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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1367736
審判番号 不服2019-17518  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-25 
確定日 2020-11-17 
事件の表示 特願2015-246675「蓄電池収納装置の制御方法、プログラム、蓄電池収納装置および情報端末の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-181246、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月17日(優先権主張 平成27年 3月23日)の出願であって、令和 元年 7月11日付けで拒絶理由通知がされ、同年 9月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年 9月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、令和 2年 6月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年 7月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和 2年 7月15日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置の制御方法であって、
外部の蓄電池パックが前記蓄電池収納装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子を受信するステップ(a)と、
前記識別子と前記蓄電池収納装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記蓄電池収納装置に設けられた通信器を介してサーバ装置に出力するステップ(b)と、を備え、
前記ステップ(a)において、前記外部の蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記外部の蓄電池パックに異常が生じていることを示す異常情報を受信し、
前記ステップ(b)において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力し、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であり、前記蓄電池パックのユーザが所持する情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、前記通信器を介して、前記識別子と、前記識別子を受信した日時情報と、前記装置情報とを対応付けしたデータを、前記対応付けデータとして前記サーバ装置に出力する
請求項1記載の蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項3】
さらに、
前記蓄電池収納装置に設けられた受電器を介して外部電源より前記蓄電池パックの充電用電力を受電するステップ(c)と、
前記外部電源からの受電した電力を用いて、前記蓄電池収納装置に設けられ、前記蓄電池パックと電気的に接続する接続器に接続された前記蓄電池パックを前記蓄電池収納装置に設けられた充電器を介して充電するステップ(d)と、を備える
請求項1または2記載の蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項4】
さらに、
外部の電気機器と接続し、前記蓄電池収納装置に設けられた放電器を介して前記蓄電池パックの電力を、前記外部の電気機器に供給するステップ(e)を備える
請求項1-3のいずれか1項に記載の蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項5】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置の制御方法であって、
外部の蓄電池パックが前記蓄電池収納装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子を受信するステップ(a)と、
前記識別子と前記蓄電池収納装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記蓄電池収納装置に設けられた通信器を介してサーバ装置に出力するステップ(b)と、を備え、
前記ステップ(a)において、前記外部の蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記外部の蓄電池パックに異常が生じていることを示す異常情報を受信し、
前記ステップ(b)において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力し、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが盗難されたことを示す情報を含む
蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項6】
前記蓄電池収納装置は、
前記通信器及び制御器を備え、前記蓄電池パックを収納するとともに屋内に設けられる第1ユニットと、
前記近距離無線通信器を備え、屋外に設けられる第2ユニットと、に分離され、
前記ステップ(a)の後、前記第1ユニットに設けられた受信器を介して、前記第2ユニットに設けられた送信器から送信された前記識別子を受信するステップ(f)を備え、
前記ステップ(b)では、前記受信器より前記識別子を受信すると、前記通信器を介して前記識別子と前記蓄電池収納装置に関する前記装置情報とを対応付けした前記対応付けデータを前記サーバ装置に出力する
請求項1-5のいずれか1項に記載の蓄電池収納装置の制御方法。
【請求項7】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置において実行されるプログラムであって、
外部の蓄電池パックが前記蓄電池収納装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子を受信させる処理(a)と、
前記識別子と前記蓄電池収納装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記蓄電池収納装置に設けられた通信器を介してサーバ装置に出力させる処理(b)と、を実行させる、
前記処理(a)において、前記外部の蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記外部の蓄電池パックに異常が生じていることを示す異常情報を受信させ、
前記処理(b)において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力させ、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であり、前記蓄電池パックのユーザが所持する情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
