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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C03C 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 C03C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C03C 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C03C |
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管理番号 | 1367293 |
審判番号 | 不服2019-7452 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-05 |
確定日 | 2020-10-15 |
事件の表示 | 特願2017-506067「ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月22日国際公開、WO2016/147604〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 この出願は、2016年(平成28年)3月8日(優先権主張 2015年3月13日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、平成30年9月4日付けで拒絶理由が通知され、平成30年11月12日付けで手続補正がなされたが、平成31年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和1年6月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、令和1年8月2日付けで上申書が提出されたものである。 第2.補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年6月5日付け手続補正書における手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2(以下「本願補正発明1」及び「本願補正発明2」という。)は、 「【請求項1】 第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記シート材の材質は樹脂であり、 前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって所定の圧力で所定時間だけ前記第一ガラス基板の一面に押し付けられることで、前記一面上に仮固定される、 ガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項2】 第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記シート材の材質は樹脂であり、 前記組立工程では、前記第一ガラス基板の一面に、複数の前記スペーサを囲むように枠状のシール材が配され、前記シール材を介して、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板が接合される、 ガラスパネルユニットの製造方法。」 と補正された。なお、下線部は本件補正による補正箇所を示す。 2.本件補正に対する判断 (1)本件補正の目的 本件補正は、請求項1及び2に記載されたガラスパネルユニットの製造方法の発明において、本件補正前の発明特定事項である「シート材」の材質が樹脂であることを限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件について 上記のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、その場合、補正後の請求項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないから、本願補正発明1及び2が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。 ア.引用文献 文献1:特表昭63-501728号公報(原査定において引用された文献) 文献2:特開2005-145725号公報(周知技術を示すために新たに引用する文献) 文献3:特開平8-259278号公報(周知技術を示すために新たに引用する文献) 文献4:特開2015-36354号公報(周知技術を示すために新たに引用する文献) イ.文献の記載事項 (ア)文献1 文献1には、以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同じ。)。 (ア1) 「本発明は、少なくともほぼ平行に指向しており、中間に支持要素を備えておりかつ枠領域内において密な結合部により排気可能な中間空域を形成している少なくとも二つの壁要素から成る、熱絶縁作用する建築要素および/または採光要素に関する。」(第3頁左下欄第4行?第8行) (ア2) 「ヨーロッパ特許公報第0 047 725号から、0.1mbar以下のガス圧力にまで排気されていてかつ平方メートル当たり一万個以上の橋絡ウェッブを約0.3mmの間隔で設けられているガラス板間に有している中空空域を備えた熱絶縁作用する窓ガラス板が知られている。