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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1367807
審判番号 不服2019-10684  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-09 
確定日 2020-11-06 
事件の表示 特願2014-129318号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月18日出願公開、特開2016-7329号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月24日の出願であって、平成29年4月27日に手続き補正書が提出され、平成30年2月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月19日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年4月23日付け(送達日:令和1年5月9日)で、平成30年11月26日付け手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和2年2月10日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年4月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願請求項1に係る発明
令和2年4月10日付け手続補正書による補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。A?Jは分説のため当審にて付与した。)。

「A 所定の条件の成立に基づいて、始動情報を取得する始動情報取得手段と、
B 所定の上限数を限度に、前記始動情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
C 前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づき、遊技者にとって有利な特定遊技状態とするか否かの抽選を行う抽選手段と、
D 所定の開始条件が成立したことに基づいて複数の識別情報表示位置のそれぞれにおいて識別情報の可変表示を開始し、前記抽選に当選した場合に、複数の前記識別情報表示位置に停止表示される識別情報の組み合わせとして当り識別情報の組み合わせを停止表示する識別情報表示手段と、
E 前記開始条件の成立に先立って、前記始動情報を判定する先読み判定手段と、
F 前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づく保留表示を表示可能な保留表示手段と、
G 前記先読み判定手段による判定結果に基づいて、前記開始条件の成立前に前記保留表示を、通常保留表示態様または該通常保留表示態様とは異なる特別保留表示態様で表示することにより、前記特定遊技状態となる可能性を予告する保留変化予告を実行する保留変化予告制御手段と、
H 前記識別情報表示手段により前記識別情報の可変表示が開始される場合に、該可変表示に対応する前記保留表示を特定表示として所定領域に表示可能な特定表示手段と、
I 前記抽選手段および/または前記先読み判定手段による判定結果に基づいて、前記特定表示を、通常表示態様とは異なる特別表示態様で表示することにより、前記特定遊技状態となる可能性を予告する特定表示予告を実行する特定表示予告制御手段とを備えた遊技機であって、
J 前記特定表示予告制御手段は、前記識別情報の可変表示として、前記特定表示予告がその後に実行されることを示唆する識別情報であって前記当り識別情報の組み合わせを構成しない特定識別情報が、前記複数の前記識別情報表示位置の少なくとも一つに停止表示された場合に、その後該特定表示予告を実行し、
前記特定識別情報が停止表示された場合には、その後、前記特定表示予告を実行するとともに前記特定識別情報が停止表示された前記識別情報位置を含む全ての前記識別情報表示位置において前記特定識別情報以外の前記識別情報の可変表示を開始することを特徴とする、遊技機。」

第3 拒絶の理由
令和2年2月10日付けの当審における拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものを含む。

(新規性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



・請求項 1
・引用文献等 1

1.特開2013-252456号公報

第4 引用文献に記載された事項

1 引用文献1
当審における拒絶の理由(令和2年2月10日付け拒絶理由通知)に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された特開2013-252456号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

(1)「【0012】
[パチンコ遊技機1の概略構成例]
まず、図1を参照しつつ、パチンコ遊技機1の概略構成について説明する。ここで、図1は、パチンコ遊技機1の概略正面図である。パチンコ遊技機1は、本実施形態では、1種2種混合タイプと呼ばれるパチンコ遊技機である。図1に示されるように、パチンコ遊技機1は、入賞や判定に関する役物等が設けられた遊技盤2と、遊技盤2を囲む枠部材3とを備えている。枠部材3は、遊技盤2と所定の間隔を隔てて平行配置された透明なガラス板を支持しており、このガラス板と遊技盤2とによって、遊技球が流下可能な遊技領域10が形成されている。」

(2)「【0065】
メインCPU101は、第1始動口スイッチ111からの検知信号が入力されたタイミングで取得情報としての各種乱数を取得し、取得した乱数を用いて第1特別図柄判定を実行する。また、メインCPU101は、第2始動口スイッチ112からの検知信号が入力されたタイミングで取得情報としての各種乱数を取得し、取得した乱数を用いて第2特別図柄判定を実行する。そして、大当たりであると判定した場合には、大入賞口制御部116を介して大入賞口13を開閉する。」

