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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1367951
審判番号 不服2019-10702  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-09 
確定日 2020-11-12 
事件の表示 特願2015- 61738「小麦ふすま加工品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-178902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月24日の出願であって、平成30年3月28日に刊行物等提出書が提出され、同年10月10日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月26日に刊行物等提出書が提出され、令和1年5月8日付けで拒絶査定され、同年8月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年5月25日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
1 本願発明の認定
この出願の請求項1に係る発明は、令和2年7月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定されるとおりの以下のとおりのものである。

「【請求項1】
二軸エクストルーダーを用いて小麦ふすまを処理する小麦ふすま加工品の製造方法であって、
二軸エクストルーダーのバレル内の温度を105?150℃とし、該バレル内に、小麦ふすまと、該小麦ふすま100質量部に対して30?95質量部の水とを投入し、該バレル内の圧力を3.5?10MPa、投入物の滞留時間を0.7?4分、投入物のフィード流量を10?100kg/hrとして、該投入物を該バレル内で混練することを含む、製造方法。」(以下「本願発明」という。)

第3 当審から通知した拒絶の理由
当審から通知した拒絶の理由は、以下のものを含むものである。
「第3 拒絶理由
理由1:(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・

刊行物1:特開昭61-1360号公報」

理由1について

請求項1?7について
・・・・」
本願発明は、上記拒絶理由の対象となった請求項1と対応するものである。

第4 当審の判断
当審は、当審から通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないと考える。
理由は、以下のとおりである。

刊行物1:特開昭61-1360号公報
刊行物2:特開昭62-3766号公報
刊行物3:特開昭61-166374号公報
刊行物4:特開昭62-171658号公報
刊行物5:特開平1-117770号公報
刊行物6:特開平2-242666号公報
刊行物7:特開平3-4729号公報
刊行物8:特開平4-299991号公報
刊行物9:特開平5-184308号公報
刊行物10:特開平11-98963号公報
刊行物11:特開昭62-96049号公報

なお、刊行物2?11は、本願出願日時点の技術常識を示す文献である。

1 引用刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1には、次の記載がある。
ア「特許請求の範囲
(1)フスマ、もしくはフスマに他の食用繊維質素材又は澱粉質素材を混合したものを100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下で加熱処理することを特徴とするフスマ加工食品の製造方法。
・・・
(4)加熱処理をエクストルーダーにより行なう特許請求の範囲第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の製造方法。」(特許請求の範囲第(1)項及び第(4)項)

イ「発明が解決しようとする問題点
本発明者は上述したような食生活における食物繊維の重要性に鑑み、食物繊維の供給源として有利なフスマの食品に適した加工法について検討した結果、本発明をなすに至つた。
すなわち、本発明は、前述したごときフスマ本来が有する食品としての欠点を解消して、食物繊維含量の高い、かつ食感、味および色調共に良く、栄養上の欠陥もない食品並びに食品素材として広範囲に利用し得るフスマ加工食品を製造するための方法を提供することを目的とする。」(2頁左上欄17行?右上欄9行)

ウ「フスマは小麦粉の製造に際して副産物として大量に得られるものであるが、前述したごとく、食感および風味が悪く、繊維質も多いことから、従来は主として家畜の飼料並びに漬物の床として使用されていて、それ自体食品や食品素材としては殆んど利用されていなかつた。
本発明は、このようなフスマを100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下で加熱処理することにより、フスマの食感および風味を著しく改善し、加うるに色調も良好となし更に、上記のようにして得られたフスマを圧扁してフレーク状にするか又は微粉砕もしくは顆粒状にすることにより、他の食品素材への均一な混合を可能としたものである。
また、本発明はフスマに大豆皮のような他の食用繊維質素材や澱粉質素材(例えばα化デンプン)を混合したものも処理原料として用い得る。
本発明においては上記条件下での加熱処理はエクストルーダー又はオートクレーブを用いて行ない得る。エクストルーダーは、移送、混合、圧縮、混練、粉砕、剪断、加熱、殺菌押出しおよび膨化などの各工程をひとつのユニットで瞬時に処理し得る装置であつて、近年食品製造にも適用されてきている。
このエクストルーダーは、フイーダ、バレル、スクリユー、ダイ、バレル加熱装置および水冷ジヤケツトから構成されていて、処理原料としてのフスマもしくは上記混合物はフィーダを介してバレル先端へ給送され、その間に圧縮、混練、加熱等の機械的処理と熱処理が施され、ダイから押出される。
本発明では、フスマを上記エクストルーダーもしくはオートクレーブで加熱処理するに当っては、フスマをそのまま、もしくは90%程度までの水分を添加してもよく、加熱温度は100?350℃程度になるように調整することが好ましく、これによりフスマ本来の臭いを除去することができる。
また、エクストルーダーにおけるバレル内の圧力は20?300気圧程度が好ましく、これによりフスマの食感が改善できる。」(2頁左下欄6行?3頁左上欄9行)

