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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1367311
審判番号 不服2019-16370  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-04 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2017-210471「表示器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019- 82593、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月31日にされた特許出願であるところ、令和元年7月18日付けで明細書、特許請求の範囲及び図面についての補正がされ、同年9月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。送達日:同年10月1日)がされ、同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲について補正(以下「本件補正」という。)がされた。

第2 本願発明
本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、令和元年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1?8には以下のとおり記載されている。

「【請求項1】
表示器であって、
前記表示器内において、前記表示器の前面に配置される表示画面よりも前記表示器の背面側に収納され、前記表示器内の各部を制御する制御基板と、
前記制御基板に設けられ、前記表示器を制御し、前記表示器の背面に着脱可能に取り付けられる制御装置を前記制御基板に接続するための第1接続部と、
前記制御基板に設けられ、外部装置と接続するためのユーザ・インターフェース・ユニットを前記制御基板に接続するための第2接続部と、
を備える、表示器。
【請求項2】
請求項1に記載の表示器であって、
前記ユーザ・インターフェース・ユニットは、インターフェース用基板と、前記インターフェース用基板に設けられ、前記外部装置に接続されるインターフェース接続部と、前記インターフェース用基板に設けられ、前記第2接続部に接続される第3接続部とを有する、表示器。
【請求項3】
請求項2に記載の表示器であって、
前記インターフェース接続部は、前記表示器の前面または側面からオペレータがアクセスできるように、前記表示器の前面または側面に形成された開口部に設けられる、表示器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の表示器であって、
前記インターフェース接続部は、USBコネクタ、または、メモリカードコネクタである、表示器。
【請求項5】
請求項2?4のいずれか1項に記載の表示器であって、
前記制御基板に対して前記インターフェース用基板が垂直に接続されるように、前記第2接続部および前記第3接続部が設けられている、表示器。
【請求項6】
請求項2?5のいずれか1項に記載の表示器であって、
前記第2接続部および前記第3接続部は、垂直接続コネクタである、表示器。
【請求項7】
請求項2?6のいずれか1項に記載の表示器であって、
前記ユーザ・インターフェース・ユニットは、前記インターフェース用基板、前記インターフェース接続部および前記第3接続部を収容し、前記表示器側に開口するケースをさらに有し、
前記表示器は、前記第2接続部を介して、前記ユーザ・インターフェース・ユニットと前記制御基板とを接続した際に、前記ケースと前記制御基板との間をシールするシール部材を有する、表示器。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の表示器であって、
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記表示器の背面側に設けられている、表示器。」

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-6、8に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、請求項7に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-167653号公報
引用文献2:特開2010-198549号公報
引用文献3:特開2015-088808号公報
引用文献4:特開2017-129433号公報

なお、引用文献3及び4は、周知技術を示す文献として引用されている。

第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1には、次の記載がある。(下線は当合議体が付した。下記の2?4についても同様である。)

