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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1367305
審判番号 不服2019-14066  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-23 
確定日 2020-10-15 
事件の表示 特願2016- 63347「着色硬化性樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開,特開2016-191915〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-63347号(以下「本件出願」という。)は,平成28年3月28日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年3月30日)を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成30年 6月22日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月25日付け:意見書
平成30年10月25日付け:手続補正書
平成30年11月 7日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月 7日付け:意見書
令和 元年 7月12日付け:拒絶査定
令和 元年10月23日付け:審判請求書

2 本願発明
本件出願の請求項1?請求項5に係る発明は,平成30年10月25日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明は,次のものである(以下「本願発明」という。)。
「 着色剤,樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含有し,
前記着色剤として染料と顔料とを含み,
前記染料としてキサンテン染料を含み,
前記顔料としてフタロシアニン顔料を含み,
前記重合開始剤として下記式(d1)で表される化合物を含む着色硬化性樹脂組成物。
【化1】


[式(d1)中,
R^(d1)は,置換基を有していてもよい炭素数6?18の芳香族炭化水素基,置換基を有していてもよい炭素数3?36の複素環基,置換基を有していてもよい炭素数1?15のアルキル基,又は置換基を有していてもよい炭素数7?33のアラルキル基を表し,前記アルキル基又はアラルキル基に含まれるメチレン基(-CH_(2)-)は,-O-,-CO-,-S-,-SO_(2)-又は-N(R^(d5))-に置き換わっていてもよい。
R^(d2)は,炭素数6?18の芳香族炭化水素基,炭素数3?36の複素環基,又は炭素数1?10のアルキル基を表す。
R^(d3)は,置換基を有していてもよい炭素数6?18の芳香族炭化水素基,又は置換基を有していてもよい炭素数3?36の複素環基を表す。
R^(d4)は,置換基を有していてもよい炭素数6?18の芳香族炭化水素基,又は置換基を有していてもよい炭素数1?15の脂肪族炭化水素基を表し,前記脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH_(2)-)は,-O-,-CO-又は-S-に置き換わっていてもよく,前記脂肪族炭化水素基に含まれるメチン基(-CH<)は,-PO_(3)<に置き換わっていてもよく,前記脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はOH基で置換されていてもよい。
R^(d5)は,炭素数1?10のアルキル基を表し,該アルキル基に含まれるメチレン基(-CH_(2)-)は,-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。]」

3 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,先の出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて,先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特表2014-500852号公報
引用文献2:特開2011-138094号公報
(当合議体注:引用文献1は主引用例,引用文献2は副引用例である。)

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,特表2014-500852号公報(以下「引用文献1」という。)は,先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには以下の記載がある。なお,引用文献1の【0327】等に付されていた下線は消去し,替わりに,引用発明の認定や判断等に活用した箇所に下線を付した。また,画像についてコントラスト等を調整した。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,特定のカルバゾール誘導体を基礎とする新規のオキシムエステル化合物ならびに前記化合物の光重合性の組成物における光開始剤としての使用に関する。
…(省略)…
【0003】
光重合技術においては,反応性が高く,製造が容易で,かつ取り扱いが容易な光開始剤に対しての要求がいまだ存在する。例えば,カラーフィルターレジスト用途においては,高度に顔料着色されたレジストは,高い色品質特性のために必要である。顔料含分の増加に伴い,カラーレジストの硬化はより困難になる。ここで,高い感度を有する光開始剤が必要である。更にまた,かかる新規の光開始剤は,例えば取り扱いの容易性,高い可溶性,熱安定性および貯蔵安定性などの特性に関する高い工業的要求を満たさねばならない。
【0004】
ここで,選択された化合物は,特に光開始剤として好適であることが判明した。
【0005】
ここで,本発明の対象は,式I
【化1】


…(省略)…である。
【0006】
式Iの化合物は,該化合物が,1もしくはそれより多くの縮合された不飽和環をカルバゾール部で含むことを特徴とする。換言すると,R_(1)およびR_(2),R_(2)およびR_(3),R_(3)およびR_(4),R_(5)およびR_(6),R_(6)およびR_(7)またはR_(7)およびR_(8)の対の少なくとも1つは,
【化18】

