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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1367400 |
審判番号 | 不服2019-7701 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-11 |
確定日 | 2020-11-10 |
事件の表示 | 特願2015-218517「基板洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開,特開2016- 96337,請求項の数(10)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年11月6日(優先権主張 平成26年11月11日)の出願であって,その手続の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成30年10月16日付け:拒絶理由通知 平成31年 2月13日 :意見書,手続補正書の提出 平成31年 3月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 1年 6月11日 :審判請求書,手続補正書の提出(以下この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)本願請求項1-12に係る発明は,その優先権主張の日前に頒布された以下の引用文献1-10に基づいて,その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2009-117794号公報 2.特開2006-286947号公報 3.特開2013-4705号公報 4.特公平7-95540号公報 5.特開2006-114884号公報 6.特開2009-16752号公報 7.特開2003-338480号公報 8.特開平10-70100号公報 9.特開平11-283948号公報 10.特開2003-188138号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって,請求項1,6の「2流体ジェット」に「キャリアガスを含む」という事項を追加する補正,及び,請求項1の「気体」に「キャリアガスを含む」という事項を追加する補正,及び,請求項6の「気体」に「2流体ノズルから前記ケーシング内に供給されたキャリアガスを含む」という事項を追加する補正,及び,請求項10の「薬液供給ノズル」に「前記2流体ジェットが供給されている前記基板の面と同じ面に供給する」という事項を追加する補正は,いずれも特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。また,当該補正は,当初明細書の段落【0044】,【0053】,【0073】等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえる。 また,本件補正前の請求項2,3を削除する補正,及び,それ以降の請求項の項番号を繰り上げる補正は,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除に該当する。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,本件補正後の請求項1-10に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,令和1年6月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, 前記2流体ノズルから供給された洗浄液を前記キャリアガスを含む気体とともに排出する排出孔と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させ, 前記排出孔からの排気量は,排気量より給気量が低くなるように制御されていることを特徴とする基板洗浄装置。 【請求項2】 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の角速度で前記カバーを回転させる,請求項1に記載の基板洗浄装置。 【請求項3】 前記基板の外端と前記カバーの先端との径方向の距離Aは,2mm?80mmの範囲に設定され, 前記基板と前記カバーの先端との高さ方向の距離Bは,3mm?50mmの範囲に設定され, 前記基板の外端と前記カバーの内周面との径方向の距離Cは,2mm?80mmの範囲に設定される,請求項1または請求項2に記載の基板洗浄装置。 【請求項4】 前記基板の外端と前記カバーの先端との径方向の距離Aは,2mmに設定され, 前記基板と前記カバーの先端との高さ方向の距離Bは,15mmに設定され, 前記基板の外端と前記カバーの内周面との径方向の距離Cは,19mmに設定される, 請求項3に記載の基板洗浄装置。 【請求項5】 前記2流体ノズルは,前記基板の回転方向の上流側に向けて前記2流体ジェットを噴出するように,所定角度で傾けて設けられている,請求項1に記載の基板洗浄装置。 【請求項6】 基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させる基板洗浄装置であって, 前記基板洗浄装置は, 前記基板洗浄装置を収容するケーシングと, 前記ケーシングの壁面に設けられ,前記ケーシング内に気体を流入させる一対の気体流入口と, 前記ケーシングの下部に設けられ,前記2流体ノズルから前記ケーシング内に供給されたキャリアガスを含む気体を排出する気体排出口と, を備え, 前記一対の気体流入口は,前記ケーシングの対向する壁面に設けられ,前記基板より高い位置に配置されていることを特徴とする基板洗浄装置。 【請求項7】 前記基板洗浄装置の上流側および下流側には,それぞれ基板搬送エリアが隣接して設けられており, 前記気体流入口は,前記基板搬送エリアの送風ユニットから送風される気体を前記ケーシング内に導入する,請求項6に記載の基板洗浄装置。 【請求項8】 前記気体流入口には,前記ケーシング内に前記気体を供給するための気体供給ラインが接続されている,請求項6に記載の基板洗浄装置。 【請求項9】 前記2流体ノズルは,導電性部材で構成される,請求項1?請求項8のいずれかに記載の基板洗浄装置。 