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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1367785
審判番号 不服2020-407  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-10 
確定日 2020-11-05 
事件の表示 特願2015-213604「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 85018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年10月30日の出願であって、令和1年6月13日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月5日に手続補正がなされたが、同年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和2年1月10日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

第2 令和2年1月10日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和2年1月10日の手続補正を却下する。
[理由]
令和2年1月10日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前には、
「【請求項1】
ケースとカバーとが係合することにより構成され、かつ内部に収容空間を形成する装置本体と、
前記収容空間に収容される基板と
を備えた電力変換装置において、
前記ケース及び前記カバーの一方に形成され、かつ前記基板の装着時に弾性変形した後に自身の弾性復元力により前記基板の縁部に係止して該基板を保持する保持部と、
前記ケース及び前記カバーの他方に形成され、かつ前記装置本体を構成する際に前記保持部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する規制部と
を備え、
前記保持部は、前記ケース及び前記カバーの一方において、外壁部よりも内方にて先端部分が該外壁部よりも前記ケース及び前記カバーの他方に向けて突出する態様で立設された脚部と、該先端部分に形成された爪部とを有し、前記基板の装着時に前記脚部が弾性変形した後に弾性復元力により前記基板の縁部に当接することで前記爪部が前記基板に係止して保持し、
前記規制部は、前記ケース及び前記カバーの他方において前記ケース及び前記カバーの一方に向けて突出する態様で設けられ、前記装置本体を構成する際に、前記外壁部と前記保持部との間に進入して前記脚部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制することを特徴とする電力変換装置。」

とあったものを、

「【請求項1】
ケースとカバーとが係合することにより構成され、かつ内部に収容空間を形成する装置本体と、
前記収容空間に収容される基板と
を備えた電力変換装置において、
前記ケース及び前記カバーの一方に形成され、かつ前記基板の装着時に弾性変形した後に自身の弾性復元力により前記基板の縁部に係止して該基板を保持する保持部と、
前記ケース及び前記カバーの他方に形成され、かつ前記装置本体を構成する際に前記保持部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する規制部と
を備え、
前記保持部は、前記ケース及び前記カバーの一方において、外壁部よりも内方にて先端部分が該外壁部よりも前記ケース及び前記カバーの他方に向けて突出する態様で立設された脚部と、該先端部分に形成された爪部とを有し、前記基板の装着時に前記脚部が弾性変形した後に弾性復元力により前記基板の縁部に当接することで前記爪部が前記基板に係止して保持し、
前記規制部は、前記ケース及び前記カバーの他方の外壁部を構成する態様で前記ケース及び前記カバーの他方の縁部より前記ケース及び前記カバーの一方に向けて突出する態様で設けられ、前記装置本体を構成する際に、前記ケース及び前記カバーの一方の外壁部と前記保持部との間に進入して前記脚部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制することを特徴とする電力変換装置。」
と補正するものである(なお、下線部は補正された箇所を示す。)。

そこで、本件補正前と補正後の請求項1を対比してみると、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、ケース及びカバーの他方においてケース及びカバーの一方に向けて突出する態様で設けられる「規制部」について、ケース及びカバーの他方の「外壁部を構成する態様」でケース及びカバーの他方の「縁部」より突出する旨の事項を付加するものである。
この点について、請求人は審判請求書において、「ケース及びカバーの他方の外壁部を構成する規制部が、ケース及びカバーの一方の外壁部と保持部との間に侵入して脚部を押圧することになり、ケース及びカバー双方の外壁部の強度により基板を固定する爪部の剛性を確保することができる、という作用効果を奏する」と主張している。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、段落【0026】に「規制部60は、図には明示していないが、カバー40の前方縁部、上方縁部及び下方縁部に一体的に設けてある。」と記載されており、規制部がカバーの「縁部」からケースに向けて突出するように形成されていることは読み取れるものの、カバーの「外壁を構成」することの記載はない。また、図3や図4をみても、紙面に垂直な方向において、ケースの外壁部と保持部との間に進入して脚部が基板から離隔する方向に変形することを規制する請求項1に記載の「規制部」に相当する部分がカバーの縁部に対してどのように設けられているのかも不明であり、カバーの「外壁部を構成」しているとまではいえない。
したがって、当初明細書等には、規制部がカバー又はケースの「外壁を構成」すること、すなわち、カバー又はケースの外壁が規制部を兼ねることは記載されておらず、また、当初明細書等からみて自明なことともいえず、当該補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

