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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1367262
審判番号 不服2019-14632  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-01 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2015-136070「ガラス基板の検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開,特開2017- 22160,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年) 7月 7日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月25日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月 8日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 8月 1日付け:拒絶査定(原査定)
令和 1年11月 1日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 2年 6月29日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和 2年 8月26日 :意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 1年 8月 1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由2 本願請求項1-3,6に係る発明は,以下の引用文献A-Bに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A 特開2007-51001号公報
引用文献B 特開平10-139160号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-3,6に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2009-229301号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は,令和 2年 8月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
液晶パネルを構成するガラス基板を検査する検査装置であって,
前記ガラス基板を搬送する第1搬送部および第2搬送部と,
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間に設けられ,前記ガラス基板を検査する検査部と,
を備え,
前記第1搬送部として第1クランプ部を備え,
前記第2搬送部として第2クランプ部を備え,
前記第1クランプ部が前記ガラス基板を前記第2クランプ部側に押し込み,前記第2クランプ部が前記ガラス基板を前記第1クランプ部側から引き込むことにより,前記第1クランプ部から前記第2クランプ部に前記ガラス基板を搬送するように構成されるとともに,
前記検査部は,前記ガラス基板を下方からエアにより浮かせるエアベアリングと,前記ガラス基板を検査する検査ユニットと,を備え,
前記エアベアリングは,複数のエアベアリングユニットを有し,前記検査ユニットに近いものほど,前記ガラス基板のガタつきや揺れを抑える性能が高いガラス基板の検査装置。」

なお,請求項2は,請求項1の構成を全て引用する従属請求項である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)令和 2年 6月29日付けの当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0016】
以下では,本発明の一実施形態に係る基板検査装置1について,図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る基板検査装置1は,例えば,FPDの液晶ガラス基板やカラーフィルタなど,大型で薄板状の基板Aを被検体として,その表面に付着したゴミ,傷,膜むら,基板のパターン形状の欠陥を検査したり,パターンの線幅を測定したりするためのものである。
【0017】
基板検査装置1は,検査の必要に応じて,種々の検査部を備えることができるが,本実施形態においては,図1に示されるように,基板Aの幅方向に延びる直線状の検査領域Bを検査する検査ヘッド2と,検査領域Bを挟んで隣接する2箇所の直線状の領域において,基板Aを支持する基板支持部3を備えている。
【0018】
検査ヘッド2は,基板Aの表面に対して所定の角度で前記検査領域Bに直線状の照明光L1を照射するライン照明部2aと,該ライン照明部2aにより照明された照明光L1の検査領域Bにおける反射光L2を撮影するライン撮像部2bとを備えている。
基板支持部3は,前記検査領域Bの両側において基板Aを挟んで対向する2対の空気ノズル4を備えている。空気ノズル4は,それぞれ基板Aの幅方向全長にわたって検査領域Bの両側に平行に延びる直線状に加圧空気Cを噴出するように配置されている。
【0019】
さらに具体的には,図2に示されるように,各対の空気ノズル4は,基板Aの表裏面にそれぞれ配置され,その吐出口(流体吐出口)4aを相互に対向する方向に向けて配置されている。これにより,各対の空気ノズル4の間に配置される基板Aの表裏面に対して同等の圧力の加圧空気Cを吐出させ,この上下方向の加圧空気Cにより基板Aの検査領域を検査高さとなる基準位置に保持させるようになっている。」

「【0030】
また,本実施形態に係る基板検査装置1は,図8に示されるように,複数のローラ7を配列してなるローラコンベア8によって基板Aを搬送するものとしてもよい。基板Aがローラコンベア8上を搬送される場合,ローラコンベア8自体の振動や基板Aがローラコンベア8の1つ1つのローラ7を渡って行く際に発生する振動あるいは,各ローラ7の上下方向に設置位置のばらつきなどに起因する振動によっても,2対の空気ノズル4によって基板Aを厚さ方向に挟むように加圧空気Cを作用させることで,検査領域Bの変位を防止し,鮮明な画像による高精度の検査を行うことができる。
【0031】
また,図9に示されるように,検査ヘッド2を構成するライン照明部2aおよびライン撮像部2bと,基板支持部3を構成する2対の空気ノズル4とを一体的なユニット状に構成してもよい。このようにすることにより,よりコンパクトな構成とすることができ,装置の小型軽量化を図ることができる。なお,図9においては,反射型の検査ヘッド2を例示したが,これに代えて,透過型の検査ヘッドを採用してもよい。
【0032】
また,本実施形態においては,検査領域Bの両側に一対ずつ2対の空気ノズル4を配置した場合について説明したが,これに限定されるものではなく,3対以上の空気ノズル4を配置することにしてもよい。この場合,図10および図11に示されるように,検査領域Bから離れるに従って,対向する各対の空気ノズル4間の間隔が広がるように配置することが好ましい。」

「【図1】



「【図2】



「【図8】



「【図9】



「【図10】



「【図11】



(2)上記記載事項を検討する。
ア 引用文献1の段落0016?0019及び図1-2には,FPDの液晶ガラス基板やカラーフィルタなど,大型で薄板状の基板Aを被検体とする基板検査装置1において,基板Aの検査領域Bを検査する検査ヘッド2と,検査領域Bを挟んで隣接する領域において,基板Aを支持する基板支持部3を備えること,及び,基板支持部3は,上下方向の加圧空気Cにより基板Aの検査領域を検査高さとなる基準位置に保持させる空気ノズル4を備えることが記載されている。

イ 引用文献1の段落0030及び図8には,基板検査装置1において,検査領域Bの両側に基板Aを搬送する複数のローラ7が配列されたローラコンベア8を備える点が記載されている。

