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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1367956
審判番号 不服2019-13685  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-11 
確定日 2020-11-12 
事件の表示 特願2018- 39973「内視鏡用キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 2日出願公開、特開2018-118080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)7月18日(優先権主張 平成28年7月19日 日本国)を国際出願日として出願した特願2017-549354号の一部を、平成30年3月6日に新たに出願したものであって、平成31年2月4日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年7月18日付けで拒絶査定されたところ、同年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において令和2年4月28日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明(以下、請求項1ないし11に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明11」という。また、本願発明1ないし11を総称して「本願発明」という。)は、令和2年7月9日付けの手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
内視鏡に着脱可能な開口端部を有する内視鏡用キャップであって、
起上台軸を有し、前記内視鏡の操作部からの操作に応じて前記起上台軸を軸にして回動する起上台と、
前記内視鏡の先端部を覆い、前記開口端部を備える有底筒型のカバーと、
前記カバーの筒部に設けられた窓部に向けて、前記カバーの内面から立ち上がる板状の第1壁を有する台座と
を備え、
前記起上台は、前記起上台軸のみを介して前記第1壁に対して回動可能に軸支された状態で前記カバーの内側に取り付けられており、
前記開口端部から前記カバーの外に露出する構成物を備えない
内視鏡用キャップ。
【請求項2】
内視鏡に着脱可能な開口端部を有する内視鏡用キャップであって、
窓部および前記開口端部を有し、前記内視鏡の先端部を覆う有底筒型のカバーと、
前記窓部に向けて、前記カバーの内面から立ち上がる板状の第1壁を有する台座と、
起上台軸と、前記起上台軸と交差する方向に配置されており一面に窪み部を有する起上部とが一体に構成されており、前記窓部に対向配置された前記窪み部よりも前記開口端部に近い位置に配置された前記起上台軸のみを介して前記第1壁に対し軸支された状態で前記カバーの内側に取り付けられており、前記内視鏡の操作部からの操作に応じて前記起上台軸を軸にして回動する起上台と
を備え、
前記開口端部から前記カバーの外に露出する構成物を備えない
内視鏡用キャップ。
【請求項3】
前記第1壁は、起上台取付孔を有し、
前記起上台軸は、前記起上台取付孔に挿入されている
請求項1または請求項2に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項4】
前記台座は、前記カバーと一体に構成されている
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の内視鏡用キャップ。
【請求項5】
内視鏡に着脱可能な開口端部を有する内視鏡用キャップであって、
側面に窓部を有する有底筒型であり、前記内視鏡の先端部を覆うカバーと、
前記カバーの内面の、前記窓部に対向する部分に固定された、該カバーとは別体の台座と、
前記台座に軸支されており、前記カバーの内側で回動可能な起上台と
を備え、
前記台座は、前記窓部に向けて立ち上がる板状の第1壁を有し、
前記起上台は、前記第1壁に対し回動可能に軸支された状態で前記カバーの内側に配置されている
内視鏡用キャップ。
【請求項6】
前記台座は、前記第1壁に設けられた起上台取付孔、および、先端に抜け止めを有しており前記カバーの底部に設けられた台座固定孔に挿入される固定突起を有し、前記窓部に対向する部分と前記固定突起とで前記カバーの内面に固定され、
前記起上台は、前記起上台取付孔に挿入された起上台軸を備える
請求項5に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項7】
前記起上台は、前記起上台軸の中心軸と交差するレバー連結部を備え、
前記内視鏡用キャップを前記内視鏡に取り付けた場合に、
前記レバー連結部は、前記内視鏡の挿入部の先端に回動可能に設けられたレバーと連結し、
前記起上台は、前記レバーを回動させた場合に前記レバーと一体になって回動する
請求項6に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項8】
前記レバー連結部は、前記内視鏡用キャップを前記内視鏡から外した場合に、前記レバーから離れる
請求項7に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項9】
前記レバー連結部は、前記レバーに設けられた凸部または凹部に対応する、凹部または凸部を有する
請求項8に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項10】
前記内視鏡用キャップは、前記内視鏡の挿入部の先端側から長手方向に押し込むことにより前記内視鏡に取り付けられ、長手方向に引っ張ることにより前記内視鏡から外れる
請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の内視鏡用キャップ。
【請求項11】
前記起上台は、前記カバーと異なる材料で構成されている
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の内視鏡用キャップ。」

