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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
管理番号 1367343
審判番号 不服2019-7166  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-31 
確定日 2020-10-23 
事件の表示 特願2014-233735「冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016- 98256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

1 本願は、平成26年11月18日の出願(出願人:JX日鉱日石エネルギー株式会社)であって、その後の手続の経緯は、次のとおりである。
平成30年 5月11日付け:拒絶理由通知
同年 9月21日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 2月27日付け:拒絶査定(発送は同年3月5日)
令和 元年 5月31日 :審判請求書(請求人:JXTGエネルギー 株式会社)及び手続補正書の提出
令和 2年 2月18日付け:当審による拒絶理由通知
同年 4月24日 :意見書及び手続補正書の提出

2 出願から現状に至るまで、数度の企業合併及び名称変更がされているが、本件代理人が出願時から存在するから、特許法第24条の規定により読み替えて準用する民事訴訟法第124条第1項における手続の中断の規定は、同第2項の規定により適用されない(特許法第11条も参照)。

第2 本願発明

本願の請求項1?6に係る発明は、令和2年4月24日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
炭素数4?9の分岐脂肪酸の割合が100モル%である脂肪酸と多価アルコールとのエステルを冷凍機油全量基準で90質量%以上含有する基油と、
冷凍機油全量基準で0.2?0.5質量%のフェノール系酸化防止剤と、
酸捕捉剤と、
を含有し、トリフルオロエチレンの含有量が冷媒全量基準で40質量%以上であるトリフルオロエチレン冷媒と共に用いられる冷凍機油。」

第3 当審が通知した拒絶の理由の概要

当審が令和2年2月18日付けで通知した拒絶の理由の一つは、進歩性の欠如に関するものであり、要するに、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明にあたる、下記引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
・主たる証拠:引用文献2.特開2011-162766号公報
・従たる証拠:引用文献1.国際公開第2012/157764号

