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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C
管理番号 1367723
審判番号 不服2019-15170  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-12 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 特願2015-68298「建築物の区画体における貫通部の耐火構造の施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月4日出願公開、特開2016-187398〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月30日の出願であって、平成30年2月16日に審査請求がされ、平成30年12月7日付け(発送日:同年12月11日)で拒絶の理由が通知され、平成31年1月30日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月24日付け(発送日:令和元年5月7日)に拒絶の理由が通知され、令和元年7月3日に意見書が提出され、令和元年8月29日付け(発送日:同年9月3日)で拒絶査定がなされ、これに対し、令和元年11月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判に請求と同時に、手続補正書が提出されたものである。

第2 令和元年11月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前(平成31年1月30日の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項3の記載は次のとおりである。

「【請求項3】
配管又はケーブルが挿通された貫通孔を有する、建築物の区画体における貫通部の耐火構造の施工方法において、
前記貫通孔の外側において、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物からなる発泡体によって、前記配管又はケーブルの外周を包囲する包囲工程と、
前記配管又はケーブルを包囲した発泡体を前記貫通孔内に移動させる移動工程と、
を有し、
前記発泡体は板状を呈し、
前記包囲工程では、
前記発泡体が環状となるように前記発泡体の両端を互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記発泡体によって包み込むことを特徴とする方法。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項3の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。

「【請求項3】
配管又はケーブルが挿通された貫通孔を有する、建築物の区画体における貫通部の耐火構造の施工方法において、
前記貫通孔の外側において、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物からなる発泡体によって、前記配管又はケーブルの外周を包囲する包囲工程と、
前記配管又はケーブルを包囲した発泡体を前記貫通孔内に移動させる移動工程と、
を有し、
前記発泡体は板状を呈し、施工時には弾力性を有する発泡体であり、火災発生時には前記熱膨張性黒鉛によって膨張するものであり、
前記包囲工程では、
前記発泡体が環状となるように前記発泡体の両端を、前記環状の発泡体の径方向において重ならないように互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記発泡体によって包み込むことを特徴とする方法。」

2.本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「発泡体」に関して、「施工時には弾力性を有する」及び「火災発生時には前記熱膨張性黒鉛によって膨張するものであり」との限定を付加するもの、及び「発泡体の両端を互いに接触させて」に関して「前記環状の発泡体の径方向において重ならないように」との限定を付加するものであり、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項3に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2000-240854号公報(以下「引用文献1」という。)には、「防火用熱膨張材」に関して、図面(特に、図3、4を参照。)と共に次の事項が記載されている(下線は、当審によるものである。)。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防火区画領域にある防火区画体(例えば、耐火構造の床や壁等の躯体)に形成された貫通孔を通して、配管類(ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管等の可燃性の合成樹脂管、電気ケーブル等)或いは配管類の一本又は複数本を挿通させる合成樹脂製の保護管(サヤ管)などの管様体を配設する際に用いられる防火用熱膨張材に関し、より詳しくは、管様体の外周面と貫通孔の内周面との間に装着して、火災発生時の熱による熱膨張によって貫通孔全体を閉塞することにより、該貫通孔を通して火炎や有害ガス等が隣室側に流入することを防止する防火用熱膨張材の改良に関する。」