令和2年1月10日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年8月5日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ケースとカバーとが係合することにより構成され、かつ内部に収容空間を形成する装置本体と、
前記収容空間に収容される基板と
を備えた電力変換装置において、
前記ケース及び前記カバーの一方に形成され、かつ前記基板の装着時に弾性変形した後に自身の弾性復元力により前記基板の縁部に係止して該基板を保持する保持部と、
前記ケース及び前記カバーの他方に形成され、かつ前記装置本体を構成する際に前記保持部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する規制部と
を備え、
前記保持部は、前記ケース及び前記カバーの一方において、外壁部よりも内方にて先端部分が該外壁部よりも前記ケース及び前記カバーの他方に向けて突出する態様で立設された脚部と、該先端部分に形成された爪部とを有し、前記基板の装着時に前記脚部が弾性変形した後に弾性復元力により前記基板の縁部に当接することで前記爪部が前記基板に係止して保持し、
前記規制部は、前記ケース及び前記カバーの他方において前記ケース及び前記カバーの一方に向けて突出する態様で設けられ、前記装置本体を構成する際に、前記外壁部と前記保持部との間に進入して前記脚部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制することを特徴とする電力変換装置。」

第4 原査定の拒絶の理由について

1.原査定の理由の概要
原査定の理由である令和1年6月13日付け拒絶理由通知(令和1年10月8日付け拒絶査定)に記載した理由のうち、理由2(進歩性)の概要は次のとおりである。
「この出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平10-070381号公報 」

2.当審の判断
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-70381号公報(以下、「引用例」という。)には、「配線基板の固定構造」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 各種電子部品を装着した配線基板を電子機器等に固定する配線基板の固定構造において、
前記配線基板を収納する下ケース及び該下ケースを覆い且つ係止する上ケースとからなるケースと、前記下ケース内に形成され、前記配線基板を載置する台座と前記配線基板を係止する可撓性を有する係止爪とからなる複数の係止突起と、前記上ケースに形成され、前記下ケースを覆った状態で前記係止爪を押圧して前記配線基板を前記台座との間に固定する押圧リブとを備えていることを特徴とする配線基板の固定構造。」

イ.「【0017】図1に示すように本実施の形態例における固定構造1は、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるケース2に適用されている。このケース2は、合成樹脂で一体成形された上ケース2aと下ケース2bとから構成され、上ケース2aで下ケース2bを閉塞、すなわち覆うことにより、下ケース2b内に組付けた配線基板3を固定するようになっている。上ケース2aは、天板部11と、この天板部11の周囲に形成された側板部12a?12dと、側板部12aに形成された係止爪13a,13bと、天板部11の下側から下方に向けて形成された4本の押圧リブ14a?14dを備えている。なお、天板部11に形成したコネクタ孔15は、配線基板3に設けられるコネクタ(図示省略)を挿通させるためのものである。
【0018】一方、下ケース2bは、合成樹脂を箱型に一体成形したものであり、底板部21と、この底板部21の周囲に形成された側板部22a?22dと、側板部22aに形成された係止孔23a,23bと、側板部22bに形成された係止孔23c,23dと、底板部21の四隅に形成された係止突起24a?24d(図2参照)等を備えている。また、側板部22a,22bの外側には、下ケース2bを例えば電気接続箱等に固定する係止部25a?25dが設けられている。
【0019】次に、上ケース2aに形成した押圧リブ14a?14dと、下ケース2bに形成した係止突起24a?24dについて説明する。押圧リブ14a?14dは、係止突起24a?24dとの共働作用により後述する配線基板3をガタ付きなく固定する作用を有するものである。各押圧リブ14a?14dは、図3に示すように外側面aが垂直で内側面bが先細りのテーパ面になっている。そして、各押圧リブ14a?14dは、その先端部が側板部22a?22dの内側面と係止突起24a?24dとの間に形成される隙間Gに差し込まれる位置に形成されている。
【0020】また、図2に示すように係止突起24a?24dは、配線基板3を係止する作用を有するものであり、下ケース2bを構成する底板部21上の四隅に形成されている。以下、係止突起24a?24dの構成を係止突起24aを一例にして説明すると、図3に示すように台座26上に可撓性を有する係止爪27を設けた構成になっている。台座26と係止爪27の背面側は垂直の壁面に形成され、この壁面と側板部22aの内側面との間に隙間Gが形成されている。係止突起24a?24dは、各係止爪27が対向するように底板部21上に配設されている(図2参照)。」

