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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1367947
審判番号 不服2019-7966  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-14 
確定日 2020-11-12 
事件の表示 特願2018- 19849「持ち手判定機能付き携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開、特開2018- 85142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯

本願は、平成26年2月19日に出願した特願2014-29616号(以下、「親出願」という。)の一部を平成30年2月7日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月17日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して、平成30年12月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成31年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.令和元年6月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和元年6月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.理由1

(1)本件補正について

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
タッチパネルを重ねた表示画面を有する携帯端末であって、
前記タッチパネルとのタッチ位置の情報を受け付け、前記タッチパネルの入力操作領域と前記表示画面の表示領域とを制御する情報処理部と、
前記タッチパネルとのタッチ位置を含む持ち手情報が予め登録される記憶部と
を備え、
前記情報処理部は、前記タッチパネルとの実際のタッチ位置が、前記持ち手情報に含まれる前記タッチ位置に対応するときに、前記実際のタッチ位置を含む領域に表示されている表示内容を、前記実際のタッチ位置を含む前記領域から避けて表示することで、非タッチ領域を示し、前記非タッチ領域は、四角形状であり、
前記表示画面には、前記非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示されることを特徴とする携帯端末。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示画面」について、「前記表示画面には、前記非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」との限定を付加するものである。

(2)当初明細書等に記載された事項

ア.「非タッチ領域」について

一方、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、特に、段落【0005】?【0006】、【0055】?【0058】及び【図10】?【図12】を参照すると、「非タッチ領域」に関して以下の記載(ア)?(オ)がされている。

(ア)
「【0005】
しかしながら、従来の携帯端末においては、使用者の携帯端末を支える持ち手がタッチパネルの入力操作や表示画面の表示動作に干渉しないように、タッチパネルの周囲に数mm?数cmの幅の非タッチ領域が設けられていた。従って、従来の携帯端末は次のような問題点を有する。
非タッチ領域を設けることによって、表示画面のサイズが小さくなる。
また、表示画面サイズを大きくするには本体のサイズや重量が大きくなる。
さらに、持ち手が非タッチ領域を越えたときにタッチパネルへのタッチ操作と判定されてしまう。
【0006】
この発明はこのような事情を考慮してなされたもので、タッチパネルの周囲に非タッチ領域を設ける必要がなく、持ち手がタッチパネルに接触してもタッチ操作と判定されることのない携帯端末を提供するものである。」

(イ)
「【0055】
実施例2
図10は実施例2における表示内容を示す。
図10に示す表示画面は、両手持ちの場合を表している。そして、図10(a)に示す表示画面のA1、A2は、持ち手判定エリア(持ち手の設定が可能な範囲)を示し、図10(b)に示す表示画面は、「持ち手ありの継続」の場合を表すと共に、親指が操作のために動いても持ち手の判定は継続される場合を示している。
【0056】
実施例3
図11は実施例3における表示内容を示す。
図11に示す表示画面は、左片手持ちの場合を表している。そして、図11(a)に示す表示画面のB1、B2は、持ち手判定エリア(持ち手の設定が可能な範囲)を示し、図11(b)に示す表示画面は、「持ち手ありの継続」の例を表すと共に、親指が操作のために動いても持ち手の判定は継続される場合を示している。
実施例4
図12は実施例4における表示内容を示す。
図12に示す表示画面は、左側の表示が持ち手の存在によって右側の表示に変化する場合を示す。
図12(a)に示す表示画面は、本のページを表示した場合であり、右側では持ち手の存在によって横方向に縮小されている。
図12(b)に示す表示画面は、WEBブラウザ画面を表示した場合であり、右側では持ち手の存在によってラインを避けて表示される。
【0057】
図12(c)に示す表示画面は、持ち手がアイコンにかからないので、表示が変化しないことを示している。
図12(d)に示す表示画面は、持ち手がアイコンにかかり「A3」が選択できないので、「D4」を次のページに移動させることを示している。
【0058】
図12(e)に示す表示画面は、画像を表示する場合を示し、左側で表示されている画像全体を、持ち手のラインを避けて、右側のように縮小表示することを示している。
図12(f)に示す表示画面は、画像をサムネイル表示する場合を示し、左側のように画像全体を表示している場合に、持ち手のエリアのみを避けて並べ替え表示を行うことを示している。」

(ウ)
「【図10】



(エ)
「【図11】



(オ)
「【図12】



上記(ア)からすると、「非タッチ領域」は、使用者の携帯端末を支える持ち手がタッチパネルの入力操作や表示画面の表示動作に干渉しないようにするための領域であって、従来の携帯端末の「非タッチ領域」は、タッチパネルの周囲に数mm?数cmの幅で設けられていたが、本願によるこの発明では、タッチパネルの周囲に設ける必要がなく、持ち手がタッチパネルに接触してもタッチ操作と判定されることのない携帯端末を提供することが記載されている。
また、上記(イ)には「非タッチ領域」という用語は用いられていないものの、上述したように上記(ア)からすると、「非タッチ領域」は「持ち手」がタッチパネルの入力操作や表示画面の表示動作に干渉しないようにするための「領域」(エリア)であるから、(イ)の「持ち手判定エリア」、「持ち手のライン」及び「持ち手のエリア」は、(ア)の「非タッチ領域」に相当するものと把握できる。具体的には、上記(ウ)又は(エ)においての【図10】及び【図11】に記載された、ラインの形状又は四角形状で着色がなされているA1、A2、及びB1、B2で示された領域の「持ち手判定エリア」、上記(オ)の【図12(a)】の右側、【図12(b)】の右側、並びに、【図12(e)】の右側に図示されているラインの形状又は四角形状で斜線で覆われている領域の「持ち手のライン」、及び、【図12(d)】の右側、及び【図12(f)】の右側に図示されている四角形状で斜線で覆われている領域の「持ち手のエリア」が、「非タッチ領域」に相当するものと把握できる。