エ「発明の作用効果
本発明に従って、エクストルーダー又はオートクレーブ中で処理して得られたフスマ加工食品は、明るいチヨコレート色の色調を示し、フスマ本来の異臭が消失して、いわゆる“こおばしい”香りを呈し、しかも食感上の舌ざわりがなめらかになる。」(3頁左下欄3?9行)

オ「実施例1
フスマに、10倍量の水で希釈した食酢の水溶液の3倍量を添加、混合して2時間放置した後、濾過し、水洗、脱水し、ついで送風乾燥機で100℃に3時間乾燥して水分8%のフスマ処理物を得た。
このフスマ処理物を2軸エクストルーダーに通して150℃の温度および80気圧の圧力下で処理した。
得られた製品は良好な食感と色調を示し、フスマ本来の臭がなく、フイチン酸も含有していなかった。」(4頁左上欄6?16行)

(2)刊行物2
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物2には、次の記載がある。
ア「本発明の目的は、2軸エクストルーダーを効果的に利用することにより鳥獣類の肉類又は副産物を主原料とした簡素な製造工程で、自由な形態で異臭の少ないフリカケ状食品を製造する方法を提供することにある。」(1頁右欄12?16行)(下線は当審にて追加。以下同様。)

イ「発明の実施例 実施例1
畜肉98部に、食塩2部を混合し、これを調整原料とする。エクストルーダーは(株)栗本鉄工所製二軸エクストルーダーKEX-65Tで、バレルは5セグメントに分割され、名バレルを第1?第5バレルと呼んで使用している。スクリュのパターンは第1?第3とも順送り方向のスクリュがセットされ第4、第5バレルには各所に逆送り方向のスクリュがセットしてあり、このスクリュを約50rpm回し運転する。
温度条件は第3、第5バレルを加熱ゾーン(約160℃)に選び、第1バレルに水と脱脂大豆粉を供給し、第2バレルに調整原料16Kg/hrを注入し、全体の供給量が40Kg/hr、水分が50%になるように水と脱脂大豆粉の投入量を調整した。
ダイ直後にはロータリー式カッターが設けられ、ダイからの押出物は細かく細断され、しかも色つやも白く、原料に供試された粉、肉の形跡は見られず一方向に繊維性のある構造を呈しており、エクストルーダー内で十分に蛋白が熔融成型されることを示すものである。この細断された押出物をオーブン等で乾燥させると塩味の効いた肉風味ふりかけとなり米飯にふりかけたり、サラダにふりかけたりしても、フイットする食品であった。
実施例2
畜肉98部に食塩2部を混合し、これを調整原料とする。エクストルーダー及び装置条件は、実施例1と同じ条件とし、全体の供給量20Kg/hrで、そのうち調整原料は約12Kg/hrで、全体の水分値は約60%であった。畜肉添加量が多くても、滞留時間が1分?4分と長く、蛋白が十分に熔融成型されていた。ダイ直後のカッターにて細断し、乾燥させると、ふりかけ状食品が得られ肉含量が多い為か、大豆臭はなく、肉の保持する脂肪分が風味の向上に役立っていた。
発明の効果
以上述べたように、この発明によれば、今まで大がかりで無駄の多かった「ビッツ」の製造工程を簡素化し、低コストで「ビッツ」を作れるようになった。エクストルーダーのノズル太さとプロペラカッターの回転数を変えることにより、思いどおりの大きさのフリカケ状食品が作れるようになった。
また、エクストルージョンクッキングの特性により、副産物を加工した時に発生する異臭が大巾に削減できるようになった。」(1頁右欄17行?2頁左下欄3行)

(3)刊行物3
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物3には、次の記載がある。
ア「2.特許請求の範囲
1.オカラ単独又はこれにオガクズ等を加えた原料を二軸型エクストルーダーにより滅菌し同時に多孔質の顆粒様構造を有するオカラ自体又はオカラを主成分とする素材。
2.オカラ単独又はこれに添加物等を加え二軸型エクストルーダーにより、滅菌し、顆粒様化することを特徴とするテンペ製造用素材。
3.オカラ、オガクズ、米ヌカ等の原料を二軸型エクストルーダーにより滅菌し顆粒様化することを特徴とする食用菌類栽培用素材。
4.オカラ又はこれにオガクズ、米ヌカ等を加えた原料の水分が60%以上を含む特許請求の範囲第1項、第2項及び第3項のいずれかに記載の素材。」

