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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
管理番号 1367285
審判番号 不服2018-16216  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-05 
確定日 2020-10-14 
事件の表示 特願2016-503354「構造用部品のための高い強度重量比を有する成形可能な不織布およびその作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/145457、平成28年 6月 9日国内公表、特表2016-516917〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、2014年(平成26年) 3月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年 3月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月22日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月11日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 7月31日付け:拒絶査定
平成30年12月 5日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提

令和 1年 7月29日付け:拒絶理由通知書
令和 1年10月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 1年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月27日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明3」という)は、令和 2年 2月27日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
車両ドアボルスターを作成する方法であって、
天然セルロース繊維と、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレンとの混合物を混合するステップと、
混合された混合物から少なくとも1つの不織布ウェブを形成するステップと、
少なくとも1つの不織布ウェブを結合するステップと、
結合された少なくとも1つのウェブの表面にスクリム層を積層するステップと、
前記少なくとも1つのウェブと前記スクリム層とを針で刺すことによって不織布材料を提供するステップと、
前記不織布材料を成形して、前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成し、1200gsmの面積当たり重量を有する車両ドアボルスターを提供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記混和領域を形成することは、1対の前記不織布ウェブを形成して結合し、前記スクリム層を、結合された1対の前記不織布ウェブ間に挟まれる関係で積層して、前記不織布ウェブおよび前記スクリム層の材料を含有する1対の混和領域を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物を混合するステップは、天然セルロース繊維が50%、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレンが50%という比率を有する混合物を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。」

第3 当審が通知した令和 1年11月28日付け拒絶理由

令和 1年10月28日提出の手続補正により補正した特許請求の範囲の請求項1?9に対して当審が通知した令和 1年11月28日付け拒絶理由の概要は以下のとおりである。

1)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2)本件出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1には、「前記スクリム層は、前記少なくとも1つの不織布ウェブ内へと少なくとも部分的に拡散されて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成し」ているとは、スクリム層と不織布ウェブとがどのような構造であることを特定しているのか不明確である。
したがって、請求項1、6及びその従属項たる請求項2?5、7?9に係る発明は、明確でない。

●理由2(特許法第36条第4項第1号)について
請求項1には、「不織布材料」が、「前記スクリム層は、前記少なくとも1つの不織布ウェブ内へと少なくとも部分的に拡散されて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成し」ている点が記載されている。
この点について、発明の詳細な説明には、段落【0017】に、「強度の向上および重量の減少は、スクリム16によって可能とされ、それは、マット14に結合されると、少なくとも部分的に溶融してマット14の間隙内へと拡散して、マット材料とスクリム材料との混和領域18を形成し、それにより、さもなければ応力集中部、ひいては弱い場所を作り出すであろうであろうマット14内の空隙を充填する。」と記載されている。
しかしながら、どのようにしてマット材料とスクリム材料とが「混和領域を形成」するのか当業者が実施できる程度に記載されていない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が、請求項1、6及びその従属項たる請求項2?5、7?9に係る発明に係る発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されたものでない。

●理由3(進歩性)について
請求項1、2、6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に想到し得たものである。
請求項3、4、7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術(引用文献3参照)に基いて、当業者であれば容易に想到し得たものである。
請求項5、8、9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に想到し得たものである。

<引用文献等一覧>
1.米国特許第4612224号明細書
2.特開2009-234129号公報
3.米国特許第3935046号明細書

第4 当審が通知した令和1年11月28日付け拒絶理由についての判断

1 理由1(特許法第36条第6項第2号)について

本願発明1には、「前記不織布材料を成形して、前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成する点が特定されている。

ここで、「拡散」とは日本語として、「1.ひろがり散ること。2.〔理〕(diffusion)物質の濃度が場所によって異なるとき、時間と共に濃度が一様になる現象。よく混合されていない塩水も、時間がたてば濃度が一様になる類。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)といった意味を有し、「混和」とは日本語として、「1.よくまじりあうこと。よくまぜあわすこと。2.〔法〕各別の所有者に属する物が混じり合って互いに識別しえなくなること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)といった意味を有する。
そうすると、「マット材料とスクリム材料との混和領域18」は、「少なくとも部分的に溶融し」た「スクリム層」が「不織布ウェブの間隙内」へ「ひろがり散」り、「よくまじりあう」ことで形成されるものであると理解される。
そして、成形の際の加圧の程度が低ければ「不織布ウェブの間隙」が溶融したスクリム層で満たされないことが想定される一方、成形の際の加圧の程度が高ければ「不織布ウェブの間隙」が溶融したスクリム層により満たされることが想定され、「成形」の際の加圧の程度によって、「不織布ウェブ」と「スクリム層」とが「よくまじりあ」った「混和領域」の形態は異なり得ることが、本件出願の優先権主張の日より前において技術常識(以下「技術常識1」という。)であり、材料が「溶融」するためには、少なくともその材料の融点以上に加熱することが必要であることも、本件出願の優先権主張の日より前において技術常識(以下「技術常識2」という。)である。

