ね合わせた形(スーパーインポーズ)で行なわれる。発呼者の識別情報がCRT25に表示させるので、その識別情報に基づいて電話を受けるかどうかの判断をすることができる。
【0068】
電話を受けるには、リモコン28の「TELE」キーを押す。すると、電話機30aはオフフックとなり、電話機30aと電話機30bとが繋がり、映像および音声信号が電話機30bから電話機30aに送られる。切換器32aは、電話機30aからの映像信号を選択し、切換器32bは、電話機30aからの音声信号を選択する。この結果、電話機30bからの映像および音声信号がCRT25およびスピーカ27aおよび27bに供給される。記録再生装置3は上記した一時停止の機能を実行する。通話が終ると、電話機の受話器(ハンドセット)をオンフックするかあるいは「TELE」キーを押す。すると切換器32aおよび32bは再生処理回路6からの映像および音声信号を選択する。これにより、通話の間記録再生装置3に記録されていた信号の再生が開始される。
【0069】
上記のように、実施例1の内蔵動画記録再生装置3を有するテレビ受像機2に電話機30aを組合せることにより、発呼者を特定し、またCRTやスピーカをテレビ電話に使用する機能ならびに番組の記録や電話による通話の間番組の進行を停止させる機能を持つ映像音響システムが得られる。

【0094】
実施例9
図18は、本発明の他の実施例を示す。この実施例では、記録再生装置3として半導体メモリを備えたものが用いられている。即ち、この記録再生装置3は、アナログ/ディジタル変換回路(ADC)14と、3ステートバッファ15と、半導体メモリ16と、メモリ制御回路17と、アドレス選択回路18と、データラッチ19と、ディジタル/アナログ変換回路(DAC)20とを備えている。
入力映像信号Vinおよび入力音声信号Ainは記録処理回路1で、図3に示された、光映像ディスクに用いられるものと同じ信号スペクトルを有する記録信号REC(パルス変調アナログ信号)に変換される。記録信号RECはADC14でディジタルデータに変換され、3ステートバッファ15を介して半導体メモリ16に書込まれる。メモリ制御回路17は例えば図19に示される制御信号を、3ステートバッファ15と、半導体メモリ16と、アドレス選択回路18と、データラッチ19とに供給する。半導体メモリ16への書込みおよび読出しは記録再生ディスク装置への記録および再生に対応する。

【0097】
変形例
実施例1の変形として説明した実施例2?4と同様の変形を実施例5?9にも適用することができる。実施例2?4の何れかの教示を実施例5?9の何れかに組込むに当り、実施例5?9の切換器32aおよび32bは、チューナ22の出力の選択にも用いることができる。

(イ)甲1発明
段落0097によると、実施例1の変形として説明した実施例2?4と同様の変形を実施例5?9にも適用することができるから、実施例5に実施例3を適用し、記録再生装置として半導体メモリを備えたもの(実施例9)を甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)として認定する。
また、段落0053、0064によると、実施例3、5の動作は、制御回路により行われている。
構成を区別するために符号1a?1fを付与した。以下各構成を「構成1a」?「構成1f」という。また、各構成の末尾に対応する甲1の段落番号を付した。

