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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1367903
審判番号 不服2019-1354  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-01 
確定日 2020-11-11 
事件の表示 特願2013-229122「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月19日出願公開、特開2014- 93532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月5日(パリ条約による優先権主張2012年11月5日、韓国)の出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成28年10月24日 :出願審査請求書・手続補正書の提出
平成29年 9月29日付け:拒絶理由通知(同年10月10日発送)
平成30年 1月 9日 :手続補正書・意見書の提出
同年 2月28日付け:拒絶理由通知(同年3月6日発送)
同年 6月 5日 :手続補正書・意見書の提出
同年 9月26日付け;拒絶査定(同年10月2日送達。
以下「原査定」という。)
平成31年 2月 1日 :審判請求書・手続補正書の提出
令和 2年 2月10日付け:拒絶理由通知(同年2月12日発送)
同年 4月 8日 :手続補正書・意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和2年4月8日付けの手続補正により補正された請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
上面に凹凸パターンが形成された基板と、
前記基板上に配置された互いに異なる導電型の下部及び上部半導体層と、前記下部及び上部半導体層の間に配置された活性層とを有する発光構造物と、
前記上部半導体層の中央領域上のみに配置された第1電極層と、
前記発光構造物と前記第1電極層との間に配置された電流遮断層と、を含み、
前記第1電極層は、重ね合わされた第1接着層と第1ボンディング層を含み、
前記第1接着層と前記第1ボンディング層は、互いに直接接触し、
前記第1接着層は、前記電流遮断層の上部及び側部を取り囲み、
前記第1接着層は、Crを含み、
前記第1ボンディング層は、Auを含み、
前記第1接着層は、前記電流遮断層の前記上部及び前記側部並びに前記上部半導体層に直接接するように配置され、
前記第1ボンディング層は単一層であり、
前記第1接着層の厚さは、少なくとも5nm?15nmであり、
前記第1接着層及び前記第1ボンディング層は、側面が連続するように設けられている、発光素子。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)

第3 引用文献の記載
1 当審拒絶理由に引用した、特開2008-192710号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【請求項1】
第1,2導電型半導体層を含む半導体構造に、発光構造部と、該第1導電型半導体層、該発光構造部の第2導電型半導体層に各々設けられた第1電極、第2電極と、
前記第2導電型半導体層上の少なくとも一部に形成された透光性絶縁膜と、を有し、
前記第2電極が、前記第2導電型半導体層の少なくとも一部を被覆する透光性導電膜の第1層と、前記透光性絶縁層上の少なくとも一部に設けられ、第1層に導通する第2層と、を有し、
前記第1層の表面側と、前記透光性絶縁膜と前記半導体構造の境界領域と、にそれぞれ光反射部が形成され、
前記透光性絶縁膜の前記第2層側表面が、前記第1層の表面より半導体構造から離れている半導体発光素子。」