第4 進歩性欠如についての当審の判断

1 引用文献2の記載事項
引用文献2には、「潤滑油組成物」(発明の名称)に関する、次の記載がある。
(1) 「【請求項1】
潤滑油基油と、潤滑油組成物全量基準で、5?5000質量ppmの3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸のエステルと、0.001?10.0質量%のリン化合物と、を含有する潤滑油組成物。
・・・
【請求項4】
前記潤滑油基油が、動植物油、エステル及びエーテルから選択される少なくとも1種であり、該潤滑油基油の40℃における動粘度が2?1000mm^(2)/sである請求項1?3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
・・・
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の潤滑油組成物からなる冷凍機油。」
(2) 「【0016】
[潤滑油基油]
本発明において、潤滑油基油としては動植物油系、合成油系などの含酸素化合物を用いることができる。
・・・
【0043】
含酸素合成油であるエステルとしては、例えば、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物等が例示される。
・・・
【0046】
また、ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3?20個有するポリオールと、炭素数6?20の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2ーメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。ポリオールとしては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2?20量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類及びこれらの部分エーテル化物、並びにメチルグルコシド(配糖体)挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。
【0047】
ポリオールエステルに用いられる脂肪酸において、その炭素数は特に制限されないが、通常、炭素数1?24のものが用いられる。炭素数1?24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点から炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらに好ましく、炭素数10以上のものが特に好ましい。また、冷媒との相溶性の点から、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらに好ましい。
【0048】
また、かかる脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分枝状脂肪酸が好ましい。さらに、かかる脂肪酸は飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
【0049】
脂肪酸としては、具体的には、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよく、さらにはα炭素原子が4級炭素原子である脂肪酸(ネオ酸)であってもよい。これらの中でも、吉草酸(n-ペンタン酸)、カプロン酸(n-ヘキサン酸)、エナント酸(n-ヘプタン酸)、カプリル酸(n-オクタン酸)、ペラルゴン酸(n-ノナン酸)、カプリン酸(n-デカン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3-メチルブタン酸)、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸が好ましく用いられる。」
(3) 「【0125】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る潤滑油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来から潤滑油、グリースなどに用いられている、摩擦調整剤、摩耗防止剤、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤、消泡剤などの添加剤を、より性能を向上させるために含有することができる。
【0126】
摩擦調整剤としては有機モリブデン化合物であるモリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェート、含窒素化合物である脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族イミドやアルコール、エステル、亜リン酸エステルアミン塩など、摩耗防止剤としてはジアルキルジチオリン酸亜鉛など、極圧剤としては硫化オレフィン、硫化油脂などが、また、酸化防止剤としてはアミン系、フェノール系の酸化防止剤など、防錆剤としてはアルケニルコハク酸エステルまたは部分エステルなど、金属不活性化剤としてはベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾ-ル誘導体などが、清浄分散剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレートなどの金属系清浄剤、またはポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸エステルなどの無灰系分散剤、消泡剤としてはシリコーン化合物、エステル系消泡剤などがそれぞれ挙げられる。
・・・
【0131】
また、本実施形態に係る潤滑油組成物を冷凍機油として使用する場合、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0132】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1?13のアルキル基を1?3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4?10のアルキル基を1個有するもの、例えばn-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0133】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプローパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0134】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾェート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0135】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンなどが例示できる。
【0136】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンなどが例示できる。
【0137】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルポルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペ-ト、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0138】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12?20の脂肪酸と炭素数1?8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0139】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0140】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、および脂環式エポキシ化合物である。
【0141】
本実施形態に係る潤滑油組成物を冷凍機油として使用する場合に、上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.01?5.0質量%であることが好ましく、0.1?3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0142】
また、本実施形態に係る潤滑油組成物を冷凍機油として使用する場合、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N-ジ(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、カルボジイミド等の酸捕捉剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。」
(4) 「【0150】
なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物において含有される冷媒としては、HFC冷媒、不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒、アンモニア、二酸化炭素(CO_(2))や炭化水素等の自然系冷媒などが挙げられる。
【0151】
HFC冷媒としては、炭素数1?3、好ましくは1?2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC-32)、トリフルオロメタン(HFC-23)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、および1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC-32単独;HFC-23単独;HFC-134a単独;HFC-125単独;HFC-134a/HFC-32=60?80質量%/40?20質量%の混合物;HFC-32/HFC-125=40?70質量%/60?30質量%の混合物;HFC-125/HFC-143a=40?60質量%/60?40質量%の混合物;HFC-134a/HFC-32/HFC-125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC-134a/HFC-32/HFC-125=40?70質量%/15?35質量%/5?40質量%の混合物;HFC-125/HFC-134a/HFC-143a=35?55質量%/1?15質量%/40?60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC-134a/HFC-32=70/30質量%の混合物;HFC-32/HFC-125=60/40質量%の混合物;HFC-32/HFC-125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC-32/HFC-125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC-125/HFC-143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC-32/HFC-125/HFC-134a=30/10/60質量%の混合物;HFC-32/HFC-125/HFC-134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC-32/HFC-125/HFC-134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC-125/HFC-134a/HFC-143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0152】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒としては、フッ素数が3?5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、および3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO-1225ye、HFO-1234zeおよびHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0153】
炭化水素冷媒としては、炭素数1?5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0154】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE-134p、HFE-245mc、HFE-236mf、HFE-236me、HFE-338mcf、HFE-365mcf、HFE-245mf、HFE-347mmy、HFE-347mcc、HFE-125、HFE-143m、HFE-134m、HFE-227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。」
(5) 「【実施例】
・・・
【0173】
[冷凍機油組成物の調製]
次に示す3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸エステル、リン酸エステル、潤滑油基油、その他の添加剤を用いて、表3、4に示す配合割合(添加量は組成物全量基準での質量%)でブレンドして、実施例および比較例の潤滑油組成物を調製した。なお、基油及び実施例、比較例の潤滑油の性状について、粘度、粘度指数はJIS K2283、流動点はJIS K2269に規定の方法により測定した。
【0174】
(A)耐摩耗添加剤(3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸エステル、リン酸エステル)
(A1)3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸プロピル(n‐プロピル)エステル[岩手ケミカル社製]
(A2)3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸オクチル(n‐オクチル)エステル[和光純薬工業社製]
(A4)トリクレジルフォスフェート(TCP)[和光純薬工業社製]
(A5)トリフェニルフォスフォロチオネート
(A6)ジオクチルアシッドホスフェートの2-エチルヘキシルアミン塩
(B)潤滑油基油
(B4)ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2-エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5-トリメチルヘキサン酸50モル%)とのテトラエステル(40℃動粘度:68mm^(2)/s、粘度指数:90、流動点:-40.0℃)
(B5)エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体
(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=7/1(モル比)、数平均分子量:860、炭素/酸素モル比:4.25、40℃動粘度:66mm^(2)/s、粘度指数:85、流動点:-40.0℃)
(C)その他の添加剤
(C1)酸化防止剤:ジ‐t.‐ブチル‐p.‐クレゾール(DBPC)
(C2)酸捕捉剤:p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル
【0175】
このようにして得た実施例8?16、比較例3?6の潤滑剤組成物について、冷凍機油組成物としての耐摩耗性を評価した。
[耐摩耗性試験]
密閉容器の内部に上側試験片にベーン(SKH-51)、下側試験片にディスク(FC250 HRC40)を用いた摩擦試験装置を装着した。摩擦試験部位に試料油を600g導入し、系内を真空脱気した後、以下の表に示す冷媒を100g導入して加熱した。密閉容器内の温度を100℃とした後、荷重ステップ10kgf(ステップ時間2分)で段階的に荷重を100kgfまで上げ、100kgfにおいて60分間摩耗試験を行った。各試料油について60分間の試験後のベーンの摩耗巾及びディスクの摩耗深さを計測した。得られた結果を表3、4に示す。
【0176】
【表3】

