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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1367672
審判番号 不服2019-9311  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-11 
確定日 2020-10-27 
事件の表示 特願2016-538850「eNB間搬送波集成における無線リンク失敗及びランダムアクセス手順のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日国際公開、WO2015/030483、平成28年10月13日国内公表、特表2016-532391〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年8月27日 インド,2014年8月21日 インド)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月30日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年11月 8日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成31年 2月19日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年 3月 5日付け:平成31年2月19日にされた手続補正に ついての補正の却下の決定,拒絶査定
令和 1年 7月11日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提 出

第2 令和1年7月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月11日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は,平成30年10月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 無線ネットワークにおけるマスタeNB(MeNB:master evolved NodeB)と二次eNB(SeNB:secondary eNB)と二重接続されるユーザ端末(UE)によりランダムアクセス手順を実行する方法であって、
前記マスタeNBのマスタセルグループ(MCG:master cell group)のうちの一次セル(Pセル)にランダムアクセス(RA:random access)手順を実行するステップと、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループ(SCG:secondary cell group)のうちの少なくとも一つの二次セル(Sセル)にランダムアクセス手順を実行するステップと、を含み、
前記少なくとも一つの二次セル(SCell)にランダムアクセス手順を実行するステップは、
前記二次セルグループ(SCG)が追加または変更される場合、物理的ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)を通じて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つにランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップと、
前記少なくとも一つの二次セルのうち一つからアップリンクグラント及び一時的C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)を含むランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージを受信するステップと、
前記アップリンクグラントに基づいて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つに要請メッセージを伝送するステップと、
前記一時的C-RNTIを使用して、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つから競合解決メッセージを受信するステップと、を含み、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループのうちの少なくとも一つの二次セル(SCell)へのランダムアクセス手順は、前記二次セルグループ(SCG)の追加または変更に対する無線リソース制御(RRC)接続メッセージの受信時、ダウンリンクデータまたはアップリンクデータが到着する場合、または、前記ユーザ端末が二次セルグループ(SCG)の追加または変更のためのメッセージを受信する場合、前記ユーザ端末により開始される
ことを特徴とする、方法。」との発明(以下,「本願発明」という。)を,
「 無線ネットワークにおけるマスタeNB(MeNB:master evolved NodeB)と二次eNB(SeNB:secondary eNB)と二重接続されるユーザ端末(UE)によりランダムアクセス手順を実行する方法であって、
前記マスタeNBのマスタセルグループ(MCG:master cell group)のうちの一次セル(Pセル)にランダムアクセス(RA:random access)手順を実行するステップと、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループ(SCG:secondary cell group)のうちの少なくとも一つの二次セル(Sセル)にランダムアクセス手順を実行するステップと、を含み、
前記少なくとも一つの二次セル(SCell)にランダムアクセス手順を実行するステップは、
前記二次セルグループ(SCG)が追加または変更される場合、物理的ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)を通じて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つにランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップと、
前記少なくとも一つの二次セルのうち一つからアップリンクグラント及び一時的C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)を含むランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージを受信するステップと、
前記アップリンクグラントに基づいて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つに要請メッセージを伝送するステップと、
前記一時的C-RNTIを使用して、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つから競合解決メッセージを受信するステップと、を含み、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループのうちの少なくとも一つの二次セル(SCell)へのランダムアクセス手順は、前記ユーザ端末が二次セルグループ(SCG)の追加または変更のためのメッセージを受信する場合、前記ユーザ端末により開始され、
前記少なくとも一つの二次セル(SCell)のためのC-RNTIは、前記一次セル(PCell)のためのC-RNTIと相異する
ことを特徴とする、方法。」(下線は,補正箇所を示す。)
との発明(以下,「本件補正発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件
請求項1についての上記補正は「前記少なくとも一つの二次セル(SCell)のためのC-RNTIは、前記一次セル(PCell)のためのC-RNTIと相異する」という事項を追加している。
当該事項は補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を更に限定するものではなく、新たな構成を追加するものであるから、上記補正の目的は特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、・・・ものに限る。)」に該当しない。また上記補正の目的は特許法第17条の2第5項に規定される他のいずれの事項にも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

(2)独立特許要件
上記(1)のとおりであるが,更に進んで,仮に上記補正の目的を特許請求の範囲の限定的減縮とした場合に,独立特許要件を満たしていたか否かについても検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は,上記1の「本件補正発明」のとおりのものと認める。

イ 引用発明及び周知技術
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/137984号(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「At least some aspects of the systems and methods disclosed herein may be described in relation to the 3GPP LTE and LTE-Advanced (LTE-A) standards (e.g., Release-8 and Release-10). However, the scope of the present disclosure should not be limited in this regard. At least some aspects of the systems and methods disclosed herein may be utilized in other types of wireless communication systems.」(8ページ19?25行)
(当審仮訳:
本明細書に開示されるシステムおよび方法の少なくともいくつかの様態は、3GPP LTEおよびLTE-Advanced(LTE-A)規格(例えば、リリース8およびリリース10)に関して記載されうる。しかしながら、この点について本開示の範囲は限定されない。本明細書に開示されるシステムおよび方法の少なくともいくつかの様態は、他のタイプのワイヤレス通信システムに利用できる。)