(3)「【0076】
画像音響制御基板140によって、後述する装飾図柄の変動表示制御や保留アイコン等の表示制御が行われる。」

(4)「【0077】
[本実施形態のパチンコ遊技機1の動作概要]
次に、本実施形態に係るパチンコ遊技機1の動作概要について説明する。図6は、本実施形態に係るパチンコ遊技機1の動作概要を示す図である。図6に示すように、遊技球が第1始動口11に入賞した場合、第1始動口スイッチ111が当該遊技球の入賞を検知し、当該検知情報に基づいて第1特別図柄判定の権利が、保留球として遊技制御部(遊技制御基板100)において保留される。保留された第1特別図柄判定の権利(保留球)が消化されて当たり判定が行われるとともに、当該第1特別図柄判定の権利に基づく第1特別図柄の変動制御が開始される。なお、第1特別図柄判定の権利が保留される際に、当該権利に対して事前判定処理が行われ、事前判定情報が演出制御部に送信される。事前判定処理は、保留された権利に対する当たり判定の結果や、当該権利に基づく特別図柄の変動が開始されたときの特別図柄の変動パターン等を事前に判定するための処理である。
・・・
【0079】
また、第1特別図柄が変動開始した場合に、第1特別図柄が変動開始することを示す変動開始コマンドが演出制御部に送信され、このコマンドに応じて第1特別図柄に対応する装飾図柄が変動開始される。当該変動開始コマンドには、第1特別図柄判定の結果が当たりか否かを示す当たり判定情報が含まれる。演出制御部においては、当該当たり判定情報に基づいて、現在変動中の第1特別図柄に対応する保留アイコン(当該保留アイコン)の表示制御が行われる。また、第1特別図柄が変動停止した場合に、第1特別図柄が停止することを示す変動停止コマンドが演出制御部に送信され、このコマンドに応じて装飾図柄が変動停止される。
・・・
【0081】
図7に示すように、メイン液晶表示装置5には、装飾図柄51と、保留アイコン52とが表示される。装飾図柄51は、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域に表示される図柄によって構成される。以下では、左領域51aに表示される図柄を左装飾図柄、中領域51bに表示される図柄を中装飾図柄、右領域51cに表示される図柄を右装飾図柄と呼ぶことがある。
【0082】
また、保留アイコン52は、第1特別図柄判定の権利を示す画像である。現在変動中の第1特別図柄に係る第1特別図柄判定の権利を除くと、第1特別図柄判定の権利は、最大で4つ保留される。図7では4つの保留アイコン521?524が表示されており、1つの当該保留(当該変動)アイコン520が表示されている。
【0083】
保留アイコン52は、右から順に消化される。すなわち、当該保留アイコン520は、現在変動中の特別図柄に対応する画像である。保留アイコン521は、現在変動中の特別図柄の変動が終了した後、次に消化される第1特別図柄判定の権利を示す画像である。保留アイコン522は、保留アイコン521に係る第1特別図柄の変動が終了した後、次に消化される第1特別図柄判定の権利を示す画像である。保留アイコン523は、保留アイコン522に係る第1特別図柄の変動が終了した後、次に消化される第1特別図柄判定の権利を示す画像である。保留アイコン524は、保留アイコン523に係る第1特別図柄の変動が終了した後、次に消化される第1特別図柄判定の権利を示す画像である。」

(5)「【0109】
図14は、保留アイコンの表示態様が変化する様子を示す図である。図15は、当該保留アイコンの表示態様が変化する様子を示す図である。図14に示すように、保留アイコン(521?524)の色は、例えば通常は白であり、事前判定の結果に応じて白から青に変化することがある。さらにその後に、事前判定の結果に応じて青から赤に変化することがある。保留アイコンの色は例えば青、黄、および赤の何れかに変化し、大当たりとなることに対する信頼度に応じて、保留アイコンの色が変化する。大当たりとなることに対する信頼度は、青、黄、赤の順に高くなる。
【0110】
また、図15に示すように、当該保留アイコン520の表示態様も、保留アイコン(521?524)と同様に変化する。具体的には、当該変動中に、変動開始時の当たり判定の結果に応じて(当該変動において大当たりとなることに対する信頼度に応じて)、色が変化する。例えば、当該変動中において装飾図柄51の2つの図柄(例えば、左装飾図柄51aおよび右装飾図柄51c)が同じ種類の図柄で停止してリーチ演出が行われる前に、当該保留アイコン520の表示態様を変化させる。これにより、当該変動において大当たりとなることに対する期待感を高めることができる。」