狭い間隔の配設されておりかつ窓ガラスと固く結合されているこれらの目につく程多数の橋絡ウェッブの配設は、これらの窓ガラス板の高い安定性を得ることを目的としているが、これらの橋絡ウェッブにより熱伝導性が高くなると言う欠点を有している。」(第4頁右上欄第2行?第12行) (ア3) 「本発明の思想は特に、存在するガス分子の自由飛程が真空にされた室の冷たい壁と温かい壁との間の間隔よりも大きい場合ガスにおける熱伝導性が実際に消失すると言う物理学上の特性に基づいている。 ガス分子の自由飛程は真空によって発生される負圧に比例する。この法則から帰結されることは、壁間隔が小さくなればなるほど、相応して排気が僅かしか行われず、これによりガス内の熱伝導を低減もしくは阻止されると言うことである。即ち、例えば10^(-1)mbarの真空における空気分子の平均自由飛程は約0.6、mmもしくは1mbarでは約0.06mmである。この場合、空気分子が真空空域においては垂直に壁から壁へと運動するのみならず、この真空空域のあらゆる方向で運動することが考慮される。 この法則を実際に適用することにより壁要素の間隔は可能な限り僅かとなり、従って技術的な実現もまた可能となる。表面特性に応じて壁要素もしくはガラス板の間隔は0.05?0.5mmである。 もちろん1mmまでの間隔を有する中間空域は本発明の思想からは良い構成とは思われない。 この認識から予測し得ない利点が得られる。何故なら支持要素を、これらが肉眼で1メートル以下の距離に確認出来ないか或いは確認ができたとしても極めて僅かであるような僅かな寸法に設定可能であるからである。 支持要素を壁要素に載るように形成するのが有利であることがわかった。これにより支持要素の製造と壁要素への取付けを簡単な方法で行うことが可能となる。 支持要素を平坦な板として形成するのが有利であり、これにより中間空域の壁要素間の僅かな間隔を平坦な板材料もしくは帯材料或いは円筒形のもしくはプリズム形の材料から造ることができる。 支持要素を妨げられることのない見通しを良好にするように透明な材料で形成するのが有利である。 この材料は特に壁要素よりも軟らかい材料で形成され、これにより壁要素が熱差によりずれることにより壁要素の表面が傷つけられたり、破壊されたりすることが回避されるようにするのが有利である。この場合合成物質、例えばポリエステル或いはテフロンが特に良好な滑り特性を備えた好都合な材料として適している。」(第5頁右上欄第13行?右下欄第5行) (ア4) 「本発明による思想にあっては、支持要素2をその終端位置を起点にして打抜き装置38によりシート様の材料から打抜き、壁要素1上に載置することを提案する。 こう言ったことを基に行われた試験で特に、超薄形の、透明な、壁要素1間に置かれた、直径約1mmの大きさの円板は殆ど目にとまらないことが確認された。 簡単な経費上極めて好都合な方法は、シート34から成る小さな円板を終端位置を起点にして水平なガラス面上に垂直に打抜くことにあり、この場合支持要素2は位置決めされなければならない。この目的のため、シート帯材34を機械的に或いは電磁石により作動されるラム35と母型36間で周期的に送りかつ打抜き、これにより被打抜き物が垂直方向で正しい位置に落下されるようにするか、或いはラム35からその位置へと押圧されるようにするのが有利である。打抜き装置38はシート帯材34のための、タイプライタにおけるタイプリボンのためのような巻戻し兼巻取り装置37を備えているのが有利である(第29図参照)。 支持要素2は網目様に規則正しい間隔をもってガラス板上に位置決めされるので、上記の打抜き装置38の一つまたは多数がガラス面の上方で正しい位置に運動させられるか、或いはガラス板が一つ或いは多数の固定されている打抜き装置38の下方を運動させられる(第30図参照)。 支持要素2の特に迅速な取付けは、ガラス上に取付けられる支持要素2の数と同じ数の打抜き装置38を壁要素1上方で、同じ数の綱目数で設けることによって達せられる。 これにより窓面積が大きい場合でも一秒当たり数千もの支持要素2がガラス面上に打抜かれ、かつ正確に位置決めされる。 何らかの方法によりガラス面上に網目様に配設される支持要素2にとって、このガラス板の下方にこれらの支持要素2を正しく位置決めする電荷可能な針或いは金属ピンを設けることが可能である。 支持要素2として載置された円板は球体或いはボルトに比して、これらが載置された後転勤してしまったり或いはひっくり返ってしまったりしないと言う利点を有している。」(第9頁左下欄第2行?右下欄第18行) (ア5) 「支持要素2の相互の間隔は使用される材料の断面および耐圧性に依存している。最適化により可能な限り僅かな熱伝導性が得られるように努力しなければならない。ゲッター作用を有する支持要素材料が理想的である。」(第10頁右上欄第6行?第10行) (ア6) 「真空絶縁された採光要素にあって二枚、三枚或いは多数枚のガラス板をm^(2)当たり10トンの大気圧で超薄形の真空層3内で横置きして設けられている支持要素2上に圧着させ、これをガラス板の側方方向へのずれに対して抵抗作用するように構成することにより、成る種のガラス貼合わせが得られる。このようにして二枚、三枚或いは多数枚のガラス板により、個々のガラスがまとめられて総和厚みが得られ、個々のガラスの総合された強さが達せられる。」(第10頁右上欄第21行?