イ「実験例1
実験に用いたオカラは通常の豆腐製造の際に副生されたものを、ドラムドライヤーを用い水分を7.0%迄乾燥したものを用い、エクストルーダー処理直前に加水することによつて水分含量を30?85%に調整し処理に供した。実験に用いた機種は株式会社末広鉄工所製アルフアライザーα-100型二軸型エクストルーダーであり、モノポンプの流量を30kg/hrから65kg/hrに変えて定量的に供給し、バレル内における滞留時間(加熱時間)の変動による効果をみた。併せてエクストルーダーの加熱操作温度を138℃から165℃まで変動させて、滅菌効果並びに、処理物の性状、すなわち多孔質及び顆粒様構造生成の有無、その程度などの検討を行なつた。その結果を第1表に示す。

」(2頁右下欄14行?3頁左上欄第1表)

(4)刊行物4
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物4には、次の記載がある。
ア「高水分系原料の代表例としては、含水率70?90%の魚肉が挙げられ、中でも、鰯、鯖、助宗鱈、南極沖アミ等の多獲性魚貝類を含む水産資源が好ましい。又、高水分系原料としては、冷凍すり身等の一次加工原料、加工残滓等も利用できる。又、これらの水産資源には、得られる製品に畜肉様の食感を付与する上で、大豆、小麦等の植物性蛋白質等を併用するのが好ましい。水産資源への植物性蛋白質の使用量は、前者100重量部に対し1?80重量部とすることが好ましい。
また、本発明においては、ダイ内部への原料乃至製品の詰まりを防止する上で、通常、上記の如く魚肉又は魚肉を主成分とする高水分系原料の含水量を調整する。調整すべき好ましい含水率は40?90%、更に好ましくは55?75%である。
また、本発明においては、この他、高水分系原料中に、調味料、フレーバー及び着色料や、食感調整のために澱粉類(多糖類)、pH調整剤を添加することができる。澱粉を添加する場合、その添加量は1?5%とするのが好ましい。
尚、高水分系原料、その他の添加物及び水の混合は、エクストルーダーの投入前に行っても良いが、エクストルーダーの混練機能を生かし、別個にエクストルーダーに投入するのが好ましい。
また、本発明において、スクリュー径が30?80mmの二軸エクストルーダーによる良好な処理条件(運転条件)は、処理原料の種類によっても異なるが、バレル温度100?300℃、好ましくは150?250℃、更に好ましくは180?220℃、スクリュー回転数10?300r.p.m.、好ましくは50?150r.p.m.、原料供給量20?50Kg/h、好ましくは30?40Kg/hが適している。」(3頁左上欄12行?左下欄4行)

(5)刊行物5
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物5には、次の記載がある。
ア「2.特許請求の範囲
(1)二軸エクストルダーを使用して原料を加熱加圧処理または加圧処理する食品の製造法において、該処理前および/または処理時に、食用山菜および/または食用キノコの植物体、子実体、これらの処理物、加工物から選ばれた1種もしくは2種以上を原料に添加することを特徴とする、保存性の改良された食品の製造法。
(2)植物体、子実体の処理物、加工物が該体の搾汁液、水抽出液、または有機溶剤抽出液、これらの濃縮物である特許請求の範囲第1項記載の食品の製造法。
(3)食用山菜がカタクリ、ギボウシである特許請求の範囲第1項記載の食品の製造法。」

イ「本発明における二軸エクストルーダーの処理条件としては、製造される食品の製法に応じて、適宜選択することができ、特に限定はされない。たとえば、醸造用原料などを製造する場合には、添加される植物体等および/または加工物等を含む溶液が、処理される原料に対して20?50%(W/W)、好ましくは30?40%(W/W)、品温が110?190℃、好ましくは150?190℃、圧力が20?50kg/cm^(2)、好ましくは30?40kg/cm^(2)、滞留時間が5?180秒、好ましくは120?180秒、スクリュー回転数は80?300rpm、好ましくは150?250rpmに調整して行う。」(5頁左上欄11行?右上欄3行)

(6)刊行物6
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物6には、次の記載がある。
ア「2.特許請求の範囲
1 穀粉をエクストルーダーを用いて押し出し膨化して得られる培地に、モナスカス属に属する菌を接種して培養することを特徴とする紅麹の製造法。
2 穀粉が小麦粉である請求項1記載の紅麹の製造法。
3 穀粉をエクストルーダーを用いて押し出し膨化して得られる紅麹用培地。
4 穀粉に水を加えて水分含量を15?50%とし、これをエクストルーダーを用いて、圧力5?200kg/cm^(2)及び品温90?200℃の条件下で20?120秒間加熱加圧処理せしめ、次いで低圧下に急激に放出して膨化せしめたものである請求項3記載の紅麹用培地。」