【請求項10】 基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けて2流体ジェットを噴出させる2流体ノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させる基板洗浄装置であって, 前記基板洗浄装置は, 前記2流体ジェットが前記基板の面に供給されている際に,導電性を有する薬液を前記2流体ジェットが供給されている前記基板の面と同じ面に供給する薬液供給ノズルを備えることを特徴とする基板洗浄装置。」 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。) 「【請求項1】 基板を水平に保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる回転機構と, 前記基板に洗浄液を供給する液供給ノズルと, 前記基板の周囲に配置され,前記基板と略同一の速度で回転する回転カバーとを備え, 前記回転カバーは,前記基板を囲む内周面を有し, 前記内周面は,その下端から上端まで,径方向内側に傾斜していることを特徴とする基板洗浄装置。」 「【請求項3】 前記基板と前記回転カバーとを,回転軸に沿って相対移動させる相対移動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。」 「【0001】 本発明は,基板に洗浄液(例えば,純水や薬液)を供給して基板を洗浄し,洗浄した基板を乾燥させる基板洗浄装置に関するものである。」 「【0011】 本発明の実施形態に係る基板洗浄装置について図面を参照して説明する。 図1は本発明の第1の実施形態に係る基板洗浄装置を模式的に示す断面図である。図2は図1の基板洗浄装置の平面図である。 図1に示すように,基板洗浄装置は,基板Wを水平に保持する基板保持機構1と,基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2と,基板Wの周囲に配置される回転カバー3と,基板Wの表面(フロント面)に洗浄液として純水を供給するフロントノズル4とを備えている。洗浄液としては,純水以外に薬液が挙げられる。 【0012】 基板保持機構1は,基板Wの周縁部を把持する複数のチャック10と,これらチャック10が固定される円形の第1のステージ11Aと,この第1のステージ11Aを支持する中空状の第1の支持軸12Aと,第1のステージ11Aを収容する凹部を有する円形の第2のステージ11Bと,第2のステージ11Bを支持する中空状の第2の支持軸12Bとを有している。第1の支持軸12Aは,第2の支持軸12Bの内部を通って延びている。すなわち,第1のステージ11A,第2のステージ11B,第1の支持軸12A,および第2の支持軸12Bは,同軸上に配置されている。回転カバー3は,第2のステージ11Bの端部に固定され,第2のステージ11Bと回転カバー3とは同軸上に配置されている。チャック10に保持された基板Wと回転カバー3とは同軸上に位置する。 【0013】 第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bとは直動ガイド機構15によって連結されている。この直動ガイド機構15は,第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bの長手方向(回転軸方向)の相対移動を許容しつつ,第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bとの間でトルクの伝達を可能とするものである。直動ガイド機構15の具体例としては,ボールスプライン軸受が挙げられる。 【0014】 第2の支持軸12Bの外周面にはモータ2が連結されている。モータ2のトルクは,直動ガイド機構15を介して第1の支持軸12Aに伝達され,これによりチャック10に保持された基板Wが回転する。第1のステージ11Aと第2のステージ11Bとは,直動ガイド機構15を介して常に同期して回転する。すなわち,基板Wと回転カバー3とは一体に回転し,両者の相対速度は0となる。なお,基板Wと回転カバー3との間に若干の速度差があってもよい。この場合は,基板Wと回転カバー3をそれぞれ別々の回転機構により回転させることができる。なお,本明細書において,基板Wと回転カバー3とを略同一の速度で回転させるとは,基板Wと回転カバー3とを同一の方向に略同一の角速度で回転させることをいい,互いに逆方向に回転させることを含まない。 【0015】 第1の支持軸12Aには,上下動機構としてのアクチュエータ23が連結機構24を介して連結されている。連結機構24は,第1の支持軸12Aの回転を許容しつつ,アクチュエータ23の回転軸方向の駆動力を第1の支持軸12Aに伝達する。図3に示すように,アクチュエータ23は,連結機構24を介して第1のステージ11A,第1の支持軸12A,およびチャック10(すなわち基板W)を上下動させる。このように,アクチュエータ23は,基板Wと回転カバー3とを回転軸に沿って相対移動させる相対移動機構として機能する。 【0016】 第1の支持軸12Aの内部には,洗浄液供給源に接続されたバックノズル17と,乾燥気体供給源に接続されたガスノズル18とが配置されている。洗浄液供給源には,洗浄液として純水が貯留されており,バックノズル17を通じて基板Wの裏面に純水が供給されるようになっている。また,乾燥気体供給源には,乾燥気体として,N2ガスまたは乾燥空気などが貯留されており,ガスノズル18を通じて基板Wの裏面に乾燥気体が供給されるようになっている。 【0017】 フロントノズル4は,基板Wの中心を向いて配置されている。このフロントノズル4は,図示しない純水供給源(洗浄液供給源)に接続され,フロントノズル4を通じて基板Wの表面の中心に純水が供給されるようになっている。また,基板Wの上方には,ロタゴニ乾燥を実行するための2つのノズル20,21が並列して配置されている。ノズル20は,基板Wの表面にIPA蒸気(イソプロピルアルコールとN2ガスとの混合気)を供給するためのものであり,ノズル21は基板Wの表面の乾燥を防ぐために純水を供給するものである。これらノズル20,21は基板Wの径方向に沿って移動可能に構成されている。 【0018】 図4は,基板保持機構1を示す平面図である。図1および図4に示すように,第2のステージ11Bには,複数の排出孔25が形成されている。これら排出孔25は,回転カバー3の下端に位置する上部開口と,第2のステージ11Bの下面に位置する下部開口とを有している。排出孔25は,図4に示すように,回転カバー3の周方向に延びる長孔であり,排出孔25は,その下部開口に向かって径方向外側に傾斜している。上述したフロントノズル4およびバックノズル17から供給された洗浄液(純水)やノズル21から供給された純水は,ガスノズル18からのガスや周囲雰囲気(通常は空気)とともにこの排出孔25を通じて排出される。」 