である。
…(省略)…
【0116】
本発明の式Iの化合物の例は,
【化89】

【0117】
【化90】

…(省略)…
【0120】
…(省略)…
である。
【0121】
式Iの化合物は,ラジカル光開始剤として適している。従って,本発明の対象は,上記定義の式(I)の化合物の,少なくとも1種のエチレン性不飽和の光重合性の化合物を含む組成物の光重合のための使用である。
【0122】
従って,本発明のもう一つの対象は,光重合性の組成物であって,
(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和の光重合性の化合物と,
(b)光開始剤としての,上記定義の,少なくとも1種の式Iの化合物と,
を含む前記組成物である。
【0123】
該組成物は,前記光開始剤(b)に加えて,少なくとも1種の更なる光開始剤(c)および/または他の添加剤(d)を含有してよい。
【0124】
該組成物は,前記光開始剤(b)に加えて,少なくとも1種の更なる光開始剤(c)もしくは他の添加剤(d)またはその両方,つまり少なくとも1種の更なる光開始剤(c)および他の添加剤(d)を含有してよい。
【0125】
不飽和化合物(a)は,1つまたはそれより多くのオレフィン性二重結合を含んでよい。
…(省略)…
【0128】
特に適した例は,エチレン性不飽和カルボン酸とポリオールまたはポリエポキシドとのエステル,およびエチレン性不飽和基を鎖内または側鎖内に有するポリマー,例えば,不飽和ポリエステル,ポリアミドおよびポリウレタンおよびそれらのコポリマー,側鎖内に(メタ)アクリル酸基を含有するポリマーおよびコポリマー,さらには1つまたはそれより多くのかかるポリマーの混合物である。
…(省略)…
【0130】
適したポリオールは,芳香族の,および特に脂肪族および脂環式のポリオールである。
…(省略)…
【0132】
該ポリオールは,部分的または完全に,1つのカルボン酸または種々の不飽和カルボン酸でエステル化されていてよく,かつ,部分的なエステルにおいて,遊離ヒドロキシル基が変性され,例えば他のカルボン酸でエーテル化またはエステル化されていてよい。エステルの例は以下である:
トリメチロールプロパントリアクリレート,トリメチロールエタントリアクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート,トリメチロールエタントリメタクリレート,テトラメチレングリコールジメタクリレート,トリエチレングリコールジメタクリレート,テトラエチレングリコールジアクリレート,ペンタエリトリトールジアクリレート,ペンタエリトリトールトリアクリレート,ペンタエリトリトールテトラアクリレート,ジペンタエリトリトールジアクリレート,ジペンタエリトリトールトリアクリレート,ジペンタエリトリトールテトラアクリレート,ジペンタエリトリトールペンタアクリレート,ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート,トリペンタエリトリトールオクタアクリレート,ペンタエリトリトールジメタクリレート,ペンタエリトリトールトリメタクリレート,ジペンタエリトリトールジメタクリレート,ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート,トリペンタエリトリトールオクタメタクリレート,ペンタエリトリトールジイタコネート,ジペンタエリトリトールトリス-イタコネート,ジペンタエリトリトールペンタイタコネート,ジペンタエリトリトールヘキサイタコネート,エチレングリコールジアクリレート,1,3-ブタンジオールジアクリレート,1,3-ブタンジオールジメタクリレート,1,4-ブタンジオールジイタコネート,ソルビトールトリアクリレート,ソルビトールテトラアクリレート,ペンタエリトリトール-変性トリアクリレート,ソルビトールテトラメタクリレート,ソルビトールペンタアクリレート,ソルビトールヘキサアクリレート,オリゴエステルアクリレートおよびメタクリレート,グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート,1,4-シクロヘキサンジアクリレート,200?1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート,またはそれらの混合物。
…(省略)…
【0156】
…(省略)…本発明による組成物は,さらなる添加剤(D)として,光還元性染料,例えばキサンテン染料,ベンゾキサンテン染料,ベンゾチオキサンテン染料,チアジン染料,ピロニン染料,ポルフィリン染料またはアクリジン染料,および/または照射によって開裂できるトリハロゲンメチル化合物を含んでよい。
…(省略)…
【0159】
顔料が分散しやすくするために,かつ得られた顔料分散液を安定化するために,顔料の表面処理を適用することが好ましい。表面処理試薬は,例えば,界面活性剤,ポリマー型分散剤,一般的なテクスチャ向上剤,顔料誘導体およびそれらの混合物である。本発明による着色剤組成物が少なくとも1種のポリマー型分散剤および/または少なくとも顔料誘導体を含む場合に特に好ましい。
…(省略)…
【0168】
顔料用の上述の分散剤および界面活性剤は,例えばレジスト配合物として使用される組成物において,特にカラーフィルター配合物において使用される。
【0169】
本発明の対象は,また,上記の光重合性の組成物であって,更なる添加剤(d)として,分散剤もしくは分散剤の混合物を含む前記組成物ならびに上記の光重合性の組成物であって,更なる添加剤(d)として顔料もしくは顔料の混合物を含む前記組成物である。
【0170】
用途の分野に応じて,かつこの分野に必要とされる特性に応じて,添加剤(d)が選択される。上記の添加剤は当該技術分野で慣例的であり,従ってそれぞれの用途において通常の量で添加される。
【0171】