左下欄第4行) (ア7) 「縁部封隙部材をそのために建設された構築された真空炉内でガラス表面とろう付けするのが有利である。この目的のためガラス縁部或いは縁部封隙部材を予め錫引きしておく。支持要素2が設けられ、縁部封隙部材が第一のガラス板上に設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られる。両板は保持装置或いはろう物質によって互いに間隔保持されている。真空炉扉を閉じた後排気および真空炉の加熱が開始される。 同時に空気と湿気もガラス板間から吸引される。一定時間経た後炉内の温度が高められ、これにより縁部封隙部材7およびろう物質19が融解される。これにより上方の板が自重により液状になったろう物質19と共に縁部封隙部材7上に降下し、従って気密な結合が形成される。加熱工程が中止された後ろう物質19は冷却し、従って仕上げ排気された採光要素を炉から取出すことが可能となる。上方の板の自重が荷重として充分でない場合は、付加的な圧力で埋合わせる。融解の際上方の板を縁部封隙部材および支持要素2上に降下させる支持ろう物質19の代わりに、機械的な降下装置を使用することも可能である。」(第11頁左上欄第24行?右上欄第20行) (ア8) 「 ![]() 」 (ア9) 「 ![]() 」 (ア10) 「 ![]() 」 上記(ア4)において摘示した箇所には、支持要素2を打抜き装置38によりシート様の材料から打抜き、壁要素1上に置載すること、シート帯材34を機械的に或いは電磁石により作動されるラム35と母型36の間で周期的に送りかつ打抜き、ラム35から正しい位置へと押圧されること、及び支持要素が網目様に規則正しい間隔を持ってガラス板上に位置決めされるので、打抜き装置の一つ又は多数がガラス面の上方で正しい位置に移動させられるか、或いはガラス板が一つ或いは多数の固定されている打抜き装置の下方を移動させられることが記載されている。さらに、上記(ア8)で摘示したFig.29には、母型36には貫通部が設けられ、当該貫通部、シート帯材34、ラム35がこの順で配置され、前記母材の貫通部をラムが通過することでシート帯材を打抜き支持要素2を形成し、壁要素1上に配置することが記載されている。そして、上記(ア9)で摘示したFig.30には、打抜き装置38が直線上に複数配置され、支持要素2を壁要素1上に配置した後で移動することで、多数の支持要素2を壁要素1上に配置することが記載されている。ここで、上記(ア4)には、支持要素を置載するものとして「壁要素」及び「ガラス板」が記載されていることから、壁要素とガラス板は同一の部材である。 また、上記(ア7)において摘示した箇所には、支持要素が設けられた第一のガラス板上に、縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られ、真空炉中でガラス板間の空気及び湿気が吸引され、炉内温度が高められることにより縁部封隙部材及びろう物質が溶融され、気密な結合が形成されることが記載されている。 さらに、上記(ア1)において摘示した箇所には、文献1に記載されている部材が建築要素及び/又は採光要素であることが記載されている。 すると、文献1には、 「貫通部を有する母材、シート帯材、ラムがこの順で配置された打抜き装置を有し、前記母材の貫通部をラムが通過することでシート帯材を打抜き支持要素を形成し、支持要素をラムで押圧することで第一のガラス板上の所定位置に配置し、前記打抜き装置が直線上に複数配置され、支持要素2を第一のガラス板上に配置した後で複数の打抜き装置又は第一のガラス板が移動することで、多数の支持要素2を第一のガラス板上に網目様に配置し、支持要素が設けられた第一のガラス板上に縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られ、真空炉中でガラス板間の空気及び湿気が吸引され、縁部封隙部材とろう物質により、第一のガラス板と第二のガラス板との間に気密な結合を形成する、建築要素及び/又は採光要素の製造方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (イ)文献2 文献2には、以下の記載がある。 (イ1) 「【0015】 前記二枚の板ガラスG1,G2は、それらの外周部に沿って、アルミ製の筒状長尺スペーサ5を板ガラスG1,G2の端面よりも内側に入り込むように挟み込んで、一定間隔を隔てて互いに対向させてあり、各板ガラスG1,G2と長尺スペーサ5とを、板ガラスG1,G2と長尺スペーサ5との間に充填したブチルゴムなどで構成した第1シール材6と、長尺スペーサ5と板ガラスG1,G2の端面との間の隙間に充填したシリコーンやポリサルファイドなどの第2シール材7とで互いに接着して、それらの板ガラスG1,G2間の周縁部を密封してある。 【0016】 前記長尺スペーサ5はその内部に乾燥剤8を充填してあり、密閉空間B側に連通する多数の貫通孔9を長尺スペーサ5に設けて、密閉空間B内の水分を乾燥剤8で吸収して、密閉空間B内での結露防止を図れるようにしてある。 【0017】 前記密閉空間Bは、二枚の板ガラスG1,G2の板面どうしを、ポリカーボネート樹脂などの耐衝撃性の高い透明樹脂板(厚さ2mm?4mm程度)10を挟んで互いに対向させて、樹脂板厚さ方向で前後の室内側密閉空間B1と室外(屋外)側密閉空間B2とに区画してあり、樹脂板10の外周縁部を、長尺スペーサ5に形成した溝部11に一連に入り込ませるとともに、シリコーン又はポリサルファイドなどの第3シール材12をその溝部11に充填して、室内側密閉空間B1と室外側密閉空間B2の各々に乾燥空気を封入した厚さが1mm?2mm程度の二つの空気層C1,C2を設けてある。 