(6)「【0114】
図17に示すように、例えば、当該変動において擬似連続予告演出が行われる場合、擬似連の回数が進行することに応じて当該保留アイコン520が変化してもよい。図17および図18に示すように、特別図柄が変動開始したことに応じて装飾図柄51が1回目の擬似変動を開始する。1回目の擬似変動中の所定のタイミング(例えば、1回目の擬似停止の直前)、当該保留アイコン520自体の表示態様が白から青に変化し、1回目の擬似停止が行われる。擬似停止状態では、3つの装飾図柄は完全に停止せずに、遊技者が停止したと認識可能な態様で仮停止(微変動)する。なお、図18に示すように、擬似停止状態では、中装飾図柄51bとして「7」図柄が停止されるが、擬似停止状態であることを示す図柄としての「連続」の文字が書かれた装飾図柄が用意されて擬似停止されてもよい。
【0115】
その後、図19に示すように、2回目の擬似変動が開始され、2回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が青から黄に変化する。そして、2回目の擬似停止が行われる。次に、図20に示すように、3回目の擬似変動が開始され、3回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が黄から赤に変化する。そして、3回目の擬似停止が行われる。さらにその後、図21に示すように、4回目の擬似変動が開始され、リーチが成立して所定のリーチ演出が行われる。そして、装飾図柄51が停止する。図21では、特別図柄判定の結果が大当たりであることを示す「777」の装飾図柄51が停止表示され、大当たりが報知されている。例えば、「777」の装飾図柄51が停止されると、大当たり遊技(長当たり遊技)が行われた後、上記時短遊技状態に移行する。
・・・
【0118】
なお、当該保留アイコン520の変化のタイミングは、図17に限らない。例えば、擬似変動の開始のタイミングに応じて、当該保留アイコン520が変化(当該保留アイコン520自体の表示態様の変化や、サブアイコン53を付加することによる変化)してもよい。」

(7)「【0130】
ステップS8の処理に続いて、メインCPU101は、ステップS8よりも前の処理ステップにおいてメインRAM103にセット(格納)された各種コマンドや演出内容を決定するために必要な情報を演出制御基板130に送信する送信処理を実行する(ステップS9)。このステップS9の処理が実行されることにより、特別図柄判定や特別遊技に関する遊技情報が演出制御基板130に送信されることになる。この遊技情報は、具体的には、後述する保留コマンド、変動開始コマンド、変動停止コマンド、オープニングコマンド、ラウンド開始コマンド、エンディングコマンド等に含まれる情報である。」

(8)「【0147】
[遊技制御基板100による特別図柄処理]
次に、図27を参照しつつ、遊技制御基板100によって実行される特別図柄処理の詳細について説明する。ここで、図27は、図22のステップS3における特別図柄処理の詳細フローチャートである。図27に示されるように、遊技制御基板100のメインCPU101は、メインRAM103に記憶されている長当たり遊技フラグ、短当たり遊技フラグ、又は小当たり遊技フラグが「ON」に設定されているか否かに基づいて、特別遊技中であるか否かを判定する(ステップS301)。ここで、特別遊技中であると判定された場合(ステップS301:YES)、ステップS4の普通図柄処理に処理が進められる。
【0148】
メインCPU101は、特別遊技中ではないと判定した場合(ステップS301:NO)、特別図柄の変動表示中であるか否かを判定する(ステップS302)。ここで、特別図柄の変動表示中であると判定された場合(ステップS302:YES)、後述するステップS315に処理が進められる。
【0149】
メインCPU101は、特別図柄の変動表示中ではないと判定した場合(ステップS302:NO)、第2始動口入賞に係る各種乱数がメインRAM103の判定用記憶領域に記憶されているか否かを判定する(ステップS303)。具体的には、遊技球が第2始動口12に入賞したことに応じて取得された各種乱数が判定用記憶領域に直接記憶されると共に、第2始動口入賞に係る各種乱数が記憶されたことを示すフラグが判定用記憶領域に記憶されるので、このフラグが記憶されているか否かに基づいて、判定用記憶領域に第2始動口入賞に係る各種乱数が記憶されているかを判別する。ここで、第2始動口入賞に係る乱数が記憶されていると判定された場合(ステップS303:YES)、後述するステップS307に処理が進められる。
【0150】
メインCPU101は、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されていないと判定した場合(ステップS303:NO)、メインRAM103に記憶されている第1特別図柄判定の保留数U1が「1」以上であるか否かを判定する(ステップS304)。ここで、保留数U1が「1」以上ではないと判定された場合(ステップS304:NO)、すなわち、第1特別図柄判定の権利が保留されていない場合、客待ちフラグが「ON」か否かを判定する(ステップS321)。客待ちフラグが「ON」でなければ、客待ちコマンドをメインRAM103にセットして(ステップS322)、客待ちフラグを「ON」にする(ステップS323)。
【0151】
メインCPU101は、保留数U1が「1」以上であると判定した場合(ステップS304:YES)、保留数U1を「1」減算した値に更新する(ステップS305)。そして、メインRAM103の記憶領域に対するシフト処理を実行する(ステップS306)。具体的には、メインRAM103の保留記憶領域に記憶されている第1特別図柄判定に係る大当たり乱数、大当たり用図柄乱数、リーチ乱数、及び変動パターン乱数について、保留記憶領域に最初に格納されたもの(最も古いもの)を判定用記憶領域にシフトさせ、残りのものを判定用記憶領域側にシフトさせる。
【0152】
メインCPU101は、ステップS306の処理を実行した場合、又は第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されていると判定した場合(ステップS303:YES)、判定用記憶領域に記憶されている乱数に基づいて、大当たり判定処理を実行する(ステップS307)。この大当たり判定処理が実行されることによって、大当たり、小当たり、及びハズレのいずれであるかが判定され、その判定結果を示す判定図柄の設定情報がメインRAM103にセットされる。そして、大当たり(1種大当たり)であると判定された場合には大当たりの種類が決定され、小当たりであると判定された場合には小当たり遊技中にV入賞口92に遊技球が入賞したことを契機として発生する2種大当たりの種類が決定される。この大当たり判定処理については、図28に基づいて後に詳述する。」

