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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1367292
審判番号 不服2019-5865  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-07 
確定日 2020-10-14 
事件の表示 特願2017-78470号「ディスプレイパネルの駆動回路及びその駆動モジュールと表示装置と製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-126087号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月26日にされた特許出願(特願2013-269907号)の一部を平成29年4月11日に新たな特許出願としたものであって(パリ条約による優先権主張2013年1月4日、米国)、平成30年4月24日付けの拒絶理由通知に対し、同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:平成31年1月8日)、これに対して、令和元年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲についてのものであり、以下の(1)に示される本件補正前の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「【請求項1】
ディスプレイパネルの駆動回路において、
ガンマ回路であって、複数のガンマ電圧を発生する、上記ガンマ回路と、
複数の駆動ユニットであって、これらガンマ電圧に基づいて参考駆動電圧を発生する、上記複数の駆動ユニットと、
昇圧回路であって、第1供給電圧を発生し、並びに該第1供給電圧を該ガンマ回路に提供する、上記昇圧回路と、
昇圧ユニットであって、第2供給電圧を発生し、並びに該第2供給電圧をこれら駆動ユニットに提供する、上記昇圧ユニットと、
を包含し、
該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であることを特徴とする、ディスプレイパネルの駆動回路。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
ディスプレイパネルの駆動回路において、
ガンマ回路であって、複数のガンマ電圧を発生する、上記ガンマ回路と、
複数の駆動ユニットであって、これらガンマ電圧に基づいて参考駆動電圧を発生する、上記複数の駆動ユニットと、
昇圧回路であって、第1供給電圧を発生し、並びに該第1供給電圧を該ガンマ回路に提供する、上記昇圧回路と、
昇圧ユニットであって、第2供給電圧を発生し、並びに該第2供給電圧をこれら駆動ユニットに提供する、上記昇圧ユニットと、
を包含し、
該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニットと各該駆動ユニットとの間の該連接経路に保存コンデンサを設置不要であることを特徴とする、ディスプレイパネルの駆動回路。」


2 本件補正についての当審の判断
(1)補正事項
以下では、本件補正前及び本件補正後を単にそれぞれ「補正前」及び「補正後」ともいう。
本件補正前後の請求項1の記載を対比すると、請求項1についてする補正は、補正前の「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であること」という記載を「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニットと各該駆動ユニットとの間の該連接経路に保存コンデンサを設置不要であること」とするものである。
この補正は、「保存コンデンサ」について、補正前は、「該昇圧ユニット及び該連接経路上に」「設置不要である」としたものを、補正後は、「該昇圧ユニットと各該駆動ユニットとの間の該連接経路に」「設置不要である」とするものである。

(2)補正の適否

ア 上記補正事項について検討すると、「保存コンデンサ」が、補正前は、「昇圧ユニット」にも「連接経路上」にも「設置不要」とされていたのに対して、補正後は、「連接経路」に「設置不要」とされているだけで、「昇圧ユニット」に「設置不要」であるかどうかは特定されないことになった。

イ そうすると、本件補正は、補正前の「該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であること」という構成をさらに限定しているとはいえないことが明らかであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。

ウ また、補正前の「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であること」という記載は、その意味に不明確なところはなく、明瞭であるから、これを「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニットと各該駆動ユニットとの間の該連接経路に保存コンデンサを設置不要であること」に変更することは、明瞭でない記載の釈明を目的としたものでもない。

エ さらに、誤記の訂正を目的としたものではなく、請求項の削除を目的としたものでもない。

オ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1?41に係る発明は、平成30年7月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?41に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
符号A?Fについては、発明の構成を分説するため当審で付した。

[本願発明]
「【請求項16】
A ディスプレイパネルの駆動回路において、
B ガンマ回路であって、複数のガンマ電圧を発生する、上記ガンマ回路と、
C 複数の駆動ユニットであって、これらガンマ電圧に基づき複数のデータ駆動電圧を発生し、且つこれらデータ駆動電圧を該ディスプレイパネルに伝送してフレームを表示させる、上記複数の駆動ユニットと、
D 昇圧回路であって、第1供給電圧を発生し、並びに該第1供給電圧を該ガンマ回路に提供する、上記昇圧回路と、
E 昇圧ユニットであって、第2供給電圧を発生し、並びに該第2供給電圧をこれら駆動ユニットに提供する、上記少なくとも一つの昇圧ユニットと、
を包含し、
F 該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であることを特徴とする、
A ディスプレイパネルの駆動回路。」


