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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1367758
審判番号 不服2019-9563  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-18 
確定日 2020-10-28 
事件の表示 特願2017-544888「電子回路を有する反射器および反射器を有するアンテナデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日国際公開、WO2016/135099、平成30年 4月12日国内公表、特表2018-510559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成28年2月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)2月24日 EP)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 9月13日付け:拒絶理由の通知
平成30年12月14日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 3月 8日付け:拒絶査定
令和 元年 7月18日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1-2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1. DAVID M POZAR,Design of Millimeter Wave Microstrip
Reflectarrays,IEEE TRANSACTIONS ONANTENNAS AND
PROPAGATION,米国,IEEE SERVICE CENTER,1997年2月
,vol. 45, no. 2,p.287, pp.289-290
引用文献2. 特開2006-203602号公報


第3 本願発明について

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和元年7月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
基板(12)と、
前記基板(12)上または前記基板内に配置され、入射電磁波(16)を反射するように構成された複数の反射器構造(14,14-1?4)と、
前記基板(12)上または前記基板内に配置されている電子回路(18;18a?d)であって、アンテナが前記電子回路(18;18a?d)に接続されているときに前記アンテナを制御するように構成されている、電子回路と、を備えた反射器(10;20;40;50)。」


第4 引用文献の記載及び引用発明

1.引用文献の記載

(1)引用文献1

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(1-1)「Fig.3(b) shows a reflectarray with a cassegrain feed. The standard hyperbolic subreflector can be used, or a simpler flat reflector plate can be used by appropriately designing the reflection phase of the reflectarray. In fact, since the reflectarray elements can provide phase compensation for any subreflector shape, the subreflector can be independently contoured to provide a particular amplitude distribution to maximize directivity or shape the main beam. Another interesting possibility is to design a small microstrip feed antenna on the reflectarray substrate. This might be a single element or a small array (possibly a monopulse array), and offers further simplicity and savings compared to the use of a separate feed horn antenna.」(第289ページ右欄?第290ページ左欄)

(仮訳:図3(b)は、カセグレン・フィードを用いた反射アレイを示している。反射アレイの反射位相を適切に設計することによって、標準的な双曲線副反射器を利用すること、もしくは、よりシンプルな平面反射板を利用することが可能である。実際のところ、反射アレイ素子は如何なる形の副反射器に対しても位相補償を行えるので、副反射器を独立に形成して、指向性を最大化するための、もしくはメインビームを形成するための特定の振幅分布を提供することができる。もう一つの興味深い可能性は、反射アレイ基板上に、小さなマイクロストリップ給電アンテナを設計できることである。これにより、単一のエレメントもしくは小さいアレイ(あるいは、単パルスアレイ)とすることができ、さらに、分離した給電ホーンアンテナを用いる場合に比べてさらなる簡易化と簡素化をもたらし得る。)

(1-2)「



(1-3)上記(1-1)及び(1-2)の記載事項を参酌するに、引用文献1には、「反射アレイ素子は、副反射器によって反射された電磁波を反射するように反射アレイ基板上に複数配置されている」ことが、開示されていると理解できる。

上記(1-1)から(1-3)の記載事項から、引用文献1には、

「カセグレン・フィードを用いた反射アレイであって、
反射アレイ素子は、副反射器によって反射された電磁波を反射するように反射アレイ基板上に複数配置され、
前記反射アレイ基板上には、マイクロストリップ給電アンテナを設計できる、
反射アレイ。」(以下、「引用発明」という。)

が記載されている。


(2)引用文献2(特開2006-203602号公報)

