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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H02K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1367830 |
審判番号 | 不服2019-7264 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-03 |
確定日 | 2020-11-02 |
事件の表示 | 特願2014-211282「電気機械におけるトルクリップルの低減」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 80403〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成26年10月16日(パリ条約による優先権主張 2013年10月18日:米国)の出願であって、平成30年8月17日に拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年8月28日)、これに対し、平成30年11月2日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年2月22日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成31年2月26日)、これに対し、令和元年6月3日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 2.令和元年6月3日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年6月3日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由I] (1)補正の内容 本件補正後の特許請求の範囲は、以下のとおりである。 「【請求項1】 X相を有する電気機械(100)であって、 複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、さらに固定子巻線が、交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在し、M個のスロットを有する固定子アセンブリ(10)と、 前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し、 シャフト(40)、 前記シャフト(40)の周りに円周状に配置された回転子コア(22)、および 複数の永久磁石(24)であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する永久磁石(24)を備える回転子アセンブリ(20)と を備え、 前記固定子アセンブリ(10)が中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が中心C2を有する外側曲面を有し、前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)を備え、C1≠C2であり、 さらに、前記電気機械(100)は、スポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数である、電気機械(100)。 【請求項2】 さらに、kがY.5であり、Yが整数である、請求項1に記載の電気機械(100)。 【請求項3】 さらに、Y.3≦k≦Y.7であり、Yが整数であり、さらにk≠Y.5である請求項1に記載の電気機械(100)。 【請求項4】 前記回転子アセンブリ(20)を液体冷却する手段を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の電気機械(100)。 【請求項5】 前記固定子アセンブリ(10)が内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が、前記内側曲面に面する外表面(26)を有する複数のスポーク(22)を備え、前記内側曲面と前記外表面(26)との間にギャップを画定し、前記ギャップは前記外表面(26)の長さに沿って不均一距離を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の電気機械(100)。 【請求項6】 前記外表面(26)が湾曲している、請求項5に記載の電気機械(100)。 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載の電気機械(100)と、前記電気機械(100)に取り付けられた車両支持構造物とを備える車両。 【請求項8】 X相を有するスポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械であって、 複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、M個のスロットを有し、さらに固定子巻線が、交流により励起されると磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在する固定子アセンブリ(10)と、 回転子コア(22)を備える回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し、前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成され、 シャフト(40)、および 複数の永久磁石(24)であって、前記回転子コア(22)に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する永久磁石(24)を備える回転子アセンブリ(20)と をさらに備え、前記固定子アセンブリ(10)が、内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が、前記内側曲面に面する外表面(26)を有し、前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)を備え、前記内側曲面と前記外表面(26)との間にギャップを画定し、前記ギャップが前記外表面(26)の長さに沿って不均一距離を有し、 前記内側曲面が中心C1を有し、前記外側曲面が中心C2を有し、C1≠C2であり、 前記IPM機械は、kの値がk=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数であるスポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械。 