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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1367965
審判番号 不服2019-16774  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-11 
確定日 2020-11-12 
事件の表示 特願2018-527285「表示制御装置及び表示制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日国際公開、WO2018/011884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成28年7月12日を国際出願日とする出願であって、平成31年3月29日付け(発送日:同年4月2日)で拒絶理由が通知され、令和元年5月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和元年10月21日付け(発送日:同年10月29日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和元年12月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし19に係る発明は、令和元年5月30日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)、以下のとおりである。

「【請求項1】
車両用の表示装置に用いられる表示制御装置であって、
前記車両の第1前部座席を含む領域が撮影された画像に対する画像認識処理を実行することにより、前記第1前部座席に着座した第1搭乗者の眼部に第1有色透明体が設けられているか否かを判定する有色透明体判定部と、
前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度又は前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部と、
前記有色透明体判定部及び前記眼部情報判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部と、
を備えることを特徴とする表示制御装置。」

第3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由(進歩性)について
・請求項 1-5、19
・引用文献等 1-2

・請求項 6?14
・引用文献等 1-3

・請求項 15-17
・引用文献等 1-4

・請求項 18
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.特開2009-25533号公報
2.特開2007-290411号公報
3.特開2013-236351号公報
4.特開2007-147816号公報
5.特開2016-4481号公報

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2009-25533号公報)には、「表示画面調整装置」の発明に関して、図面(特に図7及び8を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)「【請求項1】
車両に搭載された表示装置の画質を調整する表示画面調整装置であって、
ユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知する生体センサと、
この生体センサによる検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定する体調判定手段と、
前記車両内の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知する周囲環境センサと、
前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果とに応じて前記表示装置の画質を調整する制御手段と、
を設けたことを特徴とする表示画面調整装置。
【請求項2】
ユーザーがサングラスを装着しているか否かを判定するためのサングラス装着判定手段を備え、
前記制御手段は、前記体調判定結果と前記周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて前記表示装置の画質を調整することを特徴とする請求項1に記載の表示画面調整装置。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された表示装置の画質を調整する表示画面調整装置に関する。」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、表示装置を見る場合、ユーザーが予め画質調整を設定していたとしても、そのときの体調や表示装置周囲の環境(温度や明るさ)などにより、画質が明るすぎる感じを受けたり、色合いが合わない感じがしたりすることがある。このような場合には、上記画質調整の設定値が最適ではないという問題がある。そして、逐一、画質を調整しなおすのも面倒であった。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境に合った画質を自動的に調整できる表示画面調整装置を提供することにある。」

(4)「【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、生体センサによりユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知し、体調判定手段により該生体センサによる検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定し、周囲環境センサにより車両内の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知し、制御手段により、前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果とに応じて前記表示装置の画質を調整するから、表示画面を、ユーザーの体調や周囲環境にあった画質に自動的に調整でき、ユーザーが快適に表示画面を見ることができる。
【0006】
この場合、ユーザーがサングラスを装着しているか否かを判定するためのサングラス装着判定手段を備え、前記制御手段は、前記体調判定結果と前記周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて前記表示装置の画質を調整するようにしても良い(請求項2の発明)。
【0007】
ユーザーがサングラスを使用していると、表示画面が暗く感じたり、特定の色が見難かったりすることがある。この点、この請求項2の発明では、前記制御手段が、前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて前記表示装置の画質を調整するから、このサングラス装着の有無に合った画質の調節が可能となり、利便性が増す。」

(5)「【0013】
生体センサは、車両における適宜箇所(ユーザーが自ずと触れる箇所(ハンドルや、キーなど)や適正なタッチ可能箇所(インストルメントパネルなど))に設けられるが、ユーザーが当該生体センサに適正に触れていないことがある。この場合には、生体センサから生体情報が検知できない。このような場合に、この請求項5の発明によれば、前記生体センサの生体情報検知のための案内を前記報知手段に報知させるから、ユーザーが生体センサに触れることを促される。ユーザーはこの報知により生体センサに触れることになる。この後、生体センサによる検知動作を再度実行するから、生体センサから生体情報を確実に検知できる。」