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(2-1)「【0027】
図1は、本発明の一実施形態にかかるアンテナ装置の平面図(図1A)と概略的な断面図(図1B)である。図2は、このアンテナ装置の概略的な分解斜視図である。
【0028】
図示のように、このアンテナ装置では、高純度のセラミック基板(例えば、高純度のアルミナ(Al2O3))基板)10の一方の表面(図では上面)上に、いずれも矩形の複数の導体膜からそれぞれなる複数のアンテナ電極12、14 、…のアレイが配置されている。ここで、高純度セラミック基板10の純度は、95%以上であることが望ましく、97%以上であれば特に好ましい。すなわち、セラミック基板の誘電率は、その純度(100%-不純物含有率)に応じて変化するが、純度が95%以上の範囲では、純度に応じてはあまり変化しなくなり、セラミック材料そのものがもつ誘電率とほぼ一致するようになる。特にセラミック基板の純度が97%以上であれば、セラミック材料そのものの誘電率と同一とみなすことができる。よって、このような高純度のセラミック基板を用いることが望ましい。
【0029】
また、アンテナ電極12、14 、…は、例えば銅、銀、又は銀パラジウムなどの導電率の高い金属の薄膜である。これらアンテナ電極12 、14 、…のうちの少なくとも一つ、例えば中央の一つのアンテナ電極12は、発振回路(高周波発振回路)20に給電線路22で接続されて、発振回路20から直接的に高周波(例えば、10.525GHz、24.15GHz又は76GHzなどの特定周波数の高周波)電力の給電を受けるようになっている(以下、このアンテナ電極を給電素子という)。他方、給電素子12の周囲に配置された残りのアンテナ電極14、14、…は、発振回路20には接続されておらず、発振回路20から直接的に高周波電力の給電を受けることはない(以下、これらのアンテナ電極を無給電素子という)。給電素子12の励振方向は図中の上下方向であり、無給電素子14、14、…は、給電素子12に対して励振方向における両側、励振方向に直交する方向における両側、及び、励振方向から45度の斜め方向における両側にそれぞれ配置され
ている。
【0030】
高純度セラミック基板10の他方の面(図中の下面)のほぼ全領域には、導体膜からなる接地電極18が設けられている。接地電極18の下面のほぼ全領域が、第1の誘電体膜19で被覆されている。ここで、接地電極18は、例えば銅、銀、又は銀パラジウムなどの導電率の高い金属製の薄膜である。また、第1の誘電体膜19は、例えば、アルミナ(Al_(2)O_(3))やシリカ(SiO_(2))などのセラミック製の薄膜であり、上述した高純度セラミック基板10と同程度に高純度であることが望ましい。
【0031】
第1の誘電体膜19の給電素子12にほぼ対応する領域に、貫通穴又は凹部が形成されており、その貫通穴内又は凹部内に発振回路(例えば、10.525GHz、24.15GHz又は76GHzなどの特定周波数の高周波電力を発生する高周波発振回路)20が配置されている。発振回路20の接地端子は接地電極18に直接接合されている。そして、給電素子12の所定の給電点(以下、図1Aで、給電素子12内で丸印で示す点)に対応する、高純度セラミック基板10と接地電極18の箇所に、細い貫通孔が形成さられており、この貫通孔内に、導体線である給電線22が通されている。この給電線22は、一端にて給電素子12の給電点に接続され、他端にて発振回路20の高周波出力端子に接続されている。発振回路20から出力される高周波(例えば、10.525GHz、24.15GHz又は76GHzなどの特定周波数のマイクロ波)電力は、上記スルーホールタイプの給電線22を通って、給電素子12の給電点に供給されることになる。」

(2-2)「【0040】
さらに、第1の誘電体膜19に凹部又は穴部が形成され、その凹部内又は穴部内に発振回路20が配置されているので、アンテナ装置がより小型化できる。また、発振回路20と接地電極18との距離が小さくでき(特に、この実施形態では、発振回路20が接地電極18上に直接設置され)、また、発振回路20とアンテナ電極12との距離も小さくなるので、発振回路20と接地電極18やアンテナ電極12との間の線路長が短くなり、線路のインピーダンスの影響が減り、アンテナ装置の性能の安定化や高効率化に寄与する。」

(2-3)「【図1】



(2-4)「【図2】



ここで、引用文献2において、「高純度セラミック基板10」と「接地電極18」と「第1の誘電体膜19」とから形成されるものは、いわゆる「多層基板」と呼べるものであることは明らかであり、そして、上記(2-1)から(2-4)の記載事項を踏まえると、引用文献2には、「基板上に設けられた給電素子に対して給電を行う発振回路を多層基板の内部に設ける」との技術手段が開示されている。


(3)引用文献3(特開2012-249004号公報)

周知技術を示す引用文献3には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(3-1)「【0017】
本実施例は、本発明の最も簡単な構造の例である。実施例1に係る広角指向性アンテナ1の構成を図1に示す。直方体薄板形状の誘電体基板10は、主面(表面)である第1面11と、誘電体基板10の裏面であって、第1面に平行な第2面12とを有している。第1面11には矩形形状のパッチアンテナとして機能する薄膜導体から成るアンテナ素子20が形成されている。アンテナ素子20の1辺は、管内波長λ/2である。また、第2面12の一部の領域には、矩形面状の薄膜導体から成るグランド層30が形成されている。グランド層30は、アンテナ素子20の第2面12への正射影を内部に包含する大きさ及び位置に形成されている。そして、アンテナ素子20とグランド層30は外部の信号源50に接続されている。アンテナ素子20とグランド層30とでパッチアンテナ(アンテナ領域)が構成され、信号源50から供給された信号により、電磁波が空間に放射される。なお、本アンテナ1を受信アンテナとする場合には、信号源50は、外部の受信回路である。」

(3-2)「【図1】



上記(3-1)及び(3-2)の記載事項を参酌すると、引用文献3には、「誘電体基板の表面に形成されたアンテナ素子に対して信号を供給する信号源を前記誘電体基板の表面に設ける」との技術手段が開示されている。


(4)引用文献4(特開2009-236659号公報)