(甲1発明)
(1a)映像音響システム[0001,0069]であって、前記映像音響システムは、
(1b)チューナと、[0024]
(1c)半導体メモリを備えた記録再生装置と、[0024,0094]
(1d)前記チューナと前記記録再生装置を制御する制御回路と、[0024,0053,0064]
(1e)操作部とを備え、[0024]
(1e-1)前記操作部としては、リモコンが用いられ、[0030]
(1b-1)前記チューナは、操作部の制御キーを用いて選択された複数のチャンネルのテレビ信号(複数の番組)を選択し、[0039,0052]
(1c-1)前記記録再生装置は2チャンネルのテレビ信号を同時に記録し、[0053,0058]記録された信号は再生され、[0056]
(1f)前記リモコンは、「TV-PAUSE」キー及び「TELE」キーを備え、[0042,0066]
(1d)制御回路は、
(1d-1)記録再生装置を第1のモード(追従再生モード)と第2のモード(非追従再生モード)のいずれかで再生動作させることができ、[0026]
(1d-2)追従再生モードにおいては、記録したばかりのテレビ信号の再生を行ない、[0027]
(1d-3)操作部の操作により再生の態様の変更が要求された後は、操作部の操作に従って再生を行なうよう構成することができ、再生の停止、再開、が含まれ、[0027]
(1d-4)「TV-PAUSE」キーを押すことにより、番組の進行を止めることができ、番組の再開を希望するときには、再び「TV-PAUSE」キーを押すと、番組の再生が再開され、この再生は、番組の進行を止めた箇所から始まり、[0042]
(1d-5)電話を受けるには、リモコンの「TELE」キーを押すと、記録再生装置は一時停止の機能を実行し、通話が終り、「TELE」キーを押すと、通話の間前記記録再生装置に記録されていた信号の再生が開始され、[0068]
(1d-6)記録再生装置を有するテレビ受像機に電話機を組合せることにより、番組の記録や電話による通話の間番組の進行を停止させる機能を持つ、[0069]
(1a)映像音響システム。

ア-2 甲2
(ア) 甲2の記載事項
【0044】
(第1の実施の形態)
本実施形態は、放送中のストリーム情報の視聴(例えば映画の鑑賞等)を利用者が一時中断した場合でも、中断時以降に放送されたストリーム情報をメモリに記録(記憶)するとともに、記録と再生(記憶と読み出し)を並行的に行うことにより、ストリーム情報が終わる前(例えば番組終了前)の記録中の状態であっても随時、視聴を再開・続行できるようにした、追いかけ再生の機能を提供するものである。
【0045】
図1に本実施形態に係る情報再生システムの構成を示す。
本情報再生システムは、通常再生機能に加えて追いかけ再生機能を提供するサーバ10と、このサーバ10からのストリーム情報の提供を受ける端末20とからなる。

【図1】


【0145】
ここで、利用者は、溯り再生させたいときに、端末20にて遡及指示を入力する。
この遡及指示の方法には、様々なバリエーションが考えられるが、例えば、放送中の番組を鑑賞等している最中に、利用者が図10に例示するような端末20のGUI上の操作画面においてレバー(右端が現在時で左に移動する程過去に溯る(本具体例の場合には左端が3分前であるものとする))をマウス等の所定の入力デバイスを用いて左方向に動かすことによって行う。あるいは、予め遡及時間を溯り最大時間の範囲内で設定しておき、GUI上の溯り再生ボタンを押すことによって行うようにしてもよい。もちろん、遡及時間をその時点でバッファB0に記憶している時間に固定してもよい。これによって、利用者は希望の時点(本具体例では過去3分間が上限)に溯って映像/音声を確認することができる。

【図10】



ア-3 甲3
(ア) 甲3の記載事項

【0007】
本発明は以上の問題を鑑みてなされたものであり、従来の電子番組ガイドの表示や操作体系を拡張して、放送番組と記録番組とを区別なく表示し操作できる電子番組ガイドを備えた番組記録再生装置及び方法並びに番組記録再生プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。

【0012】
図1は本発明の実施の形態におけるデジタル放送波に対応した番組記録再生装置を実現するハードウェア構成の一例を示している。この図では、実線はデータの流れを、破線は制御の流れを主に示している。

【0017】
次に本実施の形態における番組記録再生装置の操作部108の一例であるリモートコントローラのボタン配置(本実施例での操作の説明で必要な部分のみ)の一例を図2に示し、各ボタンの機能を本番組記録再生装置の動作モードの概略と共に説明する。

【0020】
番組表モード:EPG管理部103のEPG情報に基づき、現在放送中や放送予定の番組に関する番組を表形式に表示し、さらにプライベートチャンネルの情報も前記放送番組表と併せて表示する。プライベートチャンネルには記録済み番組や記録予約番組が並べられており、番組表モードではそれらがプライベートチャンネルというひとつのチャンネルにおいて放送チャンネルの番組表と同じ形式で表示/操作される。番組表ボタン121を押下することでこのモードに移行し、上下左右の各ボタン124,125,126,127の押下により番組を選択するカーソルを操作する。また、決定ボタン128や再生ボタン129や記録ボタン134の押下により放送番組の視聴や記録番組の再生、記録予約を行う。