(2)「【0017】
〔実施の形態1〕
図1を用いて、実施の形態1に係るLED100の具体例、その構成について説明する。ここで、図1Aは、実施の形態1に係るLEDを電極形成面側からみた平面を、図1B,Cは、図1AのA-A線、B-B線における断面をそれぞれ説明する概略図であり、図1D,Eは、図1Cの部分拡大した概略図、図1Eは図1Dの別の形態を説明する概略図である。
図1の発光素子の構造は、基板10上に、バッファ層などの下地層(図示せず)を介して、第1導電型層のn型窒化物半導体層21、発光部となる活性層22、第2導電型層のp型窒化物半導体層23が積層された積層構造からなる半導体構造20を有し、n型層21の一部が露出されてn電極(第1電極)30が設けられ、第1,2導電型層21,22(とその間の活性層22)が設けられた発光構造25の表面25tであるp型層23s上にp電極(第2電極)40が設けられた素子構造を有している。尚、平面図(図1A)では保護膜51を省略し、各電極の外部接続部33,43となる保護膜開口部を一点鎖線の細線囲み部として示しており、図3,4,9も同様であり、図8Aも保護膜を省略し、また外部接続部と第2層表面と保護膜開口部がほぼ一致しているため省略している。
【0018】
更に図1に係る具体例では、第1電極30は、矩形状の素子構造26、発光構造25において、その角部付近に発光構造25を内側に凹ませるように第1導電型露出領域21sが設けられた凹欠部の一部に電極形成領域21eが設けられ、略矩形状の第1電極30が設けられている。このように発光構造部25上と、発光構造部25から露出された露出部21sの一部の電極形成領域21eに、第1,2電極30,40がそれぞれ設けられ、半導体構造部上25tの第2電極40には、透光性導電膜の第1層41と、それに接続する第2層42が一部に透光性絶縁膜18を介して積層された構造を有する。電極の第2層は第1層より透光性の低い電極、例えば遮光性の金属電極で形成され、光吸収・損失があるため、透光性絶縁膜18と半導体構造の第2導電型層23s(発光構造部上面25t)との境界領域、具体的には屈折率が半導体構造20、第2導電型層32、若しくはその表面23s領域より低い絶縁膜18との境界において、半導体構造内で伝播する光が、そこを覆う第2層形成領域による遮光を抑制して、その手前の絶縁膜と半導体の境界の反射によって、好適な光反射がなされて光損失を抑えて、他の露出部、半導体構造20側面、発光構造上面25t、透光性の基板10などの光窓部、特に第1層41の被覆領域から好適に取り出される。また、上記半導体の露出部21sに第1電極30が設けられ半導体に接続されている。尚、第1電極は、後述するように、第2電極同様に、図1Bに観るような第1,2層31,32の少なくとも2層を備えた構造を有しても良く、更には図2に観るように、少なくとも第2層の一部が透光性絶縁膜を介して設けられる構造でも良く、これらの場合、下層側の第1層で半導体層に接続する構造となる。
【0019】
……
【0036】
(透光性絶縁膜18)
露出された半導体構造の電極形成面側にSiO_(2)の透光性絶縁膜を設ける。具体的には、フォトリソグラフィーによりレジストのマスクを形成して、発光構造部上面25tとなる第2導電型層(p型層中のp側コンタクト層)に、所望の形状の透光性絶縁膜18を設ける。
【0037】
……
【0039】
以上の例で示す各構造の寸法として、基板10の厚さとしては50?200μm程度(上記例では約90μm)、積層構造20では下地層の厚さは1?2μm程度、n型半導体層21の厚さは1?2μm程度、活性層・発光層22の厚さは50?150nm程度、p型半導体層23の厚さは、100?300nm程度、n型露出層21s表面から発光構造の高さは0.5?3μm(上記例では約1.5μm)程度、第1層(オーミック電極)の厚さは10nm?500nm程度、第2層(パッド電極、延伸部)の厚さは0.3?1.5μm程度、外部接続部・パッド電極の幅・径は50?150μm程度、この例のように電極形成面側を光取り出し側とする場合の導電部(第2層)の幅は3?20μm、第2層(パッド電極・延伸導電部)が絶縁層18内に被覆領域と離間して設ける場合の導電部と絶縁層の端部間距離(絶縁層突出部の断面幅)は3?10μm程度である。尚、図2に示すように、第1電極も第2電極同様に、透光性絶縁膜17を設ける場合には、第1電極の第1層の絶縁膜から延出した被覆領域31cの断面幅を3?20μm程度、また、第2層が絶縁膜から被覆領域にまで延設される場合に、その延設部32p,42pの断面幅は第2電極では0?30μm程度、第1電極では3?20μm程度である。」

(3)「【0045】
〔実施の形態2〕
実施の形態2としては、実施の形態1、実施例1において、第2電極(p電極)の延伸部44の形状を図3に示すようなものとして、延伸部の本数を4本(実施例1)から9本とし、その延伸部(第2層)及び電極形状に対応する透光性絶縁膜を設ける他は実施例1と同様な構造、寸法で略正方形(□320μm)の発光素子を作製する。
この発光素子では、実施例2に比して、電極延伸部の本数、面積が多いため、電流広がり等が向上する一方で、透光性絶縁膜の面積増による発光面積低下があり、素子の出力が実施例2より僅かに低下する傾向にある。」