「【図1】 」 (2)上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基板に洗浄液(例えば,純水や薬液)を供給して基板を洗浄し,洗浄した基板を乾燥させる基板洗浄装置であって, 基板洗浄装置は,基板Wを水平に保持する基板保持機構1と,基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2と,基板Wの周囲に配置される回転カバー3と,基板Wの表面(フロント面)に洗浄液として純水または薬液を供給するフロントノズル4とを備え, 基板保持機構1は,基板Wの周縁部を把持する複数のチャック10と,これらチャック10が固定される円形の第1のステージ11Aと,この第1のステージ11Aを支持する中空状の第1の支持軸12Aと,第1のステージ11Aを収容する凹部を有する円形の第2のステージ11Bと,第2のステージ11Bを支持する中空状の第2の支持軸12Bとを有し,第1の支持軸12Aは,第2の支持軸12Bの内部を通って延び,第1のステージ11A,第2のステージ11B,第1の支持軸12A,および第2の支持軸12Bは,同軸上に配置され,回転カバー3は,第2のステージ11Bの端部に固定され,第2のステージ11Bと回転カバー3とは同軸上に配置され,チャック10に保持された基板Wと回転カバー3とは同軸上に位置し, 第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bとは直動ガイド機構15によって連結され,この直動ガイド機構15は,第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bの長手方向(回転軸方向)の相対移動を許容しつつ,第1の支持軸12Aと第2の支持軸12Bとの間でトルクの伝達を可能とするものであって, 第2の支持軸12Bの外周面にはモータ2が連結され,モータ2のトルクは,直動ガイド機構15を介して第1の支持軸12Aに伝達され,これによりチャック10に保持された基板Wが回転し,第1のステージ11Aと第2のステージ11Bとは,直動ガイド機構15を介して常に同期して回転し,基板Wと回転カバー3とは一体に回転し,基板Wと回転カバー3とを同一の方向に略同一の角速度で回転させ,両者の相対速度は0となり, 第1の支持軸12Aには,上下動機構としてのアクチュエータ23が連結機構24を介して連結され,連結機構24は,第1の支持軸12Aの回転を許容しつつ,アクチュエータ23の回転軸方向の駆動力を第1の支持軸12Aに伝達し,アクチュエータ23は,連結機構24を介して第1のステージ11A,第1の支持軸12A,およびチャック10(すなわち基板W)を上下動させ,アクチュエータ23は,基板Wと回転カバー3とを回転軸に沿って相対移動させる相対移動機構として機能し, 第1の支持軸12Aの内部には,洗浄液供給源に接続されたバックノズル17と,乾燥気体供給源に接続されたガスノズル18とが配置され,洗浄液供給源には,洗浄液として純水が貯留されており,バックノズル17を通じて基板Wの裏面に純水が供給され,乾燥気体供給源には,乾燥気体として,N2ガスまたは乾燥空気などが貯留されており,ガスノズル18を通じて基板Wの裏面に乾燥気体が供給されるようになっており, フロントノズル4は,基板Wの中心を向いて配置され,このフロントノズル4は,純水供給源(洗浄液供給源)に接続され,フロントノズル4を通じて基板Wの表面の中心に純水が供給されるようになっており,基板Wの上方には,ロタゴニ乾燥を実行するための2つのノズル20,21が並列して配置され,ノズル20は,基板Wの表面にIPA蒸気(イソプロピルアルコールとN2ガスとの混合気)を供給するためのものであり,ノズル21は基板Wの表面の乾燥を防ぐために純水を供給し,これらノズル20,21は基板Wの径方向に沿って移動可能に構成され, 排出孔25は,フロントノズル4およびバックノズル17から供給された洗浄液(純水)やノズル21から供給された純水を,ガスノズル18からのガスや周囲雰囲気(通常は空気)とともに排出する 基板洗浄装置。」 2.引用文献2について (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は,半導体ウエハやディスプレイ等の電子デバイスを洗浄する電子デバイス洗浄方法及び電子デバイス洗浄装置に関し,特にデバイスパターンを損傷することなくパーティクルを除去することができるものに関する。」 「【0019】 洗浄部20は,制御部60により制御される電動モータ21と,この電動モータ21の回転軸22に取り付けられ,半導体ウエハWを保持するスピンチャック23と,スピンチャック23に対向して配置された二流体ノズル30とを備えている。 【0020】 二流体ノズル30は,図2に示すように,接地されたノズル本体31と,このノズル本体31の中心部に設けられ,高圧窒素が通流するガス流路32と,このガス流路32を囲むようにして配置され,洗浄水が通流する洗浄水路33とを備えている。なお,図1中34はノズルオリフィスを示している。ガス流路32は後述する窒素配管42,洗浄水路33は後述する洗浄水配管52にそれぞれ接続されており,それぞれ高圧窒素,洗浄水を導入するように構成されている。また,二流体ノズル30は,図示しない昇降・移動機構によって,半導体ウエハW面内の洗浄水の供給位置を変更できるように支持されている。」 「【図2】 」 (2)上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.半導体ウエハやディスプレイ等の電子デバイスを洗浄する電子デバイス洗浄装置において,高圧窒素が通流するガス流路32と,このガス流路32を囲むようにして配置され,洗浄水が通流する洗浄水路33とを備える二流体ノズル30を用いて電子デバイスを洗浄すること。 3.引用文献3について (1)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は,基板処理方法及び基板処理ユニットに関し,特に半導体ウェハなどの基板の表面の洗浄や乾燥等の処理を基板に接触することなく非接触で行うのに用いられる基板処理方法及び基板理処理ユニットに関する。」 「【0030】 図2及び図3に示すように,本発明の実施形態の基板処理ユニットとしての第2洗浄ユニット18は,図示しないチャック等で保持され該チャック等の回転で回転する基板Wの周囲を囲繞する洗浄槽40と,この処理槽40の側方に立設した回転自在な支持軸42と,この支持軸42の上端に基部を連結した水平方向に延びる揺動アーム44を備えている。揺動アーム44の自由端(先端)に,流体ノズル(2流体ノズル)46が上下動自在に取り付けられている。 