【請求項9】 前記外表面(26)が湾曲している、請求項8に記載のスポークタイプIPM機械。 【請求項10】 前記回転子アセンブリ(20)を液体冷却する手段を備える、請求項8または9に記載のスポークタイプIPM機械。 【請求項11】 前記シャフト(40)は、前記回転子コア(22)に嵌合される突部を備える、請求項8乃至10のいずれかに記載のスポークタイプIPM機械。 【請求項12】 さらに、kがY.5であり、Yが整数である、請求項8乃至11のいずれかに記載のスポークタイプIPM機械。 【請求項13】 さらに、Y.3≦k≦Y.7であり、ここでYが整数であり、さらにk≠Y.5である、請求項8乃至11のいずれかに記載のスポークタイプIPM機械。 【請求項14】 請求項8乃至13のいずれかに記載のスポークタイプIPM機械と、前記スポークタイプIPM機械に取り付けられた車両支持構造とを備える車両。 【請求項15】 X相を有する電気機械(100)であって、 複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、さらに固定子巻線が、交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在し、前記固定子アセンブリ(10)がM個のスロットを有する固定子アセンブリ(10)と、 前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し、 シャフト(40)、および 前記シャフト(40)の周りに円周状に配置された回転子コア(22)を備える回転子アセンブリ(20)と を備え、 前記固定子アセンブリ(10)が中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が中心C2を有する外側曲面を有する複数のスポーク(22)を備え、C1≠C2であり、 さらに、前記電気機械(100)は同期リラクタンス機械を備え、kの値は、k=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数であり、 前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)を備える、電気機械(100)。 【請求項16】 さらに、kがY.5であり、Yが整数である、請求項15に記載の電気機械(100)。 【請求項17】 さらに、Y.3≦k≦Y.7であり、Yが整数であり、さらにk≠Y.5である、請求項15に記載の電気機械(100)。 【請求項18】 前記回転子アセンブリ(20)を液体冷却する手段を備える、請求項15乃至17のいずれかに記載の電気機械(100)。 【請求項19】 前記固定子アセンブリ(10)が内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が、前記内側曲面に面する外表面(26)を有する複数のスポーク(22)を備え、前記内側曲面と前記外表面(26)との間にギャップを画定し、前記ギャップは前記外表面(26)の長さに沿って不均一距離を有する、請求項15乃至18のいずれかに記載の電気機械 (100)。 【請求項20】 前記外表面(26)が湾曲している、請求項19に記載の電気機械(100)。 【請求項21】 請求項15乃至20のいずれかに記載の電気機械(100)と、前記電気機械(100)に取り付けられた車両支持構造物とを備える車両。 【請求項22】 X相を有する同期リラクタンス機械であって、 複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、M個のスロットを有し、さらに固定子巻線が、交流により励起されると磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在する固定子アセンブリ(10)と、 回転子コア(22)およびシャフト(40)を備える回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し、前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリ(20)と を備え、 前記固定子アセンブリ(10)が中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が中心C2を有する外側曲面を有する複数のスポーク(22)を備え、C1≠C2であり、 kの値がk=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数であり、 前記固定子アセンブリ(10)が、内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が、前記内側曲面に面する外表面(26)を有し、前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)を備え、前記内側曲面と前記外表面(26)との間にギャップを画定し、前記ギャップが前記外表面(26)の長さに沿って不均一距離を有する同期リラクタンス機械。 【請求項23】 前記外表面(26)が湾曲している、請求項22に記載の同期リラクタンス機械。 【請求項24】 前記回転子アセンブリ(20)を液体冷却する手段を備える、請求項22または23に記載の同期リラクタンス機械。 【請求項25】 さらに、kがY.5であり、Yが整数である、請求項22乃至24のいずれかに記載の同期リラクタンス機械。 【請求項26】 さらに、Y.3≦k≦Y.7であり、Yが整数であり、さらにk≠Y.5である、請求項22乃至24のいずれかに記載の同期リラクタンス機械。 