(4)「【0060】
以下、上記各実施の形態及び本発明における各構成に詳述するが、これに限らず、各構成を適宜組み合わせる応用も可能である。また、各実施の形態、及びそれに開示された各構成、態様についても同様に適宜組み合わせることができる。
【0061】
……
【0065】
第1,2電極30,40の第1層31,41は、基板上に第1,2電極が設けられ電極形成側を主発光側とする発光素子構造においては、透光性の膜が形成される。透光性の導電膜、具体的に窒化物半導体のp側電極としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、鉄 (Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ランタン(La)、銅(Cu)、銀(Ag)、イットリウム(Y)よりなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金、積層構造、さらには、それらの化合物、例えば、導電性の酸化物、窒化物などがある。…… 光の波長などにより適宜材料が選択される。また、上記導電性材料のドーピング材料として、半導体の構成元素、半導体のドーパントなどを用いることもできる。」

(5)「【0066】
上記具体例で示すように、第1,2電極30,40の透光性膜(第1層31、下層側)を同一材料・構造とすることが好ましく、更に同一工程で設けることが好ましく、量産性に富む電極構造とできる。同様に、第1,2電極30,40の上層側に配される金属膜・反射性膜(第2層32,42、パッド電極、反射電極)も同一材料・構造、更には同一工程で設けることが好ましい。金属膜、反射性膜としては、上記群から選択される材料(群の一種を含む金属、合金、積層構造)を用いることができる。この第1,2電極の上層側の第2層・パッド電極は、多層膜構造とすることが好ましく、その構造としては、……また、上記各層は、単一膜である必要は無く、多層膜で構成されても良く、上記実施例5で示すように、上記各層間及び第1層との間に保護層、密着層、例えばTi,Niなど、を介在させ、4層以上で構成しても良い。具体例としては、実施例5ではNi介在層の上にAg(反射)/Ni・Ti(密着)/Pt(バリア)/Au(表層)の他、Rh(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Al(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Ti(密着層)/Rh(反射)/Pt(バリア)/Au(表層)、Al(反射)/W(バリア)/Pt(バリア)/Au(表層)、Ni(密着層)/Ag(反射)/Ni(密着・バリア)/Ti(密着層)/Au(表層)を、この順に積層した構造などがある。」

(6)図2は、以下のものである(平成19年2月23日付け手続補正書により図3は、図2に補正されている。)。

10:基板
11:凹凸構造
18:透光性絶縁膜
20:半導体構造・積層構造
21:第1導電型層(n型層)
22:活性層(発光層)
23:第2導電型層(p型層)
40:第2電極
41:第1層
42:第2層
43:外部接続部

2 引用文献に記載された発明
(1)上記1(1)の記載からして、引用文献には、
「第1,2導電型半導体層を含む半導体構造に、発光構造部と、該第1導電型半導体層、該発光構造部の第2導電型半導体層に各々設けられた第1電極、第2電極と、前記第2導電型半導体層上の少なくとも一部に形成された透光性絶縁膜と、を有し、
前記第2電極が、前記第2導電型半導体層の少なくとも一部を被覆する透光性導電膜の第1層と、前記透光性絶縁層上の少なくとも一部に設けられ、第1層に導通する第2層と、を有し、
前記第1層の表面側と、前記透光性絶縁膜と前記半導体構造の境界領域とに、それぞれ光反射部が形成されている、半導体発光素子。」が記載されているものと認められる。

(2)上記1(2)及び(3)の「実施の形態1」及び「実施の形態2」に関する記載からして、以下のことが理解できる
ア 「透光性絶縁膜」は、SiO_(2)であってもよいこと。