(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1による防火用熱膨張材の特徴構成は、防火区画の貫通孔の内周面と該貫通孔に配設された管様体の外周面との間に装着可能な厚みを有し、かつ、管様体の外周に沿って巻回可能な長さと可撓性を備えた熱膨張性耐熱シール材に、該熱膨張性耐熱シール材をそれの復元力に抗して前記の巻回姿勢に保持する保持手段が設けられている点にある。上記特徴構成によれば、防火区画領域にある防火区画体に形成された貫通孔を通して、合成樹脂製の配管類(ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管等の可燃性の合成樹脂管、電気ケーブル等)或いは配管類の一本又は複数本を挿通させる合成樹脂製の保護管(サヤ管)などの管様体を配設する際、例えば、貫通孔外の広い空間において、前記管様体の外周面に沿って可撓性を備えた熱膨張性耐熱シール材を巻回し、この熱膨張性耐熱シール材の巻回姿勢を保持手段にて保持したのち、これを貫通孔内の所定位置に移動させるといった少ない手数で防火用熱膨張材を装着することができる。しかも、その後は、必要に応じて、巻回姿勢にある熱膨張性耐熱シール材の外周面と貫通孔の内周面との間にモルタルやパテ等の耐熱性充填材を充填するだけで施工の主要部が終了する。従って、従来の防火区画用貫通部材のような大きな板金製のカバー体が不要であり、かつ、前記のような可撓性を備えた熱膨張性耐熱シール材とこれの巻回姿勢を保持する保持手段とを準備するだけで済むから、部材点数及び加工工程数の削減によって製造コストの低廉化を図ることができる。しかも、熱膨張性耐熱シール材による巻回方式を採るが故に、口径や形状等の異なる複数種類の管様体に対する一種類当りでの適用範囲を拡大することができるとともに、管様体に対する装着作業の容易化も同時に達成することができる。」

(ウ)「【0015】
【発明の実施の形態】〔第1実施形態〕図1?図6は、防火区画領域にある防火区画体の一例で、耐火構造の床や壁等の躯体1に形成された貫通孔2を通して、管様体Pの一例である合成樹脂製の配管類(ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管等の可燃性の合成樹脂管、電気ケーブル等)3を配設する際に用いられる防火用熱膨張材を示し、これは、前記貫通孔2の内周面2aと該貫通孔2に貫通状態で配設された配管類3の外周面3aとの間に孔軸芯X方向から装着可能な厚みと弾性を有し、かつ、配管類3の外周面3aに沿って少なくともほぼ1巻き又は1巻き以上巻回可能な長さと可撓性(柔軟性)を備えたシート状(板状又は帯状)の熱膨張性耐熱シール材4の表裏両側面のうち、巻回姿勢で外側に位置する側面に、該熱膨張性耐熱シール材4をそれの復元力に抗して前記の巻回姿勢に保持する保持手段の一例である粘着テープ5が貼り付けられている。
【0016】前記熱膨張性耐熱シール材4は、前記貫通孔2の貫通長さよりも短い幅で平面視ほぼ矩形状となるシート状(板状又は帯状)に成形されているとともに、その長手方向の両端面4aの各々は、前記巻回姿勢に巻回操作したときにそぎ継ぎ形式で接合可能な傾斜面に形成されている。この熱膨張性耐熱シール材4の長さは、口径の異なる複数種類(当該実施形態では三種類)の配管類3に適用できるように、最大口径の配管類3の外周面に沿って1巻きできる長さに設定されている。そのため、口径の小さな配管類3では、1巻き以上巻回することになる。
【0017】また、前記熱膨張性耐熱シール材4は、火災発生時の加熱により数倍以上(当該実施形態では4倍以上の発泡倍率に設定)に発泡して、躯体1の貫通孔2全体を閉塞する発泡性樹脂組成物から構成されていて、その発泡性樹脂組成物自体としては従来から種々のものが存在するが、例えば、柔軟性を備えたゴム(例えば、天然ゴム、イソブレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンープロビレンゴム等)又は熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等)からなるベース樹脂に、ホウ砂、膨張性黒鉛、ひる石、パーライトの群の1種又はそれらの混合物から成る無機系発泡剤と、アゾジカルボンアミド、アゾジアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド群の1種又はそれらの混合物から成る有機系発泡剤、及び、柔軟性を付与する可塑剤(例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタト、ジブチルフタレート等)とを同時に配合したものなどが使用される。要するに、前記熱膨張性耐熱シール材4を構成する発泡性樹脂組成物としては、火災発生時の加熱で発泡してそのときの圧力で軟化している合成樹脂製の配管類3を押し潰しながら貫通孔2全体を閉塞できるものであれば、当該実施形態で説明した上述の構成要件(又は請求項1の構成要件)を満たす範囲内で適宜材料を選定するとよい。」

