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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1367307
審判番号 不服2019-15369  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-18 
確定日 2020-10-15 
事件の表示 特願2016-551330「筐体、蛍光体ホイール装置、投影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月22日国際公開、WO2016/147226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月24日(優先日:平成27年3月19日)の出願であって、平成31年2月14日付けの拒絶理由の通知に対し、平成31年4月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和元年8月7日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和元年11月18日に審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 令和元年11月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月18日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和元年11月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1が、
「 【請求項1】
筐体と受光した光を他の波長の光に変換して出力する蛍光体ホイールとを有する蛍光体ホイール装置であって、
前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に、当該壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部を有し、
前記波形構造部の形状は、前記回転軸心と平行な方向から見たときの形状が波形形状である、
蛍光体ホイール装置。」から、

「 【請求項1】
筐体と受光した光を他の波長の光に変換して出力する平板状の蛍光体ホイールとを有する蛍光体ホイール装置であって、
前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に、当該壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部を有し、
前記波形構造部の形状は、前記回転軸心と平行な方向から見たときの断面形状が波形形状である、
蛍光体ホイール装置。」に補正された。(下線は、補正箇所を示す。)

そして、本件補正は、本件補正前の「蛍光体ホイール」を、「平板状の蛍光体ホイール」に限定する補正を含むものであり、かつ本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。


2 本件補正後の本願発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その請求項1に記載されたとおりのものと認める。


3 引用刊行物に記載された発明

(1)引用刊行物1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成26年5月19日に頒布された刊行物である特開2014-92599号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「光変換装置及び光変換装置を備えた投写表示装置」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0006】本開示における光変換装置は、蛍光体層が形成され、モータによって回転駆動される蛍光体ホイールが取り付けられた蛍光体ホイール装置と、前記蛍光体層の蛍光体発光部に風を送風する送風機と、前記蛍光体ホイール装置及び送風機を収容するとともに前記送風機の風が一方向に流れるように形成された循環経路を有し、密閉空間を構成する蛍光体ホイールケースと、前記循環経路上に配置され蛍光体ホイールケース内外との熱の授受を行う熱交換器と、前記蛍光体ホイールケースに開設された開口を施蓋する如く配置され、蛍光体を励起させる励起光を通し、かつ蛍光体で発した発光光を集光する光学レンズを備えていることを特徴とする。」

<記載事項2>
「【0011】図1は本開示の光変換装置に使用できる投写表示装置700の構成を示す図である。図1において、1は複数個の青色レーザダイオード2と、これら青色レーザダイオード2の青色光を平行化してなるコリメータレンズ3と、コリメータレンズ3から出力される青色光を集光する集光レンズ4から構成される励起光源である。
【0012】5は集光レンズ4から出射される青色光が入射され、平行光に変換するレンズである。レンズ5から出射された青色光は青色光を透過し緑色光を反射するダイクロイックミラー6を通過し、一対の凸レンズからなる集光/平行化レンズ7に入射する。
【0013】集光/平行化レンズ7に入射された青色光は、図2にその詳細を示す蛍光体ホイール装置8の蛍光体ホイール81に環状に塗布され蛍光体層として形成された緑色蛍光体82に図3に示されるように集光され、緑色蛍光体82を励起する。蛍光体ホイール装置8はモータ83によって蛍光体ホイール81を回転駆動するようになっている。これによって蛍光体はそこに集光される青色の励起光による焼付が防止される。尚、図2(b)は図2(a)の平面図においてA-A’線で緑色蛍光体82を断面した側面図である。
【0014】励起光によって励起され蛍光体ホイール81の緑色蛍光体82から発光される緑色光は、集光/平行化レンズ7に入射し平行化されてダイクロイックミラー6に出射される。ダイクロイックミラー6は、集光/平行化レンズ7からの緑色光を反射し、緑色を透過し赤色を反射するダイクロイックミラー9に緑色光を出射する。」

