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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01K
管理番号 1367836
審判番号 不服2019-12667  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-24 
確定日 2020-11-02 
事件の表示 特願2015-24857「複合サイクル発電プラントの最適化のための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月3日出願公開、特開2015-158199〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月12日(パリ条約による優先権主張2014年(平成26年)2月20日 アメリカ合衆国(US))の出願であって、平成30年10月25日付け(発送日:同年11月6日)で拒絶理由が通知され、平成31年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年5月29日付け(発送日:同年6月7日)で拒絶査定がされ、これに対して令和元年9月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 令和元年9月24日の手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和元年9月24日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(平成31年1月31日の手続補正書)の請求項1に、
「 【請求項1】
ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)、蒸気タービンおよび前記HRSGのダクト点火システムを備える複合サイクル発電プラントの動作設定点を決定するための方法であって、
前記ガスタービン、前記HRSG、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムの、動作および性能のうちの少なくとも1つをモデル化するデジタルモデルを用いるステップと、
前記デジタルモデルと相互作用する人工ニューラルネットワークを用いて、前記デジタルモデルを相関させるステップと、
前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートするステップと、
前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを調整することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正するステップと、
前記発電プラント、前記ガスタービン、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムのうちの少なくとも1つの異なる動作設定値において、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートし、前記動作設定値のうちの少なくとも1つを最適な動作設定値として選択することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つの前記シミュレーションを最適化するステップと、
前記最適な動作設定値に基づいて、前記発電プラントの動作設定値を設定するステップと、
を含む、方法。」
とあったものを、
「【請求項1】
ガスタービン、チラーシステム、熱回収蒸気発生器(HRSG)、蒸気タービンおよび前記HRSGのダクト点火システムを備える複合サイクル発電プラントの動作設定点を決定するための方法であって、
前記ガスタービン、前記HRSG、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムの、動作および性能のうちの少なくとも1つをモデル化するデジタルモデルを用いるステップと、
前記デジタルモデルと相互作用する人工ニューラルネットワークを用いて、前記デジタルモデルを相関させるステップと、
前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートするステップと、
前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを調整することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正するステップと、
前記発電プラント、前記ガスタービン、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムのうちの少なくとも1つの異なる動作設定値において、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートし、前記動作設定値のうちの少なくとも1つを最適な動作設定値として選択することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つの前記シミュレーションを最適化するステップと、
前記最適な動作設定値に基づいて、前記発電プラントの動作設定値を設定するステップと、
を含み、
前記チラーシステムの前記熱力学的性能のデジタルモデルは、前記チラーシステムを駆動するのに必要な電力を前記ガスタービンに流入する吸気の所望の温度に対応付けるアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムは、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮に入れる、方法。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために請求人が付与した。)。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「複合サイクル発電プラント」について、「チラーシステム」を備える、及び、「前記チラーシステムの前記熱力学的性能のデジタルモデルは、前記チラーシステムを駆動するのに必要な電力を前記ガスタービンに流入する吸気の所望の温度に対応付けるアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムは、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮に入れる」との限定を付したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-220151号公報(以下「引用文献1」という。)には、「複合サイクル/複合プロセス施設を最適化する方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【請求項1】
蒸気使用プロセスプラント(110)に熱伝達連通で結合された発電プラント(102)を少なくとも1つ有する複合サイクル発電プラント(100)を稼働させる方法(400)であって、
発電プラント性能をシミュレートするステップ(402)と、
プロセスプラント性能をシミュレートするステップ(404)と、
前記発電プラントおよびプロセスプラントシミュレーション結果を使用して、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化するステップ(406)と、
前記複合サイクル発電/蒸気使用プロセスプラントの効率を高めることを促進するパラメータ設定値を求めるために、目的関数によってパラメータ化された連立方程式および制約条件を解くステップ(408)とを含む、
ことを特徴とする複合サイクル発電プラントの稼働方法(400)。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、複合サイクル発電プラントを動作させる方法が提供される。このシステムは、蒸気使用プロセスプラントに熱伝達連通で結合された少なくとも1つの発電プラントを含む。この方法は、発電プラント性能をシミュレートするステップと、プロセスプラント性能をシミュレートするステップと、発電プラントおよびプロセスプラントのシミュレーション結果を使用して、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化するステップと、複合サイクル発電/蒸気使用プロセスプラントの効率を高めることを促進するパラメータ設定値を求めるために、目的関数によってパラメータ化された連立方程式および制約条件を解くステップとを含む。」