【0031】 流体ノズル46には,N_(2)ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給ライン50と,純水またはCO_(2)ガス溶解水等の洗浄液を供給する洗浄液供給ライン52が接続されており,流体ノズル46の内部に供給されたN_(2)ガス等のキャリアガスと純水またはCO_(2)ガス溶解水等の洗浄液を流体ノズル46から高速で噴出させることで,キャリアガス中に洗浄液が微小液滴(ミスト)として存在する2流体ジェット流が生成される。この流体ノズル46で生成される2流体ジェット流を回転中の基板Wの表面に向けて噴出させて衝突させることで,微小液滴の基板表面への衝突で発生した衝撃波を利用した基板表面のパーティクル等を除去(洗浄)を行うことができる。」 (2)上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.半導体ウェハなどの基板の表面の洗浄や乾燥等の処理を基板に接触することなく非接触で行うのに用いられる基板理処理ユニットに関して,N_(2)ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給ライン50と,純水またはCO_(2)ガス溶解水等の洗浄液を供給する洗浄液供給ライン52が接続された2流体ノズル46を用いて,基板表面のパーティクル等を除去(洗浄)すること。 4.引用文献4について (1)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】板状の被洗浄基板を回転させながら,前記基板の両面に基板の回転方向に逆らって,かつ基板面と鋭角の傾斜をもって超音波振動が伝搬された洗浄液を基板の回転中心軸の半径方向に走査移動させながら集中的に噴射,浴びせることを特徴とする超音波スプレイノズルを用いた基板両面の洗浄方法。」 「第3図(a)は被洗浄基板1の回転方向(矢印17)とスプレイノズル5の走査移動方向18を示した説明図,第3図(b)はスプレイノズル5の基板面1に対する傾斜角θと,ノズル先端から基板面迄の距離dを説明するための図である。」(2頁4欄44行-48行) 「【図3】 」 (2)上記記載から,引用文献4には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.超音波スプレイノズルを用いて,超音波振動が伝搬された洗浄液を基板の回転中心軸の半径方向に走査移動させながら集中的に噴射,浴びせることで基板両面を洗浄すること。 イ.スプレイノズル5を基板面1に対して傾斜角θで設けること。 5.引用文献5について (1)引用文献5の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は,半導体デバイスの製造に用いられる基板(半導体ウエハ等)に洗浄処理を施す基板洗浄処理装置及び基板処理ユニットに関するものである。」 「【0059】 以下,本発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。図1及び図2は本発明に係る基板洗浄処理装置の実施の形態を示す図で,図1は概略斜視図,図2は概略平面図である。この基板洗浄処理装置はベース一体型の1つのフレーム1に,基板を搬送する基板搬送装置としての固定式の搬送ロボット2と,基板の処理を行なう基板処理ユニット3,3と,基板収納カセット4,4を載置する基板ロードポート5,5と,基板処理ユニット3,3へ処理液を供給する処理液供給装置6を搭載している。 【0060】 フレーム1の天井部にはファンフィルタユニット7が取り付けられ,フレーム1の上部には制御盤8が搭載されている。また,基板処理ユニット3,3の外側側部には計装部9,9と排気ダクト10,10が配置されている。固定式の搬送ロボット2が配置されている基板搬送室11と基板処理ユニット3,3の間には,ダンパー12,12が設けられている。基板搬送室11の外側には,メンテナンスのために人が入り込めるスペース13が設けられ,基板処理ユニット3,3の外側にもメンテナンスのために人が入り込めるスペース14が設けられている。」 「【0066】 図6及び図7は,本発明に係る基板洗浄処理装置内の空気の流れ(気流)を示す図である。この基板洗浄処理装置は通常クリーンルーム内に設置され,クリーンルーム内から取り入れた空気はファンフィルタユニット7を通ってパーティクル等が除去され,装置内に導入される。装置内では図6に矢印Aで示すロード側領域から矢印Bで示す処理側領域に空気が流れるようになっている。図7に示すように,ファンフィルタユニット7を通った空気は,その一部が下降気流A01として基板搬送室11内を下降し,他の空気A02は基板処理ユニット3の上部に導かれ,分散された下降気流A03となって基板処理ユニット3の天井から基板処理ユニット3内を下降する。なお,ファンフィルタユニット7の前にはケミカルフィルタ17を設置してもよい。また,計装部9は両基板処理ユニット3,3の装置外側の側部に配置されている。 【0067】 基板搬送室11の空気の一部は図6に示すように,基板搬送室11と基板処理ユニット3の間に設けた供給量調節自在なダンパー12を介して気流A09として基板処理ユニット3内に導かれる。また,基板処理ユニット3の下には基板処理ユニット3に計装部9の中の処理液を供給するための各種バルブが収納されたバルブボックス16が配置されており,このバルブボックス16に図7に示すように,基板搬送室11内の一部の空気が気流A04として流れ込むようになっている。また,フレーム1,基板処理ユニット3,計装部9,処理液供給装置6の各部は周囲を外壁により仕切られており,各々所定の圧力に調節する。 【0068】 また,基板処理ユニット3内では各種の処理液や洗浄液が取り扱われるから空気はこれらのミスト等により汚染されており,基板処理ユニット3内の空気はその底部から排気A05となって専用の排気ダクト10を通って排気される。また,バルブボックス16内の空気も同様にミスト等で汚染される可能性があるから排気A06となって排気ダクト10を通って排気される。また,基板搬送室11の空気の一部は,図7に示すようにダンパー15を通して装置外に排気A07として排出される。また,基板搬送室11内の一部の空気は気流A08としてバルブボックス16の下方を通って流れ,排気ダクトから排出される。空気は,温度・湿度を所定値に調節されていてもよく,又空気の代りに不活性ガス(例えばN_(2)ガス)を供給するようにしてもよい。これにより処理基板の処理中又は搬送中の変質を防止することができる。」 「【図6】 」 「【図7】 」 (2)上記記載から,引用文献5には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.