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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1367839 |
審判番号 | 不服2019-14089 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-10-23 |
確定日 | 2020-11-04 |
事件の表示 | 特願2016-524329「システム生物学的アプローチによる療法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日国際公開、WO2015/003000、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530500〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月1日 アメリカ合衆国、2013年11月6日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月1日に手続補正書が提出され、平成30年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年5月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月16日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年6月20日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和元年10月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年10月23日にされた手続補正(以下「本件補正」ということがある。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。) 「 【請求項1】 治療を必要とする生体の疾患状態の治療を開発するための方法であって、該方法は、 (1) 健常者及び患者の生体から得られた生体試料を取得する工程で、前記生体試料が、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるところの、その生体試料を取得する工程、 (2) 上記生体試料を、電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーにより解析し、健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物の分析物測定値を取得する工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のプロテオームの外側の所又は生体試料のプロテオームにある配位結合されたメタボローム又はDNAとRNAにある配位及び共有結合するメタボロームのいずれか、あるいは、腸内マイクロバイオームのメタボロームを含むものであるところの、その分析物測定値を取得する工程、 (3) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている2つずつ組み合わせたものの中の健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程、 (4) 健常者個体のカテゴリーを患者個体のカテゴリーからカテゴリー間分離するのを許容する少なくとも一つの要因を決定する工程、 (5) 上記少なくとも一つの要因を含んでいる少なくとも一つの生化学的経路を決定する工程、 (6) 健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーに関して上記少なくとも一つの生化学的経路の相関ネットワークをマッピングする工程で、ここで当該相関ネットワークは、上記生きている個人のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、及び腸内マイクロバイオーム、そして、当該個々の生体がさらされている環境要因のうちの二つ以上をリンクするものであるところの、その相関ネットワークをマッピングする工程、 (7) 治療有効量の治療用化合物であって、該治療用化合物は、患者個体のカテゴリーよりの電気的に活性な化合物の測定値を、健常者個体のカテゴリーから得られた相関している測定された電気的に活性な化合物の測定値に対して、それに合うように調整するように選択され、その治療用化合物で処置された患者個体より得た生体試料を使用する工程、及び (8) 上記工程(2)-(6)を繰り返し、その分析物測定値における変化を決定する工程 を含むことを特徴とする当該方法。 【請求項2】 治療を必要とする生体の疾患状態の治療を開発するための方法であって、該方法は、 (1) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子又は腸内マイクロバイオームのメタボロームのいずれか、あるいは、生体試料のプロテオームの外側の所にある又はその生体試料のプロテオームにある配位結合する小さな有機分子を含むものであり、ここで前記生体試料は、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるもので、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程、 (2) 健常者個体のカテゴリーを患者個体のカテゴリーからカテゴリー間分離するのを許容する少なくとも一つの要因を決定する工程、 (3) 上記少なくとも一つの要因を含んでいる少なくとも一つの生化学的経路を決定し、そして、健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーに関して上記少なくとも一つの生化学的経路の相関ネットワークをマッピングする工程で、ここで当該相関ネットワークは、上記生体のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、及び腸内マイクロバイオーム、そして、当該個々の生体がさらされている環境要因のうちの二つ以上をリンクするものであるところの、その相関ネットワークをマッピングする工程、 (4) 治療有効量の第一の治療用化合物と治療有効量の第二の治療用化合物であって、 ここで該第一及び第二の治療用化合物は、患者個体のカテゴリーよりの電気的に活性な化合物の測定値を、健常者個体のカテゴリーから得られた相関している測定された電気的に活性な化合物の測定値に対して、それに合うように調整するように選択されるものであるところの、その第一及び第二の治療用化合物で処置された患者生体より得た生体試料を使用する工程、及び (5) 上記工程(1)-(3)を繰り返し、その少なくとも一つの生化学的経路における変化を決定する工程 を含むことを特徴とする当該方法。 【請求項3】 個体の生体試料の内のプロテオーム、ゲノム及びトランスクリプトームのうちの少なくとも一つとのメタボロミック相互作用を決定する方法であって、該方法は、 (A)当該個体から得られた第一の生体試料を取得する工程で、前記第一の生体試料が、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるところの、その第一の生体試料を取得する工程、 (B)上記第一の生体試料の周辺部にある高分子に配位結合している少なくとも一つの代謝物質のレベルについて、上記個体の上記第一の生体試料からの該第一の生体試料の周辺部にある分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、電気化学的に検出する多電極液体クロマトグラフィー(LCEC)アレイを使用した該第一の生体試料での第一の測定を実行する工程、 (C)当該個体から得られた第二の生体試料を取得する工程で、前記第二の生体試料が、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるところの、その第二の生体試料を取得する工程、 (D)上記第二の生体試料のプロテオームにある高分子に共有結合しているか、あるいは、上記第二の生体試料のゲノム又はトランスクリプトームにある高分子に共有又は配位結合している少なくとも一つの代謝物質のレベルについて、多電極LCECアレイを使用した該第二の生体試料での第二の測定を実行する工程、 (E)上記第一及び第二の測定に基づいて、該第一の生体試料及び該第二の生体試料における分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、工程(B)で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベル及び工程(D)で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベルの相関関係について、第一のマッピングを実行する工程、 (F)追加とした個体からの追加の第一及び第二の生体試料を使用して、工程(A)、(B)、(C)及び(D)を繰り返し実行する工程、 (G)工程(B)及び(D)の繰り返し行われた測定に基づいて、上記追加の第一の生体試料及び上記追加の第二の生体試料における分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、工程(B)の繰り返しての測定で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベル及び工程(D)の繰り返しての測定で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベルの相関関係について、第二のマッピングを実行する工程 を含み、ここで上記工程において前記分画物又は分画物の集団は、タンパク質、DNA、及びRNAからなる群から選択されるものであることを特徴とする当該方法。 【請求項4】 前記生体試料が、肝臓、心血管系、脳、腎臓、筋肉、及びミトコンドリア核の細胞内機能からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成31年1月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 LC-ECを使用し、健常者カテゴリーの個体と患者カテゴリーの個体との間で生体試料からの複数の電気的に活性な化合物の測定を取得し、 当該データを使用し、生体試料のプロテオームの周辺部にある又はその生体試料のプロテオームにある配位結合されたメタボロームをマッピングするか、あるいは、DNAとRNAにある配位及び共有結合するメタボローム又は腸内マイクロバイオームのメタボロームをマッピングし、 上記2つずつ組み合わせたものの間で生化学ネットワークでの相関関係における測定可能な物質的な変化を解析し、ここでは当該生化学ネットワークは、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、腸内マイクロバイオーム、及び環境要因の二つ以上をリンクするものであり、 当該健常者カテゴリーの個体と当該患者カテゴリーの個体との間で該生化学ネットワークにおける測定可能な物質的な相違点を同定し、 生体の疾患状態を治療するための少なくとも一つの治療処置用化合物であって、該少なくとも一つの治療処置用化合物は、当該患者カテゴリーの個体からの電気的に活性な化合物の測定値を、当該健常者カテゴリーの個体から得られた相関している測定された電気的に活性な化合物の測定値に対して、それに合うように調整するものであるところのその少なくとも一つの治療処置用化合物を選択する工程を含む、治療を必要とする当該疾患状態の治療を開発するための方法。 【請求項2】 該疾患状態が、セリアック病、過敏性腸疾患、憩室炎、貧血症、及び成長障害からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 上記健常者カテゴリーの個体と患者カテゴリーの個体は、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、高齢者対非高齢者、鬱病患者と健常者、鬱病患者で治療薬に反応する者と反応しない者、鬱病患者で選択的セトロニン再取り込み阻害薬に反応する者と反応しない者、鬱病患者でケタミンに反応する者と反応しない者、軽度認知障害者と健常者、軽度認知障害者で、療法に反応する者と反応しない者、統合失調症患者と健常者、統合失調症患者で、療法に反応する者と反応しない者、パーキンソン病患者と健常者、パーキンソン病患者で、療法に反応する者と反応しない者、筋萎縮性側索硬化症患者と健常者、筋萎縮性側索硬化症患者で、療法に反応する者と反応しない者、胃腸疾患者と健常者、及び胃腸疾患者で、療法に反応する者と反応しない者からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 (1) 健常者及び患者の生体から生体試料を取得する工程で、前記生体試料が、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるところの、その生体試料を取得する工程、 (2) 上記生体試料を、電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーにより解析し、健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物の分析物測定値を取得する工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のプロテオームの外側の所又は生体試料のプロテオームにある配位結合されたメタボローム又はDNAとRNAにある配位及び共有結合するメタボロームのいずれか、あるいは、腸内マイクロバイオームのメタボロームを含むものであるところの、その分析物測定値を取得する工程、 (3) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている2つずつ組み合わせたものの中の健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程、 (4) 健常者個体のカテゴリーを患者個体のカテゴリーからカテゴリー間分離するのを許容する少なくとも一つの要因を決定する工程、 (5) 上記少なくとも一つの要因を含んでいる少なくとも一つの生化学的経路を決定する工程、 (6) 健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーに関して上記少なくとも一つの生化学的経路の相関ネットワークをマッピングする工程で、ここで当該相関ネットワークは、上記生きている個人のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、及び腸内マイクロバイオーム、そして、当該個々の生体がさらされている環境要因のうちの二つ以上をリンクするものであるところの、その相関ネットワークをマッピングする工程、 (7) 治療有効量の治療用化合物であって、該治療用化合物は、患者個体のカテゴリーよりの電気的に活性な化合物の測定値を、健常者個体のカテゴリーから得られた相関している測定された電気的に活性な化合物の測定値に対して、それに合うように調整するように選択されるものであるところの、その治療用化合物で処置された患者個体より得た生体試料を使用する工程、及び (8) 上記工程(2)-(6)を繰り返し、その分析物測定値における変化を決定する工程を含む、治療を必要とする生体の疾患状態の治療を開発するための方法。 【請求項5】 (1) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子又は腸内マイクロバイオームのメタボロームのいずれか、あるいは、生体試料のプロテオームの外側の所にある又はその生体試料のプロテオームにある配位結合する小さな有機分子を含むものであり、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程、 (2) 健常者個体のカテゴリーを患者個体のカテゴリーからカテゴリー間分離するのを許容する少なくとも一つの要因を決定する工程、 (3) 上記少なくとも一つの要因を含んでいる少なくとも一つの生化学的経路を決定し、そして、健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーに関して上記少なくとも一つの生化学的経路の相関ネットワークをマッピングする工程で、ここで当該相関ネットワークは、上記生体のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、及び腸内マイクロバイオーム、そして、当該個々の生体がさらされている環境要因のうちの二つ以上をリンクするものであるところの、その相関ネットワークをマッピングする工程、 (4) 治療有効量の第一の治療用化合物と治療有効量の第二の治療用化合物であって、 ここで該第一及び第二の治療用化合物は、患者個体のカテゴリーよりの電気的に活性な化合物の測定値を、健常者個体のカテゴリーから得られた相関している測定された電気的に活性な化合物の測定値に対して、それに合うように調整するように選択されるものであるところの、その第一及び第二の治療用化合物で処置された患者生体より得た生体試料を使用する工程、及び (5) 上記工程(1)-(3)を繰り返し、その少なくとも一つの生化学的経路における変化を決定する工程を含む、治療を必要とする生体の疾患状態の治療を開発するための方法。 【請求項6】 個体の生体試料の内のプロテオーム、ゲノム及びトランスクリプトームのうちの少なくとも一つとのメタボロミック相互作用を決定する方法であって、該方法は、 (A)当該個体から第一の生体試料を取得する工程、 (B)上記第一の生体試料の周辺部にある高分子に配位結合している少なくとも一つの代謝物質のレベルについて、上記個体の上記第一の生体試料からの該第一の生体試料の周辺部にある分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、電気化学的に検出する多電極液体クロマトグラフィー(LCEC)アレイを使用した該第一の生体試料での第一の測定を実行する工程、 (C)当該個体から第二の生体試料を取得する工程、 (D)上記第二の生体試料のプロテオームにある高分子に共有結合しているか、あるいは、上記第二の生体試料のゲノム又はトランスクリプトームにある高分子に共有又は配位結合している少なくとも一つの代謝物質のレベルについて、多電極LCECアレイを使用した該第二の生体試料での第二の測定を実行する工程、 (E)上記第一及び第二の測定に基づいて、該第一の生体試料及び該第二の生体試料における分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、工程(B)で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベル及び工程(D)で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベルの相関関係について、第一のマッピングを実行する工程、 (F)追加とした個体からの追加の第一及び第二の生体試料を使用して、工程(A)、(B)、(C)及び(D)を繰り返し実行する工程、 (G)工程(B)及び(D)の繰り返し行われた測定に基づいて、上記追加の第一の生体試料及び上記追加の第二の生体試料における分画物又は分画物の集団のレベルの機能として、工程(B)の繰り返しての測定で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベル及び工程(D)の繰り返しての測定で測定された上記少なくとも一つの代謝物質のレベルの相関関係について、第二のマッピングを実行する工程を含むことを特徴とする方法。 【請求項7】 前記第一又は第二の生体試料が、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択され、前記分画物の集団が、タンパク質,DNA、及びRNAからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記生体試料が、肝臓、心血管系、脳、腎臓、筋肉、及びミトコンドリア核の細胞内機能からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。」 2 補正の適否 本件補正のうち、請求項2に係る補正は、補正前の請求項1ないし3の削除に伴い、補正前の請求項5を新たな請求項2とするとともに、「生体試料」について、「唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるもので」あることを特定して限定する補正を含むものであって、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明は、上記1(1)の【請求項2】に記載したとおりのものである。 ア 本件補正発明は、発明特定事項として「(1) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子又は腸内マイクロバイオームのメタボロームのいずれか、あるいは、生体試料のプロテオームの外側の所にある又はその生体試料のプロテオームにある配位結合する小さな有機分子を含むものであり、ここで前記生体試料は、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるもので、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程」(以下「電気信号生成行程」という。下線は当審で付加した。)を含んでいる。 イ 上記電気信号生成工程において、「当該関わっている被検物」は、その前に記載された「複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値」における「被検物」を指すことから、上記電気信号生成工程は、「電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる」「電気的に活性な」「生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子」の「分析物測定値」をモデリングすることを包含している。 ウ そこで、「生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子」を「電気化学的に検出する液体クロマトグラフィー」により測定すること(以下「本件補正発明測定事項」という。)が、本願の発明の詳細な説明に記載したものであるか、以下検討する。 (2)発明の詳細な説明の記載事項 ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は当審で付加した)。 「【技術分野】 【0001】 人体の制御系には、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、腸内マイクロバイオーム、及び環境間での機能的な相互作用ネットワークが関与する。そして、相互作用効果により、臓器である肝臓、心血管系、脳、腎臓、筋肉、及びミトコンドリア核の細胞内機能が制御される。図1に、従来の生化学的メカニズムの考え方を示す。DNAがRNAを合成し、RNAはタンパク質を合成し、タンパク質/酵素類は低分子類を制御し、低分子類は腸内から系内に取り込まれ、腸はこれら低分子類を環境から得る。 【背景技術】 【0002】 従来のモデルは、機能性あるいは個人の健康またはリスク状態を実際に規定する、コンパートメント間のより複雑な相互作用やフィードバックを考慮せず、あるいは、それらを概して測定しないために限界がある。図1に、このフィードバック及び制御の構成要素を示す。ゲノムDNAは、腸内マイクロバイオームの集団的組成に影響を与え、腸内マイクロバイオームは低分子類(メタボローム)に影響を及ぼす。メタボロームからのフィードバックはゲノムの機能性に影響を与え、それによってトランスクリプトーム(RNA)に影響を及ぼす。トランスクリプトームはコードするタンパク質/酵素類(プロテオーム)に影響を与え、それによってシグナル伝達及びプロセス用低分子類の遷移を制御し、そのことがゲノム、プロテオーム、及びトランスクリプトームの機能性に影響を及ぼす。環境、食物、ストレス、及び毒素類は、メタボロームや腸内マイクロバイオーム等に影響を与える。 【0003】 また、図2を参照すると、典型的な測定やマッピングは、A1遺伝学、A2遺伝子発現、A3プロテオミクス、及びA4メタボロミクスのコンパートメント内で行われる。典型的には、遺伝的リスク要因をA1で、異常な遺伝子発現をA2で、疾患に関与した異常なタンパク質をA3で、疾患または応答を規定する分子類または分子パターン(バイオマーカー)をA4で検索される。これまで軽視されているのは、腸内マイクロバイオームのマッピング、特に低分子類のフットプリンティングである。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】米国特許第6,210,970号明細書 【特許文献2】国際公開第2013/148709号(国際出願第PCT/US2013/033918号) 【特許文献3】米国特許第6,194,217号明細書 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の二つの根本的概念として、第一に、疾患は症状ではなく、これら機能間の生化学的な制御またはフィードバックの欠陥であるということが挙げられる。疾患や症状と呼ばれるものは、制御の欠陥の結果として後に起こるものである。従って、この欠陥によって、例えば、症状の進展に寄与する単一の遺伝的リスク要因が明らかとなり、リスク低減への道筋がつけられる。 【0006】 第二に、これまで単一の標的に介入するという療法の概念に集中してきたが、現実に即したアプローチは、相互作用またはフィードバック網全体の機能性の正常化または最適化を行うことである。相互作用網をまとめて一つの標的とする。このような「omic」機能の相互作用は、個々の遺伝子、転写産物、タンパク質、及び低分子類の相関図並びに測定値と共にマッピングすることができ、疾患状態の制御の相違点が明らかとなる。メタボロミクス、プロテオミクス、及びゲノム間の相互作用及び相関関係をマッピングすることで、疾患状態の制御が健常者と異なる複数のポイントが明らかとなる。これによって、続いて、相互作用ネットワークを正常化または最適化するための介入に用いられる複数の化合物が特定される。 【0007】 類似性の観点から例を挙げると、発症前または発症したハンチントン病患者の制御ネットワークは、ゲノムと環境の枝路を糸としたクモの巣において、一部の糸が他の糸に絡まってしまった状態に例えられる。このような状態の巣を、一つの糸を押し引きすることで修復することはできない。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一態様において、生体の疾患状態の治療開発の方法を提供し、該方法は、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、腸内マイクロバイオーム、及び環境要因の二つ以上をリンクする生化学ネットワークを解析し、治療用のリード化合物を開発するために、健常者及び患者個体群のカテゴリー間で多重成分データを解析する工程を含む。 【0009】 本発明の別の態様において、カテゴリーのコホートは、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者から選択される。 【0010】 本発明は、さらに、上記の手順を用いて補助的または新規の療法的アプローチを開発する方法を提供する。該方法で比較されるコホートは、鬱病患者と健常者、鬱病患者で治療薬に反応する者と反応しない者、鬱病患者でSSRIに反応する者と反応しない者、鬱病患者でケタミンに反応する者と反応しない者、軽度認知障害者と健常者、軽度認知障害者で、療法に反応する者と反応しない者、統合失調症患者と健常者、統合失調症患者で、療法に反応する者と反応しない者、パーキンソン病患者と健常者、パーキンソン病患者で、療法に反応する者と反応しない者、ALS患者と健常者、ALS患者で、療法に反応する者と反応しない者、胃腸疾患者と健常者、及び胃腸疾患者で、療法に反応する者と反応しない者からなる群から選択される。一態様において、胃腸疾患は、セリアック病、IBD、憩室炎、貧血症、及び成長障害から選択される。 【0011】 本発明の別の態様は、周辺部またはプロテオームに配位結合されたメタボロームをプロファイリングする工程を含む。 【0012】 また、本発明のさらなる別の態様は、DNAとRNAに配位及び共有結合したメタボローム、または腸内マイクロバイオームのメタボロームをプロファイリングする工程を含む。 【0013】 さらに、本発明は、グループのカテゴリー間の分離度及び最も関連性の高い単一の要因を決定、または要因の相関比を用いてグループのカテゴリー間の分離度を決定するために、健常者及び患者個体群の腸内マイクロバイオームのメタボロームをモデリングする工程を含む、生体の疾患状態の治療開発の方法を提供する。 【0014】 本発明のさらなる別の態様は、相関ネットワークを用いて、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者から選択されるカテゴリーのコホートで、健常者と患者個体群の経路内及び経路間の差異をマッピングする工程を含む、生体の疾患状態の治療を開発するための方法を提供する。 【0015】 さらに、本発明は、介入において、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者から選択されるコホートのタイプ別に相互作用のネットワークを有利に改変できるように、相関ネットワークと化合物、補因子、及び二次的影響によって明らかにされる健常者及び患者個体群の原因酵素、遺伝子及びプロセスを決定する工程を含む、生体の疾患状態の治療開発の方法を提供する。 【0016】 さらに、本発明は、プロテオメタボローム、ゲノムメタボローム、トランスクリプトームの相互作用を決定する方法であって、該方法は、生体試料中の特定の個物または分画物の集団の機能として、配位結合されたメタボローム分布をプロファイリングする工程を含む。一態様において、前記生体試料は、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択され、前記分画物の集団は、タンパク質,DNA、及びRNAを含む群から選択される。 【0017】 さらに、本発明は、プロテオメタボローム、ゲノムメタボローム、トランスクリプトームの相互作用を決定する方法であって、該方法は、試料中の特定の個々の分子または分画物の集団の機能として、共有結合されたメタボロームの分布をプロファイリングする工程を含む。一態様において、前記試料は、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択され、前記分画物は、タンパク質,DNA、及びRNAを含む群から選択される。 【図面の簡単な説明】 【0018】 本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に述べる詳細な説明から明らかになるであろう。 【0019】 【図1】先行技術による「omic」機能間の関係を示す、相関関係マッピング図である。 【図2】先行技術による「omic」機能間の関係を示す、相関関係マッピング図である。 【図3】本発明の方法に使用される装置の模式図である。 【図4】チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸経路中の化合物間の関係を示す図である。 【図5】チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸経路中の化合物間の関係を示す図である。 【図6】チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸経路中の化合物間の関係を示す図である。 【図7】健常者、発症前、及び発症したHD患者における、腸内代謝物質IPAとの相関的なリンクを示す図である。 【図8】健常者、発症前、及び発症したHD患者における、腸内代謝物質IPAとの相関的なリンクを示す図である。 【図9】健常者、発症前、及び発症したHD患者における、腸内代謝物質IPAとの相関的なリンクを示す図である。 【図10】含硫アミノ酸経路におけるメチオニンとの相関関係を示す図である。 【図11】含硫アミノ酸経路におけるメチオニンとの相関関係を示す図である。 【図12】含硫アミノ酸経路におけるメチオニンとの相関関係を示す図である。 【図13】アミノ酸経路にリンクする、チロシン、トリプトファン、及びプリン類の特定経路中の変化を示す図である。 【図14a】アミノ酸経路にリンクする、チロシン、トリプトファン、及びプリン類の特定経路中の変化を示す図である。 【図14b】アミノ酸経路にリンクする、チロシン、トリプトファン、及びプリン類の特定経路中の変化を示す図である。 【図14c】アミノ酸経路にリンクする、チロシン、トリプトファン、及びプリン類の特定経路中の変化を示す図である。 【図15】相対度数分布を用いて、HD患者と健常者との分離度を示す図である。 【図16】トリプトファンのKEGG経路のデータベースネットワークを示す図である。 【発明を実施するための形態】 【0020】 本発明は、本出願人による特許文献1及び特許文献2の教えに基づき、図3に示す多電極LCECアレイを用いた分析手順を採用する。電気化学アレイで観察されるピークは電子移動(酸化、還元)を示し、電子のモル当量は電流として計測される。研究の初期目的として、影響を受けていると推察されるチロシン、トリプトファン、及びプリン経路中の化合物のデータを出力した。 【0021】 下記図4?6は、ハンチントン病発症患者、ハンチントン病発症前の患者、及び健常者の個体群における化合物のメタボロミクス相関マッピングを示し、後述の療法介入へのインプリケーションとする。 【0022】 図4?6は、健常者、ハンチントン病発症前の患者、及びハンチントン病発症患者、それぞれにおいて、チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸経路中の化合物の関係、酸化ストレスのマーカー、及びゲノムとトランスクリプトーム同定プロセスへのリンクを示す。これによって、メタボローム、ゲノム、及びトランスクリプトーム間でフィードバックループ1と5へのリンクが確立される。 【0023】 図7と8は、健常者、発症前または発症したHD患者、それぞれにおいて、腸内代謝物質IPAへの相関的リンク(ages)を示し、腸内マイクロバイオームのトランスクリプトームとゲノムへのリンクが確立される。 【0024】 図9?11は、含硫アミノ酸(SAM)経路のメチオニンと、チロシン、トリプトファン、及びプリン経路中の他の代謝物質、酸化ストレスのマーカー、腸内マイクロバイオーム状態、及びDNAとRNAのメチル化と酸化的損傷との相関関係を示し、SAM経路(一炭素代謝系の葉酸とプテリン合成)とのリンクが確立される。 【0025】 図12?14は、共通するバリアント酵素や補因子によりSAM経路及び自経路中で相互にリンクされるチロシン、トリプトファン、プリン類に特異的な経路中の変化を示し、それぞれの図は、これら経路における相関関係の変化を、発症前と発症したHD患者を健常者と比べて示す。 【0026】 また、相関ネットワークの変化により疾患状態をカテゴリー化する方法は、個々の化合物のレベルをパターン化して観察する方法とは異なり、それよりもいくぶん優れている。本出願人による先行の特許文献3と特許文献1の教えに従う度数分布解析または化合物比に基づく分離度に関し、その内容は本明細書においてその全体が組み込まれる。例えば、HD患者対健常者で比較した既知化合物や、正判別率(CCR=0.83)対aCCR=0.72のPLS-DAモデルで比較した結果が含まれる。 【0027】 図15は、健常者とHD患者に対して相関度数分布アプローチを採用した場合のHD患者と健常者の分離度を示す。 【0028】 診断または療法上の見識から特定の化合物またはパターンを測定する場合と異なり、これらの相関的パターンは、異なるクラスの患者の原因酵素、補因子、及び非酵素的プロセスの集団的な挙動を反映する。従って、これらの相関的パターンは、腸内マイクロバイオーム、メタボローム、プロテオーム、トランスクリプトーム、及びゲノムのフィードバック制御を反映する。さらに、異なる経路の相互作用によるこれらの相関的パターンは、相互作用網全体を操作し有利に改変する、薬剤を複数用いた疾患介入の必要性と共に、その手段をも反映する。 【0029】 これらの相関ネットワークによると、HD患者では、チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸、酸化保護と損傷制御、経路とDNAやRNAメカニズム中でのバリエーションによるエピジェネティックな効果、及び腸内マイクロバイオームの機能のそれぞれの領域内そして領域間で、系制御の進行的な変化と崩壊が見られる。そして、これら相関ネットワークは、プロテオーム中の酵素類の根本的な集団的挙動を反映する。これら相関ネットワークの相違から、異常な制御ネットワーク中の複数のポイントに対し同時介入を行うためのいくつかのルートが明らかにされる。これらの介入は、本出願者らが炭素代謝またはメチル化で実証したように、エネルギー的及び酸化的損傷における既知の異常と組み合わせて、KEGGデータベースなどのリソースから代謝経路を評価し、さらにゲノムワイド関連(GWAS)データベースなどのゲノムデータベースから原因酵素に関連する遺伝子及び別経路を評価することで導き出される。 【0030】 図16の単純化したトリプトファンの代謝経路の例で、HDへの介入において、一酸化キヌレニン阻害剤によりトリプトファン経路のキヌレニン枝路を3-ヒドロキシキヌレニンへの移行点でブロックし、続いて、保護性のキヌレニン酸の産生をより多くし、中間代謝産物である3-ヒドロキシキヌレニンキノリン酸の産生をより少なくすることを望む場合、別に二つの要素を考慮する必要がある。第一に、キノリン酸の直前の前駆体である3-ヒドロキシアントラニル酸にはアントラニル酸塩を通じた別のルートがあり、アントラニル酸塩は酵素あるいは直接的なフリーラジカルの攻撃によって3-ヒドロキシアントラニル酸へと変換される。第二に、中間体であるキノリン酸は、ミトコンドリアの機能に必須なNADとNADHへと通じる分子である。従って、KMO阻害剤による介入には、NAD/NADHへの別ルートを提供するニコチンアミドまたはナイアシンの補填を伴うべきである。 【0031】 このアプローチの例では、チロシン、トリプトファン、プリン類、SAMと葉酸塩、ニコチンアミドとNAD、及びNADH形成の代謝経路、これらをリンクする補因子と酵素類、さらにエピジェネティックとエネルギー現象の初期分析から、初期の発症前HDに対して、次のような多重成分介入が示唆される。 【0032】 腸内マイクロバイオームの改変により、腸から取り込まれる有益化合物のレベルを上昇させ、系にストレスを及ぼす化合物のレベルを低下させる:該アプローチでは、下記のいずれかあるいは全てが使用される: ・C.Sporogenesの代謝の前駆体であるインドール乳酸塩など、マイクロバイオームに有益な成分を促進する代謝前駆体を選択する; ・フリーラジカルを過剰に産出する肝臓で、P450による無毒化のプロセスに負荷を与えるクレゾールなどの有害化合物を低減させるための無機吸収剤の改変を行う; ・インドールプロピオン酸塩などの有益な化合物を多く含み、腸内マイクロバイオーム成分のバランスと配分の改変にも役立つ天然素材を、例えば、DASHダイエットなどの成分から選択する; ・エネルギー産生の別ルートを提供し、プリン経路を正常化するためのクレアチン; ・SAMと葉酸塩経路の流れを良くし、DNAとRNAの異常なメチル化を修正または改変するための、SAM経路におけるS-アデノシルメチオニンまたはその類似化合物; ・この経路の化合物は、また、銅などの金属イオンのキレート化剤として機能するであろう。銅などの金属イオンは、HDにおいて異常がみられ、DNA近辺での銅1と2間の遷移サイクルによりフリーラジカルが生じ、DNA損傷に寄与している可能性がある;及び ・亜鉛などの有益なイオンの排尿量をモニターすることで、これらを補助的に追加すべきか示される; ・5’がリン酸化されたデオキシヌクレオチドにより、酸化的に損傷を受けたDNAがヌクレオチド除去修復により修復されるために要するエネルギー負担を軽減する; ・ミトコンドリアの脂質二重膜への酸化的損傷を特異的に軽減するためのCoQ10; ・セレノシステインかつ/またはセレナイト、及びピリドキサールにより、キヌレニンの代謝をキヌレン酸塩へとシフトさせ、キノリン酸塩からNAD/NADHに通じる神経毒性枝路から遠ざける; ・ミトコンドリア機能のためにNADとNADHを増加させるニコチンアミド/ナイアシン;及び ・レボドパからドーパミンへと導くチロシン経路の枝路を正常化するためのSAM/プテリン経路のテトラヒドロビオプテリン。 【0033】 相関ネットワークを用いて解析した代謝経路の一例として、トリプトファン経路の基本的な酵素を記述したものを図16に掲げる。 【0034】 図16は、トリプトファンを用いたKEGG経路のデータベースネットワークの一例であり、異なる化合物への多様なルートと他経路への相互的リンクを示す。 【0035】 上記のハンチントン疾患ネットワークは、メタボロミクス、プロテオミクス、ゲノミクス、及びトランスクリプトミクス間の相互作用マッピングを活用した一般的アプローチの一例であり、推測される標的に対して単一の薬剤を用いるのではなく、経路内の複数のポイントに対処することで、個に応じて有益となるように生化学的制御のネットワークを改変する方法を提案する。また、このアプローチは、既存の薬剤または療法と併用するための補助的治療薬を特定または開発するために有用である。 【0036】 このアプローチは、例えば、SSRI治療薬に非応答の鬱病患者または神経弛緩薬に非応答の統合失調症患者、高血圧症、軽度認知障害、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALS病、虚血性心疾患などの心血管疾患、胃腸疾患、がん、及び頭部負傷患者のネットワークマッピングに同様に応用できる。 【0037】 以上を総括すれば、本アプローチは: 使用対象: 疾患対健常、療法への反応者対非反応者、または遺伝的リスク患者対非遺伝的リスク患者からなるコホート。 プロファイル対象: 周辺部に配位結合されたメタボローム; プロテオームに共有結合されたメタボローム; DNAとRNAに配位結合及び共有結合されたメタボローム;及び 腸内マイクロバイオームのメタボローム。 モデル方法: グループのカテゴリー間の分離度と最も関連性の高い単一要因の決定;及び 要因の相関比率を用いて、グループのカテゴリー間の分離度の決定。 マップ対象: 相関ネットワークを用いた上記コホート中の経路内および経路間の差異。 決定事項: 相関ネットワークによって明らかとされる原因酵素、遺伝子及びプロセス;及び 相互作用のネットワークを有益に改変するための介入を、上記のコホートのタイプ別に行うための化合物、補因子、及び二次的影響。 【0038】 以上のことから、「あなたは、あなたがどういうものを食べるかで決まる」という古いことわざには、従来考えられた以上にはるかに真実が含まれているかもしれない。本発明は、特に、ハンチントン病の治療を開発することに関連して説明してきたが、本発明は他の様々な病状の治療開発に広く応用できる。その例として、パーキンソン病、ALS病、軽度認知障害、アルツハイマー病などの神経変性疾患;アレルギー;セリアック病、炎症性腸疾患、憩室炎などの導管疾患;成長障害、虚血性心疾患、鬱病、統合失調症、高血圧症、関節炎、及び老齢疾患を含むがこれらに限定されない。」 イ また、本願の図面は、以下のとおりである。 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】 【図9】 【図10】 【図11】 【図12】 【図13】 【図14a】 【図14b】 【図14c】 【図15】 【図16】 (3)検討 ア 発明の詳細な説明には、次の技術的背景が記載されている。 (ア)人体の制御系には、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、腸内マイクロバイオーム、及び環境間での機能的な相互作用ネットワークが関与し(【0001】)、ゲノムDNAが腸内マイクロバイオームの集団的組成に影響を与え、腸内マイクロバイオームは低分子類(メタボローム)に影響を及ぼし、メタボロームからのフィードバックはゲノムの機能性に影響を与え、それによってトランスクリプトーム(RNA)に影響を及ぼし、トランスクリプトームはコードするタンパク質/酵素類(プロテオーム)に影響を与え、それによってシグナル伝達及びプロセス用低分子類の遷移を制御し、そのことがゲノム、プロテオーム、及びトランスクリプトームの機能性に影響を及ぼし、環境、食物、ストレス、及び毒素類は、メタボロームや腸内マイクロバイオーム等に影響を与える(【0002】)といった、フィードバック及び制御機能を備えている(【0002】)。 しかしながら、従来の測定やマッピングは、A1遺伝学、A2遺伝子発現、A3プロテオミクス、及びA4メタボロミクスのコンパートメント内で行われていた(【0003】)。 (イ)本願の発明は、 a 疾患は症状ではなく、これら機能間の生化学的な制御又はフィードバックの欠陥の結果として後に起こるものであり、この欠陥によって、症状の進展に寄与する単一の遺伝的リスク要因が明らかとなり、リスク低減への道筋がつけられる(【0005】)、 b 現実に即したアプローチは、相互作用又はフィードバック網全体の機能性の正常化または最適化を行うことであり、個々の遺伝子、転写産物、タンパク質、及び低分子類の相関図と測定値をマッピングすることで、患者と健常者との間における制御の異なる複数のポイントが明らかとなり、相互作用ネットワークを正常化又は最適化するための介入に用いられる複数の化合物が特定される(【0006】)、 という二つの根本的概念に基づくものである(【0005】)。 イ 上記ア(ア)及び(イ)の技術的背景の記載から、本件補正発明が解決しようとする課題は、遺伝子、転写産物、タンパク質、及び低分子類の機能間の生化学的な制御又はフィードバックの欠陥に基づいた治療の開発方法を提供することであると認められる。 上記課題に照らせば、遺伝子及び転写産物に対応するDNA及びRNAに配位結合又は共有結合する分子を測定できるならば、その解決手段の一部となりうるものといえる。 しかしながら、発明の詳細な説明には、DNA及びRNAに配位結合又は共有結合する分子を測定することは明記されていない。 ウ 発明の詳細な説明には、測定について、多電極LCECアレイを用いた分析手順を採用するとして、チロシン、トリプトファン、及びプリン経路中の化合物のデータを出力した(【0020】)ことが記載されていることから、チロシン、トリプトファン、及びプリン経路中の化合物を、多電極LCECアレイを用いて測定したものと認められるが、「経路中の化合物」とあることから、測定した化合物は代謝経路における化合物であって、DNA及びRNAに配位結合又は共有結合する化合物ではない。 エ 発明の詳細な説明には、DNA及びRNAに関係する相互作用について、次の記載がある。 (ア)ハンチントン病発症患者、ハンチントン病発症前の患者、及び健常者の個体群における(【0021】)チロシン、トリプトファン、プリン、含硫アミノ酸経路中の化合物間の関係(【0019】)をマッピングした図4?6(【0021】)に、ゲノムとトランスクリプトーム同定プロセスへのリンクを示すもの(【0022】)として、ハンチントン病発症前の患者に関する図5にはMETとRNAmとのリンク、ハンチントン病発症患者に関する図6にはMETとRNAm及びDNAmとのリンクが示されている。 (イ)図9?11は、含硫アミノ酸(SAM)経路のメチオニンと、チロシン、トリプトファン、及びプリン経路中の他の代謝物質、酸化ストレスのマーカー、腸内マイクロバイオーム状態、及びDNAとRNAのメチル化と酸化的損傷との相関関係を示す(【0024】)として、ハンチントン病発症前の患者に関する図10にはMETとRNAmとのリンク、ハンチントン病発症患者に関する図11にはMETとRNAm及びDNAmとのリンクが示されている。 オ しかしながら、METとRNAm又はDNAmとのリンクが、RNA又はDNAに配位結合又は共有結合している物質を測定した結果により判明したものであることは、記載されていない。 一方、RNA又はDNAに配位結合又は共有結合している物質については、DNAとRNAに配位及び共有結合したメタボロームをプロファイリングする工程を含む(【0012】)こと、DNA又はRNAの機能として配位結合されたメタボローム分布をプロファイリングする工程を含む(【0016】)こと、DNA又はRNAの機能として共有結合されたメタボローム分布をプロファイリングする工程を含む(【0017】)こと、プロファイル対象としてDNAとRNAに配位結合及び共有結合されたメタボロームを含む(【0037】)ことが記載されている。 「プロファイリング」は、関連情報から対象を推測することを意味すると解されることから、DNA又はRNAに配位結合又は共有結合したメタボロームを直接測定するのではなく、関連する測定値からDNA又はRNAに配位結合又は共有結合したメタボロームを推測することが理解できる。 カ してみると、発明の詳細な説明には、多電極LCECアレイを用いて代謝経路における化合物を測定することが記載されているにすぎず、その測定結果からは、せめてDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された有機分子を推測することしかできないことから、多電極LCECアレイを用いてDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された有機分子を測定することが記載されているとはいえない。 キ 加えて、上記イで指摘したように、遺伝子及び転写産物に対応するDNA及びRNAに配位結合又は共有結合する分子を仮に測定することができるとすると、それは課題解決手段の一部となりうるものといえることから、発明の詳細な説明は、遺伝子及び転写産物に対応するDNA及びRNAに配位結合又は共有結合する分子を多電極LCECアレイを用いて測定できるように記載されているか、以下検討する。 (ア)多電極LCECアレイを用いた測定自体は、電気的に活性な物質を測定する手段として本願優先日当時において公知である。 (イ)しかしながら、多電極LCECアレイを用いてDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を測定することは、本願優先日当時の技術常識であったとは認められない。 生体試料中には様々な物質が含まれており、その中からDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を選択的に測定するためには、相応の手順及び設定が必要であると認められるが、発明の詳細な説明には、多電極LCECアレイを用いてDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を測定するための手順及び設定については、何ら記載されていない。 (ウ)そうすると、本願優先日当時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明は、多電極LCECアレイを用いてDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を測定することができるように記載したものとはいえない。 (エ)したがって、発明の詳細な説明は、生体試料のDNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を多電極LCECアレイを用いて測定できるように記載されているとはいえない。 ク 以上のとおりであるから、本件補正発明測定事項は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 したがって、本件補正発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。 よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において、「先の拒絶理由書に対しての意見書において『配位結合する』や『共有結合する』との用語につき説明してありますように、これらの用語は、当該分野でよく知られたものです。加えて、公知の文献で見出すことのできるもので、公知の特許文献でも使用されているものです。例えば、参考文献1(米国特許第4,741,900号明細書)などを参照すれば明らかです。また、『プロテオーム』との語についても、ウイキペヂア(Wikipedia)から入手可能なインターネットウェブサイト上の記事(参考文献2)より、それがどのようなものか明らかです。当該記事では、『プロテオーム』を『ある種の時間において、ゲノム、細胞、組織、あるいは、有機体によって発現されている、又は、発現されることのできるタンパク質のセットのすべて』と定義しているのがわかる。そして、生体試料のプロテオームの外側の所にあるメタボロームは、細胞質のプロテオームの中にはそれを見出すことはできないが、一方、プロテオーム中の高分子に共有結合している代謝物質は、その生体試料のタンパク質の内に見出されるものです。 さらに、当該プロテオームと当該メタボロームの違いを説明するものとして、インターネットウェブサイトを利用して得られる、Science Directよりのプリントアウトしたものを参考文献3とし、そしてBioMed Research Internationalよりのプリントアウトしたものを参考文献4とし、ここに提示します。 以上を勘案すれば、本願明細書には、請求項1や2に規定された各工程を実施するのに十分な記載、すなわち、十分なこれらをサポートする記載がなされているのであり、その規定自体も明瞭なもので、原査定の認定は、その妥当性を欠いていることは明白です。 よって、本願は、第36条第6項第1号に規定する要件は、それを十分に満足するもので、その特許請求の範囲の記載に不備な点は無いと思料する。」と主張する。 イ 請求人の上記主張は、「配位結合する」、「共有結合する」、「プロテオーム」及び「メタボローム」といった用語の意味を説明するものであり、DNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を多電極LCECアレイにより測定することが、発明の詳細な説明に記載されていることについて説明するものではなく、また、DNA又はRNAに配位結合又は共有結合された物質を多電極LCECアレイにより測定することができることを説明するものでもない。 よって、請求人の上記主張を考慮しても、本件補正発明測定事項が、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年10月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年1月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項5に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、以下のとおり発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない、というものである。 LC-ECを用いて、DNAとRNAにある配位及び共有結合するメタボロームを検出するためには、まずはサンプルからDNAとRNAを単離し、単離されたDNAとRNAから、共有結合または配位結合している物質を単離するなどの処理が必要であると認められる。そして、共有結合または配位結合している物質を単離する方法は必ずしも当業者に広く知られていないことが技術常識であるところ、本願発明の詳細な説明等には、その具体的な方法等について何ら記載が認められない。 3 検討 (1)本願発明は、発明特定事項として、上記第2[理由]2(3)で検討した本件補正発明の電気信号生成行程と同じ「(1) 電気化学的に検出する液体クロマトグラフィーによりなされる分析物測定値であって、疾患対健常、療法への反応者対非反応者、遺伝的リスクを有する者対有さない者、及び高齢者対非高齢者からなる群から選択されている健常者個体のカテゴリーと患者個体のカテゴリーにおける複数の電気的に活性な被検物のその分析物測定値をモデリングして、電気信号を生成せしめる工程で、ここで、当該関わっている被検物は、生体試料のDNAとRNAにある配位及び共有結合する小さな有機分子又は腸内マイクロバイオームのメタボロームのいずれか、あるいは、生体試料のプロテオームの外側の所にある又はその生体試料のプロテオームにある配位結合する小さな有機分子を含むものであり、ここで前記生体試料は、唾液、血液、血液分画、血漿、白血球、赤血球、血小板、生検組織、死体組織、排泄物、尿、涙液、及び汗からなる群から選択されるもので、当該モデリングとは、度数分布解析又は上記電気的に活性な化合物の比率に基づいてカテゴリー間の分離度を反映せしめることであるところの、その電気信号を生成せしめる工程」を含んでいる。 すなわち、本願発明は、発明特定事項として、上記第2[理由]2(3)で検討した本件補正発明測定事項を含んでいる。 (2)そうすると、本件補正発明測定事項は、上記第2[理由]2(3)で検討したとおり発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件補正発明測定事項を発明特定事項として含む本願発明も、発明の詳細な説明に記載したものでない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-05-26 |
結審通知日 | 2020-06-02 |
審決日 | 2020-06-17 |
出願番号 | 特願2016-524329(P2016-524329) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤坂 祐樹、三木 隆 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
▲高▼見 重雄 渡戸 正義 |
発明の名称 | システム生物学的アプローチによる療法 |
代理人 | 林 道広 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 秋庭 英樹 |