結合剤(e)は,同様に新規組成物に添加してよい。これは,光重合性の化合物が液体または粘性物質である場合,特に好都合である。結合剤の量は,固体含有物全体に対して,例えば2?98質量%,好ましくは5?95質量%,特に20?90質量%であってよい。結合剤は,用途の分野に依存して,およびこの分野のために必要とされる特性,例えば水および有機溶剤系における現像能力,基材への付着,および酸素に対する感度に依存して選択される。
【0172】
適した結合剤の例は,約2000?2000000,好ましくは3000?1000000の分子量を有するポリマーである。アルカリ現像型の結合剤の例は,ペンダント基としてカルボン酸官能を有するアクリルポリマー,例えばエチレン性不飽和カルボン酸,例えば(メタ)アクリル酸,2-カルボキシエチル(メタ)アクリル酸,2-カルボキシプロピル(メタ)アクリル酸,イタコン酸,クロトン酸,マレイン酸,フマル酸およびω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートを,(メタ)アクリル酸のエステル,例えばメチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,プロピル(メタ)アクリレート,ブチル(メタ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート,ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,グリセロールモノ(メタ)アクリレート,トリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン-8-イル(メタ)アクリレート,グリシジル(メタ)アクリレート,2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート,3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート,6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート;ビニル芳香族化合物,例えばスチレン,α-メチルスチレン,ビニルトルエン,p-クロロスチレン,ビニルベンジルグリシジルエーテル;アミド型不飽和化合物,(メタ)アクリルアミドジアセトンアクリルアミド,N-メチロールアクリルアミド,N-ブトキシメタクリルアミドならびにポリオレフィン型化合物,例えばブタジエン,イソプレン,クロロプレンなど;メタクリロニトリル,メチルイソプロペニルケトン,モノ-2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルスクシネート,N-フェニルマレイミド,無水マレイン酸,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,ピバル酸ビニル,ポリスチレンマクロモノマーまたはポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマーから選択される1もしくはそれより多くのモノマーとともに共重合させることによって得られる慣用的に知られるコポリマーである。
…(省略)…
【0187】
カラーフィルターは,通常は,ガラス基板上に,赤色と緑色と青色のピクセルと,黒色のマトリクスとを形成することによって製造される。これらのプロセスにおいて,本発明による光硬化性組成物を使用できる。特に好ましい使用方法は,赤色,緑色および青色の着色物質,染料および顔料を本発明の感光性の樹脂組成物に添加することと,基板を前記組成物でコーティングすることと,該コーティングを短時間の熱処理で乾燥させることと,該コーティングをパターン状に化学線にさらすことと,引き続き水性アルカリ性現像溶液中で前記パターンを現像することと,任意に熱処理することとを含む。このように,引き続きこのプロセスで互いの上部に任意の所望の順番で赤色に,緑色に,そして青色に顔料着色されたコーティングを適用することによって,赤色,緑色および青色のカラーピクセルを有するカラーフィルター層を製造できる。
…(省略)…
【0202】
本発明による組成物,例えば顔料着色されたカラーフィルターレジスト組成物中に含まれうる顔料は,好ましくは,加工された顔料,例えば顔料を,アクリル樹脂,塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー,マレイン酸樹脂およびエチルセルロース樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂中に微分散させることによって製造された粉末状またはペースト状の製品である。
…(省略)…
【0213】
全固体成分(種々の色の顔料と樹脂)中の顔料の濃度は,例えば5質量%から80質量%の範囲であり,特に20質量%から45質量%の範囲である。
…(省略)…
【0216】
好ましくは,本発明によるカラーフィルターレジスト組成物は,付加的に,少なくとも1種の付加重合性のモノマー化合物を成分(a)として含有する。
【0217】
エチレン性不飽和化合物(a)は,カラーフィルターレジスト用途のための化合物も前記のものである。
…(省略)…
【0237】
カラーフィルターレジスト組成物においては,光重合性組成物に含まれるモノマーの全量は,該組成物の全固体含量に対して,すなわち溶剤を含まない全ての成分の量に対して,好ましくは5?80質量%,特に10?70質量%である。
…(省略)…
【0258】
本発明の光開始剤は,カラーフィルターレジスト中で,例えば前記の例に示されるものにおいて使用できるか,またはかかるレジストにおいて公知の光開始剤と部分的にもしくは完全に置き換えることができる。
…(省略)…
【0325】
本発明の化合物は,良好な熱安定性,低揮発性,優れた貯蔵安定性および高い溶解性を有し,また,空気(酸素)の存在下での光重合にも好適である。さらに,それらは,光重合後の組成物において,ほんの少しの黄化しか引き起こさない。」