「【0013】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、実施例の波形観測装置1の正面図である。波形観測装置1は、表示部2の下方に、下ヒンジ上開きの防水蓋3を有し、スライドロック4を解放して、下ヒンジ5を中心に防水蓋3を開放することができる。図2は防水蓋3を開いた状態を示す。この図2から分かるように、防水蓋3を開くことにより、メイン電源スイッチ6、スタート/ストップスイッチボタン7、設定メニューボタン8、ユーザ設定キーボタン9、タッチパネル機能ロックスイッチボタン10、USBコネクタ11を露出させることができる。
【0014】
スタート/ストップスイッチボタン7は、ユーザが操作することにより、計測データの収集を開始又は停止することができる。設定メニューボタン8は、ユーザが操作することにより設定メニューを表示させて、設定メニューから所定の設定項目を表示させることができる。ユーザ設定キーボタン9は、ユーザが任意に割り付けることができ、これを操作することによりユーザが割り付けた機能を実行させることができる。タッチパネル機能ロックスイッチボタン10は、後に説明するように、実施例の波形観測装置1は、タッチパネル(図3の符号222)を有しており、このタッチパネル222の機能を停止して、タッチパネル222による入力を無効にすることができる。
【0015】
図3は波形観測装置1の分解斜視図であり、図4は、そのブロック図である。波形観測装置1は、本体20と、この本体20の前面に脱着可能なフロントユニット22とを有する。フロントユニット22は、化粧パネル220、前面フレーム221、タッチパネル222、バックライト223(図4)を備えた液晶ディスプレー224とで構成され、タッチパネル222及びバックライト付きの液晶ディスプレー224によって上記表示部2が構成され、表示部2には図示のように波形チャートが表示される。液晶ディスプレー224は薄型ディスプレーの一例に過ぎないことは言うまでもない。
【0016】
化粧パネル220には防水及び保護シートが張設されており、この防水及び保護シートを化粧パネル220に張設することにより、防水及び保護シートの端末を化粧パネル220で隠すことができるので、波形観測装置1の見栄えを良くすることができる。
【0017】
装置本体20は、その前面に位置し且つ起立した状態の中継基板201と、中継基板201の上端にコネクタ連結されて水平方向に延びるメイン基板202とを有する。中継基板201は、制御手段であるCPU29を搭載したメイン基板202にデジタル化した計測信号を供給するものであり、10個の計測ユニット用コネクタ203と、合計4個の警報ユニット又はIOユニットのためのコネクタ204が配設されている。中継基板201及びメイン基板202は、後に詳述するように本体フレーム205の内部に収容される。
【0018】
第1の本体内基板を構成する中継基板201には、また、前述したメイン電源スイッチ6及びUSBコネクタ11が取り付けられており、メイン電源スイッチ6及びUSBコネクタ11は、中継基板201を介して、第2の本体内基板を構成するメイン基板202に接続されている(図4)。すなわち、フロントユニット22を装置本体20から取り外したときに、このフロントユニット22の取り外しとは無関係にメイン電源スイッチ6及びUSBコネクタ11を装置本体20に残すことができる構造が採用されている。これにより、例えばバックライト223の交換のためにフロントユニット22を本体20から取り外すときに、メイン電源スイッチ6のON状態を維持することが可能であり、これにより波形観測装置1の計測データの収集を継続しながら、フロントユニット22に組み込まれている要素、典型的にはバックライト223や液晶ディスプレー224の交換作業を行うことができる。換言すると、フロントユニット22には、表示機能と入力機能(タッチパネル222)の2つの機能に限定した要素が組み込まれており、これによりフロントユニット22を本体20から外したとしても波形観測装置1の計測データの収集機能を継続することができる。
【0019】
図3を参照して、前面及び後面を開放した矩形断面のボックス状の本体フレーム205は、後に詳しく説明するように、外皮としての金属製の外側フレーム206と、主体をなす内側のプラスチックフレーム207とで構成されており、これにより本体フレーム205が軽量化されている。プラスチックフレーム207には、計測ユニット23と、警報又はIOユニット24とを収容する左右2列の多段の棚が形成されている(図5)。図示の左右2列の構成は単なる一例に過ぎず、左右3列であってもよいし、一列であってもよいことは言うまでもない。
【0020】
実施例に含まれる本体フレーム205においては、上2段を除く棚に収容される計測ユニット23、上の2段の棚に収容される警報又はIOユニット24は、プラスチックフレーム207の棚に後方から挿入することでコネクタ接続することができる。すなわち、起立した状態でプラスチックフレーム207の前方に位置する中継基板201には、上記プラスチックフレーム207の各棚に関連した位置にコネクタ203、204が配設されており、計測ユニット23、警報又はIOユニット24は、プラスチックフレーム207の各棚に挿入することで中継基板201にコネクタ接続することができる。
【0021】
計測ユニット23と、警報又はIOユニット24とには、夫々、その背面に端子台25が配設され(図4)、計測ユニット23の端子台25には熱電対、測温抵抗体、流量計、圧力センサなどの各種センサ27からの配線が接続される。そして、計測ユニット23のユニット内マイコン28は、センサ27から信号を受け取ると中継基板201を介してメイン基板202のCPU29と交信し、センサ27から受け取った計測データをメイン基板202に送信する。
【0022】
すなわち、計測ユニット23において各種センサ27からの計測信号がデジタル信号に変換され、そして、このデジタル信号は、中継基板201を経由してメイン基板202に供給される。メイン基板202のCPU29は、波形計測装置1の全体を制御するものであり、メイン基板202のCPU29は、所定のプログラムに従って信号処理して、計測データを所定の周期で本体メモリ30に記憶させると共に表示部2の描画を制御するための画像信号を生成する。メイン基板202と表示部2とは中継基板201を介して接続されている。オペレータがタッチパネル222にタッチすると、これに対応したタッチ位置信号又は座標信号がタッチパネル222からメイン基板202のCPU29に供給され、CPU29は、タッチ位置の意味するキーが意味する機能を実現する、又は、座標信号に基づいて表示部2に表示している波形のスクロールを実行する信号を生成する。
【0023】
波形観測装置1は、工場内の制御盤32(図4)に設置され、工場内LAN33を介してパーソナルコンピュータ34に接続可能であり、パーソナルコンピュータ34は、波形観測装置1に表示されている波形と同じ波形を表示することができる。また、波形観測装置1の本体メモリ30に格納されているデータは、USBコネクタ11にリムーバブル記録媒体であるUSBメモリ35を差し込むことで、そのコピーを取り出すことができる。」