<記載事項3>
「【0021】上記のように励起光源1からの励起光は蛍光ホイール81上の緑色蛍光体82を励起し、蛍光発光を発生させるが、全てが蛍光発光に変換されるのではなく、一部が熱に変わり緑色蛍光体82の温度を上昇させてしまう。緑色蛍光体82は温度が上昇すると光変換効率が低下したり、緑色蛍光体82を蛍光体ホイール81上に形成するためのバインダが熱変色等を起こしたりてしまうため蛍光体ホイール81をモータ83に取り付け回転させることで温度上昇を抑えている。
【0022】しかしながら、投写表示装置の高輝度化とともに、励起光の光も強くなり、蛍光体を回転させるだけでは冷却性能が不足してきており、冷却風により蛍光体を冷却する必要がある。
【0023】このため、本実施の形態では、図4及び図5に示すような構成によって蛍光体の冷却を行っている。図4において、26は扁平直方体状をなした金属製の蛍光体ホイールケースであって、密閉空間を形成する。図5は図4の蛍光体ホイールケース26の一側面261を除去して内部構造を示す図である。
【0024】蛍光体ホイールケース26の一端面には複数金属性の放熱フィン構造が形成されてなる熱交換器27が設けられる。28は蛍光体ホイールケース26内部の空気を循環するための送風機(シロッコファン)であって、吸入口281から吸い込まれた空気は排気口282から送出される。蛍光体ホイールケース26の内部には、内部の空気を循環させる循環経路Cを形成する隔壁29が蛍光体ホイールケース26に一体的に形成される。」

<記載事項4>
「【0028】緑色蛍光体が励起されると、蛍光体で蛍光光が発光するとともに熱が発生する。上述したように送風機28からの風は蛍光体ホイール81の蛍光体の発光部を含む蛍光体に当たり、蛍光体の熱を奪い、蛍光体の熱で温められた風は熱交換器27に当たる。温められた風は熱交換器27で熱が奪われ隔壁の「一」の字部分292の上側を通って送風機28の吸気口281に戻る。
【0029】このように、送風機28の風は一方向に流れ、図5の矢印で示す循環経路Cで循環することにより、励起された蛍光体の熱によって温められた風は、循環経路上に配置された熱交換器27によって、蛍光体ホイールケース26内外との熱の授受が行われることになる。従って、熱交換器27で熱が奪われ、冷却された風は送風機28に戻り、再度蛍光体を冷却するために利用される。
【0030】このように本実施の形態によれば、蛍光体ホイール81上の緑色蛍光体82は送風機28で直接冷却されるため、光変換効率の向上が図れ、蛍光光の明るさを増すことが可能となる。また、蛍光体を塗布するために使用させるバインダ等の信頼性も確保できる。さらに、蛍光体ホイールケース26により密閉された空間内での風の循環であるので、埃の焼き付き等に光出力低減を引き起こすことはない。」

【図2】


【図5】


上記図2及び【0013】の記載から、「蛍光体ホイール81は平板状であること」、及び、「当該蛍光体ホイール81が、回転軸心を中心としてモータ83により回転駆動されること」が、読み取れる。

上記図5から、「熱交換器27が設けられている蛍光体ホイールケース26の一端面が、蛍光体ホイール81の回転軸心に平行であること」が、見て取れる。

また、上記図5及び【0029】から、「送風機28の風は、蛍光体ホイール81の回転軸心を中心とした右回りの循環経路Cで、蛍光体ホイールケース26内を循環していること」が、読み取れる。

よって、上記記載事項1乃至4及び上記図2、5の記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「蛍光体ホイールケース26と、励起光である青色光により励起されて緑色光を発光する蛍光体層が形成された平板状の蛍光体ホイール81とを備えた光変換装置であって(【0006】、【0013】、【0014】、【図2】)、
前記蛍光体ホイールケース26は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイール81が取り付けられた蛍光体ホイール装置8及び送風機28を収容し(【0006】、【図2】)、蛍光体ホイール81の回転軸心に平行である蛍光体ホイールケース26の一端面に、放熱フィン構造が形成されてなる熱交換器27が設けられ(【0024】、【図5】)、
前記送風機28の風は、前記蛍光体ホイール81の回転軸心を中心とした右回りの循環経路Cで、蛍光体ホイールケース26内を循環し、前記循環経路C上に前記熱交換器27が配置されている(【0029】、【図5】)
光変換装置。」