イ 「透光性導電膜の第1層」の厚みは、厚さは10nm?500nm程度であってもよいこと。

ウ 「光反射部」の光反射は、屈折率差を利用した反射であること。

(3)上記1(4)及び(5)の「各実施の形態」に共通する記載からして、
ア 「透光性導電膜の第1層」は、段落【0065】に記載された金属群から選択した、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)又は銀(Ag)からなる単一層であってもよいことが理解できる。

イ 「第1層に導通する第2層」は、「第1層」と同様の材料であってもよいことから、同じ金属群から選択した、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)又は銀(Ag)を含む層であってもよいことになる。

(4)上記(1)ないし(5)の記載を踏まえて、(平成19年2月23日付け手続補正書により補正された)図2を見ると、以下のことが理解できる。
ア 「第2電極」は、第2導電型層の中央領域上に形成されていること。

イ 「透光性導電膜の第1層」は、透光性絶縁膜の上部及び側部並びに第2導電型層の表面に直接接触するように配置されていること。

(5)上記(1)ないし(4)の検討からして、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「凹凸構造を有する基板と、
第1,2導電型半導体層を含む半導体構造に、発光構造部と、該第1導電型半導体層、該発光構造部の第2導電型半導体層に各々設けられた第1電極、第2電極と、前記第2導電型半導体層上と前記第2電極との間に形成されたSiO_(2)からなる透光性絶縁膜と、を有し、
前記第2電極は、
前記第2導電型層の中央領域上に形成され、Ni、Cr、Cu又はAgからなる10nm?500nm程度の透光性導電膜の第1層と、Ni、Cr、Cu又はAgを含む前記第1層に導通する第2層と、を有し、
前記第1層の表面側と、前記透光性絶縁膜と前記半導体構造の境界領域とに、それぞれ屈折率差を利用した光反射部が形成され、
前記第1層は、前記透光性絶縁膜の上部及び側部並びに前記第2導電型層の表面に直接接触するように配置されている、半導体発光素子。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「凹凸構造を有する基板」は、本願発明の「上面に凹凸パターンが形成された基板」に相当する。
以下、同様に、
「『発光構造部、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層』を有する『半導体構造』」は、「基板上に配置された互いに異なる導電型の下部及び上部半導体層と、前記下部及び上部半導体層の間に配置された活性層とを有する発光構造物」に、
「第2導電型層の中央領域上に形成された第2電極」は、「上部半導体層の中央領域上のみに配置された第1電極層」に、
「第2導電型半導体層上と第2電極との間に形成されたSiO_(2)からなる透光性絶縁膜」は、「発光構造物と第1電極層との間に配置された電流遮断層」に、
「半導体発光素子」は、「発光素子」に、それぞれ、相当する。

(2)本願発明の「『Crを含』む『少なくとも5nm?15nm』の『第1接着層』」及び「『Auを含』む『単一層』の『第1ボンディング層』」に関して、本願明細書には、以下の記載がある。

ア 「【0037】
第1接着層32は、上部半導体層26とオーミック接触する物質を含むことができる。例えば、第1接着層32は、Cr、Rd及びTiのうち少なくとも一つの材料で、単層または多層構造で形成することができる。また、第1接着層32の厚さT1は、少なくとも5nm?15nmとすることができる。例えば、第1接着層32の厚さT1が2nmより薄い場合、接着力が低下することがあり、15nmより大きくなる場合、電気抵抗が増加することがある。したがって、第1接着層32の厚さT1は、2nm乃至10μmの厚さT1を有することができる。
【0038】
また、第1ボンディング層34は、第1接着層32に接して配置されてもよいが、後述するように、第1バリア層36が介在する場合、第1接着層32に接しないで、第1接着層32の上部に配置されてもよい。第1ボンディング層34はAuを含むことができる。……したがって、第1ボンディング層34の厚さT2は、100nm乃至2000nm、例えば、140nmとすることができる。」

イ 上記記載から、以下のことが理解できる。
(ア)「第1接着層」は、少なくとも5nm?15nmの厚さ、好適には2nm乃至10μmの厚さを有するCrの単層であってもよいこと。
(イ)「第1ボンディング層」は、層の中にAuを含むこと。