「【図3】



「【図14】



(2)前記(1)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「波形観測装置1の部分構成であって、
化粧パネル220、前面フレーム221、タッチパネル222、バックライト223を備えた液晶ディスプレー224を有し、タッチパネル222及びバックライト付きの液晶ディスプレー224によって上記表示部2が構成され(段落【0015】)、
中継基板201と、中継基板201の上端にコネクタ連結されて水平方向に延びるメイン基板202と、中継基盤201およびメイン基板202を内部に収容する本体フレーム205を有し(段落【0017】、【図3】)、
メイン基板202のCPU29は、波形計測装置1の全体を制御するものであり、メイン基板202のCPU29は、所定のプログラムに従って信号処理して、計測データを所定の周期で本体メモリ30に記憶させると共に表示部2の描画を制御するための画像信号を生成し(【0022】)、
メイン基板202と表示部2とは中継基板201を介して接続されており、オペレータがタッチパネル222にタッチすると、これに対応したタッチ位置信号又は座標信号がタッチパネル222からメイン基板202のCPU29に供給され、CPU29は、タッチ位置の意味するキーが意味する機能を実現、又は、座標信号に基づいて表示部2に表示している波形のスクロールを実行する信号を生成する(【0022】)、
波形観測装置1の部分構成。」(以下「引用発明」という。)

2 引用文献2
(1)引用文献2には、次の記載がある。

「【0028】
コネクタ14aは、サブユニットボード12のコネクタ12hと接続され、コネクタ14bは、サブユニットボード12のコネクタ12iと接続される。メインボード10からのコピー元のデータはサブユニットボード12のシリアルパラレル変換回路(S/P)12e、12fでシリアルデータに変換され、コネクタ12hとコネクタ14a、及びコネクタ12iとコネクタ14bを介してスロットボード14の各スロット14cに供給される。コピー元のデータは、コネクタ12h、12i、14a、14bを介して各スロット14cに対して並行して供給される。
【0029】
スロット14cは、記録媒体の種類に応じた形状のスロットであり、例えばUSBメモリやSDメモリ等の記録媒体が装着される。スロット14cの数は任意であるが、例えば10個とすることができる。」