プログラム。
【請求項8】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置であって、
外部の蓄電池パックに設けられた外部通信器と近距離無線通信を行う近距離無線通信器と、
サーバ装置と通信する通信器と、
前記外部の蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子を受信し、
その後、前記識別子と前記蓄電池収納装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力する制御器と、を備え、
前記制御器は、
前記識別子の受信において、前記外部の蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記外部の蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記外部の蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記外部の蓄電池パックに異常が生じていることを示す異常情報を受信し、
前記出力において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力し、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であり、前記蓄電池パックのユーザが所持する情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
蓄電池収納装置。
【請求項9】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置に関する情報を保持するサーバ装置と通信可能な情報端末の制御方法であって、
前記情報端末のユーザにより指定された外部の蓄電池パックとの間で近距離無線通信が行われた近距離無線通信器が設けられた蓄電池収納装置の位置情報を受信するステップ(a)と、
受信した前記蓄電池収納装置の位置情報を前記情報端末の表示装置に表示するステップ(b)と、
前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)と、
前記異常情報を前記表示装置に表示するステップ(d)と、を備え、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であり、前記蓄電池パックのユーザが所持する情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
情報端末の制御方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)において、前記蓄電池収納装置の位置情報に加え、前記情報端末のユーザにより指定された外部の蓄電池パックが、前記蓄電池収納装置の前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置した当該蓄電池収納装置の位置情報を受信し、
前記ステップ(b)において、前記蓄電池収納装置の位置情報と、前記蓄電池パックが前記蓄電池収納装置の近距離無線通信の通信範囲内に位置した日時情報とを表示する
請求項9記載の情報端末の制御方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)において、前記蓄電池収納装置の位置情報と前記蓄電池収納装置の近距離無線通信の通信範囲内に位置した日時情報とを対応付けたデータを日時情報に基づき履歴表示する
請求項9記載の情報端末の制御方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)後、ユーザからの前記ステップ(a)の実行要求があると、前記ステップ(a)を実行する
請求項9-11のいずれか1項に記載の情報端末の制御方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)及び前記ステップ(c)後、ユーザからの前記ステップ(b)の実行要求があると、前記ステップ(b)を実行する
請求項9-11のいずれか1項に記載の情報端末の制御方法。
【請求項14】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置に関する情報を保持するサーバ装置と通信可能な情報端末の制御方法であって、
前記情報端末のユーザにより指定された外部の蓄電池パックとの間で近距離無線通信が行われた近距離無線通信器が設けられた蓄電池収納装置の位置情報を受信するステップ(a)と、
受信した前記蓄電池収納装置の位置情報を前記情報端末の表示装置に表示するステップ(b)と、
前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)と、
前記異常情報を前記表示装置に表示するステップ(d)と、を備え、
前記ステップ(c)後、ユーザからの前記ステップ(a)の実行要求があると、前記ステップ(a)を実行し、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが盗難されたことを示す情報を含む
情報端末の制御方法。
【請求項15】
蓄電池パックを収納する蓄電池収納装置に関する情報を保持するサーバ装置と通信可能な情報端末において実行されるプログラムであって、
前記情報端末のユーザにより指定された外部の蓄電池パックとの間で近距離無線通信が行われた近距離無線通信器が設けられた蓄電池収納装置の位置情報を受信させる処理(a)と、
受信した前記蓄電池収納装置の位置情報を前記情報端末の表示装置に表示させる処理(b)と、
前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信させる処理(c)と、
前記異常情報を前記表示装置に表示させる処理(d)と、を備え、
前記異常情報は、前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であり、前記蓄電池パックのユーザが所持する情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
プログラム。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-215468号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下、同様。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池、例えば、電気自動車の駆動用バッテリなどを提供する施設(適宜、「電気スタンド」と記載する)での充電及びその提供や自然エネルギーによる発電電力の販売(適宜、「売電」と表記する)、並びに電気スタンドに関する情報提供などを行う、二次電池電源供給方法及びその通信システム並びにプログラムに関する。」