【0177】
【表4】

【0178】
実施例1?7の潤滑油組成物は、いずれも均一な液体となった。これら実施例の摩擦試験での摩擦係数は0.06?0.07であり、低く安定している。また摩擦試験後のディスク摩耗深さは0.05?0.07μmであり、殆ど摩耗していないレベルである。
【0179】
これに対し、3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸プロピルのみを添加した比較例1では、摩擦係数が高く、ディスク摩耗深さも大きくなっている。また、3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸エステルが添加されていない、比較例2では、摩擦係数が高く、摩耗深さも実施例よりはるかに大きくなっている。
【0180】
このように、潤滑油基油に3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸のエステルとリン酸化合物を配合することにより、潤滑油組成物の潤滑性を大幅に向上させることができる。
【0181】
また、実施例1?7の潤滑油組成物は、すべて内燃機関用潤滑油、作動油としての特性に優れていることがわかり、特に、実施例1?3と6、7は生分解性である。
【0182】
さらに、実施例8?16の冷凍機油組成物は、冷媒雰囲気下での耐摩耗性に優れていることがわかる。」

2 引用文献1の記載事項
引用文献1には、「作動媒体および熱サイクルシステム」(発明の名称)に関する、次の記載がある。
(1) 「[請求項1]
1,1,2-トリフルオロエチレンを含むことを特徴とする熱サイクル用作動媒体。
・・・
[請求項3]
ヒドロフルオロカーボンをさらに含む、請求項1または2に記載の熱サイクル用作動媒体。
[請求項5]
1,1,2-トリフルオロエチレンを、熱サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。
・・・
[請求項10]
ヒドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたはペンタフルオロエタンである、請求項3?9のいずれか一項に記載の熱サイクル用作動媒体。」
(2) 「[背景技術]
[0002]
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動流体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクル用作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、またはクロロジフルオロメタン等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制対象となっている。
[0003]
そこで、熱サイクル用作動媒体としては、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC-32)、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられている。しかし、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。そのため、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化係数の小さい熱サイクル用作動媒体の開発が急務となっている。
[0004]
たとえば、自動車空調機器用冷媒として用いられている1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)は、地球温暖化係数が1430(100年値)と大きい。しかも、自動車空調機器においては、接続ホース、軸受け部等から冷媒が大気中へ漏洩する確率が高い。
[0005]
HFC-134aに代わる冷媒としては、二酸化炭素、およびHFC-134aに比べて地球温暖化係数が124(100年値)と小さい1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)が検討されている。
しかし、二酸化炭素は、HFC-134aに比べて機器圧力が極めて高くなるため、全ての自動車へ適用するためには、多くの解決すべき課題を有する。HFC-152aは、燃焼範囲を有しており、安全性を確保するための課題を有する。
[0006]
オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない熱サイクル用作動媒体としては、大気中のOHラジカルによって分解されやすい炭素-炭素二重結合を有するヒドロフルオロオレフィン(HFO)が考えられる。
HFOの熱サイクル用作動媒体としては、たとえば、下記のものが知られている。
(1)3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2-フルオロプロペン(HFO-1261yf)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,2-トリフルオロプロペン(HFO-1243yc)(特許文献1)。
(2)1、2、3、3、3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、HFO-1234yf(特許文献2)。
[0007]
しかし、(1)のHFOは、いずれもサイクル性能(能力)が不充分である。また、(1)のHFOのうちフッ素原子の割合が少ないものは、燃焼性を有する。
(2)のHFOも、いずれもサイクル性能(能力)が不充分である。
[先行技術文献]
[特許文献]
[0008]
[特許文献1]日本特開平04-110388号公報
[特許文献2]日本特表2006-512426号公報
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[0009]
本発明は、燃焼性が抑えられ、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少なく、かつサイクル性能(能力)に優れる熱サイクルシステムを与える熱サイクル用作動媒体、および安全性が確保され、サイクル性能(能力)に優れる熱サイクルシステムを提供する。」
(3) 「[0013]
<作動媒体>
本発明の作動媒体は、1,1,2-トリフルオロエチレンを含むものである。
本発明の作動媒体は、必要に応じて、炭化水素、HFC、HCFO、CFOなどの、CFO1123とともに気化、液化する他の作動媒体を含んでもよい。また、本発明の作動媒体は、作動媒体とともに使用される作動媒体以外の成分と併用することができる(以下、作動媒体と作動媒体以外の成分を含む組成物を作動媒体含有組成物という)。作動媒体以外の成分としては、潤滑油、安定剤、漏れ検出物質、乾燥剤、その他の添加剤等が挙げられる。