(9)「【0162】
メインCPU101は、変動時間が経過したと判定した場合(ステップS315:YES)、第1特別図柄表示器41又は第2特別図柄表示器42に特別図柄判定の判定結果を示す判定図柄が停止表示されることを通知する変動停止コマンドをメインRAM103にセットする(ステップS316)。この変動停止コマンドは、ステップS9における送信処理によって演出制御基板130に送信される。これにより、メイン液晶表示装置5に変動表示されていた装飾図柄を特別図柄判定の判定結果を示す態様で停止表示させる処理等が行われることになる。」

(10)「【0267】
ステップS1308で装飾図柄の変動演出が決定されると、演出制御部は、決定した変動演出を開始する(ステップS1309)。これにより、装飾図柄51がメイン液晶表示装置5において変動表示される。
【0268】
次に、演出制御部は、各保留アイコン521?524を右にシフトさせる(ステップS1310)。これにより、最も早く消化される保留アイコン521(保留1)は、当該保留アイコン520として最も右側に移動し、その他の保留アイコン522?524は、保留アイコン521?523として右にそれぞれシフトする。」

(11)「【0285】
なお、当該保留アイコン520に対応する特別図柄の変動開始前において、既に当該保留アイコン520の表示態様が変化している場合がある。すなわち、上記ステップS1305の保留アイコン更新処理において保留アイコンが変化されている場合は、変化したままの表示態様で保留アイコン521が右にシフトして(ステップS1310)当該保留アイコン520となる。このため、ステップS1342においては、現在の当該保留アイコン520の表示態様も考慮して最終表示態様が決定される。」

(12)(【図18】1回目の装飾図柄の擬似変動を示す図、【図19】2回目の装飾図柄の擬似変動を示す図、【図20】3回目の装飾図柄の擬似変動を示す図、【図21】4回目の装飾図柄の擬似変動を示す図)

【図18】


【図19】


【図20】


【図21】



2 上記1(12)の図面と、上記1(4)(【0081】段落)の「装飾図柄51は、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域に表示される図柄によって構成される」という記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

上記1(12)で摘記した図面から、引用文献1には、「装飾図柄の疑似変動を開始すると、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域で可変表示が開始される」ことが見て取れる。

3 上記1の記載事項、及び、上記2の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?jは、本願発明の記号A?Jに対応させて付した。( )内は引用文献1の対応箇所を示している。)。