【0022】
再生視聴モード:データストレージ104に蓄積されている記録済み番組を再生し視聴するためのモードである。このモードでは巻き戻し再生ボタン131や早送り再生ボタン132や一時停止ボタン133の押下により、それに応じた特殊再生が行われ、情報ボタン123の押下により現在再生されている番組の情報が番組映像に重畳される。また、停止ボタン130の押下により記録済み番組の再生は終了する。

【0032】
次に番組選択カーソル162の操作を中心に、本発明の第1の実施の形態における番組表モードの動作を図10に示すフローチャートを用いて説明する。番組表ボタン121の押下により他のモードから番組表モードに移行すると図10のフローチャートにしたがって処理が進む。まずステップS101では番組表の初期画面として表示するチャンネルと時間帯を決定する。ここでは放送視聴モードから移行してきた場合は視聴していた放送番組に番組選択カーソル162があるように、図7の選択範囲202を選ぶ。また、プライベートチャンネル一覧モードや再生視聴モードから移行してきた場合は、プライベートチャンネルの現在ポジションがある記録済み番組に番組選択カーソル162があるように選択範囲202を選ぶ。ステップS102およびS103で放送番組表156とプライベートチャンネル行157をこれまで説明したような形態で表示する。ステップS104で番組選択カーソル162を表示し、カーソルのある番組の内容などの番組情報を番組情報表示部155に表示する。さらにS105でカーソルのある番組が放送中の番組であればそのチャンネルを選局して、また記録済みの番組であればその番組を再生して、その映像を小画面映像部152に表示しその番組の音声も出力する。

【0038】
番組表ボタン121が押された場合(S114)、現在の番組表モードの前モードをプライベートチャンネル一覧モードと番組表モードを除いてサーチし、前モードが放送視聴モードなら放送視聴モードに、再生視聴モードなら再生視聴モードに戻る。

(イ) 甲3技術
上記(ア)の記載事項から、甲3号証には、以下の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。

(甲3技術)
番組記録再生装置において、
EPG管理部103のEPG情報に基づき、現在放送中や放送予定の番組に関する番組を表形式に表示する番組表モードを備え、[0020]
操作部108の番組表ボタン121の押下により他のモード(再生視聴モード)から番組表モードに移行し、放送番組表156を表示し、[0032]
番組表ボタン121が押された場合、現在の番組表モードの前モードをサーチし、前モードが再生視聴モード(データストレージ104に蓄積されている記録済み番組を再生し視聴するためのモード)なら再生視聴モードに戻る [0022,0038]
技術。

イ 本件発明1について
(ア)本件発明1、甲1発明
本件発明1と甲1発明とを対比するにあたり、本件発明1と甲1発明とを再掲する。

(本件発明1)
(1A)番組をバッファするためのシステムであって、前記システムは、
(1B)番組をバッファするように構成されたメモリと、
(1C)制御回路と
を備え、
(1C)前記制御回路は、
(1C-1)複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから現在受信されている第1の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-2)第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信することと、
(1C-3)前記第1のユーザリクエストに基づいて、前記第2の番組を受信し、前記第1の番組と並列に前記第2の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-4)前記第1の番組および前記第2の番組をバッファしている間において、
(1C-4-1)番組一覧表を見るための番組ガイドに入るための第2のユーザリクエストを受信すること、
(1C-4-2)前記第2のユーザリクエストを受信したことに応答して、一時点において前記第2の番組の再生を自動的に一時停止すること、
(1C-4-3)前記番組ガイドから出るための第3のユーザリクエストを受信すること、および、
(1C-4-4)前記第3のユーザリクエストを受信したことに応答して、前記バッファされた第2の番組を読み出すことによって、前記第2の番組の再生を前記一時点から自動的に再開すること
(1C)を行うことと
を実行するように構成されている、
(1A)システム。