周知技術を示す引用文献4には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(4-1)「【0013】
図2は、本発明における電波センサの第1実施形態を示す、(a)正面図および(b)B-B’断面図である。
図2に示す電波センサは、内部に層状の第1接地電極13が略全面に形成された第1基板11の一方の表面に送信アンテナとして作用する薄膜矩形状の送信電極12が形成されている。第1基板11の他方の表面には、不要な電磁波をシールドするとともに第1基板11と対向する天面に所定の周波数で発振させるための図示しない周波数調整手段(螺子)を備えた金属ケース16が設置され、その内部に図示しない発振回路(電界効果トランジスタと誘電体共振器を利用し高周波信号を生成、またはガンダイオードを利用し高周波信号を生成)が形成されている。図示しない発振回路により生成された高周波信号は、第1基板11の表面を貫通する導通孔15により送信電極12に送信され、送信電極12から電波ビームとして放射される。導通孔15はインピーダンスが50Ωとなる送信電極12の内部に設けられている。送信電極12は、高周波信号(使用周波数)の約半波長(λg/2:λg…第1基板11を伝搬する高周波信号の波長である。また、真空中における高周波信号の電波の波長をλ、第1基板11の比誘電率をεrとすると、λ=εr^(1/2)・λgである。)の長さL1を少なくとも一辺にもつ矩形状の薄膜電極であり、第1接地電極13が反射板として作用するマイクロストリップ構造の送信アンテナである。従って、第1接地電極13を境界として送信電極12から前方(第1接地電極13に対し送信電極12が形成された方向)に効率良く電波ビームを放射することができる。」

(4-2)「【図2】



上記(4-1)及び(4-2)の記載事項を参酌すると、引用文献4には、「基板の表面に形成された送信アンテナとして作用する送信電極に対して高周波信号を供給する発振回路を前記基板の裏面に設ける」との技術手段が開示されている。


第5 対比及び判断

1.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1-1)
引用発明の「カセグレン・フィードを用いた反射アレイ」及び「反射アレイ基板」が、それぞれ、本願発明の『反射器』及び『基板』に相当することは明らかである。

(1-2)
引用発明の「反射アレイ素子」は、「副反射器によって反射された電磁波を反射するように反射アレイ基板上に複数配置され」るものであるから、本願発明とは『前記基板上に配置され、入射電磁波を反射するように構成された複数の反射器構造』という点で共通する。

したがって、上記(1-1)から(1-2)で対比した様に、本願発明と引用発明とは、

「基板と、
前記基板上に配置され、入射電磁波を反射するように構成された複数の反射器構造と、
を備えた反射器。」

で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明においては、『反射器』を構成する要素として『前記基板(12)上または前記基板内に配置されている電子回路(18;18a?d)であって、アンテナが前記電子回路(18;18a?d)に接続されているときに前記アンテナを制御するように構成されている、電子回路』を備える旨特定されているのに対し、引用発明の「反射アレイ」においては、「反射アレイ基板上には、マイクロストリップ給電アンテナを設計できる」ものの、当該「マイクロストリップ給電アンテナ」を制御する電子回路について何ら特定されていない点。


2.判断

上記[相違点]について検討する。

(2-1)
引用発明には、マイクロストリップ給電アンテナを制御する「電子回路」について何ら特定されていないものの、当該「マイクロストリップ給電アンテナ」は、電磁波を放射するために用いられるものであるから、当該「マイクロストリップ給電アンテナ」に対して高周波信号を供給するための電子回路が必要であることは当業者にとって自明な事項であり、そのような電子回路が高周波信号の波形、振幅及び周波数などを制御することも、当業者にとって自明のことである。

(2-2)
また、基板上に設けられた給電素子(アンテナ素子、送信電極)に対して信号を供給する電子回路(発振回路、信号源)を当該基板の「基板内(多層基板の中)」、又は、「表面(給電素子と同じ面)」、又は、「裏面(給電素子が設けられている面とは反対の面)」に配置することは、それぞれ引用文献2から4に記載されているように、いずれも本願出願前において当業者にとっては周知の技術手段である。

(2-3)
してみると、引用発明において、反射アレイ基板上に設けられるマイクロストリップ給電アンテナに対して高周波信号を供給する電子回路を反射アレイ基板の何処に配置するかは、当業者が周知の技術手段を踏まえて適宜決定し得る事項である。

(2-4)
また、本願発明の構成によってもたらされる効果についても、引用発明及び引用文献2から4に記載された周知の技術手段より、当業者ならば容易に予測することができる程度のものである。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明は引用発明及び引用文献2から4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-05-21 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-09 
出願番号 特願2017-544888(P2017-544888)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新田 亮米倉 秀明  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
佐藤 智康
発明の名称 電子回路を有する反射器および反射器を有するアンテナデバイス  
代理人 野口 大輔  
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