イ 「【0326】
下記の実施例で本発明をより詳細に説明する。
…(省略)…
【0327】
例1 1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]-エタノンオキシムO-アセテートの合成
1.a 11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール
【化99】

…(省略)…
【0330】
1.b 1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]エタノン
【化100】

【0331】
11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール(0.42g;1.27ミリモル)をCH_(2)Cl_(2)(20mL)中に入れたものに,2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド(0.23g;1.27ミリモル)およびAlCl_(3)(0.17g;1.27ミリモル)を0℃で添加する。室温で2.5時間にわたり撹拌した後に,塩化アセチル(0.17g;1.31ミリモル)およびAlCl_(3)(0.19;1.40ミリモル)を0℃で添加し,そして該混合物を室温で3時間にわたり撹拌する。該反応混合物を,氷水に注ぎ,そして粗生成物をCH_(2)Cl_(2)で2回抽出する。合した有機層を,水およびブラインで洗浄し,MgSO_(4)上で乾燥させ,そして濃縮し,真空中で乾燥させることで,ベージュ色の固体(0.45g;75%)が得られる。
…(省略)…
【0332】
1.c 1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]エタノンオキシムO-アセテート
【化101】

【0333】
1-[11-(2-エチルヘキシル)-5-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-8-イル]エタノン(0.49g;0.95ミリモル)をトルエン(5mL)およびN-メチルピロリドン(NMP)(0.85ml)中に入れて80℃で温めたものに,酢酸ナトリウム(93.5mg;1.14ミリモル)およびヒドロキシルアンモニウムクロリド(78.9mg;1.14ミリモル)を添加し,次いで該混合物を100℃で一晩撹拌する。該反応混合物を0℃で冷却した後に,トリエチルアミン(0.145g;1.43ミリモル)および塩化アセチル(0.11g;1.43ミリモル)をそこに添加し,次いで該混合物を室温で2時間にわたり撹拌する。反応が完了した後に,該反応混合物を水中に添加する。次いで粗生成物をトルエンで抽出する。有機層を,水およびブラインで洗浄し,MgSO_(4)上で乾燥させ,そして濃縮し,真空中で乾燥させることで,残留物が得られる。この残留物をt-ブチルメチルエーテルで洗浄することで,白色の固体(0.33g;60%)が得られる。
…(省略)…
【0334】
例2?17:
例2?17の化合物の相応のジケトン中間体は,一般に,例1.bに開示される手順に従って,相応のアルカノイルもしくはアロイルクロリドを塩化アセチルの代わりに用いて製造される。
…(省略)…
【0335】
第1表:
【表1】

…(省略)…
【0344】
例19?41:
例19?41の化合物の相応のジケトン中間体は,一フッ素化もしくは二フッ素化された塩化ベンゾイルを用いて製造される。
…(省略)…
【0345】
【表4】

…(省略)…

…(省略)…
【0411】
適用例
例A1:ポリ(ベンジルメタクリレート-コ-メタクリル酸)の製造
24gのベンジルメタクリレート,6gのメタクリル酸および0.525gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を,90mlのプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)中に溶解させる。得られた反応混合物を,80℃の予熱された油浴中に入れる。
【0412】
80℃で5時間にわたり窒素下で撹拌した後に,得られた粘性の溶液を室温で冷却し,更なる精製を行わずに使用する。固体含有率は,約25%である。
【0413】例A2:感受性試験
感受性試験のための光硬化性組成物を,以下の成分の混合によって製造する:
前記の例A1で製造された,25%のプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)溶液としての,ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマー(ベンジルメタクリレート:メタクリル酸=80質量%:20質量%)を,200.0質量部で,
ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート((DPHA),UCB-Chemicalsによって提供)を,50.0質量部で,
光開始剤を,1.0質量部で,かつ
PGMEAを,150.0質量部で。
【0414】
全ての作業は,黄色光のもとで行われる。該組成物を,アルミニウム板上に線巻棒を有する電気式アプリケータを使用して適用する。溶剤を,対流式オーブン中で80℃で10分にわたり加熱することによって除去する。乾燥被膜の厚さは,約2μmである。21ステップの異なる光学密度を有する標準化された試験用ネガフィルム(Stouffer社のステップウェッジ)を,前記被膜とレジストとの間に約100μmのエアギャップをもって配置する。そのネガフィルム上にガラスフィルター(UV-35)を置く。露光は,250Wの超高圧水銀灯(USHIO, USH-250BY)を使用して15cmの距離で行う。ガラスフィルター上で光パワー計(UV-35検出器を有するORC UV Light Measure Model UV-M02)によって測定された全照射線量は,1000mJ/cm^(2)である。露光後に,露光されたフィルムを,アルカリ溶液(DL-A4の5%水溶液,Yokohama Yushi)を用いて28℃で120秒間にわたって吹き付け型現像剤(AD-1200,Takizawa Sangyo)を使用することによって現像する。使用される開始剤の感度は,現像後に残る(すなわち重合される)最高のステップ数を示すことによって特徴付けられる。ステップ数が高ければ高いほど,試験された開始剤の感度はより高い。結果を,第3表に示す。
【0415】
第3表:
【表14】

【0416】
【表15】

…(省略)…」
(2) 引用発明
ア 引用発明2
引用文献1の【0411】?【0417】に記載された適用例からみて,引用文献1には,光開始剤が「2」である,次の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)。なお,用語を統一して記載した。
「 以下(A)成分?(D)成分の混合によって製造した,感受性試験のための光硬化性組成物。
(A)25%のプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート溶液としての,ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマー(ベンジルメタクリレート:メタクリル酸=80質量%:20質量%)を,200.0質量部
(B)ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートを,50.0質量部
(C)次の光開始剤を,1.0質量部