「【0066】
なお、この実施形態では、インターネット上での電気自動車バッテリに関する集中管理をISP装置4が行うものとしている。これは、集中管理を、より公開性が得られる最良の形態で実施するためである。したがって、電気事業者通信装置6に設けたインターネット上で、図示しないサーバ装置が集中管理を行うようにしても良く、この構成でもISP装置4の構成の場合と、以下同様に動作する。」

「【0072】
図3は図1中の発電・通信システム(電気スタンド)11の詳細な構成を示すブロック図である。
【0073】
図3を参照すると,この発電・通信システム11は、屋外に配置されて直流及び以降で説明する風向情報、風力情報を出力する風力発電機12と、売電・買電のための接続装置13と、施設の屋根などに配置されて直流を出力する太陽光発電パネル14を有している。
【0074】
接続装置13は、いわゆる、受電点であり、商用電力系(例えば、商用電源100V)と連携する常用発電機(この実施形態では以降で説明する発電制御装置17が相当する)を備えた需要家電力設備の一部を構成するものである。この需要家電力設備としては、検出した受電点の無効電力と設定無効電力との偏差値信号によって上記した常用発電機の発電電圧を自動調整(常用発電機の磁界調整)して、受電点の力率を安定かつ高力率に保持する例などが知られている。
【0075】
また、発電・通信システム11は、各種情報(以降で詳細に説明する)を受け取り・転送するための通信装置15(本発明の無線区間又は有線区間通信手段に対応する)と、個々の使用状態を全国規模で個別的に管理するためのバッテリ識別符号(バッテリID)及び、そのバッテリIDごとの経歴情報や仕様情報が付されて、有料提供(交換のために準備)される少なくとも1個の電気自動車用バッテリ16とを有している。
【0076】
さらに、発電・通信システム11は、以降で制御内容を詳細に説明する発電制御装置17と、売電・買電及び電力購入時の、その電力量を計測するための電気メータ18(本発明の電気量計測手段に対応する)と、発電制御装置17からの交流(AC、例えば、商用電源100V)で動作する、例えば、冷蔵庫、照明器具などの家庭電器19を有している。
【0077】
図4は図3中の発電制御装置17の詳細な構成を示すブロック図である。
【0078】
図4を参照すると,発電制御装置17は、この発電制御装置17の全体を制御するMPU17a(本発明の売電・買電接続装置に対応する)と、風力発電機12及び太陽光発電パネル14からの直流を規定電圧(ここでは電気自動車用バッテリ16への充電定格電圧)に変換するDC-DC変換器17b(本発明の変換手段に対応する)とを有している。
【0079】
また、発電制御装置17は、直流を定格交流の周波数・電圧(この例では、商用AC100V 50/60Hz)に変換するDC-AC変換器17c(本発明の変換手段に対応する)と、電気自動車用バッテリ16への充電を監視し、充電完了時の電流低下から通電停止を制御する充電制御部17dとを有している。
【0080】
さらに、発電制御装置17は、売電・買電の経路を切り換える切換器17(本発明の売電・買電接続装置に対応する)と,通信装置15とのインターフェース(I/F)接続のためのI/F部17fと、風力発電機12及び太陽光発電パネル14からの直流を蓄電するバッテリ17gと、バッテリ17gへの直流入力を制御(例えば、過電流監視)する直流入力制御部17hとから構成されている。
【0081】
図3及び図4において、電気自動車用バッテリ16の経歴情報は、例えば、「充電回数や使用期間」などの情報である。換言すれば、使用可能状態を把握するための「劣化情報」であり、また、仕様情報は、例えば、全国規模での「最大充電容量、取り付け構造、販売時期、主な使用(交換)地区」などの仕様情報である。
【0082】
上記したID・経歴情報・仕様情報は、そのデータが、図4に示す情報記録媒体(例えば、半導体記憶素子、一次元又は二次元バーコードなど)16aに記憶されている。この情報記録媒体は、例えば、充電時に発電制御装置17に図示しない手動又は自動(非手動)での接続構造によって自動的に接続される。
【0083】
この手動又は自動(非手動)での接続構造は、実現手段として、例えば、手動によるコネクタ接続、又は無線通信接続(Bluetooth、IrDA、非接触読出型ICカードなど)が適用できる。
【0084】
この接続が、図4に示す発電制御装置17のMPU17aによって認識されると、上記したID・経歴情報・仕様情報を読み出し、この情報を図4中のI/F部17fを通じて、図3に示した通信装置15から通信回線網を通じてISP装置4に転送する。」

