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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B26D
管理番号 1367319
審判番号 不服2020-4344  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-01 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2019-124506「打抜き用具、及び、偏光板の打抜き方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月6日出願公開、特開2020-116728、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年7月3日(優先権主張 平成30年12月13日)の出願であって、令和1年9月6日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年11月18日に意見書が提出され、令和1年12月24日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、「審判請求時の補正」という。)がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和1年12月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 実願昭46-48739号(実開昭48-8791号)のマイクロフィルム
引用文献2 特開2016-27135号公報
引用文献3 国際公開第2017/110596号
引用文献4 特開2016-30299号公報


第3 本願発明
1.本願発明及び本願発明1の記載事項について
本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」等という。また、総合して「本願発明」という。)は、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
偏光板に貫通孔を形成するための打抜き用具であって、
一端側に刃部を有する筒状体と、
内部が前記筒状体の内部空間と通じるようにして前記筒状体の他端側に接続された収容体と、を備え、
前記刃部は、前記一端側から前記他端側へ向かって前記筒状体の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化しており、
前記筒状体の前記他端側の内径は、前記刃部の刃先の内径の70%?95%である、打抜き用具。」

また、本願発明2-7は、本願発明1の特定事項の全てを含み、概略これを減縮した発明である。

2.本願発明の解決しようとする課題及び本願発明の技術的意義について
(1)本願の解決しようとする課題について
本願の明細書には、本願発明の解決しようとする課題について以下の事項が記載されている。(下線は、当審合議体で付した。)
ア 「【0003】
・・・他方、刃型で打ち抜く方法では、加工工数や加工時間は短いものの、打ち抜いたときに生じる偏光板の屑の処理が問題となる。この打抜き屑は、静電気や偏光板に積層されている粘着剤層のべたつきによって偏光板の表面に付着し品質低下を招きやすいため、確実に除去する必要がある。」

イ 「【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された方法は、装置構成が大きくなるという問題がある。それに加えて、当該方法を偏光板の打抜き加工に適用すると、偏光板の打抜き屑を吸引して回収しようとしても、静電気や粘着剤層のべたつき度合いによっては必ずしも十分に回収することができないという問題もある。そこで本発明は、偏光板に貫通孔を形成する際に、比較的簡易な構成で打抜き屑を確実に回収することができる打抜き用具を提供することを目的とする。また、その打抜き用具を用いた偏光板の打抜き方法を提供することを目的とする。」

(2)本願発明の技術的意義について
本願の明細書には、本願発明の技術的意義について以下の事項が記載されている。
ア 「【0030】
以上のように構成された打抜き用具1、及び、これを用いた打抜き方法によれば、刃部3aの内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化しているため、偏光板10に貫通孔10bを形成しその打抜き屑10aが刃部3aの内部空間に入り込んだときに、打抜き屑10aが反った状態で刃部3aの内壁に対して突っ張る格好となり、そのまま刃部3aの内部空間に保持される。すなわち、この打抜き用具1によって偏光板10を打ち抜いた場合、生じる打抜き屑10aは、偏光板10に形成した貫通孔10bの周辺に散乱するのではなく、刃部3aの内部空間に留まることとなる。
【0031】
そして、偏光板10を入れ替えて連続的に打抜きを続けると、図5に示されているとおり、先に刃部3a内に保持されていた打抜き屑10aが次の打抜き屑10aに押されるようにして筒状体3の内部空間を他端側へ移動してゆき(図5(A))、最終的には筒状体3の内部空間と通じるように接続されている収容箱4内に飛び出して、収容箱4に収容されることになる(図5(B))。これらの作用により、本実施形態の打抜き用具1では打抜き屑10aを容易に回収することができ、打抜き屑10aが偏光板10に付着することを防止することができる。従って、本実施形態の打抜き用具1によれば、比較的簡易な構成で偏光板10に貫通孔10bを形成することができ、かつ、打抜き屑10aを確実に回収することができる。」


第4 引用文献の記載及び引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「本考案はビニール等のフイルムに多数の小孔をパンチングできるようにした自動穿孔機の改良に関する。」(明細書第1頁下から第1行-第2頁第2行)

イ 「バナナ等の果実を始めとする各種食品類の包装用として、通気用の小孔をパンチングしたビニール等のフイルムを使用することは広く知られているが、このパンチング作業は頗る面倒である。」(明細書第2頁第3-6行)