(D)プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテートを,150.0質量部」

イ 引用発明24
引用文献1には,光開始剤が「24」である,次の発明も記載されている(以下「引用発明24」という。)。
「 引用発明2の光開始剤を,次の化合物に替えてなる,光硬化性組成物。



(3) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由において引用された,特開2011-138094号公報(以下「引用文献2」という。)は,先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と樹脂とからなるカラーフィルタ用青色着色組成物において,該着色剤が,キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物とからなる造塩化合物(A)および青色顔料を含むことを特徴とするカラーフィルタ用青色着色組成物。
…(省略)…
【請求項6】
青色顔料が,フタロシアニン系顔料および/またはトリアリールメタン系レーキ顔料であることを特徴とする請求項1?5いずれかに記載のカラーフィルタ用青色着色組成物。
【請求項7】
フタロシアニン系顔料が,C.I.ピグメント ブルー 15:6であることを特徴とする請求項6記載のカラーフィルタ用青色着色組成物。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,カラー液晶表示装置,カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用青色着色組成物,及びこれを用いて形成されてなるフィルタセグメントを備えるカラーフィルタに関するものである。また青色着色組成物は青色用,シアン色用のカラーフィルタに適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
…(省略)…
【0010】
カラーフィルタの製造方法には,着色剤として染料,造塩染料を使った染色法,染料分散法や,着色剤として顔料を使った顔料分散法,印刷法,電着法などがある。このうち染色法,あるいは染色分散法は着色剤が染料であることから,耐熱性や耐光性にやや劣る欠点がある。よってカラーフィルタの着色剤としては耐熱性や耐光性に優れる顔料が用いられ,製造方法としては形成方法の精度や安定性から顔料分散法を用いる場合が多い。
…(省略)…
【0013】
従来,青色フィルタセグメント(画素)やシアン色フィルタセグメント(画素)の形成に用いられる着色剤としては,一般に耐性および色調に優れたフタロシアニン顔料が用いられることが多い。フタロシアニン顔料は,α型,β型,δ型,ε型等の異なる結晶型を持っており,それぞれが鮮明で着色力も高いという優れた性質を持っていることから,カラーフィルタ用の着色剤として適したものである。
…(省略)…
【0014】
従来の冷陰極管タイプのバックライトを用いた液晶表示装置などの表示装置においては,青色フィルタセグメントやシアン色フィルタセグメントに,銅フタロシアニン顔料とジオキサジン系顔料等を組み合わせることで,高い明度と広い色表示領域を達成することができていた。しかしながら前述のように,カラーフィルタに対して更なる高明度化や広い色再現領域が要求されている。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は,色特性,耐熱性,耐光性,耐溶剤性に優れ,塗膜への異物発生もない,安定なカラーフィルタ用青色着色組成物,並びにそれを用いた色特性が良く,耐熱性,耐光性,耐溶剤性に優れるカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは,前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,カラーフィルタ用青色着色組成物の着色剤として,キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物(のカウンタ成分)とからなる造塩化合物(A)および青色顔料を含む着色剤を使用することによって,高い明度と広い色再現領域が可能となり,また塗膜への異物発生もなく,耐性においても優れていること見出し,この知見に基づいて本発明をなしたものである。
…(省略)…
【0026】
また,本発明は,フタロシアニン系顔料が,C.I.ピグメント ブルー 15:6であることを特徴とする前記カラーフィルタ用青色着色組成物に関する。
…(省略)…
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下,本発明を詳細に説明する。
…(省略)…
【0034】
<着色剤>
本発明のカラーフィルタ用青色着色組成物の着色剤としては,キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物とからなる造塩化合物(A)および青色顔料を含むものである。
造塩化合物(A)と青色顔料とを併用,混合することで,前述のように多くのバックライトがもつ特徴的なピークをもつ425?500nm付近において,分光スペクトルが高い透過率を有することが可能になり,従来の銅フタロシアニン系顔料とジオキサジン系顔料を組み合わせたカラーフィルタより,高い明度と広い色再現性を得ることが出来る。さらに酸性染料を造塩化することで,高い耐熱性,耐光性,耐溶剤性を併せて持つことが出来る。
…(省略)…
【0036】
[キサンテン系酸性染料]
キサンテン系染料の酸性染料について説明する。キサンテン系染料の酸性染料としては,C.I.アシッド レッド 51(エリスロシン(食用赤色3号)),C.I.アシッド レッド 52(アシッドローダミン),C.I.アシッド レッド 87(エオシンG(食用赤色103号)),C.I.アシッド レッド 92(アシッドフロキシンPB(食用赤色104号)),C.I.アシッド レッド 289,C.I.アシッド レッド 388,ローズベンガルB(食用赤色5号),アシッドローダミンG,C.I.アシッド バイオレット 9,C.I.アシッド バイオレット 9,C.I.アシッド バイオレット 30を用いることが好ましい。
中でもC.I.アシッド レッド 52,C.I.アシッド レッド 87,C.I.アシッド レッド 92,C.I.アシッド レッド 289,C.I.アシッド レッド 388を用いることが好ましい。
…(省略)…
【0038】
またキサンテン系酸性染料としては,発色性の優れる点でローダミン系酸性染料を用いることが好ましい。
【0039】
[四級アンモニウム塩化合物]
次いで,キサンテン系酸性染料のカウンタ成分としての四級アンモニウム塩化合物について説明する。四級アンモニウム塩化合物は,アミノ基を有することで酸性染料のカウンタになるものである。
…(省略)…
【0051】
(青色顔料)
青色顔料としては,フタロシアニン系顔料および/またはトリアリールメタン系レーキ顔料等が用いられる。フタロシアニン系顔料としては,銅フタロシアニンブルー顔料を用いることが好ましいものである。
銅フタロシアニンブルー顔料としては,C.I.ピグメント ブルー 15,C.I.ピグメント ブルー 15:1,C.I.ピグメント ブルー 15:2,C.I.ピグメント ブルー 15:3,C.I.ピグメント ブルー 15:4,C.I.ピグメント ブルー 15:6,等の顔料が挙げられ,中でも,ε型,α型の構造を有する銅フタロシアニンブルー顔料が好ましい。このような好ましい顔料は,具体的にはC.I.ピグメント ブルー 15:6およびC.I.ピグメント ブルー 15:1である。
…(省略)…
これらの中でも青色顔料としてC.I.ピグメント ブルー 15:6を用いることが好ましいものである。
…(省略)…
【0058】
<樹脂>
樹脂は,着色剤,特に造塩化合物を分散するもの,もしくは造塩化合物を染色,浸透させるものであって,熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂等が挙げられる。
…(省略)…
【0062】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては,例えば,アクリル樹脂,ブチラール樹脂,スチレン-マレイン酸共重合体,塩素化ポリエチレン,塩素化ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体,ポリ酢酸ビニル,ポリウレタン系樹脂,ポリエステル樹脂,ビニル系樹脂,アルキッド樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリアミド樹脂,ゴム系樹脂,環化ゴム系樹脂,セルロース類,ポリエチレン(HDPE,LDPE),ポリブタジエン,およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