イ「穀類としては、小麦、大麦、米、とうもろこし、大豆等を挙げることができ、これらは適当な粉粒状に粉砕する。これらの穀粉のうちでも、小麦粉を用いて得られる培地は紅麹菌の生育がよいと共に、得られる紅麹はパン等の小麦粉製品に添加した場合、原料とのなじみが良い点で特に好ましい。
穀粉は単独又は混合して用い、水分が15?50%、好ましくは30?45%になるように加水する。水分が15%未満であると膨化が過度になったり、コゲ付きを生じ、また50%を超えると膨化が充分に行われない。
水分調整を行った穀粉をエクストルーダー中で、加熱加圧処理を行う。エクストルーダーとしては一軸及び二軸の何れをも使用できる。エクストルーダー処理の品温(出口)は90?200℃、特に110?150℃が好ましい。品温が90℃未満では膨化が不十分であり、また200℃を超えるとコゲ付きを生ずる。圧力(出口)は5?200kg/cm^(2)特に10?100kg/cm^(2)が好ましく、5kg/cm^(2)未満では膨化が不充分であり、また200kg/cm^(2)を超えると膨化が過度となる。滞留時間はスクリュー形状、品温及び圧力等によっても異なるが20?120秒が好ましい。」(2頁右上欄7行?左下欄12行)

(7)刊行物7
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物7には、次の記載がある。
ア「本発明で使用する小麦粉加工物とは、小麦粉をエクストルーダーで加熱加圧処理した押出膨化物やパン粉等のポーラス状の加工物を指すが、特に押出膨化物が好ましい。この押出膨化物の製造は、例えば以下のようにして行なうと好適なものが得られる。
まず、小麦粉に水分が15?50重量%(以下単に%という)、好ましくは30?45%になるように加水し、生地を得る。水分が15%未満であると膨化が過度になったり、コゲ付きを生じ、また50%を超えると膨化が充分に行なわれない。
次に、斯かる水分調整を行なって得た小麦粉生地をエクストルーダー中で加熱加圧処理を行なう。エクストルーダーとしては一軸及び二軸の何れをも使用できる。エクストルーダー処理の品温(出口)は90?200℃、特に110?150℃が好ましい。品温が90℃未満では形化が不充分であり、また200℃を超えるとコゲ付きを生ずる。圧力(出口)は5?200kg/cm^(2)、特に10?100kg/cm^(2)が好ましく、5kg/cm^(2)未満では膨化が不充分であり、また200kg/cm^(2)を超えると膨化が過度となる。滞留時間はスクリュー形状、品温及び圧力等の条件によっても異なるが20?120秒間が好ましい」(2頁右上欄9行?左下欄15行)

(8)刊行物8
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物8には、次の記載がある。
ア「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれら問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、大豆蛋白を蛋白分解酵素ブロメラインで蛋白分解率50重量%以上70重量%以下となるように分解して得られるペプチドが高いACE阻害活性を有しかつ高回収率で得られること、二軸エクストルーダー(以下「エクストルーダー」という)で処理した大豆蛋白を蛋白分解酵素ブロメラインで蛋白分解率50重量%以上70重量%以下となるように分解して得られるペプチドがさらに高いACE阻害活性を有しかつ高回収率で得られることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0007】本発明で用いる大豆蛋白は、大豆より熱水等で抽出して得られる豆乳、脱脂大豆、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白等を原料とすることができる。本発明で用いるエクストルーダー処理した大豆蛋白は、上記大豆蛋白原料固形分に対して水を20?50重量%、好ましくは30?40重量%添加し、品温110℃?190℃、好ましくは150?190℃、圧力が20?50kg/cm^(2)、好ましくは30?40kg/cm^(2)、滞留時間が5?180秒、好ましくは120?180秒、スクリュー回転数が80?300rpm、好ましくは150?250rpmに調整してエクストルーダー処理したものでよい。」

(9)刊行物9
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物9には、次の記載がある。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 大豆または大豆加工品を高温、高圧処理することによりアレルゲンの含有量を 100ユニット以下に調整した幼令動物飼料用原料。
【請求項2】 高温、高圧処理が二軸型エクストルーダーによる処理であることを特徴とする請求項第1項記載の幼令動物飼料用原料。
【請求項3】 二軸型エクストルーダーによる処理が、大豆または大豆加工品に対する加水量が5?50重量%で、バレル温度 100? 300℃にてバレル部分の滞留時間10? 180秒であることを特徴とする請求項第2項記載の幼令動物飼料用原料。
【請求項4】 二軸型エクストルーダーに大豆または大豆加工品をこれらに対して5?50重量%の水とともに供給し、バレル温度 100? 300℃、バレル部分の滞留時間10? 180秒、圧力10? 100 Kg/cm^(2) で処理してアレルゲンの含有量を減少させることからなる幼令動物飼料用原料の製造法。」

