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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1367425
審判番号 不服2020-2821  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-02 
確定日 2020-11-10 
事件の表示 特願2017-121693「固体撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-199924、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月8日に出願された特許出願(特願2012-51427号)の一部を、平成28年3月4日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2016?42470号)とし、更にその一部を平成29年6月21日に更に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月26日付けで上申書が提出され、平成30年8月3日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月9日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成31年3月12日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年5月17日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和1年10月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月13日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年12月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和1年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)本願請求項1-8、11-17に係る発明は、その原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願請求項1-8、11-17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本願請求項9、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-219339号公報
2.特開2009-290000号公報


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1の補正前の「前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第3の配線部と重なる配置を有し」との記載を、補正後の「前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」(下線部は、補正箇所)とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、補正後の請求項1において、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」とする当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。

「前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の」という事項を追加する補正は、「前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部」が重なる配置の対象である「前記第3の配線部」を、「前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」という構成は、本願の原出願の出願当初の明細書の段落【0029】-【0041】、図3に記載されている事項であるから、当該補正は新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和2年3月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
光電変換素子を含む画素が複数配列された画素領域を有する第1の半導体基体と、
前記第1の半導体基体上に設けられた第1の多層配線層と、を有する第1の半導体チップ部と、
ロジック回路が形成された第2の半導体基体と、
前記第2の半導体基体上に設けられた第2の多層配線層と、を有する第2の半導体チップ部とを備え、
前記第1の多層配線層は、前記第1の半導体基体に対して、前記光電変換素子に光が入射する側と反対側に設けられ、
前記第1の多層配線層は、第1の配線層と、第3の配線層とを有し、
前記第1の配線層は、第1の配線部と、断面視において前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部との接合面と平行な方向において、前記第1の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第2の配線部とを含み、
前記第3の配線層は、第4の配線部と、断面視において前記接合面と平行な方向において、前記第4の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第5の配線部とを含み、
前記第2の多層配線層は、第2の配線層を有し、前記第2の配線層は、第3の配線部を含み、
前記第1の半導体チップ部の前記第1の多層配線層側と、前記第2の半導体チップ部の前記第2の多層配線層側とが対向して、前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部とが積層され、
断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔の全部が、前記第3の配線部と重なる配置を有し、
断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し、
前記第1の配線部、前記第2の配線部、前記第4の配線部、及び、前記第5の配線部は、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔とが、断面視において前記接合面と垂直な方向において重ならない配置を有する
固体撮像装置。
【請求項2】
前記接合面と垂直な方向において、前記第1の配線部と前記第4の配線部とは断面視で少なくとも一部が重なり、前記第1の配線部と前記第4の配線部との断面視での重なり量は、前記垂直な方向における断面視での前記第1の配線部と前記第4の配線部との対向面同士の間の距離よりも大きい請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
断面視において、前記接合面と平行な方向における前記第3の配線部の長さは、前記平行な方向における前記第1の配線部または前記第2の配線部の長さよりも大きい請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
断面視において、前記第2の配線層は複数の前記第3の配線部を有し、前記第3の配線部同士が隣り合う間隔が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔よりも大きい請求項1に記載の固体撮像装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関し、特に、グローバルシャッタ機能を有するCMOS型の固体撮像装置とその製造方法に関する。また、その固体撮像装置の駆動方法及び、その固体撮像装置を用いた電子機器に関する。」

「【0017】
〈1.第1の実施形態:固体撮像装置〉
[1.1 固体撮像装置全体の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置1の全体を示す概略構成図である。
本実施形態例の固体撮像装置1は、シリコンからなる基板11上に配列された複数の画素2から構成される画素部3と、垂直駆動回路4と、カラム信号処理回路5と、水平駆動回路6と、出力回路7と、制御回路8等を有して構成される。
【0018】
画素2は、フォトダイオードからなる光電変換部と、電荷蓄積容量部と、複数のMOSトランジスタとから構成され、基板11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列される。画素2を構成するMOSトランジスタは、転送トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタ、アンプトランジスタで構成される4つのMOSトランジスタであってもよく、また、選択トランジスタを除いた3つのMOSトランジスタであってもよい。
【0019】
画素部3は、2次元アレイ状に規則的に複数配列された画素2から構成される。画素部3は、実際に光を受光し光電変換によって生成された信号電荷を増幅してカラム信号処理回路5に読み出す有効画素領域と、黒レベルの基準になる光学的黒を出力するための黒基準画素領域(図示せず)とから構成されている。黒基準画素領域は、通常は、有効画素領域の外周部に形成されるものである。
【0020】
制御回路8は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、及び水平駆動回路6等の動作の基準となるクロック信号や制御信号などを生成する。そして、制御回路8で生成されたクロック信号や制御信号などは、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5及び水平駆動回路6等に入力される。」