「【0089】
図5は交換・回収通信装置(交換・回収車)20の詳細な構成例を示すブロック図である。
【0090】
図5を参照すると、この交換・回収通信装置20は、無線通信回線網2との無線回線接続によるインターネットアクセスが可能なアプリケーションを実装した携帯電話機(例えば、上記したPDC方式やPHS方式)やPDA(Personal Digital Assistant)などの無線携帯端末21と、この無線携帯端末21とI/F接続されて、GPS平面アンテナ22bで受信したGPS電波Wa?Wdから受信地点の二次元情報(緯度、経度)又は三次元情報(緯度、経度、高度)や以降で詳細に説明する画像合成を行うGPS受信機22(本発明の絶対位置計測手段に対応する)が設けられている。
【0091】
GPS受信機22は、GPS平面アンテナ22bからのGPS受信信号から現在の受信地点の絶対位置情報(二次元情報又は三次元情報)を出力する。
【0092】
なお、無線携帯端末21とGPS受信機22のI/F接続は、ワヤイヤード接続や微弱電波通信回線、例えば、周波数ホッピング方式/Bluetoothが採用される。このI/F接続のために、無線携帯端末21にモジュール21aが内臓され、また、GPS受信機22にモジュール22aを内臓している。
【0093】
また、この交換・回収通信装置20は、車両に搭載されており、電気スタンド11へでの不足となった際の供給、及び使用不可(劣化)となって回収した電気自動車用バッテリ23a,23b,23cを積載(運搬)している。
【0094】
無線携帯端末21は、通信回線網を通じて、以降で詳細に説明する電気スタンド情報、位置情報、天気情報をやり取りする。」

「【0127】
電気スタンド11は、ここでの現在の状況である以降で詳細に説明する次の情報(a)(b)(c)(d)(e)をISP装置4に転送し、ISP装置4が図示しないD/B装置に格納して随時、ここではインターネット上で公開される。例えば、ポータルサイトのホームページ(適宜、HPと略記する)のコンテンツとして公開される。
【0128】
(a)電気スタンド位置情報(例えば、「緯度、経度、高度」、住所、電話番号、電子メールアドレス)
(b)バッテリID・経歴・仕様情報
(c)太陽光発電量情報
(d)風力発電量情報
(e)風向情報
(f)バッテリ個数情報
【0129】
適宜、これら(a)から(f)をまとめて「電気スタンド情報」と記載する。また、(c)太陽光発電量情報、(d)風力発電量情報及び(e)、風向情報を「天候状況」と表記する。」

「【0158】
同様に、ISP装置4は電気スタンド11A,11Bでの寿命(例えば、使用期間、充電回数、充電時間完了時間などの履歴情報から劣化を判断)となった電気自動車バッテリ33を認識すると、ISP装置4は、交換・回収車20に自動的に発報して、電気スタンド11A,11Bでの電気自動車バッテリ33の回収を通知する。」

「【0180】
また、交換・回収通信装置20において、無線携帯端末21は、ISP装置4からの、上記した電気スタンド情報(図9参照)」を受信し(ステップS24)、モジュール21a(図5参照)からGPS受信機22がモジュール22aを通じて、例えば、図11に示すように、電気スタンド11A,11Bを含む地図情報を取り込んで画面表示する(ステップS25)。
【0181】
この、上記した電気スタンド情報には、電気自動車バッテリ33の不足や交換の情報(上記した「(1)双方向通信ネットワークの伝送」での説明参照)が含まれており、その電気スタンド11A,11Bも地図上の場所に表示され、さらに、「電気スタンド情報」が図11の表示画面の右上に示すウィンドウ内に文字表示される(ステップS26)。」