…(省略)…
【0074】
<溶剤>
本発明の青色着色組成物には,着色剤を充分に着色剤担体中に分散,浸透させ,ガラス基板等の基板上に乾燥膜厚が0.2?5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。
…(省略)…
【0085】
<光重合性単量体>
本発明の光重合性単量体には,紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ,これらを単独で,または2種以上混合して用いることができる。
…(省略)…
【0086】
紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマー,オリゴマーとしては,例えば,メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート,トリシクロデカニル(メタ)アクリレート,エステルアクリレート,メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル,エポキシ(メタ)アクリレート,ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル,(メタ)アクリル酸,スチレン,酢酸ビニル,ヒドロキシエチルビニルエーテル,エチレングリコールジビニルエーテル,ペンタエリスリトールトリビニルエーテル,(メタ)アクリルアミド,N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド,N-ビニルホルムアミド,アクリロニトリル等が挙げられるが,必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0087】
<光重合開始剤>
本発明のカラーフィルタ用青色着色組成物には,該組成物を紫外線照射により硬化させ,フォトリソグラフ法によりフィルタセグメントを形成する場合は,光重合開始剤等を加えて溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調整することができる。
…(省略)…
【実施例】
【0115】
…(省略)…
【0117】
<アクリル樹脂溶液1?4の製造方法>
(アクリル樹脂溶液1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計,冷却管,窒素ガス導入管,撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み,80℃に昇温し,反応容器内を窒素置換した後,滴下管よりn-ブチルメタクリレート13.3部,2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部,メタクリル酸4.3部,パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部,2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後,更に3時間反応を継続し,重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後,樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃,20分加熱乾燥して不揮発分を測定し,先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアクリル樹脂溶液1を調製した。
…(省略)…
【0121】
<微細化顔料の製造方法>
(青色微細顔料1の作製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6(東洋インキ製造株式会社製「LIONOL BLUE ES」,比表面積60m^(2)/g)200部,塩化ナトリウム1400部,およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み,80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8リットルの温水に投入し,80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし,濾過,水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後,85℃で一昼夜乾燥し,190部の青色微細顔料1を得た。青色微細顔料1の比表面積は80m^(2)/gであった。
…(省略)…
【0128】
<造塩化合物(A)の製造方法>
(造塩化合物(A-1))
下記の手順でC.I.アシッド レッド 289とジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(コータミンD86P)(カチオン部分の分子量が550)とからなる造塩化合物(A-1)を作製した。
7?15モル%の水酸化ナトリウム溶液中に,C.I.アシッド レッド 289を溶解させ十分に混合・攪拌を行い,70?90℃に加熱した後,コータミンD86Pを少しずつ滴下していく。またコータミンD86Pは水に溶解し水溶液として用いても良い。コータミンD86Pを滴下した後,70?90℃で60分攪拌し十分に反応を行う。反応の終点確認としては濾紙に反応液を滴下して,にじみがなくなったところを終点として,造塩化合物が得られたことと判断できる。攪拌しながら室温まで放冷した後,吸引濾過を行い,水洗後,濾紙上に残った造塩化合物を乾燥機にて水分を除去して乾燥して,C.I.アシッド レッド 289とジステアリルジメチルアンモニウムクロライドとの造塩化合物,造塩化合物(A-1)を得た。
…(省略)…
【0141】
<顔料分散体の製造方法>
(顔料分散体(DP-1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて,アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後,5.0μmのフィルタで濾過し顔料分散体(DP-1)を作製した。
青色微細顔料1 (C.I.ピグメント ブルー15:6)
:11.0部
アクリル樹脂溶液1 :40.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)
:48.0部
樹脂型分散剤 (チバ・ジャパン社製「EFKA430」) : 1.0部
…(省略)…
【0144】
<造塩化合物含有樹脂溶液およびキサンテン系化合物含有樹脂溶液の製造方法>
(造塩化合物含有樹脂溶液(DA-1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,5.0μmのフィルタで濾過し造塩化合物含有樹脂溶液(DA-1)を作製した。
造塩化合物(A-1) :11.0部
アクリル樹脂溶液1 :40.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)
:49.0部
…(省略)…
【0154】
[実施例12?24,比較例3?5]
(実施例12;レジスト材(R-1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後,1.0μmのフィルタで濾過して,アルカリ現像型レジスト材(R-1)を得た。
着色剤分散体 (計60部)
造塩化合物含有樹脂溶液(DA-1) :12.0部
顔料分散体(DP-1) :48.0部
アクリル樹脂溶液1 :11.0部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(新中村化学社製「NKエステルATMPT」) : 4.2部
光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「イルガキュアー907」)
: 1.2部
増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」) : 0.4部
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート :23.2部
…(省略)…
【0158】
(レジスト材の評価)
得られたレジスト材(R-1?22)の塗膜の色度,異物,耐熱性,耐光性,耐溶剤性の各試験を下記の方法で行った。試験の結果を表5に示す。
…(省略)…
【0165】
【表5】