「【0037】
図6に、デュプリケータ1の筐体内部でのメインボード10、サブユニットボード12、及びスロットボード14の装着状態における斜視図を示す。また、図7に、メインボード10、サブユニットボード12、及びスロットボード14の装着状態における平面図を示す。
【0038】
メインボード10は、既述したように筐体内において長手方向が横方向となるように立設配置される。コネクタ10dは、メインボード10の基板面から正面方向に向けて突出する。サブユニットボード12は、立設したメインボード10に対し、メインボード10の基板面に対してほぼ垂直となるようにコネクタ10d、12gを介して装着される。また、スロットボード14は、サブユニットボード12に対してほぼ同一平面となるようにコネクタ12h、12i、14a、14bを介して装着される。コネクタ12hとコネクタ14a、コネクタ12iとコネクタ14bが互いに接続されるため、コネクタ12hとコネクタ12iとの間隔は、コネクタ14aとコネクタ14bとの間隔に等しくなるように設定される。」

「【図6】



(2)前記(1)の記載をまとめると、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「USBメモリ等の記録媒体が装着されるスロットボード14がサブユニットボード12に装着され、サブユニットボード12はメインボード10から突出したコネクタ10dを介してメインボード10に装着される。」

3 引用文献3
引用文献3には、次の記載がある。
「【0012】
以下、本発明をスマートフォンに適用した実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の電子機器10は、前面のほぼ全体がタッチパネル式のディスプレイ20で覆われたスマートフォンを例示しているが、この構成のスマートフォンに限定されるものではないことは勿論である。また、本発明の防水コネクタ構造を採用可能な電子機器10として、スマートフォン以外に、携帯電話機、PDA(PersonalDigitalAssistant)、タブレット型端末、携帯型音楽プレーヤ、携帯型ゲーム機などを挙げることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10の正面図である。図1に示すように、電子機器10は、前面にタッチパネル式のディスプレイ20が取り付けられている。ディスプレイ20は、図1中、四角枠で囲まれた部分が表示面22となっており、表示面22の枠外下方にメニューボタン24、ホームボタン25及び戻るボタン26が設けられている。表示面22及びボタン24,25,26は何れもタッチパネル式であり、ボタン24,25,26は、後述する図15及び図16に示すとおりLED42,62,74により点灯可能となっている。なお、本明細書では、説明を簡略化するために、電子機器10の長手方向を上下方向とする。
【0014】
ディスプレイ20は、第1筐体30に装着される。より詳細には、第1筐体30は、略矩形のリブ31が周面に形成されており、このリブ31内にディスプレイ20が前面側から嵌め込まれている。
【0015】
図2は、第1筐体30の背面図である。図2に示すように、第1筐体30は、金属製のプレート33を樹脂でインサート成形し、外周にリブ31を設けると共に、種々の電子部品を装着できるようにしている。たとえば、符号34,35,36(符号35は、図16参照)は、ディスプレイ20のメニューボタン24、ホームボタン25及び戻るボタン26と対向する位置に形成された貫通孔であり、後述するとおり、これらボタンを点灯させるLEDが配置される。
【0016】
第1筐体30には、図3乃至図5に示すように、下側略中央にリブ31よりも凹んだ立壁32が形成されており、立壁32には、防水コネクタ50の先端が挿入される取付孔38が貫通開設されている。防水コネクタ50は、第1筐体30の内側から取付孔38に挿入される。取付孔38は、外側となる下面側の開口が防水コネクタ50の先端形状と略一致しており、内側は、防水コネクタ50の先端に装着される防水用シール部材54を圧縮状態で挿入できるように、防水コネクタ50の先端よりも僅かに大きく形成されている。
【0017】
取付孔38に装着される防水コネクタ50は、本実施形態では、ミニUSB(ユニバーサルシリアルバス)端子としている。防水コネクタ50は、ミニUSB端子に限定されるものではなく、たとえば、USB端子、ミニHDMI(登録商標:高精度マルチメディアインターフェイス)端子、HDMI端子等であってもよい。
【0018】
防水コネクタ50は、図6乃至図9に示すように、電子機器10のメイン基板70(図14参照)に接続されるフレキシブルプリント基板60に実装されている。防水コネクタ50は、先端が筒状に形成されており、内部にコネクタ端子51が配置されると共に、外周が樹脂で覆われている。防水コネクタ50は、コネクタ端子51が接着剤等により水密に加工されており、防水化が図られている。
【0019】
樹脂で覆われた防水コネクタ50の先端周面には、防水用シール部材54が嵌められている。防水用シール部材54は、シリコーンゴムなどのゴム、樹脂等から作製することができる。図示の防水用シール部材54は、2条の突起列55が形成されている。
【0020】
防水コネクタ50は、基端側にコネクタ端子51から延びる複数の電気接点52が露出しており、これら電気接点52は、フレキシブルプリント基板60と電気的に接続される。」

