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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1367784 |
審判番号 | 不服2019-17264 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-20 |
確定日 | 2020-11-05 |
事件の表示 | 特願2016-539818「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月11日国際公開、WO2016/021116〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2015年7月13日(優先権主張2014年8月5日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。 平成29年 1月26日 :国内書面の提出 平成30年 3月27日 :出願審査請求書の提出 平成31年 2月22日付け:拒絶理由通知(同年2月26日発送) 同年 4月26日 :期間延長請求書の提出(2ヶ月) 令和元年 5月17日 :意見書・手続補正書の提出 同年10月16日付け:拒絶査定(同年10月23日送達) 同年12月20日 :審判請求書・手続補正書の提出 令和2年 4月15日 :上申書の提出 第2 令和元年12月20日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年12月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正内容 本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(令和元年5月17日付け手続補正後のもの)に、 「【請求項1】 複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群と、 前記太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックスと、 前記第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて前記第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、前記端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されており、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブと、前記端子ボックスに接続される第3のタブと、前記第1のタブと前記第3のタブとの間を接続する第2のタブとを有し、 前記第1のタブと前記第2のタブとは第1の接続部で接続され、 前記第2のタブと前記第3のタブとは第2の接続部で接続されており、 前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なっている、 太陽電池モジュール。」とあったものを、 本件補正後に、 「【請求項1】 複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群と、 前記太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックスと、 前記第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて前記第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、前記端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されており、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブと、前記端子ボックスに接続される第3のタブと、前記第1のタブと前記第3のタブとの間を接続する第2のタブとを有し、 前記第1のタブと前記第2のタブとは第1の接続部で接続され、 前記第2のタブと前記第3のタブとは第2の接続部で接続されており、 前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリン グとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なっており、 前記第3のタブは、前記第2の方向に延在している、 太陽電池モジュール。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)。 2 補正目的 (1)本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な「第3のタブ」について、「第2の方向に延在している」と限定するものであって、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (2)よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。 3 独立特許要件 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された米国特許第8586855号明細書(2013年11月19日公開 以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(なお、日本語訳は当審で作成し、下線は当審で付した。