「図1



「図3



「図4



上記図3には、「図1における電気スタンドの内部構成例」として、通信装置15と電気自動車用バッテリ16と発電制御装置17が記載されていることから、電気スタンド、即ち、発電・通信システム11は、各種情報を受け取り・転送するための通信装置15と、バッテリ識別符号及び、そのバッテリIDごとの経歴情報や仕様情報が付される少なくとも1個の電気自動車用バッテリ16と、発電制御装置17と、をその内部に有しているといえる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 電気自動車バッテリに関する集中管理行うISP装置4と、発電・通信システム(電気スタンド)11と、交換・回収通信装置20からなり、
発電・通信システム11は、各種情報を受け取り・転送するための通信装置15と、バッテリ識別符号及び、そのバッテリIDごとの経歴情報や仕様情報が付される少なくとも1個の電気自動車用バッテリ16と、発電制御装置17と、をその内部に有し、
ID・経歴情報・仕様情報は、情報記録媒体に記憶され、経歴情報は、「充電回数や使用期間」などの「劣化情報」であり、
情報記録媒体は、充電時に発電制御装置17に手動又は自動での接続構造によって自動的に接続され、この手動又は自動での接続構造は、無線通信接続(Bluetooth、IrDA、非接触読出型ICカードなど)が適用でき、この接続が、発電制御装置17のMPU17aによって認識されると、ID・経歴情報・仕様情報を読み出し、
電気スタンド位置情報(「緯度、経度、高度」、住所、電話番号、電子メールアドレス)と、バッテリID・経歴・仕様情報を含む電気スタンド情報を、通信装置15から通信回線網を通じてISP装置4に転送し、
ISP装置4は電気スタンド11Aでの寿命(例えば、使用期間、充電回数、充電時間完了時間などの履歴情報から劣化を判断)となった電気自動車バッテリ33を認識すると、ISP装置4は、交換・回収車20に自動的に発報して、電気スタンド11Aでの電気自動車バッテリ33の回収を通知し、
交換・回収通信装置20は、無線携帯端末21が設けられ、無線携帯端末21は、通信回線網を通じて、電気スタンド情報をやり取りし、ISP装置4からの、電気スタンド情報を受信し、電気スタンド情報には、電気自動車バッテリ33の不足や交換の情報が含まれており、電気スタンド情報が文字表示され、
集中管理はサーバ装置が行うようにしても良い、方法」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された特表2014-533480号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0020】
図1は、一実施形態例に係る環境100を示している。環境100は、回収充電分配機102を含んでいる。
【0021】
回収充電分配機102は、自動販売機または売店の形態を取りうる。回収充電分配機102は、複数のレシーバ(コンパートメント、レセプタクルとも称する)104a、104b?104n(図1では3つだけに番号が付されている、まとめて104)を有する。レシーバ104は、回収、充電、および分配のために、ポータブル電気エネルギー蓄積デバイス(例えば、バッテリ、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタ)106a?106n(まとめて106)を取り外し可能に受け入れる。図1に示されるように、レシーバ104の幾つかは空である。一方、他のレシーバ104は、ポータブル電気エネルギー蓄積デバイス106を保持している。図1は、レシーバ104当たり1つのポータブル電気エネルギー蓄積デバイス106を示している。しかしながら、実施形態によっては、各レシーバ104は、2つ以上のポータブル電気エネルギー蓄積デバイス106を保持できる。例えば、レシーバ104の各々は、3つのポータブル電気エネルギー蓄積デバイス106を受け入れるのに十分な深さを有しうる。したがって、図1に示される回収充電分配機102は、例えば、同時に40個、80個、または120個のポータブル電気エネルギー蓄積デバイス106を保持することが可能な容量を有しうる。」

「図1



したがって、上記引用文献2には、「レシーバを有する回収充電分配機において、バッテリの回収、充電、および分配のためのレシーバは、バッテリを受け入れるのに十分な深さを有しうる」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