HFO-1123の含有量は、作動媒体(100質量%)中、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。」
(4) 「[0016]
(HFC)
HFCは、熱サイクルシステムのサイクル性能(能力)を向上させる作動媒体成分である。
HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さいHFCが好ましい。
[0017]
HFCとしては、炭素数が1?5であるのが好ましく、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
HFCとしては、具体的には、ジフルオロメタン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。なかでもオゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい点から、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)およびペンタフルオロエタン(HFC-125)が特に好ましい。
HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
(5) 「[0023]
(潤滑油)
作動媒体含有組成物に使用される潤滑油としては、熱サイクルシステムに用いられる公知の潤滑油が用いられる。
潤滑油としては、含酸素系合成油(エステル系潤滑油、エーテル系潤滑油等)、フッ素系潤滑油、鉱物油、炭化水素系合成油等が挙げられる。
[0024]
エステル系潤滑油としては、二塩基酸エステル油、ポリオールエステル油、コンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が挙げられる。
[0025]
二塩基酸エステル油としては、炭素数5?10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1?15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3-エチルヘキシル)等が挙げられる。
[0026]
ポリオールエステル油としては、ジオール(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、ネオペンチルグリコール、1,7-ヘプタンジオール、1,12-ドデカンジオール等)または水酸基を3?20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等)と、炭素数6?20の脂肪酸(ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の直鎖または分枝の脂肪酸、もしくはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸等)とのエステルが好ましい。
ポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
ポリオールエステル油としては、ヒンダードアルコール(ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスルトール等)のエステル(トリメチロールプロパントリペラルゴネート、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等)が好ましい。」
・・・
[0035]
潤滑油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
潤滑油としては、作動媒体との相溶性の点から、ポリオールエステル油および/またはポリグリコール油が好ましく、安定化剤によって顕著な酸化防止効果が得られる点から、ポリアルキレングリコール油が特に好ましい。」
(6) 「[0037]
(安定剤)
作動媒体含有組成物に使用される安定剤は、熱および酸化に対する作動媒体の安定性を向上させる成分である。
安定剤としては、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が挙げられる。
[0038]
耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、N,N’-ジフェニルフェニレンジアミン、p-オクチルジフェニルアミン、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N-(p-ドデシル)フェニル-2-ナフチルアミン、ジ-1-ナフチルアミン、ジ-2-ナフチルアミン、N-アルキルフェノチアジン、6-(t-ブチル)フェノール、2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4-メチル-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・・・
[0040]
安定剤の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体含有組成物(100質量%)中、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。」
(7) 「[0047]
<熱サイクルシステム>
本発明の熱サイクルシステムは、本発明の作動媒体を用いたシステムである。
熱サイクルシステムとしては、ランキンサイクルシステム、ヒートポンプサイクルシステム、冷凍サイクルシステム、熱輸送システム等が挙げられる。
[0048]
(冷凍サイクルシステム)
熱サイクルシステムの一例として、冷凍サイクルシステムについて説明する。
冷凍サイクルシステムとは、蒸発器において作動媒体が負荷流体より熱エネルギーを除去することにより、負荷流体を冷却し、より低い温度に冷却するシステムである。」
(8) 「[実施例]
[0060]
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0061]
(冷凍サイクル性能の評価)
図1の冷凍サイクルシステム10に、作動媒体を適用した場合のサイクル性能(能力および効率)として冷凍サイクル性能(冷凍能力および成績係数)を評価した。
・・・
[0066]
〔例1〕
図1の冷凍サイクルシステム10に、HFO-1123と表1に示すHFCとからなる作動媒体を適用した場合の冷凍サイクル性能(冷凍能力および成績係数)を評価した。
評価は、蒸発器14における作動媒体の平均蒸発温度を0℃、凝縮器12における作動媒体の平均凝縮温度を50℃、凝縮器12における作動媒体の過冷却度を5℃、蒸発器14における作動媒体の過熱度を5℃として実施した。
[0067]
HFC-134aの冷凍サイクル性能を基準にし、HFC-134aに対する各作動媒体の冷凍サイクル性能(冷凍能力および成績係数)の相対性能(各作動媒体/HFC-134a)を求めた。作動媒体ごとに表1に示す。
[0068]
[表1]