2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、

理由1
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



引用文献1:特開2012-118508号公報

というものである。


3 引用文献等
(1)記載事項
上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【実施例】
【0012】
本発明別の一実施例の駆動回路の回路図である。図2は、本発明一実施例のソースドライバ回路のブロックチャートである。図に示すように、ソースドライバ回路1はガンマ(Gamma)回路10、駆動回路20を備える。ガンマ回路10は、ガンマ曲線に基づき、複数の入力信号を発生する。各入力信号は、異なるランクの電圧信号で、ガンマ回路10は、各入力信号を駆動回路20へと伝送する。駆動回路20は、それぞれ複数の入力画素データと、各入力信号に基づき、複数の駆動信号を発生し、該各駆動信号を、ディスプレーパネル2へと伝送する。こうして、ディスプレーパネル2を駆動し、画面を表示させる。」
【0013】
(省略)
【0014】
さらに、本発明一実施例の駆動回路の回路図である図4に合わせて示すように、本発明回路面積を節減可能なディスプレーパネルの駆動回路20は、複数のデジタルアナログ転換回路200、複数の駆動ユニット202、複数の昇圧ユニット204を備える。各デジタルアナログ転換回路200は、入力画素データを、それぞれ画素信号に転換する。各駆動ユニット202は、各デジタルアナログ転換回路200に接続し、駆動ユニット202は、画素信号に基づき、駆動信号を発生する。各駆動ユニット202は、駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送し、これによりディスプレーパネル2は、画面を表示する。本実施例中において、各駆動ユニット202は、各デジタルアナログ転換回路200が出力する画素信号を拡大し、駆動信号を発生する。各昇圧ユニット204は、各駆動ユニット202にそれぞれ接続し、各昇圧ユニット204は、制御信号に基づき、供給電圧を発生する。しかも、各昇圧ユニット204は、各供給電圧を、各駆動ユニット202にそれぞれ提供する。これにより、各駆動ユニット202は、駆動信号を発生し、ディスプレーパネル2を駆動して画面を表示させる。各駆動ユニット202は、オペアンプ(Operational Amplifier、OPA)である。こうして、本発明は、各昇圧ユニット204により、それぞれ供給電圧を、ディスプレーパネル2の各駆動ユニット202に提供する。これにより、外付けの保存キャパシタ面積を縮小でき、さらには保存キャパシタの外付けを不要とすることができ、回路面積節減の目的を達成することができる。各駆動ユニット202が受け取る制御信号は、ディスプレーパネル2の内部の任意の制御回路が発生する制御信号で、制御信号を各昇圧ユニット204に伝送する。これは該項技術の習熟者には公知の技術であるため、これ以上の詳述は行わない。
【0015】
さらに、本発明回路面積を節減可能なディスプレーパネル2の駆動回路20は、昇圧回路30に接続する。昇圧回路30は、各デジタルアナログ転換回路200に接続する。昇圧回路30は、供給電圧を発生し、供給電圧を、各デジタルアナログ転換回路200に供給する。また、昇圧回路30はさらに、保存キャパシタ32に接続し、これにより昇圧回路30が出力する供給電圧を安定させる。各駆動ユニット202が必要な電源は、駆動回路20の大部分の電源を占めるため、昇圧回路30が必要な保存キャパシタ32のキャパシタンスを大幅に小さくすることができる。これにより、保存キャパシタ32の面積を大きく縮小することができ、こうして駆動回路20は、回路面積節減の目的を達成することができる。しかも、本発明は、ディスプレーパネル全体の面積を50%以上節減することができる。
【0016】