この点に関して、本願の発明の詳細な説明の段落【0017】には、「完成した不織布材料12は次に、ドアボルスター10の仕上がり形状を呈するように成形され得る。・・・強度の向上および重量の減少は、スクリム16によって可能とされ、それは、マット14に結合されると、少なくとも部分的に溶融してマット14の間隙内へと拡散して、マット材料とスクリム材料との混和領域18を形成し、それにより、さもなければ応力集中部、ひいては弱い場所を作り出すであろうであろうマット14内の空隙を充填する。」と記載されているが、「成形」する際の具体的な圧力や温度について記載されておらず、仮にスクリム層が溶融する温度以上に加熱・加圧するとしても、不織布ウェブを構成する材料が溶融するか否かは不明であり、溶融した材料が別の溶融していない固体の材料に「ひろがり散」る形態と、溶融した材料が別の溶融した液状の材料に「ひろがり散」る形態とで、「よくまじりあ」った「混和領域」の形態は異なる。

したがって、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「成形」する際の圧力や温度等の、具体的な成形条件が明確でないから、「不織布材料を成形し」た際に、「スクリム層」が具体的にどのように「部分的に溶融し」、どのように「少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散」するのかが不明確であり、結果として、「少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域」が具体的にどのような態様であるのかが、出願時の技術常識を考慮しても、不明確である。
よって、本願発明1の「前記不織布材料を成形して、前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成」する点は不明確であるから、本願発明1及びその従属項たる本願発明2、3は明確でない。

2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について
本願発明1には、「前記不織布材料を成形して、前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成」する点が特定されている。
一方、発明の詳細な説明に「混和領域」の形成について具体的に記載されているのは、段落【0017】の「完成した不織布材料12は次に、ドアボルスター10の仕上がり形状を呈するように成形され得る。・・・強度の向上および重量の減少は、スクリム16によって可能とされ、それは、マット14に結合されると、少なくとも部分的に溶融してマット14の間隙内へと拡散して、マット材料とスクリム材料との混和領域18を形成し、それにより、さもなければ応力集中部、ひいては弱い場所を作り出すであろうであろうマット14内の空隙を充填する。」という記載のみであり、上記技術常識1、2を考慮すると、段落【0017】の上記記載のみでは、本願発明1の「混和領域」の態様を特定するための「不織布材料を成形」する際の具体的な圧力や温度等の成形条件が不足していることが明らかであるから、本願発明1を実施するにあたって、具体的にどのような条件で「前記不織布材料を成形」するのかを理解することができない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が、本願発明1及びその従属項たる本願発明2、3を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されたものでない。

3 理由3(特許法第29条第2項)について

(1)引用文献の記載事項

ア 引用文献1の記載事項及び引用発明1
当審の拒絶の理由に引用した引用文献1、すなわち、米国特許第4612224号明細書には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は理解の便宜のために当審にて付したものである。引用文献の摘記においては以下同様。)

(ア)「This invention relates to a web used in compression molding ofstructural substrates formed of non-woven randomly oriented blended fibers. The web contains uniformly dispersed dry, completely uncured,resinous molding powder. The fibers are mechanically interlocked to eachother and to a non-woven fiber scrim sheet covering at least one face of theweb.」
(第1欄56?62行、当審訳:本発明は、不織のランダムに配向された混合繊維から形成された構造基板の圧縮成形に用いられるウェブに関するものである。ウェブは、均一に分散した、乾燥した、完全に未硬化の樹脂成形用粉末を含有する。繊維は、互いに、及び、ウェブの少なくとも1つの面を覆う不織繊維スクリムのシートに機械的に連結されている。)

(イ)「The fiber blend is made of a mixture of wood fibers and syntheticplastic fibers, such as nylon, polyester or polypropylene or the like. The percentages of each of the fibers within the blend may bevaried depending upon the requirements, costs, etc. For certain applications,it is contemplated to utilize blends of only synthetic fibers, but preferablyof different kinds of synthetic plastics.」
(第2欄5?12行、当審訳:繊維混合物は、木材繊維と、ナイロン、ポリエステル又はポリプロピレン等のプラスチック繊維との混合物から形成される。ブレンド内の繊維の割合は、要件、コストなどに応じて、変化させることができる。特定の用途のためには、合成繊維が、好ましくは、異なる種類の合成樹脂のブレンドを利用することが考えられる。)

(ウ)「The wood fiber and synthetic fiber mixture is carried to a feedconveyor 28 (see FIGS. 1B and 2) where it is raised and dropped into the upperend of a large blending chamber 29. The fiber is gravity dropped downwardlythrough the chamber, being spread apart and evenly disbursed by a V-shapedspreader 30 located within the chamber.」
(第3欄31?37行、当審訳:木材繊維及び合成繊維の混合物が、供給コンベア28に搬送され(図1Bおよび図2参照)、大型の混合チャンバ29の上端に持ち上げられてその中に落下する。繊維は、チャンバを通って下方に落下し、チャンバ内に配置されたV字形スプレッダ30によって広げられ、均一に分散される。)