ウ してみると、引用発明の「Ni、Cr、Cu又はAgからなる10nm?500nm程度の透光性導電膜の第1層」と本願発明の「『Crを含』む『少なくとも5nm?15nm』の『第1接着層』」とは、「Crを含む少なくとも5nm?15nmの第1接着層」である点で一致する。

エ 一方、引用発明の「Ni、Cr、Cu又はAgを含む第1層に導通する第2層」と本願発明の「『Auを含』む『単一層』の『第1ボンディング層』」とは、「金属を含む第1ボンディング層」である点で一致する。

オ 引用発明の「透光性導電膜の第1層」は、「透光性絶縁膜の上部及び側部並びに第2導電型層の表面に直接接触するように配置されている」ことから、「第1層は、電流遮断層の上部及び側部並びに上部半導体層に直接接するように配置された」ものであるといえる。

カ(ア)引用発明の「透光性導電膜の第1層」は、「透光性絶縁膜の上部及び側部並びに第2導電型層の表面に直接接触するように配置されている」ものであるから、「『透光性絶縁膜の』『側部』」を覆う「側面」を備えていることは、明らかである(図2において、矩形に描かれた「透光性絶縁膜18」の両側の垂直方向に延びる側部は、「第1層41」により覆われていることが理解できる。)。

(イ)また、引用発明の「第1層に導通する第2層」は、引用文献の図2からして、「側面」を有することは、明らかである(図2おいて、矩形に描かれた「透光性絶縁膜18」の右側の上方には、「第2層42」の右側の側面が位置し、該側面と「第1層41」の右側の側面とが段差を形成していることが理解できる。)。

(ウ)よって、本願発明と引用発明とは、「第1接着層及び第1ボンディング層は、それぞれ側面を有している」点で一致する。

(3)上記(1)及び(2)から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「上面に凹凸パターンが形成された基板と、
前記基板上に配置された互いに異なる導電型の下部及び上部半導体層と、前記下部及び上部半導体層の間に配置された活性層とを有する発光構造物と、
前記上部半導体層の中央領域上のみに配置された第1電極層と、
前記発光構造物と前記第1電極層との間に配置された電流遮断層と、を含み、
前記第1電極層は、重ね合わされた第1接着層と第1ボンディング層を含み、
前記第1接着層と前記第1ボンディング層は、互いに直接接触し、
前記第1接着層は、前記電流遮断層の上部及び側部を取り囲み、
前記第1接着層は、Crを含み、
前記第1ボンディング層は、金属を含み、
前記第1接着層は、前記電流遮断層の前記上部及び前記側部並びに前記上部半導体層に直接接するように配置され、
前記第1接着層の厚さは、少なくとも5nm?15nmであり、
前記第1接着層及び前記第1ボンディング層は、それぞれ側面を有している、発光素子。」

(4)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1ボンディング層に関して、
本願発明は、「『Auを含む』『単一層』」であるのに対して、
引用発明は、Auを含まない点。

<相違点2>
第1接着層及び第1ボンディング層のそれぞれの側面に関して、
本願発明は、「(両者の)側面が連続するように設けられている」のに対して、
引用発明は、そのようになってはいない点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 本願発明において、第1ボンディング層として、「『Auを含む』『単一層』」を採用する技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。

(ア)本願明細書には、以下の記載がある。
「【0038】
また、第1ボンディング層34は、第1接着層32に接して配置されてもよいが、後述するように、第1バリア層36が介在する場合、第1接着層32に接しないで、第1接着層32の上部に配置されてもよい。第1ボンディング層34はAuを含むことができる。例えば、第1ボンディング層34の厚さT2が100nmより薄い場合、金ワイヤボンディングが難しくなり、2000nmより厚い場合、Auという高価の物質を投資した費用を考慮するとき、伝導効率向上の効果が極めて小さくなることがある。したがって、第1ボンディング層34の厚さT2は、100nm乃至2000nm、例えば、140nmとすることができる。」