(イ)「 One or more of the following aspects may be used in accordance with the systems and methods disclosed herein. In addition to a group of one or more serving cells (including a primary cell (PCell)), one or more groups that include at least one secondary cell (SCell) are introduced. The uplink transmissions corresponding to one or more serving cells in each group may have the same uplink transmission timing.
Each group may have one specific cell that is used as an uplink timing reference. In a group including the PCell, this specific cell may be the PCell. In a group that does not include the PCell, this specific cell may be a specific SCell referred to as a primary SCell (PSCell) or a secondary PCell (SPCell). In the specification and claims herein, the term "PSCell" is used to refer to a primary SCell (PSCell), a secondary PCell (SPCell) or both. The PSCell may have intermediate features between the PCell and the SCell.
PCell features may include the following. The PCell may be used as an anchor cell of Security and Mobility. The UE may be required to perform Radio Link Monitoring in the PCell. The PCell may be used as a path loss reference to other cell(s). The PCell may be used as an uplink timing reference to other cell(s). The PCell uplink timing may refer to the PCell downlink timing. The PCell may always be activated and never deactivated. The PCell may not be cross-carrier scheduled. The UE may acquire System Information and/or Paging transmitted from an eNB in the PCell. The UE may monitor a Random Access Response and/or physical downlink control channel (PDCCH) ordered random access channel (RACH) and/or Contention Resolution for random access in the PCell. The UE may be assigned a Semi-Persistent Scheduling resource in the PCell by the eNB. The UE may use a physical random access channel (PRACH) resource in the PCell. The UE may use a physical uplink control channel (PUCCH) resource in the PCell.
(中略)
PSCell features may include one or more of the following, for example. The PSCell may not be used as an anchor cell of Security and Mobility. The UE may be required to perform Radio Link Monitoring in the PSCell. The PSCell may be used as a path loss reference to other cell(s) within its own group. The PSCell may be used as an uplink timing reference to other cell(s) within its own group. The PSCell uplink timing may refer to the PSCell downlink timing. The PCell may always be activated and may never be deactivated. The PSCell may not be cross-carrier scheduled. The UE may not acquire System Information and/or Paging transmitted from an eNB in the PSCell. The UE may monitor a Random Access Response and/or PDCCH ordered RACH and/or Contention Resolution for random access in the PSCell. The UE may not be assigned a Semi-Persistent Scheduling resource in the PSCell by an eNB. The UE may use a PRACH resource in the PSCell. The UE may use a PUCCH resource in the PSCell.」(15ページ12行?18ページ2行)
(当審仮訳:
本明細書に開示されるシステムおよび方法に従って、次の様態の1つ以上を使用できる。(プライマリセル(PCell)を含む)1つ以上のサービングセルのグループに加えて、少なくとも1つのセカンダリセル(SCell)を含む1つ以上のグループが導入される。各グループにおける1つ以上のサービングセルに対応する上りリンクの送信は、同じ上りリンク送信タイミングを有することができる。
各グループは、上りリンク・タイミング基準として使用される、1つの特定のセルを有することができる。PCellを含むグループでは、この特定のセルは、PCellとすることができる。PCellを含まないグループでは、この特定のセルは、プライマリSCell(PSCell)またはセカンダリPCell(SPCell)と呼ばれる、特定のSCellとすることができる。本発明の明細書および特許請求の範囲において、プライマリSCell(PSCell)、セカンダリPCell(SPCell)または両方を指すために、用語「PSCell」が使用される。PSCellは、PCellとSCellとの中間の特徴を有することができる。
PCellの特徴は、以下を含むことができる。PCellは、セキュリティおよびモビリティのアンカーセルとして使用できる。UEは、無線リンク・モニタリングをPCellで行うことが必要とされうる。PCellは、他のセル(単数または複数)に対するパス・ロス基準として使用できる。PCellは、他のセル(単数または複数)に対する上りリンク・タイミング基準として使用できる。PCell上りリンク・タイミングは、PCell下りリンク・タイミングを参照できる。PCellは、常にアクティブ化され、決して非アクティブ化されることができない。PCellをクロスキャリア・スケジューリングすることはできない。UEは、eNBから送信されたシステム情報および/またはページング情報をPCellで取得できる。UEは、ランダムアクセスのためのランダムアクセスレスポンスおよび/または物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)指令ランダムアクセスチャネル(RACH)および/または競合解決をPCellでモニターできる。UEには、eNBによってPCellにおけるセミパーシステント・スケジューリング(Semi-Persistent Scheduling)リソースを割り当てることができる。UEは、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)リソースをPCellで使用できる。UEは、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)リソースをPCellで使用できる。
(中略)
PSCellの特徴は、例えば、以下の1つ以上を含むことができる。PSCellは、セキュリティおよびモビリティのアンカーセルとして使用できない。UEは、無線リンク・モニタリングをPSCellで行うことが必要とされうる。PSCellは、それ自体のグループ内の他のセル(単数または複数)に対するパス・ロス基準として使用できる。PSCellは、それ自体のグループ内の他のセル(単数または複数)に対する上りリンク・タイミング基準として使用できる。PSCell上りリンク・タイミングは、PSCell下りリンク・タイミングを参照できる。PSCellは、常にアクティブ化され、決して非アクティブ化できない。PSCellをクロスキャリア・スケジューリングすることはできない。UEは、eNBから送信されたシステム情報および/またはページング情報をPSCellで取得できない。UEは、ランダムアクセスのためのランダムアクセスレスポンスおよび/またはPDCCH指令RACHおよび/または競合解決をPSCellでモニターできる。UEには、eNBによってPSCellにおけるセミパーシステント・スケジューリング・リソースを割り当てることができない。UEは、PRACHリソースをPSCellで使用できる。UEは、PUCCHリソースをPSCellで使用できる。)

(ウ)「Figure 1 is a block diagram illustrating one configuration of a user equipment (UE) 102 and one or more evolved Node Bs (eNBs) 160 in which systems and methods for multi-group communications may be implemented. The UE 102 communicates with an evolved Node B (eNB) 160 using one or more antennas 122a-n. For example, the UE 102 transmits electromagnetic signals to the eNB 160 and receives electromagnetic signals from the eNB 160 using the one or more antennas 122a-n. The eNB 160 communicates with the UE 102 using one or more antennas 180a-n. It should be noted that the eNB 160 may be a Node B, home evolved Node B (HeNB) or other kind of base station in some configurations.
The UE 102 and the eNB 160 may use one or more cells (e.g., channels, carrier components, etc.) 119, 121 to communicate with each other. For example, the UE 102 and eNB 160 may use the cells 119, 121 to carry one or more channels (e.g., Physical Uplink Control Channel (PUCCH), Physical Uplink Shared Channel (PUSCH), Physical Downlink Control Channel (PDCCH), etc.) A PUCCH is one example of a control channel pursuant to 3GPP specifications. Other kinds of channels may be used.
In accordance with the systems and methods disclosed herein, multiple kinds of cells 119, 121 and multiple groups of cells 119, 121 may be used for communication. As used herein, the term "group" may denote a group of one or more entities. A primary cell (PCell) may be a primary cell in accordance with 3GPP specifications. A secondary cell (SCell) may be a secondary cell in accordance with 3GPP specifications. A group of one or more cells that includes a PCell may be a PCell group . Cells in a PCell group may be referred to as PCell group cells 1 19. Thus, a PCell group includes at least a PCell. A PCell group may additionally include one or more SCells.
One or more other groups of cells that do not include a PCell may each be a "non-PCell" group. A non-PCell group may include one or more SCells. One or more cells in a non- PCell group may be referred to as non-PCell group cell(s) 121.
In one configuration, cells 119, 121 may be grouped according to site . More specifically, all cells 119, 121 transmitted from a particular site (e.g., eNB 160, repeater, etc.) may be grouped into a group. For example, a PCell group may be transmitted from a first site (e.g., an eNB 160 or repeater) while a non-PCell group may be transmitted from a second site (e.g., a separate remote radio head (RRH) or a separate repeater, etc.). For instance, a PCell group may be transmitted from a first eNB 160 at a first location, while a non-PCell group may be transmitted from a second remote radio head at a second location. A remote radio head (RRH) or repeater is may be a separate transmitter 117 and/or receiver 178, but multiple cells may still be provided by a single eNB 160. In another example, a PCell group may be transmitted from a first repeater at a first location, while a non-PCell group may be transmitted from a second repeater at a second location. In this case, the PCell group and the non-PCell group may be transmitted from the same site or from separate sites.」 (29ページ2行? 31ページ7行)
(当審仮訳:
図1は、マルチグループ通信のためのシステムおよび方法を実装できるユーザ機器(UE)102および1つ以上のevolved Node B(eNB)160の一構成を示すブロックダイアグラムである。UE102は、1つ以上のアンテナ122a?nを使用してevolved Node B(eNB)160と通信する。例えば、UE102は、1つ以上のアンテナ122a?nを使用してeNB160へ電磁信号を送信し、かつeNB160から電磁信号を受信する。eNB160は、1つ以上のアンテナ180a?nを使用してUE102と通信する。留意すべきは、いくつかの構成においては、eNB160が、Node B、home evolved Node B(HeNB)あるいは他の種類の基地局であってもよいことである。
UE102およびeNB160は、相互に通信するために1つ以上のセル(例えば、チャネル、キャリアコンポーネントなど)119、121を使用できる。例えば、UE102およびeNB160は、1つ以上のチャネル(例えば、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)など)を送るためにセル119、121を使用できる。PUCCHは、3GPP仕様書に準拠した制御チャネルの一例である。他の種類のチャネルも使用できる。
本明細書に開示されるシステムおよび方法に従って、通信のためにセル119、121の複数の種類、およびセル119、121の複数のグループを使用できる。本明細書では、用語「グループ」は、1つ以上のエンティティのグループを示すことができる。プライマリセル(PCell)は、3GPP仕様書に従ったプライマリセルとすることができる。セカンダリセル(SCell)は、3GPP仕様書に従ったセカンダリセルとすることができる。PCellを含む1つ以上のセルのグループをPCellグループとすることができる。PCellグループのセルは、PCellグループ・セル119と呼ぶことができる。かくして、PCellグループは、少なくともPCellを含む。PCellグループは、追加的に1つ以上のSCellを含んでもよい。
PCellを含まない、セルの1つ以上の他のグループは、それぞれ「非PCell」グループとすることができる。非PCellグループは、1つ以上のSCellを含むことができる。非PCellグループにおける1つ以上のセルは、非PCellグループ・セル(単数または複数)121と呼ぶことができる。
一構成において、セル119、121は、サイトに従ってグループに分けることができる。より具体的には、特定のサイト(例えば、eNB160、リピータなど)から送信されるすべてのセル119、121を1つのグループにすることができる。例えば、PCellグループは、第1のサイト(例えば、eNB160またはリピータ)から送信できて、一方で非PCellグループは、第2サイト(例えば、別個のリモート・レディオ・ヘッド(RRH:remote radio head)または別個のリピータなど)から送信できる。例として、PCellグループは、第1の位置における第1のeNB160から送信できて、一方で非PCellグループは、第2の位置における第2のリモート・レディオ・ヘッドから送信できる。リモート・レディオ・ヘッド(RRH)またはリピータが別個の送信機117および/または受信機178であっても、単一のeNB160によってなお複数のセルを提供できる。別の例では、PCellグループは、第1の位置における第1のリピータから送信できて、一方で非PCellグループは、第2の位置における第2のリピータから送信できる。この場合に、PCellグループおよび非PCellグループは、同じサイトから、あるいは別個のサイトから送信されうる。)