(引用発明)
「a 第1始動口スイッチ111からの検知信号が入力されたタイミングで各種乱数を取得し、取得した乱数を用いて第1特別図柄判定を実行し、当たり判定が行われるとともに、当該第1特別図柄判定の権利に基づく第1特別図柄の変動制御が開始される、メインCPU101と(【0065】、【0077】、【0130】)、
b 検知情報に基づいて、第1特別図柄判定の権利が最大で4つ保留される遊技制御基板100と(【0077】、【0082】)、
c 特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である場合に、保留された第1特別図柄判定の権利(保留球)を消化し、取得した乱数を用いて第1特別図柄判定を実行し、大当たりであると判定した場合には、大入賞口制御部116を介して大入賞口13を開閉するメインCPU101と(【0065】、【0077】、【0147】-【0152】)、
d 特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である場合、大当たり判定処理を実行し、第1特別図柄が変動開始し、第1特別図柄に対応する装飾図柄51が変動開始され、装飾図柄51は、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域に表示される図柄によって構成され、第1特別図柄判定の当たり判定情報に基づいて、変動表示されていた装飾図柄を特別図柄判定の判定結果を示す態様で停止表示させるメイン液晶表示装置5と(【0079】、【0081】、【0147】-【0152】、【0162】、上記2)、
e 第1特別図柄判定の権利が保留される際に、当該権利に対して事前判定処理を行う遊技制御基板100と(【0077】)、
f 最大で4つ保留され、第1特別図柄判定の権利を示す画像である保留アイコン521?524が表示されるメイン液晶表示装置5と(【0081】-【0082】)、
g 事前判定の結果に応じて保留アイコン521?524の色を変化させ、保留アイコン521?524の色は、例えば通常は白であり、大当たりとなることに対する信頼度に応じて青、黄、赤とする画像音響制御基板140と(【0076】、【0109】)、
h 装飾図柄51がメイン液晶表示装置5において変動表示を開始すると、最も早く消化される保留アイコン521を、現在変動中の第1特別図柄に対応する画像である当該保留(当該変動)アイコン520として最も右側に移動して表示されるメイン液晶表示装置5と(【0081】-【0083】、【0267】-【0268】)、
i 当該保留アイコン520に対応する特別図柄の変動開始前において、既に当該保留アイコン520の表示態様が変化している場合、変化したままの表示態様で保留アイコン521が右にシフトし、当該保留アイコン520となり、当該変動中に、変動開始時の当たり判定の結果に応じて、当該保留アイコン520の色を、保留アイコン521?524と同様に、例えば通常は白であり、大当たりとなることに対する信頼度に応じて青、黄、赤とする画像音響制御基板140とを備えたパチンコ遊技機1であって(【0012】、【0076】、【0109】-【0110】、【0285】)、
j 画像音響制御基板140により、擬似連の回数が進行することに応じて当該保留アイコン520が変化する擬似連続予告演出が行われ、装飾図柄51の擬似変動後の擬似停止状態では、中装飾図柄51bとして、疑似停止状態であることを示す、「連続」の文字が書かれた装飾図柄が擬似停止されるものであって、1回目の擬似停止が行われた後、2回目の擬似変動が開始され、2回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が青から黄に変化し、2回目の擬似停止が行われ、次に、3回目の擬似変動が開始され、3回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が黄から赤に変化し、3回目の擬似停止が行われ、その後、4回目の擬似変動が開始され、当該保留アイコン520自体の表示態様の変化は、擬似変動の開始のタイミングである、パチンコ遊技機1(【0012】、【0076】、【0114】-【0115】、【0118】)。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Jと引用発明の構成a?jについて、それぞれ(a)?(j)の見出しを付して行った。)。

(a)引用発明の構成aの「第1始動口スイッチ111からの検知信号が入力され」ることは、本願発明の構成Aの「所定の条件」が「成立」したことに相当し、
引用発明の構成aの「各種乱数を取得する」ことは、取得した乱数を用いて「第1特別図柄判定を実行」し、「当該第1特別図柄判定の権利に基づく第1特別図柄の変動制御が開始される」のであるから、本願発明の構成Aの「始動情報を取得」することに相当する。
よって、引用発明の構成aの「メインCPU101」は、本願発明の構成Aの「始動情報取得手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(b)引用発明の構成bの「最大で4つ」は、本願発明の構成Bの「所定の上限数」に相当し、
引用発明の構成bの「第1特別図柄判定の権利」が「保留される」ことは、本願発明の構成Bの「始動情報を保留記憶として記憶する」ことに相当する。
よって、引用発明の構成bの「遊技制御基板100」は、本願発明の構成Bの「保留記憶手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

(c)引用発明の構成cの「取得した乱数を用いて第1特別図柄判定を実行する」ことは、これを行うに際し「保留された第1特別図柄判定の権利(保留球)が消化」されて当たり判定が行われるものであり、さらに、「大当たりであると判定した場合には、大入賞口制御部116を介して大入賞口13を開閉する」のだから、本願発明の構成Cの「前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づき、遊技者にとって有利な特定遊技状態とするか否かの抽選を行う」ことに相当する。
その結果、引用発明の構成cの「メインCPU101」は、本願発明の構成Cの「抽選手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する。