ウ.「【0021】次に、配線基板3の固定作用を説明する。図3に示すように配線基板3を固定する場合は、係止爪27上に配線基板3を載せ、そのまま下方に押し込むようにする。係止爪27は可撓性を有する上に、その上面にテーパ面が形成されているので、配線基板3の押し込みによって想像線で示すように撓み変形し、配線基板3が台座26上に載置された状態で実線で示すように元の形状に復帰する。この際、隙間Gは一旦狭まるが、係止爪27の形状復帰に伴い、再び元の隙間Gになる。
【0022】このようにして、4個の係止突起24a?24dに配線基板3を仮係止させた後、図4に示すように上ケース2aを被せる。この際、押圧リブ14a,14bは下ケース2bの側板部22aに沿い、押圧リブ14c,14dは下ケース2bの側板部22cに沿うように被せられる。したがって、押圧リブ14a?14dは円滑に下ケース2b内に押し込まれ、この押し込みを継続することによって、上ケース2aの係止爪13a?13dのテーパ面が側板部22a?22dの上端にかかり、押し込み時の抵抗が増すようになる。この状態で更に押し込むと、係止爪13bが想像線で示すように外側に撓み変形し、係止爪13bが側板部22a上端に乗り上がるようになる。そして、図5に示すように更に押し込み続けることにより係止爪13bが、係止孔23bに係止され、上ケース2a及び下ケース2bが一体化される。
【0023】一方、押圧リブ14bの先端部の厚さは、隙間Gより小さいので上ケース2aの押し込みにより隙間G内に容易に挿入される。しかし、押圧リブ14bの内側面bはテーパ面に形成されているので、押圧リブ14bの押し込みにより係止爪27を内側方向に押圧することになる。このような、係止爪27の押圧は、押圧リブ14a?14dと各係止突起24a?24dについて同時に行われる。したがって、配線基板3は各係止突起24a?24dの台座部26上に載置され、しかも係止爪27により押さえ込まれるので、ガタ付きなく下ケース2bに固定される。」

・上記引用例に記載の「配線基板の固定構造」は、上記「ア.」?「ウ.」の記載事項、及び図1?5によれば、各種電子部品を装着した配線基板3を電子機器等に固定する配線基板3の固定構造であり、配線基板3を収納する下ケース2b及び該下ケース2bを覆い且つ係止する上ケース2aとからなり、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるケース2と、下ケース2b内に上方に向けて突出するように形成され、配線基板3を載置する台座26と配線基板3を係止する可撓性を有する係止爪27とからなる4つの係止突起24a?24dと、上ケース2aに下方に向けて突出するように形成され、下ケース2bを覆った状態で各係止爪27を押圧して配線基板3を台座26との間に固定する4本の押圧リブ14a?14dとを備えるものである。
・上記「イ.」の段落【0020】の記載事項、および図2?5によれば、台座26と係止爪27とからなる各係止突起24a?24dは、下ケース2bの底板部21上の四隅に上方に向けて突出するように形成され、当該各係止突起24a?24dの背面と下ケース2bの側板部22aの内面側との間に隙間Gがそれぞれ形成されてなるものである。
・上記「ウ.」の段落【0021】の記載事項、及び図3によれば、配線基板3の係止(固定)は、係止爪27上に配線基板3を載せそのまま下方に押し込んで係止爪27を撓み変形させ、配線基板3が台座26上に載置された状態で係止爪27が形状復帰することにより配線基板3の縁部に当接することで行われるものである。
・上記「ウ.」の段落【0022】?【0023】の記載事項、及び図4?5によれば、上ケース2aを下ケース2bに係止させて両者を一体化させる際、押圧リブ14a?14dが各隙間G内に挿入され、当該押圧リブ14a?14dが各係止爪27を内側方向に押圧することにより、配線基板3は各係止突起24a?24dの台座26上にガタ付きなく固定されてなるものである。

したがって、各種電子部品を装着した配線基板が固定される「電子機器」を発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「下ケース及び該下ケースを覆い且つ係止する上ケースとからなり、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるケースと、
前記ケース内に収納され、各種電子部品を装着した配線基板と、
を備えた電子機器において、
前記下ケース内の底板部上の四隅に上方に向けて突出するように形成され、前記配線基板を載置する台座と前記配線基板を係止する可撓性を有する係止爪とからなる4つの係止突起であって、各係止爪上に前記配線基板を載せそのまま下方に押し込んで各係止爪を撓み変形させ、前記配線基板が各台座上に載置された状態で各係止爪が形状復帰することにより前記配線基板の縁部に当接して係止し、前記配線基板を固定する係止突起と、
前記上ケースに下方に向けて突出するように形成された4本の押圧リブであって、前記上ケースを前記下ケースに係止させて両者を一体化させる際、各押圧リブが前記各係止突起の背面と前記下ケースの側板部の内面側との間の各隙間内に挿入され、各押圧リブが前記各係止爪を内側方向に押圧することにより、前記配線基板を前記各係止突起の各台座上にガタ付きなく固定する押圧リブと、を備える電子機器。」