ウ 「【0009】
図1は、例示的な複合サイクル/複合プロセスプラント100の概略図である。この例示的な実施形態では、プラント100は、1対のガスタービン発電プラント104を含む発電部分102、1対の熱回収蒸気発生器(HRSG)108を含む熱回収部分106、および脱塩プラント112を含むプロセスプラント部分110を含む。発電部分102は、ガスタービンエンジン、化石燃料ボイラー、バイオマス燃料ボイラー、排熱回収ボイラー、廃棄物焼却炉、原子炉ボイラー、地熱源、および太陽光源を含むことができる(ただし限定ではない)熱発電プラントの組合せを使用して構成することができる。熱回収部分106は、非燃焼および燃焼熱回収蒸気発生器、ならびに他の既知の熱回収装置を有して構成することができる。プロセスプラント部分110は、製油所、製紙工場、製造施設、地域暖房、養魚場、製パン工場、蒸気吸収冷却器、および農業製品処理プラントなど(ただし限定ではない)の、熱をそのプロセスへの入力として使用する様々な種類のプラントを含むことができる。
【0010】
例示的な実施形態では、複数のガスタービンエンジン104それぞれは、ガスタービンエンジン118に軸116を介して結合される発電機を含む。各ガスタービンエンジン118は、軸124を介してタービン122に結合される圧縮機120を含む。燃焼器126が、圧縮機出口128が燃焼器126を介してタービン入口130と流体連通で結合されるように、圧縮機120とタービン122の間に結合される。劣化した排ガスは、タービン排ガス出口132を通りタービン122を出る。排気ガスが通路を介してHRSG108内に導かれるので、このガス内の熱エネルギがHRSG108を貫通して流れる水を蒸気に変換する。次いで排ガスは、煙突134を通りHRSG108から排出され、大気または汚染制御装置(図示せず)に開放される。HRSG108で製造された蒸気は、蒸気ライン138を介して蒸気ヘッダ136へ送られ、そこで蒸気は様々な蒸気負荷部140および脱塩プラント112に分配するために使用できる。脱塩プラント112は、原料塩水を脱塩プラント112に供給するのに使用される海水入口142、プラント112から処理された淡水を取り除くための蒸留水出口144、および蒸気/凝縮HRSGサイクルを完結させるために凝縮した蒸気をHRSG108に戻すための凝縮水戻り146とを含む。」