以下同様。)。 (ア)「 」(第12欄第35行ないし第13欄第20行) (日本語訳 特許請求の範囲 1. 複数のストリングを画定する太陽電池アレイを備える太陽電池パネルであって、前記複数のストリングが前記太陽電池パネルの2つの外縁部の最も近くに位置する2つの外側ストリングを含み、前記複数のストリングがそれぞれ電気的に接続され1列に配置された複数の太陽電池を備えている、太陽電池パネルと、 前記ストリングの前記複数の太陽電池を電気的に接続する複数のインターコネクタと、 前記複数のストリングから生じる電流を受ける接続箱と、 前記接続箱を前記複数のインターコネクタと電気的に結合する複数のリード線と、 前記複数のリード線を前記太陽電池および前記複数のインターコネクタから絶縁する絶縁層と、を備え、 前記複数のリード線が互いに重ならないように配置され、 各外側ストリングのインターコネクタに接続された2つのリード線が、 前記各外側ストリングの前記インターコネクタに接続されたインターコネクタ接続部と、 前記接続箱に結合された接続箱接続部と、 前記インターコネクタ接続部と交差し垂直となるよう前記インターコネクタ接続部に結合された第1の結合部と、 前記第1の結合部および前記接続箱接続部に結合され、前記インターコネクタ接続部と平行に配置された第2の結合部とを備え、 前記絶縁層の幅が、前記外側ストリングの前記インターコネクタに接続された前記2つのリード線の前記第1の結合部間の距離以上である、太陽電池モジュール。 2.…… 3.…… 4.…… 5.前記外側ストリングの前記インターコネクタに接続された前記複数のリード線の前記1つのリード線の、前記インターコネクタ接続部、前記第1の結合部、前記第2の結合部、および前記接続箱接続部のうちの少なくとも1つが、他の部分とは分離して成形される、請求項1に記載の太陽電池モジュール。) (イ)「 「(第6欄第41行ないし第7欄第11行) (日本語訳 図2?図4を参照して、太陽電池パネルの電気的接続構造を詳細に説明する。図3において、説明のために太陽電池210の間の空間が拡大されているが、実質的には、近傍の太陽電池210は図1に示すように一定の間隔(例えば3mm以下の狭い間隔)で配置されている。 太陽電池パネル200に設けられている複数の太陽電池210は、複数の「ストリング」の形態に配置される。ここで、「ストリング」とは、1列に配置され互いに電気的に直列に接続された複数の太陽電池を意味する。したがって、図1?図3に示した太陽電池モジュール200は、4つのストリング、例えば、第1?第4のストリングS1、S2、S3、S4を有する。示したように、ストリングは長さ方向に配置され、隣接するストリングの横に幅方向に並んで配置される。以降、太陽電池パネル200の角部に位置する第1のストリングS1および第4のストリングS4を外側ストリングと呼び、外側ストリングS1と外側ストリングS4との間に位置する第2のストリングS2および第3のストリングS3を内側ストリングと呼ぶ。 各ストリングS1?S4に配置された複数の太陽電池210は、インターコネクタ220によって電気的に結合されている。詳細には、1つのストリング(例えば、第1のストリングS1)内で互いに隣接して鉛直方向に配置される複数の太陽電池のうちの1つの太陽電池の第1の集電器(図5の214)は、インターコネクタ220aにより、近傍の太陽電池の第2の集電器(図5の217)に電気的に結合される。 第1のストリングS1の一方端部に位置するインターコネクタ220aは、インターコネクタ222により、第2のストリングS2の一方端部に位置するインターコネクタ220bと接続される。同様に、第3のストリングS3の一方端部に位置するインターコネクタ220cは、インターコネクタ222により、第4のストリングS4の一方端部に位置するインターコネクタ220dと接続される。生じた電力を太陽電池210から接続箱400に伝送するリード線(LW)は、ストリングS1?S4の他方端部に位置するインターコネクタ220a、220b、220c、220dに結合される。) (ウ)「 」(第7頁第12行ないし第33行) (日本語訳 以下の記載において、外側ストリング(すなわち第1のストリングS1および第4のストリングS4)のインターコネクタ220aおよび220dに結合されたリード線は、外側リード線(OLW)と呼び、内側ストリング(すなわち第2のストリングS2および第3のストリングS3)のインターコネクタ220bおよび220cに結合されたリード線は、内側リード線(ILW)と呼ぶ。 第1のストリングS1のインターコネクタ220aに結合されたリード線は、第1の外側リード線OLW1と呼び、第4のストリングS4のインターコネクタ220dに結合されたリード線は、第2の外側リード線OLW2と呼び、第2のストリングS2のインターコネクタ220bに結合されたリード線は、第1の内側リード線ILW1と呼び、第3のストリングS3のインターコネクタ220cに結合されたリード線は、第2の内側リード線ILW2と呼ぶ。 なお、第1の外側リード線OLW1および第2の外側リード線OLW2は、第1の内側リード線ILW1および第2の内側リード線ILW2とは重ならない。したがって、外側リード線OLW1およびOLW2と内側リード線ILW1およびILW2との間には、電気的な接続も他の相互作用も干渉もない。) (エ)「 」(第10欄第25ないし第49行) (日本語訳 しかし、太陽電池モジュール100の設計はこれらに限定されず、リード線OLW1、OLW2、ILW1、ILW2が一体に成形されてもよい。 