[0069]
表1の結果から、HFO-1123に、HFC-32を添加することによって、HFO-1123の成績係数と冷凍能力を改善できることが確認された。HFC-134aの添加では、成績係数が改善された。HFC-125の添加では、成績係数と冷凍能力が低下するが、冷凍能力は1.0以上を維持した。HFC-125は、燃焼性を抑制する効果が優れており、作動媒体の燃焼性を充分に抑えることができることから、燃焼性の抑制が作動媒体に要求される場合には有効であると考えられる。」

3 引用文献2に記載された発明(引2発明)
引用文献2の【請求項1】及び【請求項7】には、「潤滑油基油と、潤滑油組成物全量基準で、5?5000質量ppmの3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸のエステルと、0.001?10.0質量%のリン化合物と、を含有する潤滑油組成物」及び当該「潤滑油組成物からなる冷凍機油」が記載されているところ、同【0173】?【0177】には、実施例8?16として、冷凍機油組成物の具体例が種々記載され、それらをR410A及びHFO-1234yfと共に用いた耐摩耗性試験の結果が示されている。
そして、例えば、実施例8をみると、同【0174】及び【0176】【表3】の記載から、当該実施例8に係る冷凍機油組成物は、次の組成を有するものであることが分かる(なお、添加量(含有量)は、同【0173】に記載のとおり、組成物全量基準での質量%である。)。
<実施例8に係る冷凍機油組成物>
『・(A)耐摩耗添加剤(3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸エステル、リン酸エステル)として、「(A1)3,4,5‐トリヒドロキシ安息香酸プロピル(n‐プロピル)エステル[岩手ケミカル社製]」を0.01質量%、「(A4)トリクレジルフォスフェート(TCP)[和光純薬工業社製]」を1.0質量%
・(B)潤滑油基油として、「(B4)ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2-エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5-トリメチルヘキサン酸50モル%)とのテトラエステル(40℃動粘度:68mm2/s、粘度指数:90、流動点:-40.0℃)」を98.59質量%
・(C)その他の添加剤として、「(C1)酸化防止剤:ジ‐t.‐ブチル‐p.‐クレゾール(DBPC)」を0.2質量%、「(C2)酸捕捉剤:p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル」を0.2質量%』
そうすると、引用文献2には、実施例8として、次の発明(以下、「引2発明」という。)が記載されているといえる。
「R410A及びHFO-1234yfと共に用いられる、上記実施例8に係る冷凍機油組成物」