イ.「アイコンC」について

他方、当初明細書等の、特に段落【0053】?【0054】、及び【図9(a)】?【図9(d)】を参照すると、「アイコンC」に関して以下の記載(カ)、(キ)がされている。

(カ)
「【0053】
[実施例]
次に、図3?図8のフローチャートのプログラムが実施された場合の表示パネル4aの表示の実施例について説明する。
実施例1
図9は実施例1における表示画面の表示内容を示す。
図9(a)に示す表示画面では、表示パネルの下側に表示されたアイコンCが、持ち手判定処理が図3?図8のフローチャートの示すプログラムによって実行されていることを示している。そして、この場合、アイコンCは「持ち手がない」場合を示している。
図9(b)に示す表示画面では、アイコンCは「持ち手がある」状態を示している。
【0054】
図9(c)に示す表示画面は、「持ち手がある」状態で、持ち手部分は無視されるが、画面の拡大・縮小等は行わない場合を示す。この場合、アイコンCは「持ち手がある」ことを示している。
図9(d)に示す表示画面は、持ち手判定プログラムの実行を一時的に中断した場合を示し、アイコンCが判定プログラムの中断を表している。」

(キ)
「【図9】



上記(カ)には、表示パネルの下側に表示された「アイコンC」について、「持ち手判定処理が図3?図8のフローチャートの示すプログラムによって実行されていることを示している。」とあり、上記(キ)の【図9(a)】の場合は、アイコンCは、「持ち手がない」状態を示しており、上記(キ)の【図9(b)】の場合は、アイコンCは、「持ち手がある」状態を示している、とある。
上記「持ち手判定処理」については、当初明細書等の段落【0020】?【0052】及び【図3】?【図8】に記載されているものの、ここには、「非タッチ領域」についての記載はなく、「非タッチ領域があることを示す所定アイコン」に関する記述もない。よって、上記(ウ)に記載された「アイコンC」は、図3?図8のフローチャートの示すプログラムによる「持ち手判定処理」が実行されていることを示していると把握できるものの、当初明細書等の段落【0020】?【0052】及び【図3】?【図8】の記載からは、この「アイコンC」が「非タッチ領域があることを示す」根拠は見いだせない。
また、上記(カ)によれば、上記(キ)の【図9(a)】、【図9(b)】はそれぞれ、「持ち手がない」状態、「持ち手がある」状態を示しているものの、図面を参照する限り、それぞれの「アイコンC」は、その違いを認識可能な程度に図示されたものとはいえず、また、「非タッチ領域」も描かれていないことから、【図9(a)】及び【図9(b)】に図示された「アイコンC」が「非タッチ領域があることを示す」ものとはいえない。

また、上記(カ)の段落【0054】及び上記(キ)の【図9(c)】を参照すると、当該【図9(c)】には、上記(キ)の【図9(a)】及び【図9(b)】とは異なり、着色が施されたデザインの「アイコンC」が描かれており、当該【図9(c)】に係る表示画面は、「持ち手がある」状態で、持ち手部分は無視されるが、画面の拡大・縮小等は行わない場合を示すものである。この場合、「持ち手部分は無視される」という記載は、「持ち手部分のタッチは無視される」という意味に把握されるものの、当該タッチは無視される「持ち手部分」が「非タッチ領域」であると把握できるような記載や図示はされておらず、むしろ、画面の拡大・縮小等は行われないことから、上記(イ)にあるような、画面の縮小に伴う、ラインの形状又は四角形状の領域の存在も認められない。よって、【図9(c)】に図示された「アイコンC」が「非タッチ領域があることを示す」ものとはいえない。

また、上記(カ)の段落【0054】及び上記(キ)の【図9(d)】を参照すると、当該【図9(d)】には、【図9(a)】?【図9(c)】とはデザインが異なり、×印を含む「アイコンC」が描かれており、表示画面は、持ち手判定プログラムの実行を一時的に中断した場合を示しており、「アイコンC」が判定プログラムの中断を表している、と記載されている。そうすると、持ち手判定プログラムが中断されていることから、上記(イ)に記載された「持ち手判定エリア」、「持ち手のライン」、又は「持ち手のエリア」が存在せず、この場合においても「アイコンC」は「非タッチ領域があることを示す」ものとはいえない。

ウ.「アイコン」について

さらに、当初明細書等の特に、段落【0057】、及び【図12(c)】?【図12(d)】を参照すると、「アイコン」に関して以下の記載(ク)がされている。なお、【図12】については、上記(オ)に示した。

(ク)
「【0057】
図12(c)に示す表示画面は、持ち手がアイコンにかからないので、表示が変化しないことを示している。
図12(d)に示す表示画面は、持ち手がアイコンにかかり「A3」が選択できないので、「D4」を次のページに移動させることを示している。」

上記(ク)からすると、上記(オ)の【図12(c)】?【図12(d)】に図示された、アルファベット又はアルファベットと数字からなる記号が記載された「A3」等の「アイコン」は、持ち手がアイコンにかかると、持ち手のエリアである四角形状の斜線で示された「非タッチ領域」を意味する領域からずらされて表示されることが記載されているのみであり、このような「非タッチ領域」を意味する領域の有無に関わらず表示されている「A3」等の「アイコン」が、「非タッチ領域があることを示す」ものではないことは明らかである。