次に、図3のリード線の変更形態によるリード線の拡大図である図6を参照して、リード線のこのような設計を説明する。示したように、外側リード線OLW1およびOLW2は、それぞれ単体として構成され、各単体は、インターコネクタ接続部OWL1-1、OLW2-2、第1の結合部OLW1-2-1、OLW2-2-1、第2の結合部OLW1-2-2、OLW2-2-2、および接続箱接続部OLW1-3、OLW2-3を備える。同様に、内側リード線ILW1およびILW2は、それぞれ単体として構成され、各単体は、インターコネクタ接続部ILW1-1、ILW2-1、および接続箱接続部ILW1-2、ILW2-2を備える。 外側リード線OLW1、OLW2、および内側リード線ILW1、ILW2は、それぞれ単体として構成されてもよい。あるいは、図示していないが、外側リード線OLW1およびOLW2の、インターコネクタ接続部OLW1-1、OLW2-1、第1の結合部OLW1-2-1、OLW2-2-1、第2の結合部OLW1-2-2、OLW2-2-2、および接続箱接続部OLW1-3、OLW2-3のうち少なくとも1つが、他の各部とは分離した部材として成形されてもよい。) (オ)「 」(第10欄第50行ないし第11欄第12行) (日本語訳 加えて、このリード線は図3および図6に示した実施形態のリード線とは異なる形態を有するように構成されてもよい。次に、図7を参照してこれを説明する。図7は、図3のリード線の別の変更形態によるリード線の拡大図である。示したように、図7に示した変更形態は、接続箱400の接続部(図1および図3に示す)が、太陽電池パネル200のストリングの方向に配置される場合に使用してもよい。これは、リード線に接続された接続箱の接続部が太陽電池パネルのストリングを横切る方向に配置される場合に使用される上記実装形態のリード線とは構造が異なる。 詳細には、図7によれば、外側リード線OLW1およびOLW2の、接続箱接続部OLW1-3、OLW2-3、およびインターコネクタ接続部OLW1-1、OLW2-1は、平行になるように配置されインターコネクタと交差し、インターコネクタ接続部OLW1-1、OLW2-1と接続箱接続部OLW1-3、OLW2-3とを結合する結合部OLW1-2およびOLW2-2は、直線状に形成されインターコネクタと平行になるように配置される。) (カ)図1は、以下のものである。 (キ)図2は、以下のものである。 (ク)図3は、以下のものである。 (ケ)図6は、以下のものである。 イ 引用文献に記載された発明 (ア)上記ア(ア)の記載からして、引用文献には、 「複数のストリングを画定する太陽電池アレイを備える太陽電池パネルであって、前記複数のストリングが前記太陽電池パネルの2つの外縁部の最も近くに位置する2つの外側ストリングを含み、前記複数のストリングがそれぞれ電気的に接続され1列に配置された複数の太陽電池を備えている、太陽電池パネルと、 前記ストリングの前記複数の太陽電池を電気的に接続する複数のインターコネクタと、 前記複数のストリングから生じる電流を受ける接続箱と、 前記接続箱を前記複数のインターコネクタと電気的に結合する複数のリード線と、 前記複数のリード線を前記太陽電池および前記複数のインターコネクタから絶縁する絶縁層と、を備え、 前記複数のリード線が互いに重ならないように配置され、 前記外側ストリングのインターコネクタに接続されたリード線が、 前記各外側ストリングの前記インターコネクタに接続されたインターコネクタ接続部と、 前記接続箱に結合された接続箱接続部と、 前記インターコネクタ接続部と交差し垂直となるよう前記インターコネクタ接続部に結合された第1の結合部と、 前記第1の結合部および前記接続箱接続部に結合され、前記インターコネクタ接続部と平行に配置された第2の結合部とを備え、 前記インターコネクタ接続部、前記第1の結合部、前記第2の結合部、および前記接続箱接続部のうちの少なくとも1つが、他の部分とは分離して成形されている、太陽電池モジュール。」が記載されているものと認められる。 (イ)上記ア(イ)ないし(エ)の記載を踏まえて、図1、図2、図3及び図6を見ると、以下のことが理解できる。 a 各「ストリング」は、図面の上下(縦方向)に「電気的に接続され1列に配置された複数の太陽電池」を備えること。 以下、この方向を「第1の方向」という。 b 「複数のストリング」は、図面の左右(水平方向)に、4個配置されていること。 以下、この方向を「第2の方向」という。 c 外側ストリングの最も上側の太陽電池(以下「第1の末端太陽電池」という。)と接続箱とを電気的に結合するリード線は、インターコネクタ接続部(OWL1-1)、第1の結合部(OLW1-2-1)、第2の結合部(OLW1-2-2)、及び接続箱接続部(OLW1-3)を備えること。 d 図3及び図6の配置関係からして、 インターコネクタ接続部(OWL1-1)は、外側ストリングの第1の末端太陽電池と重ならない位置でインターコネクタと電気的に接続し、 第1の結合部(OLW1-2-1)は、インターコネクタ接続部(OWL1-1)と交差し、他の太陽電池と重ならないように第1の方向に延在し、 第2の結合部(OLW1-2-2)は、第1の結合部(OLW1-2-1)及び 接続箱接続部(OLW1-3)と結合し、インターコネクタ接続部(OWL1-1)と平行に、かつ、内側ストリングの最も上側の太陽電池(以下「第2の末端太陽電池」という。)と重なるように第2の方向に延在し、 接続箱接続部(OLW1-3)は、第1の方向に延在して接続箱と電気的に接続し、 第2の結合部(OLW1-2-2)は、第2の末端太陽電池と重なる位置で接続箱接続部(OLW1-3)と電気的に接続していること。 