(エ)「【0019】
そして、図3?図6に示すように、前記躯体1に形成された貫通孔2の内周面とこれに挿通された合成樹脂製の配管類3の外周面3aとの間の環状空間に防火用熱膨張材を装着する際、先ず、図3に示すように、前記貫通孔2外の広い空間において、前記配管類3の外周面3aに沿って可撓性を備えたシート状の熱膨張性耐熱シール材4を巻回したのち、前記粘着テープ5の粘着剤層5bのうち、熱膨張性耐熱シール材4の巻回方向の一端から突出し、かつ、離型紙6が剥離された貼り合せ代の粘着剤層5b部分を、これに相対向する熱膨張性耐熱シール材4の長手方向他端側の部位に貼り付け、熱膨張性耐熱シール材4の巻回姿勢を粘着テープ5にて保持する。この巻回姿勢に保持されている熱膨張性耐熱シール材4を配管類3の外周面3aに沿って貫通孔2内の所定位置にまで移動操作させることにより、防火用熱膨張材の装着作業が終了する。」

(オ)上記(エ)の記載、【図3】及び【図4】の図示内容より、配管類3が挿通された貫通孔22を有する、防火区画体における貫通孔の防火用熱膨張材の施工方法が記載されているといえる。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「配管類3が挿通された貫通孔2を有する、防火区画体1における貫通部の防火用熱膨張材の施工方法において、
前記貫通孔2外の広い空間において、膨張性黒鉛を含む発泡性樹脂組成物からなる熱膨張性耐熱シール材4によって、前記配管類3の外周を巻回したのち、
前記配管類3を巻回した熱膨張性耐熱シール材4を前記貫通孔内に移動操作させること、
を有し、
前記熱膨張性耐熱シール材4は板状を呈し、施工時には弾性を有し、火災発生時には前記膨張性黒鉛によって膨張するものであり、
前記巻回した際には、
前記熱膨張性耐熱シール材4が環状となるように前記熱膨張耐熱シール材の両端を、そぎ継ぎ形式で接合可能な傾斜面に形成されて、前記配管類3の外周を前記熱膨張性耐熱シール材4によって巻回する方法。」

(2)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「配管類3」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明の「配管又はケーブル」に相当し、以下同様に、「防火区画体1」は「建築物の区画体」に、「防火用熱膨張材」は「耐火構造」に、「貫通孔2外の広い空間」は「貫通孔の外側」に、「膨張性黒鉛」は「熱膨張性黒鉛」に、「移動操作」は「移動工程」に、「弾性」は「弾力性」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「発泡性樹脂組成物からなる熱膨張性耐熱シール材4」と本件補正発明の「耐火樹脂組成物からなる発泡体」とは、「耐火樹脂組成物」である点に限り一致する。
また、引用発明の「巻回したのち」及び「巻回した際」は、巻回する工程を示していることから本件補正発明の「包囲工程」に相当する。
また、引用発明の「熱膨張耐熱シール材の両端を、そぎ継ぎ形式で接合可能な傾斜面に形成されて、前記配管類3の外周を前記熱膨張性耐熱シール材4によって巻回する方法。」と本件補正発明の「発泡体の両端を、前記環状の発泡体の径方向において重ならないように互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記発泡体によって包み込むことを特徴とする方法」とは、「耐火樹脂組成物の両端を、互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記耐火樹脂組成物によって包み込む方法」である点に限り一致する。

したがって、両者は、
「配管又はケーブルが挿通された貫通孔を有する、建築物の区画体における貫通部の耐火構造の施工方法において、
前記貫通孔の外側において、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物によって、前記配管又はケーブルの外周を包囲する包囲工程と、
前記配管又はケーブルを包囲した耐火樹脂組成物を前記貫通孔内に移動させる移動工程と、
を有し、
前記耐火樹脂組成物は板状を呈し、施工時には弾力性を有し、火災発生時には前記熱膨張性黒鉛によって膨張するものであり、
前記包囲工程では、
前記耐火樹脂組成物が前記耐火樹脂組成物の両端を、互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記耐火樹脂組成物によって包み込む方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「耐火性樹脂組成物」に関して、本件補正発明は耐火樹脂組成物からなる「発泡体」であり「施工時には弾力性を有する発泡体」であるのに対して、引用発明は「発泡性樹脂組成物からなる熱膨張性耐熱シール材」であって、「施工時には弾性を有」するが「発泡体」であるか否かは不明な点。