(6)「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施例につき図1ないし図6を参照して説明する。表示装置であるディスプレイ1は、例えば液晶表示装置から構成されている。このディスプレイ1は図示しない車両のインストルメントパネルなどの位置、つまりユーザー(ドライバ)から見易い位置に配設されている。このディスプレイ1は種々の入力画像ソースを表示するものであり、その入力画像ソースとしては、ナビゲーション装置のナビ画像や、DVD画像、TV画像、車載カメラ画像、ユーザーなどによる外部入力画像などがある。
【0020】
このディスプレイ1の画質を調整するための表示画面調整装置2は、車両に搭載されており、制御装置3と、音声出力装置4と、入力部5と、輝度センサ6と、温度センサ7と、生体センサ8と、画質調整部9とを備えて構成されている。
前記制御装置3は、CPU10、ROM11、RAM12、不揮発性メモリ13などを含んで構成されており、体調判定手段及び制御手段たるものである。前記ROM11には、画質調整のためのプログラムや固定的なデータが記憶されている。前記RAM12は入力される情報やデータを一時的に記憶するようになっている。不揮発性メモリ13は電源オフ時にも消去してはいけない特定データを記憶するためのものである。例えば、ユーザーが指定した画質のデフォルト値などを記憶する。」

(7)「【0022】
前記輝度センサ6は、前記ディスプレイ1周辺に設けられており、当該ディスプレイ1周辺の明るさを検知するものであり、周辺環境センサに相当する。
前記温度センサ7は、車内の適宜部位(例えばインストルメントパネル)に設けられており、空気温度を検知するものであり、周辺環境センサに相当する。
【0023】
生体センサ8は例えばステアリングハンドルにおいて手指が触れる部位に設けられており、体温や血圧さらには脈拍などを検知するものである。
画質調整部9はディスプレイ1の画質(画質要素としては、コントラスト、色合い、色濃さ、シャープネス、黒レベル、明るさなどがある)を調整するものであり、この画質調整部9には、前記制御装置3から与えられる画質調整値に応じて、画質を調整する。」

(8)「【0025】
ここで、各画像ソースの調整値ランクは図6(c)に示すように20ランクに区分されている。例えば、画質要素「コントラスト」は15?80度数(調整値)が20ランクに適宜区分され、画質要素「色合い」は3?99度数(調整値)が20ランクに適宜区分され、画質要素「色濃さ」は2?90度数(調整値)が20ランクに適宜区分され、画質要素「シャープネス」は5?80度数(調整値)が20ランクに適宜区分され、画質要素「黒レベル」は1?75度数(調整値)が20ランクに適宜区分され、画質要素「明るさ」は1?100度数(調整値)が20ランクに適宜区分されている。そして各調整値ランクはパラメータ「1」?「20」が設定されている(パラメータ化されている)。これら調整値ランク「1」?「20」の1つが前記デフォルト調整値ランクに設定されている。ユーザーが予め設定した当該デフォルト調整値ランクは図6(b)の欄[1][2][3][4][5]に示している。」

(9)「【0037】
このステップS4の周囲明るさ検知及び補正値取得制御の制御内容は、サブルーチンとしての図5に示している。この図4において、ステップV1では、輝度センサ6により、周囲の明るさを検知し、ステップV2で、良好な検知ができたか否か(周囲明るさを検知できたか否か)を判定する。良好な検知ができれば(「YES」)、ステップV3に移行して、この検知結果から周囲明るさが「適度」、「暗い」、「明るい」のいずれであるかを判定する。
【0038】
この後、ステップV4に移行して、周囲明るさ判定結果「適度」、「暗い」、「明るい」に応じて図6(a)の判定用データから補正値を読み込む。この場合、周囲明るさ「暗い」であれば「コントラスト」の補正値は「-1」を読み込み、「色合い」の補正値は「0」を読み込み、「色濃さ」の補正値は「-1」を読み込み、「シャープネス」の補正値は「0」を読み込み、「黒レベル」の補正値は「+2」を読み込み、「明るさ」の補正値は「-2」を読み込む。また周囲明るさ判定結果が「明るい」であれば、「コントラスト」の補正値は「+1」を読み込み、「色合い」の補正値は「0」を読み込み、「色濃さ」の補正値は「+1」を読み込み、「シャープネス」の補正値は「0」を読み込み、「黒レベル」の補正値は「-2」を読み込み、「明るさ」の補正値は「+2」を読み込む。また、周囲明るさの判定結果が「適度」のときには、「コントラスト」、「色合い」、「色濃さ」、「シャープネス」、「黒レベル」、「明るさ」の各補正値はいずれも「0」(補正なし)である。」