e 上記ア(エ)の記載からして、「外側ストリングのインターコネクタに接続されたリード線」を構成する、インターコネクタ接続部(OWL1-1)、第1の結合部(OLW1-2-1)、第2の結合部(OLW1-2-2)及び接続箱接続部(OLW1-3)は一体(単体)として形成されてもよく、または、少なくとも1つが、他の各部とは分離した部材、例えば、4個の部材からなり、それらが接合されたもの、つまり、3カ所の接合部を有するものであってもよいこと。 (ウ)上記(ア)及び(イ)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「複数のストリングを画定する太陽電池アレイを備える太陽電池パネルであって、前記複数のストリングが第2の方向に配置された2つの外側ストリング及び2つの内側ストリングを含み、前記複数のストリングがそれぞれ第1の方向に電気的に接続された複数の太陽電池を備えている、太陽電池パネルと、 前記ストリングの前記複数の太陽電池を電気的に接続する複数のインターコネクタと、 前記複数のストリングから生じる電流を受ける接続箱と、 前記接続箱を前記複数のインターコネクタと電気的に結合する複数のリード線と、 前記複数のリード線を前記太陽電池および前記複数のインターコネクタから絶縁する絶縁層と、を備え、 前記複数のリード線が互いに重ならないように配置され、 前記外側ストリングのインターコネクタに接続されたリード線は、 インターコネクタ接続部(OWL1-1)と、第1の結合部(OLW1-2-1)と、第2の結合部(OLW1-2-2)と、接続箱接続部(OLW1-3)とからなり、 前記インターコネクタ接続部(OWL1-1)は、 外側ストリングの第1の末端太陽電池と重ならない位置でインターコネクタと電気的に接続し、 前記第1の結合部(OLW1-2-1)は、前記インターコネクタ接続部(OWL1-1)と交差し、他の太陽電池と重ならないように第1の方向に延在し、 前記第2の結合部(OLW1-2-2)は、前記第1の結合部(OLW1-2-1)及び前記接続箱接続部(OLW1-3)と結合し、前記インターコネクタ接続部(OWL1-1)と平行に、かつ、内側ストリングの第2の末端太陽電池と重なるように第2の方向に延在し、 前記接続箱接続部(OLW1-3)は、第1の方向に延在して前記接続箱と電気的に接続し、 前記第2の結合部(OLW1-2-2)は、前記第2の末端太陽電池と重なる位置で前記接続箱接続部(OLW1-3)と電気的に接続している、太陽電池モジュール。」 (3)対比 ア 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 (ア)引用発明の「太陽電池」及び「第2の方向に配置された2つの外側ストリング及び2つの内側ストリング」は、それぞれ、本願補正発明の「太陽電池セル」及び「太陽電池ストリング」に相当する。 また、引用発明の「(複数の)ストリング」は、「それぞれ第1の方向に電気的に接続された複数の太陽電池を備え」るものである。 よって、本願補正発明と引用発明とは、「複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群」を備える点で一致する。 (イ)a 引用発明の「複数のストリングから生じる電流を受ける接続箱」は、本願補正発明の「太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックス」に相当する。 b 引用発明の「外側ストリングの第1の末端太陽電池」は、本願補正発明の「第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セル」に相当する。 (ウ)a 引用発明の「外側ストリングのインターコネクタに接続されたリード線」は、「外側ストリングの第1の末端太陽電池」と「接続箱」を電気的に接続するものであるから、本願補正発明の「第1の末端太陽電池セルと、端子ボックスとを接続するための配線タブ」に相当する。 b 引用発明の「インターコネクタ接続部(OWL1-1)」は、「外側ストリングの第1の末端太陽電池と重ならない位置でインターコネクタと接続し」ているものである。 c よって、本願補正発明と引用発明とは、「第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されている」点で一致する。 (エ)ここで、上記(ア)ないし(ウ)を整理すると、本願補正発明と引用発明とは、 「複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群と、 前記太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックスと、 前記第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて前記第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、 前記端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されている」点で一致する。 (オ)a 引用発明の「『外側ストリングの第1の末端太陽電池と重ならない位置でインターコネクタと電気的に接続し』ている『インターコネクタ接続部(OWL1-1)』」は、本願補正発明の「第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブ」に相当する。 