エ.本件補正の「表示画面には、非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」について

上記ア.?ウ.のことから、当初明細書等には、特に、「非タッチ領域」、「アイコンC」及び「アイコン」に関連する記載、及び「持ち手判定処理」に関する記載を参照しても、本件補正により追加された「表示画面には、非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」ことは、記載されていない。

(3)まとめ

以上ア.?エ.に示したとおり、本件補正により追加された「表示画面には、非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないことから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

なお、本願の親出願である特願2014-29616号においては、「持ち手がある」状態を示す【図9(b)】の「アイコンC」が薄く着色されていたところを、親出願の一部を本願として新たな特許出願(分割)とする際に、【図9(a)】の「アイコンC」と違いのないものに変更したと認められる。

2.理由2
上記「1.(3)」に示したように、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではないが、仮に、本件補正が、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものといえる場合について以下に検討する。

(1)補正後の本願発明

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示画面」について、「前記表示画面には、前記非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

この場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記「1.(1)」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献及び周知技術

ア.原査定の拒絶の理由に引用された特表2013-538397号公報(2013年10月10日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項(ア)?(ケ)が記載されている。

(ア)
「【0016】
本明細書で用いられる場合、「モバイルデバイス」は、様々な携帯電話、個人向けモバイルテレビ受像機、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ワイヤレス電子メール受信機(たとえば、Blackberry(登録商標)、Treo(登録商標)デバイス)、インターネット対応携帯電話(たとえば、Blackberry Storm(登録商標))、およびタッチスクリーンディスプレイを備えた同様の個人向け電子デバイスのうちの任意の1つを指すように、交換可能に用いられる。モバイルデバイスは、図38を参照して以下でより完全に説明されるような、プログラム可能プロセッサおよびメモリを含み得る。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「タッチスクリーン」という用語およびタッチスクリーンディスプレイは、指の位置またはディスプレイの表面へのタッチを感知できる、コンピューティングデバイスのディスプレイを指す。タッチスクリーンディスプレイはよく知られており、いくつかの現在のモバイルデバイスにおいてディスプレイとして使われている。タッチスクリーンディスプレイは、ユーザの指(または器具)によるタッチ(または押圧)を検出または感知し、そのタッチを、モバイルデバイスへの入力として解釈する。タッチスクリーンによってモバイルのプロセッサに提供される、タッチの感知および入力データは、本明細書では「タッチ事象」と呼ばれる。ユーザがタッチスクリーンの一部に触れてモバイルデバイスを把持することと一致する持続的なタッチ事象は、本明細書では「把持事象」と呼ばれる。デバイスプロセッサにタッチスクリーンによって提供されるタッチ事象および把持事象のデータは、ユーザの指先がタッチしたタッチスクリーンの表面の位置、領域、および形状を含み得る。」

(イ)
「様々な実施形態は、把持事象の位置、大きさ、形状、および方向に基づいて、表示されるコンテンツおよび/またはメニューアイコンの配置ならびに方向を調整することによって、タッチスクリーンディスプレイ上でのユーザの把持(または他の長時間のタッチ)に対応できる、方法およびモバイルデバイスを含む。把持事象の位置、形状、大きさ、および方向(すなわち、ユーザの指によってふさがれるタッチスクリーンディスプレイの表面領域)を測定することによって、モバイルデバイスのプロセッサは、ディスプレイとユーザの目との間にあるユーザの手のガラスに接する部分とガラスに接しない部分の両方を含む、ユーザの手によってユーザの視界から隠されまたは遮られるディスプレイの領域を推定することができる。様々な実施形態では、プロセッサは、ユーザの手によって隠されている表示されたコンテンツおよび/またはアイコンが、タッチスクリーンディスプレイの遮られていない部分に再配置されるように、表示の体裁を調整することができる。表示の体裁への調整は、代替的な実施形態による様々な方法で実現され得る。表示の体裁への調整は、隠されたコンテンツをユーザフレンドリーな方式で見せるために、配置およびユーザの手によって隠された全体の領域も考慮することができる。ユーザによるアクティブ化を容易にするために、メニューアイコンは、タッチスクリーンディスプレイを把持するユーザの指の近くに、またはそれから離れて、再配置され得る。ユーザ選好、指の大きさ、および把持の方向は、表示の体裁への調整が特定のユーザの指、把持、および選好に順応するように、ユーザ設定ファイルに記憶され得る。モバイルデバイスはまた、たとえば、ユーザの指の大きさまたはユーザの把持の方向を反映するように、表示コンテンツが再配置される方式をユーザが調整できるようにするために、訓練手順を提示することもできる。さらなる実施形態では、モバイルデバイスは、ログインしたユーザの通常の把持位置を一時的に示して、訓練された構成と矛盾しない方式でユーザがモバイルデバイスを把持するのを助けることができる。」(【0019】)

(ウ)
「本実施形態とともに用いるのに適切なモバイルデバイス100のハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャが、図1に示される。モバイルデバイスは通常、メモリ102に結合されるプロセッサ101と、入力センサ113を含むタッチスクリーンディスプレイ103とを含む。プロセッサ101は、ディスプレイバッファ112に記憶される、ディスプレイ103上で提示するための像を生成する。そして、ディスプレイバッファ112のコンテンツは、プロセッサ101からのディスプレイ制御命令に応答して、ディスプレイ103上に提示される。タッチスクリーンへのユーザのタッチは、タッチ事象信号をプロセッサ101に与えるタッチスクリーン入力センサ113によって、感知される。様々な実施形態では、プロセッサ101は、タッチスクリーン入力センサ113からタッチ事象の形態で、タッチスクリーンディスプレイのユーザの把持の性質に関する、位置、大きさ、および方向の情報を受け取り、タッチ事象が閾値の長さを超えると、デバイスプロセッサはタッチ事象を把持事象として認識することができる。」(【0021】)