(イ)上記記載からして、
第1ボンディング層は、第1接着層との間に第1バリア層が介在してもよいものであって、「Au」を含むことは任意であり、かつ、「単一層」が必須でもないことが理解できる。
また、本願明細書の他の記載を見ても、第1ボンディング層として、「『Auを含む』『単一層』」を採用する理由は特段明記されていない。

イ 一方、引用発明の「第1層に導通する第2層」は、「第2電極」を構成する表層であって、半田などを用いて実装基板側と接続される箇所であるところ、
電極の表層に「Au」を用いることは、引用文献の【0066】に例示されているように、当該技術分野において、よく知られていることである(以下「周知技術」という。)。

ウ してみると、引用発明の「第1層に導通する第2層」、つまり、電極の表層を「Auを含む単一層」とすることは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得ることである。

エ よって、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア 本願発明において、「第1接着層及び第1ボンディング層は、側面が連続するように設けられている」との構成(以下「発明特定事項C」という。)を採用する技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。

(ア) 本願発明は、「第1接着層と第1ボンディング層は、互いに直接接触」するものであるところ、本願明細書には、図面とともに、以下の記載がある。
a 【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の発光素子は、基板と;前記基板上に配置された互いに異なる導電型の下部及び上部半導体層と、前記下部及び上部半導体層の間に配置された活性層とを有する発光構造物と;前記上部半導体層上に配置された第1電極層と;を含み、前記第1電極層は、重ね合わされた第1接着層と第1ボンディング層を含み、前記第1接着層と前記第1ボンディング層との間に反射層が介在しない。前記第1電極層は、前記第1接着層上に接して配置された第1バリア層をさらに含むことができる。」

b 「【0017】
前記導電型相互接続層によって接続された前記二つの発光素子の第1及び第2電極層、及び前記導電型相互接続層は一体とすることができる。」

c 「【発明の効果】
【0019】
実施形態に係る発光素子及びそれを含む発光素子アレイは、電極層と導電型相互接続層において、ボンディング層と接着層との間に反射層を介在させないことで、接着層を厚く形成することができるので、電極層と発光構造物との接着力を強化させ、導電型相互接続層と絶縁層との接着力[Wユ4]を強化させることによって、既存の薄い接着層によって製品の不良が発生して、歩留まりが減少するという問題を解決することができ、絶縁層の代わりに分散ブラッグ反射層を配置して、反射層の役割を行うことができるようにすることによって、発光効率を改善させることができる。」

d 「【0050】
しかし、本実施形態によれば、第1接着層32と第1ボンディング層34との間に反射層が介在しない。また、第2接着層と第2ボンディング層との間に反射層が介在しない。したがって、反射層が介在しない厚さの分だけ第1接着層32を厚く形成することができるので、第1電極層30と発光構造物20との接着力を向上させることができ、反射層と第1ボンディング層34間の相互拡散が発生する虞もなくすことができる。したがって、前述したように、実施形態によれば、第1接着層32は、2nm以上の厚い厚さT1を有することができる。」

e 図2E及び図2Fは、以下のものである。

26…上部半導体層
30…第1電極層
32…第1接着層
34…第1ボンディング層
36…第1バリア層

f 上記記載からして、
電極層及び導電型相互接続層を構成する「接着層」と「ボンディング層」との間に他の構成要素(層)を介在させないことにより、「接着層」を厚く形成し、「電極層と上部半導体層との接着力」及び「導電型相互接続層と絶縁層との接着力」を強化できることが理解できる。

ところで、本願発明の「第1接着層」と「第1ボンディング層」は、そもそも、互いに直接接触するものであって、他の構成要素(層)は介在していないことを踏まえると、上記発明特定事項Cの「(両者の)側面が連続するように設けられている」とは、両者の側面が段差を形成することなく、つまり、両者の側面が水平方向でズレを生じなることなく積層されていると解するのが自然である。