[相違点2]
「耐火樹脂組成物が前記耐火樹脂組成物の両端を、互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記耐火樹脂組成物によって包み込む方法」に関して、本件補正発明は、前記発泡体が環状となるように前記発泡体の両端を、「前記環状の発泡体の径方向において重ならないように」互いに接触させて、前記配管又はケーブルの外周を前記発泡体によって包み込むのに対して、引用発明は、前記熱膨張性耐熱シール材4が環状となるように前記熱膨張耐熱シール材の両端を、「そぎ継ぎ形式で接合可能な傾斜面に形成されて、」前記配管類3の外周を前記熱膨張性耐熱シール材4によって巻回する点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
防火区画の貫通部において、配管又はケーブルの外周を包囲するために施工時に発泡体を用いる方法は周知技術(以下「周知技術1」という。)である(例えば、特開2007-291795号公報の段落【0012】、【0018】、【0090】及び【0093】、特開2007-315007号公報の段落【0005】、【0091】及び【0096】を参照。)。
よって、引用発明の熱膨張性耐熱シート材において、周知技術1を参酌し、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
配管やケーブルの外周を耐火部材等で包囲する構成において、耐火部材等の端部を径方向において重ならないように互いに接触させる構成とすることは、周知技術(以下「周知技術2」という。)である(例えば、国際公開第2014/125838号の段落[0005]及び[図13]、特開2002-31272号公報の段落【0017】、【図2】、特開2001-303692号公報の段落【0012】、図2を参照。)。
よって、引用発明において周知技術2を参酌し、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術1及び2から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は審判請求書において、「引用文献2(本審決における引用文献1)には、熱膨張性耐熱シール材4の代わりに発泡体を用いることの示唆はありません。そのため、仮に引用文献3?5に、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物からなる加熱前における発泡体が開示されていたとしても、当業者が引用文献2の記載の発明にこれを適用することは容易ではありません」(審判請求書4ページ下から2行ないし5ページ3行目。)と主張している(上記主張における「引用文献2ないし5」は、原査定における表記である。)。
しかし、本審決における引用文献1には、防火区画体に形成された貫通孔を通して、管様体を配設する際に用いられる防火用熱膨張材に関する事項が記載されており、段落【0005】に「管様体に対する装着作業の容易化も同時に達成することができる。」と記載されているように装着作業の容易化についても課題としたものである。
そして、上記(ア)で述べた周知技術も同様に、施工性に優れる防火区画貫通部構造を提供するものであるから(例えば、特開2007-291795号公報の段落【0006】及び特開2007-315007号公報の段落【0006】参照。)、引用発明の熱膨張性耐熱シール材に代えて、周知技術である、施工時において弾性力を有する発泡体とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

3.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成31年1月30日の手続補正により補正された請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項3に記載された事項により特定される、第2 [理由]1.(1)に記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
本願の請求項3に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2ないし5に記載された発明に基いて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献2.特開2000-240854号公報(本審決における引用文献1)
引用文献3.特開2007-291795号公報(本審決における周知技術1を示す文献)
引用文献4.特開2007-154566号公報
引用文献5.特開2007-315007号公報(本審決における周知技術1を示す文献)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(本審決における引用文献1)及びその記載事項は、前記第2 [理由]2.(1)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2 [理由]2.で検討した本件補正発明における「施工時には弾力性を有する発泡体であり、火災発生時には前記熱膨張性黒鉛によって膨張するものであり」及び「前記環状の発泡体の径方向において重ならないように」との事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2 [理由]2.(3)に記載したとおり、引用発明、周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明、周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-18 
結審通知日 2020-08-25 
審決日 2020-09-14 
出願番号 特願2015-68298(P2015-68298)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小笠原 恵理  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 北村 英隆
鈴木 充
発明の名称 建築物の区画体における貫通部の耐火構造の施工方法  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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