4 引用文献4
引用文献4には、次の記載がある。
「【0014】
HUD装置Hは、表示ユニット1と、平面鏡2と、凹面鏡3と、回路基板4と、をケース5に収容している。
【0015】
表示ユニット1は、光源となるLEDが実装された光源基板と、LEDから発せられた光を略平行光にするレンズと、レンズから発せられた略平行光に照らされる薄膜トランジスタ型の液晶パネルと、を有する。表示ユニット1は、表示光Lを平面鏡2に向けて出射する。
【0016】
平面鏡2は、平面板状の樹脂基板と、樹脂基板の平面に形成された反射層と、から構成される。樹脂基板は、ポリカーボネートなどの樹脂から形成されている。反射層は、アルミニウム等の金属を樹脂基板の平面に蒸着させることで形成されている。平面鏡2は、表示ユニット1から出射された表示光Lを凹面鏡3に向けて反射する。
【0017】
凹面鏡3は、凹面を有する樹脂基板と、樹脂基板の凹面に形成された反射層と、から構成される。樹脂基板は、ポリカーボネートなどの樹脂から形成されている。反射層は、アルミニウム等の金属を蒸着させることで形成されている。凹面鏡3は、平面鏡2が反射した表示光Lを車両の風防ガラスに向けて反射する。
【0018】
回路基板4は、HUD装置Hの全体を統括して制御する制御基板である。回路基板4には、挿入口40aを有するメスコネクタ40が実装されている。
【0019】
メスコネクタ40の挿入口40aには、車両情報を伝送する信号線と車両のバッテリ電源を供給する電源線を有するハーネス6と電気的に接続するオスコネクタ60が挿入されて、車両情報が回路基板4に入力される。また、挿入口40aには、係合穴40bが開けられており、挿入口40aにオスコネクタ60が挿入されると、オスコネクタ60の係合片60aとメスコネクタ40の係合穴40bが係合する。回路基板4は、ハーネス6から入力された車両情報を表示ユニット1に表示光Lとして出射させる。
【0020】
ケース5は、第1ケース50と、カバー51と、第2ケース52と、第3ケース53と、から構成され、第1収容部54と、第2収容部55と、第3収容部56と、を有する計器箱である。
【0021】
第1収容部54には、平面鏡2と凹面鏡3が収容されている。第2収容部55には、表示ユニット1が収容されている。第3収容部56には、回路基板4が収容されている。
【0022】
第1ケース50は、ポリプロピレン等の樹脂製のケースである。第1ケース50には、表示ユニット1が出射した表示光Lを第1収容部54に取り入れる入射口50aと、凹面鏡3が反射した表示光Lをケース5外に出射する出射口50bと、が形成されている。
【0023】
カバー51は、アクリル樹脂などの透光性樹脂をフィルム状にしたカバーである。カバー51は、出射口50bを覆って出射口50bから塵埃や水分などが第1収容部54に侵入することを防ぐ。
【0024】
第2ケース52は、アルミニウム等の金属で外側にフィン形状が形成されたケースである。第2ケース52は、第1ケース50と係合して第2収容部55に収容された表示ユニット1を覆うと共に、表示ユニット1の光源基板が発した熱を放熱する放熱器としての機能も有する。
【0025】