この他、本発明において、各昇圧ユニット204は供給電圧を、ディスプレーパネル2の各駆動ユニット202にそれぞれ提供するため、保存キャパシタ32の面積を大幅に節減することができ、さらには保存キャパシタ32の使用を不要とすることができる。こうして、昇圧回路30を、駆動回路20内(図示なし)に設置することができる。
【0017】
本発明別の一実施例の駆動回路の回路図である図5に示すように、本実施例の、上記した一実施例との差異は、本実施例の昇圧ユニット40は、電圧を、単一の駆動ユニットに提供できるだけでなく、同時に電圧を、2個或いは3個の駆動ユニットに提供し使用に供することができる点である。図5に示すように、本実施例の昇圧ユニット40は、駆動ユニット50と駆動ユニット52に接続する。昇圧ユニット40は、供給電圧を発生し、駆動ユニット50と駆動ユニット52に供給することができ、これにより駆動ユニット50と駆動ユニット52が必要な電源を提供することができる。こうして、本発明は外付けの保存キャパシタの面積を縮小でき、さらには保存キャパシタの外付けを不要とし、回路面積節減の目的を達成することができる。同時に、駆動ユニットの数を減らすこともでき、こうして回路面積節減とコスト削減の目的を達成することができる。この他、本実施例の昇圧ユニット40は、駆動ユニット50、52の側辺の上辺側、映像メモリ60の上方に設置することができる。
【0018】
(省略)
【0019】
本発明一実施例の昇圧ユニットの回路図である図7に示すように、本発明の昇圧ユニット40は、キャパシタ式昇圧回路である。昇圧ユニット40は、フライングキャパシタ400、第一トランジスタ402、第二トランジスタ404、第三トランジスタ406、第四トランジスタ408、保存キャパシタ410を備える。フライングキャパシタ400は、供給電圧を発生する。第一トランジスタ402の一端は、フライングキャパシタ400の一端に接続する。第一トランジスタ402の反対端は、入力電圧VINを受け取り、第一制御信号XAの制御を受ける。第二トランジスタ404は、フライングキャパシタ400と第一トランジスタ402に接続し、第二制御信号XBの制御を受ける。第三トランジスタ406の一端は、フライングキャパシタ400の反対端に接続する。第三トランジスタ406の反対端は、入力電圧VINを受け取り、第二制御信号XBの制御を受ける。第四トランジスタ408の一端は、フライングキャパシタ400と第三トランジスタ406に接続する。第四トランジスタ408の反対端は、アース端に接続し、第一制御信号XAの制御を受ける。保存キャパシタ410の一端は、第二トランジスタ404に接続する。保存キャパシタ410の反対端は、アース端に接続し、供給電圧を保存、並びに出力する。こうして、本実施例の昇圧ユニット40は、入力電圧VINを受け取った後、第一制御信号XAと第二制御信号XBを利用し、第一トランジスタ402から第四トランジスタ408までを制御する。これにより、供給電圧を発生し、駆動ユニット50、52へと出力する。
【0020】
本発明別の一実施例の昇圧ユニットの回路図である図8に示すように、本実施例と図7に示す実施例との差異は、本実施例の昇圧ユニット40は、保存キャパシタを使用する必要がない点である。本発明の昇圧ユニット40は、駆動ユニット50、52の供給電圧を提供するため、駆動ユニット50、52は、パネル(図4に示すディスプレーパネル2など)の駆動のみ必要で、デジタルアナログ転換回路(図4に示すデジタルアナログ転換回路200など)に精確な参考電圧を維持させる機能を担当しない。そのため、電源は、保存キャパシタがない状況下でのラージオシレーションを許容することができる。よって、本実施例の昇圧ユニット40は、フライングキャパシタ400を使用して供給電圧を発生する必要だけがあり、保存キャパシタを必要とせず、駆動ユニット50、52が必要な電源を供給できるだけでよい。こうして、回路面積を減らすことができ、これによりコスト削減の目的を達成することができる。
【0021】
(省略)」