「【0025】
[1.2 要部の構成]
次に、図2?図3を用いて、本実施形態例の固体撮像装置1の要部の概略構成について説明する。図2は、本実施形態例に係る固体撮像装置1の1画素分の概略断面構成図であり、図3A,Bは、図2に示す固体撮像装置の製造途中における概略断面構成図である。
【0026】
本実施形態例の固体撮像装置1は、図1に示すように、光電変換部PDが形成された第1の基板80と、電荷蓄積容量部61及び複数のMOSトランジスタが形成された第2の基板81とを有して構成されている。そして、第1の基板80及び第2の基板81は、積層して張り合わされた構成とされている。また、光電変換部PDが形成された第1の基板80側が、光Lが入射される光入射面を構成しており、第1の基板80の光入射面上には、カラーフィルタ59、及びオンチップレンズ60が形成されている。
【0027】
図3A,Bを用いて、第1の基板80及び第2の基板81の構成について詳述する。
【0028】
まず、第1の基板80について説明する。 第1の基板80は、図3Aに示すように、光電変換部PDと、第1転送トランジスタTr1のドレインとされる不純物領域16が形成された半導体基板12と、その半導体基板12上部に形成された、多層配線層17とから構成されている。
【0029】
半導体基板12は、N型のシリコン基板により形成され、その半導体基板12上部には、P型ウェル層13が形成されている。P型ウェル層13は半導体基板12にP型の不純物をイオン注入することにより形成することができる。
【0030】
光電変換部PDは、P型ウェル層13に形成されたN型ウェル層14と、N型ウェル層14に接する領域であって、P型ウェル層13の表面側に形成されたP+型不純物領域15により構成されている。N型ウェル層14は、P型ウェル層13の所望の領域にN型の不純物をイオン注入することにより形成されている。また、P+型不純物領域15は、P型ウェル層13の所望の領域にP型の不純物を高濃度にイオン注入することにより形成されている。この光電変換部PDにおいては、P+型不純物領域15とN型ウェル層14とのpn接合、及びN型ウェル層14とP型ウェル層13とのpn接合の効果により、HAD(Hole Accumulation Diode:登録商標)構造が構成される。 このような構成を有する光電変換部PDでは、入射した光Lの光量に応じた信号電荷が生成され、P+型不純物領域15とN型ウェル層14との間に形成された空乏層に光電変換された信号電荷が蓄積される。
【0031】
不純物領域16は、P型ウェル層13表面側であって、光電変換部PDから所定の距離だけ離した領域に形成されており、光電変換部PDから転送されてくる信号電荷を一時的に蓄積する領域とされる。この不純物領域16は、P型ウェル層13の所望の領域にN型の不純物を高濃度にイオン注入することにより形成される。 本実施形態例では、光電変換部PDと不純物領域16との間の領域が、第1転送トランジスタTr1のチャネル部とされる。
【0032】
多層配線層17は、半導体基板12の、光電変換部PDや不純物領域16が形成されたP型ウェル層13上部に形成されている。多層配線層17では、第1転送トランジスタTr1を構成するゲート電極19と、ゲート電極19上部に形成される第1配線層M1と、第1配線層M1上部に形成される第2配線層M2とが、層間絶縁膜18を介して積層されて構成されている。
【0033】
ゲート電極19は、P型ウェル層13に形成された光電変換部PDと不純物領域16との間のチャネル部上部に、図示しないゲート絶縁膜を介して形成されている。
【0034】
第1配線層M1では、第1接続配線23と第2接続配線22とがそれぞれ構成されている。第1接続配線23は、層間絶縁膜18に形成されたコンタクト部21を介して不純物領域16に接続されている。また、第2接続配線22は、層間絶縁膜18に形成されたコンタクト部20を介してゲート電極19に接続されている。
【0035】
第2配線層M2では、第1接続電極27と第2接続電極26とがそれぞれ構成されており、第1接続電極27及び第2接続電極26は、多層配線層17表面に露出して形成されている。第1接続電極27は、層間絶縁膜18に形成されたコンタクト部24を介して、第1配線層M1からなる第1接続配線23に接続されている。また、第2接続電極26は、層間絶縁膜18に形成されたコンタクト部25を介して、第1配線層M1からなる第2接続配線22に接続されている。
【0036】
以上の構成を有する第1の基板80においては、半導体基板12の第1接続電極27、第2接続電極26が形成される側とは反対側が光入射側とされる。また、後述するが、第1の基板における半導体基板12は、後の工程で所定の厚さにまで除去されるものである。
【0037】
次に、第2の基板81について説明する。 第2の基板81は、図3Bに示すように、複数のMOSトランジスタのソース・ドレインとされる不純物領域30,31,32,34,35が形成された半導体基板28と、その半導体基板28上部に形成された多層配線層36とから構成されている。そして、多層配線層36には、電荷蓄積容量部61が形成されている。本実施形態例において、第2の基板81において形成される複数のMOSトランジスタは、第2転送トランジスタTr2と、リセットトランジスタTr3と、増幅トランジスタTr4と、選択トランジスタTr5である。
【0038】
半導体基板28は、N型のシリコン基板により形成され、この半導体基板28上部には、P型ウェル層29が形成されている。P型ウェル層29は半導体基板28にP型の不純物をイオン注入することにより形成することができる。 第2転送トランジスタTr2、リセットトランジスタTr3、増幅トランジスタTr4、選択トランジスタTr5を構成する各不純物領域30,31,32,34,35は、P型ウェル層29表面側の所望の領域に、それぞれ形成されている。これらの不純物領域30,31,32,34,35は、P型ウェル層29の所望の領域にN型の不純物を高濃度にイオン注入することにより形成されるものである。
【0039】