【0018】 また、板ガラスG1,G2の板面と樹脂板10の板面との接触を阻止可能な多数の透明樹脂製粒状スペーサ13を樹脂板10の両面に固定して、室内側密閉空間B1内と室外側密閉空間B2内の各々に、板ガラスG1,G2の板面側に接触するように介在させてある。 【0019】 前記粒状スペーサ13は、ポリカーボネートなどの樹脂板10と同じ硬質樹脂で空気層C1,C2の厚さに応じた外径の球状に形成してあり、これらの粒状スペーサ13は、図3(イ)に示すように、多数の半球状の凹部14を粒状スペーサ13の配置間隔で形成してある金属板15を製作し、この金属板15に粒状スペーサ13をばらまいて、金属板15を揺すりながら各凹部14に粒状スペーサ13を入り込ませ、図3(ロ)に示すように、全ての凹部14に粒状スペーサ13が入り込むと、余分の粒状スペーサ13を取り除いて加熱し、粒状スペーサ13がやや軟化すると、図3(ハ)に示すように、その上に樹脂板10を載せ付けることにより、樹脂板10の両面に所定間隔で溶着固定してある。」 (ウ)文献3 文献3には、以下の記載がある。 (ウ1) 「【0009】図1、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9、図10は、本発明の封止体の実施例の断面図であり、1は基板、2は高粘調液、3-1、3-2はスペーサー、4-1、4-2、4-3は封止剤、5は枠、6は仮封止、7はスペーサー板、8は水の飽和蒸気および/または液体をもつ捕水層である。例えば、図1の構造の特徴は、L字形の枠5の下部に外周スペーサー3-1を置き、封止剤4-1を介して枠5を加圧密着封止してなる。より具体的には、5cm厚で30cm角のガラス基板1に高粘調液2を0.33mm厚にバーコーターで均一塗布後、平均粒径0.33mmの樹脂ビーズ(ジビニルベンゼン系で含水率約50%)を外周スペーサー3-1、内部スペーサー3-2(例えば、約0.1個/平方cm)を置き、その後同サイズの対向基板1を真空減圧下(約1Torr)で位置を合わせて積層加圧して密着積層体とした。この時、外周スペーサー3-1は枠5に隠れる部分(例えば、外周1cm幅)に多数個の樹脂ビーズを配置(例えば、約6個/平方cm)した。次にL字形の枠5の一方の側に封止剤4-1(例えば、横浜ゴムのハマタイトPRC-488-Y)を1mm厚で塗布し約130℃に加温した状態で、約85℃に加温されてある積層体の外周部に封止剤4-1を介して置き加圧して密着させた。その後、枠5と積層体の切断面部の隙間を低粘度の樹脂液で注入個化して埋めた。その次に、対向基板側にも同様に枠5を設けて封止体とした。このように、外周スペーサー3-1の存在により、ホットメルト型のポリイソブチレン系の封止剤を使用して枠5を加圧密着させても高粘調液2の流出がなく、また枠5の加圧による基板変形も起きずに気泡の発生混入すること無く確実に封止することができた。内部スペーサー3-2は、サイズにもよるが視覚的に0.1mm径以上のものは透明性が大きくまた着色も小さい方が好ましい。例えば、前記した3次元架橋をもちクリープ変形のないジビニルベンゼン系の樹脂ビーズなどがある。樹脂ビーズは、封止体の膨張、収縮に追随するので内部スペーサーに好ましい。一方、外周スペーサー3-1は、枠5に隠れるので透明性、着色も全く問題にならない。例えば、カーボンビーズ、セラミックスビーズ、樹脂ビーズ、ガラス繊維の切断チップ、ガラス繊維、金属繊維等ひろく使用できる。また、形状は、球状、柱状、糸状等ひろく使用でき断面も円形、四角形等ひろく使用できる。当然内部のスペーサーに使用したものでもよい。要するに一般的に間隔を維持しえるものなら使用できる。なお当然であるが、4隅に薄い凹型のコーナーキャップをしてから枠5をおいて45度角に切断された枠5の接合部の隙間を処置した。また、特に図示しないが2番目の枠5を固定するときに封止剤4-1が、枠と枠の隙間に流れ込むようにするとよりよい。また、枠5は、各辺ごとでもよく、4辺が繋ったロの字型したのもでもよい。」 (エ)文献4 文献4には、以下の記載がある。 (エ1) 「【0015】 合金製のスペーサに対して断熱性能が高いスーパースペーサ(登録商標:QuanexBuilding Products Corporation製)が知られている。このスーパースペーサは樹脂の押出成型品であり、一例としてシリコーンフォームに乾燥剤が練り込まれたものである。このスーパースペーサは、アルミニウム製のスペーサと比較して熱伝導率は約1/950であり、優れたウォームエッジ性能が得られる。」 ウ.対比・判断 (ア)本願補正発明1について 本願補正発明1と引用発明とを対比する。 引用発明においては、貫通部を有する母材及びラムによりシート帯材を打抜くことで支持要素を形成していることから、引用発明の「貫通部を有する母材」、「ラム」及び「シート帯材」は、本願補正発明に1における「貫通部を設けた抜き型」、「パンチ部」及び「シート材」に相当する。