(エ)「The fibers pass from the bottom of the control chamber into a groupof spiked or rough surface transfer rolls 44 which carries them to a pickerroll 45. The transfer rolls and picker rolls are conventional in equipmentused to form non-woven mats. A conventional transfer roll may have spikesin the form of nail-like projections extending radially outwardly from itssurface. Likewise, the picker roll is formed with a rough surface, such as asawtooth-like surface or spikes or the like.」
(第3欄58?66行、当審訳:繊維は、制御チャンバの底部から、それらをピッカーロール45に運ぶ、一連のスパイク又は粗い表面を有する移送ロール群44へと導かれる。移送ロール及びピッカーロールは、不織マットを形成するために使用される装置において従来通りである。従来の移送ロールはその表面から半径方向外側に延在する爪状突起の形態のスパイクを有し得る。同様に、ピッカーロールは、鋸歯状の表面又はスパイク等の粗い表面で形成される。)

(オ)「The fibers are transferred to the surface of the picker roll by thetransfer roll spikes, the rough surface of the picker roll and also by means ofhigh velocity air which blows the relatively loose fibers upwardly against thelower surface of the picker roll. The high velocity air is applied by a meansof a suitable blower air duct 46 which extends the length of the picker roll.High velocity air for the duct is supplied by a suitable compressor or blower47 which is schematically shown.」
(第3欄67行?第4欄第7行、当審訳:移送ロールのスパイク、ピッカーロールの粗い表面、および比較的緩い繊維をピッカーロールの下面に対して上向きに吹き付ける高速空気によってピッカーロールの表面に移送される。高速空気は、ピッカーロールの長さに延在する好適な送風ダクト46の手段によって適用される。ダクトの高速空気は、概略的に示された適切な圧縮機または送風機47により供給される。)

(カ)「When the fiber is blown and conveyed upon the picker roll, it isfurther blended and forms an initial web or blanket 48, which is relativelyweak. This web or blanket passes between an upper condenser roller 49 and alower condenser roller 50 which compress the web and directs it to a conveyor51.」
(第4欄8?13行、当審訳:繊維がピッカーロール上に吹き付けられて移送されると、さらに混合され、比較的弱い初期ウェブまたはブランケット48を形成する。このウェブまたはブランケットは、ウェブを圧縮する上部凝縮ローラ49と下部凝縮ローラ50との間を通過し、コンベア51に導かれる。)

(キ)「Next, the web is conveyed upon a transfer conveyor 64 to a pointwhere scrim 65 is applied. The scrim may be arranged in a suitable roll andunwound to cover the moving web.」
(第4欄39?42行、当審訳:次に、ウェブはスクリム65が適用される地点まで移送コンベア64上を搬送される。スクリムは、適切なロールとして配置され、移動するウェブを覆うように巻き出される。)

(ク)「The scrim is made of a thin sheet of non-woven synthetic fibermaterial, such as nylon, rayon, polypropylene and the like.」
(第4欄第43?45行、当審訳:スクリムは、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレンなどのような、不織合成繊維材料の薄いシートから構成されている。)

(ケ)The scrim may be applied either upon the upper surface or the lowersurface of the web or even upon both surfaces, if required for the particularfinished product. The scrim shown in the drawing is applied to the lowersurface of the web and the composite web-scrim material passes into aconventional needling machine 66. This machine has a head 67 and a base 68.Numerous needles 69 (see FIG. 4) are secured to the vertically reciprocatinghead 67 and enter into sockets 70 formed in the base 68.」
(第4欄第50?59行、当審訳:スクリムは、特定の最終製品に必要であれば、上面または下面のいずれか又は両方の表面にも適用することができる。図示のスクリムは、ウェブの下側表面に適用され、複合ウェブスクリム材料は、従来のニードリング機械66に入る。この装置は、ヘッド67とベース68を有している。多数の針69(図4参照)は、垂直方向に往復動するヘッド67に固定され、ベース68に形成されたソケット70に入る。)

(コ)「The needling operation disrupts and intertwines the fibers that arecontacted by and displaced by the needles. Thus, the fibers mechanicallyinterlock with each other and also interlock with the scrim. Consequently, asschematically illustrated in FIG. 5, there appear to be lines of interlockedfibers and an interlocking between the fiber blanket and the scrim sheet whichmechanically fastens the material together.
(第4欄第60?67行、当審訳:ニードリング操作は、ニードルによって接触され、ニードルによって置換される繊維を破壊し、絡せる。このようにして、繊維が互いに機械的に絡み合い、スクリムとも絡み合う。その結果、図5に概略的に示すように、材料が互いに機械的に固定される、絡み合った繊維の線と、繊維ブランケットとスクリムシートの間の絡み合いが見られる。)

(サ)「The molded part forms relatively stiff, board-like, structural
substratesfor use in panels, such as the interior of an automotive
vehicledoor panel which is covered with an outside plastic shell or
skin.」
(第6欄第47?50行、当審訳:成型部品は、外部プラスチックシェル又はスキンで被覆された自動車のドアパネルの内装などの、パネル用の比較的剛性のボード状構造基板を形成する。)