不純物領域30は、第2転送トランジスタTr2のソースとされる。また、不純物領域31は、第2転送トランジスタTr2のドレインと、リセットトランジスタTr3のソースに共用され、信号電荷が読み出されるフローティングディフュージョン領域として用いられる。また、不純物領域32は、リセットトランジスタTr3のドレインと、増幅トランジスタTr4のソースに共用される。また、不純物領域34は、増幅トランジスタTr4のドレインと、選択トランジスタTr5のソースに共用される。また、不純物領域35は、選択トランジスタTr5のドレインとされる。そして、各不純物領域30,31,32,34,35間のP型ウェル層29領域は、各MOSトランジスタを構成するチャネル部とされる。
【0040】
多層配線層36は、半導体基板28の、不純物領域30,31,32,34,35が形成されたP型ウェル層29上部に形成されている。多層配線層36では、各MOSトランジスタを構成するゲート電極38,39,40,41と、第1配線層M1’と、第2配線層M2’と、第3配線層M3’が、層間絶縁膜37を介して積層されて構成されている。
【0041】
各ゲート電極38,39,40,41は、各MOSトランジスタを構成するチャネル部上に、図示しないゲート絶縁膜を介して形成されている。不純物領域30と不純物領域31間のP型ウェル層29上部に形成されるゲート電極38は、第2転送トランジスタTr2のゲート電極38とされる。また、不純物領域31と不純物領域32間のP型ウェル層29上部に形成されるゲート電極39は、リセットトランジスタTr3のゲート電極とされる。また、不純物領域32と不純物領域34間のP型ウェル層29上部に形成されるゲート電極40は、増幅トランジスタTr4のゲート電極とされる。また、不純物領域34と不純物領域35間のP型ウェル層29上部に形成されるゲート電極41は、選択トランジスタTr5のゲート電極とされる。
【0042】
第1配線層M1’は、ゲート電極38,39,40,41上部に層間絶縁膜37を介して形成されており、この第1配線層M1’では第1接続配線50、第2接続配線49、選択配線48、及び垂直信号線9がそれぞれ構成されている。第1接続配線50は、層間絶縁膜37に形成されたコンタクト部42を介して、第2転送トランジスタTr2のソースとされる不純物領域30に接続されている。第2接続配線49は、層間絶縁膜37に形成されたコンタクト部43,44を介して、それぞれ不純物領域31及び増幅トランジスタTr4のゲート電極40に接続されている。すなわち、第2接続配線49により、フローティングディフュージョン領域である不純物領域31と増幅トランジスタTr4のゲート電極40は電気的に接続されている。また、選択配線48は、層間絶縁膜37に形成されたコンタクト部45を介して選択トランジスタTr5のゲート電極41に接続されている。そして、選択トランジスタTr5のゲート電極41には、選択配線48から、選択パルスが供給される。また、垂直信号線9は、層間絶縁膜37に形成されたコンタクト部46を介して、選択トランジスタTr5のドレインである不純物領域35に接続されている。
【0043】
第2配線層M2’では、第3接続配線52、及び電荷保持用電極51が構成されている。第3接続配線52は、層間絶縁膜37に形成されたコンタクト部47を介して第1接続配線50に接続されている。また、電荷保持用電極51は、所定の領域に延在して形成されている。この電荷保持用電極51は、後述するが、電荷蓄積容量部61を構成する電極である。このため、電荷保持用電極51は電荷蓄積容量部61の容量値が十分に得られる大きさに形成されている。また、この電荷保持用電極51には、図示しない第2の基板81の多層配線層36に形成された第1転送配線が接続されており、第1転送配線から電荷保持用電極51には、第1転送パルスが供給される。
【0044】
そして、第2配線層M2’の第3接続配線52及び電荷保持用電極51上部には、誘電体層53が形成され、第3配線層M3’は、誘電体層53を介して第2配線層M2’上部に形成されている。すなわち、誘電体層53は、第2配線層M2’と第3配線層M3’の間に挟まれて構成されている。この誘電体層53の材料としては、高誘電体材料であるTaO,HfO,AlO等を用いることができる。
【0045】
第3配線層M3’では、第1接続電極56と第2接続電極57とがそれぞれ構成されており、第1接続電極56及び第2接続電極57は、多層配線層36表面に露出して形成されている。第1接続電極56は、誘電体層53に形成されたコンタクト部55を介して、第2配線層M2’からなる第3接続配線52に接続され、また、第2配線層M2’で構成された電荷保持用電極51上部に延在して形成されている。また、第2接続電極57は、誘電体層53に形成されたコンタクト部54を介して、第2配線層M2’からなる電荷保持用電極51に接続されている。本実施形態例では、電荷保持用電極51と、その上部に誘電体層53を介して形成される第1接続電極56により、電荷蓄積容量部61が形成されている。
【0046】
なお、図3Bにおいては図示を省略するが、第2転送トランジスタTr2のゲート電極38には、第2転送パルスを供給するための第2転送配線が接続されている。同じく、リセットトランジスタTr3のゲート電極39にも、リセットパルスを供給するためのリセット配線が接続されている。そして、これらの第2転送配線及びリセット配線は多層配線層36に形成されている所望の配線層によって形成されている。
【0047】
そして、本実施形態例の固体撮像装置1は、第2の基板81上部に、第1の基板80及び第2の基板81の互いの第1接続電極56,27(審決注:「19」は誤記と認定した。)、及び第2接続電極57,26同士が接続されるように第1の基板80が積層された構成とされている。そして、第1の基板80と第2の基板が張り合わされることにより、第1転送トランジスタTr1を構成する不純物領域16と、電荷蓄積容量部61と、第2転送トランジスタTr2を構成する不純物領域30が電気的に接続される。また、本実施形態例の固体撮像装置1では、第1の基板80と第2の基板81が積層されて張り合わされることにより、光電変換部PDと電荷蓄積容量部61が立体的に積層される。
【0048】
また、本実施形態例の固体撮像装置1では、第1接続電極56は遮光膜を兼ねるものであり、第2転送トランジスタTr2のソースとなる不純物領域30は第1接続電極56に遮光されている。このため、不純物領域30への光の入射が抑制され、不要な信号電荷の発生が抑制されるので、混色が低減される。そしてこの場合、光電変換部PDの開口部分を除く全ての領域が遮光されることが好ましい。」