イ「【0018】本発明の加熱、加圧処理によって例えばアレルゲン量を 100ユニット以下にするには、大豆または大豆加工品(脱脂大豆等)を予備処理等を一切行なわず、そのままフィーダーより二軸型エクストルーダーに投入し、同時にフィーダーあるいは他の注入口より水を注入し高圧加熱処理することにより可能である。加水量は、原料に対し、5?50%(重量比)が好ましい。当該投入原料を二軸型エクストルーダーにて、バレル温度 100? 300℃、好ましくは 120? 220℃、圧力10?100kg/cm^(2) 、スクリュー回転 200?300rpmの設定条件で短時間加熱、加圧した後に、大気中に押し出して膨化、変性させ、次いでこれを2?10mm程度に切断し、水分12%以下(好ましくは10%以下)になるように乾燥し、必要に応じて粉砕して目的とする飼料原料を得る。被処理物である大豆または大豆加工品の種類およびアレルゲンの量等によって異なるが、バレル部分の滞留時間は通常10? 180秒程度、好ましくは30?60秒程度である。被処理物に応じて、バレル温度、加圧力、原料投入量、スクリュー回転数を選択することによって、アレルゲンの低減量を任意に調節できる。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。実施例中、%は重量%を示す。・・・
【0020】



(10)刊行物10
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物10には、次の記載がある。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 農産物または農産物加工品を高温、高圧処理することにより抗原量を100U/10mg以下に調整してなる水産動物用飼料原料。
【請求項2】 農産物または農産物加工品が大豆、大豆加工品あるいは菜種、菜種加工品あるいはトウモロコシ、トウモロコシ加工品あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の水産動物用飼料原料。
【請求項3】 高温、高圧処理が二軸型エクストルーダーによる処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の水産動物用飼料原料。
【請求項4】 二軸型エクストルーダーによる処理が、農産物及び農産物加工品に対する加水量が5?50重量%でバレル温度100?300℃にてバレル部分の滞留時間10?180秒であることを特徴とする請求項3に記載の水産動物用飼料原料。
【請求項5】 水産動物が甲殻類であることを特徴とする請求項1ないしは4のいずれかに記載の水産動物用飼料原料。」

イ「【0017】表2から明らかなように、コーングルテンミールを添加することにより油のにじみ性が押さえられただけでなく、得られた加工物は低抗原性でしかもべたつきのないものであった。本発明において、高熱、高圧処理、特に二軸型エクストルーダー機を用いて抗原含量を100U/10mg以下に低減化するには、大豆または大豆加工品をフィーダにより本機に投入し、フィーダ若しくは他の注入口から加水を行い、高圧加熱処理を行うことで可能である。加水量は原料に対し5?50%(重量比)が望ましい。処理条件は、バレル温度100?300℃、好ましくは120?200℃、圧力10?100kg/cm^(2)、スクリュー回転200?300rpm、の設定条件で短時間加熱、加圧した後、大気中に押し出して膨化、変性させ、次いでこれを2?10mm程度に切断し、水分12%以下(好ましくは10%以下)になるように乾燥し、必要に応じて粉砕して目的とする試料原料を得る。被処理物である大豆または加工大豆の種類および抗原量等により異なるが、バレル部分の滞留時間は通常10?180秒程度、好ましくは30?60秒程度である。被処理物に応じて、加水量、加圧力、バレル温度、原料投入量、スクリュー回転数を変えることにより、抗原の低減量は任意に調節できる。」

(11)刊行物11
本願出願前に頒布された刊行物である刊行物11には、次の記載がある。
ア「2.特許請求の範囲
(1)穀物ふすま(審決注:「ふすま」は原文は漢字、以下同様)を二軸型エクストルーダーよりに加圧加熱処理することを特徴とする、食用に適した穀物ふすまの製造法。」