ウ 「下敷体のパンチ部が新しくてまだ平の時は完全な穿孔を成し得るが、窪みが生じてくるとフイルム材の表面にパンチの刃先の跡が残るだけになつてしまう、これはフイルム材が優れた伸張性を備え、パンチの降下に追従して穿孔部の周囲部分が伸ばされ、窪み部内に引き込まれてしまう為で、フイルム材の肉厚が薄くなればなる程完全なパンチングを困難とするものである。」(明細書第3頁第2-9行)

エ 「而して本考案は上記の点に鑑み、薄手のフイルム材でも完全なパンチングを自動的に連続して行ない得るよう工夫した自動穿孔磯を提供せんとするものであつて、以下その具体的な構成を図面の実施例に基づいて説明する。」(明細書第3頁第10-14行)

オ 「図面に於いて符号1にて全体的に示されているのがパンチであつて、これは第2図、第3図に示す如く下端に刃先1aを、中間周囲に鍔部2を設け、且つ内部を空洞1bとなした構造であつて、後述するクランク軸に連繋して昇降するように構成されている。」(明細書第3頁下から第1行-第4頁第5行)

カ 「5a並びにP_(2)は、パンチ1によつて打抜かれた押圧板5とフイルム材Pの夫々の打抜片、P_(1)は穿孔、Paは穿孔P_(1)を施されたフイルム製品を示す。」(明細書第5頁第5-8行)

キ 「リール8に巻かれたフイルム材Pは、ピンチローラ10、11並びに巻き取りリール9によりパンチ1と下敷体4の間を移送され、パンチ1の下降運動により連続的にパンチングを行なつて穿孔P_(1)を形成するのであるが、・・・そしてパンチ1の下降が更に続くと、第3図の如くゴム管3は圧縮された状態となつて押圧板5の押圧力を更に増し、そして該押圧板5と下敷体4間に挟持されたフイルム材Pに、刃先1aによつて穿孔P_(1)が施されるのである。」(明細書第6頁第6行-第7頁第8行)

ク 「上述の如くして穿孔P_(1)を施した後は、今度はパンチ1を上昇して次回のパンチング作業に移るのであるが、・・・パンチングによつて生じた打抜片P_(2)をフイルム材P側より完全に切離して切り残しの虞れを全く無くすことができる。尚上述のパンチ1によるパンチング作業は、フイルム材Pの流れを止めないで連続して行われるので、パンチ1の昇降速度は極めて速く、またフイルム材Pの送り速度は該パンチング作業に支障のない速度に調節されることは勿論である。」(明細書第8頁下から第1行-第9頁下から第2行)

(2)また、引用文献1の上記記載事項及び図面から以下の事項が理解できる。
ケ 第3図から、パンチ1の刃先1aは、下端から上端側へ向かってパンチ1の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化していること、及び、パンチ1の上端側の内径(すなわち、空洞1bの外径)が刃先1aの内径よりも小さいことが図示されている。

コ 第3図から、パンチ1で打抜かれた打抜片P_(2)は、反った状態で刃先1aの内壁に対して突っ張る格好となっていることが示されている。また、上記記載事項クの「穿孔P_(1)を施した後は、今度はパンチ1を上昇して次回のパンチング作業に移るのであるが、・・・パンチングによつて生じた打抜片P_(2)をフイルム材P側より完全に切離して切り残しの虞れを全く無くすことができる。」との記載により、少なくともパンチ1が上昇して次回のパンチング作業に移行する際には、打抜片P_(2)は反った状態で刃先1aの内部空間に保持されていると理解できる。