「【図2】



「【図4】



「【図5】



「【図8】



(2)認定事項
上記記載事項及び上記図示内容から、以下の認定事項が導かれる。

ア 【0012】?【0016】、【図2】、【図4】には、「本発明一実施例」(以下、「第1実施例」という。)が開示されている。
上記第1実施例において、「ソースドライバ回路1」は、「ガンマ回路10」及び「駆動回路20」を備え、「ガンマ回路10」は、「ガンマ曲線に基づき、」「異なるランクの電圧信号」である「複数の入力信号を発生」することが認められる(【0012】)。

イ 上記第1実施例において、「ガンマ回路10」からの「各入力信号」が伝送される「駆動回路20」は、「複数のデジタルアナログ転換回路200、複数の駆動ユニット202、複数の昇圧ユニット204を備え」ており、「各駆動ユニット202」は、「各デジタルアナログ転換回路200」により「入力画素データ」から「それぞれ」「転換」された「画素信号に基づき、駆動信号を発生」し、「駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送」するものであり、「これによりディスプレーパネル2は、画面を表示する」ことが認められる(【0012】、【0014】)。

ウ 上記第1実施例において、「供給電圧を発生し、供給電圧を、各デジタルアナログ転換回路200に供給する」「昇圧回路30」は、「駆動回路20内に設置」されることが認められる(【0015】?【0016】)。

エ 【0017】?【0021】、【図5】、【図8】には、「本発明別の一実施例」(以下、「第2実施例」という。)が開示されている。
上記第2実施例では、上記第1実施例を基にして、【図5】及び【図8】等の記載から、さらに以下の(ア)?(ク)の認定事項が読みとれる。

(ア)昇圧ユニット40が、供給電圧を発生し、複数の駆動ユニット50、52に供給すること(【0017】、【図5】)

(イ)昇圧回路30はガンマ回路10に供給電圧を供給すること(【図5】)

(ウ)【0017】には「本実施例の、上記した一実施例との差異は、本実施例の昇圧ユニット40は、電圧を、単一の駆動ユニットに提供できるだけでなく、同時に電圧を、2個或いは3個の駆動ユニットに提供し使用に供することができる点である。」という記載があるので、上記第2実施例の【図5】の回路図において符号が付された構成のうち、上記第1実施例と同じ符号が付されたものについては、同じ構成に対応していると解される。
そうすると、上記第2実施例の【図5】において符号「20」が付された「ソース極駆動回路」は、上記第1実施例の【図2】の「駆動回路20」に対応するものであると認められる。(【図2】、【図5】)

(エ)上記第2実施例の【図5】においてソース極駆動回路20を含む点線で示されたブロックは、【図2】に示されたソースドライバ回路1と同様、ガンマ回路10を含み、画像データ入力を受けるものであるから、上記第1実施例の【図2】の点線ブロックである「ソースドライバ回路1」に対応するものであること(【図2】、【図5】)
なお、上記第2実施例の【図5】の点線で示されたブロックを以下「ソースドライバ回路」と呼ぶこととする。

(オ)「昇圧回路30」、「ガンマ回路10」、「デジタルアナログ転換回路200」、「駆動ユニット50、52」及び「昇圧ユニット40」は、ソース極駆動回路20を含む点線ブロックの内に含まれており、上記(エ)を踏まえると、ソースドライバ回路は、「昇圧回路30」、「ガンマ回路10」、「デジタルアナログ転換回路200」、「駆動ユニット50、52」及び「昇圧ユニット40」を含むものであること(【図5】)

(カ)「駆動ユニット50、52の供給電圧を提供する」「昇圧ユニット40」は、「保存キャパシタを使用する必要がない」こと(【0020】、【図8】)

(キ)「昇圧ユニット40」と、「駆動ユニット50」及び「駆動ユニット52」とをそれぞれ電気的に接続する配線を備えること(【0020】、【図5】)

(ク)上記第1実施例では、昇圧回路30は「保存キャパシタ32に接続」される一方(【0015】)、各昇圧ユニット204は「保存キャパシタの外付けを不要とする」(【0014】)ことが明記されており、さらに、上記第2実施例の昇圧ユニット40は「保存キャパシタを必要とせず」、「回路面積を減らすことができ」(【0020】)との記載があるので、上記第1実施例を基にした上記第2実施例は、保存キャパシタを昇圧ユニット40の外に移動させる構成を開示しておらず、他に保存キャパシタを配線上に設ける理由もない。
そうすると、上記(キ)において認定した「配線」上には、保存キャパシタが設けられていないと認められる。
(【0014】、【0015】、【0020】、【図5】)