(エ)「In one configuration, the UE 102 may adjust its uplink transmission timing for a physical uplink control channel (PUCCH), physical uplink shared channel (PUSCH) and/or sounding reference signal (SRS) of a primary cell (PCell) based on a timing advance command. The timing advance command in a random access response may be transmitted from an eNB 160 to the UE 102 after the UE 102 has sent a random access preamble.
(中略)
Typically, the uplink transmission timing for a physical uplink shared channel (PUSCH) and/or sounding reference signal (SRS) of a secondary cell (SCell) may be the same as that of a primary cell (PCell). However, aggregation between cells may be introduced with different transmission and/or reception sites (e.g., different eNBs 160, RRHs or repeaters, etc.). In this case, the UE 102 may need to have different uplink transmission timing for each cell or groups of one or more cells. The multi-group timing module 130 may control or adjust the transmission timing for one or more groups (e.g., a PCell group and/ or one or more non-PCell groups) .
(中略)
A timing advance command in a random access response may be transmitted from an eNB 160 and received by the UE 102 in a PCell or in a PSCell after the UE 102 has sent a random access preamble in the PCell or the PSCell. This random access response may be scheduled by a PDCCH including a random access radio network temporary identifier (RA-RNTI), which is an identifier used for scheduling a PDSCH including a random access response.
(中略)
It should also be noted that PDCCH detection to order a random access in a PSCell from an eNB to a UE may be in the PSCell and Contention resolution for a random access in a PSCell may be in the PSCell.
(中略)
The set of PDCCH candidates to monitor may be defined in terms of search spaces. Typically, there is a common search space on the primary cell (PCell) 119 and a UE-specific search space on the PCell 119 and/or one or more SCells. In this case, the common search space may be cell-specific and only on the PCell 119. The UE-specific search space may be defined by a cell radio network temporary identifier or C-RNTI (e.g., user equipment identifier (UEID)) and may be prepared for each serving cell 119, 121.
(中略)
However, in accordance with the systems and methods disclosed herein and in order to have multiple time alignments, the UE 102 may need to perform a random access procedure in a PSCell 121. Thus, a UE 102 configured with an SCell with a random access channel (RACH) may be required to monitor a PDCCH in a common search space in the PSCell 121 in addition to the common search space in the PCell 119. There may be no need to monitor a SI-RNTI, a P-RNTI and an SPS C-RNTI in the PSCell 121, since it may be sufficient to monitor them in the common search space in the PCell 119. Therefore, the C-RNTI, RA-RNTI, temporary C-RNTI, TPC-PUCCH-RNTI and TPC-PUSCH-RNTI may be monitored by the multi-group monitoring module 132 in the common search space in a PSCell 121.)(36ページ21行?44ページ26行)
(当審仮訳:
一構成において、UE102は、タイミングアドバンスコマンドに基づいて、プライマリセル(PCell)の物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)および/またはサウンディング基準信号(SRS)のためのその上りリンク送信タイミングを調整できる。ランダムアクセスレスポンス中のタイミングアドバンスコマンドは、UE102がランダムアクセスプリアンブルを送った後に、eNB160からUE102へ送信できる。
(中略)
典型的には、セカンダリセル(SCell)の物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)および/またはサウンディング基準信号(SRS)のための上りリンク送信タイミングは、プライマリセル(PCell)の上りリンク送信タイミングと同じにすることができる。しかしながら、異なった送信および/または受信サイト(例えば、異なったeNB160、RRHまたはリピータなど)を用いて、セル間のアグリゲーションが導入されることがありうる。この場合に、UE102は、各セルまたは1つ以上のセルのグループのために異なった上りリンク送信タイミングを有する必要がありうる。マルチグループ・タイミング・モジュール130は、1つ以上のグループ(例えば、PCellグループおよび/または1つ以上の非PCellグループ)のための送信タイミングを制御または調整できる。
(中略)
ランダムアクセスレスポンス中のタイミングアドバンスコマンドは、UE102がランダムアクセスプリアンブルをPCellまたはPSCellで送った後に、そのPCellまたはPSCellでeNB160から送信され、UE102によって受信されることができる。このランダムアクセスレスポンスは、ランダムアクセスレスポンスを含むPDSCHをスケジューリングするために使用される識別子である、ランダムアクセス無線ネットワーク一時識別子(RA-RNTI)を含むPDCCHによってスケジューリングできる。
(中略)
eNBからUEへのPSCellでのランダムアクセスを指令するためのPDCCH検出が、PSCell中であってもよく、PSCellでのランダムアクセスのための競合解決が、PSCell中であってもよいことにも留意すべきである。
(中略)
検索空間の観点から、モニターすべきPDCCH候補のセットを定義できる。典型的には、プライマリセル(PCell)119上に共通検索空間があり、PCell119および/または1つ以上のSCell上にUE固有の検索空間がある。この場合に、共通検索空間は、セル固有であってPCell上にだけありうる。UE固有の検索空間は、セル無線ネットワーク一時識別子またはC-RNTI(例えば、ユーザ機器識別子(UEID))によって定義できて、各サービングセル119、121のために用意できる。
(中略)
しかしながら、本明細書に開示されるシステムおよび方法に従い、かつ複数のタイムアラインメントを有するためには、UE102がランダムアクセス手順をPSCell121で行う必要がありうる。かくして、PCell119における共通検索空間に加えて、PSCell121における共通検索空間でPDCCHをモニターするために、ランダムアクセスチャネル(RACH)をもつSCellを用いて構成されたUE102が必要とされうる。SI-RNTI、P-RNTIおよびSPS C-RNTIは、PCell119における共通検索空間でモニターすれば十分でありうるので、これらをPSCell121でモニターする必要はないであろう。それゆえに、PSCell121における共通検索空間では、マルチグループ・モニタリング・モジュール132によってC-RNTI、RA-RNTI、一時C-RNTI、TPC-PUCCH-RNTIおよびTPC-PUSCH-RNTIがモニターされるとよい。)