(エ)
「【0022】
ある実施形態の操作が、一連の図2?図4で示される。図2に示されるように、ユーザは、タッチスクリーンディスプレイ110上の指200によって、モバイルデバイス100を把持することができる。その結果、ディスプレイのコンテンツの一部は、ユーザの親指200によって隠されるようになり、親指は、ディスプレイに触れる(ガラスに接する)親指の部分とディスプレイの上部に位置する親指のガラスに接しない部分の両方を含む。図3に示されるように、ユーザがタッチスクリーンディスプレイを把持すると、涙滴型の影付き領域204で示される、ユーザの親指200の一部のみが実際に表面に接触する。
【0023】
図3に示される方式でユーザがモバイルデバイス100を把持することによるタッチ事象は、タッチされた部分204の位置、領域、および方向を定める情報を含み得る。そのような情報は、タッチされている(すなわちタッチされている領域204内の)画面の座標またはディスプレイのピクセルの形式であってよい。このタッチ事情情報に基づいて、モバイルデバイス100のプロセッサは、画面204のタッチされた部分の位置、大きさ、形状、および方向を判定することができ、これらは、どの指が画面にタッチしているかということと、ユーザの指の方向とに関する情報を与えることができる。たとえば、タッチされた部分204(本明細書では把持事象領域と一般に呼ばれる)は、画面にタッチしているのが親指200である場合には、親指以外の指がタッチしている場合よりも大きい可能性がある。把持する状況において(指先でタッチする事象とは対照的に)、画面204のタッチされた部分は通常、楕円形または涙滴型のように、非対称的になる。そのような非対称的な形状の長軸は、ディスプレイに対するユーザの指の方向に関する情報を与えることができる。図3に示される例では、涙滴型の形204の尾部は、タッチスクリーンディスプレイ110の左側を、親指200の軸に沿って指している。したがって、把持事象領域の大きさ、形状、および構成を分析することによって、プロセッサは、ユーザの指200の見込まれる輪郭を推定し、したがって、図3において点線で示されるような、ユーザの手によって隠されるディスプレイの部分を推定することができる。
【0024】
上で述べられたように、タッチ事象は、事象の長さに基づいて、把持事象として認識され得る(すなわち、ユーザの手が長時間同じ位置にとどまり、そのことで表示の体裁の調整が許可される)。したがって、表示の体裁の調整は、2秒から3秒の遅延の後に起き得る。」

(オ)
「ある実施形態では、隠されたコンテンツの調整は、認識された指とともに、タッチ事象の位置に依存し得る。たとえば、涙滴型の形状204の方向がタッチスクリーンディスプレイの左側を指している場合、モバイルデバイス100は、タッチ事象が左手の指によって行われたものであると判定することができるので、指200によって覆われるコンテンツは、右側に調整され得る。左手による把持事象がディスプレイの左手側に現れる場合、モバイルデバイスは、ディスプレイの小さな部分しかユーザの手によって隠されていないと判定できるので、図4に示されるように、隠されたコンテンツは右側にテキストを調整することによって簡単に見えるようにできる。」(【0025】)

(カ)
「モバイルデバイスのプロセッサが、ユーザの指200によって隠されているディスプレイの部分を決定すると、プロセッサは、表示の体裁を調整して、たとえば、図4に示されるように、隠されたコンテンツをディスプレイの遮られていない部分へ動かすことができる。図4に示される例では、モバイルデバイス100のプロセッサは、隠されたコンテンツがディスプレイの遮られていない部分へ動かされるように、矢印202で示される方向にコンテンツを移している。自由に流動するテキストブロックに適切なある実施形態では、そのような動きは、隠された領域の周りでテキストが流動するように、把持事象の近傍の余白を調整することによって実現することができる。」(【0026】)

(キ)
「様々な実施形態は、上で説明されたような表示されるコンテンツの調整に限定されず、同様に、または代替的に、表示される仮想ボタンまたはメニューアイコンに適用され得る。このようにして、モバイルデバイスは、ユーザの把持に近接して、仮想ボタンまたはメニューアイコンを提示するように構成され得る。そうすることで、モバイルデバイスは、デバイスの片手操作を容易にすることができる。この実施形態の例が図11に示され、図11は、メニューアイコン230a、230b、230c、230dがユーザの親指200の近くに配置され、ユーザが一般的な機能に簡単にアクセスできるようにするのを示す。モバイルデバイスが、把持事象の位置、大きさ、および方向に基づいて、ユーザの指200によって覆われる領域を判定すると、モバイルデバイス100は、上で説明されたように隠されたコンテンツを調整し、隠された領域の推定される輪郭に近接して、メニューアイコン230a、230b、230c、230dを再配置する。タッチ事象の外形輪郭に近接してメニューアイコンを配置することで、ユーザは重要なメニューアイコンに簡単にアクセスできるようになり得る。」(【0039】)