【請求項27】 前記シャフト(40)は、前記回転子コア(22)に嵌合される突部を備える、請求項22乃至26のいずれかに記載の同期リラクタンス機械。 【請求項28】 請求項22乃至27のいずれかに記載の同期リラクタンス機械と、前記同期リラクタンス機械に取り付けられた車両支持構造とを備える車両。」 (2)新規事項 本件補正後の請求項1は、複数のスポークについて「前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された」と限定され、「蟻接ぎ」とは「蟻ほぞの方式で木材をつぐこと。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、「蟻ほぞ」とは、「鳩尾形に先の広がったほぞ。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であるから、シャフトとスポークは蟻ほぞの方式でつぐこととなる。 そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。 当初明細書等の請求人が補正の根拠と主張する箇所には、 a「回転子アセンブリ20は、空洞内部に配設され、長手軸およびシャフト40の周りで回転するように構成される。回転子アセンブリ20は、N個の極を有し、Nは極の量である。回転子アセンブリ20は、シャフト40の周りに円周状に配置された回転子コア22を備える。Nは、実質的に2よりも大きい任意の偶数であってもよい。一定の実施形態では、Nは、例えば、8、12等などであってよい。 回転子アセンブリ20は、回転子コアの一部を形成する複数のスポーク22を含んでもよい。図1では、IPM機械を示し、回転子アセンブリ20は、図示のように軸線方向に分布するとともに、スポーク22が挿入される複数の磁石24をさらに備える。」点(【0016】、【0017】) が記載されているにすぎない。また、 b 図1?図3には、シャフト40から放射方向に、三段重ねの擬宝珠形状が複数設けられ、当該擬宝珠形状とスポークの嵌合結合が示されていると解せる。 しかしながら、それにとどまり、その他の記載をみても、当初明細書等には、シャフトとスポークの固定を蟻接ぎにより行うことは記載が無く、また、当初明細書等の記載から自明の事項でも無い。 したがって、本件補正後の請求項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由II] 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1に係る発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記した令和元年6月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 本件補正後の請求項1が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するためには、「前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)」が、所謂蟻接ぎに加え、図1?図3に示されたシャフトとスポークの嵌合手段も含まなければならないから、「蟻接ぎにより固定された」はシャフトとスポークが所謂蟻接ぎも含めた嵌合により結合される程度のものと解される。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-117451号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 A「ステータに電機子巻線および該巻線を収容するスロットを有し、ロータに界磁極および磁石を有する同期電機において、該ステータのスロット数をS、ロータの極数をP、該同期電機を駆動する電源の相数をφ、任意の自然数をNとし、毎極毎相スロット数β=S/Pφに等しい既約分数がm/nで表わされる時、該界磁極の該ステータのスロットに対向する部分の円周方向の長さを、該ステータのスロットのピッチの長さのN/n倍の値から選択することを特徴とする同期電機。」(特許請求の範囲) B「前述のような同機電機において、従来界磁極12のスロット22に対向する部分の円周方向の長さは、磁石13の形状、および薄板打抜によって制限される界磁極12の端部15の形状等により決定され、スロット22のピッチに対し考慮された寸法ではなかった。このように製造された同期電機は無負荷回転時にスロットに起因するトルクリップルすなわちスロットリップルが生じ、特に無負荷時のスロットリップルは同期電機をサーボモータとして用い軽負荷運転する場合に速度むらとなり有害であった。上記スロットリップルはステータ21とロータ11の間の空隙磁束密度分布を正弦波状とすればスロットピッチおよび界磁極12の円周方向長さに無関係に減少させることができることは知られているが、これの実現は非常に困難であり、特に同期電機の小形化に対しては、かなり有害となり得策ではなかった。このような理由により同期電機における無負荷時スロットリップルを減少させるために、スロットピッチと界磁極12の円周方向の長さの関係の最適条件を求めることが必要となった。」(1頁右下欄11行?2頁左上欄11行) C「本発明の一実施例としての同期電機の概略の断面図が第2図に示される。ステータ41のスロット42はステータ41の内周に沿って例えば36個配置される。図においては6個のみ示し他は省略されている。スロット42のピッチの長さはLで表わされる。ロータ31の磁石33は第1図の従来形のものとほぼ同様である。すなわちフェライト等の材質のものが用いられ、研摩等の加工工程により作られた永久磁石であって図示されるようなN、Sの極を有する。界磁極32は強磁性体の薄板より成り、穴34を通してボルトにより締め付けられる。ロータ31は8個の界磁極32および8個の磁石33を具備する。界磁極32のスロット42に対向する部分の円周方向の長さはWで表わされる。この同期電機の毎極毎相スロット数β=S/Pφ=36/8×3=3/2である。ここにSはステータのスロット数、Pはロータ極数、φは電源の相数である。本実施例においては三相交流が適用される。