4 引用文献1に記載された発明(引1発明)
引用文献1の[請求項1]、[請求項5]には、「1,1,2-トリフルオロエチレンを、熱サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、熱サイクル用作動媒体。」が記載され、同[0013]には、当該作動媒体と共に使用される「作動媒体以外の成分」として、潤滑油、安定剤等が挙げられている。そして、同[0023]?[0026]には、当該潤滑油としては、熱サイクルシステムに用いられる公知の潤滑油が用いられることが記載され、その例として、ポリオールエステル油が挙げられているから、当該「作動媒体以外の成分」の潤滑油として、ポリオールエステル油が記載されていると認められる。
また、同[0048]には、当該熱サイクルシステムの例として、冷凍サイクルシステムが記載され、同[0060]以降の実施例においても、当該冷凍サイクルシステムにおける冷凍サイクル性能が評価されていることから、上記請求項1、5記載の「1,1,2-トリフルオロエチレンを、熱サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、熱サイクル用作動媒体。」は、主たる用途として冷凍サイクルシステムを予定したものということができる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引1発明」という。)が記載されているといえる。
「1,1,2-トリフルオロエチレンを、冷凍サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、冷凍サイクル用作動媒体、及び、これと共に使用される作動媒体以外の成分である、潤滑油としてのポリオールエステル油」