【0166】
実施例12?23,25?30のレジスト材(R-1?12,14?19)は,耐光性が良好な結果であった。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明2を対比すると,以下のとおりである。
ア 重合開始剤
引用発明2の「光硬化性組成物」は,「(C)成分」として,「次の光開始剤」を含む。


上記光開始剤の構造からみて,引用発明2の「光開始剤」は,本願発明の「下記式(d1)で表される化合物」において,R^(d1)が「置換基を有していてもよい炭素数1?15のアルキル基」(2,4,4-トリメチルペンチル基),R^(d2)が「炭素数1?10のアルキル基」(メチル基),R^(d3)が「置換基を有していてもよい炭素数6?18の芳香族炭化水素基」(2,4,6-トリメチルフェニル基),R^(d4)が「置換基を有していてもよい炭素数1?15の脂肪族炭化水素基」(2-エチルヘキシル基)であるものに該当する。


また,引用発明2の「光開始剤」は,その文言及び構造から理解されるとおり,重合開始剤として機能する。
したがって,引用発明2の「光開始剤」は,本願発明の「重合開始剤」に相当する。また,引用発明2の「光開始剤」は,本願発明の「重合開始剤」における,「前記重合開始剤として下記式(d1)で表される化合物を含む」という要件を満たす。

イ 重合性化合物
引用発明2の「光硬化性組成物」は,「(B)成分」として,「ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート」を含む。
ここで,「ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート」が光重合性の化合物であることは,技術常識である(引用文献1の「【0122】,【0125】,【0128】,【0130】及び【0132】の記載からも理解される事項である。)。
したがって,引用発明2の「ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート」は,本願発明の「重合性化合物」に相当する。

ウ 樹脂
引用発明2の「光硬化性組成物」は,「(A)成分」として,「25%のプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート溶液としての,ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマー(ベンジルメタクリレート:メタクリル酸=80質量%:20質量%)」を含む。
ここで,「ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマー」は,「コポリマー」であるから,樹脂に該当する。
したがって,引用発明2の「ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマー」は,本願発明の「樹脂」に相当する。

エ 着色硬化性樹脂組成物
上記ア?ウの対比結果並びに引用発明2及び本願発明の全体構成からみて,引用発明2の「光硬化性組成物」と本願発明の「着色硬化性樹脂組成物」は,「樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含有し」た「硬化性樹脂組成物」の点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明2は,次の構成で一致する。
「 樹脂,重合性化合物及び重合開始剤を含有し,
前記重合開始剤として下記式(d1)で表される化合物を含む硬化性樹脂組成物。
【化1】


(当合議体注:式の説明は省略する。)