(10)「【0046】
このような本実施例よれば、生体センサ8によりユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知し、体調判定手段としての機能する制御装置3により、該生体センサ8による検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定し、周囲環境センサとしての輝度センサ6や温度センサ7により車両内の明るさや温度などの周囲環境情報を検知し、制御手段としても機能する制御装置3により、前記体調判定結果と前記周囲環境検知結果(明るさや温度の検知結果)とに応じてディスプレイ1の画質を調整するから、ディスプレイ1の表示画面を、ユーザーの体調や周囲環境にあった画質に自動的に調整でき、ユーザーが快適に表示画面を見ることができる。」

(11)「【0054】
次に図7及び図8は本発明の第2の実施例を示しており、この実施例においては、次の点が第1の実施例と異なる。この第2の実施例では、カメラ21を設けており、制御装置3は、このカメラ21からの画像信号に基づいて、ユーザーがサングラスを装着しているか否かを判定するようになっており、当該カメラ21と制御装置3とでサングラス装着判定手段22を構成している。制御装置3は、前記体調判定結果と前記周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段22による判定結果とに応じて前記ディスプレイ1の画質を調整するようにしている。
【0055】
詳細に説明する。上記カメラ21は、ユーザーの顔部分を撮像できる車内位置に配設されており、制御装置3は、当該カメラ21からの画像信号に基づいて、サングラス装着の有無を判定する。
さらに前記制御装置3は、前記体調判定結果に対応する補正値と、前記周囲環境(周囲温度や周囲明るさ)に対応する補正値と、前記サングラス装着判定結果に対応する補正値(図8の欄a5参照)とを合計し、該合計値を前記デフォルト調整値ランクのパラメータに加算して最終調整値ランクのパラメータを算出し、この最終調整値ランクパラメータに対応する調整値ランクに基づいて前記表示装置の画質の調整値を決定するようにしている。
【0056】
ユーザーがサングラスを使用していると、ディスプレイ1の表示画面が暗く感じたり、特定の色が見難かったりすることがある。この点、この第2の実施例では、前記制御装置3が、前記体調判定結果と前記周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定結果とに応じて前記ディスプレイ1の画質を調整するから、このサングラス装着の有無に合った画質の調節が可能となり、利便性が増す。
【0057】
また、この第2の実施例によれば、体調に関する補正値と、周囲環境に関する補正値と、サングラス装着に関する補正値を合計し、さらにこの合計値をデフォルト調整値ランクのパラメータに加算して最終調整値ランクのパラメータを算出するから、体調と周囲環境とサングラス装着の有無とを一元化した調整値ランクを取得できて、画質の調整値の決定が容易である。」

(12)上記(2)、(5)、(6)の記載事項から、表示装置であるディスプレイ1が車両用であること、及び、ディスプレイ1のユーザーが車両のドライバであることが把握される。ドライバの運転席は車両の前部座席に設けられることが、出願時の技術常識であることを踏まえると、引用文献1に記載されるユーザーは、車両の前部座席に着座しているといえる。

(13)上記(11)の記載事項、及び、サングラスは眼部に装着するものであることが出願時の技術常識であることを踏まえると、引用文献1に記載されるサングラスは、ユーザーの眼部に装着されるものであるといえる。

上記(1)ないし(13)の記載事項及び図示内容を総合し、引用文献1に記載された「第2の実施例」に関する発明を、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