エ 「【0013】
発電と水製造の間の比率は、季節的な要求量などの(ただし限定ではない)いくつかの要因に基づいて変わる。この発電プラントおよび脱塩プラントは、広い範囲の動作状態に対して設計され、電力および水の要求される指定量は、多くの異なる状態で達成することができる。各状態を全体的な熱消費率および全体的な経済的効率に関連づけることができる。全体的に最適な熱消費率で運転することは、多くの場合全体的に最適な経済効率を生み出さない可能性がある。システムの運転者は、動作するガスタービンの基数、ガスおよび蒸気タービンの負荷レベル、ダクト燃焼、動作する脱塩プラントの基数、頂部ブライン(塩水)温度、再循環比率、およびブローダウンなどの(ただし限定ではない)複数のプラント設定を、任意の所与の発電量および水量の指定に対し最適な経済的稼働を達成するために変更することができる。
【0014】
図2は、(図1に示す)熱発電プラントおよびプロセスプラント100のアウトプットを最適化するために使用することができる熱発電プラントおよびプロセスプラント最適化システム200のための構成の例示的な実施形態のデータフロー図である。この例示的な実施形態では、システム200は、発電部分102の様々な構成部品に結合された監視および制御計器202を含む。そのような計器は、圧力および温度センサ、流量および速度センサ、燃焼ガスセンサ(ただし限定ではなく)を含むことができる。システム200は、熱回収部分106に関連する監視および制御計器204およびプロセスプラント110に関連する監視および制御計器206も含む。監視および制御計器202、204、および206のそれぞれは、測定されたプロセスパラメータを示す信号を、分散制御システム(distributed control system)(DCS)208に伝達する。DCS208は、信号を受信し、所定のアルゴリズムに従って信号を処理し、監視および制御計器202、204、および206にそれぞれ、プラント動作に変化を及ぼすための制御信号を伝達する。DCS208は、ソフトウェアデータ収集モジュール(data acquisition module)(DAM)210と連動している。例示的な実施形態では、DAM210は、DCS208に通信的に結合された独立のPCベースのコンピュータシステム上で実行するソフトウェアコードセグメントである。
【0015】
DAM210は、将来的な参照および分析用の保管データを保存するデータベース/ヒストリアン212に通信的に結合される。一実施形態では、データベース/ヒストリアン212は、OSI Software,Inc.of San Leandro、Califoniaから商業的に入手可能な、PI Systemである。熱バランスモジュール214が要望により、測定されたデータに可能な限り近接して一致するようにプラントの質量およびエネルギバランスモデルを調整するアルゴリズムをコンピュータ処理するために、DAM210およびデータベース/ヒストリアン212からデータを受信する。モデルと測定データの間の差異は、データ内の誤りを示す場合がある。性能モジュール216が、主要なプラント装置の期待される性能を予想するために、プラント装置モデルを使用する。予想される性能と現在の性能の間の相違は、汚れ、錆腐蝕、および破損などの(ただし限定ではない)それぞれの構成部品の状態の劣化である可能性がある。性能モジュール216は、プラント電力および熱消費率の変化に最大の影響を有する性能問題を特定できるように、時間にわたる劣化を追跡する。この例示的な実施形態では、プロセスプラント110が脱塩プラントであり、性能モジュールは、例えば、ただし限定ではなく、淡水要求量負荷レベル、頂部ブライン温度、海水注入温度、および頂部ブラインヒータ劣化を使用して脱塩プラント熱消費量をモデル化することができる。
【0016】
オプテマイザモジュール218が、プラント100の経済的指定を最適化するように、プラント100の様々な動作構成部品の方法論を評価する。少なくともいくつかの既知の指定方法論が、熱消費率は金銭上のリソースに等しいという仮定を置いて、熱消費率に基づいてプラントを指定する。その一方、オプテマイザモジュール218は、より高い熱消費率を有する構成部品が指定される可能性がある最適化を解くことができる。例えば、ある状況では、ヘッダ136からの蒸気の要求量が、電力に対する要求量を追い越す場合があり、または部分102からの電力が電気的なシステム要求によって制限される場合がある。効率のより低いガスタービンエンジン104を指定することによって、制限を超える電力出力を上昇させることなしにより多くの熱が回収可能になる場合もある。
【0017】
この例示的な実施形態では、オプテマイザモジュール218が、オンライン(自動)とオフライン(手動)モードの選択可能である。オンラインモードでは、オプテマイザ218は、発電される電力のコスト、発電の各レベルでの増分コスト、プロセス蒸気のコスト、および所定の周期性、例えばリアルタイムで、または5分毎に1回でのプラントを動作させる利益などの、現行のプラントの経済的なパラメータを自動的に計算する。オフラインモードは、定常状態の性能、「仮定(what-if)」シナリオの分析、予算およびグレードアップの任意選択の分析、あるいは現行の発電能力、目標熱消費率、保証条件に対する現行のプラント稼働の修正、稼働制約および補修作業の影響、あるいは燃料消費量の予想をシミュレートするのに使用することができる。オプテマイザ218は、プラントの経済モデルによって、プラントの熱バランスを結合することによる効率に基づくアウトプットではなく、リアルタイムの経済的コストデータ、アウトプット価格、負荷レベル、および装置の劣化に基づくプラント100に対する利益が最大になるアウトプットを計算する。オプテマイザ218は、各構成部品の劣化に個々に整合するように調整することができる。オプテマイザ218は、助言的な出力220を作り出すことができ、かつ/またはクローズドフィードバックループの制御出力222も作り出すことができる。助言的な出力220は、プラント100の収益性を最大にするのを促進するために、各構成部品を最適化するためのプラント100の制御可能なパラメータを何処にセットすべきかを運転者に推奨する。さらにオプテマイザ218は、リアルタイムのコストを計算し、電力購入ユーザ(図示せず)に伝達することができる。この例示的な実施形態では、助言的な出力220は、コンピュータが実行するオプテマイザモジュール218と通信的に結合されたコンピュータ表示スクリーンである。代替の実施形態では、助言的な出力は、遠隔のワークステーション表示スクリーンであり、ワークステーションがネットワーク(図示せず)を介してオプテマイザ218のデータにアクセスする。さらに、重大なプラント性能パラメータを求めるために助言的出力220を監視することもできる。
【0018】
クローズドフィードバックループ制御出力222は、オプテマイザモジュール218からデータを受け取り、プラント装置のリアルタイムフィードバック制御を実行するために、DCS制御モジュール用の設定点および/またはバイアス設定値を計算する。」