A.引用発明における「電気自動車用バッテリ」、「無線通信接続(Bluetooth、IrDA、非接触読出型ICカードなど)」、「ID」は、それぞれ、本願発明1における「蓄電池パック」、「近距離無線通信」、「蓄電池パックを識別する識別子」に相当する。
B.引用発明の「発電・通信システム(電気スタンド)11」と、本願発明1の「蓄電池収納装置」とは、いずれも蓄電池を含むものであるから、「蓄電池装置」である点で共通する。
C.引用発明の「電気スタンド情報」に含まれる「電気スタンド位置情報(「緯度、経度、高度」、住所、電話番号、電子メールアドレス)」は、本願発明1の「装置情報」に対応する。
D.引用発明の「電気スタンド情報」に含まれる「経歴情報」は、「劣化情報」であり、引用発明は、ISP装置4において、使用期間、充電回数、充電時間完了時間などの履歴情報から劣化を判断している。
そして、劣化を判断することは、正常でないこと、すなわち、異常であることを判断することであるから、引用発明の「劣化情報」は、異常に関する情報といえる。
そうすると、引用発明の「電気スタンド情報」に含まれる「経歴情報」と、本願発明1の「異常が生じていることを示す異常情報」とは、「異常に関する情報」である点で、共通する。
E.引用発明は、発電・通信システム(電気スタンド)11が電気スタンド情報をISP装置4へ転送する方法であるから、本願発明の「制御方法」に対応する。


したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

一致点
「 蓄電池パックを含む蓄電池装置の制御方法であって、
蓄電池パックが前記蓄電池装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記蓄電池パックを識別する識別子を受信するステップ(a)と、
前記識別子と前記蓄電池装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記蓄電池装置に設けられた通信器を介してサーバ装置に出力するステップ(b)と、を備え、
前記ステップ(a)において、前記蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記蓄電池パックの異常に関する情報を受信し、
前記ステップ(b)において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常に関する情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力し、
前記異常に関する情報は、情報端末が有する表示器に異常表示を表示するための情報である
蓄電池装置の制御方法。」

相違点1
「蓄電池装置」について、本願発明1は、蓄電池パックを収納する「蓄電池収納装置」であるのに対して、引用発明では、発電・通信システム(電気スタンド)は電気自動車用バッテリを収納しているか否か、特定がない点。

相違点2
「異常に関する情報」について、本願発明1では、「前記蓄電池パックが備えるセンサによるセンシングデータを用いて前記蓄電池パックに異常が生じていることを前記蓄電池パックにより判定された結果、生成された情報であ」る「異常が生じていることを示す異常情報」であるのに対して、引用発明は、電気自動車用バッテリの「経歴情報」である点。

相違点3
本願発明1では、「外部の蓄電池パック」が「前記蓄電池収納装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると」、近距離無線通信を行って、蓄電池パックを識別する識別子及び異常情報を受信し、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報をサーバ装置に出力するのに対し、引用発明では、発電・通信システム(電気スタンド)が「電気自動車用バッテリ」を内部に有し、「充電時に」「無線通信接続(Bluetooth、IrDA、非接触読出型ICカードなど)」で「ID・経歴情報・仕様情報を読み出」し、ISP装置4に転送する点。

相違点4
本願発明1では、情報端末は「前記蓄電池パックのユーザが所持する」ものであるのに対して、引用発明は、「交換・回収通信装置20」に設けられたものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点1及び相違点3について、検討する。
引用発明は、「ISP装置4は電気スタンド11Aでの寿命(例えば、使用期間、充電回数、充電時間完了時間などの履歴情報から劣化を判断)となった電気自動車バッテリ33を認識すると、ISP装置4は、交換・回収車20に自動的に発報して、電気スタンド11Aでの電気自動車バッテリ33の回収を通知」するものであるから、交換・回収車が回収すべき電気自動車用バッテリとなり得ない、外部の電気自動車用バッテリとの間で無線通信接続することは、想定されておらず、引用発明において、相違点3の構成である、発電・通信システム(電気スタンド)が外部の電気自動車用バッテリとの間で無線通信接続を行うことの、動機付けは存在しない。
さらに、引用発明において、相違点1の構成である、発電・通信システム(電気スタンド)がその内部に電気自動車用バッテリを有する状態を、発電・通信システム(電気スタンド)が電気自動車用バッテリを収納するものとして構成した場合、当該収納される電気自動車用バッテリから無線通信接続によりID・経歴情報・仕様情報を読み出すことに加えて、外部の電気自動車用バッテリからも、無線通信接続によりID・経歴情報・仕様情報を読み出すように構成すること、すなわち相違点3の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得た、と認めるに足りる証拠は見当たらない。引用文献2がその証拠に該当しないことは明らかである。