(甲1発明)
(1a)映像音響システムであって、前記映像音響システムは、
(1b)チューナと、
(1c)半導体メモリを備えた記録再生装置と、
(1d)前記チューナと前記記録再生装置を制御する制御回路と、
(1e)操作部とを備え、
(1e-1)前記操作部としては、リモコンが用いられ、
(1b-1)前記チューナは、操作部の制御キーを用いて選択された複数のチャンネルのテレビ信号(複数の番組)を選択し、
(1c-1)前記記録再生装置は2チャンネルのテレビ信号を同時に記録し、[0053,0058]記録された信号は再生され、
(1f)前記リモコンは、「TV-PAUSE」キー及び「TELE」キーを備え、
(1d)制御回路は、
(1d-1)記録再生装置を第1のモード(追従再生モード)と第2のモード(非追従再生モード)のいずれかで再生動作させることができ、
(1d-2)追従再生モードにおいては、記録したばかりのテレビ信号の再生を行ない、
(1d-3)操作部の操作により再生の態様の変更が要求された後は、操作部の操作に従って再生を行なうよう構成することができ、再生の停止、再開、が含まれ、
(1d-4)「TV-PAUSE」キーを押すことにより、番組の進行を止めることができ、番組の再開を希望するときには、再び「TV-PAUSE」キーを押すと、番組の再生が再開され、この再生は、番組の進行を止めた箇所から始まり、
(1d-5)電話を受けるには、リモコンの「TELE」キーを押すと、記録再生装置は一時停止の機能を実行し、通話が終り、「TELE」キーを押すと、通話の間前記記録再生装置に記録されていた信号の再生が開始され、
(1d-6)記録再生装置を有するテレビ受像機に電話機を組合せることにより、番組の記録や電話による通話の間番組の進行を停止させる機能を持つ、
(1a)映像音響システム。

(イ)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(イ-1)構成要件1Aについて
甲1発明は、映像音響システムであり、構成1cの「半導体メモリを備えた記録再生装置」にテレビ信号(番組)を記録するから、「番組をバッファするためのシステム」といえ、構成1aは構成要件1Aと一致する。

(イ-2)構成要件1Bについて
構成1cの「半導体メモリを備えた記録再生装置」は、テレビ信号(番組)を記録する(構成1c-1)から、「番組をバッファするように構成されたメモリ」として、構成要件1Bと一致する。

(イ-3)構成要件1Cについて
構成1dの「制御回路」は、構成要件1Cの「制御回路」に相当する。

(イ-4)構成要件1C-1について
甲1発明は、前記チューナは、操作部の制御キーを用いて選択された複数のチャンネルのテレビ信号(複数の番組)を選択し(構成1b-1)、前記記録再生装置は2チャンネルのテレビ信号を同時に記録(構成1c-1)するものであり、記録再生装置は半導体メモリを備えている(構成1c)。
2チャンネルのテレビ信号(番組)のうち一方のチャンネルのテレビ信号(番組)は、第1の番組といえるから、甲1発明は、「現在受信されている第1の番組を前記メモリ内にバッファする」点で、本件発明1と共通する。
しかしながら、「現在受信されている第1の番組」が、本件発明1においては、「複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから」受信されているものであるのに対し、甲1発明は、チューナで受信されるものであるから、放送局から受信されているものである点で相違する。

(イ-5)構成要件1C-2について
上記(イ-4)のとおり、2チャンネルのテレビ信号(番組)のうち一方のチャンネルのテレビ信号(番組)は、第1の番組といえる。そうすると、もう一方のチャンネルのテレビ信号(番組)は、第2の番組といえる。
チューナが操作部の制御キーを用いて選択されたチャンネルのテレビ信号を選択する(構成1b-1)ことにおいて、制御キーはユーザが操作するものであるから、当該操作はユーザリクエストといえ、第1のユーザリクエストともいえる。甲1発明においては、制御回路がチューナを制御するから、制御回路が、第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信するといえる。
したがって、甲1発明の制御回路は、「第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信する」として、本件発明1と一致する。