図1-図3は、以下のとおりのものである。
図2及び図3Aから、第1配線層M1で構成されている第1接続配線23と第2接続配線22は、間隔を開けて隣に設けられていることが見てとれる。
図2及び図3Aから、第1配線層M2で構成されている第1接続配線27と第2接続配線26は、間隔を開けて隣に設けられていることが見てとれる。
図2及び図3Aから、第3配線層M3’で構成されている第1接続電極56と第2接続電極57は、間隔を開けて隣に設けられていることが見てとれる。
図2から、第2配線層M2の第1接続電極26と第2接続電極27との間隔の全部が、第2配線層M2’の電荷保持用電極51と重なり、第1配線層M1の第1接続配線22と第2接続配線23との間隔の全部は、電荷保持用電極51とは重ならず、第3配線層M3’の第1接続電極56と重なる配置を有していることが見てとれる。


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板11上に配列された複数の画素2から構成される画素部3と、垂直駆動回路4と、カラム信号処理回路5と、水平駆動回路6と、出力回路7と、制御回路8等を有して構成され、画素2は、フォトダイオードからなる光電変換部と、電荷蓄積容量部と、複数のMOSトランジスタとから構成され、基板11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列され、
画素部3は、光電変換部PDが形成された第1の基板80と、電荷蓄積容量部61及び複数のMOSトランジスタが形成された第2の基板81とが積層して張り合わされた構成とされている固体撮像装置1であって、
光電変換部PDが形成された第1の基板80側が、光Lが入射される光入射面を構成しており、
第1の基板80は、光電変換部PDと、第1転送トランジスタTr1のドレインとされる不純物領域16が形成された半導体基板12と、その半導体基板12上部に形成された、多層配線層17とから構成され、
多層配線層17では、第1転送トランジスタTr1を構成するゲート電極19と、ゲート電極19上部に形成される第1配線層M1と、第1配線層M1上部に形成される第2配線層M2とが、層間絶縁膜18を介して積層されて構成され、
第1配線層M1では、第1接続配線23と第2接続配線22とが、間隔を開けて隣に設けられ、
第2配線層M2では、第1接続電極27と第2接続電極26とが、間隔を開けて隣に設けられ、第1接続電極27及び第2接続電極26は、多層配線層17表面に露出して形成され、
第2の基板81は、複数のMOSトランジスタのソース・ドレインとされる不純物領域30,31,32,34,35が形成された半導体基板28と、その半導体基板28上部に形成された多層配線層36とから構成され、多層配線層36には、電荷蓄積容量部61が形成され、不純物領域30は、第2転送トランジスタTr2のソースとされ、
多層配線層36では、各MOSトランジスタを構成するゲート電極38,39,40,41と、第1配線層M1’と、第2配線層M2’と、第3配線層M3’が、層間絶縁膜37を介して積層されて構成され、
第1配線層M1’は、ゲート電極38,39,40,41上部に層間絶縁膜37を介して形成されており、この第1配線層M1’では第1接続配線50、第2接続配線49、選択配線48、及び垂直信号線9がそれぞれ構成され、
第2配線層M2’では、第3接続配線52、及び電荷保持用電極51が構成され、
電荷保持用電極51は、所定の領域に延在して形成され、電荷蓄積容量部61を構成する電極であるため、電荷保持用電極51は電荷蓄積容量部61の容量値が十分に得られる大きさに形成されており、
第2配線層M2’の第3接続配線52及び電荷保持用電極51上部には、誘電体層53が形成され、第3配線層M3’は、誘電体層53を介して第2配線層M2’上部に形成され、
第3配線層M3’では、第1接続電極56と第2接続電極57とが、間隔を開けて隣に設けられ、第1接続電極56及び第2接続電極57は、多層配線層36表面に露出して形成され、
第1接続電極56は、第2配線層M2’で構成された電荷保持用電極51上部に延在して形成され、
電荷保持用電極51と、その上部に誘電体層53を介して形成される第1接続電極56により、電荷蓄積容量部61が形成され、
第2の基板81上部に、第1の基板80及び第2の基板81の互いの第1接続電極56,27、及び第2接続電極57,26同士が接続されるように第1の基板80が積層された構成とされ、
第2配線層M2の第1接続電極26と第2接続電極27との間隔の全部が、第2配線層M2’の電荷保持用電極51と重なり、第1配線層M1の第1接続配線22と第2接続配線23との間隔の全部は、電荷保持用電極51とは重ならず、第3配線層M3’の第1接続電極56と重なる配置を有している
固体撮像装置1。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0008】、【0030】-【0051】及び図3-図8の記載からみて、当該引用文献2には、「裏面照射型の固体撮像装置において、受光面とは反対側の面である表面側からの光の光電変換素子への入射を抑制することができる固体撮像装置を提供することを目的として、第1の配線層31-1中に、電気的に接続された配線311Aと、電気的に切断された(電気的にフローティングである)ダミー配線311Bとにより、遮光構造を形成する構成」が記載され、「当該構成により、表面側から見たシリコン基板の、配線による被覆率を100%となるように配置したので、受光面とは反対側の不要な光の光電変換素子21への入射を遮ることができる。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「光電変換部PD」、「画素部3」、「第1の基板80」、「半導体基板12」、「多層配線層17」、「第2の基板81」、「半導体基板28」、「多層配線層36」は、それぞれ、本願発明1における「光電変換素子」、「画素領域」、「第1の半導体チップ部」、「第1の半導体基体」、「第1の多層配線層」、「第2の半導体チップ部」、「第2の半導体基体」、「第2の多層配線層」に相当する。

