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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1367831
審判番号 不服2019-10873  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-16 
確定日 2020-11-04 
事件の表示 特願2015-516688「栄養製品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日国際公開、WO2013/186570、平成27年 8月 6日国内公表、特表2015-522256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年6月15日 英国(GB)、2012年9月21日 米国(US))を国際出願日とするものであって、平成29年2月14日付けで拒絶理由が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月10日付で拒絶理由が通知され、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月19日付け(受付日6月20日)の刊行物等提出書が提出され、同年7月30日付で拒絶理由が通知され、平成31年1月10日に刊行物等提出書が提出され、同年2月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月8日付けで拒絶査定がされ、令和1年8月16日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年10月11に手続補正書(方式)が提出され、同年11月21日に刊行物等提出書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明の認定
この出願の請求項9に係る発明は、平成31年2月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項9に記載された事項により特定される「オクタン酸を実質的に含まない、請求項1?8のいずれか一項に記載の組成物。」であり、そのうち、請求項1を引用するものを書き下すと以下のとおりのものである。

「細胞のミトコンドリア含有量を増加させるため、及び/又は細胞のミトコンドリア機能を増加させるための、ヒトによる消費に適した組成物であって、デカン酸を含み、実質的にオクタン酸を含まない組成物。」(以下「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のものを含むと認める。
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・・・
●理由1(新規性)●理由2(進歩性)について
(B)
・請求項 1-39
・引用文献等 2
・・・
<引用文献等一覧>
・・・
2.国際公開第2012/069790号」

以下、国際公開第2012/069790号を、「引用例1」という。

第4 当審の判断
当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由は、以下のとおりである。

1 引用例及びその記載事項
(1)引用例1:国際公開第2012/069790号(原査定の拒絶査定の理由における引用文献2)
原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用例1」には、次の記載がある。訳文にて示す。

(1a)「1.発作関連障害、双極性障害、躁病、鬱病、偏頭痛、注意欠陥性多動性障害、潜在性HIV感染症、アルツハイマー病、舞踏病、統合失調症、虚血、がんおよび致命的出血の治療または予防に用いるための、式(I)で示される化合物。
R1-COOH
(I)
式中、R1は骨格上の任意のCの位置にC_(1-6)アルキル基分岐鎖として有していてもよいC_(7-11)骨格を有するアルキルまたはアルケニル基であるか、またはそれらの薬学的に許容される塩、アミドもしくはエステルであり、前記アルキル又はアルケニル基、及び/又は前記分岐アルキル基の骨格内に、1以上のヘテロ原子が介在していてもよく、ただし、R1がC_(7)骨格を有するアルキル基の場合、分岐はR1のα位炭素上のヘキシル基のみから成ることはなく、もしくはR1のγ位炭素上のメチル基のみから成ることはなく、もしくはR1のβ位およびω-1位の両方における炭素上の単一のメチル基のみから成ることはなく、
R1がC_(8)またはC_(11)骨格を有するアルキル基の場合、分岐はR1のα位炭素上のプロピル基のみから成ることはない。

2.R1がアルキル基である、請求項1の治療用化合物。

3.R1がC_(7-10)骨格を有するアルキル基である、請求項1または2の治療用化合物。
・・・
6.R1が分岐しないアルキル基である、請求項1?3の何れか一項の治療用化合物。

7.発作関連障害の治療または予防のために用いる、請求項1?6の何れか一項の化合物。

8.発作関連障害がてんかんである、請求項1?7の何れか一項の治療用化合物。

9.ノナン酸、デカン酸、4-エチルオクタン酸、2-プロピルオクタン酸、2-ブチルオクタン酸、4-メチルオクタン酸、8-メチルオクタン酸、3-メチルノナン酸および3-メチルウンデカン酸から選ばれる、請求項1?8の何れか一項の治療用化合物。」(Claims1?3、6?9)

(1b)「
本明細書に記載の上記化合物は、ホスホイノシトールの代謝回転及び/又は脂肪酸の代謝回転を迅速に減衰させることが判明した。ホスホイノシトール及び脂肪酸代謝回転の減弱は、VPAの作用機序として特定されているから、これらの化合物はVPAで治療されうる症状、例えば、発作関連障害、双極性障害、躁病、鬱病、偏頭痛、注意欠陥性多動性障害、潜在性HIV感染症、アルツハイマー病、舞踏病、統合失調症、特に、てんかん、双極性障害及び偏頭痛の治療または予防に有用である可能性を有する。」(4頁8?15行)