第3ケース53は、ポリプロピレン等の樹脂で形成されたケースである。第3ケース53は、第1ケース50と係合して第3収容部56に収容された回路基板4を覆う。また、第3ケース53と第1ケース50とが係合する箇所の回路基板4のメスコネクタ40に対応する部分には、開口部Opが設けられており、メスコネクタ40の挿入口40aが露出する。
【0026】
開口部Opとメスコネクタ40との間には、要部Aに示すように、第1シール部材Saと第2シール部材Sbとの2つのシール部材Sが設けられ、開口部Opから塵埃や水分などが第3ケース53に侵入することを防ぐ。
【0027】
第1シール部材Saは、発泡ウレタン製のシール部材で、25%圧縮加重が0.008MPa(メガパスカル)の弾性を持つ。第1ケース50には長さの異なる第1位置決め部50cと第2位置決め部50dが形成されており、第1シール部材Saにはこの位置決め部50c,50dに対応する位置決め溝が設けられている。第1シール部材Saは位置決め溝が位置決め部50c,50dに対応するように第1ケース50に配置されることで、メスコネクタ40の回路基板4側に密着する。また、第1シール部材Saの位置決め溝は、左右(図3のLR方向)に5mm(ミリメートル)程度のクリアランスを設けている。
【0028】
第2シール部材Sbは、発泡ウレタン製のシール部材で、25%圧縮加重が0.02MPa(メガパスカル)の弾性を持つ。第3ケース53には第3位置決め部53aが形成されており、第2シール部材Sbには第3位置決め部53aに対応する位置決め溝が設けられている。第2シール部材Sbは位置決め溝が位置決め部53aに対応するように第3ケース53に配置されることで、メスコネクタ40の第1シール部材Saと対向する側に密着すると共に、メスコネクタ40の係合穴40bを塞ぐ。また、第2シール部材Sbの位置決め溝は、左右(図3のLR方向)に5mm(ミリメートル)程度のクリアランスを設けている。
【0029】
上述したように、本発明の一実施形態であるHUD装置Hは、メスコネクタ40が実装された回路基板4と、メスコネクタ40の挿入口40aを露出する開口部Opを有し回路基板4を収容するケース5と、開口部Opからケース5内に異物が侵入することを防ぐシール部材Sと、を備えた計器箱であって、メスコネクタ40の挿入口40aは、対となるオスコネクタ60の係合片60aと係合する係合穴40bを有し、シール部材Sは、第1シール部材Saと第1シール部材Saよりも剛性の高い第2シール部材Sbからなり、第2シール部材Sbは係合穴40bを塞ぐ、ように構成されている。上述した本発明の一実施形態であるHUD装置Hは、メスコネクタ40の挿入口40aを塞ぐような複雑な形状に対応する箇所は、剛性が高く加工しやすい第2シール部材Sbで覆っている。一方で、第2シール部材Sbで覆われない箇所は、加工しにくいが柔軟性があり形状変化しやすい第1シール部材Saで覆うように構成した。そのため、複雑な形状のメスコネクタ40をシールしつつ組み付け誤差を吸収したシーリングができる。よって、コネクタ形状によらず防塵および防水構造を持つ計器箱を提供できる。
【0030】
また、HUD装置Hの第1シール部材Saに対応する位置決め部50c,50dと、第2シール部材Sbに対応する位置決め部53aの数を異ならせている。これによって、第1シール部材Saと第2シール部材Sbを誤組みする虞がない。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりである。

