• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1367609
審判番号 不服2019-7871  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-12 
確定日 2020-11-17 
事件の表示 特願2014-145224「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 4日出願公開、特開2016- 21187、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月 3日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 3月 5日付け:拒絶査定(原査定)
令和 元年 6月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 7月21日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 2年 9月23日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献AないしGに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A 米国特許出願公開第2008/0202823号明細書
B 特開2012-69165号公報
C 特開2012-234331号公報
D 特開2011-59820号公報
E 特開2009-193155号公報
F 特開2013-182489号公報
G 特開2002-74306号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1](明確性要件違反)
本願請求項1ないし17に係る発明は、明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2](進歩性欠如)
本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1 特開2012-221263号公報(当審において新たに引用した文献)
2 特開2011-216068明細書(当審注:「明細書」は「号公報」の誤記である。)(当審において新たに引用した文献)
3 米国特許出願公開第2008/0202823号明細書(拒絶査定時の引用文献A)
4 特開2002-74306号公報(拒絶査定時の引用文献G)
5 特開2012-69165号公報(拒絶査定時の引用文献B)
6 特開2012-234331号公報(拒絶査定時の引用文献C)

第4 本願発明
本願請求項1-16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、令和2年9月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし16は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
非接触型IC(integrated circuit)カード状に構成され、当該非接触型ICカードと略等しいサイズである筐体と、
操作面が前記筐体の上面上に位置するように設けられ、互いに異なる第1の操作と第2の操作とをそれぞれ識別して受け付ける操作部と、
前記上面上の前記操作部の前記操作面とは異なる領域に表示面が設けられ、複数の階層に区分された表示項目であって、ユーザに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示する表示部と、
前記第1の操作を受けて、前記表示部に表示された第1の表示項目を、当該第1の表示項目とは異なり、かつ選択された前記階層に含まれる第2の表示項目に切り替え、前記第2の操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替える制御部と、
前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられ、外部デバイスとの間で非接触通信に基づき、情報の送受信を行う通信部と、
を備え、
前記制御部は、選択された前記階層に応じて、前記表示部への当該階層を示す階層情報の表示を制御する、情報処理装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記表示部とは異なる領域に設けられた操作面に対して接触または近接する操作体の、弧状の軸に沿った方向に向けた当該操作面上における位置の変化を検出し、検出された当該位置の変化を前記第1の操作として受け付ける、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記操作体の接触または近接を検知するセンサを含む、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記弧状の軸に沿った方向に沿うように配列された複数の前記センサを含む、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
検出された前記位置の変化に応じて情報を報知する報知部を備える、請求項2?4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記報知部は、発光部を含み、当該発光部の発光状態により情報を報知する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記弧状の軸に沿った方向に向けた前記第1の操作に追随するように、前記発光部を点灯または点滅させる、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記弧状の軸に沿った方向に向けた前記第1の操作に連動するように、前記第1の表示項目と前記第2の表示項目とをスクロールさせることで、当該第1の表示項目を当該第2の表示項目に切り替える、請求項2?7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記弧状の軸に沿った方向に向けた前記第1の操作の操作方向に、前記第1の表示項目と前記第2の表示項目とをスクロールさせることで、当該第1の表示項目を当該第2の表示項目に切り替える、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記弧状の軸に沿った方向が示す弧は、前記表示部の上下方向がユーザの上下方向と略一致するように当該ユーザと前記操作面とが正対した場合に、当該操作面を左右に分割する軸に対して、前記弧の中心と反対側に位置するように設定される、請求項2?9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記操作部は、前記操作面を左右に分割する軸に対して左右のいずれか一方に弧の中心が位置するように設定された前記弧状の第1の方向と、他方に弧の中心が位置するように設定された前記弧状の第2の方向とのそれぞれに沿った、前記操作面上における前記操作体の位置の変化を検出する、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1の方向に沿った前記位置の変化に対応する前記第1の操作と、前記第2の方向に沿った前記位置の変化に対応する前記第1の操作とに対して、互いに異なる機能を割り当てる、請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記操作部は、ユーザが前記表示部に対して正対したときに、前記操作面が当該ユーザに対して正対するように設けられている請求項2?12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記階層情報として、選択された前記階層の深さを提示する、請求項1?13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
操作面が非接触型ICカード状に構成され、当該非接触型ICカードと略等しいサイズである筐体の上面上に位置するように設けられた操作部が、互いに異なる第1の操作と第2の操作とをそれぞれ識別して受け付けることと、
前記上面上の前記操作部の前記操作面とは異なる領域に表示面が設けられた表示部に、複数の階層に区分された表示項目であって、ユーザに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示することと、
プロセッサが、前記第1の操作を受けて、前記表示部に表示された第1の表示項目を、当該第1の表示項目とは異なり、かつ選択された前記階層に含まれる第2の表示項目に切り替えることと、
前記第2の操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替えることと、
選択された前記階層に応じて、前記表示部への当該階層を示す階層情報の表示を制御することと、
前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部が、外部デバイスとの間で非接触通信に基づき、情報の送受信を行うことと、
を含む、情報処理方法。
【請求項16】
コンピュータに、
操作面が非接触型ICカード状に構成され、当該非接触型ICカードと略等しいサイズである筐体の上面上に位置するように設けられた操作部が、互いに異なる第1の操作と第2の操作とをそれぞれ識別して受け付けることと、
前記上面上の前記操作部の前記操作面とは異なる領域に表示面が設けられた表示部に、複数の階層に区分された表示項目であって、ユーザに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示することと、
前記第1の操作を受けて、前記表示部に表示された第1の表示項目を、当該第1の表示項目とは異なり、かつ選択された前記階層に含まれる第2の表示項目に切り替えることと、
前記第2の操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替えることと、
選択された前記階層に応じて、前記表示部への当該階層を示す階層情報の表示を制御することと、
前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部が、外部デバイスとの間で非接触通信に基づき、情報の送受信を行うことと、
を実行させるプログラム。」