(オ)「Figure 2 is a flow diagram illustrating one configuration of a method 200 for performing multi-group communications on a UE 102. A UE 102 may detect 202 a plurality of cells 119, 121. For example, the UE 102 may receive a synchronization signal, a beacon, a message, etc., from one or more eNBs 160 indicating that multiple groups of one or more cells 119, 121 may be used for communications. Additionally or alternatively, the UE 102 may send a signal or message (e.g., an access request, authentication information, etc.) to one or more eNBs 160 indicating that the UE 102 is seeking to communicate with the one or more eNBs 160. In this case, the one or more eNBs 160 may respond by sending a signal that allows the UE 102 to communicate with the one or more eNBs 160.
The UE 102 may determine 204 whether to use multiple groups of cells119, 121 to communicate. If the UE 102 determines 204 not to communicate using multiple groups of cells 119, 121, the UE 102 may communicate 206 using a single group of cells 119. In some configurations, the UE 102 may determine 204 not to communicate using multiple groups of cells 119, 121, if the UE 102 is incapable of communicating using multiple groups of cells 119, 121 or for other considerations (e.g., low battery power, poor channel quality with a non-PCell group, etc.).
If the UE 102 determines 204 to communicate using multiple groups of cells 119, 121, the UE 102 may determine 208 a PSCell 121 for each non-PCell group. For example, the UE 102 may communicate with one or more eNBs 160 using one or more non-PCell group cells 121 (e.g., groups of non-PCell group cell(s) 121). The non-PCell group cell(s) 121 may include one or more SCells. In some configurations, each non-PCell group may be transmitted from a different site (e.g., eNB 160, RRH, repeater, etc.). The PSCell determination module 128 may determine a primary secondary cell (PSCell) for each non-PCell group.
For example, the UE 102 may determine 208 one or more PSCells based on UE-specific (explicit or implicit) radio resource control (RRC) signaling.
(中略)
Alternatively, UE 102 may determine 208 one or more PSCells based on UE-specific explicit RRC signaling. For example , the UE 102 may receive a message from one or more eNBs 160 that explicitly identifies one or more PSCells (for one or more non- PCell groups) .
The UE 102 may determine 210 whether to adjust transmission timing. For example, if the UE 102 has received one or more timing advance commands from one or more eNBs 160, the UE 102 may determine 210 to adjust uplink transmission timing. However, if the UE 102 has not received any transmission advance commands, the UE 102 may determine 210 not to adjust uplink transmission timing.
If the UE 102 determines 210 to adjust uplink transmission timing, then the UE 102 may use 212 a timing advance command to adjust uplink timing for a group of cells 119, 121. For example, the UE 102 may adjust the transmission timing for one or more non-PCell groups. For instance, the UE 102 may advance or delay the timing of non-PCell group signals transmitted from the UE 102 to one or more eNBs 160 by using 212 a timing advance command that specifies the amount of time delay or advancement. The transmission timing may be different between the PCell group and one or more non-PCell groups. Additionally or alternatively, the transmission timing may be different between distinct non-PCell groups.
(中略)
A timing advance command in a random access response may be used 212 that is transmitted from an eNB 160 and received by the UE 102 in a PCell or in a PSCell after the UE 102 has sent a random access preamble in the PCell or the PSCell. This random access response may be scheduled by a PDCCH including a random access radio network temporary identifier (RA-RNTI), which is an identifier used for scheduling a PDSCH including a random access response .
(中略)
Whether or not the UE 102 determines 214 that a path loss parameter was received that designates a reference cell 121 in a non-PCell group, the UE 102 may communicate 218 with one or more eNBs 160 using the multiple groups. For example, the UE 102 may transmit information to and/or receive information from one or more eNBs 160 using one or more PCell group cells 119 and one or more non-PCell group cells 121.」(59ページ9行?67ページ22行)
(当審仮訳:
図2は、UE102上でマルチグループ通信を行うための方法200の一構成を示すフローダイアグラムである。UE102は、複数のセル119、121を検出202できる。例えば、UE102は、1つ以上のセル119、121の複数のグループを通信のために使用できることを指示する同調信号、ビーコン、メッセージなどを1つ以上のeNB160から受信できる。加えて、または代わりに、UE102は、1つ以上のeNB160と通信するのをUE102が求めていることを指示する信号またはメッセージ(例えば、アクセス要求、認証情報など)を1つ以上のeNB160へ送ることができる。この場合に、1つ以上のeNB160は、UE102が1つ以上のeNB160と通信するのを許可する信号を送ることによって応答できる。
UE102は、通信するためにセル119、121の複数のグループを使用すべきかどうかを判定204できる。UE102がセル119、121の複数のグループを使用して通信しないと判定204した場合、UE102は、セル119の単一のグループを使用して通信206できる。いくつかの構成では、UE102がセル119、121の複数のグループを使用して通信することが可能でない場合、あるいは他の理由(例えば、低電池電力、非PCellグループでの低チャネル品質など)から、UE102は、セル119、121の複数のグループを使用して通信しないと判定204してもよい。
UE102が、セル119、121の複数のグループを使用して通信すると判定204した場合、UE102は、各非PCellグループのためのPSCellを決定208できる。例えば、UE102は、1つ以上の非PCellグループ・セル121(例えば、非PCellグループ・セル(単数または複数)121のグループ)を使用して、1つ以上のeNB160と通信できる。非PCellグループ・セル(単数または複数)121は、1つ以上のSCellを含むことができる。いくつかの構成では、各非PCellグループは、異なったサイト(例えば、eNB160、RRH,リピータなど)から送信できる。PSCell決定モジュール128は、各非PCellグループのためのプライマリ・セカンダリセル(PSCell)を決定できる。
例えば、UE102は、UE固有の(明示的または暗黙的な)無線リソース管理(RRC)シグナリングに基づいて1つ以上のPSCellを決定208できる。
(中略)
代わりに、UE102は、UE固有の明示的なRRCシグナリングに基づいて、1つ以上のPSCellを決定208できる。例えば、UE102は、(1つ以上の非PCellグループのための)1つ以上のPSCellを明示的に識別するメッセージを1つ以上のeNB160から受信できる。
UE102は、送信タイミングを調整すべきかどうかを判定210できる。例えば、UE102が1つ以上のタイミングアドバンスコマンドを1つ以上のeNB160から受信した場合、UE102は、上りリンク送信タイミングを調整すると判定210できる。しかしながら、UE102がタイミングアドバンスコマンドを受信しなかった場合、UE102は、上りリンク送信タイミングを調整しないと判定210できる。
UE102が上りリンク送信タイミングを調整すると判定210した場合、次にUE102は、セル119、121のグループのための上りリンク・タイミングを調整するために、タイミングアドバンスコマンドを使用212できる。例えば、UE102は、1つ以上の非PCellグループのための送信タイミングを調整できる。例として、UE102は、時間遅延または前進の量を特定するタイミングアドバンスコマンドを使用212することによって、UE102から1つ以上のeNB160へ送信される非PCellグループ信号のタイミングを進めるか、または遅らせることができる。送信タイミングは、PCellグループと1つ以上の非PCellグループとの間で異なってもよい。加えて、または代わりに、送信タイミングは、別個の非PCellグループ間で異なってもよい。
(中略)
UE102がランダムアクセスプリアンブルをPCellまたはPSCellで送った後に、そのPCellまたはPSCellでeNB160から送信されてUE102によって受信される、ランダムアクセスレスポンス中のタイミングアドバンスコマンドを使用212できる。このランダムアクセスレスポンスは、ランダムアクセスレスポンスを含むPDSCHをスケジューリングするために使用される識別子である、ランダムアクセス無線ネットワーク一時識別子(RA-RNTI)を含むPDCCHによってスケジューリングできる
(中略)
UE102が非PCellグループにおける基準セル121を指定するパス・ロス・パラメータが受信されたと判定214するかどうかにかかわらず、UE102は、複数のグループを使用して1つ以上のeNB160と通信218できる。例えば、UE102は、1つ以上のPCellグループ・セル119および1つ以上の非PCellグループ・セル121を使用して、1つ以上のeNB160へ情報を送信できる、および/またはそれから情報を受信できる。)