そして、形成された支持要素が第1のガラス板上に配置されることから、引用発明においては、第一のガラス板、貫通部を有する母材、シート帯材及びラムがこの順で配置されているものであって、引用発明の「支持要素」、「第一のガラス板」及び「第二のガラス板」は、本願補正発明1における「スペーサ」、「第一ガラス基板」及び「第二ガラス基板」にそれぞれ相当するから、引用発明の「貫通部を有する母材、シート帯材、ラムがこの順で配置され、前記母材の貫通部をラムが通過することでシート帯材を打抜き支持要素を形成」することは、本願補正発明1における「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程」及び「前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程」に相当する。 さらに、引用発明においては、支持要素が設けられた第一のガラス板上に縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られることにより、第一のガラス板と第二のガラス板との間に支持要素が存在し、当該支持要素により内部空間が形成されるものであるから、引用発明の「支持要素が設けられた第一のガラス板上に縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られ」ることは、本願補正発明1における「前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程」に相当する。 そして、引用発明では、打抜き装置が直線上に複数配置され、支持要素2を第一のガラス板上に配置した後で複数の打抜き装置又は第一のガラス板が移動することで、多数の支持要素2を第一のガラス板上に網目様に配置した後に、第二のガラス板が貼られることから、引用発明の「打抜き装置が直線上に複数配置され、支持要素2を第一のガラス板上に配置した後で複数の打抜き装置又は第一のガラス板が移動することで、多数の支持要素2を第一のガラス板上に網目様に配置」することは、本願補正発明1における「前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され」ることに相当する。 また、引用発明においては、支持要素をラムで押圧することで第一のガラス板上の所定位置に配置していることから、引用発明の「支持要素をラムで押圧することで第一のガラス板上の所定位置に配置」することは、本願補正発明1における「前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって前記第一ガラス基板の一面に押し付けられること」に相当する。 最後に、引用発明の「建築要素及び/又は採光要素の製造方法」は、第一のガラス板及び第二のガラス板からなる要素の製造方法であるから、本願発明1における「ガラスパネルユニットの製造方法」に相当する。 すると、本願補正発明1と引用発明とは、 「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって前記第一ガラス基板の一面に押し付けられる、 ガラスパネルユニットの製造方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点1 本願補正発明1は、「シート材の材質は樹脂」であるのに対し、引用発明のシート帯材の材質が不明である点。 相違点2 本願補正発明1は、スペーサを形成するシート材の一部がパンチ部の先端面によって「所定の圧力で所定の時間だけ」第一ガラス基板に押し付けられて「仮固定」されるのに対し、引用発明の支持要素をラムで押圧する際に圧力及び時間が不明であり、さらに支持要素が仮固定されているか不明である点。 始めに、上記相違点1について検討する。 上記イ.(ア)(ア3)で摘示した箇所には、シート帯材を打抜き形成した支持要素の材質として樹脂であるポリエステル或いはテフロンが適していることが記載されているから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 仮に、上記イ.(ア)(ア3)で摘示した箇所の記載が引用発明に係る記載でないとしても、上記イ.(イ)(イ1)及び同(ウ)(ウ1)で摘示した箇所に記載されているように、ガラス板同士の間に配置するスペーサの材質として樹脂を用いることは周知慣用技術である。さらに、上記イ.(ア)(ア2)で摘示した箇所には、従来技術の欠点とし熱伝導性が高くなることが記載されており、同(ア5)で摘示した箇所には、支持要素の間隔を最適化する際に可能な限り僅かな熱伝導性が得られるようにすることが記載されていることから、文献1に記載された発明は、熱伝導性を低くすることも目的としているものと認められる。そして、上記イ.(エ)(エ1)で摘示した箇所に記載されているように、樹脂製のスペーサは金属製のスペーサに比べて非常に低い熱伝導性を有するものであることは当業者に周知の事項であるから、引用発明において、支持要素を打抜き形成するためのシート帯材の材質として熱伝導性が低い樹脂を用いることは、当業者が容易に想到することができたものである。 次に、上記相違点2について検討する。 上記イ.(ア)(ア4)で摘示した箇所には、支持要素を押圧することが記載されており、押圧する際には所定の圧力を所定の時間印加するものであるため、引用発明の支持要素は、「所定の圧力で所定の時間だけ」第一のガラス板に押し付けられているものと認められる。そして、樹脂が帯電しやすいことは当業者に周知の事項であり、樹脂を打ち抜く際には摩擦により帯電するものであるため、引用発明においては、支持要素を押圧することにより静電気により第一のガラス板に仮固定されるものと認められる。