半導体デバイスの製造に用いられる基板に洗浄処理を施す基板洗浄処理装置及び基板処理ユニットにおいて,ファンフィルタユニット7を通った空気は,その一部が下降気流A01として基板搬送室11内を下降し,他の空気A02は基板処理ユニット3の上部に導かれ,分散された下降気流A03となって基板処理ユニット3の天井から基板処理ユニット3内を下降し,基板搬送室11の空気の一部は基板搬送室11と基板処理ユニット3の間に設けた供給量調節自在なダンパー12を介して気流A09として基板処理ユニット3内に導かれ,基板処理ユニット3内では各種の処理液や洗浄液が取り扱われるから空気はこれらのミスト等により汚染されており,基板処理ユニット3内の空気はその底部から排気A05となって専用の排気ダクト10を通って排気されること。 6.引用文献6について (1)引用文献6の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理装置であって, 基板を保持する保持部と, 前記基板上に純水および導電性液体を処理液としてそれぞれ供給する処理液供給部と, 本体が絶縁材料または半導電材料にて形成され,前記保持部の周囲を囲んで前記基板から飛散する処理液を受け止める周壁部を有するカップ部と, 前記導電性液体の前記基板上への供給が開始される際に前記カップ部の静電容量を第1容量とし,前記基板上に供給された前記純水が前記周壁部へ飛散する期間の少なくとも途中から前記純水の飛散が終了するまでの間,前記カップ部の静電容量を前記第1容量よりも小さい第2容量とする静電容量変更部と, を備えることを特徴とする基板処理装置。」 「【0026】 処理液供給部3は,供給管31に接続される吐出部32を有する。供給管31は吐出部32とは反対側にて分岐しており,一方は純水用バルブ331を介して純水(すなわち,脱イオン水)の供給源へと接続され,他方は薬液用バルブ332を介して所定の薬液の供給源へと接続される。処理液供給部3では,純水用バルブ331または薬液用バルブ332が開放されることにより,吐出部32から純水および(希釈された)薬液が処理液としてそれぞれ基板9上に供給される。吐出部32から吐出される上記薬液は水を含む液体であり,導電性を有している。」 (2)上記記載から,引用文献6には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理装置において,吐出部32から,水を含み導電性を有する薬液を基板9に供給すること。 7.引用文献7について (1)引用文献7の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は基板を回転させながら処理液によって処理したり,処理液によって処理された基板を乾燥処理するスピン処理装置に関する。」 「【0013】 【発明が解決しようとする課題】処理槽内の圧力が変動すると,処理槽内における空気の流れも変動することが避けられない。たとえば,ファン・フィルタユニットから所定量の清浄空気が供給されているときに運転されるスピン処理装置の数が増加すると,各処理槽の排気ポンプによる排気量が減少する。 【0014】排気量が減少すると,ファン・フィルタユニットからの清浄空気の供給量が排気量よりも多くなり,処理槽内の圧力が上昇して処理槽内に供給された空気がカップ体を通じて円滑に排出され難くなる。 【0015】その結果,処理槽内には乱流が発生し,その乱流がカップ体の外周面に沿って流れ,一部はカップ体の上面に形成された開口部から内部に流入する虞がある。処理槽内で生じた乱流には,処理槽の内面に付着した塵埃が含まれ易くなる。そのため,乱流の一部がカップ体内に入り込むことで,基板が汚染されるということがある。」 「【0034】つまり,ファン・フィルタユニット32からの清浄空気の供給量に対し,排出管5からの排出量がほぼ同じ或いはわずかに多い状態であれば,ファン・フィルタユニット32から処理槽1内に供給された清浄空気は,カップ体2内を通って円滑に排出されるから,処理槽1内で乱流が生じることがない。」 (2)上記記載から,引用文献7には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 基板を回転させながら処理液によって処理したり,処理液によって処理された基板を乾燥処理するスピン処理装置において,ファン・フィルタユニット32からの清浄空気の供給量に対し,排出管5からの排出量がほぼ同じ或いはわずかに多い状態とすることで,ファン・フィルタユニット32から処理槽1内に供給された清浄空気は,カップ体2内を通って円滑に排出され,処理槽1内で乱流が生じることがないこと。 8.引用文献8について (1)引用文献8の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,リソグラフィー処理工程等で基板の洗浄・塗布処理を行う基板処理装置に関するものである。」 「【0018】又,本発明の基板処理装置は,処理チャンバーを,インナーカップとアウターチャンバーとで構成すると,ダウンフロー部の風量<排気量に制御すれば,風量の差分が,インナーカップとアウターチャンバーとの間を通過するので,インナーカップ内では押し込み風量≒排気量になり,前記の龍巻現象が発生せず,前記処理チャンバー内の風量の分布が均一になり,排気に対するデッドポイントが無くなり,塗布ノズルによる塗布膜の均一性が向上し,洗浄作業や塗布作業後に処理チャンバー内に残る水や有機溶剤の霧の排出が短時間で終了するための制御が容易になる。」 (2)上記記載から,引用文献8には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.リソグラフィー処理工程等で基板の洗浄・塗布処理を行う基板処理装置に関して,ダウンフロー部の風量<排気量に制御すれば,風量の差分が,インナーカップとアウターチャンバーとの間を通過するので,インナーカップ内では押し込み風量≒排気量になり,龍巻現象が発生せず,前記処理チャンバー内の風量の分布が均一になり,排気に対するデッドポイントが無くなり,塗布ノズルによる塗布膜の均一性が向上し,洗浄作業や塗布作業後に処理チャンバー内に残る水や有機溶剤の霧の排出が短時間で終了するための制御が容易になること。 9.引用文献9について (1)引用文献9の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献9には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,半導体ウエハ,液晶表示装置用ガラス基板等のフラットパネルディスプレイ用基板およびフォトマスク用ガラス基板などの被処理基板を回転させながら,この基板に所定の処理を施すための基板回転処理装置に関する。」 