オ 「【0020】
図4は、(図1に示す)複合サイクル/複合プロセスプラント100の稼働の例示的な方法400のフローチャートである。この例示的な実施形態では、プロセスプラント100は、蒸気使用プロセスプラントに熱伝達連通で結合される少なくとも1つの発電プラントを含む。方法400は、発電プラント監視計器データを受信するソフトウェアコードセグメントのプラント性能モジュールを使用して発電プラント性能をシミュレート402するステップを含む。このデータは、プラント分散制御システム(DCS)からネットワークを介して受信することができ、あるいはサーバまたはプラント性能モジュールにアクセス可能な他のコンピュータ上で実行するデータベース/ヒストリアンソフトウェアプログラムから受信することができる。さらに、発電プラント性能をシミュレートするステップ402に使用されたものと同様な方法で、プロセスプラント性能がシミュレート404される。同じ方法で各プラントの性能を求めることによって、各プラントに対し別々に最適設定を求めるのではなく、プラント全体に対して最適な制御設定を求めるために、プラント全体を単一のプラントとして取り扱うことが可能になる。各主要プラント構成部品に対する測定値は、構成部品のバイアスによって構成部品上に全体プラント効率を表示するためにパラメータ化406される。プラント装置およびプラント性能をパラメータ化することは、ガスタービン圧縮機、ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)、通気ファン、冷却塔、凝縮器、給水加熱器、ブライン加熱器、蒸発器、フラッシュタンク、およびブラインブローダウンなどの(ただし限定ではない)構成部品の効率を計算することを含む。同様に、熱消費率および性能計算がパラメータ化406され、結果として得られる連立方程式は、各パラメータがサンプリングされた時間から内包的な遅れなしに計算結果が利用可能になるように、リアルタイムで解かれる408。パラメータ化された連立方程式および制約条件を解く408ことは、プラント全体に対する現行の熱バランスを求めること、および運転予備電力の要求、電気システムの要求量、補修活動、淡水要求量、および構成部品の故障などの、ただし限定ではないプラントの稼働に対する現行の制約条件を使用して期待される性能を求めることも含むことができる。パラメータ化された方程式および制約条件を解く408ことは、将来の熱バランスが求められた期待される性能に等しくなるように現行の熱バランスを修正するように調整するためのパラメータを求めることも含むことができる。
【0021】
代替の実施形態では、パラメータ化された連立方程式および制約条件を解くこと408は、プラント全体に対する入口条件を求めること、この求められた入口条件およびプラント全体の所定のモデルに基づいて全体のアウトプットを予測すること、プラント全体の現行のアウトプットを求めること、予測されたアウトプットを求められたアウトプットと比較すること、および求められたアウトプットが予測されたアウトプットに等しくなるまでプラントパラメータを調整することとを含む。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)108および蒸気タービンを備える複合サイクル/複合プロセスプラント100のパラメータ設定値を決定するための方法であって、
発電プラント性能をシミュレートするステップと、
プロセスプラント性能をシミュレートするステップと、
発電プラントおよびプロセスプラントのシミュレーション結果を使用して、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化するステップであって、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化することは、ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)などの構成部品の効率を計算することを含むステップと、
複合サイクル発電/蒸気使用プロセスプラントの効率を高めることを促進するパラメータ設定値を求めるステップと、
を含む、
方法。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-1741号公報(以下「引用文献2」という。)には、「ガスタービン用吸気冷却装置、ガスタービンプラント、既設ガスタービンプラントの再構築方法、及び、ガスタービンの吸気冷却方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
従来、圧縮機、燃焼器及びタービンを基本構成とする発電用ガスタービンでは、圧縮機へ吸気される吸込空気の温度によってタービンにおける出力が影響を受ける。すなわち、特に夏季においては、大気温度が上昇するために、吸込空気の密度が低下して、質量流量が低下し、出力が低下する。このような出力低下を抑止するために、上記吸込空気を冷却する吸気冷却装置を備えるものがある。」

イ 「【0057】
ガスタービン用吸気冷却装置10は、冷凍機11を駆動させて発電用ガスタービン2に吸気される空気A1を冷却する第一の冷却手段12と、加湿することで発電用ガスタービン2に吸気される空気A1を冷却する第二の冷却手段13と、第一の冷却手段12及び第二の冷却手段13のそれぞれを稼動または非稼動に切替可能な冷却制御部20とを備える。本実施形態では、圧縮機2aの吸気流路には、上流側から第一の冷却手段12、第二の冷却手段13の順で配置されている。
【0058】
第一の冷却手段12は、吸気される空気A1との間で熱交換を行い冷却させる第一熱交換器12aと、外気との間で熱交換を行い放熱させる第二熱交換器12bと、第一熱交換器12aと第二熱交換器12bの間に設けられて電力により駆動する冷凍機11と、冷凍機11の駆動を制御する冷凍機制御部12cとを有する。第一熱交換器12aと冷凍機11との間には循環路をなす第一配管12dが配されており、内部に冷水が循環している。同様に第二熱交換器12bと冷凍機11との間にも循環路をなす第二配管12eが配されており、内部に冷却水が循環している。そして、冷凍機11は、冷凍機制御部12cによる制御のもと、内部の冷媒から第二配管12eを循環する冷却水に放熱し、第一配管12dを循環する冷水との間で吸熱することで、第一配管12dを循環する冷水を冷却させる。そして、第一熱交換器12aにおいて、冷凍機11で冷却された第一配管12dを循環する冷水と吸気される空気A1との間で熱交換を行うことで、空気A1は冷却される。ここで、冷凍機制御部12cは、冷却制御部20と接続されており、冷却制御部20から入力される制御信号に基づいて、冷凍機11を駆動させて第一熱交換器12aで空気A1を所望の温度まで冷却することが可能となっている。」