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 なお、請求人は、令和1年6月5日付け審判請求書において、上記相違点1及び2に係る本願補正発明1の構成が文献1には記載されていないことを主張しているが、上記相違点1が実質的なものでないことは上記のとおりであり、仮にそうでないとしても、引用発明においてシート帯材を樹脂とすることは、周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであることは、上記のとおりである。そして、上記相違点2も上記のとおり実質的な相違点ではない。したがって、審判請求書における請求人の主張は採用できない。また、請求人は、令和1年8月2日付け上申書において、引用発明においてスペーサ材としてペースト状の熱硬化性樹脂を採用することは、当業者が通常行うことではないと主張しているが、スペーサ材として樹脂であるポリエステル或いはテフロンを用いることが文献1に記載されていることは上記のとおりであるし、仮に、スペーサ材として樹脂を用いることが文献1に記載されているとまではいえないとしても、周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであることは、上記のとおりである。したがって、上申書における請求人の主張は採用できない。 よって、上記相違点1及び2は、実質的な相違点ではないから、本願補正発明1は文献1に記載された発明である。また、仮に上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、上記相違点1は当業者が容易に想到することができたものであるから、本願補正発明1は文献1に記載された発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本願補正発明2について 本願補正発明2と引用発明とを対比すると、「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され」る点は、上記(ア)と同様であり、引用発明の縁部封隙部材は、本願補正発明2における「シール材」に相当する。そして、引用発明の第一のガラス板と第二のガラス板の間は真空にされるものであるから、引用発明の縁部封隙部材は第一のガラス板の外延に沿って設けられるものであり、複数の支持要素を囲むように枠状に配置されるものと認められる。したがって、引用発明の「支持要素が設けられた第一のガラス板上に縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られ、真空炉中でガラス板間の空気及び湿気が吸引され、縁部封隙部材とろう物質により、第一のガラス板と第二のガラス板との間に気密な結合を形成」することは、本願補正発明2における「前記第一ガラス基板の一面に、複数の前記スペーサを囲むように枠状のシール材が配され、前記シール材を介して、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板が接合される」ことに相当する。 すると、本願補正発明2と引用発明は、 「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記組立工程では、前記第一ガラス基板の一面に、複数の前記スペーサを囲むように枠状のシール材が配され、前記シール材を介して、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板が接合される、 ガラスパネルユニットの製造方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点1’ 本願補正発明2は、「シート材の材質は樹脂」であるのに対し、引用発明のシート帯材の材質が不明である点。 上記相違点1’について検討すると、上記相違点1’は、上記(ア)で検討した上記相違点1と同一であって、上記相違点1は実質的な相違点ではないため、上記相違点1’も実施的な相違点ではない。仮に、上記相違点1及び相違点1’が実施的な相違点であったとしても、上記相違点1は文献1に記載された事項及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものであることから、上記相違点1’も、文献1に記載された事項及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、上記相違点1’は、実質的な相違点ではないから、本願補正発明2は文献1に記載された発明である。また、仮に上記相違点1’が実質的な相違点であったとしても、上記相違点1’は当業者が容易に想到することができたものであるから、本願補正発明2は文献1に記載された発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ.まとめ 以上のとおり、本願補正発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本願補正発明1及び2が、特許法第29条第1項第3号に該当しないとしても、本願補正発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。 第3.本願発明について 本件補正は、上記第2で検討したとおり却下されたから、本願発明は、平成30年11月12日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?7(以下「本願発明1」?