「【0027】なお,第1および第2の蓋体21,22の間隔dは,ダウンフローの取り入れが良好に行え,かつ,裏面ノズルN3,N4からの処理液の外部への漏洩を防止できるように定められればよく,たとえば,1mm以上5mm以下とされることが好ましく,2mm以上3mm以下とすることがさらに好ましい。図3は,この発明の第2の実施形態に係る基板回転処理装置の内部構成を説明するための図解的な断面図であり,図4は,その平面図である。この図3において,上述の図1に示された各部に相当する部分には図1の場合と同一の参照符号を付して示す。この実施形態では,処理カップ3などを収容している処理チャンバ5Aは,ほぼ円筒状に形成されている。そして,この処理チャンバ5Aの上方の開口4Aは,第1の蓋体41と,円板状の第2の蓋体42とによって閉塞されている。より具体的には,第1の蓋体41が開口4Aを閉塞するように配置されており,この第1の蓋体41の上に第2の蓋体42が配設されている。 【0028】第1の蓋体41は,平面視において格子状に配列された複数の開口部45を有している。また,第2の蓋体42は,天面部42Aを有する円筒状,すなわちキャップ状に形成されており,その側面部42Bには,クリーンルーム内のダウンフロー30を側方から第1の蓋体41の上方の空間へと取り込むためのほぼ矩形の開口部46が,たとえば周方向に沿って等間隔に4個形成されている。」 「【図3】 」 (2)上記記載から,引用文献9には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.半導体ウエハ,液晶表示装置用ガラス基板等のフラットパネルディスプレイ用基板およびフォトマスク用ガラス基板などの被処理基板を回転させながら,この基板に所定の処理を施すための基板回転処理装置に関して,クリーンルーム内のダウンフロー30を側方から第1の蓋体41の上方の空間へと取り込むためのほぼ矩形の開口部46を複数設けること。 10.引用文献10について (1)引用文献10の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献10には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,液処理方法及び液処理装置に関するもので,更に詳細には,例えば半導体ウエハやLCD基板等の基板の表面に所定の処理例えば洗浄処理を施す液処理方法及び液処理装置に関するものである。」 「【0064】上記のように構成される洗浄ユニット60によれば,スピンチャック62を回転させた状態で,洗浄液供給ノズル63を待機位置からウエハWの上方のX方向にスキャンさせて洗浄処理を行うことができる。この洗浄処理工程において,図10及び図11に示したように,洗浄液である純水がウエハWの表面に噴射(供給)され,発散されることで,ウエハW表面側が帯電されウエハW表面側にマイナスの残留電荷が蓄積される。この現象を防止するために,洗浄処理工程中に,開閉弁V1,V2を開いて管状ノズル65aを介して純水をウエハWの裏面中心部に供給すると,除電用の純水は負帯電材である管状ノズル65aとの摩擦接触によってマイナスに帯電されて,ウエハW裏面側に噴射(供給)される。これにより,ウエハWはマイナスの電荷を帯びるので反発作用によってウエハWの表面側がマイナスに帯電されるのを抑制することができる。この際,CPU600から予め記憶されたレシピに基づく信号を開閉弁V1,V2,V3,V4及びマスフローコントローラMF1,MF2,MF3,MF4に伝達することにより除電用流体(純水)の帯電量が制御される。」 (2)上記記載から,引用文献10には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.半導体ウエハやLCD基板等の基板の表面に洗浄処理を施す液処理装置に関して,洗浄液である純水を,負帯電材である管状ノズル65aとの摩擦接触によってマイナスに帯電させ,ウエハW裏面側に噴射(供給)することで,ウエハWはマイナスの電荷を帯び,反発作用によってウエハWの表面側がマイナスに帯電されるのを抑制することができること。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア.引用発明の「基板W」,「基板Wを水平に保持する基板保持機構1」は,本願発明1の「基板」,「基板を保持する基板保持機構」にそれぞれ相当する。 イ.引用発明の「基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2」は,本願発明1の「前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構」に相当する。 ウ.引用発明の「ノズル21」は,「基板Wの表面の乾燥を防ぐために純水を供給」するものであるから,本願発明1の「基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」と,後記相違点1で相違するものの,「基板の表面に向けて」液体を噴出させる「ノズル」である点で一致する。 エ.引用発明の「基板Wの周囲に配置される回転カバー3」は,本願発明1の「基板の周囲に配置されるカバー」に相当する。 オ.引用発明の「モータ2」は,「モータ2のトルクは,直動ガイド機構15を介して第1の支持軸12Aに伝達され,これによりチャック10に保持された基板Wが回転し,第1のステージ11Aと第2のステージ11Bとは,直動ガイド機構15を介して常に同期して回転し,基板Wと回転カバー3とは一体に回転」するから,「モータ2」によって「回転カバー3」と「基板W」は同一の回転方向に回転するといえる。よって,引用発明の「モータ2」は,本願発明1の「カバーを回転させ」,「基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させ」る「カバー回転機構」に相当する。 カ.引用発明の「排出孔25」は,「フロントノズル4およびバックノズル17から供給された洗浄液(純水)やノズル21から供給された純水」を排出するから,本願発明1の「2流体ノズルから供給された洗浄液を前記キャリアガスを含む気体とともに排出する排出孔」と,後記相違点2,3で相違するものの,ノズルから供給された液体を排出する排出孔である点で一致する。 キ.