(3)引用発明
上記(2)ア?エの認定事項を総合し、上記第2実施例に着目すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
a、b等の符号は本願発明の分説に対応させて当審で付した。

[引用発明]
「a 昇圧回路30、ガンマ回路10、デジタルアナログ転換回路200、駆動ユニット50、52及び昇圧ユニット40を含むソースドライバ回路であって、

b 上記ガンマ回路10は、ガンマ曲線に基づき、異なるランクの電圧信号である複数の入力信号を発生するものであり、

c1 上記ガンマ回路10からの各入力信号が伝送されるソース極駆動回路20は、複数のデジタルアナログ転換回路200、複数の駆動ユニット50、52を備えており、

c2 各駆動ユニット50、52は、各デジタルアナログ転換回路200により入力画素データからそれぞれ転換された画素信号に基づき、駆動信号を発生し、上記駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送するものであり、これにより上記ディスプレーパネル2は、画面を表示し、

d1 供給電圧を発生し、上記供給電圧を各デジタルアナログ転換回路200に供給する昇圧回路30は、上記ソース極駆動回路20内に設置され、

d2 上記昇圧回路30は上記ガンマ回路10に上記供給電圧を供給するものであり、

e 上記昇圧ユニット40は、供給電圧を発生し、複数の駆動ユニット50、52に供給するものであり、

f1 上記昇圧ユニット40と、上記駆動ユニット50及び上記駆動ユニット52とをそれぞれ電気的に接続する配線を備えており、

f2 上記昇圧ユニット40は、保存キャパシタを使用する必要がなく、

f3 上記配線上には、保存キャパシタが設けられていない、

ソースドライバ回路。」


4 対比及び判断
本願発明と引用発明とを対比する。
なお、見出しは(a)?(f)とし、本願発明の構成A?Fに対応させている。

(a)引用発明の「ソースドライバ回路」は、「駆動ユニット50、52」を含み(構成a)、「各駆動ユニット50、52」は、「駆動信号を発生し、上記駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送するものであり、これにより上記ディスプレーパネル2は、画面を表示」することになるから(構成c2)、引用発明の「ディスプレーパネル2」は、本願発明の「ディスプレイパネル」に相当し、引用発明の「ソースドライバ回路」は、本願発明の構成Aの「ディスプレイパネルの駆動回路」に相当する。

(b)引用発明の「ガンマ回路10」は、「ソースドライバ回路」に含まれ(構成a)、「ガンマ曲線に基づき、異なるランクの電圧信号である複数の入力信号を発生するもの」であるところ(構成b)、この「ガンマ曲線に基づき」「発生する」「異なるランクの電圧信号である複数の入力信号」は、本願発明の「複数のガンマ電圧」に相当する。
よって、引用発明の「ガンマ回路10」は、本願発明の構成Bの「ガンマ回路であって、複数のガンマ電圧を発生する、上記ガンマ回路」に相当する。

(c)引用発明の「複数の駆動ユニット50、52」は、「ソースドライバ回路」に含まれ(構成a)、「上記ガンマ回路10からの各入力信号が伝送されるソース極駆動回路20」に備えられ(構成c1)、「各デジタルアナログ転換回路200により入力画素データからそれぞれ転換された画素信号に基づき、駆動信号を発生」するものであるところ(構成c2)、この「駆動信号」は「ガンマ回路10からの各入力信号」(本願発明の「複数のガンマ電圧」に相当)に基づいて発生するといえるから、引用発明の「駆動信号」は、本願発明の「データ駆動電圧」に相当する。
また、引用発明の「複数の駆動ユニット50、52」は、「上記駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送するものであり、これにより上記ディスプレーパネル2は、画面を表示」するところ(構成c2)、この「上記駆動信号を、ディスプレーパネル2に伝送する」ことは、本願発明の「これらデータ駆動電圧を該ディスプレイパネルに伝送」することに相当し、「ディスプレーパネル2」が「画面を表示」することは、本願発明の「フレームを表示させる」ことに相当する。
よって、引用発明の「複数の駆動ユニット50、52」は、本願発明の構成Cの「複数の駆動ユニットであって、これらガンマ電圧に基づき複数のデータ駆動電圧を発生し、且つこれらデータ駆動電圧を該ディスプレイパネルに伝送してフレームを表示させる、上記複数の駆動ユニット」に相当する。