(d)引用発明の構成dの「特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である」という条件、「装飾図柄51」、及び「左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域」のそれぞれ、は、本願発明の構成Dの「所定の開始条件」、「識別情報」及び「複数の識別情報表示位置のそれぞれ」に相当するので、引用発明の構成dの「特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である場合、大当たり判定処理を実行し、第1特別図柄が変動開始し、第1特別図柄に対応する装飾図柄51が変動開始され、装飾図柄51は、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域に表示される図柄によって構成され」ることは、本願発明の構成Dの「所定の開始条件が成立したことに基づいて複数の識別情報表示位置のそれぞれにおいて識別情報の可変表示を開始」することに相当する。
また、引用発明の構成dの「第1特別図柄判定の当たり判定情報に基づいて、変動表示されていた装飾図柄を特別図柄判定の判定結果を示す態様で停止表示させる」ことは、「第1特別図柄判定」が当たりであれば、「特別図柄判定の判定結果を示す態様」も当たりの図柄となることは明らかであるので、本願発明の構成Dの「前記抽選に当選した場合に、複数の前記識別情報表示位置に停止表示される識別情報の組み合わせとして当り識別情報の組み合わせを停止表示する」ことに相当する。
その結果、引用発明の構成dの「メイン液晶表示装置5」は、本願発明の構成Dの「識別情報表示手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(e)引用発明の構成eの「第1特別図柄判定の権利が保留される際」は、「特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である」という条件(所定の開始条件である。上記(d)を参照。)が成立するよりも前であることは明らかであるので、引用発明の構成eの「第1特別図柄判定の権利が保留される際に、当該権利に対して事前判定処理を行」うことは、本願発明の構成Eの「前記開始条件の成立に先立って、前記始動情報を判定する」ことに相当する。
その結果、引用発明の構成eの「遊技制御基板100」は、本願発明の構成Eの「先読み判定手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

(f)引用発明の構成fの「第1特別図柄判定の権利を示す画像である保留アイコン521?524」は、本願発明の構成Fの「前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づく保留表示」に相当する。
その結果、引用発明の構成fの「メイン液晶表示装置5」は、本願発明の構成Fの「保留表示手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成fは、本願発明の構成Fに相当する。

(g)引用発明の構成gの「事前判定の結果」は、本願発明の構成Gの「前記先読み判定手段による判定結果」に相当する。
また、引用発明の構成gの「保留アイコン521?524の色」が「通常」の「白」であることは、保留アイコンが表示されている以上、当該変動の後に行われる変動の開始条件である、「特別遊技中ではなく、特別図柄の変動表示中でもなく、第2始動口入賞に係る乱数が判定用記憶領域に記憶されておらず、保留数U1が「1」以上である」という条件(所定の開始条件である。上記(d)を参照。)が成立するよりも前であることは明らかであるので、本願発明の構成Gの「前記開始条件の成立前に」「通常保留表示態様」で「保留表示を」行うことに相当し、同様に、引用発明の構成gの「保留アイコンの色」を「青、黄、赤と」して表示することは、本願発明の構成Gの「前記開始条件の成立前に」「通常保留表示態様とは異なる特別保留表示態様で表示」することに相当する。
そして、引用発明の構成gの「保留アイコンの色」を「大当たりとなることに対する信頼度に応じて青、黄、赤とする」ことは、本願発明の構成Gの「前記特定遊技状態となる可能性を予告する保留変化予告を実行する」ことに相当する。
その結果、引用発明の構成gの「画像音響制御基板140」は、本願発明の構成Gの「保留変化予告制御手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成gは、本願発明の構成Gに相当する。

(h)引用発明の構成hの「装飾図柄51がメイン液晶表示装置5において変動表示を開始する」場合は、本願発明の構成Hの「前記識別情報表示手段により前記識別情報の可変表示が開始される場合」に相当し、引用発明の構成hの「最も早く消化される保留アイコン521を、現在変動中の第1特別図柄に対応する画像である当該保留(当該変動)アイコン520として最も右側に移動して表示」することは、本願発明の構成Hの「該可変表示に対応する前記保留表示を特定表示として所定領域に表示」することに相当する。
その結果、引用発明の構成hの「メイン液晶表示装置5」は、本願発明の構成Hの「特定表示手段」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成hは、本願発明の構成Hに相当する。

(i)引用発明の構成iの「変動開始時の当たり判定の結果に応じ」ることは、本願発明の構成Iの「前記抽選手段による判定結果に基づ」くことに相当し、引用発明の構成iの「大当たりとなることに対する信頼度」は、本願発明の構成Iの「特定遊技状態となる可能性」に相当し、引用発明の構成iの「当該保留アイコン520の色を」通常の白でない「青、黄、赤とする」ことは、本願発明の構成Iの「特定表示を、通常表示態様とは異なる特別表示態様で表示すること」に相当する。
また、「当該保留アイコン520に対応する特別図柄の変動開始前において、既に当該保留アイコン520の表示態様が変化している場合」「変化したままの表示態様で保留アイコン521が右にシフトして」「当該保留アイコン520とな」り、「現在の当該保留アイコン520の表示態様も考慮して最終表示態様が決定される」から、引用発明の構成iの当該保留アイコン520の色を青から黄または赤とすることは、「変動開始時の当たり判定の結果に応じ」るのみならず、「事前判定の結果」にも基づくものであることを意味している。
その結果、引用発明の構成iの「画像音響制御基板140」は、本願発明の構成Iの「特定表示予告制御手段」に相当する。
また、引用発明の構成iの「パチンコ遊技機1」は、本願発明の構成Iの「遊技機」に相当する構成を備える。
したがって、引用発明の構成iは、本願発明の構成Iに相当する。