イ 本願発明1の「光電変換素子を含む画素が複数配列された画素領域を有する第1の半導体基体と、前記第1の半導体基体上に設けられた第1の多層配線層と、を有する第1の半導体チップ部と、ロジック回路が形成された第2の半導体基体と、前記第2の半導体基体上に設けられた第2の多層配線層と、を有する第2の半導体チップ部とを備え」、「前記第1の多層配線層は、前記第1の半導体基体に対して、前記光電変換素子に光が入射する側と反対側に設けられ」、「前記第1の半導体チップ部の前記第1の多層配線層側と、前記第2の半導体チップ部の前記第2の多層配線層側とが対向して、前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部とが積層され」ることと、引用発明の「基板11上に配列された複数の画素2から構成される画素部3と、垂直駆動回路4と、カラム信号処理回路5と、水平駆動回路6と、出力回路7と、制御回路8等を有して構成され、画素2は、フォトダイオードからなる光電変換部と、電荷蓄積容量部と、複数のMOSトランジスタとから構成され、基板11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列され、画素部3は、光電変換部PDが形成された第1の基板80と、電荷蓄積容量部61及び複数のMOSトランジスタが形成された第2の基板81とが積層して張り合わされた構成とされている固体撮像装置1であって、光電変換部PDが形成された第1の基板80側が、光Lが入射される光入射面を構成しており、第1の基板80は、光電変換部PDと、第1転送トランジスタTr1のドレインとされる不純物領域16が形成された半導体基板12と、その半導体基板12上部に形成された、多層配線層17とから構成され」、「第2の基板81上部に、第1の基板80及び第2の基板81の互いの第1接続電極56,27、及び第2接続電極57,26同士が接続されるように第1の基板80が積層された構成とされ」ることとを対比する。