(d)引用発明の「昇圧回路30」は、「ソースドライバ回路」に含まれ(構成a)、「供給電圧を発生」(構成d1)するものであるところ、この「昇圧回路30」が発生する「供給電圧」は、本願発明の「第1供給電圧」に相当する。
また、引用発明の「昇圧回路30」が発生する「上記供給電圧」は、「上記ガンマ回路10」に「供給」されるから(構成d2)、このことは、本願発明の「該第1供給電圧を該ガンマ回路に提供する」ことに相当する。
よって、引用発明の「昇圧回路30」は、本願発明の構成Dの「昇圧回路であって、第1供給電圧を発生し、並びに該第1供給電圧を該ガンマ回路に提供する、上記昇圧回路」に相当する。

(e)引用発明の「昇圧ユニット40」は、「ソースドライバ回路」に含まれ(構成a)、「供給電圧を発生」(構成e)するものであるところ、この「昇圧ユニット40」が発生する「供給電圧」は、本願発明の「第2供給電圧」に相当する。
また、引用発明の「昇圧ユニット40」が発生する「供給電圧」は、「複数の駆動ユニット50、52」に「供給」されるから(構成e)、このことは、本願発明の「該第2供給電圧をこれら駆動ユニットに提供する」ことに相当する。
よって、引用発明の「昇圧ユニット40」は、本願発明の構成Eの「昇圧ユニットであって、第2供給電圧を発生し、並びに該第2供給電圧をこれら駆動ユニットに提供する、上記少なくとも一つの昇圧ユニット」に相当する。

(f)引用発明の「ソースドライバ回路」は、「上記昇圧ユニット40と、上記駆動ユニット50及び上記駆動ユニット52とをそれぞれ電気的に接続する配線を備えており」(構成f1)、この「配線」は、本願発明の「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に」「具え」られた「連接経路」に相当する。
また、引用発明の「昇圧ユニット40」は、「保存キャパシタを使用する必要がな」いから(構成f2)、このことは、本願発明の「該昇圧ユニット」に「保存コンデンサを設置不要であること」に相当する。
さらに、引用発明では、「上記配線上には、保存キャパシタが設けられていない」から(構成f3)、このことは、本願発明の「該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であること」に相当する。
よって、引用発明の構成f1?f3は、本願発明の構成Fの「該昇圧ユニットと各一つの該駆動ユニットの間に連接経路を具え、該昇圧ユニット及び該連接経路上に保存コンデンサを設置不要であること」に相当する。

上記(a)?(f)の対比により、引用発明は本願発明の構成A?Fをすべて含むから、本願発明は、引用発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


5 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、原査定の拒絶の理由1(新規性欠如)に関し、引用文献1の段落【0020】及び【図8】に開示されているのは、昇圧ユニット40の外部回路アーキテクチャではなく、内部回路アーキテクチャであるから、昇圧ユニットと駆動ユニットとを接続する外部連接経路に保存コンデンサを使用しなくてもよいことは開示されていない旨主張している。
しかしながら、上記「3 引用文献等」「(2)認定事項」エ(キ)において認定したとおり、引用文献1の第2実施例では、「昇圧ユニット40」と、「駆動ユニット50」及び「駆動ユニット52」とをそれぞれ電気的に接続する配線を備えており、この「配線」は「昇圧ユニット40」の外部に存在する構成であるから、上記主張における「昇圧ユニット40の外部回路アーキテクチャ」に他ならない。
そして、(ク)において認定したとおり、この「配線」上には保存キャパシタが設けられていないから、昇圧ユニットと駆動ユニットとを接続する外部連接経路に保存コンデンサを使用しなくてもよいことは開示されていないとの上記主張を採用することはできない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-04-30 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-05-28 
出願番号 特願2017-78470(P2017-78470)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09G)
P 1 8・ 57- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
濱野 隆
発明の名称 ディスプレイパネルの駆動回路及びその駆動モジュールと表示装置と製造方法  
代理人 あいわ特許業務法人  

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