(2)引用刊行物2について
同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成11年10月8日に頒布された刊行物である特開平11-271880号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「プロジェクタ装置」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項5>
「【0019】次に、本発明のプロジェクタ装置100における光学部品の冷却方法について説明する。図3において、ファン10の駆動により生じた気流は、矢印で示すように上昇し、光源2の照明で熱せられた各液晶ライトバルブ6a,6b,6c、偏光板30a,30b,30cなどの光学部品から熱を奪い、これらを冷却した後、ダクト部33へと進む。熱を持つ気流は、ダクト部33を形成する金属などの熱伝導率の高い材料でできた上カバー22a、下カバー22bと接しているので、カバー全体が放熱板となり、冷却される。冷却された気流は、再度ファン10によって上昇させられ、光学系70の各光学部品の冷却に供される。この気流循環を利用して光学部品の冷却を続行する。
【0020】ケース内の密閉空間を減らし、より少ない気流で光学系70の光学部品やライトバルブを冷却したい場合には、放熱効果を高めるため、図4に示すように上カバー22a、下カバー22bの外部を波形にして、波形形成部分120を設けて表面積を多くするか、図5に示すように上カバー22a、下カバー22bの外部の部品と干渉しない位置に放熱フィン36を装着すればよい。また、更に放熱効果をより高めたい場合には、図6と図7に示すように、密閉ケース4内に外気の通る冷却パイプ37を1本若しくは複数本設ける。このときに、図8のように冷却パイプ37の外周にフィン38をつけると更に放熱効果を高めることができる。上述した本発明の実施の形態では、密閉型のケース4の材料として、熱伝導性の優れた鉄、アルミニュウム、ステンレス、銅のような金属材料で作られている。そして、このケース4の外形には、波形形成部分120を設けてケース4の表面積を大きくするのが好ましい。そして、ケース4の内外の内側或いは外側の少なくとも一方(図5では外側であるが)に設けることにより、更にケース4の放熱能力を高めることができる。」

【図4】


【図5】


上記図4、【0019】及び【0020】から、「ファン10の駆動により生じた気流は、ダクト部33内を右回りに循環していること」、及び、「前記ダクト部33を形成する上カバー22a、下カバー22bに設けられた波形形成部分120は、前記気流の流れる方向と直交する方向からみて、断面形状が波形形状であること」が、読み取れる。

よって、上記記載事項5、上記図4及び図5の記載からみて、引用刊行物2には、以下の技術が記載されているものと認められる。

「ファン10の駆動により生じ、光学部品から熱を奪った気流がダクト部33内を循環し、金属などの熱伝導率の高い材料でできた上カバー22a、下カバー22bと接して、カバー全体が放熱板として当該気流を冷却する際(【0019】、【図4】)、放熱効果を高めるために、前記ダクト部33を形成する上カバー22a、下カバー22bに、前記気流の流れる方向と直交する方向からみて、断面形状が波形形状となる波形形成部分120を設けて表面積を多くするか、上カバー22a、下カバー22bの外部の部品と干渉しない位置に放熱フィン36を装着する技術(【0020】、【図4】、【図5】)。」


4 対比

本願補正発明と引用発明1を対比する。

引用発明1の「蛍光体ホイールケース26」、「励起光である青色光により励起されて緑色光を発光する蛍光体層が形成された平板状の蛍光体ホイール81」及び「光変換装置」は、それぞれ本願補正発明の「筐体」、「受光した光を他の波長の光に変換して出力する平板状の蛍光体ホイール」、「蛍光体ホイール装置」に相当する。
よって、引用発明1の「蛍光体ホイールケース26と、励起光である青色光により励起されて緑色光を発光する蛍光体層が形成された平板状の蛍光体ホイール81とを備えた光変換装置」は、本願補正発明の「筐体と受光した光を他の波長の光に変換して出力する平板状の蛍光体ホイールとを有する蛍光体ホイール装置」に相当する。