イ「小麦ふすまを蒸煮した後、酸及び糖を加えて、加熱乾燥する方法が記載されている。この方法によれば製パン性、及びそのパンの食味の改善は顕著であったが、なお、ふすま臭が残り、ふすまの硬さによる「のどごし」の悪さが感じられた。加えてこの方法は二工程からなり、後工程の効果を上げるには第一工程後、粉砕することが必要であった。
以上のように、ふすまを配合したパンは、消費者の潜在的ニーズにもかかわらず、ふすま臭、風味、「のどごし」の悪さ等により、広く普及しているとはいい難い。
〔発明が解決しようとする問題点〕
したがって本発明の目的は、二次加工性に優れ、ふすま臭が少なく、「のどごし」が良くすなわち風味、食味に優れ、脆弱化し容易に粉砕できるような穀物ふすまを、単純化された工程で短時間に経済的に製造することができる方法を提供することである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の上記目的は、穀物ふすまを二軸型エクストルーダーにより加圧加熱処理することにより達成される。
本発明において、「穀物ふすま」とは、小麦、大麦、ライ麦、燕麦その他の皮部を意味するものであり、純粋な皮部のみからなるもののほか、胚芽、胚乳を含むいわゆる全粒粉も含まれる。
本発明で使用する二軸型エクストルーダーは押出し推進力に優れ、適度な剪断力をもち、外筒バレルから充分なエネルギーが与えられるものであればよい。特に混合混練性に優れた二軸型完全噛合同方向回転エクストルーダーが望ましい。ここで重要なことは、強じんで、フレーク状のふすまは決して溶融状態にはならないので、一軸型の、機能に劣るエクストルーダーを用いたばあいには、容易に閉塞してしまうことである。
本発明では二軸型エクストルーダーを使用するので、このような問題が起こることはない。
二軸型エクストルーダーのバレル温度は100℃?200℃、望ましくは120℃?160℃が適当である。穀物ふすまの形状を残したいばあいには、低温領域に、また風味食味を改良することを主眼とするばあいには高温領域にバレル温度を設定すればよい。加水量は、穀物ふすま100重重部に対して10?80重量部、好ましくは30?50重量部が適当である。加水量が低いと、剪断力が強く厳しい条件となるが、後の乾燥が容易になる。」(2頁左上欄18行?右下欄3行)

ウ「〔発明の効果〕
本発明によれば、二次加工性に優れ、ふすま臭が少なくて風味、食味に優れ、脆弱化し容易に粉砕できる穀物ふすまを、短時間に経済的に製造することができる。」(3頁右上欄15?19行)

2 刊行物1記載の発明
刊行物1には、前記1(2)の摘記アのとおり、請求項1を引用する請求項4において、「フスマ」「100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下で」「エクストルーダーにより」「加熱処理することを特徴とするフスマ加工食品の製造方法。」が記載され、摘記ウには、その請求項4の記載に対応した記載として、「フスマは小麦粉の製造に際して副産物として大量に得られるものである」こと、「フスマを上記エクストルーダー」「で加熱処理するに当っては、」「90%程度までの水分を添加してもよ」いこと、「本発明においては上記条件下での加熱処理はエクストルーダー」「を用いて行ない得る。エクストル-ダーは、移送、混合、圧縮、混練、粉砕、剪断、加熱、殺菌押出しおよび膨化などの各工程をひとつのユニツトで瞬時に処理し得る装置であって、近年食品製造にも適用されてきている」こと「このエクストルーダーは、フイーダ、バレル、スクリユー、ダイ、バレル加熱装置および水冷ジヤケツトから構成されていて、処理原料としてのフスマもしくは上記混合物はフイーダを介してバレル先端へ給送され、その間に圧縮、混練、加熱等の機械的処理と熱処理が施され、ダイから押出される」ことが記載されている。
したがって、刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
「小麦フスマに対して、エクストルーダーにより加熱処理するに当たって90%程度までの水分を添加し、100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下で、小麦フスマをバレルで混練する、エクストルーダーにより加熱処理する小麦フスマ加工食品の製造方法。」

3 対比判断
(1)本願発明と刊行物1発明との対比
刊行物1発明の「小麦フスマ」、「小麦フスマをバレルで混練する」「小麦フスマ加工食品」は、それぞれ、本願発明の「小麦ふすま」、「投入物を該バレル内で混練する」「小麦ふすま加工品」に相当する。
また、刊行物1発明の「小麦フスマに対して、エクストルーダーにより加熱処理するに当たって90%程度までの水分を添加」することは、少なくとも結果的に小麦フスマと水がエクストルーダーにより加熱処理するに当たって、該エクストルーダーのバレルに投入されることになるのであるから、本願発明の「バレル内に、小麦ふすまと、」「水とを投入」することに相当する。
したがって、刊行物1発明の「小麦フスマに対して、エクストルーダーにより加熱処理するに当たって90%程度までの水分を添加し、100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧程度の圧力下で、小麦フスマをバレルで混練する、エクストルーダーにより加熱処理する小麦フスマ加工食品の製造方法」は、本願発明の「二軸エクストルーダーを用いて小麦ふすまを処理する小麦ふすま加工品の製造方法であって、二軸エクストルーダーのバレル内の温度を105?150℃とし、該バレル内に、小麦ふすまと、該小麦ふすま100質量部に対して30?95質量部の水とを投入し、該バレル内の圧力を3.5?10MPaとして、投入物を該バレル内で混練することを含む、製造方法」との対比において、「エクストルーダーを用いて小麦ふすまを処理する小麦ふすま加工品の製造方法であって、エクストルーダーのバレル内の温度を特定加熱温度とし、該バレル内に、小麦ふすまと、水とを投入し、該バレル内の圧力を特定圧力として、投入物を該バレル内で混練することを含む、製造方法」である限りにおいて、一致している。