b 引用発明の「『第1の方向に延在して接続箱と電気的に接続する』『接続箱接続部(OLW1-3)』」は、本願補正発明の「端子ボックスに接続される第3のタブ」に相当する。 c 引用発明の「(接合した)第1の結合部(OLW1-2-1)と第2の結合部(OLW1-2-2)」(図6の左側でL字状に描かれた部材)は、本願補正発明の「第1のタブと第3のタブとの間を接続する第2のタブ」に相当する。 d 引用発明の「第2の結合部(OLW1-2-2)」は、「前記第1の結合部(OLW1-2-1)及び前記接続箱接続部(OLW1-3)と結合し」「第2の末端太陽電池と重なる位置で接続箱接続部(OLW1-3)と電気的に接続している」ところ、「第2の結合部(OLW1-2-2)」と「接続箱接続部(OLW1-3)」が接続する箇所は、本願補正発明の「第2の接続部」に相当する。 よって、本願補正発明と引用発明とは、「第2の接続部は、第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なって」いる点で一致する。 e また、引用発明の「第2の結合部(OLW1-2-2)」と「第1の結合部(OLW1-2-1)」が接続する箇所は、本願補正発明の「第1の接続部」に相当する。 f よって、本願補正発明と引用発明とは、「配線タブは、第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブと、端子ボックスに接続される第3のタブと、前記第1のタブと前記第3のタブとの間を接続する第2のタブとを有し、 前記第1のタブと前記第2のタブとは第1の接続部で接続され、 前記第2のタブと前記第3のタブとは第2の接続部で接続されており、 前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なって(いる)」点で一致する。 (カ)引用発明の「接続箱接続部(OLW1-3)」は、本願補正発明の「第3のタブ」に相当し、「第1の方向に延在して」いるから、本願補正発明と引用発明とは、「第3のタブは、所定方向に延在している」点で一致する。 (キ)上記(ア)ないし(カ)の検討からして、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 〈一致点〉 「複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群と、 前記太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックスと、 前記第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて前記第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、前記端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されており、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブと、前記端子ボックスに接続される第3のタブと、前記第1のタブと前記第3のタブとの間を接続する第2のタブとを有し、 前記第1のタブと前記第2のタブとは第1の接続部で接続され、 前記第2のタブと前記第3のタブとは第2の接続部で接続されており、 前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なっており、 前記第3のタブは、所定方向に延在している、太陽電池モジュール。」 (ク)一方で、両者は、以下の点で相違する。 〈相違点〉 第3のタブが延在する方向に関して、 本願補正発明は、「第2の方向」であるのに対して、 引用発明は、第1の方向である点。 (4)判断 ア 上記〈相違点〉について検討する。 (ア)太陽電池モジュールにおける「接続箱」の位置は、太陽電池の特性(両面受光型など)や設置スペース等を考慮して適宜変更し得るものであるから、引用発明の「接続箱接続部(OLW1-3)」を、どの方向に延在させるかは、当業者が引用発明を実施する際に、接続箱の位置等を勘案して適宜変更し得る設計事項であり、第2の方向に延在させることに何ら困難性は認められず、そのことを妨げる特段の事情は認められない。 (イ)以上の検討によれば、引用発明において、上記〈相違点〉に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 イ 効果 本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ まとめ 本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)審判請求書における主張について 請求人は、「前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なっている。」との構成によって、プレス加工の際にかかる応力を第3のタブによって分散することができますので、第2の接続部25の段差部に大きな応力がかかることを抑制することができるという格別の作用効果を奏する旨主張する(「3.本願発明が特許されるべき理由(1)」を参照。)。 ア しかしながら、引用発明においては、「第2の結合部(OLW1-2-2)」は第2の末端太陽電池の上を第2の方向に延在するとともに、該太陽電池との間に「絶縁層」が介在することから、プレス加工の際に応力が分散されることは、当業者が予測し得ることであり、顕著な効果であるとはいえない(必要ならば、下記の文献を参照。)。 