ア 引用発明における、「波形観測装置1の部分構成」は「表示部2」を有するから、本願発明1の「表示器」に相当するということができる。

イ 引用発明の「メイン基板202」の「CPU29」は、「波形計測装置1の全体を制御」するものであり、特に「表示部2の描画を制御するための画像信号を生成」することや、「座標信号に基づいて表示部2に表示している波形のスクロールを実行する信号を生成」することにより、表示部2の描画を制御しているから、引用発明の「CPU29」は、「前記表示器を制御」する「制御装置」に相当する。

ウ 本願発明1においては、「制御基板」は「表示器内の各部を制御する」との特定がある。他方、「制御基板に設けられ」た「制御装置」は「表示器を制御」するとの特定がある。「各部」における「各」は「それぞれ」の意味であるから、「各部を制御する」とは「全ての部を制御する」ことを意味するところ、その一部である「制御装置」は「表示器を制御」するのであるから、「制御基板」は「表示器内の各部」を直接制御するものだけでなく、「制御装置」を介して制御するものも含むと解するのが相当である。
引用発明の「中継基板201」には、「メイン基板202」が「コネクタ連結」されており、上記「イ」のとおり、「メイン基板202」の「CPU29」は「前記表示器を制御」する「制御装置」に相当し、「表示部2」を制御するものであるから、「中継基板201」は「メイン基板202」の「CPU29」を介して「表示部2」の「描画に関わる部分」を制御するものであるということができる。
したがって、引用発明と本願発明1は、「表示器内」の描画に関わる「部を制御する」「制御基板」を有している点で共通するということができる。

エ 「メイン基板202」は、「表示部集合体」の背面に相当する「中継基盤201」に「コネクタ連結」されており、「着脱可能に取り付けられ」ていると認められる。よって、「メイン基板202」は、「前記表示器を制御し、前記表示器の背面に着脱可能に取り付けられる制御装置」に相当する。そして、引用発明において、「メイン基板202」を「中継基板201」に「連結」する「コネクタ」は、本願発明1における、「制御基板に設けられ」「制御装置を前記制御基板に接続するための第1接続部」に相当する。

オ 引用発明の「表示部2」は使用者が視認できる前面に配置されていることは明らかであり、本願発明1の「前記表示器の前面に配置される表示画面」に相当する。この点も踏まえると、引用発明における、「波形観測装置1の部分構成」における「中継基板201」が前面と反対側すなわち、「表示部2」よりも「波形観測装置1の部分構成」における背面側に収納されていることは明らかである。したがって、本願発明1と引用発明は、「制御基板」が「前記表示器内において」「表示画面よりも前記表示器の背面側に収納され」ている点で共通する。

(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「表示器であって、
前記表示器内において、前記表示器の前面に配置される表示画面よりも前記表示器の背面側に収納され、前記表示器内の各部を制御する制御基板と、
前記制御基板に設けられ、前記表示器を制御し、前記表示器の背面に着脱可能に取り付けられる制御装置を前記制御基板に接続するための第1接続部と、
を備える、表示器。」

[相違点1]
「制御基板」が、本願発明1においては「表示器の各部を制御する」のに対して、引用発明においては各部を制御するものではない点。

[相違点2]
本願発明1は、制御基板に「外部装置と接続するためのユーザ・インターフェース・ユニットを前記制御基板に接続するための第2接続部」が設けられている一方、引用発明は、中継基板201に、リムーバブル記録媒体であるUSBメモリ30を差し込むことができるUSBコネクタ11が直接取り付けられている点。

(3)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明における「メイン基板202」の「CPU29」は、「表示部2」の「描画に関わる部分」を制御するのみであり、「表示部2」の「各部」すなわち、全て(又は少なくとも2つ以上)の部を制御する構成とはなっていない。すなわち、「制御基板」が「表示器内の各部を制御する」ことについて、引用文献1には記載も示唆もない。また、引用文献2?4にも、上記の点について記載も示唆もない。
そうすると、引用発明に上記引用文献2?4記載事項を如何に適用しても、上記相違点1に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2?4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?8について
本願発明2?8も、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同じものを含むから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括
上記1及び2において検討したとおりであるから、本願発明1?8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第6 原査定について
原査定は、本件補正前の請求項1?8に係る発明が、引用文献1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとしている。
しかしながら、審判請求時の補正により、本願発明1?8は「表示器内の各部を制御する制御基板」という事項を有するものとなっており、上記第5の3において述べたとおり、本願発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-10-15 
出願番号 特願2017-210471(P2017-210471)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 千絵村川 雄一小野 健二西島 篤宏  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 中澤 真吾
中塚 直樹
発明の名称 表示器  
代理人 坂井 志郎  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 千馬 隆之  
代理人 関口 亨祐  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 仲宗根 康晴  

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