イ 相違点
本願発明と引用発明2は,次の点で相違する。
(相違点)
「硬化性樹脂組成物」が,本願発明は,「着色剤」を含有し,「前記着色剤として染料と顔料とを含み」,「前記染料としてキサンテン染料を含み」,「前記顔料としてフタロシアニン顔料を含む着色」硬化性樹脂組成物であるのに対して,引用発明2は,「着色剤」を含有しない点。

(3) 判断
引用文献1の【0187】の記載からみて,引用発明2の「光硬化性組成物」は,染料及び顔料を添加してなるカラーフィルタ用途の光硬化性組成物としての利用を考慮に入れて製造された「感受性試験のための光硬化性組成物」と理解される。
ところで,引用文献2には,「カラーフィルタ用青色着色組成物の着色剤として,キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物(のカウンタ成分)とからなる造塩化合物(A)および青色顔料を含む着色剤を使用すること」(【0020】)が開示されている。また,引用文献2には「青色顔料」の中でも,「C.I.ピグメント ブルー 15:6を用いることが好ましいものである」(【0051】)ことが開示されている。
引用文献2に記載された着色剤は,「高い明度と広い色再現領域が可能となり,また塗膜への異物発生もなく,耐性においても優れている」(【0020】)から,カラーフィルタ用の着色剤として,引用発明2においても採用し得るものといえる。
(以下,「キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物とからなる造塩化合物(A)及びC.I.ピグメント ブルー 15:6を含む着色剤」を,「引用文献2記載技術」という。)

さらに進んで検討すると,引用文献1の【0003】及び【0213】の記載からみて,引用発明2の「光開始剤」は,顔料の含有量が多い(20質量%から45質量%)場合の光開始剤として,特に好適なものと理解される。
これに対して,引用文献2には,「キサンテン系酸性染料としてC.I.アシッド レッド289,青色顔料としてC.I.ピグメント ブルー 15:6を用い,青色顔料の含有率が固形分の総量に対して27%程度と計算される実施例12のレジスト材(R-1)」が開示されている(【0154】(実施例12),【0144】(DA-1),【0128】(A-1),【0141】(DP-1)及び【0117】(アクリル樹脂溶液1))。
(当合議体注:実施例12のレジスト材(R-1)中の固形分は19.88部と計算され,これに含まれる青色顔料は5.28部と計算されるので,青色顔料の含有率は固形分の総量に対して27%程度と計算される。)

以上勘案すると,カラーフィルタ用として優れた「光開始剤」を含む引用発明2と,カラーフィルタ用として優れた「着色剤」である引用文献2記載技術とを組み合わせて,本願発明の「着色硬化性樹脂組成物」の構成に到ることは,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 発明の効果について
本願発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0006】には,「本発明の着色硬化性樹脂組成物によれば,パターン形状に優れたカラーフィルタを形成することができる。」と記載されている。
しかしながら,このような効果は,引用発明2の「感受性試験のための光硬化性組成物」の感受性試験の結果(【0414】及び【0415】)から予測可能な範囲内のものである。

(5) 請求人の主張について
請求人は,平成31年3月7日付け意見書及び審判請求書において,重合開始剤として本件出願の明細書の【0274】に開示された「式(d1-40)」を用いた場合(実施例A)と,重合開始剤として引用文献2の実施例(【0154】)に記載されたもの(イルガキュアー 907)を用いた場合(比較例B)を比較して,実施例Aの方が優れた結果が得られたと主張している。
しかしながら,請求人が行った実験は,引用文献2の実施例から光重合開始剤のみを採り上げて,これを実施例Aにおいて,実施例Aの重合開始剤と同じ分量で替えてみた結果を示すにとどまる。
(当合議体注:優れた結果が得られた実施例Aにおいて,光重合開始剤のみを異質なものに替えてみて,優れた結果が得られないというのは,むしろ自然なことと考えられる。)

あるいは,請求人が行った実験は,引用発明2の光開始剤が優れたものであることを確認したものとも理解される。少なくとも,前記(3)で述べたとおり引用発明2と引用文献2記載技術を組み合わせた当業者においても,確認される効果と認められる。

なお,実施例Aは,本件出願の明細書に開示された実施例(1?7)のいずれとも異なるものである。また,本件出願の明細書には,請求人が行った実験(昇華性評価)は記載されていない。さらに,実施例Aは,ある特定の,重合開始剤,着色剤,アクリル系顔料分散剤,樹脂,重合性化合物,溶剤,レベリング材の組み合わせのものであり,本願発明に含まれる範囲の「着色硬化性樹脂組成物」の効果を裏付けるものともいえない。

したがって,請求人の主張は採用できない。

(6) 引用発明24
引用発明2に替えて,引用発明24に基づいて検討しても,同様である。

第3 まとめ
本願発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-07 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-28 
出願番号 特願2016-63347(P2016-63347)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚田 剛士  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
井口 猶二
発明の名称 着色硬化性樹脂組成物  
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所  

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