ウ 「【0065】
要求入口温度演算手段22は、要求入口温度演算工程として、ガスタービン制御部2eから入力される要求出力WPRに基づいて、発電用ガスタービン2が要求出力WPRで出力可能となる吸気温度である要求入口温度TPRを演算する。具体的には、本実施形態では、記憶部28には、圧縮機2aの入口における吸気温度Tと、本構成の発電用ガスタービンにおけるタービン出力との関係(図2の(2))が予め記憶されている。そして、要求入口温度演算手段22は、記憶部28に記憶された吸気温度Tとタービン出力の関係を参照して、タービン出力として要求出力WPRを当て嵌めることで、対応する吸気温度Tとなる要求入口温度TPRを求めることができる。そして、要求入口温度演算手段22は、求めた要求入口温度TPRを後述する必要冷凍動力演算手段23へ出力する。なお、吸気温度Tとタービン出力との関係は、例えば、”Gas Turbine Theory 5th Edition”,Sarabanamuttoo,HIH,et al.,2001“等に示されるものを用いることができる。
【0066】
必要冷凍動力演算手段23は、必要冷凍動力演算工程として、第一の冷却手段12によって要求入口温度TPRまで、吸気される空気を冷却するのに冷凍機11で必要とされる動力である必要冷凍動力WINを演算する。より詳しくは、必要冷凍動力演算手段23は、第一の冷却手段12によって目的とする温度まで冷却するのに奪う必要がある比エンタルピ差Δhを演算する比エンタルピ差演算部23aと、演算された比エンタルピ差Δhに基づいて第一の冷却手段12の冷凍機11で必要とされる必要冷凍能力ΔHを演算する必要冷凍能力演算部23bと、演算された必要冷凍能力ΔHに基づいて冷凍機11で必要とされる動力である必要冷凍動力WINを演算する必要冷凍動力演算部23cとを有する。
【0067】
なお、以下においては、簡単のため、<数1>における加湿冷却効率ηhcが100%、すなわち、「Thmin=TWb」であるものとして説明を行う。
比エンタルピ差演算部23aは、要求入口温度演算手段22から入力される要求入口温度TPRと、大気露点温度演算部21aから入力される露点温度Tdと、大気温度測定部15から入力される乾球温度Tamb(図2の(5))と、大気湿度測定部16から入力される絶対湿度φamb(図2の(4))とに基づいて、現在の大気を第一の冷却手段12で要求入口温度TPRまで冷却するのに現在の大気から奪う必要のある比エンタルピ差Δhを演算する。具体的には、比エンタルピ差演算部23aは、図3に示す記憶部28に記憶されたNC線図(図2の(1))を参照し、入力された乾球温度Tamb及び絶対湿度φambを入力し、現在の大気の状態を表す点Bを求める。さらに、比エンタルピ差演算部23aは、要求入口温度TPRを入力し、吸気温度Tが要求入口温度TPRで相対湿度100%である点Aを求める。次に、現在の大気の状態を表す点Bが、点Aを通る湿球温度一定線Laよりも低温側にあるかどうか判定する。そして、現在の大気の状態を表す点Bが湿球温度一定線Laよりも低温側にあると判定された場合には、比エンタルピ差Δhを「0」として出力する。これは、乾球温度Tambが要求入口温度TPR以下である場合には、冷却する必要がなく、また、乾球温度Tambが要求入口温度TPRより高くても湿球温度一定線Laよりも低温側にある場合には、加湿冷却だけで良いからである。詳細は後述する。なお、現在の大気の状態を表す点Bが湿球温度一定線Laよりも低温側とは、図3において、大気の状態を表す点BがT=TPR一定の線よりも吸気温度Tが小さい領域Xに位置(例えば、点B1)するか、または、T=TPR一定の線と点Aを通る湿球温度一定線Laとで挟まれた領域Y1に位置(例えば、点B2)することを意味する。
【0068】
また、比エンタルピ差演算部23aは、現在の大気の状態を表す点Bが湿球温度一定線Laよりも高温側にある場合には、次に露点温度Tdと要求入口温度TPRとの大小比較を行い、露点温度Tdが要求入口温度TPR未満である場合と、露点温度Tdが要求入口温度TPR以上である場合とで異なる演算を行う。ここで、露点温度Tdが要求入口温度TPR未満であるとは、図3において、現在の大気の状態を表す点Bが湿球温度一定線Laよりも高温側で、かつ、点Bの絶対湿度φambが点Aにおける絶対湿度φA未満となる領域Y2に位置(例えば、点B3)することである。また、露点温度Tdが要求入口温度TPR以上になるとは、図3において、大気の絶対湿度φambが点Aにおける絶対湿度φA以上となる領域Zに位置(例えば、点B4)することである。
【0069】
まず、露点温度Tdが要求入口温度TPR以下である場合(領域Y2)では、現在の大気の状態である点B3から、点Aと湿球温度TWbが同一となる点B3´まで冷却するのに奪う必要がある比エンタルピ差Δhを求める。これは後述するように、点B3´の状態から要求入口温度TPRまでは第二の冷却手段13によっても冷却可能であることによる。また、露点温度Tdが要求入口温度TPRより高い場合(領域Z)では、現在の大気の状態である点B4から、露点温度Td4となるまで冷却し、さらに要求入口温度TPRとなる点Aまで冷却するのに奪う必要がある比エンタルピ差Δhを求める。なお、具体的な比エンタルピ差Δhの算出は、以下の<数2>により行われる。ここで、<数2>において、関数fはNC線図によって求められるものである。そして、比エンタルピ差演算部23aは、求めた比エンタルピ差Δhを必要冷凍能力演算部23bへ出力する。」