(1c)「
本発明の目的のために使用される化合物は、それだけに限られるものではないが、ノナン酸、デカン酸、4-エチルオクタン酸、2-プロピルオクタン酸、2-ブチルオクタン酸、4-メチルノナン酸、8-メチルノナン酸、3-メチルノナン酸、及び3-メチルウンデカン酸が挙げられる。」(4頁21?24行)

(1d)「
上記化合物は、1又はそれ以上の、無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤とともに投与してもよい。本発明の最初の見地に従って使用される無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤は、製剤設計の分野で慣用的に採用されるものであり、限定されるものではないが、例えば、糖、糖アルコール、デンプン、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク、例えば、ヒト血清アルブミン、リン酸塩などの緩衝剤、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、部分的にグリセリド混合した飽和植物性脂肪酸、水、塩又は電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース物質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロック重合体、ポリエチレングリコール及びラノリンが挙げられる。化合物は経口又は非経口で、例えば吸入スプレー、直腸、経鼻、舌下、経膣又は埋め込み容器により投与される。ここで「非経口」の用語は皮下、皮内、静脈内、筋肉内、間接内、滑液内、胸骨内、莢膜内、病変部内、頭蓋内の注射又は点滴の投与技術をいう。」(7頁29行?8頁13行)

(1e)「
2.2 ホスホイノシチド減衰作用の増強を示す新規化合物の同定
VPAの急性のホスホイノシチドシグナル伝達減衰作用を同定することにより、当該効果に必要な化学構造を検討した。本発明のホスホイノシチド減衰作用効果を確認した化合物群につき、試験結果のまとめを以下の表1に示す。」(20頁1?6行)

(1f)「


」(20?21頁 Table 1)

(1g)「

」(22頁 Table 2)

(1h)「
2.3 新規化合物はインビトロてんかん様モデルにおいて薬効の増強を示す
本発明の放射標識化実験をインビボ動物モデルにおいて繰り返し、発明者らの作用機序に関連する知見をより高度なモデルにおいて再現することは不可能であるため、代わりに発明者等は新規化合物群の薬効について、発作制御において解析した。当該実験のため、それら/彼らはVPA感受性ペンテレンテトラゾール(PTZ)のインビトロてんかん様活性モデル(Armandet al., 1998)を採用し、様々な側鎖の置換位置や鎖長をもつC8骨格の、新規化合物群のうち3化合物を解析した(Fig 3a,b)。VPA はてんかん様放出作用を顕著に減少させた(Armand et al., 1998; figure 3b; VPA: 75.1±1.7□。また等モル濃度のC8骨格の化合物を適用すると、VPAよりも顕著に強い薬効を示し、強力に放出作用を減少させた (figures 3b,c)。新規3化合物すべての適用において、それぞれ発作の放出回数が大幅に減少した (4-メチルオクタン酸49.1±4.4%,2-プロピルオクタン酸 5.3±3.3、2-ブチルオクタン酸5.2 ±5.0% 、全て P=0.005 、対VPA比)。また、発明者等は化合物を直鎖がC9-及びC10-骨格のものにも拡張し、同様の結果を示した(ノナン酸, 20.9±7.5□, P= 2 x 10-6 対VPA比; デカン酸 0.23±0.23%, P = 2 x 10-6 対VPA比、 Fig 3d, e)。当該活性はより短鎖の骨格では見られなかった(例えば、炭素数5であるペンタン酸の場合-データ示さず)。これらの高活性を示す化合物は以前より発作の制御作用とは関連性はなく、また催奇形性作用の発現は予見されていなかった(Guo et al., 1999)。」(24頁5?24行)

2 引用発明
引用例1には、摘記(1a)に、請求項1を引用する請求項9に係る発明として、デカン酸をはじめとした9種の治療用化合物が記載され、摘記(1b)には、特にてんかん等の治療または予防に有用である可能性が記載され、摘記(1c)にも、デカン酸をはじめとした9種の化合物が例示され、デカン酸自体は、製造可能な公知の化合物である。
また、摘記(1e)、摘記(1f)、摘記(1g)、摘記(1h)には、請求項に係る発明に対応してデカン酸がてんかんの治療に有効であることが記載され、摘記(1d)には、上記化合物は、1又はそれ以上の、無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤とともに投与してもよいことが記載されているのであり、上記デカン酸に無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含むものは、組成物であるといえる。