「本願発明7」という。)に記載された以下のものであると認める。 「【請求項1】 第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって所定の圧力で所定時間だけ前記第一ガラス基板の一面に押し付けられることで、前記一面上に仮固定される、 ガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項2】 第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記組立工程では、前記第一ガラス基板の一面に、複数の前記スペーサを囲むように枠状のシール材が配され、前記シール材を介して、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板が接合される、 ガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項3】 前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって所定の圧力で所定時間だけ前記第一ガラス基板の前記一面に押し付けられることで、前記一面上に仮固定される、 請求項2に記載のガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項4】 前記貫通部は、互いに距離をあけて位置する複数の貫通孔で構成され、 前記パンチ部は、互いに距離をあけて位置する複数のパンチで構成され、 前記スペーサ形成工程は、 前記複数のパンチが前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記複数の貫通孔を通じて、前記シート材の複数の部分が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記複数の部分が、前記複数のパンチによって前記第一ガラス基板に配置され、前記複数の部分の各々でスペーサが構成される工程である、 請求項1?3のいずれか一項に記載のガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項5】 前記内部空間が減圧されるかまたは前記内部空間にガスが供給される処理工程を、さらに具備する、 請求項1?4のいずれか一項に記載のガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項6】 前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板の一方と、第三ガラス基板とが、枠状のシール材を介して接合され、前記シール材で囲まれる第二内部空間が形成される第二組立工程を、さらに備える、 請求項1?5のいずれか一項に記載のガラスパネルユニットの製造方法。 【請求項7】 請求項1?6のいずれか一項に記載のガラスパネルユニットの製造方法で製造されたガラスパネルユニットに、窓枠を嵌め込む嵌め込み工程を備える、 ガラス窓の製造方法。」 第4.原査定の拒絶の理由について 1.拒絶の理由の概要 平成31年2月27日付けの拒絶査定における拒絶の理由は、本願発明1?7は、平成30年9月4日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2により、特許を受けることができないというものである。そして、当該理由1は、本願発明1?7は上記第2で引用した文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができないというものであり、当該理由2は、本願発明1?7は文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 2.引用文献の記載事項 文献1の記載事項は、上記第2の2.(2)イ.(ア)で摘示したとおりであり、文献1には、 「貫通部を有する母材、シート帯材、ラムがこの順で配置された打抜き装置を有し、前記母材の貫通部をラムが通過することでシート帯材を打抜き支持要素を形成し、支持要素をラムで押圧することで第一のガラス板上の所定位置に配置し、前記打抜き装置が直線上に複数配置され、支持要素2を第一のガラス板上に配置した後で複数の打抜き装置又は第一のガラス板が移動することで、多数の支持要素2を第一のガラス板上に配置し、支持要素が設けられた第一のガラス板上に縁部封隙部材が設けられた後、第二のガラス板がその上に貼られ、真空炉中でガラス板間の空気及び湿気が吸引され、縁部封隙部材とろう物質により、第一のガラス板と第二のガラス板との間に気密な結合を形成する、建築要素及び/又は採光要素。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 3.当審の判断 (1)本願発明1について 本願発明1は、本願補正発明1における「前記シート材の材質は樹脂であり、」との発明特定事項以外の発明特定事項からなるものであるから、上記第2の2.(2)ウ.