第5 理由1(明確性要件)について
以下、当審拒絶理由の理由1(明確性要件違反)が解消したか否かについて検討する。
(1)補正前の請求項1、16及び17に記載の「ICカードを構成する筐体」がいかなるものであるのか不明である旨の拒絶理由は、前記「ICカードを構成する筐体」を、明細書の【0031】の記載に基づいて、補正後の請求項1、15及び16において、「非接触型IC(integrated circuit)カード状に構成され、当該非接触型ICカードと略等しいサイズである筐体」に補正されることにより、解消した。
(2)補正前の請求項1に記載の「前記操作部に対して前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられ、…通信部」、並びに、補正前の請求項16及び17に記載の「前記操作部に対して前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部」において、「通信部」の位置が「操作部」及び「表示部」との関係において明確ではない旨の拒絶理由は、図2の記載に基づいて、補正後の請求項1において、「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられ、…通信部」、補正後の請求項15及び16において、「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部」に補正されることにより、解消した。
(3)補正前の請求項10に記載の「前記左右の反対側」がいかなる方向であるのか明確でない旨の拒絶理由は、明細書の【0057】及び図3の記載に基づいて、補正前の請求項10に記載の「「前記弧状の軸に沿った方向は、前記表示部の上下方向がユーザの上下方向と略一致するように当該ユーザと前記操作面とが正対した場合に、弧の中心が、当該操作面を左右に分割する軸に対して、左右のいずれか一方の方向に位置し、かつ、前記弧が当該中心に対して前記左右の他方側に位置するように設定される」を、補正後の請求項10において、「前記弧状の軸に沿った方向が示す弧は、前記表示部の上下方向がユーザの上下方向と略一致するように当該ユーザと前記操作面とが正対した場合に、当該操作面を左右に分割する軸に対して、前記弧の中心と反対側に位置するように設定される」に補正されることにより、解消した。
(4)補正前の請求項15の記載が明確でない旨の拒絶理由は、当該補正15を削除する補正がされることにより、解消した。

以上のとおり、当審拒絶理由の理由1(明確性要件違反)は、解消した。

第6 理由2(進歩性欠如)について
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)

「【0008】
しかしながら、上述した従来の技術は、複数枚のカードを所有している利用者は、決済に際して、複数枚のカードの中から所望するカードを探さなければならず、煩わしいという問題があった。また、上述した従来の技術は、クレジットカード、電子マネーカード、ポイントカードなどのように、利用目的に応じて複数枚のカードを所有しなくてはならないため、財布などが膨れあがり、美観に劣るとともに持ち運びが煩わしいという問題があった。」

「【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるカードは、複数のカードを所有することによる利用者の利便性の向上を図ることができるカードを提供することを目的とする。」

「【0048】
図4-1および図4-2において、この発明にかかる実施の形態のカード400は、プラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成された薄板状の基材を備えている。あるいは、カード400における基材は、高分子材料以外の材料に代えて、たとえば、紙、金属、木の板など、高分子材料以外の材料を用いて形成されていてもよい。基材は、具体的には、たとえば、一般的なクレジットカードと同程度(約86mm×54mm)の大きさをなしている。
【0049】
カード400における基材の一面側には、IC(Integrated Circuit)チップ410が設けられている。ICチップ410において、カード400における基材の一面側に露出した部分は、決済端末装置120などの外部装置との間における通信に際して、当該外部装置に接続される通信用端子とされている。ICチップ410は、CPU、ROM、RAM、メモリおよび通信用端子を備えている(図5を参照)。
【0050】
カード400における基材の他面側には、ディスプレイ420が設けられている。ディスプレイ420は、たとえば、カード400の他面側における全面に設けることができる。カード400における基材の他面側における全面にディスプレイ420を設けることにより、大きさ(面積)が限られたカードにおいて大きな表示面積を確保することができる。ディスプレイ420は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどによって実現することができる。
【0051】
また、カード400における基材の他面側には、タッチパネル421が設けられている。タッチパネル421は、ディスプレイ420に積層されている。タッチパネル421は、カード400の他面側における全面に設けることができる。あるいは、タッチパネル421は、カード400の他面側における一部に設けられていてもよい。」

「【0056】
図5において、この発明にかかる実施の形態のカード400は、CPU501と、ROM502と、RAM503と、メモリ504と、通信用端子505と、ディスプレイ420と、タッチパネル421と、充電式の電源506と、を備えている。また、この発明にかかる実施の形態のカード400が備える各部501?506、420、421は、バス510によってそれぞれ接続されている。
【0057】
CPU501は、カード400全体の制御を司る。CPU501は、図示を省略する電源から供給される電力によって動作する。ROM502は、後述するカード400の処理をおこなうための各種のプログラムを記憶している。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。ICチップ410は、CPU501、ROM502、RAM503、メモリ504および通信用端子505によって構成されている。」

「【0083】
(表示画面例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のカード400がディスプレイ420に表示する表示画面例について説明する。図7-1?図7-10は、この発明にかかる実施の形態のカード400がディスプレイ420に表示する表示画面例を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態のカードは、図7-1?図7-10に示した各種の表示画面をディスプレイに表示する。
【0084】
図7-1において、表示画面710は、この発明にかかる実施の形態のカード400の起動時に表示される「メニュー」画面を示している。表示画面(メニュー画面)710は、確認可能な項目を示すマークを表示する。確認可能な項目を示すマークは、当該マークが示す項目の詳細を表示させる操作をおこなうための操作位置を案内する。具体的には、たとえば、表示画面710において「ポイント数確認」のマーク位置が操作された場合、集約されたカードごとのポイント数を示す表示画面(図7-2を参照)に切り換えて表示される。」