(シ)「As illustrated schematically in FIG. 6, the web is draped within thecavity of die half 81. When the opposite die half 82 is registered to closethe cavity, the web is molded under heat and pressure to form the relativethin, stiff substrate 80. By way of a typical example, the molding may be inthe temperature range of 350-450 degrees F., with pressure at about 350-600 psiand for 30-60 seconds to produce a 0.10 inch thick substrate from a roughly 1/2inch thick web.」
(第6欄第51?59行、当審訳:図6に概略的に示されるように、ウェブは、金型半部81のキャビティ内にドレープされる。キャビティを閉鎖するために対向する金型半部82が登録されている場合には、ウェブは熱及び圧力下で、比較的薄い剛性の基板80を形成するために成型される。典型的な例として、華氏350-450度の範囲内の温度、約350-600psiの圧力、及び30-60秒で、ウェブは約1/2インチの厚さから0.10インチの厚さに成型される。)

(ス)「

」(Fig-1B)

(セ)「

」(Fig-2)


(ソ)「

」(Fig-3)

(タ)「

」(Fig-4)

(チ)「

」(Fig-5)

(ツ)「

」(Fig-6)

(テ)上記(ア)?(ツ)の事項をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
<引用発明1>
「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板を作成する方法であって、
木材繊維と、ポリプロピレン等の合成プラスチック繊維との混合物を混合するステップと、
混合された混合物から不織のウェブを形成するステップと、
ウェブを上部凝縮ローラ49と下部凝縮ローラ50とにより圧縮するステップと、
ウェブの表面にポリプロピレンなどの不織合成繊維材料のスクリムを適用し、複合ウェブスクリム材料を形成するステップと、
複合ウェブスクリム材料をニードリングし繊維とスクリムとを絡み合わせるステップと、
複合ウェブスクリム材料を華氏350-450度の範囲内の温度、約350-600psiの圧力、及び30-60秒で成型して、自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板を作成する方法。」

イ 引用文献2の記載事項
当審の拒絶の理由に引用した引用文献2、すなわち、特開2009-234129号公報には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0008】
1.紡糸工程
上記「紡糸工程」は、酸変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂を溶融紡糸して熱可塑性樹脂繊維を得る工程である。この工程における溶融紡糸については、従来公知の種々の溶融紡糸法を用いることができ、特に限定されない。
【0009】
上記「熱可塑性樹脂」は、酸変性熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性の樹脂である(本発明では、以下、熱可塑性樹脂のうち、酸変性熱可塑性樹脂を除く他の熱可塑性樹脂を「非酸変性熱可塑性樹脂」ともいう)。
上記「酸変性熱可塑性樹脂」は、酸変性により酸変性基が導入された熱可塑性樹脂である。この熱可塑性樹脂に導入された酸変性基の種類は特に限定されないが、通常、無水カルボン酸残基(-CO-O-OC-)及び/又はカルボン酸残基(-COOH)である。酸変性基はどのような化合物により導入されたものであってもよく、その化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0010】
更に、酸変性熱可塑性樹脂の骨格となる熱可塑性樹脂(以下、単に「骨格熱可塑性樹脂」という)の種類は特に限定される種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。この骨格熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂(メタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂などが挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体などが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂などが挙げられる。」

(イ)「【0016】
上記酸変性熱可塑性樹脂を構成する骨格熱可塑性樹脂と、非酸変性熱可塑性樹脂と、は同じ(同種)であってもよく、異なっていて(異種であっても)もよいが、同じであることが好ましく、更には、共にポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィンは、取扱いが容易であり、生産性を向上させることができる。また、高い柔軟性と優れた賦形性が得られる。ポリオレフィンのなかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、及びポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂(アロイ)が好ましい。更には、非酸変性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン又は上記混合樹脂が特に好ましく、酸変性熱可塑性樹脂の骨格熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンが特に好ましい。従って、非酸変性熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン又は上記混合樹脂が特に好ましく、酸変性熱可塑性樹脂としては無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。」

(ウ)「【0019】
2.混繊工程
上記「混繊工程」は、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混繊して繊維混合物を得る工程である。
【0020】
上記「植物性繊維」は、植物に由来する繊維である。この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフが好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は特に限定されず、繊維を採取できればよく、非木質部、茎部、根部、葉部及び木質部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。」