また、上記相違点1及び3の構成は、前置報告書で引用された特開平11-283677号公報、特開2014-235839号公報及び特開2014-204571号公報にも記載されておらず、本願出願時に周知な事項ともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1をさらに限定する発明であって、上記1.で検討した相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明5と引用発明とを対比すると、次の一致点、相違点があるといえる。

一致点
「 蓄電池パックを含む蓄電池装置の制御方法であって、
蓄電池パックが前記蓄電池装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると、前記蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して近距離無線通信を行うことで前記蓄電池パックを識別する識別子を受信するステップ(a)と、
前記識別子と前記蓄電池装置に関する装置情報とを対応付けした対応付けデータを、前記蓄電池装置に設けられた通信器を介してサーバ装置に出力するステップ(b)と、を備え、
前記ステップ(a)において、前記蓄電池パックが前記近距離無線通信器の通信範囲内に位置したときに、前記蓄電池パックとの間で前記近距離無線通信器を介して前記近距離無線通信を行うことで前記蓄電池パックを識別する識別子に加えて前記蓄電池パックの異常に関する情報を受信し、
前記ステップ(b)において、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常に関する情報を、前記通信器を介して前記サーバ装置に出力する
蓄電池装置の制御方法。」

相違点1
「蓄電池装置」について、本願発明5は、蓄電池パックを収納する「蓄電池収納装置」であるのに対して、引用発明では、発電・通信システム(電気スタンド)は電気自動車用バッテリを収納しているか否か、特定がない点。

相違点2
「異常に関する情報」について、本願発明5では、「異常が生じていることを示す異常情報」であるのに対して、引用発明は、電気自動車用バッテリの「経歴情報」である点。

相違点3
本願発明5では、「外部の蓄電池パック」が「前記蓄電池収納装置に設けられた近距離無線通信器の通信範囲内に位置すると」、近距離無線通信を行って、蓄電池パックを識別する識別子及び異常情報を受信し、前記対応付けデータ、及び、受信した前記異常情報をサーバ装置に出力するのに対し、引用発明では、発電・通信システム(電気スタンド)が「電気自動車用バッテリ」を内部に有し、「充電時に」「無線通信接続(Bluetooth、IrDA、非接触読出型ICカードなど)」で「ID・経歴情報・仕様情報を読み出」し、ISP装置4に転送する点。

相違点4
本願発明5では、「前記異常情報は、前記蓄電池パックが盗難されたことを示す情報を含む」のに対して、引用発明は、当該構成を有さない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点1及び相違点3について、あわせて検討すると、本願発明1について上記1.(2)で言及したように、当業者が容易になしえたものではない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明5は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6について
本願発明1-4を引用する本願発明6は、本願発明1をさらに限定する発明であって、上記1.で検討した相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明5を引用する本願発明6は、本願発明5をさらに限定する発明であって、上記3.で検討した相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明7
本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6.本願発明8
本願発明8は、本願発明1に対応する装置の発明であり、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

7.本願発明9
本願発明9は、本願発明1のユーザが所持する「情報端末」の制御方法に関する発明であり、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

8.本願発明10-13
本願発明10-13は、本願発明9をさらに限定する発明であり、本願発明9と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