(j)引用発明の構成jの「「連続」の文字が書かれた装飾図柄」は、「擬似連の回数が進行することに応じて当該保留アイコン520が変化する擬似連続予告演出」で「疑似停止状態であることを示す」ものであると同時に、擬似連続予告演出が行われると、「擬似連の回数が進行することに応じて当該保留アイコン520が変化」することがあるのだから、「特定表示予告がその後に実行されることを示唆」していることは自明であるので、本願発明の構成Jの「特定表示予告がその後に実行されることを示唆する識別情報であって前記当り識別情報の組み合わせを構成しない特定識別情報」に相当する。
よって、引用発明の構成jの「中装飾図柄51bとして」「「連続」の文字が書かれた装飾図柄が用意されて擬似停止され」ることは、本願発明の構成Jの「前記特定表示予告がその後に実行されることを示唆する識別情報であって前記当り識別情報の組み合わせを構成しない特定識別情報が、前記複数の前記識別情報表示位置の少なくとも一つに停止表示された場合」に相当する。
また、引用発明の構成jの「2回目の擬似変動が開始され、2回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が青から黄に変化」することにおける、「当該保留アイコン520の色が青から黄に変化」することは、本願発明の構成Jの「その後該特定表示予告を実行」することに相当する。
そして、引用発明の構成jの「擬似変動が開始」することは、「装飾図柄の疑似変動を開始すると、左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域で可変表示が開始される」(上記第4 2の認定事項を参照。)のであり、「1回目の擬似停止」として、「中装飾図柄51bとして」「「連続」の文字が書かれた装飾図柄が用意されて擬似停止され」た後、「2回目の擬似変動が開始され」るのであり、「2回目の擬似変動」では、「左領域51a、中領域51b、右領域51cの3つの領域で」「「連続」の文字が書かれた装飾図柄」以外の装飾図柄51が変動していることは技術常識からみて自明であるので、
引用発明の構成jの「1回目の擬似停止」として、「中装飾図柄51bとして」「「連続」の文字が書かれた装飾図柄が用意されて擬似停止され」た後、「2回目の擬似変動が開始され」ることは、本願発明の構成Jの「前記特定識別情報が停止表示された場合に」「その後」、「前記特定識別情報が停止表示された前記識別情報位置を含む全ての前記識別情報表示位置において前記特定識別情報以外の前記識別情報の可変表示を開始する」ことに相当する。
そして、引用発明の構成jの「当該保留アイコン520自体の表示態様の変化は、擬似変動の開始のタイミングである」ことは、本願発明の構成Jの「前記特定表示予告を実行するとともに」「前記識別情報の可変表示を開始する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成jは、本願発明の構成Jに相当する。

上記(a)?(j)の検討により、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「A 所定の条件の成立に基づいて、始動情報を取得する始動情報取得手段と、
B 所定の上限数を限度に、前記始動情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
C 前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づき、遊技者にとって有利な特定遊技状態とするか否かの抽選を行う抽選手段と、
D 所定の開始条件が成立したことに基づいて複数の識別情報表示位置のそれぞれにおいて識別情報の可変表示を開始し、前記抽選に当選した場合に、複数の前記識別情報表示位置に停止表示される識別情報の組み合わせとして当り識別情報の組み合わせを停止表示する識別情報表示手段と、
E 前記開始条件の成立に先立って、前記始動情報を判定する先読み判定手段と、
F 前記保留記憶手段に記憶された前記始動情報に基づく保留表示を表示可能な保留表示手段と、
G 前記先読み判定手段による判定結果に基づいて、前記開始条件の成立前に前記保留表示を、通常保留表示態様または該通常保留表示態様とは異なる特別保留表示態様で表示することにより、前記特定遊技状態となる可能性を予告する保留変化予告を実行する保留変化予告制御手段と、
H 前記識別情報表示手段により前記識別情報の可変表示が開始される場合に、該可変表示に対応する前記保留表示を特定表示として所定領域に表示可能な特定表示手段と、
I 前記抽選手段および/または前記先読み判定手段による判定結果に基づいて、前記特定表示を、通常表示態様とは異なる特別表示態様で表示することにより、前記特定遊技状態となる可能性を予告する特定表示予告を実行する特定表示予告制御手段とを備えた遊技機であって、
J 前記特定表示予告制御手段は、前記識別情報の可変表示として、前記特定表示予告がその後に実行されることを示唆する識別情報であって前記当り識別情報の組み合わせを構成しない特定識別情報が、前記複数の前記識別情報表示位置の少なくとも一つに停止表示された場合に、その後該特定表示予告を実行し、
前記特定識別情報が停止表示された場合には、その後、前記特定表示予告を実行するとともに前記特定識別情報が停止表示された前記識別情報位置を含む全ての前記識別情報表示位置において前記特定識別情報以外の前記識別情報の可変表示を開始する、遊技機。」
で一致し、相違する点はない。
よって、本願発明は引用発明である。