(エ)【0028】
上記「混繊」とは、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の繊維どうしを混合して繊維混合物(例えば、マット状物など)を得ることを意味する。この際の混繊方法は特に限定されず種々の方法を用いることができるが、通常、乾式法又は湿式法が用いられるが、このうち乾式法が好ましい。本方法では、吸湿性を有する植物性繊維を用いるために、湿式法(抄紙法など)を用いると高度な乾燥工程を要することになるため、より簡略に製造できる乾式法が好ましい。上記乾式法としては、エアーレイ法及びカード法などが挙げられるが、エアーレイ法が好ましい。より簡略な装置で効率よく混繊を行うことができるからである。このエアーレイ法は植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維とを気流によってコンベア面上などに分散、投射して植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維とが相互に分散された堆積物(繊維混合物)を得る方法である。
【0029】
また、上記エアーレイ法を用いて混繊された繊維混合物は、通常、マット状であるが、このようなマット状の繊維混合物は、1層のみを用いてもよいが、上記混繊工程の後、2層又は3層以上を積層することができる。即ち、積層工程を備えることができる。これにより、繊維混合物の厚さを制御でき、その後、得られる植物性繊維複合物での目付を制御することもできる。更に、このようにしてマット状の繊維混合物が積層されてなる繊維混合物積層体は、各マット状の繊維混合物どうしが一体化されるように交絡を行うことができる。即ち、交絡工程を備えることができる。交絡方法は特に限定されず、ニードルパンチ法、ステッチボンド法及びウォーターパンチ法等が挙げられ、なかでも高効率であることからニードルパンチ法が好ましい。この方法におけるニードリングは、積層物の一面側からのみ行ってもよく、表裏両面から行ってもよい。
【0030】
この繊維混合物(例えば、マット状の繊維混合物)の密度、目付及び厚さ等は特に限定されるものではないが、通常、密度は0.3g/cm^(3)以下(通常0.05g/cm^(3)以上)である。また、目付は400?3000g/m^(2)(好ましくは600?2000g/m^(2))である。更に、厚さは10mm以上(通常50mm以下、好ましくは10?30mm、より好ましくは15?40mm)である。尚、上記密度はJIS K7112(プラスチック?非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法)に準じて測定される値である。また、上記目付は、含水率10%における1m^(2)あたりの質量である。
【0031】
3.加熱工程
上記「加熱工程」は、繊維混合物中の熱可塑性樹脂繊維を溶融する工程である。この加熱工程を経ることで、植物性繊維どうしが熱可塑性樹脂により結着された構造を有する植物性繊維複合材が得られることとなる。
この加熱工程における加熱温度は、用いる熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂繊維を構成している)により適宜の温度(即ち、少なくとも各種熱可塑性樹脂が軟化する温度)とすることが好ましい。例えば、非酸変性熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(前記ホモポリマー又はポリエチレンとのブロックポリマー等を含む)を用い、酸変性熱可塑性樹脂として無水マレイン酸ポリプロピレンを用いる場合には、170?240℃とすることが好ましい。この範囲では熱可塑性樹脂に対する負担を抑制した上で、植物性繊維どうしを効果的に結着することができる。この加熱温度は、180?230℃がより好ましく、190?220℃が更に好ましく、200?210℃が特に好ましい。この範囲では上記効果よりよく得ることができる。
【0032】
また、この加熱工程は、上記加熱だけを行ってもよいが、同時に(加熱圧縮工程)は又は加熱の後に圧縮を行う(加熱工程の後に圧縮工程を備える)ことが好ましい。圧縮を行うことで圧縮を行わない場合に比べて、より強固に植物性繊維どうしを熱可塑性樹脂により結着することができる。この圧縮を行う際の加圧圧力は特に限定されないが1?10MPaとすることが好ましく、1?5MPaとすることがより好ましい。
また、この圧縮を行う場合には、その際に同時に賦形を行うことができる。即ち、圧縮に金型を用いることで、板状(植物性繊維複合材のボードなど)及びその他の各種形状(製品形態である各種形状)へ成形を行うことができる。上記板状に賦形を行った場合には、そのまま用いることもできるが、この板状の植物性繊維複合材に更に本成形を施して、最終形態を得ることもできる{即ち、板状に成形する予備成形工程(加熱工程と同時又は加熱工程の後)と、最終形状へ賦形する本成形工程と、を備えることとなる}。」

(オ)「【0034】
本発明の製造方法により得られる植物性繊維複合材の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されないが、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。」

(カ)「【実施例】
【0035】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
[1]実施例1?5(酸変性熱可塑性樹脂が異なる植物性繊維複合材の製造)非酸変性熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂(商品名「ノバテックSA01」、日本ポリプロ株式会社製)と、酸変性熱可塑性樹脂である下記(A)?(E)の各樹脂と、をこれらの2種の樹脂の合計を100質量%した場合に、非酸変性熱可塑性樹脂が95質量%且つ酸変性熱可塑性樹脂が5質量%となるように混合し、得られた熱可塑性樹脂混合物を溶融紡糸法により繊維化(繊度6.6dtex)した後、長さ51mmに裁断して熱可塑性樹脂繊維を得た。次いで、得られた熱可塑性樹脂繊維とケナフ繊維(平均長さ70mm)とを、質量比で50:50となるようにエアーレイ装置を用いて、厚さ15mmのマット(熱可塑性樹脂繊維とケナフ繊維との繊維混合物)に調製した。
【0036】
得られたマット(繊維混合物)を金型温度が235℃に設定されたプレス機を用い、圧縮物の内部温度が210℃となるまで圧力24kgf/cm^(2)で加熱圧縮し、厚さ2.5mmのボード状の植物性繊維複合材(予備成形体)を得た。内部温度が235℃に設定されたオーブンを用いて、得られたボード状の植物性繊維複合材の内部温度が210℃となるまで加熱した後、オーブンから取りだし、次いで、金型温度が40℃に調温されたプレス機を用いて圧力36kgf/cm^(2)で60秒間圧縮し、厚さ約2.3mm且つ約目付1.8kg/m^(2)のボード状の植物性繊維複合材(本成形体)を得た。