そうすると、引用例1には、以下の組成物に係る発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「てんかんの治療または予防に用いるための治療用の化合物であるデカン酸及び無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有する組成物」

3 対比・判断
(1)対比
引用発明の「治療用の化合物・・・及び無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有する組成物」は、1頁10行?2頁26行の記載からみて人間を対象としたものであり、本願発明の「ヒトによる消費に適した組成物」に該当することは明らかである。
また、引用発明の「治療用の化合物であるデカン酸及び無毒の医薬的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有する組成物」には、「デカン酸」以外には、「治療用の化合物」を含んでいないので、本願発明の「デカン酸を含み、実質的にオクタン酸を含まない組成物」に該当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「ヒトによる消費に適した組成物であって、デカン酸を含み、実質的にオクタン酸を含まない組成物」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:本願発明においては、「細胞のミトコンドリア含有量を増加させるため、及び/又は細胞のミトコンドリア機能を増加させるための」との特定がされているのに対して、引用発明においては、「てんかんの治療または予防に用いるための」との特定がされている点

4 相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、組成物が「細胞のミトコンドリア機能を増加させるための」ということの明記はないが、てんかんをはじめとしたとした神経障害、発作関連障害が、ミトコンドリアの機能と関連していることは技術常識であるから(米国特許出願公開2007/0135376号[0002][0008][0023][0039]、特表2002-524506号公報【請求項11】【0006】、特表2007-534770号公報【請求項12】【0043】【0248】、特表平9-511398号公報【特許請求の範囲】発明の分野、発明の背景、発明の要約)、本願発明においては、それらの疾患に対する治療や予防のために、ミトコンドリアが正常に機能している割合を高める又は高い状態を維持することを規定しているだけで、引用発明でも、てんかんの治療または予防に対して機能し有効であったのであるから、上記技術常識からみて、ミトコンドリアが正常に機能している割合が高いはずである。
したがって、上記相違点に係る「細胞のミトコンドリア機能を増加させるための」との、デカン酸をてんかんをはじめとしたとした神経障害、発作関連障害に用いた際の細胞内のミトコンドリア機能の状態を特定したにすぎない特定は実質的な相違点ではない。

また、仮に、「細胞のミトコンドリア機能を増加させるための」という特定を実質的な相違点であるとして検討しても、ミトコンドリアの機能とてんかん等の疾患の関係は上記のとおり技術常識であるから、引用発明において、上記疾患に関連したミトコンドリアの機能に関して「細胞のミトコンドリア機能を増加させるための」と特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項である。
さらに、本願発明の効果として、【0094】【0095】において、結論として、デカン酸のてんかんを有する患者にとっての有益性を可能性として記載しているが、「ヒトによる消費に適した組成物」として体内での実験結果を記載しておらず、デカン酸自体がてんかんの治療に有効であることは引用例1に記載されているのであるから、当業者の予測を超える顕著な効果とはいえない。

5 審判請求人の主張の検討
審判請求書の手続補正書(方式)2頁20?39行において、てんかん又はアルツハイマー病の治療又は予防は、本願発明の「細胞のミトコンドリア含有量」「又は細胞のミトコンドリア機能を増加」効果の一つではあっても包含されないので、新たに発見した作用機序で表現したものではなく、新たな用途を提供し、本願発明と引用文献2(引用例1)記載の発明の両用途が区別できる旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、細胞のミトコンドリア機能とてんかん又はアルツハイマー病等の神経関連疾患の関係が技術常識であり(なお、米国特許出願公開2007/0135376号[0039]や特表平9-511398号公報の背景技術には、パーキンソン病や糖尿病の記載もある)、結果として組成物の用途である対象疾患も重複しているのであるから、両用途が区別できるとはいえないし、新たな作用機序を発見したということもできない。
したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、本願優先日時点の技術常識を考慮すると、引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、同条同項の規定により特許を受けることができないし、引用例1に記載された発明及び引用例1に記載された技術的事項、本願優先日時点の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
請求項9に係る発明は、本願の優先日前に外国において頒布された引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、引用例1に記載された発明及び引用例1に記載された技術的事項、本願優先日時点の技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-08 
結審通知日 2020-06-09 
審決日 2020-06-22 
出願番号 特願2015-516688(P2015-516688)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 瀬良 聡機
櫛引 智子
発明の名称 栄養製品  
代理人 阿部 寛  
代理人 池田 成人  
代理人 池田 成人  
代理人 野田 雅一  
代理人 野田 雅一  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 阿部 寛  
代理人 酒巻 順一郎  
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