(ク)
「図23および図24Aは、ユーザがデバイスを把持できるタッチスクリーンディスプレイ110上の領域208を提案するための、ある実施形態の方法を示す。そのような把持位置は、モバイルデバイスによって報告されるような通常の使用法に基づいてもよく、またはユーザの訓練もしくは指定に基づいてもよく、これらの両方が特定のユーザのためにメモリに記憶され得る。現在のユーザを認識するために、図23に示されるように、モバイルデバイス100はログインメニュー258を表示することができる。そのようなログインメニューは、モバイルデバイスが選好および設定を記憶した対象のユーザを、一覧にすることができる。この例示的なログインウィンドウでは、ユーザは、適切なチェックボックスをクリックすることによって、身元を示すことができる。ユーザのログインに応答して、モバイルデバイスは、内部のデータベースからユーザの把持の外形にアクセスして、図24Aに示されるように、モバイルデバイスを把持するためのユーザが好む位置の輪郭260を表示することができる。」(【0049】)

(ケ)
「【図11】



したがって、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「様々な携帯電話、個人向けモバイル受像機、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)などのうちの任意の1つを指すモバイルデバイスであって、(【0016】)
タッチスクリーンという用語およびタッチスクリーンディスプレイは、指の位置またはディスプレイ表面へのタッチを感知できるディスプレイを指し、当該タッチスクリーンディスプレイは、ユーザの指(または器具)によるタッチを検出または感知し、そのタッチを、当該モバイルデバイスの入力として解釈するものであり、(【0017】)
当該タッチスクリーンディスプレイによってモバイルデバイスのプロセッサに提供されるタッチの感知および入力データは、「タッチ事象」と呼ばれ、ユーザがタッチスクリーンディスプレイの一部に触れてモバイルデバイスを把持することと一致する持続的なタッチ事象は、「把持事象」と呼ばれ、(【0017】)
把持事象の位置、形状、大きさ、および方向(すなわち、ユーザの指によってふさがれるタッチスクリーンディスプレイの表面領域)を測定することによって、モバイルデバイスのプロセッサは、ディスプレイとユーザの目との間にあるユーザの手のガラスに接する部分とガラスに接しない部分の両方を含む、ユーザの手によってユーザの視界から隠されまたは遮られるディスプレイの領域を推定することができ、プロセッサは、ユーザの手によって隠されている表示されたコンテンツおよび/またはアイコンが、タッチスクリーンディスプレイの遮られていない部分に再配置されるように、表示の体裁を調整することができ、表示の体裁への調整は、隠されたコンテンツをユーザフレンドリーな方式で見せるために、配置およびユーザの手によって隠された全体の領域も考慮することができ、ユーザによるアクティブ化を容易にするために、メニューアイコンは、タッチスクリーンディスプレイを把持するユーザの指の近くに、再配置され得、また、モバイルデバイスは、ログインしたユーザの通常の把持位置を一時的に示して、訓練された構成と矛盾しない方式でユーザがモバイルデバイスを把持するのを助けることができ、(【0019】)
具体的には、前記モバイルデバイスは、メモリ102に結合されるプロセッサ101と、タッチスクリーン入力センサ113と、ディスプレイ103と、ディスプレイバッファ112とを含み、前記ディスプレイ103は、前記タッチスクリーン入力センサ113を含む前記タッチスクリーンディスプレイ103であって、(【0021】、【図1】)
前記プロセッサ101は、前記ディスプレイバッファ112に記憶される、ディスプレイ103上で提示するための像を生成し、当該ディスプレイバッファ112のコンテンツは、前記プロセッサからのディスプレイ制御命令に応答して、ディスプレイ103上に提示され、(【0021】)
タッチスクリーンへのユーザのタッチは、タッチ事象信号をプロセッサ101に与えるタッチスクリーン入力センサ113によって感知され、プロセッサ101は、タッチスクリーン入力センサ113からタッチ事象の形態で、タッチスクリーンディスプレイのユーザの把持の性質に関する、位置、大きさ、および方向の情報を受け取り、タッチ事象が閾値の長さを超えると、デバイスプロセッサはタッチ事象を把持事象として認識することができ、(【0021】)
ユーザは、タッチスクリーンディスプレイ上の指によって、モバイルデバイスを把持することができ、その結果、ディスプレイのコンテンツの一部は、ユーザの指によって隠されるようになり、(【0022】)
ユーザがモバイルデバイスを把持することによるタッチ事象は、タッチされた部分の位置、領域、および方向を定める情報を含み、そのような情報は、タッチされている画面の座標またはディスプレイのピクセルの形式であってよく、このタッチ事象情報に基づいて、モバイルデバイスのプロセッサは、画面のタッチされた部分の位置、大きさ、形状、および方向を判定することができ、これらは、どの指が画面にタッチしているかということと、ユーザの指の方向とに関する情報を与えることができ、タッチされた部分(把持事象領域)の大きさ、形状、および構成を分析することによって、プロセッサは、ユーザの指の見込まれる輪郭を推定し、ユーザの手によって隠されるディスプレイの部分を推定することができ、(【0023】)
タッチ事象は、事象の長さに基づいて、把持事象として認識され、すなわち、ユーザの手が長時間同じ位置にとどまり、そのことで表示の体裁の調整が許可され、(【0024】)
隠されたコンテンツの調整は、認識された指とともに、タッチ事象の位置に依存し、たとえば、涙滴型の形状204の方向がタッチスクリーンディスプレイの左側を指している場合、モバイルデバイスは、タッチ事象が左手の指によって行われたものであると判定することができるので、指によって覆われるコンテンツは、右側に調整され得るものであり、左手による把持事象がディスプレイの左側に現れる場合、モバイルデバイスは、ディスプレイの小さな部分しかユーザの手によって隠されていないと判定できるので、隠されたコンテンツは右側にテキストを調整することによって簡単に見えるようにでき、(【0025】)
モバイルデバイスのプロセッサが、ユーザの指によって隠されているディスプレイの部分を決定すると、プロセッサは、表示の体裁を調整して、隠されたコンテンツをディスプレイの遮られていない部分へ動かすことができ、そのような動きは、隠された領域の周りでテキストが流動するように、把持事象の近傍の余白を調整することによって実現し、(【0026】)
モバイルデバイスが、把持事象の位置、大きさ、および方向に基づいて、ユーザの指によって覆われる領域を判定すると、モバイルデバイスは、上述したように隠されたコンテンツを調整し、隠された領域の推定される輪郭に近接して、メニューアイコン230a、230b、230c、230dを再配置し、タッチ事象の外形輪郭に接近してメニューアイコンを配置することで、ユーザは重要なメニューアイコンに簡単にアクセスできるようになり得、(【0039】、【図11】)
ユーザがデバイスを把持できるタッチスクリーンディスプレイ上の領域を提案するため、把持位置は、ユーザの指定に基づいて、特定のユーザのためにメモリに記憶され、ユーザのログインに応答して、モバイルデバイスは、内部のデータベースからユーザの把持の外形にアクセスして、モバイルデバイスを把持するためのユーザが好む位置の輪郭を表示することができる、(【0049】)
モバイルデバイス。」