「【0089】
図7-4において、表示画面740は、上記の表示画面710を表示している状態において、「集約カード情報」の位置が操作された場合に表示される。表示画面740は、「クレジットカード」、「ポイントカード」、「付帯カード」などのように、集約カードの種別ごとに、集約カードを個別に示す情報を表示する。集約カードを個別に示す情報は、たとえば、各集約カードを模したアイコン状のマークとすることができる。これにより、どの集約カードがいずれの種別に集約されているかを、容易かつ確実に案内することができる。
【0090】
図7-5において、表示画面750は、上記の表示画面740を表示している状態において、特定の集約カードの位置が操作された場合に表示される。たとえば、上記の表示画面740を表示している状態において、クレジットカードの種別に集約された集約カードのうちの一つを示す位置が操作された場合、表示画面750は、当該集約カードの所持にかかる年会費や利用枠、当該集約カードに適用される保険の内容、などを示す情報を表示する。
【0091】
表示画面750においては、カード400における表示内容を、表示画面750の上位の表示画面710、740に切り換えるための操作位置を示すマークを表示してもよい。具体的には、表示画面750においては、表示画面750から表示画面740に切り換えるための操作位置を示す「集約カード一覧へ戻る」というキーを示すマークや、表示画面750から表示画面710に切り換えるための操作位置を示す「メニューへ戻る」というキーを示すマークなどが表示されている。」

「【図4-1】



「【図4-2】



「【図7-1】


前掲の【0084】を参酌すれば、表示画面710には、確認可能な項目を示すマークとして、「ポイント数確認」、「利用金額確認」、「集約カード情報」、「加盟店情報」が表示されている。

「【図7-4】


表示画面740の上部には,「現在集約されているカード」と表示されている。
上掲の【0089】及び【0090】の記載からすると、表示画面740には、クレジットカードの種別に集約された集約カードの一つとして「WIZA」が表示されている。
また、付帯カードの種別に集約された集約カードの例として、「NYAON」、「ETC」、「ID」が表示されている。

「【図7-5】


表示画面750の左上には「WIZA」と表示されている。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 複数のカード(クレジットカード、電子マネーカード、ポイントカードなど)を所有する利用者の利便性の向上を図ることができるカードであって、
カード400は、プラスチックなどの高分子材料を用いて形成された薄板状の基材を備え、基材は、一般的なクレジットカードと同程度(約86mm×54mm)の大きさをなし、
カード400における基材の一面側には、ICチップ410が設けられ、基材の一面側に露出した部分は、決済端末装置120などの外部装置との間における通信に際して、当該外部装置に接続される通信用端子とされ、ICチップ410は、CPU501、ROM502、RAM503、メモリ504および通信用端子505を備え、CPU501は、カード400全体の制御を司り、ROM502は、後述するカード400の処理をおこなうための各種のプログラムを記憶し、
カード400における基材の他面側には、ディスプレイ420が設けられ、
カード400における基材の他面側には、タッチパネル421がディスプレイ420に積層され、タッチパネル421は、カード400の他面側における全面に設けても、あるいは、一部に設けられていてもよく、
起動時にディスプレイに表示される表示画面710である「メニュー」画面(図7-1)には、当該マークが示す項目の詳細を表示させる操作をおこなうための操作位置を案内する、確認可能な項目を示すマーク(「ポイント数確認」、「利用金額確認」、「集約カード情報」、「加盟店情報」)が表示され、たとえば、表示画面710において「集約カード情報」の位置が操作された場合、「クレジットカード」、「ポイントカード」、「付帯カード」などのように、集約カードの種別ごとに、集約カードを個別に示す情報を含む表示画面740が表示され、表示画面740において、クレジットカードの種別に集約された集約カードのうちの一つ(「WIZA」)を示す位置が操作された場合、当該集約カードの所持にかかる年会費や利用枠、当該集約カードに適用される保険の内容、などを示す情報を含む表示画面750が表示され、
前記表示画面740には、「現在集約しているカード」と表示され、
前記表示画面750には、「WIZA」と表示され、
付帯カードの例としては、「NYAON」、「ETC」、「ID」があり、
表示画面750においては、カード400における表示内容を、表示画面750の上位の表示画面710、740に切り換えるための操作位置を示すマークを表示してもよく、具体的には、表示画面750から表示画面740に切り換えるための操作位置を示す「集約カード一覧へ戻る」というキーを示すマークや、表示画面750から表示画面710に切り換えるための操作位置を示す「メニューへ戻る」というキーを示すマークなどが表示される、
カード。」

(2)引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
従来、携帯可能電子装置としてのICカードは、たとえば、メモリやCPUなどの機能を有したICモジュールがプラスチック板などで構成される筐体内に埋設されている。このようなICカードは、入退出管理、クレジットカード、携帯電話、電子商取引などの高いセキュリティ性が必要ないろいろな分野で使用されている。…(後略)」

よって、引用文献2には、「いろいろな分野で使用されているICカードが、ICモジュールが筐体内に埋設されて構成されること。」との技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