(カ)「Figure 10 is a block diagram illustrating one example of a deployment scenario. In this example, two eNBs 1060a-b may both communicate with a UE 1002. eNB A 1060a may include one or more antennas 1080a-m for communicating with the UE 1002. eNB B 1060b may include one or more antennas 1080n-z for communicating with the UE 1002. The UE 1002 may include antennas 1022a-n for communicating with eNB A 1060a and eNB B 1060b. In this example, the UE 1002 may communicate with two non-collocated sites (e.g., eNBs 1060a-b) on multiple carriers. As can be observed, each communication path 1087a-b may experience different propagation environments. This may lead to differences in uplink transmission timing for communication frames on path A 1087a and path B 1087b. In one configuration, one group of cells or channels may be established on path A 1087a, while another group of cells or channels may be established on path B 1087b. The scenario illustrated in Figure 10 could similarly occur with remote antennas or remote radio heads. 」(100ページ23行?101ページ16行)
(当審仮訳:
図10は、配備シナリオの一例を示すブロックダイアグラムである。この例では、2つのeNB1060a?bがいずれもUE1002と通信できる。eNB A1060aは、UE1002と通信するための1つ以上のアンテナ1080a?mを含むことができる。eNB B1060bは、UE1002と通信するための1つ以上のアンテナ1080n?zを含むことができる。UE1002は、eNB A1060aおよびeNB B1060bと通信するためのアンテナ1022a?nを含むことができる。この例では、UE1002は、2つのノンコロケーテッド・サイト(例えば、eNB1060a?b)と複数のキャリア上で通信できる。図示されるように、各通信経路1087a?bは、異なった伝搬環境にありうる。これは、経路A1087aおよび経路B1087b上の通信フレームに対して上りリンク送信タイミングに差をもたらしうる。一構成において、セルまたはチャネルの1つのグループを経路A1087a上に確立できる一方で、セルまたはチャネルの別のグループを経路B1087b上に確立できる。図10に示されるシナリオは、リモート・アンテナまたはリモート・レディオ・ヘッドで同様に生じうるであろう。)

(キ)「



(ク)「



(ケ)「



引用例1の上記記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a 上記(ウ)の「PCellを含む1つ以上のセルのグループをPCellグループとすることができる。・・・。PCellを含まない、セルの1つ以上の他のグループは、それぞれ「非PCell」グループとすることができる。・・・。PCellグループは、第1のサイト(例えば、eNB160またはリピータ)から送信できて、一方で非PCellグループは、第2サイト(例えば、別個のリモート・レディオ・ヘッド(RRH:remote radio head)または別個のリピータなど)から送信できる。」との記載によれば、引用例1には、PCellを含むPCellグループは、一方のサイトから送信でき、PCellを含まない非PCellグループは他方のサイトから送信できることが記載されているといえる。
そして、上記(エ)の「異なった送信および/または受信サイト(例えば、異なったeNB160、RRHまたはリピータなど)を用いて、セル間のアグリゲーションが導入されることがありうる」との記載、及び、上記(カ)の「この例では、UE1002は、2つのノンコロケーテッド・サイト(例えば、eNB1060a?b)と複数のキャリア上で通信できる。・・・。セルまたはチャネルの1つのグループを経路A1087a上に確立できる一方で、セルまたはチャネルの別のグループを経路B1087b上に確立できる。」との記載、及び、FIG.10によれば、引用例1には、UEは、一方のサイトであるeNBとの経路上にセルのグループを確立し、他方のサイトであるeNBとの経路上に、セルの別のグループを確立することも記載されているといえる。
してみると、引用例1では、UEが、一方のeNBとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、他方のeNBとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立し、セル間アグリゲーションを実行することが想定されているといえる。
よって、引用例1には、「eNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、eNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立し、セル間アグリゲーションを実行するUE」が記載されていると認められる。