イ.また、原査定時に周知技術として引用された特開2012-14648号公報(2012年1月19日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項(コ)?(セ)が記載されている。

(コ)
「表示装置上にタッチパネルを装備し、タッチパネル上を指やペンなどにより操作することでデータ入力するタッチ式入力装置が、ノート型PC、携帯端末、PDA、ATM、およびカーナビゲーション装置等の情報処理装置で採用されている。」(【0002】)

(サ)
「本発明によれば、表示画面上に設けられたタッチパネルに指示体でタッチすることによって情報を入力可能な情報入力装置において、前記タッチパネルの一部に入力無効領域を設定する入力無効領域設定手段と、前記設定された入力無効領域を避けるように、前記表示画面上に表示されているオブジェクトを再配置する表示制御手段と、を備えているので、タッチパネルに入力無効領域を設定した場合に、その操作性の低下を防止することが可能な情報処理装置を提供することが可能になるという効果を奏する。」(【0014】)

(シ)
「入力無効領設定・解除部5は、所定の条件を満たす場合に、誤操作等を防止するために、タッチパネル2の一部に入力無効領域IAを設定する。」(【0022】)

(ス)
「例えば、図5において、複数のアイコンOB3が表示されている状態で、一部のアイコンOB3の上に入力無効領域IAが設定された場合には(図4(A))、全てのアイコンOB3を縦向きに避ける(図4(B))、横向きに避ける(図4(C))、縦向きの、上方向および下方向に避ける(図4(D))、向きおよび方向が異なるように避ける(図4(E))ようにしてもよい。」(【0033】)

(セ)
「【図5】



上記(セ)に示した【図5】にあるとおり、上記(ス)の記載に対応する図面として、アイコンの表示を避ける入力無効領域IAが四角形状であることが開示されている。

したがって、上記引用文献2には、「携帯端末のタッチパネルにおいて、誤操作等を防止するためのアイコンの表示を避ける入力無効領域IAを四角形状にする技術」が、開示されている。

ウ.また、原査定時に周知技術として引用された特開2013-182536号公報(2013年9月12日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、以下の事項(ソ)?(ツ)が記載されている。

(ソ)
「前項(1)に記載の発明によれば、前記表示手段に画像形成装置の操作画面が表示されている状態で、前記検知手段によりユーザが把持した持ち手が画面のタッチ操作検出領域に被さるのが検知された際に、前記補正手段によりタッチ操作検出領域および画面表示領域が該持ち手から回避される大きさに縮小補正される。」(【0013】)

(タ)
「前記携帯情報端末2には、ユーザが表示部220の縁部20a(図5,図6に示す)を把持した際、その持ち手が表示部分の意図しないキーに触れた際の誤入力を避けるために、該持ち手を検出する持ち手検出センサ291が設けられている。該センサ291により持ち手が検出された際には、CPU201により、持ち手が被さるのを回避するように、タッチ検出領域及び表示領域が縮小補正されるようになっている。」(【0056】

(チ)
「【図5】



(ツ)
「【図6】



上記(チ)、(ツ)にそれぞれ示した【図5】、【図6】にあるとおり、上記(タ)の記載に対応する図面として、持ち手が被さるのを回避するように四角形状の領域を避けた領域にタッチ検出領域及び表示領域が縮小補正されることが開示されている。

したがって、上記引用文献3には、「携帯情報端末の表示部分において、誤入力を避けるために持ち手が被さるのを回避するように、四角形状の領域を避けた領域にタッチ検出領域及び表示領域が縮小補正される技術」が、開示されている。