(キ)【0041】
上記結果から、酸変性熱可塑性樹脂(A)?(E)を用いた実施例1?5の植物性繊維複合材においては、いずれも比較例1を大きく上回る最大曲げ荷重が得られた。このことから、酸変性熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂繊維を用いることで、得られる植物性繊維複合材の機械的強度を向上できることが分かる。

(ク)「【0042】
[4]実施例6?10及び比較例2
(酸変性熱可塑性樹脂の配合量及び植物性繊維の配合量による比較)非酸変性熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂(商品名「ノバテックSA01」、日本ポリプロ株式会社製)と、酸変性熱可塑性樹脂である上記(A)の各樹脂と、を用い、これらの2種の樹脂の合計を100質量%した場合に酸変性熱可塑性樹脂が表1?表3に示すように3?7質量%となるように混合し、得られた熱可塑性樹脂混合物を溶融紡糸法により繊維化(繊度6.6dtex)した後、長さ51mmに裁断して熱可塑性樹脂繊維を得た。次いで、得られた熱可塑性樹脂繊維とケナフ繊維(平均長さ70mm)とを、表1?表3に示すように、質量比50:50又は質量比30:70(樹脂30質量%)となるようにエアーレイ装置を用いて、厚さ15mmのマット(熱可塑性樹脂繊維とケナフ繊維との繊維混合物)に調製した。その後、上記[1]における実施例1と同様に加工して、厚さが約2.3mmであり、目付を約1.3?約2.0kg/m^(2)の範囲で変化させたボード状の植物性繊維複合材(本成形体)を得た。
【0043】
[5]各植物性繊維複合材の機械的特性の測定実施例6?10及び比較例2の植物性繊維複合材の各々について、JIS K7112(プラスチック?非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法)に準じて含水率10%における密度を測定した。更に、前記[3]と同様に、JISK7171に準じて最大曲げ荷重、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、実施例1、実施例6?10、比較例1及び比較例2の結果と合わせて表1?表3に示した。
【0044】
【表1】

いずれも植物性繊維50質量%+熱可塑性樹脂50質量%
実施例1;非酸変性PP 95質量%+酸変性PP 5質量%
実施例6;非酸変性PP 97質量%+酸変性PP 3質量%
実施例7;非酸変性PP 93質量%+酸変性PP 7質量%

【0045】
【表2】

いずれも植物性繊維70質量%+熱可塑性樹脂30質量%
実施例 8;非酸変性PP 97質量%+酸変性PP 3質量%
実施例 9;非酸変性PP 95質量%+酸変性PP 5質量%
実施例10;非酸変性PP 93質量%+酸変性PP 7質量%」

(ケ)「【0048】
図1の結果から、比較例1に対して、いずれの実施例においても酸変性熱可塑性樹脂を含有させたことにより、最大曲げ荷重が向上されていることが分かる。即ち、例えば、比較例1の近似直線において目付1.8kg/m^(2)における最大曲げ荷重は82.57Nであるが、この最大曲げ荷重は、実施例1及び実施例6では目付1.56kg/m^(2)において得られ、実施例7では目付1.55kg/m^(2)において得られ、各々比較例1に対して約14%軽量化が可能であることが分かる。同様に、比較例1の近似直線において目付1.6kg/m^(2)における最大曲げ荷重は69.46Nであるが、この最大曲げ荷重は、実施例1及び実施例6では目付1.38kg/m^(2)において得られ、実施例7では目付1.39kg/m^(2)において得られ、各々比較例1に対して約14%軽量化が可能であることが分かる。
また、比較例1の近似直線に対して、実施例1及び実施例6の近似直線は比較的平行に配置されているのに対して、実施例7の近似直線は目付が大きい程、比較例1の近似直線との最大曲げ荷重差が大きくなる傾向が認められ、酸変性熱可塑性樹脂を用いたことによる機械的特性向上の効果が特に顕著に現れていることが分かる。
【0049】
一方、図2の結果から、比較例2に対して、いずれの実施例においても酸変性熱可塑性樹脂を含有させたことにより、最大曲げ荷重が向上されていることが分かる。即ち、例えば、比較例2の近似直線において目付1.8kg/m^(2)における最大曲げ荷重は93.77Nであるが、この最大曲げ荷重は、実施例8及び実施例9では目付1.60kg/m^(2)において得られ、実施例10では目付1.55kg/m^(2)において得られ、各々比較例2に対して約11?14%軽量化が可能であることが分かる。同様に、比較例2の近似直線において目付1.6kg/m^(2)における最大曲げ荷重は76.59Nであるが、この最大曲げ荷重は、実施例8では目付1.43kg/m^(2)において得られ、実施例9では目付1.44kg/m^(2)において得られ、実施例10では目付1.39kg/m^(2)において得られ、各々比較例2に対して約10?13%軽量化が可能であることが分かる。
また、比較例2の近似直線に対して、実施例8?実施例10のいずれの近似直線も目付が大きい程、比較例2の近似直線との最大曲げ荷重差が大きくなる傾向が認められ、酸変性熱可塑性樹脂を用いたことによる機械的特性向上の効果が特に顕著に現れていることが分かる。」