ウ 引用文献1の段落0031及び図9には,検査ヘッド2と,空気ノズル4とを一体的なユニット状に構成する点,すなわち,空気ノズル4と検査ヘッド2とを備えたユニットが記載されている。

エ 引用文献1の段落0032及び図10-11には,検査領域Bの両側に3対以上の空気ノズル4を配置するとともに,検査領域Bを検査する検査ヘッドから離れるに従って,対向する各対の空気ノズル4間の間隔が広がるように配置する点が記載されている。

(3)上記(1),(2)を参酌すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「FPDの液晶ガラス基板やカラーフィルタなど,大型で薄板状の基板を被検体とする基板検査装置であって,
検査領域の両側に基板を搬送する複数のローラが配列されたローラコンベアと,
検査領域を検査するユニットを備え,
ユニットは,上下方向の加圧空気により基板の検査領域を検査高さとなる基準位置に保持させる空気ノズルと検査ヘッドとを備え,
空気ノズルは,3対以上配置され,検査ヘッドから離れるに従って,対向する各対の空気ノズル間の間隔が広がるように配置された基板検査装置。」

2 その他の文献について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Aの段落0001,0030-0036,0047-0056及び図1,5-6の記載,特に図6の記載を参酌すると,引用文献Aには,「平面板ディスプレイに用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料を搬送する搬送装置において,2つのエアガイドユニットの間に,ガラス基板を検査するための検査ユニットが備えらており,2つのエアガイドユニットよりも搬送方向の上流側及び下流側には,ガラス基板を搬送方向に駆動するための駆動ユニットが備えられた搬送装置。」が記載されていると認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Bの段落0014-0032及び図1-3の記載からみて,引用文献Bには,「加圧気体を板状物の下方から噴出し,板状物を浮上せしめて非接触状態に保ちながら所定位置へ搬送する板状物搬送装置。」が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「基板検査装置」は,「FPDの液晶ガラス基板」などの基板を被検体とするものであるから,本願発明1と「液晶パネルを構成するガラス基板を検査する検査装置」である点で一致する。

イ 引用発明の「ローラコンベア」における,検査領域の一方の側に配列された複数のローラ,他方の側に配列された複数のローラが,それぞれ,本願発明1の「第1搬送部」,「第2搬送部」に相当する。

ウ 引用発明の「検査ヘッド」が,本願発明1の「検査ユニット」に相当することは明らかである。
また,引用発明の「空気ノズル」は「上下方向の加圧空気により基板の検査領域を検査高さとなる基準位置に保持させる」ものであるから,本願発明1と「前記ガラス基板を下方からエアにより浮かせるエアベアリング」である点で一致する。
すると,引用発明の「ユニット」は,本願発明1の「検査部」と,「前記ガラス基板を下方からエアにより浮かせるエアベアリングと,前記ガラス基板を検査する検査ユニットと,を備え」る点で一致する。

エ 引用発明の3対以上配置されたそれぞれの対の「空気ノズル」が,本願発明1の「エアベアリングユニット」に相当する。ここで,「空気ノズル」の間隔が狭いほど振動防止効果が高いことは明らかであるから,引用発明の「検査ヘッドから離れるに従って,対向する各対の空気ノズル間の間隔が広がるように配置され」ている「空気ノズル」は,「前記検査ユニットに近いものほど,前記ガラス基板のがたつきや揺れを抑える性能が高い」と言える。

オ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 液晶パネルを構成するガラス基板を検査する検査装置であって,
前記ガラス基板を搬送する第1搬送部および第2搬送部と,
前記ガラス基板を検査する検査部と,
を備え,
前記検査部は,前記ガラス基板を下方からエアにより浮かせるエアベアリングと,前記ガラス基板を検査する検査ユニットと,を備え,
前記エアベアリングは,複数のエアベアリングユニットを有し,前記検査ユニットに近いものほど,前記ガラス基板のガタつきや揺れを抑える性能が高いガラス基板の検査装置。」

(相違点)
(相違点1)検査部に関して,本願発明1は,「前記第1搬送部と前記第2搬送部との間に設けられ」ているのに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。
(相違点2)ガラス基板を搬送する第1搬送部および第2搬送部に関して,本願発明1は,「前記第1搬送部として第1クランプ部を備え,前記第2搬送部として第2クランプ部を備え,前記第1クランプ部が前記ガラス基板を前記第2クランプ部側に押し込み,前記第2クランプ部が前記ガラス基板を前記第1クランプ部側から引き込むことにより,前記第1クランプ部から前記第2クランプ部に前記ガラス基板を搬送するように構成される」のに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて上記相違点2について先に検討する。
相違点2に係る本願発明1の,「前記第1搬送部として第1クランプ部を備え,前記第2搬送部として第2クランプ部を備え,前記第1クランプ部が前記ガラス基板を前記第2クランプ部側に押し込み,前記第2クランプ部が前記ガラス基板を前記第1クランプ部側から引き込むことにより,前記第1クランプ部から前記第2クランプ部に前記ガラス基板を搬送するように構成される」という,「第1搬送部」および「第2搬送部」に関する構成は,引用文献1及び引用文献A-Bには記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると,引用発明において,周知技術を適用し,相違点2に係る本願発明1の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たものであるとはいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献A-Bに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の全ての構成要素を備える従属請求項であり,上記相違点2に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献A-Bに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
令和 2年 8月26日付けの補正により,補正後の請求項1-2は,
当該上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を有するものとなった。
当該相違点2に係る構成は,原査定における引用文献A-Bには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1-2は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Bに基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。



 
審決日 2020-10-15 
出願番号 特願2015-136070(P2015-136070)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小川 将之
発明の名称 ガラス基板の検査装置  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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