引用発明は、「基板11上に配列された複数の画素2から構成される画素部3と、・・・等を有して構成され、画素2は、フォトダイオードからなる光電変換部と、電荷蓄積容量部と、複数のMOSトランジスタとから構成され、基板11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列され」、「画素部3は、光電変換部PDが形成された第1の基板80側が、光Lが入射される光入射面を構成しており」、「第1の基板80は、光電変換部PDと、第1転送トランジスタTr1のドレインとされる不純物領域16が形成された半導体基板12と、その半導体基板12上部に形成された、多層配線層17とから構成され」ている。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「光電変換素子を含む画素が複数配列された画素領域を有する第1の半導体基体と、前記第1の半導体基体上に設けられた第1の多層配線層と、を有する第1の半導体チップ部と、第2の半導体基体と、前記第2の半導体基体上に設けられた第2の多層配線層と、を有する第2の半導体チップ部とを備え」、「前記第1の多層配線層は、前記第1の半導体基体に対して、前記光電変換素子に光が入射する側と反対側に設けられ」る点で共通する。

また、引用発明は、「光電変換部PDが形成された第1の基板80と、電荷蓄積容量部61及び複数のMOSトランジスタが形成された第2の基板81とが積層して張り合わされた構成とされて」おり、しかも、「第2配線層M2では、第1接続電極27と第2接続電極26とが、間隔を開けて隣に設けられ、第1接続電極27及び第2接続電極26は、多層配線層17表面に露出して形成され」、「第3配線層M3’では、第1接続電極56と第2接続電極57とが、間隔を開けて隣に設けられ、第1接続電極56及び第2接続電極57は、多層配線層36表面に露出して形成され」、「第2の基板81上部に、第1の基板80及び第2の基板81の互いの第1接続電極56,27、及び第2接続電極57,26同士が接続されるように第1の基板80が積層された構成とされ」るものであるから、「第1の基板80の多層配線層17側と、第2の基板81の多層配線37側とが対向して、第1の基板80と第2の基板81とが積層された」ものであるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記第1の半導体チップ部の前記第1の多層配線層側と、前記第2の半導体チップ部の前記第2の多層配線層側とが対向して、前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部とが積層され」る点で一致する。

ウ 本願発明1の「前記第1の多層配線層は、第1の配線層と、第3の配線層とを有し、前記第1の配線層は、第1の配線部と、断面視において前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部との接合面と平行な方向において、前記第1の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第2の配線部とを含み、前記第3の配線層は、第4の配線部と、断面視において前記接合面と平行な方向において、前記第4の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第5の配線部とを含み」と、引用発明の「多層配線層17では、第1転送トランジスタTr1を構成するゲート電極19と、ゲート電極19上部に形成される第1配線層M1と、第1配線層M1上部に形成される第2配線層M2とが、層間絶縁膜18を介して積層されて構成され、第1配線層M1では、第1接続配線23と第2接続配線22とが、間隔を開けて隣に設けられ、第2配線層M2では、第1接続電極27と第2接続電極26とが、間隔を開けて隣に設けられ、第1接続電極27及び第2接続電極26は、多層配線層17表面に露出して形成され」ることとを対比する。