5 引2発明を主たる引用発明とする、本願発明の進歩性について
(1) 対比
本願発明と引2発明とを対比する。
引2発明の「冷凍機油組成物」は、本願発明の「冷凍機油」に相当するところ、それらを構成する成分(基油及び各種添加剤)について子細にみてみる。
まず、両者の基油(潤滑油基油)についてみると、引2発明の「実施例8に係る冷凍機油組成物」における、潤滑油基油としての「(B4)ペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2-エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5-トリメチルヘキサン酸50モル%)とのテトラエステル(40℃動粘度:68mm^(2)/s、粘度指数:90、流動点:-40.0℃)」は、本願発明の「炭素数4?9の分岐脂肪酸の割合が100モル%である脂肪酸と多価アルコールとのエステル」に属するものであり、その含有量は、冷凍機油組成物全量基準で「98.59質量%」であるから、本願発明が規定する「90質量%」という含有量を満足するものである。
したがって、両者の基油(潤滑油基油)に相違するところは見当たらない。
次に、両者の添加剤についてみると、引2発明の「実施例8に係る冷凍機油組成物」は、添加剤として、「(C1)酸化防止剤:ジ‐t.‐ブチル‐p.‐クレゾール(DBPC)」を0.2質量%、「(C2)酸捕捉剤:p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル」を0.2質量%含有するものであるから、本願発明における「冷凍機油全量基準で0.2?0.5質量%のフェノール系酸化防止剤と、酸捕捉剤と、を含有」するという要件を満足するものである。
したがって、両者は、添加剤においても相違するところは見当たらない。
そうすると、両者は、基油及び添加剤において共通しており、冷凍機油自体(その構成成分)に違いはないから、両者の間には、次の一致点及び相違点が存するものと認められる。
・一致点:
炭素数4?9の分岐脂肪酸の割合が100モル%である脂肪酸と多価アルコールとのエステルを冷凍機油全量基準で90質量%以上含有する基油と、
冷凍機油全量基準で0.2?0.5質量%のフェノール系酸化防止剤と、
酸捕捉剤と、
を含有する冷凍機油
・相違点:
本願発明の冷凍機油は、「トリフルオロエチレンの含有量が冷媒全量基準で40質量%以上であるトリフルオロエチレン冷媒と共に用いられる」のに対して、引2発明のものは、「R410A又はHFO-1234yfと共に用いられる」点。
(2) 相違点の検討
ア 引2発明の「実施例8に係る冷凍機油組成物」は、引用文献2の実施例8を見る限り、R410A又はHFO-1234yfを対象冷媒とした耐摩耗性試験にしか供されておらず、その他の冷媒と共に用いた試験例は示されていない。
しかしながら、冷媒に関して、引用文献2の【0150】には、「なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物において含有される冷媒としては、HFC冷媒、不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒・・・などが挙げられる。」と記載されており、さらに、同【0151】には、「HFC冷媒としては、炭素数1?3、好ましくは1?2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC-32)・・・」と記載され、具体例として、上記「R410A」以外のHFC系冷媒も例示されているし、同【0152】には、「不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒としては、フッ素数が3?5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)・・・のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO-1225ye、HFO-1234zeおよびHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。」と記載され、具体例として、上記「HFO-1234yf」以外のHFO系冷媒も例示されている。
そうすると、上記引2発明の「実施例8に係る冷凍機油組成物」は、試験例においては確かにR410A又はHFO-1234yfのみを対象冷媒としているものの、これは、HFC系冷媒あるいはHFO系冷媒の中の好適な冷媒について試験した一例にすぎないものと理解すべきであるから、それ以外のHFC系冷媒あるいはHFO系冷媒についても広く、その対象冷媒として許容するものと解するのが合理的である。また、対象冷媒とする以上、これらの冷媒との適合性についても相応に確認されているものと解するのが合理的である。
イ (ア) 他方、引用文献1の[0002]?[0009]によれば、既存の作動媒体(冷媒)であるHFC系冷媒は、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されているため、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化係数の小さいものの開発が急務となっていること([0003])、そのような冷媒としては、HFO系冷媒が考えられること([0006])、当該HFO系冷媒として知られる、HFO-1225ye、HFO-1234ze、HFO-1234yfなどは、サイクル性能(能力)や燃焼性において課題を有すること([0007])、さらには、上記引1発明に係る冷凍サイクル用作動媒体(冷媒)、すなわち、「1,1,2-トリフルオロエチレンを、冷凍サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、冷凍サイクル用作動媒体」は、このようなHFC系冷媒及びHFO系冷媒が直面する課題に鑑み、燃焼性が抑えられ、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が少なく、かつサイクル性能(能力)に優れる熱サイクルシステムを与える冷媒を提供するために開発されたものであること([0009])、を理解することができる。
なお、冷媒の探求にあたって、地球温暖化係数や冷凍能力に配慮することは、当業者として至極当然のことである。
(イ) また、引1発明に係る「1,1,2-トリフルオロエチレンを、冷凍サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、冷凍サイクル用作動媒体」は、「1,1,2-トリフルオロエチレン」の単独冷媒のみならず、引用文献1の[0060]以降に記載された実施例からも明らかなとおり、既存のHFC系冷媒やHFO系冷媒との混合冷媒をも予定したものであるところ、当該冷媒は、本願発明における「トリフルオロエチレンの含有量が冷媒全量基準で40質量%以上であるトリフルオロエチレン冷媒」に相当するものである。
