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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1367708
審判番号 不服2019-8213  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-20 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 特願2017-207524「電力管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 14888〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯及び本願発明
1 経緯
本件出願は、平成25年2月18日に出願した特願2013-29473号の一部を数次の分割を経て平成29年10月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年 7月26日:拒絶理由の通知
平成30年10月 1日:意見書の提出、手続補正
平成30年11月12日:拒絶理由(最後)の通知
平成31年 1月 9日:意見書の提出、手続補正
平成31年 4月 8日:拒絶査定
平成31年 4月16日:拒絶査定の謄本の送達
令和 1年 6月20日:拒絶査定不服審判の請求
令和 1年 6月20日:手続補正
令和 2年 3月12日:拒絶理由の通知(当審)
令和 2年 4月30日:意見書の提出、手続補正
令和 2年 6月 2日:拒絶理由(最後)の通知(当審)
令和 2年 8月11日:意見書の提出、手続補正

2 当審拒絶理由の概要
令和2年6月2日付け当審拒絶理由、概略、次のとおりである。

[当審拒絶理由]
A(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

B(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1に係る発明の構成要件「前記発電装置の発電電力が前記電力負荷の消費電力より大きい場合に、前記蓄電池が施設外で使用されるとき、前記蓄電池の使用終了予定時に、予測された前記発電装置の余剰電力の範囲内で前記蓄電池を使用できるように、記蓄電池の蓄電量が所定の蓄電量最小値以上となるように前記余剰電力により充電を行う第一のモードに設定し、」が明確でなく、また、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明のどの部分に対応しているのか明確でない。

3 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、令和2年8月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、(A)?(D)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件D」という。

(本願発明)
(A)発電装置と、電力負荷と、蓄電池とを具備する施設において電力の管理を行い、前記蓄電池の充放電を制御する電力管理装置であって、
(B)前記発電装置の発電電力が前記電力負荷の消費電力より大きく、余剰電力が生じる場合、前記蓄電池が施設外で使用されるとき、前記蓄電池の使用終了予定時における蓄電量が所定の蓄電量最小値以上となるように
前記余剰電力と外部供給電力とにより前記蓄電池を充電する第一のモードと、
(C)前記余剰電力の電力量に基づき前記蓄電池を充電する第二モードとを有し、
(D)前記発電装置の発電電力が前記電力負荷の消費電力以下であり、不足電力が生じる場合、前記不足電力を補うように、前記電力負荷に対して前記蓄電池からの放電を行う
(A)ことを特徴とする電力管理装置。

第2 当審の判断
本願発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるか検討する。

本願の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

「【0041】
施設外使用時蓄電量調整部160は、施設外使用終了予定時刻における蓄電池201の蓄電量(SOC)である施設外使用終了時蓄電量が所定の蓄電量最小値SOCmin以上となるように蓄電池の充放電を計画する。
ここで、施設外使用終了予定時刻において蓄電池201のSOCが蓄電量最小値SOCminより小さい場合、施設外使用において電気が不足することが予測される。施設1内部での電気の使用と異なり施設外使用では、商用電力などの外部供給電力を取得できないことが考えられる。このため、施設外使用における電気不足は多大な不都合を引き起こすおそれがある。例えば、車両200の走行中に電気が不足すると、車両200が走行できなくなり、施設1へ帰着できなくなってしまう。
そこで、施設外使用時蓄電量調整部160は、施設外使用において必要な電気を確保できるよう、施設外使用前に外部供給電力を用いて蓄電池201への充電を行うよう計画する。
【0042】
ここで、蓄電池201は、充電モードと待機モードとオートモードとの3つのモードを有しており、施設外使用時蓄電量調整部160は、時刻毎に、蓄電池201のモードをいずれかに設定する。
充電モードとは、外部供給電力を含めて強制的に一定の電力で充電するモードである。例えば、自然エネルギー発電装置300の余剰発電が3キロワット(kW)あり、蓄電池201を5キロワットで充電する場合、自然エネルギー発電装置300の3キロワットと、外部供給電力の2キロワットとを合わせた5キロワットで蓄電池201の充電を行う。
【0043】
待機モードは、充電、放電とも行わないモードである。
オートモードでは、余剰電力がある場合(すなわち、自然エネルギー発電装置300の発電電力が、電力負荷400の消費電力より大きい場合)、余剰電力で充電を行う。例えば、余剰電力が3キロワットあれば、3キロワットで充電し1キロワットであれば1キロワットで充電する。
一方、電力が不足している場合(すなわち、自然エネルギー発電装置300の発電電力が、電力負荷400の消費電力以下である場合)、蓄電池201は放電を行う。
【0044】
車両200の使用との関係では、車両200が使用中(すなわち、蓄電池201が施設外使用中)または使用予定時刻の場合、施設外使用時蓄電量調整部160は、蓄電池201のモードを待機モードとする。一方、車両200が未使用の場合(従って、蓄電池201と電力負荷400や自然エネルギー発電装置300とを接続可能な場合)、充電が必要であれば充電モードとし、蓄電量確保のため放電を禁止するときは、待機モードとし、それ以外のときはオートモードとする。」

段落【0041】には、「施設外使用時蓄電量調整部160は、施設外使用終了予定時刻における蓄電池201の蓄電量(SOC)である施設外使用終了時蓄電量が所定の蓄電量最小値SOCmin以上となるように蓄電池の充放電を計画する。」と記載され、「施設外使用時蓄電量調整部160は、施設外使用において必要な電気を確保できるよう、施設外使用前に外部供給電力を用いて蓄電池201への充電を行うよう計画する。」と記載されている。

また、段落【0042】?【0043】には、蓄電池201が有する3つのモード、充電モード、待機モード、オートモードについて記載されている。
充電モードは、外部供給電力を含めて強制的に一定の電力で充電するモードであり、待機モードは、充電、放電とも行わないモードであり、オートモードは、余剰電力がある場合、余剰電力で充電を行うモードである。
さらに、段落【0043】には、電力が不足している場合、蓄電池は放電することが記載されている。

しかしながら、構成要件B、すなわち、
「前記発電装置の発電電力が前記電力負荷の消費電力より大きく、余剰電力が生じる場合、前記蓄電池が施設外で使用されるとき、前記蓄電池の使用終了予定時における蓄電量が所定の蓄電量最小値以上となるように
前記余剰電力と外部供給電力とにより前記蓄電池を充電する第一のモード」
は、上記3つのモードのいずれとも異なるものである。
さらに、構成要件Bの第一のモードは、段落【0041】における「施設外使用前に外部供給電力を用いて蓄電池201への充電を行うよう計画する」こととは、異なるものである。
したがって、構成要件Bは、段落【0041】?【0044】には記載されていない。
また、発明の詳細な説明の他の部分にも、構成要件Bは記載されてない。
そして、構成要件Bが、自明の事項とも認められない。

よって、構成要件Bを含む本願発明は、発明の詳細な説明に記載されていない。

第3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。したがって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-31 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-14 
出願番号 特願2017-207524(P2017-207524)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 嘉彦遠山 敬彦  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 小池 正彦
渡辺 努
発明の名称 電力管理装置  
代理人 松沼 泰史  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 鎌田 康一郎  
代理人 橋本 宏之  
代理人 古都 智  
代理人 長谷川 太一  

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