従って毎極毎相スロット数βを表わす既約分数m/nは3/2、すなわちm=3、n=2となる。界磁極32の長さWはL×N/2に選ばれる。ここにNは任意の自然数である。」(2頁右上欄10行?左下欄11行) 上記記載及び図面を参照すると、ステータ歯はスロットと同数であり、ステータはコアと電機子巻線を備えており、同期電機であるから電機子巻線への交流の印加により励起されると固定子磁場を生成し、ステータは空洞を画定する内表面とともに長手軸に沿って延在している。 上記記載及び図面を参照すると、ロータは、ステータの空洞の内部に配設され、長手軸の周りで回転するように構成され、8個の極を有している。 上記記載及び図面を参照すると、ロータのシャフトの周りに円周状に界磁極が配置されている。 上記記載及び図面を参照すると、複数の磁石であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が固定子磁場と相互作用してトルクを生成する磁石を備えるロータが示されている。 上記記載及び図面を参照すると、ステータの内表面は円形であるから中心を有する内側曲面であり、ロータのスロットに対向する界磁極の外周は中心を有する外側曲面であり、ステータの中心をA1、ロータの中心をA2とすれば、通常モータはステータ内周面とロータ外周面は中心が共通である同心円状であるから、A1=A2であり、又、ロータであるから、シャフトと複数の界磁極は所定の手段の固定されている。 上記記載及び図面を参照すると、同期電機は、界磁極タイプ内部永久磁石機械を備え、kの値は、k=36/(3×8)であるように構成され、ここでkは1.5である。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「三相を有する同期電機であって、 36のステータ歯を備えるステータであって、さらに電機子巻線が、三相交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記ステータが、空洞を画定する内表面とともに長手軸に沿って延在し、36個のスロットを有するステータと、 前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成されたロータであって、8個の極を有し、 シャフト、 前記シャフトの周りに円周状に配置された界磁極、および 複数の磁石であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する磁石を備えるロータと を備え、 前記ステータが中心A1を有する内側曲面を有し、前記ロータが中心A2を有する外側曲面を有し、前記シャフトに所定の手段により固定された複数の界磁極を備え、A1=A2であり、 さらに、前記同期電機は、界磁極タイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=36/(3×8)であるように構成され、ここでkは1.5である、同期電機。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「三相」、「同期電機」、「界磁極」は、それぞれ本願補正発明の「X相」、「電気機械」、「回転子コア」又は「スポーク」に相当する。 引用発明の「36のステータ歯を備えるステータであって、さらに電機子巻線が、三相交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記ステータが、空洞を画定する内表面とともに長手軸に沿って延在し、36個のスロットを有するステータ」は、本願補正発明の「複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、さらに固定子巻線が、交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在し、M個のスロットを有する固定子アセンブリ(10)」に相当する。 引用発明の「前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成されたロータであって、8個の極を有し」は、本願補正発明の「前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し」に相当する。 引用発明の「前記シャフトの周りに円周状に配置された界磁極」は、本願補正発明の「前記シャフト(40)の周りに円周状に配置された回転子コア(22)」に相当する。 引用発明の「複数の磁石であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する磁石を備えるロータ」は、本願補正発明の「複数の永久磁石(24)であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する永久磁石(24)を備える回転子アセンブリ(20)」に相当する。 引用発明の「前記同期電機は、界磁極タイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=36/(3×8)であるように構成され、ここでkは1.5である」は、本願補正発明の「前記電気機械(100)は、スポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数である」に相当する。 引用発明の「前記ステータが中心A1を有する内側曲面を有し、前記ロータが中心A2を有する外側曲面を有し、前記シャフトに所定の手段により固定された複数の界磁極を備え、A1=A2であり」と、本願補正発明の「前記固定子アセンブリ(10)が中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が中心C2を有する外側曲面を有し、前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された複数のスポーク(22)を備え、C1≠C2であり」は、「前記固定子アセンブリが中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリが中心C2を有する外側曲面を有し、前記シャフトに固定された複数のスポークを備え」の点で一致する。 