そして、引1発明に係る当該冷媒は、ポリオールエステル油を潤滑油(基油)として使用することを予定していることから、ポリオールエステル油との適合性については、既に確認され、特段問題を有しないものとして認識されていたと解するのが合理的である。
なお、ポリオールエステル油(POE)は、HFC系冷媒やHFO系冷媒に適合する潤滑油(基油)として当業者間において広く認知されているものである。
ウ (ア) そうすると、上記アのとおり、引用文献2の記載に接した当業者は、引2発明の「実施例8に係る冷凍機油組成物」(ポリオールエステル油に属するもの)につき、R410A又はHFO-1234yfのみならず、それ以外のHFC系冷媒あるいはHFO系冷媒をも広く対象冷媒とするものと理解するのであるから、当該引2発明の冷凍機油組成物を、既に公知であり、上記イ(イ)のとおり、ポリオールエステル油との適合性にも問題がないことが分かっている、引1発明に係る「1,1,2-トリフルオロエチレンを、冷凍サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、冷凍サイクル用作動媒体」を対象冷媒として、これと共に用いることは、当業者にとって容易なことというべきである。
(イ) また、上記イ(ア)のとおり、当該引1発明に係る冷媒は、引2発明のR410AやHFO-1234yfといったHFC系冷媒及びHFO系冷媒の問題点に鑑みて開発されたものであることに照らすと、引2発明のこれらの冷媒の全部あるいは一部を置き換えて、引1発明に係る「1,1,2-トリフルオロエチレンを、冷凍サイクル用作動媒体(100質量%)中、60質量%以上含む、冷凍サイクル用作動媒体」としてみることは、地球温暖化係数や冷凍能力に配慮し、より優れた冷媒を探求している当業者にとって、至極自然なことであるというべきであるから、この点からみても、上記相違点に係る構成は、容易想到の事項ということができる。
(ウ) さらにいうと、新規冷媒(目新しい冷媒)と共に用いる基油を探るにあたって、同種の既存冷媒に対して既に適合性が検証されている既存の基油に着目すること(新規冷媒に対しても当該既存の基油が適合することを期待すること。例えば、新規冷媒としてHFO系冷媒が開発された際に、既存冷媒であるHFC系冷媒において既に使用されていたPOEなどが試用された経緯などを参照した。)は、当業者の常套の手法というべきであるから、引1発明の冷媒(目新しい冷媒)と、これと同種の既存のHFO系冷媒に対して既に適合性が認知されている引2発明の基油との組合せを試みることは、単に、上記の常套の手法に従ったにすぎないのであって、格別の創意を要するものとは認められない。したがって、この点からも、上記相違点に係る構成は、容易想到の事項というほかない。
エ そして、本願発明が上記相違点に係る構成を具備することによる効果についてみても、当該効果は、端的にいえば、本願発明の特定の冷凍機油(引2発明の冷凍機油組成物のような既知の冷凍機油)について、冷媒として目新しい、本願発明の「トリフルオロエチレン冷媒」(引1発明の冷媒)との適合性を見いだしたことに尽きるといえるが、当該効果に係る適合性は、上記ウ(ア)、ウ(ウ)における容易想到性の検討に際しても既に考慮されていること(冷媒と基油の組合せに際して当然に考慮され、期待されていること)であり、もとより、当業者が基油を選択する際に第一に考慮しなければならないこととして当然に認識している事項にほかならない。
したがって、当該効果は、引用文献1、2の記載から予測し得るものであり、格別顕著なものとは言い難いから、上記の容易想到性の判断を左右するほどのものとは認められない。
(3) 請求人の主張に対して
請求人は、令和2年4月24日提出の意見書において、本願発明の効果として、「特に、特定のエステルを基油として用い、フェノール系酸化防止剤を冷凍機油全量基準で0.2?0.5質量%含むことにより、安定性及び耐摩耗性において、臨界的な効果を奏する」と主張するが、本願発明と引2発明とは、請求人が主張する基油及び添加剤に関して何ら相違するところはないから、当該基油及び添加剤の選択による効果は、引2発明が既に具備する効果というべきである。なお、請求人が主張する臨界的な効果を、本願発明の「トリフルオロエチレン冷媒」に対する特有の効果というには、その根拠に乏しいと言わざるを得ない。すなわち、本願明細書の実施例では当該冷媒のうちの極限られたもの(特定の混合冷媒B、C)についてのみしか検証されておらず、その量的な効果もさほどでもないから、当該臨界的な効果を、当該「トリフルオロエチレン冷媒」全般にわたって特有にもたらされる、際だって優れた定量的な効果であるといえるほど、実施例などにおいて十分に裏付けられていないというほかない。
(4) 小活
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引2発明及び引1発明並びに引用文献1及び2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。

第5 むすび

以上の検討のとおり、本願発明、すなわち、請求項1に記載された発明は、特許法第29条第2項所定の規定に違反するものであるから、同法第49条第2号に該当するため、本願は、その余の請求項に係る発明や他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-11 
結審通知日 2020-08-18 
審決日 2020-09-01 
出願番号 特願2014-233735(P2014-233735)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 能宏青鹿 喜芳三須 大樹上坊寺 宏枝  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 日比野 隆治
瀬下 浩一
発明の名称 冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物  
代理人 阿部 寛  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 吉住 和之  
代理人 黒木 義樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 中塚 岳  
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