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「下ケース及び該下ケースを覆い且つ係止する上ケースとからなり、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるケースと、前記ケース内に収納され、各種電子部品を装着した配線基板と、を備えた電子機器において」によれば、
「下ケース」、「上ケース」、は、それぞれ本願発明でいう「ケース」、「カバー」に相当する。また、下ケース及び上ケースからなる「ケース」は、その内部に配線基板を収納する空間が形成されることは明らかであり、本願発明でいう「装置本体」に相当するものである。さらに、ケース内に収納される「配線基板」は、本願発明でいう「基板」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「ケースとカバーとが係合することにより構成され、かつ内部に収容空間を形成する装置本体と、前記収容空間に収容される基板とを備えた装置」である点で共通する。
ただし、当該装置について、本願発明では、「電力変換」装置であると特定するのに対し、引用発明では、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるものであるものの、そのような明確な特定を有していない点で相違するといえる。

イ.引用発明における「前記下ケース内の底板部上の四隅に上方に向けて突出するように形成され、前記配線基板を載置する台座と前記配線基板を係止する可撓性を有する係止爪とからなる4つの係止突起であって、各係止爪上に前記配線基板を載せそのまま下方に押し込んで各係止爪を撓み変形させ、前記配線基板が各台座上に載置された状態で各係止爪が形状復帰することにより前記配線基板の縁部に当接して係止し、前記配線基板を固定する係止突起と、前記上ケースに下方に向けて突出するように形成された4本の押圧リブであって、前記上ケースを前記下ケースに係止させて両者を一体化させる際、各押圧リブが前記各係止突起の背面と前記下ケースの側板部の内面側との間の各隙間内に挿入され・・」によれば、
配線基板を係止する可撓性を有する「係止爪」は、本願発明でいう「爪部」に相当する。また、「係止爪」における下方には可撓性を付与するための「脚部」を有することも自明なこと(引用例の図3等も参照)であり、台座と係止爪とからなり、上方に向けて突出するように形成された「係止突起」は、本願発明でいう「保持部」に相当するといえる。
ここで、引用発明における「係止突起」の背面と下ケースの側板部の内面側との間に押圧リブが挿入される隙間があることからも明らかなように、「係止突起」は、下ケースの側板部よりも内方に設けられてなるものである。
そして、引用発明の「係止突起」にあっても、本願発明の「保持部」と同様に、配線基板の装着時に撓み変形(弾性変形)した後に自身の弾性復元力により形状復帰して配線基板の縁部に当接して係止し、当該配線基板を固定(保持)するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ケース及び前記カバーの一方に形成され、かつ前記基板の装着時に弾性変形した後に自身の弾性復元力により前記基板の縁部に係止して該基板を保持する保持部」を備える点で一致し、さらに、「前記保持部は、前記ケース及び前記カバーの一方において、外壁部よりも内方にて先端部分が前記ケース及び前記カバーの他方に向けて突出する態様で立設された脚部と、該先端部分に形成された爪部とを有し、前記基板の装着時に前記脚部が弾性変形した後に弾性復元力により前記基板の縁部に当接することで前記爪部が前記基板に係止して保持し」てなるものである点で共通する。
ただし、保持部について、本願発明では、先端部分が「外壁部よりも」ケース及びカバーの他方に向けて突出する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違する。