引用発明における、「第1配線層M1」、第1配線層M1の「第1接続配線23」、「第2接続配線22」は、それぞれ、本願発明1における「第3の配線層」、「第5の配線部」、「第4の配線部」に相当し、引用発明における「第2配線層M2」、第2配線層M2の「第1接続配線27」、「第2接続配線26」は、それぞれ、本願発明1における、「第1の配線層」、「第2の配線部」、「第1の配線部」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記第1の多層配線層は、第1の配線層と、第3の配線層とを有し、前記第1の配線層は、第1の配線部と、断面視において前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部との接合面と平行な方向において、前記第1の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第2の配線部とを含み、前記第3の配線層は、第4の配線部と、断面視において前記接合面と平行な方向において、前記第4の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第5の配線部とを含」む点で一致する。

エ 本願発明1の「前記第2の多層配線層は、第2の配線層を有し、前記第2の配線層は、第3の配線部を含み」と、引用発明の「多層配線層36では、各MOSトランジスタを構成するゲート電極38,39,40,41と、第1配線層M1’と、第2配線層M2’と、第3配線層M3’が、層間絶縁膜37を介して積層されて構成され、第1配線層M1’は、ゲート電極38,39,40,41上部に層間絶縁膜37を介して形成されており、この第1配線層M1’では第1接続配線50、第2接続配線49、選択配線48、及び垂直信号線9がそれぞれ構成され、第2配線層M2’では、第3接続配線52、及び電荷保持用電極51が構成され、電荷保持用電極51は、所定の領域に延在して形成され、電荷蓄積容量部61を構成する電極であるため、電荷保持用電極51は電荷蓄積容量部61の容量値が十分に得られる大きさに形成されており」とを対比する。

引用発明における、「第2配線層M2’」、第2配線層M2’の「電荷保持用電極51」は、それぞれ、本願発明1における、「第2の配線層」、「第3の配線部」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明は、「前記第2の多層配線層は、第2の配線層を有し、前記第2の配線層は、第3の配線部を含」む点で一致する。

オ 本願発明1の「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔の全部が、前記第3の配線部と重なる配置を有し、断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し、前記第1の配線部、前記第2の配線部、前記第4の配線部、及び、前記第5の配線部は、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔とが、断面視において前記接合面と垂直な方向において重ならない配置を有する」と、引用発明の「第2配線層M2の第1接続電極26と第2接続電極27との間隔の全部が、第2配線層M2’の電荷保持用電極51と重なり、第1配線層M1の第1接続配線22と第2接続配線23との間隔の全部は、電荷保持用電極51とは重ならず、第3配線層M3’の第1接続電極56と重なる配置を有している」とを対比する。

引用発明の「第3配線層M3’」は「多層配線層36」(第2の多層配線層)を構成する配線層であるから、本願発明1の「同一の前記第3の配線部」と、引用発明の「第3配線層M3’の第1接続電極56」とは、「第2の半導体チップ」が有する「第2の多層配線層」が有する配線部である点で共通する。
また、引用発明において、「第2配線層M2の第1接続電極26と第2接続電極27との間隔の全部が、第2配線層M2’の電荷保持用電極51と重なり、第1配線層M1の第1接続配線22と第2接続配線23との間隔の全部は、電荷保持用電極51とは重ならず、第3配線層M3’の第1接続電極56と重なる配置を有している」から、「第2配線層M2の第2接続電極26、第1接続電極27、第1配線層M1の第2接続配線22、及び、第1接続配線23は、第2接続電極26と第1接続電極27との間隔と、第2接続配線22と第1接続配線23との間隔とが、断面視において、第1の基板80と第2の基板81との接合面と垂直な方向において重ならない配置を有する」といえる。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔の全部が、前記第3の配線部と重なる配置を有し、断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第2の多層配線層が有する配線部と重なる配置を有し、前記第1の配線部、前記第2の配線部、前記第4の配線部、及び、前記第5の配線部は、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔とが、断面視において前記接合面と垂直な方向において重ならない配置を有する」する点で共通する。