引用発明1の「回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイール81が取り付けられた蛍光体ホイール装置8及び送風機28を収容し」及び「蛍光体ホイール81の回転軸心に平行である蛍光体ホイールケース26の一端面」は、それぞれ本願補正発明の「回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し」及び「回転軸心に平行である壁部」に相当する。
また、本願明細書の段落【0031】には、波形構造部を設けることで壁部の内面の面積が増加し、筐体の内部と外部との熱交換が促進され、蛍光体ホイールから発生する熱を外部に良好に放熱する旨記載されており、「波形構造部」が「放熱部材」として機能していることが認められることから、引用発明1の「放熱フィン構造が形成されてなる熱交換器27」と本願補正発明の「壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部」は、「放熱部材」という点で共通する。
よって、引用発明1の「前記蛍光体ホイールケース26は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイール81が取り付けられた蛍光体ホイール装置8及び送風機28を収容し、蛍光体ホイール81の回転軸心に平行である蛍光体ホイールケース26の一端面に、放熱フィン構造が形成されてなる熱交換器27が設けられ」と、本願補正発明の「前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に、当該壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部を有し、」は、「前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に形成された放熱部材を有する」という点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明1の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
筐体と受光した光を他の波長の光に変換して出力する平板状の蛍光体ホイールとを有する蛍光体ホイール装置であって、
前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に形成された放熱部材を有する
蛍光体ホイール装置、である点。

<相違点>
回転軸心に平行である壁部に形成された放熱部材が、本願補正発明では、「壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部」であり、「前記波形構造部の形状は、前記回転軸心と平行な方向から見たときの断面形状が波形形状である」のに対して、引用発明1では、蛍光体ホイールケース26の一端面に形成された放熱フィン構造である点。


5 当審の判断
上記相違点について、検討する。

引用刊行物2には、上記したとおり、上カバー22a、下カバー22bの放熱効果を高めるため、放熱対象となる気流の流れる方向と直交する方向からみて、断面形状が波形形状となる波形形成部分120を設けて表面積を多くするか、上カバー22a、下カバー22bの外部の部品と干渉しない位置に放熱フィン36を装着することについて記載されており、波形形成部分を設けて表面積を多くすることと放熱フィンを設けることは、放熱効果を高める構成として、代替的なものであると認められる。
そうしてみると、引用発明1において、蛍光体ホイールケース26の一端面に形成された放熱フィン構造を、放熱フィン構造の代替手段として引用刊行物2に示されている上記波形形成部分120とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、引用発明1では、送風機28の風が蛍光体ホイール81の回転軸心を中心とした循環経路Cで、蛍光体ホイールケース26内を循環していることから、引用刊行物2に記載された、放熱対象となる気流の流れる方向と直交する方向からみて、断面形状が波形形状となる波形形成部分120を適用した場合は、「波形構造部の形状は、前記回転軸心と平行な方向から見たときの断面形状が波形形状である」構成となることは明らかである。

したがって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明によって奏される効果は、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


6 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年4月25日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
筐体と受光した光を他の波長の光に変換して出力する蛍光体ホイールとを有する蛍光体ホイール装置であって、
前記筐体は、回転軸心を中心として回転する前記蛍光体ホイールを収容し、回転軸心に平行である壁部に、当該壁部を歪曲させることにより形成された波形構造部を有し、
前記波形構造部の形状は、前記回転軸心と平行な方向から見たときの形状が波形形状である、
蛍光体ホイール装置。」


第4 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1-7に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2014-92599号公報(上記引用刊行物1と同じ。)
引用文献2.特開平11-271880号公報(上記引用刊行物2と同じ。)


第5 引用文献に記載された発明
引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術は、前記「第2」の「3 引用刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。


第6 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の「5 当審の判断」で検討した本願補正発明の「平板状の蛍光体ホイール」について、「平板状の」という限定を省くとともに、本件補正発明の「回転軸心と平行な方向から見たときの断面形状」を、実質的に同じものを意味すると認められる「回転軸心と平行な方向から見たときの形状」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「5 当審の判断」において記載したとおり、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
審理終結日 2020-08-06 
結審通知日 2020-08-18 
審決日 2020-08-31 
出願番号 特願2016-551330(P2016-551330)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 千絵小野 博之小野 健二  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 岡田 吉美
濱本 禎広
発明の名称 筐体、蛍光体ホイール装置、投影装置  
代理人 鎌田 健司  
代理人 野村 幸一  

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