(3)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「タッチスクリーン入力センサ113」及び「ディスプレイ103」は、それぞれ、本願補正発明の「タッチパネル」及び「表示画面」に相当する。
(b)引用発明の「モバイルデバイス」は、「様々な携帯電話、個人向けモバイル受像機、タブレットコンピュータ、携帯情報端末(PDA)などのうちの任意の1つを指す」ものであるから、本願補正発明の「携帯端末」に相当する。また、引用発明の「モバイルデバイス」は、少なくとも「タッチスクリーン入力センサ113」と「ディスプレイ103」を含み、引用発明における「タッチスクリーンディスプレイ103」は、前記「タッチスクリーン入力センサ113」を含む前記「ディスプレイ103」であると記載され、「指の位置またはディスプレイ表面へのタッチを感知できるディスプレイを指し」、「ユーザの指(または器具)によるタッチを検出または感知し、そのタッチを、当該モバイルデバイスの入力として解釈するもの」であるから、引用発明に記載された「モバイルデバイス」は、本願補正発明の「携帯端末」と同様に、「タッチパネルを重ねた表示画面を有する」点で一致する。
(c)引用発明の「タッチスクリーンディスプレイのユーザの把持の性質に関する、位置、大きさ、及び方向の情報」は、ユーザがモバイルデバイスを把持することによるタッチスクリーン入力センサ113によって感知されたタッチ事象信号の情報であることから、本願補正発明の「タッチパネルとのタッチ位置の情報」に相当する。
(d)引用発明の「メニューアイコン230a、230b、230c、230d」は、タッチスクリーンディスプレイ上に配置され、ユーザがアクセスするアイコンであることから、当該アイコンが配置されるタッチスクリーンディスプレイ上の領域は、本願補正発明における「タッチパネルの入力操作領域」に相当するといえる。
(e)引用発明におけるモバイルデバイスの「プロセッサ101」は、「タッチスクリーン入力センサ113からタッチ事象の形態で、タッチスクリーンディスプレイのユーザの把持の性質に関する、位置、大きさ、及び方向の情報を受け取」ることから、本願補正発明における「タッチパネルとのタッチ位置の情報を受け付け」る「情報処理部」に相当する。そして、引用発明の当該「プロセッサ101」は、タッチスクリーン入力センサ113からタッチ事象の形態で、タッチスクリーンディスプレイのユーザの把持の性質に関する、位置、大きさ、及び方向の情報を受け取り、タッチ事象が閾値の長さを超えると、タッチ事象を把握事象として認識し、ユーザがモバイルデバイスを把持することによるタッチ事象は、タッチされた部分の位置、領域、及び方向を定める情報を含み、そのような情報は、タッチされている画面の座標またはディスプレイのピクセルの形式であってよく、このタッチ事象情報に基づいて、画面のタッチされた部分の位置、大きさ、形状、および方向を判定することができ、これらは、どの指が画面にタッチしているかということと、ユーザの指の方向とに関する情報を与えることができ、タッチされた部分(把持事象領域)の大きさ、形状、および構成を分析することによって、ユーザの指の見込まれる輪郭を推定し、ユーザの手によって隠されるディスプレイの部分を推定することができ、ユーザの指によって隠されているディスプレイの部分を決定すると、当該プロセッサは、表示の体裁を調整して、隠されたコンテンツをディスプレイの遮られていない部分へ動かすことができること、及び、引用発明のモバイルデバイスは、把持事象の位置、大きさ、及び方向に基づいて、ユーザの指によって覆われる領域を判定すると、上述したように隠されたコンテンツを調整し、隠された領域の推定される輪郭に近接して、メニューアイコン230a、230b、230c、230dを再配置し、タッチ事象の外形輪郭に接近してメニューアイコンを配置することで、ユーザは重要なメニューアイコンに簡単にアクセスできるようになり得ることから、本願補正発明の「情報処理部」とは、「タッチパネルとのタッチ位置の情報を受け付け、前記タッチパネルの入力操作領域と前記表示画面の表示領域とを制御する」点で共通する。
(f)引用発明の「把持位置」は、ユーザがデバイスを把持できるタッチスクリーンディスプレイ上の領域を提案するため、ユーザの指定に基づいて、特定のユーザのためにメモリに記憶されるものであるから、本願補正発明における「タッチパネルとのタッチ位置を含む持ち手情報」に相当し、したがって、引用発明の「メモリ102」は、本願補正発明の「タッチパネルとのタッチ位置を含む持ち手情報が予め登録される記憶部」に相当する。
(g)引用発明の「コンテンツ」は、本願補正発明の「表示内容」に相当する。また、引用発明において、ユーザがモバイルデバイスを把持することによる「タッチされた部分(把持事象領域)」は、本願補正発明における「実際のタッチ位置」に相当する。よって、引用発明の「指によって覆われるコンテンツ」は、把持事象領域によりユーザの指によって隠されたコンテンツを意味することから、本願補正発明における「実際のタッチ位置を含む領域に表示されている表示内容」に相当する。
(h)上記(e)で示したとおり、引用発明におけるモバイルデバイスの「プロセッサ101」は、タッチされた部分(把持事象領域)の大きさ、形状、および構成を分析することによって、ユーザの指の見込まれる輪郭を推定し、ユーザの手によって隠されるディスプレイの部分を推定することができ、ユーザの指によって隠されているディスプレイの部分を決定すると、当該プロセッサは、表示の体裁を調整して、隠されたコンテンツをディスプレイの遮られていない部分へ動かすことができるものであり、また、上記(f)で示したとおり、引用発明の「モバイルデバイス」は、特定のユーザのためにメモリに記憶された把持位置を、ユーザがデバイスを把持できるタッチスクリーンディスプレイ上の領域に提案するものであるから、本願補正発明の「情報処理部」とは、「タッチパネルとの実際のタッチ位置が、持ち手情報に含まれるタッチ位置に対応するときに、前記実際のタッチ位置を含む領域に表示されている表示内容を、前記実際のタッチ位置を含む前記領域から避けて表示する」点で共通する。
(i)上記(e)で示したとおり、引用発明におけるモバイルデバイスの「プロセッサ101」は、タッチされた部分(把持事象領域)の大きさ、形状、および構成を分析することによって、ユーザの指の見込まれる輪郭を推定し、ユーザの手によって隠されるディスプレイの部分を推定することができ、ユーザの指によって隠されているディスプレイの部分を決定すると、プロセッサは、表示の体裁を調整して、隠されたコンテンツをディスプレイの遮られていない部分へ動かすことができること、及び、ユーザの指によって覆われる領域を判定すると、上述したように隠されたコンテンツを調整し、隠された領域の推定される輪郭に近接して、メニューアイコン230a、230b、230c、230dを再配置し、タッチ事象の外形輪郭に接近してメニューアイコンを配置することで、ユーザは重要なメニューアイコンに簡単にアクセスできるようになり得ることから、引用発明における、ユーザの指によって覆われると推定される領域の外形輪郭であって、メニューアイコンが再配置される外形輪郭の内側の領域は、その形状を除くと、本願補正発明の「非タッチ領域」に相当する。また、引用発明において上記再配置された「メニューアイコン230a、230b、230c、230d」は、ユーザの指によって覆われると推定される領域の外形輪郭に近接して再配置されることから、ユーザは、「メニューアイコン230a、230b、230c、230d」が再配置された場合に、「非タッチ領域」に相当する領域の存在を認識することができことは明らかである。よって、引用発明の「メニューアイコン230a、230b、230c、230d」は、本願補正発明における「非タッチ領域があることを示す所定アイコン」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「タッチパネルを重ねた表示画面を有する携帯端末であって、
前記タッチパネルとのタッチ位置の情報を受け付け、前記タッチパネルの入力操作領域と前記表示画面の表示領域とを制御する情報処理部と、
前記タッチパネルとのタッチ位置を含む持ち手情報が予め登録される記憶部と
を備え、
前記情報処理部は、前記タッチパネルとの実際のタッチ位置が、前記持ち手情報に含まれる前記タッチ位置に対応するときに、前記実際のタッチ位置を含む領域に表示されている表示内容を、前記実際のタッチ位置を含む前記領域から避けて表示することで、非タッチ領域を示し、
前記表示画面には、前記非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示されることを特徴とする携帯端末。」