したがって、両者は、 「X相を有する電気機械であって、 複数の固定子歯を備える固定子コアを備える固定子アセンブリであって、さらに固定子巻線が、交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリが、空洞を画定する内表面とともに長手軸に沿って延在し、M個のスロットを有する固定子アセンブリと、 前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリであって、N個の極を有し、 シャフト、 前記シャフトの周りに円周状に配置された回転子コア、および 複数の永久磁石であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する永久磁石を備える回転子アセンブリと を備え、 前記固定子アセンブリが中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリが中心C2を有する外側曲面を有し、前記シャフトに固定された複数のスポークを備え、 前記電気機械は、スポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数である、電気機械。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 本願補正発明は、固定子アセンブリの中心C1と回転子アセンブリの中心C2がC1≠C2であるのに対し、引用発明は、両者の中心がA1=A2である点。 〔相違点2〕 シャフトとスポークの固定に関し、本願補正発明は、蟻接ぎにより固定されるのに対し、引用発明は、この様な構成を有していない点。 (4)判断 相違点1について 回転電機において、トルクリップルを減じるために、固定子アセンブリの中心C1と回転子アセンブリの中心C2がC1≠C2とすることは、原査定の拒絶の理由で引用例3として挙げた特表2003-533158号公報(図2参照)に示されており、しかもこの点は回転電機の分野において周知の事項(必要があれば特開2009-207283号公報図5参照)であるから、引用発明において更に効率的にリップルを除くために引用例3記載のものの様にC1≠C2の構成を採用することは当業者が容易に考えられることと認められる。 相違点2について 回転子は回転時に遠心力が働き構成部品が飛ばされる恐れがあるので、当該遠心力に打ち勝つ様に固定手段を採用しなければならない。引用発明においてもロータの界磁極が遠心力で飛ばされない様にシャフトと界磁極を嵌合結合することは当業者が適宜なし得ることと認められる[なお、回転子において、軸と鉄心の結合のために嵌合結合を行うことは従来慣用されている(必要があれば特開平9-289749号公報図5、2013-115938号公報図7,8参照。)。]。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成30年11月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「X相を有する電気機械(100)であって、 複数の固定子歯を備える固定子コア(12)を備える固定子アセンブリ(10)であって、さらに固定子巻線が、交流により励起されると固定子磁場を生成するように構成され、前記固定子アセンブリ(10)が、空洞を画定する内表面(16)とともに長手軸に沿って延在し、M個のスロットを有する固定子アセンブリ(10)と、 前記空洞の内部に配設され、前記長手軸の周りで回転するように構成された回転子アセンブリ(20)であって、N個の極を有し、 シャフト(40)、 前記シャフト(40)の周りに円周状に配置された回転子コア(22)、および 複数の永久磁石(24)であって、スタック間に配設され磁場を生成するように構成され、前記磁場が前記固定子磁場と相互作用してトルクを生成する永久磁石(24)を備える回転子アセンブリ(20)と を備え、 前記固定子アセンブリ(10)が中心C1を有する内側曲面を有し、前記回転子アセンブリ(20)が中心C2を有する外側曲面を有する複数のスポーク(22)を備え、C1≠C2であり、 さらに、前記電気機械(100)は、スポークタイプ内部永久磁石(IPM)機械を備え、kの値は、k=M/(X*N)であるように構成され、ここでkは約1.3よりも大きい非整数である、電気機械(100)。」 (1)拒絶の理由 原査定の進歩性に関する拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び引用例3に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 (2)引用例 引用例1の記載事項は、「2.[理由II](2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、「2.[理由II]」で検討した本願補正発明から「回転子アセンブリ」の限定事項である「前記シャフト(40)に蟻接ぎにより固定された」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、「2.[理由II](4)」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、他の請求項を検討するまでもなく本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2020-05-29 |
結審通知日 | 2020-06-05 |
審決日 | 2020-06-17 |
出願番号 | 特願2014-211282(P2014-211282) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H02K)
P 1 8・ 575- Z (H02K) P 1 8・ 121- Z (H02K) P 1 8・ 121- Z (H02K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋口 幸太郎、尾家 英樹 |
特許庁審判長 |
佐々木 芳枝 |
特許庁審判官 |
堀川 一郎 窪田 治彦 |
発明の名称 | 電気機械におけるトルクリップルの低減 |
代理人 | 小倉 博 |