エ 「【0080】
稼動決定手段27は、稼動決定工程として、第一の冷却手段12及び第二の冷却手段13の稼動、非稼動を決定し、非稼働の場合には駆動停止とする制御信号を、また、稼働の場合には所望の吸気冷却となるように制御信号を、第一の冷却手段12の冷凍機制御部12c介して冷凍機11に、また、加湿制御部13dを介して第二の冷却手段13の加湿用ポンプ13cにそれぞれ出力する。ここで、稼動決定手段27には、差分収入演算手段25から差分収入INC、差分コスト演算手段26から差分コストCc、大気温度測定部15から乾球温度Tamb(図2の(5))、大気露点温度演算部21aから露点温度Td(図2の(6))、加湿冷却最低温度演算部21bから湿球温度TWb(図2の(7))、また、要求入口温度演算手段22から要求入口温度TPR(図2の(8))がそれぞれ入力されている。そして、稼動決定手段27は、これら入力された差分収入INC、差分コストCc、乾球温度Tamb、露点温度Td、湿球温度TWb及び要求入口温度TPRに基づいて、図4に示す判定フローに基づいて第一の冷却手段12及び第二の冷却手段13のそれぞれの稼動、非稼動の決定を行っている。以下に詳細を示す。
【0081】
図4に示すように、稼動決定手段27は、まず、大気の乾球温度Tambが要求入口温度TPR以下かどうかを判定する(ステップS1)。そして、乾球温度Tambが要求入口温度TPR以下である場合(YES)、すなわち現在の大気の状態が図3に示す領域Xであり、冷却しないまま大気を吸気しても発電用ガスタービン2で要求出力WPRを得ることができる場合となり、稼動決定手段27は、第一の冷却手段12及び第二の冷却手段13ともに非稼動(OFF)と決定する(ステップS11)。一方、乾球温度Tambが要求入口温度TPRよりも高い場合(NO)、すなわち発電用ガスタービン2で要求出力WPRを得るには吸気冷却を行う必要がある場合には、次の判定ステップに移行する。
【0082】
すなわち、稼動決定手段27は、次に大気の加湿冷却最低温度Thminが要求入口温度TPR以下かどうか判定する(ステップS2)。そして、加湿冷却最低温度Thminが要求入口温度TPR以下である場合(YES)、すなわち現在の大気の状態が図3に示す領域Yの内、点Aを通る湿球温度一定線Laよりも低温側の領域Y1となる場合には、稼動決定手段27は、第一の冷却手段12を非稼動(OFF)とするとともに、第二の冷却手段13を稼動(ON)とする(ステップS12)。これにより、発電用ガスタービン2の吸気は、第二の冷却手段13のみで加湿冷却されることとなる。ここで、領域Y1は、吸気温度Tが要求入口温度TPRとなる点Aを通る湿球温度一定線Laよりも低温側であることから、加湿冷却を行うと、例えば点B2で表わされる大気の状態から、加湿冷却最低温度Thminに達するまでに目標とする要求入口温度TPRとなる点B2´まで冷却することができ、発電用ガスタービン2により要求出力WPR分だけ出力することが可能となる。一方、加湿冷却最低温度Thminが要求入口温度TPRより高い場合(NO)、すなわち現在の大気の状態が図3に示す湿球温度一定線Laよりも高温側となる場合には、次の判定ステップに移行する。
【0083】
そして、稼動決定手段27は、大気の露点温度Tdが要求入口温度TPRより低いかどうか判定する(ステップS3)。そして、露点温度Tdが要求入口温度TPR以上である場合(NO)、すなわち現在の大気の状態が図3に示す領域Zである場合は、ステップS4に移行し、また、露点温度Tdが要求入口温度TPR以下である場合(YES)、すなわち現在の大気の状態が図3に示す領域Yの内、点Aを通る湿球温度一定線Laよりも高温側の領域Y2となる場合には、ステップS5に移行する。そして、各ステップS4、S5では、稼動決定手段27は、差分収入INCと差分コストCcの大小を比較する。」

上記記載事項及び図面(特に、図3及び4を参照。)の図示内容から、引用文献2には次の事項が記載されている(以下「引用文献2記載事項」という。)。

〔引用文献2記載事項〕
「ガスタービン用吸気冷却装置であって、ガスタービンに流入する吸気を要求入口温度TPRまで冷却するのに必要な冷凍機11の電力を演算し、前記演算において、露点温度Tdが要求入口温度TPR以下であるか露点温度Tdが要求入口温度TPRより高いかを考慮するガスタービン用吸気冷却装置。」