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、令和2年4月28日付け拒絶理由通知の理由の内、特許法36条6項1号についての理由は、概略、次のとおりのものである。

本願発明の課題は、従来の内視鏡が有する「洗浄に手間が掛かる」という問題点を解決すること、又は、「内視鏡先端への着脱が容易な起上台付き内視鏡用キャップ等を提供すること」と認められ、本願発明は内視鏡の挿入部の先端に回動可能に設けられたレバーと、内視鏡用キャップに設けられた起上台とが連結され、該レバーに連結された起上ワイヤを操作してレバーと起上台を一体として回動させるという手段により、上記課題が解決されると認められる。
一方、本願請求項1-6,10-11に係る発明は、内視鏡に回動可能に設けられたレバーと連結するレバー連結部を内視鏡用キャップが備えるという構成を有していない。そのため、請求項1-6,10-11に係る発明には発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1-6,10-11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の記載には、以下の記載がある。
(本a)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された内視鏡では、起上台の周囲の構造が複雑なため、洗浄に手間が掛かる。特許文献2および特許文献3に開示された内視鏡では、キャップの着脱に手間が掛かる。
【0006】
一つの側面では、内視鏡先端への着脱が容易な起上台付き内視鏡用キャップ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
内視鏡用キャップは、内視鏡に着脱可能な開口端部を有する内視鏡用キャップであって、前記内視鏡の操作部からの操作に応じて回動する起上台と、前記内視鏡の先端部を覆い、前記開口端部を備えるカバーとを備え、前記起上台は前記カバーに取り付けられて1箇所のみで軸支されており、前記開口端部から前記カバーの外に露出する構成物を備えない。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、内視鏡先端への着脱が容易な起上台付き内視鏡用キャップを提供することができる。」

(本b)
「【0052】
起上操作レバー21が動くことにより、起上操作レバー21に接続された起上ワイヤ24が操作部側に引っ張られる。起上ワイヤ24に引っ張られて、レバー60がレバー軸63を軸として回動する。起上台連結部61がレバー連結部81と連結しているため、起上台80もレバー60と一体となって、立ち上がるように回動する。その結果、起上台80と窓部53との間の距離が変化する。
・・・
【0057】
ユーザは、キャップ50を外した後の内視鏡10に対して、次回の使用に備えて洗浄等の処理を行う。図6に示すように、キャップ50を外した後の内視鏡10には起上台80が付いていない。起上台80を固定する際に用いる起上台連結部61は、図6に示すように、先端部31に露出している。レバー室69は、レバー室蓋67およびOリング62により封止されているので、起上ワイヤ24の経路には体液等が付着しない。
【0058】
以上により、起上台80および起上ワイヤ24付近の複雑な構造を洗浄するための特別な洗浄作業等が不要であるので、症例間の処理時間が短く、効率良く運用することができる内視鏡10を提供することができる。
・・・
【0060】
本実施の形態によると、使用後にカバー52を破断して挿入部30から取り外すので、誤って再使用することを防止できるキャップ50を提供することができる。本実施の形態によると、起上台80およびキャップ50を着脱可能な内視鏡10を提供することができる。本実施の形態によると、起上台80を備えない通常の内視鏡と同様の手順で洗浄等の処理を行うことが可能な、起上台80を備える内視鏡10を提供することができる。」

第5 判断
一般に「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人(・・・)が証明責任を負うと解するのが相当である。」とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
以下、上記の観点に立って、本件のサポート要件について検討する。

1 本願発明の課題
上記「第4」(本a)の記載から、本願発明の課題は、従来の内視鏡が有する「洗浄に手間が掛かる」という問題点を解決すること、又は、「内視鏡先端への着脱が容易な起上台付き内視鏡用キャップ等を提供すること」と認められる。