【第3図】


(3)したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「フイルム材Pに穿孔P_(1)を形成するための自動穿孔機であって、
下端に刃先1aを有するパンチ1を備え、
前記刃先1aは、前記下端から上端側へ向かって前記パンチ1の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化している、自動穿孔機。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の請求項8、17及び段落【0019】-【0020】の記載からみて、当該引用文献2には、「樹脂フイルム、粘着剤層及びセパレータを備える偏光子に切断刃で貫通孔を形成する。」という技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0001】、【0043】-【0044】及び図4の記載からみて、当該引用文献3には、「強化繊維と樹脂とを含む複合材料の切断装置において、閉ループ構造の切断刃に切断小片が挟まって詰まるのを防止するために、切断刃の上端側に排出通路401を形成する。」という技術的事項(以下、「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0001】、【0031】及び図1の記載からみて、当該引用文献4には、「原料シートの抜き穴加工により発生する抜きカスを円滑に排出するために、抜き穴加工用打抜き刃12の内側にカス保持部13aとカス収納部13bとを形成し、抜きカス31bをカス排出路14に排出させる。」という技術的事項(以下、「引用文献4に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「穿孔P_(1)」は、本願発明1における「貫通孔」に相当し、以下同様に、「自動穿孔機」は「打抜き用具」に、「下端」は「一端側」に、「刃先1a」は「刃部」に、「パンチ1」は「筒状体」に、「上端側」は「他端側」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「フイルム材P」と、本願発明1における「偏光板」とは、いずれも打ち抜き加工される「加工物」である点では共通している。
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

<一致点>
「加工物に貫通孔を形成するための打抜き用具であって、
一端側に刃部を有する筒状体を備え、
前記刃部は、前記一端側から他端側へ向かって前記筒状体の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化している、打抜き用具。」

<相違点>
本願発明1は、打ち抜き加工される「加工物」が「偏光板」であり、「前記筒状体の前記他端側の内径は、前記刃部の刃先の内径の70%?95%」であり、「内部が前記筒状体の内部空間と通じるようにして前記筒状体の他端側に接続された収容体」を備えるのに対し、引用発明は加工物がフイルム材であり、パンチ1の内径についての数値限定がなく、収容体を有するか不明な点。

(2)相違点についての判断
相違点について検討する。
引用文献1において、上記第4の1.(2)で述べたとおり、パンチ1の刃先1aは、下端から上端側へ向かってパンチ1の内径が徐々に小さくなるように肉厚が変化しパンチ1の上端側の内径(すなわち、空洞1bの外径)が刃先1aの内径よりも小さいこと、及び、少なくともパンチ1が上昇して次回のパンチング作業に移行する際には、打抜片P_(2)は反った状態で刃先1aの内部空間に保持されることは示されているといえるものの、当該打抜片P_(2)がそのままの状態で内部空間に保持し続けられるものであるのかや、連続してパンチング作業を行った場合に、打抜片P_(2)がどのようになるのか(パンチの下方から落下するのか、内部空間の上方に向けて順次収容されていくのか)については一切記載がない。また、引用文献1には、打抜対象がビニール等のフイルム材であることが記載されているところ、打ち抜かれる加工物(フイルム材)が静電気や粘着剤層の影響を受けることで回収ができないこと等の課題は記載も示唆もされていない。
また、相違点に係る本願発明1の構成については、上記第4の2-4.に示した引用文献2-4のいずれにも記載されていない。
そうすると、相違点に係る構成を示す証拠がない上、仮にあったとしても、引用発明に当該構成を採用する動機付けはない。
一方、上記第3の2.(1)-(2)に鑑みれば、本願発明は、偏光板の打抜き屑が静電気や偏光板に積層されている粘着剤層のべたつきによって偏光板の表面に付着し品質低下を招きやすいことを解決しようとする課題として、筒状体3の刃部3aの内径が徐々に小さくなるように肉厚を変化させて、偏光板10の打抜き屑10aが刃部3aの内部空間に入り込んだときに、打抜き屑10aが反った状態で刃部3aの内壁に対して突っ張る格好となってそのまま刃部3aの内部空間に保持され、先に刃部3a内に保持されていた打抜き屑10aが次の打抜き屑10aに押されるようにして筒状体3の内部空間を他端側へ移動してゆき、最終的には収容箱4に収容されて回収されることで、打抜き屑10aが偏光板10に付着することを確実に防止するものであるといえる。
そして、上記相違点に係る本願発明1の「前記筒状体の前記他端側の内径は、前記刃部の刃先の内径の70%?95%である」との筒状体の内径についての数値限定、及び、「内部が前記筒状体の内部空間と通じるようにして前記筒状体の他端側に接続された収容体」との構成は、静電気や粘着剤層のべたつきに影響される偏光板の打抜き屑10aが、筒状体で打ち抜かれて刃部3aの内部空間に入り込んだときに、該打抜き屑10aが反った状態で刃部3aの内壁に対して突っ張る格好となってそのまま刃部3aの内部空間に保持されること、及び、先に刃部3a内に保持されていた打抜き屑10aが次の打抜き屑10aに押されるようにして筒状体3の内部空間を他端側へ移動してゆき最終的に筒状体3の他端側に接続されている収容箱4(本願発明1の「収容体」)に回収されることを可能にするために特定されるものと解される。
してみると、相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.小括
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