引用発明の「基板洗浄装置」は,本願発明1の「基板洗浄装置」に相当する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 <一致点> 「基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けて液体を噴出させるノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, 前記ノズルから供給された液体を排出する排出孔と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させることを特徴とする基板洗浄装置。」 <相違点> (相違点1) 本願発明1の「ノズル」は,「キャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」であるのに対して,引用発明の「ノズル21」はこの点について特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1の「排出孔」は,「前記2流体ノズルから供給された洗浄液を前記キャリアガスを含む気体とともに排出する」のに対して,引用発明の「排出孔25」は,この点について特定されていない点。 (相違点3) 「排出孔」について,本願発明1は「排出孔からの排気量は,排気量より給気量が低くなるように制御されている」のに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,まず,上記相違点2について検討する。 上記第5の3.で指摘した通り,2流体ジェットはN_(2)ガス等のキャリアガスと洗浄液とを流体ノズルから高速で噴出させることで,キャリアガス中に洗浄液が微小液滴(ミスト)として存在する2流体ジェット流が生成され,これを基板の表面に向けて噴出させて衝突させることで,微小液滴の基板表面への衝突で発生した衝撃波を利用した基板表面のパーティクル等を洗浄する方式であるところ,その洗浄力は,キャリアガスを用いず洗浄液のみで洗浄を行う方式よりも大きく,より強力に基板表面のパーティクルを除去する方式と理解される。 一方,引用発明が適用される工程は,基板の洗浄が完了した後のロタゴニ乾燥の工程であるところ,当該ロタゴニ乾燥が開始される時点で,既に基板表面のパーティクルは除去されているから,当該ロタゴニ乾燥の工程において,引用文献2,3に記載されているような,パーティクルをより強力に除去することを目的とする2流体ジェットを適用する動機付けはないというべきである。すなわち,引用発明において,引用文献2,3に記載された事項を適用することにより,相違点2に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。 また,相違点2に係る構成は、引用文献4-10には記載されていない。 そして,本願発明1は,「基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」と「基板の周囲に配置されるカバーを回転させるカバー回転機構」という構成を有することで,2流体ノズルから基板に供給された洗浄液が回転カップと衝突する際の液滴の相対速度を抑制し,2流体ジェット洗浄時の汚れが基板に再付着することを防止するという効果を含む,本願明細書に記載された顕著な効果を奏するものと認められる。 (3)小括 上記(1),(2)のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明および引用文献2-10に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2-5について 本願発明2-5は,本願発明1の相違点2に係る構成を含み,さらに限定したものであるから,本願発明2-5も,引用発明および引用文献2-10に記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.本願発明6について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア.引用発明の「基板W」,「基板Wを水平に保持する基板保持機構1」は,本願発明6の「基板」,「基板を保持する基板保持機構」にそれぞれ相当する。 イ.引用発明の「基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2」は,本願発明6の「前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構」に相当する。 ウ.引用発明の「ノズル21」は,「基板Wの表面の乾燥を防ぐために純水を供給」するものであるから,本願発明6の「基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」と,後記相違点4で相違するものの,「基板の表面に向けて」液体を噴出させる「ノズル」である点で一致する。 エ.引用発明の「基板Wの周囲に配置される回転カバー3」は,本願発明6の「基板の周囲に配置されるカバー」に相当する。 オ.引用発明の「モータ2」は,「モータ2のトルクは,直動ガイド機構15を介して第1の支持軸12Aに伝達され,これによりチャック10に保持された基板Wが回転し,第1のステージ11Aと第2のステージ11Bとは,直動ガイド機構15を介して常に同期して回転し,基板Wと回転カバー3とは一体に回転」するから,「モータ2」によって「回転カバー3」と「基板W」は同一の回転方向に回転するといえる。よって,引用発明の「モータ2」は,本願発明6の「カバーを回転させ」,「基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させ」る「カバー回転機構」に相当する。 カ.引用発明の「基板洗浄装置」は,本願発明6の「基板洗浄装置」に相当する。 したがって,本願発明6と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 <一致点> 「基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けて液体を噴出させる2流体ノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させる基板洗浄装置。」 <相違点> (相違点4) 本願発明6の「ノズル」は,「キャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」であるのに対して,引用発明の「ノズル21」はこの点について特定されていない点。 (相違点5) 本願発明6は,「基板洗浄装置を収容するケーシング」を備え,「前記ケーシングの壁面に設けられ,前記ケーシング内に気体を流入させる一対の気体流入口と,前記ケーシングの下部に設けられ,前記2流体ノズルから前記ケーシング内に供給されたキャリアガスを含む気体を排出する気体排出口」を備え,「前記一対の気体流入口は,前記ケーシングの対向する壁面に設けられ,前記基板より高い位置に配置されてい」るのに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。 (2)相違点についての判断 相違点4について検討する。 上記相違点2についての検討と同様にして,引用文献2,3に記載された2流体ジェットのノズルを,引用発明に適用する動機付けはないというべきである。すなわち,引用発明において,引用文献2,3に記載された事項を適用することにより,相違点4に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。 また,相違点4に係る構成は、引用文献4-10には記載されていない。 (3)小括 上記(1),(2)のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明6は,当業者であっても,引用発明および引用文献2-10に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4.本願発明7-9について 本願発明7-9は,相違点4に係る構成を含み,さらに限定したものであるから,本願発明7-9も,引用発明および引用文献2-10に記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.本願発明10について (1)対比 本願発明10と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア.引用発明の「基板W」,「基板Wを水平に保持する基板保持機構1」は,本願発明10の「基板」,「基板を保持する基板保持機構」にそれぞれ相当する。 イ.引用発明の「基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2」は,本願発明10の「前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構」に相当する。 ウ.引用発明の「ノズル21」は,「基板Wの表面の乾燥を防ぐために純水を供給」するものであるから,本願発明10の「基板の表面に向けてキャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」と,後記相違点6で相違するものの,「基板の表面に向けて」液体を噴出させる「ノズル」である点で一致する。 エ.引用発明の「基板Wの周囲に配置される回転カバー3」は,本願発明10の「基板の周囲に配置されるカバー」に相当する。 オ.引用発明の「モータ2」は,「モータ2のトルクは,直動ガイド機構15を介して第1の支持軸12Aに伝達され,これによりチャック10に保持された基板Wが回転し,第1のステージ11Aと第2のステージ11Bとは,直動ガイド機構15を介して常に同期して回転し,基板Wと回転カバー3とは一体に回転」するから,「モータ2」によって「回転カバー3」と「基板W」は同一の回転方向に回転するといえる。よって,引用発明の「モータ2」は,本願発明10の「カバーを回転させ」,「基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させ」る「カバー回転機構」に相当する。 カ.引用発明の「基板洗浄装置」は,本願発明10の「基板洗浄装置」に相当する。 したがって,本願発明10と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 <一致点> 「基板を保持する基板保持機構と, 前記基板保持機構に保持された前記基板を回転させる基板回転機構と, 前記基板の表面に向けて洗浄液を噴出させる2流体ノズルと, 前記基板の周囲に配置されるカバーと, 前記カバーを回転させるカバー回転機構と, を備え, 前記カバー回転機構は,前記基板と同一の回転方向に前記カバーを回転させる基板洗浄装置。」 <相違点> (相違点6) 本願発明10の「ノズル」は,「キャリアガスを含む2流体ジェットを噴出させる2流体ノズル」であるのに対して,引用発明の「ノズル21」はこの点について特定されていない点。 (相違点7) 本願発明10は,「前記2流体ジェットが前記基板の面に供給されている際に,導電性を有する薬液を前記2流体ジェットが供給されている前記基板の面と同じ面に供給する薬液供給ノズルを備え」るのに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。 (2)相違点についての判断 相違点6について検討する。 上記相違点2についての検討と同様にして,引用文献2,3に記載された2流体ジェットのノズルを,引用発明に適用する動機付けはないというべきである。すなわち,引用発明において,引用文献2,3に記載された事項を適用することにより,相違点6に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。 また,相違点6に係る構成は、引用文献4-10には記載されていない。 (3)小括 上記(1),(2)のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明10は,当業者であっても,引用発明および引用文献2-10に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 原査定について 1.特許法第29条第2項について 上記第6で指摘したとおり,本件補正により,本願発明1-10は,上記相違点2,4,6に係る構成を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-10に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-10-14 |
出願番号 | 特願2015-218517(P2015-218517) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 馬場 慎、小川 将之 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
西出 隆二 小田 浩 |
発明の名称 | 基板洗浄装置 |
代理人 | 森田 耕司 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 小林 英了 |
代理人 | 松野 知紘 |
代理人 | 野本 裕史 |
代理人 | 酒谷 誠一 |
代理人 | 大野 浩之 |
代理人 | 津田 理 |