(イ-6)構成要件1C-3について
上記(イ-5)のとおり、甲1発明の制御回路は、「第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信する」として、本件発明1と一致し、甲1発明は、前記チューナは、操作部の制御キーを用いて複数のチャンネルのテレビ信号(複数の番組)を選択し(構成1b-1)、前記記録再生装置は2チャンネルのテレビ信号を同時に記録(構成1c-1)するものであり、記録再生装置は半導体メモリを備えている(構成1c)から、「前記第1のユーザリクエストに基づいて、前記第2の番組を受信し、前記第1の番組と並列に前記第2の番組を前記メモリ内にバッファする」として、本件発明1と一致する。

(イ-7)構成要件1C-4-1について
構成1d-4の「「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び構成1d-5の「「TELE」キーを押す」ことは、構成1dの「制御回路」が受信する「第2のユーザリクエスト」といえる。
また、構成1d-4の「「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び構成1d-5の「「TELE」キーを押す」ことは、構成1c-1の動作中に第2の番組を視聴している際においても想定されることであり、構成1c-1の動作中は、「前記第1の番組および前記第2の番組をバッファしている間」といえるから、構成要件1C-4と一致する。

よって、構成1d-4の「「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び構成1d-5の「「TELE」キーを押す」ことは、構成要件1C-4-1の「第2のユーザリクエストを受信すること」と共通する。
しかしながら、「第2のユーザリクエスト」が、本件発明1においては、「番組一覧表を見るための番組ガイドに入るための第2のユーザリクエスト」であるのに対し、甲1発明においては、「「TV-PAUSE」キーを押す」こと或いは「「TELE」キーを押す」ことである点で相違する。

(イ-8)構成要件1C-4-2について
構成1d-3の「再生の停止」、構成1d-4の「番組の進行を止める」及び構成1d-5の「一時停止の機能を実行し」は、「一時点において番組の再生を自動的に一時停止する」といえるから、
構成1d-3、構成1d-4及び構成1d-5は、「前記第2のユーザリクエストを受信したことに応答して、一時点において前記第2の番組の再生を自動的に一時停止する」こととして、構成要件1C-4-2と一致する。

(イ-9)構成要件1C-4-3について
構成1d-4の「再び「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び構成1d-5の「通話が終り、「TELE」キーを押す」ことは、構成1dの「制御回路」が受信する「第3のユーザリクエスト」といえる。

よって、構成1d-4の「再び「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び構成1d-5の「通話が終り、「TELE」キーを押す」ことは、構成要件1C-4-3の「第3のユーザリクエストを受信すること」と共通する。
しかしながら、「第3のユーザリクエスト」が、本件発明1においては、「前記番組ガイドから出るための第3のユーザリクエスト」であるのに対し、甲1発明においては、「再び「TV-PAUSE」キーを押す」こと或いは「通話が終り、「TELE」キーを押す」ことである点で相違する。

(イ-10)構成要件1C-4-4について
構成1d-3の「再開」、構成1d-4の「番組の再生が再開」及び構成1d-5の「通話の間前記記録再生装置に記録されていた信号の再生が開始」は、「バッファされた番組を読み出すことによって、番組の再生を一時点から自動的に再開する」といえるから、
構成1d-3、構成1d-4及び構成1d-5は、「前記第3のユーザリクエストを受信したことに応答して、前記バッファされた第2の番組を読み出すことによって、前記第2の番組の再生を前記一時点から自動的に再開すること」として、構成要件1C-4-4と一致する。