b 上記(イ)の「UEは、ランダムアクセスのためのランダムアクセスレスポンスおよび/または物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)指令ランダムアクセスチャネル(RACH)および/または競合解決をPCellでモニターできる。・・・。UEは、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)リソースをPCellで使用できる。」との記載、上記(エ)の「ランダムアクセスレスポンス中のタイミングアドバンスコマンドは、UE102がランダムアクセスプリアンブルを送った後に、eNB160からUE102へ送信できる。」との記載によれば、UEは、「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースをPCellで使用」して「ランダムアクセスプリアンブルを送」り、eNBからの「ランダムアクセスレスポンス」及び「競合解決」をPCellでモニターしており、このような一連の動作は、ランダムアクセス手順といえることは明らかである。
そして、(ウ)の「PCellを含む1つ以上のセルのグループをPCellグループとすることができる。PCellグループのセルは、PCellグループ・セル119と呼ぶことができる。かくして、PCellグループは、少なくともPCellを含む」との記載から、PCellはPCellグループのセルであるといえる。
よって、引用例1には、「PCellグループのPCellでランダムアクセス手順を実行すること」が記載されていると認められる。

c 上記(エ)の「しかしながら、本明細書に開示されるシステムおよび方法に従い、かつ複数のタイムアラインメントを有するためには、UE102がランダムアクセス手順をPSCell121で行う必要がありうる。かくして、PCell119における共通検索空間に加えて、PSCell121における共通検索空間でPDCCHをモニターするために、ランダムアクセスチャネル(RACH)をもつSCellを用いて構成されたUE102が必要とされうる。」との記載によれば、UEは、PSCellでランダムアクセス手順を実行する。
そして、上記(イ)の「PCellを含まないグループでは、この特定のセルは、プライマリSCell(PSCell)またはセカンダリPCell(SPCell)と呼ばれる、特定のSCellとすることができる。」、(ウ)の「PCellを含まない、セルの1つ以上の他のグループは、それぞれ「非PCell」グループとすることができる。」との記載から、PSCellは、非PCellグループの特定のSCellであるといえる。
よって、引用例1には、「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順を実行すること」が記載されていると認められる。

d 上記(オ)の記載、及び、(ク)のFIG.2によれば、UE上でマルチグループ通信を行うために、UEは、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージをeNB160から受信して、非PCellグループのためのPSCellを決定する。そして、UEがランダムアクセスプリアンブルをPSCellに送った後、そのPSCellで送信されUEによって受信されるランダムアクセスレスポンス中のタイミングアドバンスコマンドを使用して上りリンク送信タイミングを調整し、PCellグループのセル及び非PCellグループのセルを使用して情報を送受信する。
よって、引用例1には、「UE上でPCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し、該PSCellにランダムアクセスプリアンブルを送信」すること及び「PSCellからランダムアクセスレスポンスを受信」することが記載されていると認められる。

e 上記(イ)の「UEは、ランダムアクセスのためのランダムアクセスレスポンスおよび/またはPDCCH指令RACHおよび/または競合解決をPSCellでモニターできる。」の記載、上記(エ)の「PSCellでのランダムアクセスのための競合解決が、PSCell中であってもよいことにも留意すべきである。」との記載からすれば、引用例1においても、「PSCellから競合解決に係わる信号を受信すること」は明らかである。

f 上記(ウ)に「PCellグループのセルは、PCellグループ・セル119と呼ぶことができる。・・・。非PCellグループにおける1つ以上のセルは、非PCellグループ・セル(単数または複数)121と呼ぶことができる。」と、及び、上記(エ)に「UE固有の検索空間は、セル無線ネットワーク一時識別子またはC-RNTI(例えば、ユーザ機器識別子(UEID))によって定義できて、各サービングセル119、121のために用意できる。」とそれぞれ記載されており、UE固有の検索空間が、異なるセルであるPCellグループ・セル及び非PCellグループ・セルそれぞれのために用意されていることからすれば、PCellグループ・セル及び非PCellグループ・セルそれぞれに用意される各UE固有の検索空間を定義する各C-RNTIが異なることは明らかである。
よって、引用例1には、「PCellグループのPCellのC-RNTIと非PCellグループのPSCellのC-RNTIとは異なる」ことが記載されていると認められる。

g 上記a?fによれば、引用例1には、「eNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、eNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立し、セル間アグリゲーションを実行するUEによりランダムアクセス手順を実行する方法」が記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「eNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、eNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立し、セル間アグリゲーションを実行するUEによりランダムアクセス手順を実行する方法であって、
PCellグループのPCellにランダムアクセス手順を実行すること、
非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順を実行することを含み、
非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順を実行することは、
UE上でPCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し、該PSCellにランダムアクセスプリアンブルを送信し、
PSCellからランダムアクセスレスポンスを受信し、
PSCellから競合解決に係わる信号を受信することとを含み、
PCellグループのPCellのC-RNTIと非PCellグループのPSCellのC-RNTIとは異なる、
方法。」

[周知技術]
本件の最先の優先日以前に利用可能となった3GPP TS36.300 V11.6.0(2013-06)、2013年7月7日アップロード、http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.300/36300-b60.zip (以下,「引用例5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(コ)「The physical channels of E-UTRA are:
(中略)
Physical random access channel (PRACH)
- Carries the random access preamble.」(40ページ7行?41ページ15行)
(当審仮訳:
E-UTRAの物理チャネルは:
(中略)
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)
- ランダムアクセスプリアンブルを伝送する。)

(サ)「10.1.5.1 Contention based random access procedure
The contention based random access procedure is outlined on Figure 10.1.5.1-1 below:
(図略)
The four steps of the contention based random access procedures are:
1) Random Access Preamble on RACH in uplink:
(中略)
2) Random Access Response generated by MAC on DL-SCH:
(中略)
- Conveys at least RA-preamble identifier, Timing Alignment in
formation for the pTAG, initial UL grant and assignment of
Temporary C-RNTI (which may or may not be made permanent upon
Contention Resolution);
- Intendedfor a variable number of UEs in one DL-SCH message.
3) First scheduled UL transmission on UL-SCH:
- UsesHARQ;
- Size of the transport blocks depends on the UL grant conveyed
in step 2 and is at least 80 bits.
- For initial access:
- Conveys the RRC Connection Request generated by the RRC layer and transmitted via CCCH;
(中略)

4) Contention Resolution on DL:
- Early contention resolution shall be used i.e. eNB does not
wait for NAS reply before resolving contention
- Not synchronised with message 3;
- HARQ is supported;
- Addressed to:
- The Temporary C-RNTI on PDCCH for initial access and after
radio link failure;
- The C-RNTI on PDCCH for UE in RRC_CONNECTED;
- HARQ feedback is transmitted only by the UE which detects its
own UE identity, as provided in message 3, echoed in the
Contention Resolution message;
- For initial access and RRC Connection Re-establishment
procedure, no segmentation is used (RLC-TM).
The Temporary C-RNTI is promoted to C-RNTI for a UE which detects RA success and does not already have a C-RNTI; it is dropped by others. A UE which detects RA success and already has a C-RNTI,resumes using its C-RNTI.」(73ページ10行?74ページ29行)
(当審仮訳:
10.1.5.1 競合ベースのランダムアクセス手順
競合ベースのランダムアクセス手順の概要は、図10.1.5.1-1を参照されたい。
(図中略)
競合ベースのランダムアクセス手順の4つのステップは次のとおりである。
1)アップリンクのRACHのランダムアクセスプリアンブル:
(中略)
2)DL-SCH上のMACによって生成されたランダムアクセス応答:
(中略)
-少なくともRAプリアンブル識別子、pTAGのタイミング調整情報、初期UL グラント、及び一時的なC-RNTIの割り当て(競合解決時に永続化される 場合とされない場合がある)を伝える。
-1つのDL-SCHメッセージ内の可変数のUEを対象とする。
3)UL-SCHで最初にスケジュールされたUL送信:
-HARQを使用する。
-トランスポートブロックのサイズは、手順2で伝達されるUL許可に依存し 、少なくとも80ビットである。
-初期アクセスの場合:

-RRC層によって生成され、CCCHを介して送信されるRRC接続要求を伝達 する。
(中略)
4)DLの競合解決:
-早期の競合解決が使用される。つまり、eNBは競合を解決する前にNASの 応答を待たない。
-メッセージ3と同期しない。
-HARQがサポートされる。
-アドレスされる:
-初期アクセス時及び無線リンク障害後についてはPDCCH上の一時的なC- RNTI(にアドレスされる)。
-RRC_CONNECTEDのUEについてはPDCCH上のC-RNTI(にアドレスされる)。
-HARQフィードバックは、メッセージ3で提供され、コンテンション解決メ ッセージにエコーされるような、自身のUE IDを検出するUEによっての み、送信される。
-初期アクセス及びRRC接続の再確立手順では、セグメンテーションは使 用されない(RLC-TM)。
一時的なC-RNTIは、RAの成功を検出し、まだC-RNTIを持っていないUEのC-RNTIに昇格される。他によってドロップされる。 RAの成功を検出し、すでにC-RNTIを持っているUEは、そのC-RNTIの使用を再開する。)

(シ)「



上記(コ)、(サ)の記載、及び、上記(シ)のFigure10.1.5.1-1によれば、
「競合ベースのランダムアクセス手順は、
1)UEが、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)を介して、ランダムアクセスプリアンブルを送信することと、
2)RAプリアンブル識別子、pTAGのタイミング調整情報、初期ULグラント、及び一時的なC-RNTIの割り当てを伝達するランダムアクセス応答を受信することと、
3)RRC接続要求を伝達するメッセージを送信することと、
4)PDCCH上の一時的なC-RNTIにアドレスされるコンテンション解決メッセージを受信すること、
の4つのステップからなる。」ことは、3GPPの規格に規定されている技術常識ともいえる周知技術である。

ウ 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると,

a 本件補正発明の「マスタeNB」及び「2次eNB」に関し、本件明細書段落【0021】に「UEが固定されるMeNBに関連する一つ以上のサービング周波数のうち、サービング周波数が割り当てられたセルは、一次セル(Pセル)、すなわちUEがRRC接続を確立したMeNBのサービング周波数である。一方、MeNBに関連する他の全てのサービング周波数は、MeNBの二次セル(Sセル)である。SeNBに関連する一つ以上のサービング周波数が割り当てられたセルは、SeNBの二次セル(Sセル)である。MeNBによりサービングされるサービングセルの第1の集合は、マスタセルグループ(MCG)と呼ばれ、SeNBによりサービングされるサービングセルの第2の集合は、二次セルグループ(SCG)と呼ばれる。」と記載されているから、本件補正発明の「マスタeNB」は、Pセルを含むマスターセルグループをサービングするeNBを含み、「2次eNB」は、Sセルの集合である二次セルグループををサービングするeNBを含むといえる。
そして、引用発明において、UEは、eNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、eNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立することからすれば、引用発明の「eNB1060a」及び「eNB1060b」は、本件補正発明の「マスタeNB(MeNB:master evolved NodeB)」及び「二次eNB(SeNB:secondary eNB)」にそれぞれ相当する。

b 引用発明の「eNB1060a」及び「eNB1060b」が、無線ネットワークに含まれることは技術常識である。
そして、本件補正発明の「二重接続」に関し、本件明細書段落【0004】に「2個の地理的に分離されたeNBにより制御される2個のセル間で搬送波集成が構想される時、UEは、それぞれのセルに対してアップリンク同期化を実行する必要がある。このようなシナリオで、二重接続は、UEが2個の地理的に分離されたeNBにより制御される2個のセルとの物理的リンクを維持するように構想される。」と記載されているから、本件補正発明の「二重接続」は、「UEが2個の地理的に分離されたeNBにより制御される2個のセルとの物理的リンクを維持する」ことを含むといえる。
してみれば、引用発明の「eNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループを確立する一方、eNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループを確立し、セル間アグリゲーションを実行するUEによりランダムアクセス手順を実行する方法」は、本件補正発明の「無線ネットワークにおけるマスタeNB(MeNB:master evolved NodeB)と二次eNB(SeNB:secondary eNB)と二重接続されるユーザ端末(UE)によりランダムアクセス手順を実行する方法」に相当する。

c 引用発明において、UEとeNB1060aとの経路上に、PCellを含むPCellグループが確立されることからすれば、引用発明の「PCellグループ」は、本件補正発明の「前記マスタeNBのマスタセルグループ(MCG:master cell group)」に相当する。
よって、引用発明の「PCellグループのPCellにランダムアクセス手順を実行すること」は、本件補正発明の「前記マスタeNBのマスタセルグループ(MCG:master cell group)のうちの一次セル(Pセル)にランダムアクセス(RA:random access)手順を実行するステップ」に相当する。

d 引用発明において、UEとeNB1060bとの経路上に、PCellを含まない非PCellグループが確立されるから、引用発明の「非PCellグループ」は、本件補正発明の「前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループ(SCG:secondary cell group)」に相当する。
そして、引用発明の「PSCell」は、「特定のSCell」であることから、本件補正発明の「二次セル(Sセル)」に相当する。
してみると、引用発明の「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellにランダムアクセス手順を実行すること」は、本件補正発明の「前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループ(SCG:secondary cell group)のうちの少なくとも一つの二次セル(Sセル)にランダムアクセス手順を実行するステップ」に相当する。

e 引用発明の「UE上でPCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し」から、引用発明では、PCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを決定するのであるから、「PSCellを決定」することにより、「非PCellグループ」が追加されることは自明である。
してみると、本件補正発明の「前記二次セルグループ(SCG)が追加または変更される場合、物理的ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)を通じて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つにランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップ」と、引用発明の「UE上でPCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し、該PSCellにランダムアクセスプリアンブルを送信し」とは、「前記二次セルグループ(SCG)が追加される場合、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つにランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップ」という点で共通する。