2 本願の課題を解決するための手段
上記「第4」(本b)の記載からすると、本願発明は内視鏡の挿入部の先端に回動可能に設けられたレバーと、内視鏡用キャップに設けられた起上台とが連結され、該レバーに連結された起上ワイヤを操作してレバーと起上台を一体として回動させるという手段により、内視鏡キャップに設けられた起上台と起上台操作のためのワイヤを直接連結せずに起上台を操作可能とし、それにより起上台を備える内視鏡キャップの洗浄及び着脱を容易にするものと認められる。

3 独立形式請求項の記載
独立形式請求項である本願発明1,2,5において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているか否かを検討する。

(1)本願発明1について
本願発明1は、内視鏡に回動可能に設けられたレバーと連結するレバー連結部を内視鏡用キャップが備えるという構成を有していない。
また、本願発明1が備える「起上台軸を有し、前記内視鏡の操作部からの操作に応じて前記起上台軸を軸にして回動する起上台」、「前記内視鏡の先端部を覆い、前記開口端部を備える有底筒型のカバー」、「前記カバーの筒部に設けられた窓部に向けて、前記カバーの内面から立ち上がる板状の第1壁を有する台座」、「起上台は、前記起上台軸のみを介して前記第1壁に対して回動可能に軸支された状態で前記カバーの内側に取り付けられて」いること、及び、「前記開口端部から前記カバーの外に露出する構成物を備えない」という構成により、本願発明の課題を解決できると認識できるというに足りる事項が、本願優先権主張日前の技術常識として知られていたとも認められない。
よって、本願発明1において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。

(2)本願発明2及び5について
本願発明2及び5は、本願発明1と同様に、内視鏡に回動可能に設けられたレバーと連結するレバー連結部を内視鏡用キャップが備えるという構成を有していない。
そうすると、上記本願発明1と同様の理由により、本願発明2及び5においても、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。

4 請求人の主張について
請求人は、令和2年7月9日に提出された意見書において、以下のように主張している。

「2.理由1(サポート要件)について
拒絶理由通知書によると審判官殿は『本願請求項1-6,10-11に係る発明は、内視鏡に回動可能に設けられたレバーと連結するレバー連結部を内視鏡用キャップが備えるという構成を有していない。そのため、請求項1-6,10-11に係る発明には発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1-6,10-11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。』と判断している。
しかしながら、独立請求項である請求項1、請求項2および請求項5の発明は、いずれも『内視鏡用キャップ』に関する発明である。『内視鏡用キャップ』は『カバー』と『第1壁を有する台座』と、『第1壁に対して回動な起上台』とにより完成しており、『レバー連結部』は必ずしも必須の構成要件ではない。
したがって、『レバー連結部を備える』という構成を有しないためにサポート要件違反であるという審査官殿の判断は発明の詳細な説明に記載された特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲の減縮を求めるものである。
以上により、補正後の本件請求項1?6および10?11の発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす。」

上記請求人の主張は「独立請求項である請求項1、請求項2および請求項5の発明は、いずれも『内視鏡用キャップ』に関する発明である。『内視鏡用キャップ』は『カバー』と『第1壁を有する台座』と、『第1壁に対して回動な起上台』とにより完成しており、『レバー連結部』は必ずしも必須の構成要件ではない。」というものである。しかし、ここでの「完成」とは、内視鏡用キャップの構成としては「完成」していることを主張するにとどまり、本願発明の課題を解決できる構成として「完成」していることを説明してはいない。つまり、「レバー連結部」がなくとも、本願発明1、2及び5が備える構成により本願発明の課題を解決できることについて説明するものではない。
よって、内視鏡に回動可能に設けられたレバーと連結するレバー連結部を備えていない内視鏡用キャップである本願発明1、2及び5は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえないから、請求人の上記主張は採用されない。

5 小括
以上の次第であるから、本願発明1、2及び5には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっているから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-07 
結審通知日 2020-09-08 
審決日 2020-09-23 
出願番号 特願2018-39973(P2018-39973)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61B)
P 1 8・ 121- WZ (A61B)
P 1 8・ 537- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 磯野 光司
森 竜介
発明の名称 内視鏡用キャップ  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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