カ 以上をまとめると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「光電変換素子を含む画素が複数配列された画素領域を有する第1の半導体基体と、
前記第1の半導体基体上に設けられた第1の多層配線層と、を有する第1の半導体チップ部と、
第2の半導体基体と、
前記第2の半導体基体上に設けられた第2の多層配線層と、を有する第2の半導体チップ部とを備え、
前記第1の多層配線層は、前記第1の半導体基体に対して、前記光電変換素子に光が入射する側と反対側に設けられ、
前記第1の多層配線層は、第1の配線層と、第3の配線層とを有し、
前記第1の配線層は、第1の配線部と、断面視において前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部との接合面と平行な方向において、前記第1の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第2の配線部とを含み、
前記第3の配線層は、第4の配線部と、断面視において前記接合面と平行な方向において、前記第4の配線部と間隔を開けて隣に設けられた第5の配線部とを含み、
前記第2の多層配線層は、第2の配線層を有し、前記第2の配線層は、第3の配線部を含み、
前記第1の半導体チップ部の前記第1の多層配線層側と、前記第2の半導体チップ部の前記第2の多層配線層側とが対向して、前記第1の半導体チップ部と前記第2の半導体チップ部とが積層され、
断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔の全部が、前記第3の配線部と重なる配置を有し、
断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第2の多層配線が有する配線部と重なる配置を有し、
前記第1の配線部、前記第2の配線部、前記第4の配線部、及び、前記第5の配線部は、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔とが、断面視において前記接合面と垂直な方向において重ならない配置を有する
固体撮像装置。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「ロジック回路が形成された第2の半導体基体」を備えるのに対し、引用発明の「半導体基板28」はそのような構成を備えていない点。

<相違点2>
第4の配線部と第5の配線部との間隔について、本願発明1は、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」という構成を備えるのに対し、引用発明は、第1配線層M1の第2接続配線22(第4の配線部)と第1接続配線23(第5の配線部)との間隔は、第2配線層M1の第2接続電極26(第1の配線部)と第1接続電極27(第2の配線部)との間隔と重なる位置に配置された電荷保持用電極51(前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部)と重なる配置を有するという構成を備えるものではない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑み、相違点2を先に検討する。
引用発明において、「第1接続電極56は、第2配線層M2’で構成された電荷保持用電極51上部に延在して形成され、電荷保持用電極51と、その上部に誘電体層53を介して形成される第1接続電極56により、電荷蓄積容量部61が形成され」るものであり、第1の基板80の第1転送トランジスタTr1の構成は変更せずに(第2接続配線22と第1接続配線23との間隔の位置は変更せずに)、電荷保持用電極51が第2接続配線22と第1接続配線23との間隔の全部と重なるように、電荷保持用電極51を、図2における左側方向に延長させて延在したものとすることは、第3接続配線52が左側にシフトすることとなり、画素2が大きくなるので、動機付けがあるとはいえず、むしろ、阻害要因がある。
または、第2の基板81の電荷保持用電極51と第3接続配線52との間隔の位置は変更せずに、電荷保持用電極51が第2接続配線22第1接続配線23との間隔の全部と重なるように、第1の基板80の第2接続配線22と第1接続配線23との間隔の位置を、図2の右側にシフトさせることは、画素2における、例えば、光電変換部PDが小さくなること、あるいは、第1転送トランジスタTr1のゲート電極と第2接続配線22とを接続するコンタクト部の構成が複雑となるので、動機付けがあるとはいえず、むしろ、阻害要因がある。
ここで、引用文献2に、「裏面照射型の固体撮像装置において、受光面とは反対側の面である表面側からの光の光電変換素子への入射を抑制することができる固体撮像装置を提供することを目的として、第1の配線層31-1中に、電気的に接続された配線311Aと、電気的に切断された(電気的にフローティングである)ダミー配線311Bとにより、遮光構造を形成する構成が記載され、当該構成により、表面側から見たシリコン基板の、配線による被覆率を100%となるように配置したので、受光面とは反対側の不要な光の光電変換素子21への入射を遮ることができる。」という技術的事項が記載されていると認められるとしても、引用発明において、電荷保持用電極51が第2接続配線22と第1接続配線23との間隔の全部と重なるようにすることは、動機付けはなく、阻害要因があるから、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。

イ 判断のまとめ
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の「ロジック回路が形成された第2の半導体基体」と同一の構成、及び「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求と同時になされた手続補正(令和2年3月2日付けの手続補正)により、原査定時の請求項3-12、15-17は削除されており、原査定時の請求項1、2、13、14に係る発明は、本願発明1、2、3、4がそれぞれ対応する。

1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本願発明1-4は、審判請求時の補正により、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」という構成を有するものとなっているから、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
本願発明1-4は、審判請求時の補正により、「断面視における前記接合面と垂直な方向において、前記第4の配線部と前記第5の配線部との間隔の全部が、前記第1の配線部と前記第2の配線部との間隔と重なる位置に配置された同一の前記第3の配線部と重なる配置を有し」という構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-20 
出願番号 特願2017-121693(P2017-121693)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邊 顕人  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 脇水 佳弘
恩田 春香
発明の名称 固体撮像装置  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  

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