(ア)で検討したように、本願発明1と引用発明とは、 「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって前記第一ガラス基板の一面に押し付けられる、 ガラスパネルユニットの製造方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点 本願発明1は、シート材の一部がパンチ部の先端面によって「所定の圧力で所定の時間だけ」第一ガラス基板に押し付けられて「仮固定」されるのに対し、引用発明の支持要素をラムで押圧する際に圧力及び時間が不明であり、さらに支持要素が仮固定されているか不明である点。 上記相違点について検討すると、上記相違点は、上記第2の2.(2)ウ.(ア)で検討した相違点2と同一であるから、同様の理由により、上記相違点は実質的な相違点ではない。 よって、本願発明1は、文献1に記載された発明である。 (2)本願発明2について 本願発明2は、本願補正発明2における「前記シート材の材質は樹脂であり、」との発明特定事項以外の発明特定事項からなるものであるから、上記第2の2.(2)ウ.(イ)で検討したように、本願発明2と引用発明は、 「第一ガラス基板と、貫通部を設けた抜き型と、シート材と、パンチ部とが、この順に並んで位置するようにセットされるセット工程と、 前記パンチ部が前記シート材に打ち込まれることで、前記抜き型の前記貫通部を通じて前記シート材の一部が打ち抜かれ、打ち抜かれた前記一部が、前記パンチ部によって前記第一ガラス基板に配置され、前記一部でスペーサが構成されるスペーサ形成工程と、 前記第一ガラス基板に対して前記スペーサを挟むように第二ガラス基板が重ねられ、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板との間に、前記スペーサの位置する内部空間が形成される組立工程と、を具備し、 さらに、前記パンチ部と前記第一ガラス基板の相対位置が変更される変位工程を具備し、前記スペーサ形成工程が、前記変位工程を挟んで複数回繰り返し実行された後に、前記組立工程が実行され、 前記組立工程では、前記第一ガラス基板の一面に、複数の前記スペーサを囲むように枠状のシール材が配され、前記シール材を介して、前記第一ガラス基板と前記第二ガラス基板が接合される、 ガラスパネルユニットの製造方法。」の点で一致し、相違点は存在しない。 よって、本願発明2は、文献1に記載された発明である。 (3)本願発明3?7 上記第2の2.(2)ウ.(ア)で検討したように、文献1には、「前記スペーサ形成工程では、前記シート材の前記一部が、前記パンチ部の先端面によって所定の圧力で所定時間だけ前記第一ガラス基板の前記一面に押し付けられることで、前記一面上に仮固定される」こと、及び「真空炉中でガラス板間の空気及び湿気が吸引」することが記載されているから、本願発明3及び5は、文献1に記載された発明である。 また、引用発明は、「打抜き装置が直線上に複数配置され、支持要素2を第一のガラス板上に配置した後で複数の打抜き装置又は第一のガラス板が移動することで、多数の支持要素2を第一のガラス板上に配置」するものであり、上記第2の2.(2)イ.(ア)の(ア9)で摘示したFig.30には、互いに距離を開けて位置する複数のラムと母型を有し、複数の支持部材を第一のガラス板上に配列させることが記載されているから、本願発明4も、文献1に記載された発明である。 さらに、上記第2の2.(2)イ.(ア)の(ア10)で摘示したFig.33には、三枚のガラス板がそれぞれの間に支持要素を介して配置され、縁部封隙部材とろう物質によりそれぞれのガラス板との間に気密な結合を形成することが記載されているから、本願発明6も、文献1に記載された発明である。 そして、上記第2の2.(2)ウ.(ア)で検討したように、文献1には、「建築要素及び/又は採光要素」が記載されており、採光要素は一般的に窓であることから、引用発明は窓として用いられるものであり、窓枠にはめ込むことは文献1に記載されているに等しい事項である。 4.まとめ 以上から、本願発明1?7は、原査定のとおり、文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。 第5.むすび 令和1年6月5日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。 そして、平成30年11月22日付け手続補正書における請求項1?7に係る発明は、文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は原査定の理由により拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2020-08-04 |
結審通知日 | 2020-08-11 |
審決日 | 2020-08-25 |
出願番号 | 特願2017-506067(P2017-506067) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C03C)
P 1 8・ 113- Z (C03C) P 1 8・ 575- Z (C03C) P 1 8・ 56- Z (C03C) P 1 8・ 572- Z (C03C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原 和秀、今井 淳一、谷本 怜美 |
特許庁審判長 |
菊地 則義 |
特許庁審判官 |
金 公彦 川村 裕二 |
発明の名称 | ガラスパネルユニットの製造方法、およびガラス窓の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |