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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1367854
審判番号 不服2019-14585  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-01 
確定日 2020-11-02 
事件の表示 特願2017-222338「再生可能エネルギー蓄積および利用方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 97235〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月18日の出願であって、令和1年8月13日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年8月19日に手続補正がされたが、令和1年10月15日付けで拒絶査定がされ、これを不服として令和1年11月1日に本件審判請求がされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 令和1年11月1日にされた手続補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月1日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
令和1年11月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和1年8月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を補正後の請求項1の記載にする補正(以下、「補正1」という。)を含むものであり、補正前後の請求項1の記載は、それぞれ、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)

[補正前の請求項1]
太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力の蓄積を、バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの直接充電で行うことによって、再生可能エネルギーの安定供給およびバッテリー交換式EVの省エネルギー・地球温暖化ガス排出削減に資すること、を特徴とする再生可能エネルギー蓄積および利用方法。

[補正後の請求項1]
バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの充電を、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力からの直接充電に限定して行うこと、を特徴とする再生可能エネルギー蓄積および利用方法。

2 補正の適否
(1)補正の目的
補正1は、次のア、イの補正事項を含むものである。
ア 補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力の蓄積を、バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの直接充電で行うこと」を、「バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの充電を、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力からの直接充電に限定して行うこと」と補正し、「直接充電に限定」する点を限定する補正事項。
イ 補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「再生可能エネルギーの安定供給およびバッテリー交換式EVの省エネルギー・地球温暖化ガス排出削減に資すること」との記載を削除する補正事項。

上記アの補正事項は、補正前の発明特定事項を限定するものであり、また、上記イの補正事項は、補正後の請求項1の発明特定事項である「バッテリー交換式EV(電気自動車)への充電」、「太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電」を行う「再生可能エネルギー蓄積および利用方法」との特定事項に基づいて当然に導かれる効果に関する技術事項を単に明示的には記載しないようにしたものであり、再生可能エネルギー蓄積および利用方法の発明の手順を変更するものではないから、上記ア、イの2つの補正事項を含む補正1は、補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものである。また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
請求項1に係る上記補正1は特許法第17条の2第5項第2号に該当するので、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記補正後の請求項1の記載により特定される次のとおりのものである。

[本件補正発明]
バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの充電を、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力からの直接充電に限定して行うこと、を特徴とする再生可能エネルギー蓄積および利用方法。

イ 引用文献、引用発明
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-15827号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【0001】
本発明は,電動自動車や電動スクーターのような電動車両のバッテリを交換するためのシステムに関する。具体的に説明すると,本発明のシステムは,交換可能なバッテリにより駆動する電動車両と,バッテリを充電するバッテリステーションと,バッテリステーションにおける充電状況を管理するための管理サーバと,を備える。本発明のシステムでは,管理サーバが,電動車両の位置や電池残量等を含むバッテリ充電情報に応じて,バッテリステーションにおけるバッテリの充電速度を制御することで,電動車両がバッテリステーションの到着した際に,スムーズにバッテリ交換を行うことができる点を特徴の一つとしている。
【背景技術】
【0002】
従来から,交換可能なバッテリを搭載した電動車両が知られている。電動車両は,コントローラーを介してバッテリから供給された電力によりモータを駆動させることで走行する。このような電動車両としては,代表的なものとして,電動自動車や,電動スクーター,電動アシスト自転車を挙げることができる。
【0003】
上記のような電動車両は,バッテリの性能やコストの問題から,現状では,一度の充電やバッテリ交換で走行できる距離が,一般的な液体燃料自動車(ガソリン車,ディーゼル車,及び,液化天然ガス車など)に比べて短いとされている。このため,現在では,電動車両のバッテリの充電や交換をこまめに行うことができるように,バッテリを充電するためのバッテリステーションの数を増やすインフラ整備が進められている。このため,電動車両のユーザは,自車のバッテリの電池残量が少なくなってきたときに,近くのバッテリステーションに立ち寄り,自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換することで,連続的に電動車両を走行させることができるようになっている。」

「【0011】
上記のような観点から,バッテリステーションによる充電は,高速充電を行うとバッテリの劣化が進行するというリスクを考慮しつつ,複数個のバッテリの劣化度と電池残量をなるべく平準化させるように行うことが望ましいといえる。しかしながら,従来のバッテリ充電システムは,バッテリが劣化するというリスクを無視して高速充電が行われており,また,複数個のバッテリの劣化度及び電池残量を平準化するための仕組みを有していないものであった。
【0012】
このため,現在では,バッテリステーションにおける充電速度をコントロールすることで,バッテリの劣化度及び電池残量を適切に制御することのできる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,基本的には,電動車両がバッテリステーションに到着するまでの時間を予測し,予測した到着時間に基づいて,バッテリステーションに保管されている各バッテリの充電速度を制御することにより,バッテリが無駄に劣化することを防止できると共に,バッテリの劣化度及び電池残量を適切に制御することができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。」

「【0026】
本発明のシステムにおいて,バッテリステーションは,電源として利用可能な太陽光発電機34を,さらに有することが好ましい。
この場合,複数の充電器31のそれぞれは,他の充電器31に装填されたバッテリと共に,太陽光発電機34aを電源として,自己に装填されたバッテリの充電を行うことができる。
そして,管理サーバ4の充電速度決定手段40cは,太陽の日照時間帯と非日照時間帯とで異なる制御を行う。すなわち,充電速度決定手段40cは,一つのバッテリステーション3内の一又は複数の充電器31に装填された複数のバッテリ1について,太陽の非日照時間帯においては,複数のバッテリの電池残量が等しい値に近づくように,少なくとも一つのバッテリを電源として利用した場合の各バッテリの充電速度を決定する。他方,充電速度決定手段40cは,太陽の日照時間帯においては,電動車両2が候補ステーションに到着するまでの間に,複数のバッテリの電池残量が等しい値に近づくように,太陽光発電機34aを電源として利用した場合の各バッテリの充電速度を決定する。
【0027】
上記構成のように,充電速度決定手段40cは,電動車両2からのバッテリ交換要求が少ないと考えられる夜間(非日照時間帯)のうちに,バッテリステーション3内に保管されているバッテリを電源として他のバッテリを充電し,各バッテリの電池残量を均一化するように制御する。そして,充電速度決定手段40cは,昼間(日照時間帯)になったときに,太陽光発電機43aから供給される電力を利用して,各バッテリの充電を行うように制御する。これにより,例えば電力網から供給される電力を用いなくても,太陽光発電により得られた再生可能エネルギーによってバッテリステーション内のバッテリの充電を完了させることができる。しかも,上記仕組みによれば,バッテリの充電を100%再生可能エネルギーによって行うことができるとともに,複数のバッテリの電池残量を均一化させることも可能となる。」

(イ)引用発明
段落【0001】、【0002】、【0003】の下線部の記載によれば、引用文献1には、「電動車両のバッテリを交換するためのシステム」に関する技術事項が記載されており、該システムは、「交換可能なバッテリにより駆動する電動車両と、バッテリを充電するバッテリステーションと、バッテリステーションにおける充電状況を管理するための管理サーバ」とを備えている。そして、電動車両は、「バッテリから供給された電力によりモータを駆動させることで走行する」ものであり、「電動車両のユーザは,自車のバッテリの電池残量が少なくなってきたときに,近くのバッテリステーションに立ち寄り,自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換することで,連続的に電動車両を走行させることができるようになっている」ものである。
これらの技術事項は方法として捉えることができ、引用文献1には、「電動車両のバッテリを交換するためのシステムに関し、該システムは、交換可能なバッテリにより駆動する電動車両と、バッテリを充電するバッテリステーションと、バッテリステーションにおける充電状況を管理するための管理サーバとを備え、電動車両は、バッテリから供給された電力によりモータを駆動させることで走行するものであり、電動車両のユーザは、自車のバッテリの電池残量が少なくなってきたときに、近くのバッテリステーションに立ち寄り、自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換することで、連続的に電動車両を走行させることができるようになっている方法」が記載されているといえる。
また、これに加えて、段落【0013】、【0026】、【0027】の下線部の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために当審にて付したものであり、以下、構成aないし構成dと称する。

[引用発明]
(a)電動車両のバッテリを交換するためのシステムに関し、該システムは、交換可能なバッテリにより駆動する電動車両と、バッテリを充電するバッテリステーションと、バッテリステーションにおける充電状況を管理するための管理サーバとを備え、電動車両は、バッテリから供給された電力によりモータを駆動させることで走行するものであり、電動車両のユーザは、自車のバッテリの電池残量が少なくなってきたときに、近くのバッテリステーションに立ち寄り、自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換することで、連続的に電動車両を走行させることができるようになっている方法であって、
(b)電動車両がバッテリステーションに到着するまでの時間を予測し、予測した到着時間に基づいて、バッテリステーションに保管されている各バッテリの充電速度を制御することにより、バッテリが無駄に劣化することを防止できると共に、バッテリの劣化度及び電池残量を適切に制御することができ、
(c)バッテリステーションは、電源として利用可能な太陽光発電機34を有し、管理サーバ4の充電速度決定手段40cは、一つのバッテリステーション3内の一又は複数の充電器31に装填された複数のバッテリ1について、太陽の非日照時間帯においては、複数のバッテリの電池残量が等しい値に近づくように、少なくとも一つのバッテリを電源として利用した場合の各バッテリの充電速度を決定し、他方、充電速度決定手段40cは、太陽の日照時間帯においては、電動車両2が候補ステーションに到着するまでの間に、複数のバッテリの電池残量が等しい値に近づくように、太陽光発電機34aを電源として利用した場合の各バッテリの充電速度を決定し、
(d)これにより、例えば電力網から供給される電力を用いなくても、太陽光発電により得られた再生可能エネルギーによってバッテリステーション内のバッテリの充電を完了させることができ、しかも、バッテリの充電を100%再生可能エネルギーによって行うことができるとともに、複数のバッテリの電池残量を均一化させることも可能となる方法。

ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明は、構成aによれば、「交換可能なバッテリにより駆動する電動車両・・のユーザは、・・自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換する」ものであるから、交換可能なバッテリにより駆動する電動車両のバッテリへの充電をバッテリステーションで行うものであるといえる。
また、引用発明の「交換可能なバッテリにより駆動する電動車両」、「バッテリ」は、それぞれ、本件補正発明の「バッテリー交換式EV(電気自動車)」、「交換用バッテリー」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの充電」を行う点で一致する。

(イ)引用発明は、構成dによれば、「太陽光発電により得られた再生可能エネルギーによってバッテリステーション内のバッテリの充電を完了させることができ、しかも、バッテリの充電を100%再生可能エネルギーによって行うことができる」ものであるから、バッテリステーション内のバッテリの充電を100%太陽光発電により得られた再生可能エネルギーによって行うものであるといえる。
また、引用発明の「太陽光発電により得られた再生可能エネルギー」は、本件補正発明の「太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「交換用バッテリーへの充電を、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力からの直接充電に限定して行う」点で一致する。

(ウ)引用発明は、構成d、aによれば、「再生可能エネルギーによってバッテリステーション内のバッテリの充電を完了させ」、「近くのバッテリステーションに立ち寄り、自車のバッテリとバッテリステーションで充電されたバッテリを交換することで、連続的に電動車両を走行させる・・方法」であるから、再生可能エネルギーによりバッテリを充電し、充電されたバッテリで電動車両を走行させる方法といえる。
また、「再生可能エネルギーによりバッテリを充電」することは、「再生可能エネルギー」の「蓄積」といえ、「充電されたバッテリで電動車両を走行させる」ことは、「再生可能エネルギー」の「利用」といえるから、引用発明の方法は、本件補正発明の「再生可能エネルギー蓄積および利用方法」に相当するといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「再生可能エネルギー蓄積および利用方法」である点で一致する。

(エ)上記(ア)?(ウ)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「バッテリー交換式EV(電気自動車)の交換用バッテリーへの充電を、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電電力からの直接充電に限定して行うこと、を特徴とする再生可能エネルギー蓄積および利用方法」である点で一致し、全ての発明特定事項で一致する。

よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明である。

エ 独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正の適否のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件発明について
1 本件発明
令和1年11月1日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、令和1年8月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記第2 1[補正前の請求項1])により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

引用文献1 特開2015-15827号公報

3 引用発明
引用文献1には、上記「第2 2(2)イ(イ)引用発明」で述べた引用発明が記載されている。

4 対比・判断
上記「第2 2(2)独立特許要件」で検討した本件補正発明は、実質的に、本件発明に「直接充電に限定」する限定事項を付加した、本件発明の一態様といえる。
したがって、上記「第2 2(2)ウ 対比」と同様の対比により、本件発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-08-31 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-15 
出願番号 特願2017-222338(P2017-222338)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻丸 詔  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
千葉 輝久
発明の名称 再生可能エネルギー蓄積および利用方法  

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