(コ)上記(ア)?(ケ)の事項をまとめると、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
《引用文献2記載事項》
「ドア基材等の自動車用内装材を製造する際に、植物性繊維と、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有するポリプロピレン繊維を混合し、
混合された混合物から少なくとも1つのマット状の繊維混合物を形成し、
マット状の繊維混合物を金型を用いて加熱及び圧縮を行い成形し、ドア基材等の自動車用内装材に用いる植物性繊維複合材を製造する点」

ウ 対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。
本願の段落【0013】には、「ドアボルスター10は、ドアハンドルを含む外側の装飾されたドアパネルが取り付けられる、内側の車両ドアパネルである。」と記載されているから、引用発明1の「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」は、本願発明1の「車両ドアボルスター」に相当する。
また、引用発明1の「木材繊維」は、本願発明1の「天然セルロース繊維」に相当し、引用発明1の「ポリプロピレン等の合成プラスチック繊維」と本願発明1の「無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレン」とは、両者が「ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレン」である限りにおいて一致する。
また、引用発明1の「不織のウェブ」は、本願発明1の「不織布ウェブ」に相当する。
また、引用発明1の「ポリプロピレンなどの不織合成繊維材料のスクリム」は、本願発明1の「スクリム層」に相当し、引用発明1の「ウェブの表面にポリプロピレンなどの不織合成繊維材料のスクリムを適用」する点は、本願発明1の「少なくとも1つのウェブの表面にスクリム層を積層する」点に相当する。
また、引用発明1の「複合ウェブスクリム材料をニードリング」することは、本願発明1の「前記少なくとも1つのウェブと前記スクリム層とを針で刺す」ことに相当し、引用発明1の「複合ウェブスクリム材料をニードリングし繊維とスクリムとを絡み合わせるステップ」は、本願発明1の「前記少なくとも1つのウェブと前記スクリム層とを針で刺すことによって不織布材料を提供するステップ」に相当する。
また、引用発明1の「ウェブスクリム複合材料を華氏350-450度の範囲内の温度、約350-600psiの圧力、及び30-60秒で成型」する点は、本願発明1の「前記不織布材料を成形」する点に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「車両ドアボルスターを作成する方法であって、
天然セルロース繊維と、ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレンとの混合物を混合するステップと、
混合された混合物から少なくとも1つの不織布ウェブを形成するステップ
と、
少なくとも1つのウェブの表面にスクリム層を積層するステップと、
前記少なくとも1つのウェブと前記スクリム層とを針で刺すことによって不織布材料を提供するステップと、
前記不織布材料を成形して、車両ドアボルスターを提供するステップとを含む、方法」

<相違点1>
ポリプロピレン繊維について、本願発明1は「無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン繊維」であるのに対し、引用発明1は「無水マレイン酸グラフト化」したものであるか否か明らかでない点。

<相違点2>
本願発明1は、「少なくとも1つの不織布ウェブを結合するステップ」を有するのに対し、引用発明1は、不織布ウェブを結合するステップを有するか否か明らかでない点。

<相違点3>
不織布材料の成形について、本願発明1では、「前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成し」ているのに対し、引用発明1では、複合ウェブスクリム材料を華氏350-450度の範囲内の温度、約350-600psiの圧力、及び30-60秒で成型しているが、混和領域を形成しているか否か明らかでない点。

<相違点4>
車両ドアボルスターについて、本願発明1は、1200gsmの面積当たり重量を有するのに対し、引用発明1は、面積当たり重量が明らかでない点。

エ 判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
引用文献2記載事項の「ドア基材等の自動車用内装材」は本件発明1の「ドアボルスター」に相当するから、引用発明1の「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」と引用文献2記載事項の「ドア基材等の自動車用内装材に用いる植物性繊維複合材」とは、「ドアボルスター」として共通するものである。そして、引用発明1のボード状構造基板の強度向上は、当然、求められる課題であり、引用文献2には、酸変性熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂繊維を用いることで、得られる植物性繊維複合材の機械的強度を向上する点が記載されている(段落【0048】、【0049】)。
したがって、引用発明1において、「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」の機械的強度の向上を図るために、「不織のウェブ」の材料である「ポリプロピレン繊維を含有するポリプロピレン」として、引用文献2記載事項の「無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有するポリプロピレン繊維」を用いることで、上記相違点1に係る本願発明1のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用発明1は、「不織のウェブ」を形成した後で、「ウェブを上部凝縮ローラ49と下部凝縮ローラ50とにより圧縮するステップ」を有しており、当該「圧縮するステップ」において、「不織のウェブ」は厚み方向に圧縮され、「不織のウェブ」を構成する各繊維同志は少なくとも機械的に結合されるものであるといえる。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、実質的な相違点とはいえない。