(3)引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0062] FIGS. lA and lB are views illustrating an electronic device capable of inputting a user command according to an embodiment of the present general inventive concept. The exemplary electronic device illustrated and described below implements a digital media player, however application of the present general inventive concept to other devices will be readily apparent to the skilled artisan upon review of this disclosure. The present general inventive concept is intended to embrace all such other applications.」
([当審訳]
[0062] 図1Aおよび1Bは、本発明の一般的な本発明の概念の実施形態による、ユーザコマンドを入力することができる電子デバイスを示す図である。 以下に例示および説明される例示的な電子デバイスは、デジタルメディアプレーヤーを実装するが、他のデバイスへの本発明の一般的な概念の適用は、本開示を検討すると、当業者には容易に明らかになるであろう。 本発明の一般的な概念は、そのような他のすべての用途を包含することを意図している。)

[0069] The touchpad 130 may be divided into a first touch region 132, a second touch region 134, and a third touch region 136. A user may perform the slide after he/she touches a specified point in the first touch region 132, responsive to which a highlight being displayed on the LCD 110 is changed. The phrase "change of the highlight" and similar phrases refers herein to the change of a highlighted item to one of a plurality of items being displayed on the LCD 110 by an action in the display that corresponds to the user actuation. The highlighted item may be distinguished through a size that is larger than other items. In displaying the highlighted item on the LCD, a perspective representation may be used. That is, the highlighted item being displayed on the LCD may have a large size, and other items may be displayed around the highlighted item gradually smaller in size with increasing distance from the highlighted item. Alternatively, the highlighted item being displayed on the LCD may have a color different from that of other items to discriminate the high lighted item from other items.」
([当審訳]
[0069] タッチパッド130は、第1のタッチ領域132、第2のタッチ領域134、および第3のタッチ領域136に分割することができる。ユーザは、第1のタッチ領域132内の指定された点に触れた後、それに応答してスライドを実行することができる。LCD110に表示されているハイライトが変更される。「ハイライトの変更」という句および同様の句は、本明細書では、ユーザの作動に対応するディスプレイ内の動作によって、ハイライトされたアイテムを、LCD110上に表示されている複数のアイテムのうちの1つに変更することを指す。ハイライトされたアイテムは、他のアイテムよりも大きいサイズで区別される場合がある。ハイライトされたアイテムをLCDに表示する際に、透視図を使用することができます。つまり、LCDに表示されているハイライトされたアイテムのサイズが大きく、ハイライトされたアイテムからの距離が大きくなるにつれて、ハイライトされたアイテムの周囲に他のアイテムのサイズが徐々に小さくなる場合がある。あるいは、LCDに表示されているハイライトされたアイテムは、ハイライトされたアイテムを他のアイテムと区別するために、他のアイテムとは異なる色を持っている場合がある。)

「[0076] As described above, since the user can input commands for all operations of the complicated electronic device using only, for example, one touchpad 130 and two manipulation buttons 150, he/she can use the electronic device more conveniently. Also, since the structure of the manipulation unit is simple, the user can input the user command while holding the electronic device in his/her hand.
[0077] FIG. 1B is a view illustrating a method of inputting a user command with the electronic device in a user's hand.
[0078] The user may grasp the electronic device with his/ her fingers except the thumb, and may input a user command through the manipulation of the electronic device by using only his/her thumb. Also, the user command to operate the electronic device may be made by contacting his/her thumb with the touchpad 130, and then sliding his/her thumb left or right, or pressing the touchpad 130 or pressing the manipulation button 150. Accordingly, the user can use the electronic device more safely and conveniently while in motion or in a small space, without paying any special attention thereto.
[0079] In certain embodiments of the present general inventive concept, the contour of the touchpad 130 conforms to the arc formed by a user's thumb when translated left and right while the electronic device is held steady in the grasp of the user's hand. The same contour may also define the arrangement ofitems of the GUI being displayed on the LCD 110.」
([当審訳]
[0076] 前述のように、ユーザは、例えば、1つのタッチパッド130と2つの操作ボタン150のみを使用して、複雑な電子機器のすべての操作のコマンドを入力できるので、電子機器をより便利に使用することができる。また、操作ユニットの構造がシンプルなため、電子機器を手に持ってユーザーコマンドを入力することができる。
[0077] 図1Bは、ユーザの手に電子機器を用いてユーザコマンドを入力する方法を示す図である。
[0078] ユーザは、親指以外の指で電子機器を握ることができ、親指だけで電子機器を操作してユーザコマンドを入力することができる。 また、電子機器を操作するためのユーザコマンドは、親指をタッチパッド130に接触させ、次に親指を左右にスライドさせるか、タッチパッド130を押すか、操作ボタン150を押すことによって行うことができる。ユーザーは、特別な注意を払うことなく、移動中または狭いスペースで電子デバイスをより安全かつ便利に使用できます。
[0079] 本発明の一般的な概念の特定の実施形態では、タッチパッド130の輪郭は、電子デバイスがユーザの手の握りで安定して保持されている間に左右に平行移動されたときにユーザの親指によって形成される弧に一致する。同じ輪郭はまた、LCD110に表示されているGUIのアイテムの配置を定義し得る。)