<相違点>
「非タッチ領域」の形状が、本願補正発明は、四角形状であるのに対し、引用発明では、ユーザの指によって覆われると推定される領域の外形輪郭の形状である点。

(4)当審の判断

上記相違点について検討する。
まず、引用発明において、ユーザの指によって覆われると推定される領域の外形輪郭の形状として「四角形状」は排除されていない。
次に、上記(2)イ.で示したように、上記引用文献2には、「携帯端末のタッチパネルにおいて、誤操作等を防止するためのアイコンの表示を避ける入力無効領域IAを四角形状にする技術」が開示されており、また、上記(2)ウ.で示したように、上記引用文献3には、「携帯情報端末の表示部分において、誤入力を避けるために持ち手が被さるのを回避するように、四角形状の領域を避けた領域にタッチ検出領域及び表示領域が縮小補正される技術」が開示されている。

上記引用文献2に記載された「携帯端末」、「タッチパネル」及び「誤操作等を防止するためのアイコンの表示を避ける入力無効領域IA」は、それぞれ本願補正発明における「携帯端末」、「タッチパネル」及び「非タッチ領域」に相当し、また、上記引用文献3に記載された「携帯情報端末」及び「表示部分」は、それぞれ本願補正発明における「携帯端末」及び「タッチパネル」であって、引用文献3に開示された上記「四角形状の領域」は、携帯情報端末の表示部分において、当該領域を避けるように、誤入力を避けるために持ち手が被さるのを回避するため縮小補正されたタッチ検出領域を生じさせるものであるから、本願補正発明の「非タッチ領域」に相当するといえる。

すなわち、上記引用文献2及び引用文献3に記載されているように、携帯端末のタッチパネルにおいて、誤操作ないし誤入力を避けるために設けられる非タッチ領域を、四角形状にする技術は、周知の技術である。

よって、引用発明の非タッチ領域において、当該周知技術を適用し、非タッチ領域の形状を四角形状にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明にように構成したことによる効果も、上記引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび

以上のことから、上記「1.(3)」で示したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、本件補正が、上記「1.(3)」で示した特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでないとしても、本願補正発明は、上記「(2.(4))」で示したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

令和元年6月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年12月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タッチパネルを重ねた表示画面を有する携帯端末であって、
前記タッチパネルとのタッチ位置の情報を受け付け、前記タッチパネルの入力操作領域と表示画面の表示領域とを制御する情報処理部と、
前記タッチパネルとのタッチ位置を含む持ち手情報が予め登録される記憶部と
を備え、
前記情報処理部は、前記タッチパネルとの実際のタッチ位置が、前記持ち手情報に含まれる前記タッチ位置に対応するときに、前記実際のタッチ位置を含む領域に表示されている表示内容を、前記実際のタッチ位置を含む前記領域から避けて表示することで、非タッチ領域を示し、前記非タッチ領域は、四角形状である
ことを特徴とする携帯端末。」

2.原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2013-538397号公報
引用文献2:特開2012-14648号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2013-182536号公報(周知技術を示す文献)

3.引用文献及び周知技術

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?引用文献3に関する記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

4.当審の判断

本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「表示画面」について、「前記表示画面には、前記非タッチ領域があることを示す所定アイコンが表示される」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび

以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-08-25 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-28 
出願番号 特願2018-19849(P2018-19849)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 裕  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 林 毅
角田 慎治
発明の名称 持ち手判定機能付き携帯端末  
代理人 前井 宏之  

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