9.本願発明14
本願発明14と引用発明とを対比すると、次の一致点、相違点があるといえる。

一致点
「 蓄電池パックを含む蓄電池装置に関する情報を保持するサーバ装置と通信可能な情報端末の制御方法であって、
蓄電池パックとの間で近距離無線通信が行われた近距離無線通信器が設けられた蓄電池装置の位置情報を受信するステップ(a)と、
受信した前記蓄電池装置の位置情報を前記情報端末の表示装置に表示するステップ(b)と、
前記蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)と、
前記異常情報を前記表示装置に表示するステップ(d)と、を備える
情報端末の制御方法。」

相違点1
「蓄電池装置」について、本願発明14は、蓄電池パックを収納する「蓄電池収納装置」であるのに対して、引用発明では、発電・通信システム(電気スタンド)は電気自動車用バッテリを収納しているか否か、特定がない点。

相違点2
本願発明14では、蓄電池パックが「前記情報端末のユーザにより指定された外部の蓄電池パック」であるのに対して、引用発明は、当該事項について、特定がない点。

相違点3
本願発明14では、「前記ステップ(c)後、ユーザからの前記ステップ(a)の実行要求があると、前記ステップ(a)を実行する」ことが特定されているのに対して、引用発明は、当該事項について、特定がない点。

相違点4
本願発明14は、「前記異常情報は、前記蓄電池パックが盗難されたことを示す情報を含む」のに対して、引用発明は、当該構成を有さない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点1及び相違点2について、検討する。
引用発明は、「ISP装置4は電気スタンド11Aでの寿命(例えば、使用期間、充電回数、充電時間完了時間などの履歴情報から劣化を判断)となった電気自動車バッテリ33を認識すると、ISP装置4は、交換・回収車20に自動的に発報して、電気スタンド11Aでの電気自動車バッテリ33の回収を通知」するものであるから、交換・回収車が回収すべき電気自動車用バッテリとなり得ない、「外部の電気自動車用バッテリ」との間で無線通信接続することは、想定されておらず、引用発明において、相違点2の構成である、「前記情報端末のユーザにより指定された外部の電気自動車用バッテリ」との間で無線通信接続を行うことの、動機付けは存在しない。
さらに、引用発明において、相違点1の構成である、発電・通信システム(電気スタンド)がその内部に電気自動車用バッテリを有する状態を、発電・通信システム(電気スタンド)11が電気自動車用バッテリを収納するものとして構成した場合、当該収納される電気自動車用バッテリから無線通信接続によりID・経歴情報・仕様情報を読み出すことに加えて、外部の電気自動車用バッテリからも、無線通信接続によりID・経歴情報・仕様情報を読み出すように構成すること、すなわち相違点2の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得た、と認めるに足りる証拠は見当たらない。引用文献2がその証拠に該当しないことは明らかである。

また、上記相違点1及び2の構成は、前置報告書で引用された特開平11-283677号公報、特開2014-235839号公報及び特開2014-204571号公報にも記載されておらず、本願出願時に周知な事項ともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明14は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

10.本願発明15
本願発明15は、本願発明9に対応するプログラムの発明であり、本願発明9と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-4、6-13、15について上記引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記第4のとおり、本願発明1-4、6-13、15は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、特許請求の範囲の記載に対して、下記1?3の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨、拒絶の理由を通知した。
1 請求項12には、「 さらに、
前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)を含み、」と記載されているが、引用する請求項9においても、「 前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)と、」が特定されており、これらのステップの関係が明確でない。
2 請求項13においても、請求項12と同様の点が明確でない。
3 請求項14には、「 前記外部の蓄電池パックに異常が生じたことを示す異常情報を受信するステップ(c)と、」との構成が重複して記載されており、明確でない。

これに対し、令和 2年 7月15日に提出された手続補正書により、重複する記載を削除する補正がなされ、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-10-27 
出願番号 特願2015-246675(P2015-246675)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G08B)
P 1 8・ 121- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大橋 達也  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 富澤 哲生
衣鳩 文彦
発明の名称 蓄電池収納装置の制御方法、プログラム、蓄電池収納装置および情報端末の制御方法  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  
代理人 道坂 伸一  

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