「[0117] Referring to FIGS. 6A to 6C, it is exemplified that the user's thumb slides to the second touch point 314 after touching the first touch point 312, or slides from the second touch point 314 to the third touch point 316 through the first touch point 312. However, the present general inventive concept is not limited thereto. That is, it is not necessary for the user's thumb to first touch the first touch point 312, but, rather, the highlight is shifted responsive to the direction of the slide after the touch is performed, regardless of where the first touch on the touchpad 230 is made. Accordingly, if the highlight is on the specified item, the user can touch any one of the first touch point 312, the second touch point 314, and the third touch point 316. In this state, if the user performs the slide from the touched point to the right touch point, the highlight displayed on the display unit 270 is shifted to the right side, while if the user performs the slide from the touched point to the left touch point, the highlight is shifted to the left side.」
([当審訳]
[0117] 図1および図2を参照する。図6Aから6Cを参照すると、ユーザの親指は、第1のタッチポイント312に触れた後に第2のタッチポイント314にスライドするか、または第2のタッチポイント314から第1のタッチポイント312を通って第3のタッチポイント316にスライドすることが例示される。現在の一般的な発明の概念はそれに限定されない。すなわち、ユーザの親指が最初のタッチポイント312に最初に触れる必要はなく、むしろ、タッチパッド230上の最初のタッチがどこでなされたかに関係なく、タッチが実行された後、ハイライトはスライドの方向に応じてシフトされる。したがって、ハイライトが特定のアイテム上にある場合、ユーザは、第1のタッチポイント312、第2のタッチポイント314、および第3のタッチポイント316のいずれかに触れることができる。この状態で、ユーザがタッチしたポイントから右タッチポイントにスライドすると、表示器270に表示されるハイライトが右側に移動し、ユーザがタッチしたポイントから左タッチポイントにスライドすると、ハイライトが左側に移動する。)

「[0151] In certain embodiments of the present general inventive concept, if the user performs a short press in the first touch region 310 in a state of the GUI as illustrated in FIGS. 6A to 6C, 7A to7B, 9A to9C, orl0A to lOC, the details of the highlighted item are displayed. If the details of the highlighted item correspond to a lower list in the hierarchy, the user may search the list in the same manner as the method of searching the mode list as described above.」
([当審訳]
[0151] 本発明の一般的な概念の特定の実施形態では、ユーザが、図1および図2に示されるようなGUIの状態で第1のタッチ領域310を短く押すと、 図6Aと6C、7Aと7B、9Aないし9C、または10Aないし10Cでは、ハイライトされた項目の詳細が表示される。ハイライトされた項目の詳細が階層の下位リストに対応している場合、ユーザーは上記のモードリストを検索する方法と同じ方法でリストを検索できる。)

「[0153] Referring first once again to FIG. 6A, if the mode item "Music" displayed on the display unit 270 is highlighted, the user performs a short press in the first touch region 310 of the touch pad 230. The press sensor unit 234 senses the press and applies a signal indicative of the press to the control unit 280. The control unit 280, which has received the signal from the press sensor unit 234, determines that a user command for selecting a music mode has been input, and reads a list of music modes stored in the storage unit 260. If the whole list of the music modes cannot be displayed within the display space of the display unit 270, the control unit 280 reads only a part of the music mode list.
[0154] For example, it is assumed that the storage unit 260 stores a music mode list composed of icons and text that correspond to items "Line Recording", "Genre", "Artist", "Play List", "Album Art", "Album", "Song", and "Setting". Since only five items can be displayed on the exemplary display unit 270, the control unit 270 reads only a part of the music mode list. For example, the control unit 280 may read the subset of music modes which includes the items "Artist", "Play List", "Album Art", "Album", and "Song", highlights the item "Album Art", and applies the partial music mode list to the display unit 270. The display unit 270 displays the partial music mode list as illustrated in FIG. llA.」
([当審訳]
[0153] 最初にもう一度図1を参照する。図6Aに示されるように、表示ユニット270に表示されるモードアイテム「音楽」がハイライト表示される場合、ユーザは、タッチパッド230の第1のタッチ領域310でショートプレスを実行する。プレスセンサユニット234は、プレスを感知し、プレスセンサーユニット234からの信号を受信した制御ユニット280は、音楽モードを選択するためのユーザコマンドが入力されたことを判断し、記憶ユニット260に格納されている音楽モードのリストを読み取る。音楽モードのリスト全体を表示ユニット270の表示スペース内に表示することができない場合、制御ユニット280は、音楽モードリストの一部のみを読み取る。
[0154] 例えば、記憶ユニット260は、「ラインレコーディング」、「ジャンル」、「アーティスト」、「プレイリスト」、「アルバムアート」、「アルバム」、「歌」及び「設定」のアイテムに対応するアイコンとテキストからなる音楽モードリストを格納すると仮定する。例示的な表示ユニット270には5つのアイテムしか表示できないので、制御ユニット270は、音楽モードリストの一部のみを読み取る。例えば、制御ユニット280は、アイテム「アーティスト」、「プレイリスト」、「アルバムアート」、「アルバム」、および「歌」を含む音楽モードのサブセットを読み取り、アイテム「アルバムアート」をハイライト表示し、部分音楽モードリストを表示ユニット270に適用する。表示ユニット270は、図11Aに示すように部分音楽モードリストを表示する。)

「FIG.1A


第1のタッチ領域132の形状は弧状である。

「FIG.1B



「FIG.6A



「FIG.6B



「FIG.6C



「FIG.11A



よって、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「 ユーザが、親指以外の指で電子機器を握ることができ、親指だけで電子機器を操作してユーザコマンドを入力することができる電子機器であって、
タッチパッド130が、弧状の第1のタッチ領域132と第2のタッチ領域134と第3のタッチ領域136とに分割され、
第1タッチ領域132においてスライド操作がなされると、LCD110に表示された複数のアイテムの中でハイライト表示されるアイテムがスライドの方向に変化し、(例えば、「音楽」のアイテムがハイライト表示されている状態で、第1のタッチ領域132を左方向にスライドする操作をすると、ハイライト表示されるアイテムが「音楽」から、その左隣のアイテムである「RADIO」に変化し(図6A、図6B))、
第1のタッチ領域132において、ショートプレス操作がなされると、ハイライト表示されたアイテムが選択されてそのアイテムのリストが表示される(例えば、「音楽」のアイテムがハイライト表示されている状態(図6C)で、第1のタッチ領域132をショートプレスすると、ラインレコーディング」、「ジャンル」、「アーティスト」、「プレイリスト」、「アルバムアート」、「アルバム」、「歌」及び「設定」といった音楽モードリスト(又はその部分)が表示される(図11A))こと。」