<相違点3について>
上記相違点3に係る本願発明1の、「前記不織布材料を成形して、前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成」している構成は、上記「1 理由1(特許法第36条第6項第2号)、理由2(特許法第36条第4項第1号)について」において指摘したように不明確であるが、仮に、本願発明1の、「前記スクリム層を少なくとも部分的に溶融して前記少なくとも1つの不織布ウェブの間隙内へと拡散させて、前記少なくとも1つの不織布ウェブおよび前記スクリム層双方の材料を含有する混和領域を形成」が、「不織布材料」の「成形」により形成されるものであるとして、以下検討を進める。
不織布ウェブとポリプロピレン不織布からなるスクリム層とを積層したものを、4ft^(2)(0.4m^(2))の範囲に約90トン(8.16x10^(4)kg)のトン数で約250°F(120°C)の温度で約1.2分間クランピングすることで、ウェブ及びスクリム層が熱的に団結することは本願の優先権主張日前に頒布された特開平6-259081号公報の段落【0030】?【0033】に記載されているように、本件出願の優先権主張の日より前において周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。
引用発明1は、ウェブとスクリムの複合材料を華氏350-450度の範囲内の温度、約350-600psiの圧力、及び30-60秒で成型するものであり、上記周知技術1(華氏250℃、2.04x10^(5)kg/m^(2)=290psi)と比べて、より高温、高圧であるから、ウェブとスクリムとは熱的に団結、すなわち、溶融して混和領域を形成しているものであるといえる。
そして、不織布であるウェブとスクリムとが溶融して混和領域を形成したものであるから、溶融したスクリムはウェブの間隙内へと拡散するといえる。
したがって、上記周知技術1に基づけば、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、実質的な相違点とはいえない。

<相違点4について>
引用文献2の段落【0044】の【表1】及び段落【0045】の【表2】には、加熱及び金型を用いて加圧成形されたボード状の植物性繊維複合材の具体的な実施例として、目付が1.15?1.98kg/m^(2)の値をとる実施例1、6?10が記載されている。
引用発明1の「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」と引用文献2記載事項の「ドア基材等の自動車用内装材に用いる植物性繊維複合材」とは、「ドアボルスター」として共通するものであるから、引用発明1の「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」において、具体的に面積当たり重量を決定するにあたって、引用文献2に示す植物性繊維複合材の目付の数値範囲の中から1200gsm(g/m^(2))とすることは、当業者が必要とする強度と重量のバランス等に応じて適宜定め得る設計的事項にしか過ぎない。

<本願発明の奏する効果について>
引用発明1においても、上記「<相違点3について>」において指摘したように、ウェブとスクリムとは本願発明1と同様に熱的に団結、すなわち、溶融して混和領域を形成しているものであり、上記「<相違点4について>」において指摘したように、「自動車のドアパネルの内装などの剛性のボード状構造基板」の具体的な面積当たり重量の数値範囲を1200gsm(g/m2)とすることは当業者が当業者が容易に相当し得たことである。そして、その場合の車両ドアボルスターは、相応の強度を有するものであるといえるから、本願発明の効果は、引用発明1及び引用文献2記載事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものではない。

<請求の主張について>
請求人は令和2年3月11日提出の意見書において、引用文献1には、ウェブとスクリムシートとを含む不織布材料を成形して、スクリムシートが少なくとも部分的に溶融してウェブの間隙内へと拡散してウェブとスクリムシートの双方の材料を含有する混和領域を形成して、1200gsmの面積当たり重量を有する車両ドアボルスターを提供することについては記載も示唆もされておらず、このようにして作成された車両ドアボルスターは1200gsmの面積当たり重量しか有していないものの、1600gsmの車両ドアボルスターと同様の要件を満たすことまたは上回ることが可能であり、それは最終的には重量を減少させるものの、前述の構造要件を達成し、上回ることが可能である、という有利な効果を有する(たとえば本願明細書の段落【0013】参照)旨主張している。
しかしながら、上記<本願発明の奏する効果について>において指摘したように、本願発明の効果は、引用発明1及び引用文献2記載事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、当該請求人の主張は採用できない。

オ むすび
したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 まとめ
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-04-30 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-27 
出願番号 特願2016-503354(P2016-503354)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (D04H)
P 1 8・ 537- WZ (D04H)
P 1 8・ 121- WZ (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 佐々木 正章
中村 一雄
発明の名称 構造用部品のための高い強度重量比を有する成形可能な不織布およびその作成方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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