(ウ)一致点、相違点
以上によると、一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
(1A)番組をバッファするためのシステムであって、前記システムは、
(1B)番組をバッファするように構成されたメモリと、
(1C)制御回路と
を備え、
(1C)前記制御回路は、
(1C-1’)現在受信されている第1の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-2)第2の番組を受信するための第1のユーザリクエストを受信することと、
(1C-3)前記第1のユーザリクエストに基づいて、前記第2の番組を受信し、前記第1の番組と並列に前記第2の番組を前記メモリ内にバッファすることと、
(1C-4)前記第1の番組および前記第2の番組をバッファしている間において、
(1C-4-1’)第2のユーザリクエストを受信すること、
(1C-4-2)前記第2のユーザリクエストを受信したことに応答して、一時点において前記第2の番組の再生を自動的に一時停止すること、
(1C-4-3’)第3のユーザリクエストを受信すること、および、
(1C-4-4)前記第3のユーザリクエストを受信したことに応答して、前記バッファされた第2の番組を読み出すことによって、前記第2の番組の再生を前記一時点から自動的に再開すること
(1C)を行うことと
を実行するように構成されている、
(1A)システム。

(相違点1)
「現在受信されている第1の番組」が、本件発明1においては、「複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから」受信されているのに対し、甲1発明においては、テレビ信号であるから、放送局から受信するものである点

(相違点2)
第2のユーザリクエスト、第3のユーザリクエストについて、
本件発明1においては、それぞれ、「番組一覧表を見るための番組ガイドに入るための第2のユーザリクエスト」、「前記番組ガイドから出るための第3のユーザリクエスト」であるのに対し、
甲1発明においては、それぞれ、「「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び「「TELE」キーを押す」こと、「再び「TV-PAUSE」キーを押す」こと及び「通話が終り、「TELE」キーを押す」ことである点

(エ)判断

(エ-1)相違点1について
複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから番組を受信することは、周知の技術であるあるから、甲1発明において、放送局から番組を受信することに代えて、複数のユーザがアクセス可能なリモート・サーバから番組を受信するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(エ-2)相違点2について
甲3には、上記アのア-3(イ)のとおり甲3技術が記載されている。
甲3技術の番組表ボタン121は、他のモードから番組表を表示させるため又は他のモードに戻るために押すボタンである。
一方、甲1発明における「TV-PAUSE」キーは、番組の進行を止めるため又は再開するためのものであり、「TELE」キーは、通話のために一時停止するため又は再開するためのものである。
そうすると、甲1発明における「TV-PAUSE」キー又は「TELE」キーを押すことによるリクエストによる機能と甲3技術における番組表ボタンを押すことによるリクエストによる機能は異なる機能であるから、甲1発明における「TV-PAUSE」キー又は「TELE」キーを押すことによるリクエストを甲3技術における番組表ボタンを押すことによるリクエストにする理由はない。

さらに、甲2には、番組ガイドを表示することは開示されていないから、甲1発明に甲2に記載された技術を適用しても、甲1発明における「TV-PAUSE」キー又は「TELE」キーを押すことによるリクエストを番組ガイドに入るためのリクエストにすることにならない。

したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2に記載された技術、甲3技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 本件発明2?10について
本件発明2?10は、直接又は間接的に本件発明1を引用するから、上記イの本件発明1の理由と同様に、本件発明2?10は、甲1発明、甲2に記載された技術、甲3技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

エ 本件発明11
本件発明11は、本件発明1のシステムの発明のカテゴリー違いの方法の発明である。
したがって、本件発明11は、上記イの本件発明1と同様に、甲1発明、甲2に記載された技術、甲3技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

オ 本件発明12?20
本件発明12?20は、直接又は間接的に本件発明11を引用するから、上記エの本件発明11の理由と同様に、本件発明12?20は、甲1発明、甲2に記載された技術、甲3技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)によっては、請求項1?20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-10-16 
出願番号 特願2016-252372(P2016-252372)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04N)
P 1 651・ 576- Y (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 古川 哲也  
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 小池 正彦
曽我 亮司
登録日 2019-09-13 
登録番号 特許第6585025号(P6585025)
権利者 ロヴィ ガイズ, インコーポレイテッド
発明の名称 パーソナルビデオレコーダ機能を備えた双方向番組ガイド・システム及び方法  
代理人 山本 健策  
代理人 石川 大輔  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 山本 秀策  
復代理人 田中 宏樹  
復代理人 福永 聡  
代理人 森下 夏樹  

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