また、「導電型相互接続層」とは、二つの発光素子を電気的に接続するものであるから、第1電極層と導電型相互接続層とは一体化していることを踏まえると、上記発明特定事項Cの「側面」とは、少なくとも(第1電極層の)一方の側面であると解される。このことは、本願の請求項7に係る「『導電型相互接続層を含む』『発光素子アレイ』」が、本願発明と同じ「発明特定事項C」を備えていることからも裏付けられる。

しかしながら、本願明細書の他の記載を見ても、上記発明特定事項Cの技術的意義については、特段明記されていない。

イ(ア)一方、引用発明の「第2電極」は、「第1層」と「第2層」とを有し、両者の間には、他の構成要素(層)は介在しない。
ところで、引用発明の「屈折率差を利用した光反射部」は、引用文献の【0018】等の記載からして、「第2層」の手前で光を反射させることで、「第2層」による光吸収・光損失を低減するものであると解される。
つまり、光吸収・光損失の観点からは、「第2層」の面積は小さいほど好ましいことが理解できる。

(イ)また、該「第2層」の面積は、電気抵抗などを勘案して決めるべきところ、「第1層」は、「透光性絶縁膜の上部及び側部」を覆うものであるから、「第2層」を「第1層」の上面を覆う程度の面積とすることに何ら困難性は認められない。
また、そのことを妨げる特段の事情は認められない。

必要ならば、例えば、国際公開第2012/120894号の第1図及び第2図を参照。
「n型半導体層101上に広がるオーミック電極109」及び「パッド電極105」は、それぞれ、引用発明の「第1層」及び「第2層」に、それぞれ、相当する。



101 n型半導体層(第1導電型半導体層)
102 発光層(発光部)
103 p型半導体層(第2導電型半導体層)
104 半導体層
105 パッド電極
106 透光性絶縁層
107 反射層
108 反射部
109 オーミック電極(コンタクト部)
110 導電性硬質膜

ウ 上記イのようにした引用発明においては、「第1層」と「第2層」の側面は連続することになる。

エ よって、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

3 令和2年4月8日提出の意見書における主張について
(1)請求人は、引用文献1の段落0019、0037及び0066において明示されている「第2層」は全て多層構造である旨主張する(第2頁上段)。
当審注:引用文献1は、審決で引用する引用文献である。

ア しかしながら、引用発明は、引用文献の段落0018の「……電極の第2層は第1層より透光性の低い電極、例えば遮光性の金属電極で形成され、光吸収・損失がある……その手前の絶縁膜と半導体の境界の反射によって、好適な光反射がなされて光損失を抑えて、……被覆領域から好適に取り出される。」などの記載からして、「第2層」の手前に「屈折率差を利用した光反射部」を形成した点に特徴があるものと認められる。

イ よって、「第2層」それ自体を、単層又は多層構造で設計するかは、当業者が適宜決め得ることであり、多層構造でなければならないというものではない。

(2)請求人は、引用文献1に記載された発明において、「第1層」及び「第2層」の側面を連続して設ける構成を採用することには、阻害要因が存在する旨主張する(第3頁中段)。

しかしながら、上記「2 判断(2)」で検討したように、その適用を妨げる特段の事情はない。

(3) 請求人は、本願発明の発明特定事項Cである「第1接着層及び第1ボンディング層は、側面が連続するように設けられている」との構成を採用すれば、補正後の請求項1ないし13に係る発明においては、「第1接着層」及び「第1ボンディング層」を同一のフォトリソグラフィー工程で設けることが可能である旨主張する(第3頁下段)。

しかしながら、補正後の請求項7ないし13に係る「『導電型相互接続層を含む』『発光素子アレイ』」は、第1電極層が導電型相互接続層と一体化した態様を包含するところ、本願明細書には、「発光素子」及び「発光素子アレイ」の両者において、「第1接着層」及び「第1ボンディング層」を「同一のフォトリソグラフィー工程」で設けることは記載されておらず、請求人の主張は、明細書の記載に基づかない主張である。

(4)以上のことから、請求人の主張は、採用できない。

4 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-01 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-24 
出願番号 特願2013-229122(P2013-229122)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 発光素子  
代理人 市川 英彦  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 重森 一輝  
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