3.本願発明2-7について
本願発明2-7は、本願発明1の特定事項の全てを備えるものであり、本願発明1についての相違点と同じ相違点を有するから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本願発明2-7は、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、請求項1に「前記筒状体の前記他端側の内径は、前記刃部の刃先の内径の70%?95%である」との構成が付加され、本願発明1-7は、上記第5の1.(1)に示した相違点に係る本願発明1の構成を有するものとなっているから、上記第5の1.(2)に示したとおり、本願発明1-7は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 その他の理由(令和2年6月10日付け前置報告書)について
1.令和2年6月10日付け前置報告書(以下、「前置報告書」という。)に提示の文献及び拒絶の理由
前置報告書では、以下の引用文献1-6(以下、それぞれ「前置報告書の引用文献1」等という。)が提示され、本願発明1と前置報告書の引用文献1に記載された発明(以下、「前置報告書の引用発明」という。)とは、相違点1、2で相違するが、相違点1について、刃の刃先と反対側の端部に設けられた収容体であって、内部が筒状体の内部空間と通じるようにして筒状体の他端側に接続された収容体については、前置報告書の引用文献2-5に示されている周知の技術であり、相違点2について、「筒状体の他端側の内径は、刃部の刃先の内径の70?95%」とする数値限定に格別顕著な作用効果を奏するための臨界的意義も認められないことから、当業者が実施に際し適宜選択できる程度の設計的事項であり、本願発明1は、前置報告書の引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである旨、本願発明2-7は、前置報告書の引用発明、前置報告書の引用文献2、6に記載された技術的事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである旨の拒絶理由を有することが示されている。
引用文献1 特開2017-226034号公報
引用文献2 特開2002-239992号
引用文献3 特開2015-55018号公報
引用文献4 特開2002-166397号公報
引用文献5 米国特許第6408729号明細書
引用文献6 実願昭46-48739号(実開昭48-8791号)のマイクロフィルム(原査定の引用文献1)

2.前置報告書に示された拒絶理由についての検討
前置報告書の引用文献1は、偏光板本体10を切断刃Kで切断する際に、偏光板本体10の内側部分を一部残して切断し(段落【0025】、図2(b)を参照。)、次に突き落とし棒TBを用いて偏光板本体10の内側部分に形成されている楕円形状部1aを鉛直下向きに突き落とす(段落【0026】、図3を参照)との発明(前置報告書の引用発明)が記載されていると認められる。
してみると、刃の刃先と反対側の端部に設けられた収容体であって、内部が筒状体の内部空間と通じるようにして筒状体の他端側に接続された収容体が前置報告書の引用文献2-5等にみられる周知の技術であるとしても、前置報告書の引用文献1は、偏光板本体10の内側部分をあえて一部残して切断した上で、突き落とし棒TBを用いて偏光板本体10の内側部分に形成されている楕円形状部1aを鉛直下向きに突き落とすものであるから、偏光板本体10の楕円形状部1a(打抜屑)は切断刃よりも下に突き落とされ切断刃よりも上には排出されない。
これに鑑みれば、前置報告書の引用発明では、突き落とし棒TBを用いて楕円形状部1aを突き落とすことは必須の構成であるから、前置報告書の引用発明に該周知の技術を適用して、筒状体の上端側に収容体を設けることは、引用発明の機能を損なうものであり、阻害事由があると認められる。また、相違点2の筒状体の内径についての数値限定についても、上記第3の2.(2)で示した技術的意義を有するものであり、上記第5の1.(2)で示したように、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本願発明1は、前置報告書の引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、本願発明1の特定事項の全てを備える本願発明2-7についても、前置報告書の引用発明、前置報告書の引用文献2、6に記載された技術的事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-14 
出願番号 特願2019-124506(P2019-124506)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B26D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 田々井 正吾
大山 健
発明の名称 打抜き用具、及び、偏光板の打抜き方法  
代理人 吉住 和之  
代理人 福山 尚志  
代理人 阿部 寛  
代理人 三上 敬史  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  

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