したがって、本願発明1と刊行物1発明とは、
「エクストルーダーを用いて小麦ふすまを処理する小麦ふすま加工品の製造方法であって、エクストルーダーのバレル内の温度を特定加熱温度とし、該バレル内に、小麦ふすまと、水とを投入し、該バレル内の圧力を特定圧力として、投入物を該バレル内で混練することを含む、製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:小麦ふすまを処理するエクストルーダーに関して、本願発明においては「二軸エクストルーダー」と特定されているのに対して、刊行物1発明においては、「エクストルーダー」と特定されている点
相違点2:エクストルーダーのバレル内の温度を、本願発明においては、「105?150℃」と特定しているのに対して、刊行物1発明では、「100乃至350℃程度」と特定している点
相違点3:エクストルーダーのバレル内の圧力を、本願発明においては、「3.5?10MPa」と特定しているのに対して、刊行物1発明においては、「20乃至300気圧程度」と特定している点
相違点4:本願発明においては、「小麦ふすま100質量部に対して30?95質量部の水とを投入」すると特定しているのに対して、刊行物1発明においては、「小麦フスマに対して、90%程度までの水分を添加」すると特定されている点
相違点5:本願発明においては、「投入物の滞留時間を0.7?4分」と特定しているのに対して、刊行物1発明においては、明らかではない点。
相違点6:本願発明においては、「投入物のフィード流量を10?100kg/hr」と特定しているのに対して、刊行物1発明においては、明らかではない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1?3について
(ア)エクストルーダーの種類、バレル内の温度範囲、圧力範囲について、まとめて検討する。
刊行物1発明においては、バレル内の温度範囲、圧力範囲が、それぞれ「105?150℃」、「3.5?10MPa」であると特定されてはいないものの、100乃至350℃程度の温度および20乃至300気圧(2.0?30.4MPa)程度で処理されるとされ、範囲が重複したものとなっている。
(イ)また、エクストルーダーによる食品加工方法の技術分野において、二軸エクストルーダーを用いた処理条件としての温度や圧力が、刊行物5で110?190℃、20?50kg/cm^(2)(1.96?4.90MPa)、刊行物6で110?150℃、10?100kg/cm^(2)(0.98?9.80MPa)、刊行物7で110?150℃、10?100kg/cm^(2)(0.98?9.80MPa)、刊行物8で110?190℃、20?50kg/cm^(2)(1.96?4.90MPa)、刊行物9で120?220℃、10?100kg/cm^(2)(0.98?9.80MPa)(表2の実施例2では、バレル温度140℃、圧力54kg/cm^(2)(5.29MPa))、刊行物10で120?200℃、10?100kg/cm^(2)(0.98?9.80MPa)で行われているように、二軸エクストルーダーを用いた処理条件としての相違点2,3に係る温度範囲や圧力範囲は通常のものと認められる。
(ウ)さらに、刊行物1に記載された有機酸で処理する態様ではあるが、実施例1(摘記オ)には、「2軸エクストルーダー」を用いて150℃の温度および80気圧(8MPa)の圧力下で処理したことが例示されており、該実施例で得られた製品は良好な食感と色調を示し、フスマ本来の臭がないという結果が得られているとの記載がある(摘記オ)ことを考慮すると、刊行物1発明において、エクストルーダーとして、二軸エクストルーダーを採用し、処理温度、処理圧力を本願発明の程度とすることは、当業者が容易になし得る技術的事項である。

イ 相違点4について
刊行物1発明においては、小麦フスマに対して、90%程度までの水分を添加することが特定され、本願発明1の「小麦ふすま100質量部に対して30?95質量部の水とを投入」するとの上下限の限定の記載はない。
しかしながら、水の投入によって小麦フスマの臭いの成分が抽出されること、及び小麦フスマに対する水の量がエクストルーダーの混練作業性(装置の作動性、小麦フスマの粉砕性)や臭いの抽出量に影響することは技術常識であるし、二軸エクストルーダーによる処理対象に対して、処理時に一定程度以上になるように水分量調整すること又は水分を添加することは、刊行物2?11にみられるように小麦ふすまをふくめて、様々な食品加工品の処理において技術常識である。
したがって、刊行物1発明において、90%程度までの水分を添加するという水の添加量範囲が示されている以上、本願発明1の数値範囲と大部分で重複している刊行物1発明の上記水の添加量範囲を、臭いの抽出量が少なくならない範囲で混練作業性(装置の作動性)も考慮して下限を設定する程度のことは、当業者であれば容易になし得る技術的事項である。