(4)引用文献4について
当審拒絶理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、これを解決すべく、非接触ICカードと同一の機能を実現する非接触ICカード回路を携帯型情報機器に持たせ、さらに各種情報を表示する液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどを設けることにより、使用金額や残高確認を行うようにすることが考えられる。しかしながら、液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどの表示装置のディジタル制御に起因する電磁ノイズにより非接触ICカード回路における通信感度が劣化し、通信距離が短くなったり、通信エラーが発生する可能性が生じることとなる。この場合において、ディジタル制御により各種情報を表示する表示装置から電磁ノイズが発生する原因は、種々存在するが、例えば、液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどの表示パネルに交流波形が印加されることにより、あるいは、表示パネルの駆動電源を昇圧する昇圧回路のスイッチング動作のオン/オフによって発生することとなる。
【0004】特にこの問題は、腕時計形状を有する携帯型情報機器などのように、機器が小型で液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどの表示部と非接触ICカード回路のアンテナを離間して配置することが困難な携帯型情報機器において顕著に発生すると考えられる。そこで、本発明の目的は、表示部と非接触ICカード回路のアンテナとを装置サイズの関係で離間して配置することが出来ない場合であっても、非接触ICカード回路の通信感度の劣化、通信距離の短縮化および通信エラーの発生を抑制することが可能な携帯型情報機器、携帯型情報機器の制御方法、携帯型情報機器の制御用プログラムを記録した記録媒体および携帯型情報機器の制御用のプログラムを提供することにある。」

よって、引用文献4には、以下の技術事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

「 非接触ICカードと同一の機能を実現する非接触ICカード回路を持ち、さらに各種情報を表示する液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどを設けることにより、使用金額や残高確認を行うようにする携帯型情報機器においては、液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどの表示装置のディジタル制御に起因する電磁ノイズにより非接触ICカード回路における通信感度が劣化し、通信距離が短くなったり、通信エラーが発生する問題があり、この問題は、腕時計形状を有する携帯型情報機器などのように、機器が小型で液晶ディスプレイや有機EL発光ディスプレイなどの表示部と非接触ICカード回路のアンテナを離間して配置することが困難な携帯型情報機器において顕著に発生し、
表示部と非接触ICカード回路のアンテナとを装置サイズの関係で離間して配置することが出来ない場合であっても、非接触ICカード回路の通信感度の劣化、通信距離の短縮化および通信エラーの発生を抑制することが可能な携帯型情報機器。」

(5)引用文献5について
当審拒絶理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0061】
図4に示された実施形態において、接触式スイッチ410に対応する発光素子420は、接触式スイッチが配置された円形の外側に位置する。しかし、発光素子420は、必ず図4のように位置する必要はなく、接触式スイッチ410から他の発光素子より近い所定の位置に配置されれば良い。したがって、接触式スイッチ410に接触が発生した場合に発光素子420を発光させれば、ユーザが接触式スイッチ410に対する接触が発生したことを視覚的に確実に認知できるようになる。
【0062】
図4に示された実施形態において、接触式スイッチ410は、熱、圧力、キャパシタンス、および抵抗などを用いてユーザの接触を感知し、これを電気信号に変換するすべての装置を含む概念である。ここで、接触式スイッチは、ユーザの身体の一部分の接触を感知することもできるし、人体以外の導体または不導体を介した接触を感知することもできる。」

よって、引用文献5には、以下の技術事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

「 ユーザの接触を検知する接触式スイッチが配置された円形の外側に発光素子を配置し、接触式スイッチに接触が発生した場合に発光素子を発光させて、ユーザが接触式スイッチに対する接触が発生したことを視覚的に確実に認知できるようにすること。」

(6)引用文献6について
当審拒絶理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンピューティングデバイス10の外観例を示す図である。本実施形態のコンピューティングデバイス10は、大型のタッチパネルディスプレイ20を備えるタブレット端末であることを想定している。タッチパネルディスプレイ20は、複数箇所における指のタッチを感知するマルチタッチ機能を備えているものとする。なお、本実施形態では、タッチパネルディスプレイ20に接触するのは手の指であることを想定するが、指以外の物体の接触を検知するようにしてもよい。」

「【0033】
主スワイプ領域211及び212は、スワイプを検知する領域であり、タッチパネルディスプレイ20の側部及び下端部の間の左右の角部近傍に設けられる。主スワイプ領域211及び212はそれぞれ、点202及び203を中心とした扇形から、その内部に設けられる扇形の不反応領域204及び205(本発明の「扇形領域」に該当する。)を除いた領域である。点202及び203は、ユーザがコンピューティングデバイス10を両手で保持しながら左右の親指31又は32をタッチパネルディスプレイ20上でスワイプする場合に、親指31及び32がそれぞれ旋回する中心となる点である。なお、点202及び203はタッチパネルディスプレイ20の角部に限らず、角部からずらした位置としてもよいし、ユーザごとに設定してもよい。表示制御部113は、主スワイプ領域211及び212におけるスワイプに応じてコンテンツの表示を制御するが、不反応領域204及び205におけるタッチやスワイプは無視する。通常スワイプは親指31及び32の先端部分で行われるが、ユーザがコンピューティングデバイス10を両手で保持している間には、ユーザが意図することなく親指31又は32の根本部分がタッチパネルディスプレイ20にタッチしてしまうこともある。これに対して、不反応領域204及び205におけるタッチやスワイプを無視することにより、誤作動を防止することができる。」