また、本願明細書には、第2の接続部を、太陽電池セルに重ねることについて、その技術的意義については、特段明記されていない。 例えば、以下の文献を参照、 特開2008-235818号公報(【0012】) 特開2008-300449号公報(【0075】) ちなみに、特開2008-235818号公報の【0012】には、以下の記載がある。 「接続部材と第1の太陽電池セルの主面との間に緩衝材を挿入することにより、接続部材とバスバー電極との交差部分への圧力集中が抑えられる。また、緩衝材を挿入することにより接続部材と太陽電池セルの主面とが直接接触することが抑制される。よって、交差部分への応力集中又は接続部材と太陽電池セルの直接接触によるセル割れを抑制することができる。したがって、本発明によれば、セル割れを抑制し、生産性を向上させた太陽電池モジュールを提供することができる。」 また、特開2008-300449号公報の【0075】には、以下の記載がある。 「ここで、太陽電池Cの一部に応力が集中することにより発生する割れや欠けは、特に、太陽電池Cの端部において発生しやすい。従って、太陽電池Cの端部に構成部材をオーバーラップさせないことが望ましい。」 イ よって、請求人の主張は、採用できない。 4 令和2年4月15日提出の上申書における主張について 請求人は、接続部を太陽電池セルに重ねると太陽電池セルにダメージを与えてしまうことから、接続部をわざわざ太陽電池セルに重ねるという着想が生じることはありえない旨主張する(第2頁中段)。 (1)引用発明の「第2の結合部(OLW1-2-2)」は、「第2の末端太陽電池と重なる位置で接続箱接続部(OLW1-3)と電気的に接続している」ものであり、この点は、実質的な相違点ではない。 また、本願明細書には、第2の接続部を太陽電池セルに重ねることについて、その技術的意義については、特段明記されていない。 (2)よって、請求人の主張は、採用できない。 5 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて、本件補正前の請求項1に係る発明として記載したとおりのものである。 念のため、本願発明を再掲すると、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の太陽電池セルを第1の方向に配列した太陽電池ストリングを、第2の方向に複数配列した太陽電池群と、 前記太陽電池群からの電力を外部に出力するための端子ボックスと、 前記第2の方向の端部に位置する太陽電池ストリングにおいて前記第1の方向の端部に位置する第1の末端太陽電池セルと、前記端子ボックスとを接続するための配線タブとを備え、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルと重ならないように配置されており、 前記配線タブは、前記第1の末端太陽電池セルに接続される第1のタブと、前記端子ボックスに接続される第3のタブと、前記第1のタブと前記第3のタブとの間を接続する第2のタブとを有し、 前記第1のタブと前記第2のタブとは第1の接続部で接続され、 前記第2のタブと前記第3のタブとは第2の接続部で接続されており、 前記第2の接続部は、前記第1の末端太陽電池セルを含む太陽電池ストリングとは別の太陽電池ストリングに含まれる太陽電池セルであって前記第2の方向において前記第1の末端太陽電池セルに隣接する第2の末端太陽電池セルと重なっている、太陽電池モジュール。」 2 対比・判断 本願発明は、前記「第2 2 補正目的」の検討によれば、本願補正発明から「第3のタブは、第2の方向に延在している、」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明と引用発明との間には、前記「第2 3 独立特許要件」で検討した相違点はなく、本願発明は引用発明である。 仮に、相違点であるとしても、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3 独立特許要件」で検討したとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものあるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 3 令和元年5月17日提出の意見書における主張について 請求人は、接続部を太陽電池セルに重ねると太陽電池セルにダメージを与えてしまうことから、接続部をわざわざ太陽電池セルに重ねるという着想が生じることはありえない旨主張する(第2頁中段)。 (1)しかしながら、引用発明の「第2の結合部(OLW1-2-2)」は、「第2の末端太陽電池と重なる位置で接続箱接続部(OLW1-3)と電気的に接続している」ものであり、この点は、実質的な相違点ではない。 (2)よって、請求人の主張は、採用できない。 4 まとめ よって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-08-26 |
結審通知日 | 2020-09-01 |
審決日 | 2020-09-16 |
出願番号 | 特願2016-539818(P2016-539818) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 波多江 進、里村 利光 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 野村 伸雄 |
発明の名称 | 太陽電池モジュール |
代理人 | 寺谷 英作 |
代理人 | 道坂 伸一 |
代理人 | 新居 広守 |