第6 請求人の主張について

1 請求人は、令和2年4月10日付け意見書において、「特別図柄が変動開始したことに応じて装飾図柄51が1回目の擬似変動を開始する。1回目の擬似変動中の所定のタイミング(例えば、1回目の擬似停止の直前)、当該保留アイコン520自体の表示態様が白から青に変化し、1回目の擬似停止が行われる。擬似停止状態では、3つの装飾図柄は完全に停止せずに、遊技者が停止したと認識可能な態様で仮停止(微変動)する。」との記載があります。
そして、引用文献1の段落0114の「下から3行」には、「図18に示すように、擬似停止状態では、中装飾図柄51bとして「7」図柄が停止されるが、擬似停止状態であることを示す図柄としての「連続」の文字が書かれた装飾図柄が用意されて擬似停止されてもよい。」との記載があります。
引用文献1の段落0114の「上から7行」の記載に、同文献の「下から3行」の記載を組み合わせると、「疑似変動の開始」→「その後、当該保留アイコン520の表示態様が変化(白→青)」→「『連続』の文字が書かれた装飾図柄の疑似停止」→「疑似変動の再開」の順の動作が得られるかもしれません。
この場合、「『連続』の文字が書かれた装飾図柄」が疑似停止する前に、「当該保留アイコン520の表示態様が変化」します。そのため、疑似停止される「『連続』の文字が書かれた装飾図柄」に、「特定表示予告がその後に実行されることを示唆する」という機能はありません。すなわち、「『連続』の文字が書かれた装飾図柄」は、「変動動作が連続すること」以上の意味はなく、本願の請求項1の「特定表示予告がその後に実行されることを示唆する特定識別情報」に相当しません。」と主張する。
しかしながら、上記「第5 対比(j)」において述べたように、引用発明の構成jの「「連続」の文字が書かれた装飾図柄」は、「擬似連続予告演出が行われ」ていることを示す(「変動動作が連続すること」という意味を含んでいる)ものであると同時に、擬似連続予告演出が行われると、その後、「当該保留アイコン520が変化」することがあるのだから、「特定表示予告がその後に実行されることを示唆」していることは自明である。
よって、請求人の主張は採用できない。

2 請求人は、同意見書において、「ところで、引用文献1の段落0115の「上から2行」には、「その後、図19に示すように、2回目の擬似変動が開始され、2回目の擬似変動中に当該保留アイコン520の色が青から黄に変化する。」との記載があります。引用文献1の段落0115の「上から2行」の記載に、同文献の「下から3行」の記載を組み合わせると、「疑似変動の再開」→その後、「その後、当該保留アイコン520の表示態様が変化(青→黄)の順の動作が得られるかもしれません。
この場合、当該保留アイコン520の表示態様の変化」が、疑似変動の再開からしばらく時間が経過した後に行われます。「当該保留アイコン520の表示態様の変化」は、停止後に再開される疑似変動の大当り信頼度を表すのですが、疑似変動の開始から「当該保留アイコン520の表示態様の変化」までの間に所定のタイムラグがあるために、「当該保留アイコン520の表示態様の変化」を用いた予告を効果的に報知できません。」と主張する。
しかしながら、「第5 対比(j)」において検討したとおり、引用文献1の【0118】には「擬似変動の開始のタイミングに応じて、当該保留アイコン520が変化」「してもよい。」と記載されており、これは、「疑似変動の開始から「当該保留アイコン520の表示態様の変化」までの間に所定のタイムラグが発生しないということを意味しており、請求人のいう、「当該保留アイコン520の表示態様の変化」を用いた予告が効果的に報知されていることを意味している。
よって、当該主張についても、採用できるものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-08-25 
結審通知日 2020-08-27 
審決日 2020-09-08 
出願番号 特願2014-129318(P2014-129318)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
井海田 隆
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人あい特許事務所  

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