「【0038】
==上下左右スクロール==
図6は、コンテンツ411を上下左右にスクロールさせる制御について説明する図である。表示制御部113は、主スワイプ領域211及び212におけるスワイプに応じて上下左右にコンテンツ411をスクロールさせるように表示制御部113を制御する。例えば、表示制御部113は、左の主スワイプ領域212がスワイプされた場合には、上下方向412にコンテンツ411をスクロールさせ、右の主スワイプ領域211がスワイプされた場合には、左右方向413にコンテンツ411をスクロールさせる。表示制御部113は、スワイプ量に応じてスクロール量も変化させる。このようにして、ユーザは両手でコンピューティングデバイス10を保持したまま親指31及び32をスワイプさせることで、容易にコンテンツ411を上下左右にスクロールさせることできる。」

「【図4】



「【図6】



よって、引用文献6には、以下の技術事項(以下、「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

「 タッチパネルディスプレイを備えるコンピューティングデバイスにおいて、
タッチパネルディスプレイの角部に位置する点(202、203)を中心とした扇形から、その内部に設けられる扇形の不反応領域(204、205)を除いた領域であって、スワイプを検知する領域である主スワイプ領域(211、212)を有し、
左の主スワイプ領域がスワイプされた場合には、上下方向にコンテンツをスクロールさせ、右の主スワイプ領域がスワイプされた場合には、左右方向にコンテンツをスクロールさせることにより、ユーザが両手でコンピューティングデバイスを保持したまま親指(31,32)をスワイプさせることで、容易にコンテンツを上下左右にスクロールさせることできる、
コンピューティングデバイス。」

2 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明は、「カード400は、プラスチックなどの高分子材料を用いて形成された薄板状の基材を備え、基材は、一般的なクレジットカードと同程度(約86mm×54mm)の大きさをなし」との構成を備えるから、「カード400」は、外形が「IC(integrated circuit)カード状」に構成され、一般的な「ICカード」と略等しいサイズであるといえる。
また、引用発明の「筐体」は、外形を構成するものである。
よって、引用発明の「カード400」と、本願発明1の「非接触型IC(integrated circuit)カード状に構成され、当該非接触型ICカードと略等しいサイズである筐体」とは、「IC(integrated circuit)カード状に形成され、当該ICカードと略等しいサイズである外形」である点に相当する。

イ 引用発明において、「ディスプレイ420」に積層される「タッチパネル421」は、「ディスプレイ420」に表示された「操作位置」を「操作」することにより所定の処理を実現するものであるから、「タッチパネル421」は、「カード400」の「上面上」に設けられ、「操作」がなされる「操作面」といい得るものである。
また、引用発明は、「CPU501は、カード400全体の制御を司り」との構成を備えることからすれば、当該「CPU501」は「タッチパネル421」と協働して、「タッチパネル421」に対してなされた「操作」を受け付ける「操作部」として機能することは自明なことである。
そうすると、引用発明と、本願発明1の「操作面が前記筐体の上面上に位置するように設けられ、互いに異なる第1の操作と第2の操作とをそれぞれ識別して受け付ける操作部」とは、前記アを参酌すれば、「操作面が前記外形の上面上に位置するように設けられ、操作を受け付ける操作部」との構成を備える点において共通する。

ウ 引用発明の「ディスプレイ420」は、「カード420」の「上面上」に設けられた「表示面」といい得るものである。
引用発明は、「ディスプレイ420」の「表示画面710」に表示される「確認可能な項目を示すマーク」の操作位置が操作されることにより、「当該マークが示す項目の詳細」を表示する「表示画面740」が表示され、具体的には、「表示画面710」において「集約カード情報」の位置が操作された場合、集約カードの種別ごとに、集約カードを個別に示す情報を含む「表示画面740」が表示され、当該「表示画面740」に表示される「クレジットカードの種別に集約された集約カードのうちの一つ(「WIZA」)」を示す位置が操作された場合、「当該集約カードの所持にかかる年会費や利用枠、当該集約カードに適用される保険の内容、などを示す情報」を含む「表示画面750」が表示されるから、各表示画面(710、740、750)は「表示項目」を含む「階層」を形成しているといえ、これを言い替えると、「表示項目」は複数の「階層」に「区分」されているといえる。
また、上記した、「表示画面710」における「確認可能な項目を示すマーク」の操作位置の操作による「表示画面740」の表示、「表示画面740」におけるクレジットカードの種別に集約された集約カードのうちの一つ(「WIZA」)」を示す位置の操作による「表示画面750」の表示に加え、引用発明の「集約カード一覧へ戻る」というキーを示すマークの操作による示画面750から表示画面740に切り換える操作や、「メニューへ戻る」というキーを示すマークの操作による表示画面750から表示画面710に切り替える操作は、ある表示画面に表示される表示項目を、他の表示画面に表示される表示項目に切り替える操作であって、「選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示する」操作に相当する。
また、引用発明は、「複数のカード(クレジットカード、電子マネーカード、ポイントカードなど)を所有する利用者の利便性の向上を図ることができるカード」に関するものであって、かつ、付帯カードの例として挙げられている、「NYAON」、「ETC」、「ID」のうち、少なくとも「ETC」と「ID」は、既存の電子マネーサービスである。
そうすると、引用発明において、各「表示画面」(「階層」)に表示される表示項目は、少なくとも「電子マネー及びポイントに関する表示項目」を含むものである。
また、引用発明は、「CPU501は、カード400全体の制御を司り」との構成を備えることからすれば、当該「CPU501」は「ディスプレイ420」と協働して、「表示項目」を表示する「表示部」として機能することは自明なことである。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記上面上の前記操作部の前記操作面とは異なる領域に表示面が設けられ、複数の階層に区分された表示項目であって、ユーザに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示する表示部」とは、「前記上面上に表示面が設けられ、複数の階層に区分された表示項目であって、ICカードに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示する表示部」との構成を備える点において共通する。