f 引用発明の「ランダムアクセスレスポンス」は、本件補正発明の「ランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージ」に相当する。
してみると、本件補正発明の「前記少なくとも一つの二次セルのうち一つからアップリンクグラント及び一時的C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)を含むランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージを受信するステップ」と、引用発明の「PSCellからランダムアクセスレスポンスを受信し」することとは、「前記少なくとも一つの二次セルのうち一つからランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージを受信するステップ」という点で共通する。

g 引用発明の「競合解決に係わる信号」を、「競合解決メッセージ」と称することは任意である。
してみると、本件補正発明の「前記一時的C-RNTIを使用して、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つから競合解決メッセージを受信するステップ」と、引用発明の「PSCellから競合解決に係わる信号を受信すること」とは、「前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つから競合解決メッセージを受信するステップ」という点で共通する。

h 引用発明において、「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順を実行すること」は、「非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し、該PSCellにランダムアクセスプリアンブルを送信し、PSCellからランダムアクセスレスポンスを受信し、PSCellから競合解決に係わる信号を受信」するのであるから、引用発明も、「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順」は、「非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信」する場合、UEにより開始されるといえる。
そして、引用発明において、「PCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定」するのであるから、「非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージ」が、非PCellグループを追加するために受信されるメッセージであることは自明である。
してみれば、引用発明の「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellでランダムアクセス手順を実行することは、UE上でPCellグループ及び非PCellグループを使用したマルチグループ通信を行うために、非PCellグループのためのPSCellを明示的に識別するメッセージを受信して、PSCellを決定し、該PSCellにランダムアクセスプリアンブルを送信し、PSCellからランダムアクセスレスポンスを受信し、PSCellから競合解決に係わる信号を受信することとを含」むことは、本件補正発明の「前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループのうちの少なくとも一つの二次セル(SCell)へのランダムアクセス手順は、前記ユーザ端末が二次セルグループ(SCG)の追加のためのメッセージを受信する場合、前記ユーザ端末により開始され」ることに相当する。

i dで述べたように、引用発明の「PSCell」は、本件補正発明の「二次セル(Sセル)」に相当する。
よって、引用発明の「PCellグループのPCellのC-RNTIと非PCellグループのPSCellのC-RNTIとは異なる」は、本件補正発明の「前記少なくとも一つの二次セル(SCell)のためのC-RNTIは、前記一次セル(PCell)のためのC-RNTIと相異する」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,又,相違する。
(一致点)
「 無線ネットワークにおけるマスタeNB(MeNB:master evolved NodeB)と二次eNB(SeNB:secondary eNB)と二重接続されるユーザ端末(UE)によりランダムアクセス手順を実行する方法であって、
前記マスタeNBのマスタセルグループ(MCG:master cell group)のうちの一次セル(Pセル)にランダムアクセス(RA:random access)手順を実行するステップと、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループ(SCG:secondary cell group)のうちの少なくとも一つの二次セル(Sセル)にランダムアクセス手順を実行するステップと、を含み、
前記少なくとも一つの二次セル(SCell)にランダムアクセス手順を実行するステップは、
前記二次セルグループ(SCG)が追加される場合、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つにランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップと、
前記少なくとも一つの二次セルのうち一つからランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージを受信するステップと、
前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つから競合解決メッセージを受信するステップと、を含み、
前記二次eNB(SeNB)の二次セルグループのうちの少なくとも一つの二次セル(SCell)へのランダムアクセス手順は、前記ユーザ端末が二次セルグループ(SCG)の追加のためのメッセージを受信する場合、前記ユーザ端末により開始され、
前記少なくとも一つの二次セル(SCell)のためのC-RNTIは、前記一次セル(PCell)のためのC-RNTIと相異する
、方法。」

(相違点1)
「ランダムアクセス(RA)プリアンブルを伝送するステップ」に関し、本件補正発明は、「物理的ランダムアクセスチャネル(PRACH:physical random access channel)を通じて」「伝送する」のに対し、引用発明は、当該事項が明示されていない点。

(相違点2)
「ランダムアクセス応答(RAR:random access response)メッセージ」に関し、本件補正発明は、「アップリンクグラント及び一時的C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)」を含むのに対し、引用発明は、「アップリンクグラント及び一時的C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)」について明示されていない点。

(相違点3)
「前記少なくとも一つの二次セル(SCell)にランダムアクセス手順を実行するステップ」に関し、本件補正発明は、「前記アップリンクグラントに基づいて、前記少なくとも一つの二次セルのうちの一つに要請メッセージを伝送するステップ」を含むのに対して,引用発明は当該ステップが明示されていない点。

(相違点4)
「競合解決メッセージを受信するステップ」に関し、本件補正発明は、「一時的C-RNTIを使用」しているのに対し、引用発明は、「一時的C-RNTI」について明示されていない点。

以下,相違点1?相違点4についてまとめて検討する。
上記イで認定した「周知技術」のとおり、「競合ベースのランダムアクセス手順は、
1)UEが、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)を介して、ランダムアクセスプリアンブルを送信することと、
2)RAプリアンブル識別子、pTAGのタイミング調整情報、初期ULグラント、及び一時的なC-RNTIの割り当てを伝達するランダムアクセス応答を受信することと、
3)RRC接続要求を伝達するメッセージを送信することと、
4)PDCCH上の一時的なC-RNTIにアドレスされるコンテンション解決メッセージを受信すること、
の4つのステップからなる。」ことは、3GPPの規格に規定されている技術常識ともいえる周知技術である。
ここで、引用発明におけるランダムアクセス手順は、競合ベースのランダムアクセス手順であることは明らかであって、引用例1の記載(上記イの(ア)参照)によれば、引用発明も3GPP LTEに関することものであることが示唆されており、上記周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因も見出せない。
してみると、引用発明の「ランダムアクセスプリアンブル」を、物理的ランダムアクセスチャネル(PRACH)を介して送信すること(相違点1)、引用発明の「ランダムアクセスレスポンス」に、初期ULグラントおよび一時的なC-RNTIを含めること(相違点2)、引用発明の「非PCellグループの特定のSCellであるPSCellにランダムアクセス手順を実行すること」に、初期ULグラントに基づいて、RRC接続要求を伝達するメッセージを送信すること(相違点3)、引用発明において「競合解決に係わる信号を受信する」際に、「一時的C-RNTIを使用」すること(相違点4)、は格別困難なことではなく,当業者が適宜なし得た事項である。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 まとめ
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,また,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
令和1年7月11日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2」の項の「1 本件補正の概要」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由の概要は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に対して引用例1(国際公開第2012/137984号)、引用例2(特開2012-129761号公報)及び引用例3(特開2012-70134号公報)が引用されている。

3 引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は,上記「第2 令和1年7月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件について」の項中の「イ 引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した本件補正発明が,「第2 令和1年7月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件について」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


 
別掲
 
審理終結日 2020-05-20 
結審通知日 2020-05-25 
審決日 2020-06-10 
出願番号 特願2016-538850(P2016-538850)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 57- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中元 淳二
畑中 博幸
発明の名称 eNB間搬送波集成における無線リンク失敗及びランダムアクセス手順のための方法及びシステム  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  
代理人 実広 信哉  

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