ウ.引用発明における「前記上ケースに下方に向けて突出するように形成された4本の押圧リブであって、前記上ケースを前記下ケースに係止させて両者を一体化させる際、各押圧リブが前記各係止突起の背面と前記下ケースの側板部の内面側との間の各隙間内に挿入され、各押圧リブが前記各係止爪を内側方向に押圧することにより、前記配線基板を前記各係止突起の各台座上にガタ付きなく固定する押圧リブと」によれば、
上ケースに下方に向けて突出するように形成された4本の「押圧リブ」は、上ケースを下ケースに係止させて両者を一体化させる際、係止突起の背面と下ケースの側板部の内面側との間の隙間に進入して、係止爪を内側方向に押圧することにより、配線基板を係止突起の台座上にガタ付きなく固定するものであり、本願発明でいう「規制部」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ケース及び前記カバーの他方に形成され、かつ前記装置本体を構成する際に前記保持部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する規制部」を備える点、さらに、「前記規制部は、前記ケース及び前記カバーの他方において前記ケース及び前記カバーの一方に向けて突出する態様で設けられ、前記装置本体を構成する際に、前記外壁部と前記保持部との間に進入して前記脚部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する」ものである点で一致する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「ケースとカバーとが係合することにより構成され、かつ内部に収容空間を形成する装置本体と、
前記収容空間に収容される基板と
を備えた装置において、
前記ケース及び前記カバーの一方に形成され、かつ前記基板の装着時に弾性変形した後に自身の弾性復元力により前記基板の縁部に係止して該基板を保持する保持部と、
前記ケース及び前記カバーの他方に形成され、かつ前記装置本体を構成する際に前記保持部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制する規制部と
を備え、
前記保持部は、前記ケース及び前記カバーの一方において、外壁部よりも内方にて先端部分が前記ケース及び前記カバーの他方に向けて突出する態様で立設された脚部と、該先端部分に形成された爪部とを有し、前記基板の装着時に前記脚部が弾性変形した後に弾性復元力により前記基板の縁部に当接することで前記爪部が前記基板に係止して保持し、
前記規制部は、前記ケース及び前記カバーの他方において前記ケース及び前記カバーの一方に向けて突出する態様で設けられ、前記装置本体を構成する際に、前記外壁部と前記保持部との間に進入して前記脚部が前記基板から離隔する方向に変形することを規制することを特徴とする装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
当該装置が、本願発明では、「電力変換」装置であると特定するのに対し、引用発明では、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるものであるものの、そのような明確な特定を有していない点。

[相違点2]
保持部について、本願発明では、先端部分が「外壁部よりも」ケース及びカバーの他方に向けて突出する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(3)判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
引用発明では、自動車に搭載される電気接続箱等に組付けられるものであるところ、引用例の段落【0002】には、電気接続箱等に組付けられる電子機器として「走行制御用」であることも記載されており、ケース内に収納される配線基板に装着される各種電子部品としては走行制御のための例えばインバータを構成するスイッチング素子などが想定されるものといえ、この点においてかかる相違点1は実質的な相違ではない。また、たとえ実質的な相違にあたるとしても、上述のようにケース内に収納される配線基板に装着される各種電子部品を走行制御のための例えばインバータを構成するスイッチング素子などとし、本願発明でいう「電力変換」装置に係るものとすることは当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
引用発明において、係止突起の先端部分(係止爪)を下ケースの側板部に対してどの程度の高さ位置とするかは、配線基板の配置位置などに応じて定められるべき設計的事項にすぎず、先端部分(係止爪)を下ケースの側板部よりも上ケースに向けて突出するように構成することも当業者が適宜なし得ることである。なお、この点について必要であれば、例えば原査定時に提示した特開2007-123749号公報の特に図1?3〔係止爪部材の先端部分(係止爪5b)がケース1の外壁部よりもカバー2に向けて突出している点〕を参照されたい。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 その他

なお、令和2年5月22日に提出の上申書において、請求人は補正案を提示しているので、一応検討する。
補正案によれば、請求項1における「規制部」について、ケース及びカバーの他方の「縁部より」ケース及びカバーの一方の向けて突出することを特定しようとするものである。
この点についての根拠として、本願明細書の段落【0026】には「・・規制部60は、図には明示していないが、カバー40の前方縁部、上方縁部及び下方縁部に一体的に設けてある。このような規制部60は、カバー40より右方に向けて突出する態様で設けてある。」と記載されている。
しかしながら、段落【0016】には「・・保持部30は、図2において明確に明示していないが、ケース20の前方縁部、上方縁部及び下方縁部に一体的に設けてある。このような保持部30は、図3に示すように、脚部31と爪部32とを有している。」とも記載されており、「保持部30」のように、ケースの外壁部よりも内方にて立設されてなるものについても、ケースの「縁部」に設けているとしていることから、補正案の請求項1でいうケース及びカバーの他方の「縁部」は、ケース又はカバーの全体からみて外壁部近傍の部分を意味するものと解される。そうすると、引用発明においても、4本の「押圧リブ」は、4つの係止突起に対応する位置である上ケースの天板部の四隅、すなちわ上ケースの外板部(外壁部)近傍に形成されてなるものであることから、上ケースの「縁部」に形成されているということができるものであり、補正案で特定しようとする事項は相違点とはならない。
したがって、上記「第4」で検討した本願発明と同様、補正案の請求項1に係る発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-28 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-15 
出願番号 特願2015-213604(P2015-213604)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 561- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子  
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 石川 亮
井上 信一
発明の名称 電力変換装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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