ウ 相違点5および6について
刊行物1発明においては、投入物の滞留時間とフィード流量は明らかでないものの、食品の加工処理の技術分野において、二軸エクストルーダーへの処理物を滞留時間を0.7?4分(42?240秒)程度の滞留時間、10?100kg/hr程度の供給量とすることは、処理対象の食品の変質や処理効率を考慮すれば、刊行物2?10にも示されるように、様々な処理対象品に対して用いられている技術常識といえる条件である。

エ 本願発明の作用効果について
本願発明は、発明の詳細な説明【0008】や【0035】表1の結果からみて、小麦ふすま特有の臭気、残留感、吸水性を大きく低減したことを効果とするものであるが、刊行物1発明においても、刊行物1の上記摘記イ?オにおいて、明らかなように、小麦ふすまの臭気、食感上の舌触りの問題を改善した作用効果が示されており、吸水性をほどよく調整改善することは、水分量と小麦フスマをどの程度混練し、粉砕するかに関係しており、刊行物11にも、本願発明と同様の条件で行ったふすま製品がふすま臭が少なく風味、食味に優れた穀物ふすまが製造できたことを記載されているように、適切な範囲があることは当業者の予測の範囲である。

4 審判請求人の主張の検討
(1)審判請求書における主張
審判請求人は、審判請求書において、本願発明の構成によって、引用文献6(刊行物1)からは予測できない、小麦ふすま臭、舌上に感じる残留感、食した際のパサつき感を高度なレベルで抑制した旨主張している。
しかしながら、刊行物1においても、フスマ本来の異臭が消失したこと、食感上の舌ざわりがなめらかになることが記載されているのであり、刊行物2,11に記載されるように、二軸エクストルーダーを用いた加水加熱処理によって、異臭の大幅削減、ふすま臭の低減や風味・食味(のどこし)が優れたものが得られることも技術常識であることも考慮すると、これらの記載に接した当業者であれば、本願発明の小麦ふすま臭、舌上に感じる残留感、食した際のパサつき感の効果を予測できるといえ、設定した条件自体にも技術常識と異なる数値範囲を提示したわけでもない以上、評価に基づいて結果を示したからといって、それ自体を顕著な効果とはいえない。

(2)令和2年7月21日付け意見書における主張
ア 審判請求人は、意見書3頁において、本願発明の小麦ふすま臭、舌上に感じる残留感、食した際のパサつき感の課題が複合的で具体的で高度で、刊行物1発明と異なる旨主張しているが、刊行物1においても、上述のとおり、フスマ本来の異臭、良好な食感に向けられているのであるから、刊行物2,11に記載されるように、二軸エクストルーダーを用いた加水加熱処理によって、異臭の大幅削減、ふすま臭の低減や風味・食味(のどこし)が優れたものを得られることもすでに技術常識であったことも考慮すると、本願発明の課題が刊行物1発明と実質的に相違しているとはいえない。

イ また、審判請求人は、意見書3?4頁において、本願発明の構成について、実施例における水の投入量が異なる点を指摘して、刊行物1発明の「90%程度まで水分を添加」する構成を把握できないと主張しているが、発明の把握は実施例のみから行う必要のないことは言うまでもなく、指摘の実施例は、請求項2に対応する有機酸水溶液で処理をするものである。
また、滞留時間やフィード流量の発明特定事項に関しては、本願発明の処理条件が、食品の二軸エクストルーダーによる処理条件としては、通常のものであることは上述のとおりである。

ウ さらに、審判請求人は、意見書4?5頁において、本願発明の作用効果について、刊行物1発明を本願発明の比較例2に相当するとして、格別の作用効果を生じていること、本願発明の小麦ふすま臭の低減はふすま臭の完全な除去で刊行物1発明の作用効果と異質であることから、顕著な効果である旨主張している。
しかしながら、審判請求人の主張は、刊行物1発明を実施例のものであるとの前提にたっており、刊行物1発明の90%程度まで水を添加したものと異なるため、適切な主張であるとはいえない。
また、刊行物1においてもフスマの臭いは消失したと記載されているのであるから、本願発明の効果を当業者の予測を超えた顕著な効果と認めることはできない。

(3)したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、本願出願時の技術常識を考慮すると、刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載された技術的事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物1に記載された技術的事項、および本願出願時の技術常識に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-01 
結審通知日 2020-09-08 
審決日 2020-09-25 
出願番号 特願2015-61738(P2015-61738)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 敬司  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 瀬良 聡機
齊藤 真由美
発明の名称 小麦ふすま加工品の製造方法  
代理人 特許業務法人イイダアンドパートナーズ  
代理人 赤羽 修一  
代理人 飯田 敏三  

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