エ 前記ウを参酌すれば、引用発明における「CPU501」は、「タッチパネル421」及び「ディスプレイ421」と協働して、選択された「表示画面」に切り替える制御を行う「制御部」として機能しているといえる。
そうすると、前記ウを参酌すれば、引用発明と本願発明1の「前記第1の操作を受けて、前記表示部に表示された第1の表示項目を、当該第1の表示項目とは異なり、かつ選択された前記階層に含まれる第2の表示項目に切り替え、前記第2の操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替える制御部」とは、「前記操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替える制御部」との構成を備える点において共通する。

オ 引用発明は、「外部装置に接続される通信用端子」との構成を備えているから、「CPU501」は、「通信用端子」と協働して、「外部装置」の間で通信に基づき、情報の送受信を行う「通信部」として機能しているといえる。また、「外部装置」は、「外部デバイス」といい得るものである。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられ、外部デバイスとの間で非接触通信に基づき、情報の送受信を行う通信部」とは、「外部デバイスとの間で通信に基づき、情報の送受信を行う通信部」との構成を備える点において共通する。

カ 引用発明の「カード」は、「CPU501」を備える「ICチップ410」を備え、「後述するカード400の処理」を実行するための「各種のプログラム」を備えることから、「情報処理装置」といい得るものである。
よって、引用発明の「カード」は、後述する相違点を除いて、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

(2)一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 IC(integrated circuit)カード状に形成され、当該ICカードと略等しいサイズである外形と、
操作面が前記外形の上面上に位置するように設けられ、操作を受け付ける操作部と、
前記上面上に表示面が設けられ、複数の階層に区分された表示項目であって、ICカードに対応付けられた電子マネー及びポイントに関する表示項目のうち、選択された前記階層に含まれるいずれかの前記表示項目を表示する表示部と、
前記操作を受けて、選択された前記階層を、当該階層とは異なる他の階層に切り替える制御部と、
外部デバイスとの間で通信に基づき、情報の送受信を行う通信部と、
を備え、
前記制御部は、選択された前記階層に応じて、前記表示部への当該階層を示す階層情報の表示を制御する、情報処理装置。」

[相違点]
<相違点1>
「外形」が、本願発明1は、「筐体」であるのに対し、引用発明1は、当該構成を備えることについて具体的に特定していない点。

<相違点2>
「操作面」及び「表示面」に関し、本願発明1は、「操作面」と「表示面」とが「異なる領域」に設けられるのに対し、引用発明1においては、「タッチパネル421」が「ディスプレイ420」に積層されることから、「タッチパネル421」のタッチ面と、「ディスプレイ420」の表面とは、「異なる領域」に設けられているとはいえない点。

<相違点3>
「操作」に関し、本願発明1は、「操作部」が「互いに異なる第1の操作と第2の操作とをそれぞれ識別して受け付ける」ものであり、かつ、「制御部」が、「前記第1の操作を受けて、前記表示部に表示された第1の表示項目を、当該第1の表示項目とは異なり、かつ選択された前記階層に含まれる第2の表示項目に切り替え」る機能を備えるのに対し、引用発明1は、これらの構成を備えない点。

<相違点4>
「通信部」に関し、本願発明1は、「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられ」るのに加え、「非接触通信」を行うものであるのに対し、引用発明1における「通信用端子505」は、「カード」の一面側に「通信用端子505」が露出するように設けられ、当該「通信用端子505」が外部装置に接続して通信を行う点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点4について先に検討すると、相違点4に係る本願発明1の「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部」という構成は、上記引用文献1ないし6には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
なお、引用文献4記載事項からすると、「非接触ICカード回路」と「表示装置」とを持つ「携帯型情報機器」において、「表示装置」に起因する電磁ノイズにより「非接触ICカード回路」における通信感度が劣化する等の問題があることが本願出願日前における周知技術であるといえるが、引用文献4記載事項は、「表示部と非接触ICカード回路のアンテナとを装置サイズの関係で離間して配置することが出来ない場合」を前提として、「非接触ICカード回路の通信感度の劣化、通信距離の短縮化および通信エラーの発生を抑制することが可能」となるように前記問題を解決するものであり、かつ、本願発明1の「操作部」(操作面)に相当する構成を備えるものでもないから、引用文献4の記載に接した当業者といえども、相違点4に係る本願発明1の構成を想到することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし14について
本願発明2ないし14は、上記相違点4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明15及び16について
本願発明15は、本願発明1を「情報処理方法」として特定したものであり、上記相違点4に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えたものである。
また、本願発明16は、本願発明1を「プログラム」として特定したものであり、上記相違点4に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えたものである。
よって、本願発明15及び16は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 理由2(進歩性欠如)についての小括
以上のとおり、本願発明1ないし16は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、当審拒絶理由の理由2(進歩性欠如)は解消した。

第7 原査定についての判断
令和2年9月23日に提出された手続補正書による手続補正により、補正後の請求項1ないし16は、「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記操作部の位置を基準として、平面視で前記表示部とは逆側に位置するように前記筐体内に設けられた通信部」は、原査定における引用文献AないしG(当審拒絶理由における引用文献3ないし6を含む。)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし16は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしGに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-10-30 
出願番号 特願2014-145224(P2014-145224)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐伯 憲太郎桜井 茂行円子 英紀  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 林 毅
野崎 大進
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