3 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「熱回収蒸気発生器(HRSG)108」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件補正発明における「熱回収蒸気発生器(HRSG)108」に相当し、以下同様に、「複合サイクル/複合プロセスプラント100」は「複合サイクル発電プラント」及び「前記発電プラント」に、「パラメータ設定値」は「動作設定点」及び「動作設定値」に、それぞれ相当する。
引用発明における「発電プラント性能をシミュレートするステップと、プロセスプラント性能をシミュレートするステップと、発電プラントおよびプロセスプラントのシミュレーション結果を使用して、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化するステップであって、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化することは、ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)などの構成部品の効率を計算することを含むステップと、複合サイクル発電/蒸気使用プロセスプラントの効率を高めることを促進するパラメータ設定値を求めるステップ」と、本件補正発明における「前記ガスタービン、前記HRSG、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムの、動作および性能のうちの少なくとも1つをモデル化するデジタルモデルを用いるステップと、前記デジタルモデルと相互作用する人工ニューラルネットワークを用いて、前記デジタルモデルを相関させるステップと、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートするステップと、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを調整することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正するステップと、前記発電プラント、前記ガスタービン、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムのうちの少なくとも1つの異なる動作設定値において、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートし、前記動作設定値のうちの少なくとも1つを最適な動作設定値として選択することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つの前記シミュレーションを最適化するステップと、前記最適な動作設定値に基づいて、前記発電プラントの動作設定値を設定するステップ」とは、「前記発電プラントの性能をシミュレートして、前記発電プラントの最適な動作設定値を設定するステップ」という限りにおいて一致している。
そうすると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点がある。

〔一致点〕
「ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)および蒸気タービンを備える複合サイクル発電プラントの動作設定点を決定するための方法であって、
前記発電プラントの性能をシミュレートして、前記発電プラントの最適な動作設定値を設定するステップと、
を含む、方法。」

〔相違点1〕
「前記発電プラントの性能をシミュレートして、前記発電プラントの最適な動作設定値を設定するステップ」に関して、本件補正発明においては「前記ガスタービン、前記HRSG、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムの、動作および性能のうちの少なくとも1つをモデル化するデジタルモデルを用いるステップと、前記デジタルモデルと相互作用する人工ニューラルネットワークを用いて、前記デジタルモデルを相関させるステップと、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートするステップと、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを調整することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正するステップと、前記発電プラント、前記ガスタービン、前記蒸気タービンおよび前記ダクト点火システムのうちの少なくとも1つの異なる動作設定値において、前記デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークを用いて、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートし、前記動作設定値のうちの少なくとも1つを最適な動作設定値として選択することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つの前記シミュレーションを最適化するステップと、前記最適な動作設定値に基づいて、前記発電プラントの動作設定値を設定するステップ」であるのに対して、引用発明においては、発電プラント性能をシミュレートするステップと、プロセスプラント性能をシミュレートするステップと、発電プラントおよびプロセスプラントのシミュレーション結果を使用して、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化するステップであって、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化することは、ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)などの構成部品の効率を計算することを含むステップと、複合サイクル発電/蒸気使用プロセスプラントの効率を高めることを促進するパラメータ設定値を求めるステップ、である点。

〔相違点2〕
本件補正発明においては「チラーシステム」を備え、「前記チラーシステムの前記熱力学的性能のデジタルモデルは、前記チラーシステムを駆動するのに必要な電力を前記ガスタービンに流入する吸気の所望の温度に対応付けるアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムは、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮に入れる」ものであるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

〔相違点3〕
本件補正発明においては「HRSGのダクト点火システム」を備えるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

相違点1について検討する。
発電プラントの運転に関するシミュレーションや予測に、人工ニューラルネットワークを用いることは本願の優先日前に周知の技術である(以下「周知技術1」という。例えば、特開2007-272361号公報の段落【0002】ないし【0006】、特開2005-157685号公報の段落【0002】および【0003】を参照。)。
そうすると、引用発明において周知技術1を参酌し、人工ニューラルネットワークを用いて、発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つをシミュレートするように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。
また、プラントの運転に関するシミュレーションや予測において、人工ニューラルネットワークを用いて複数のデジタルモデルを相関させることも本願の優先日前に周知の技術である(以下「周知技術2」という。例えば、特開平7-281714号公報の段落【0035】、【0036】、【0049】及び【0050】並びに図3及び9、特開2009-162231号公報の段落【0063】、【0064】及び【0074】ないし【0076】並びに図6及び8を参照。)。
引用発明は、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化する際に、ガスタービン、熱回収蒸気発生器(HRSG)などの構成部品の効率を計算するものであるから、引用発明において周知技術2を参酌し、構成部品であるガスタービン、HRSGおよび蒸気タービンの、動作および性能のうちの少なくとも1つをモデル化するデジタルモデルを、人工ニューラルネットワークを用いて相関させるステップを設けることは、当業者が容易に想到できたことである。
さらに、モデルを調整することにより、発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正する点に関しては、引用文献1の段落【0015】の「測定されたデータに可能な限り近接して一致するようにプラントの質量およびエネルギバランスモデルを調整するアルゴリズムをコンピュータ処理するために、DAM210およびデータベース/ヒストリアン212からデータを受信する。モデルと測定データの間の差異は、データ内の誤りを示す場合がある。」との記載に示唆されているし、例えば、前出の特開平7-281714号公報の段落【0037】及び【0038】、前出の特開2009-162231号公報の段落【0077】に記載されているように、本願優先日前の周知の技術でもある(以下「周知技術3」という。)。そうすると、デジタルモデルおよび前記人工ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを調整することにより、前記発電プラントの動作および性能のうちの少なくとも1つを補正するステップを設けることは、当業者が容易に想到できたことである。
加えて、異なる動作設定値においてシミュレートを行い、前記動作設定値のうちの少なくとも1つを最適な動作設定値として選択することにより、前記シミュレーションを最適化し、最適な動作設定値に基づいて、動作設定値を設定することは、シミュレーションにより最適値を見いだすために普通に行われている事項である。
以上を踏まえると、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、引用発明において、周知技術1ないし3を参酌することにより、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は上記のとおり「ガスタービン用吸気冷却装置であって、ガスタービンに流入する吸気を要求入口温度TPRまで冷却するのに必要な冷凍機11の電力を演算し、前記演算において、露点温度Tdが要求入口温度TPR以下であるか露点温度Tdが要求入口温度TPRより高いかを考慮するガスタービン用吸気冷却装置。」というものである。
本件補正発明と引用文献2記載事項とを対比すると、引用文献2記載事項における「ガスタービン用吸気冷却装置」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件補正発明における「チラーシステム」に相当し、以下同様に、「要求入口温度TPR」は「所望の温度」に、「露点温度Td」は「吸気の露点」に、「露点温度Tdが要求入口温度TPR以下であるか露点温度Tdが要求入口温度TPRより高いかを考慮」は「吸気の露点の下にある所望の温度を考慮」に、それぞれ相当する。また、引用文献2記載事項における「冷凍機11」は「ガスタービン用吸気冷却装置」の一部であるから、本件補正発明における「チラーシステム」に含まれる。
そうすると、引用文献2記載事項は、本件補正発明の用語を用いると「チラーシステムであって、ガスタービンに流入する吸気を所望の温度まで冷却するのに必要なチラーシステムの電力を演算し、前記演算において、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮するチラーシステム。」ということができる。
引用発明もガスタービンを備えるから、引用文献2記載事項を参酌し、ガスタービンに流入する吸気を所望の温度まで冷却するのに必要なチラーシステムの電力を演算し、前記演算において、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮するチラーシステムを備えたものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、引用発明は、プラント装置およびプラント性能をパラメータ化する際に、構成部品の効率を計算するものであるから、構成部品となるチラーシステムについてもモデル化したデジタルモデルを用いることは、当業者が容易に想到できたことであり、引用文献2記載事項をモデル化して実現する場合に、チラーシステムの熱力学的性能のデジタルモデルを、チラーシステムを駆動するのに必要な電力をガスタービンに流入する吸気の所望の温度に対応付けるアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムは、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮に入れるものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。

上記相違点3について検討する。
引用文献1の段落【0013】には、システムの運転者が変更することができる事項として「ダクト燃焼」との記載があることから、引用発明において、熱回収蒸気発生器(HRSG)に、ダクト点火システムを設けることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本件補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術1ないし3から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。


したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成31年1月31日付けの手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1 」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし4に対して:引用文献等1ないし4

<引用文献等一覧>
1.特開2006-220151号公報
2.特開2014-1741号公報
3.特開2007-272361号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2005-157685号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-220151号公報)及び引用文献2(特開2014-1741号公報)並びにその記載事項及び引用発明は、前記「第2 〔理由〕2」に記載したとおりである。

4 当審の判断
本件補正発明は、上記「第2〔理由〕1 」で述べたように、本願発明の「複合サイクル発電プラント」について、「チラーシステム」を備える、及び、「前記チラーシステムの前記熱力学的性能のデジタルモデルは、前記チラーシステムを駆動するのに必要な電力を前記ガスタービンに流入する吸気の所望の温度に対応付けるアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムは、前記吸気の露点の下にある所望の温度を考慮に入れる」との限定を付したものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる。
そして、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる本件補正発明が、上記「第2〔理由〕3 」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-02 
結審通知日 2020-06-05 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2015-24857(P2015-24857)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01K)
P 1 8・ 575- Z (F01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金田 直之  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
西中村 健一
発明の名称 複合サイクル発電プラントの最適化のための方法およびシステム  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
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