〔引用発明1〕
「車両用のディスプレイ1に用いられる表示画面調整装置2であって、
ユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知する生体センサ8と、
この生体センサ8による検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定する、体調判定手段と、
前記車両の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知する周囲環境センサと、
前記車両の前部座席に着座したユーザーの顔部分をカメラ21で撮影した画像の画像信号により、前記前部座席に着座したユーザーの眼部にサングラスが装着されているか否かを判定するサングラス装着判定手段22と、
前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて、前記ディスプレイ1の明るさを含む画質を調整する制御装置3と、
を備える、表示画面調整装置2。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2007-290411号公報)には、「車両用制御装置」の発明に関して、図面(特に図1ないし3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
乗員の顔を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された前記乗員の顔の画像に基づいて、前記乗員がサングラス又はカラーコンタクトレンズを装着しているか否かを判定する装着判定手段と、
車室内に配設され、乗員に対して情報を表示する、少なくとも1つの表示手段と、
前記表示手段における表示の輝度を制御する輝度制御手段と、を備える車両用制御装置
であって、
前記装着判定手段により、乗員が前記サングラス又は前記カラーコンタクトレンズを装着していると判定されたとき、前記輝度制御手段は前記表示手段における表示の輝度を上げる、ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用制御装置であって、
前記撮影手段により撮影された乗員の顔の画像に基づいて、前記乗員の視線方向を推定する視線方向推定手段を更に備え、
前記輝度制御手段は、前記視線方向推定手段により推定された、前記サングラス又は前記カラーコンタクトレンズを装着している前記乗員の視線方向に基づいて、該乗員の視線方向に存在する前記表示手段における表示の輝度を上げる、ことを特徴とする車両用制御装置。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乗員が視認する各種の情報を表示、制御する車両用制御装置に関する。」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用調光装置においては、乗員がサングラス等を装着した場合に、車室内に配設されたメータ等の表示装置における表示が見難くなる虞がある。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、乗員の視認性を向上させることを主たる目的とする。」

(4)「【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
乗員の顔を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された前記乗員の顔の画像に基づいて、前記乗員がサングラス又はカラーコンタクトレンズを装着しているか否かを判定する装着判定手段と、
車室内に配設され、乗員に対して情報を表示する、少なくとも1つの表示手段と、
前記表示手段における表示の輝度を制御する輝度制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
前記装着判定手段により、乗員が前記サングラス又は前記カラーコンタクトレンズを装着していると判定されたとき、前記輝度制御手段は前記表示手段における表示の輝度を上げる、ことを特徴とする車両用制御装置である。
【0006】
この一態様によれば、サングラス又はカラーコンタクトレンズが装着されることで、表示手段の表示が暗くなるのを、表示手段の表示の輝度を上げることで、打ち消し、乗員にとって当該表示の明るさを最適な状態にすることができる。これにより、サングラス又はカラーコンタクトレンズを装着している乗員の視認性を向上させることができる。
【0007】
この一態様において、前記撮影手段により撮影された乗員の顔の画像に基づいて、前記乗員の視線方向を推定する視線方向推定手段を更に備え、
前記輝度制御手段は、前記視線方向推定手段により推定された、前記サングラス又は前記カラーコンタクトレンズを装着している、前記乗員の視線方向に基づいて、該乗員の視線方向に存在する前記表示手段における表示の輝度を上げてもよい。これにより、サングラス又はカラーコンタクトレンズを装着している乗員のみが視認している表示手段の表示における輝度を上げることができる。」

(5)「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用制御装置のシステム構成を示すブロック図である。第1の実施の形態に係る車両用制御装置10は、主として、乗員Pを撮影するカメラ1と、カメラ1により撮影された撮影画像に基づいて、各種の制御処理等を行うECU2と、乗員に対して、各種の情報の表示を行う表示装置3と、から構成されている。
【0022】
カメラ1は、例えば、車両のルームミラー50近傍に配設され、乗員P1、P2の顔を撮影する(図2)。また、カメラ1として、例えば、CCDカメラが用いられているが、乗員P1、P2の顔を撮影できれば、C-MOSカメラ、赤外線カメラ等の任意のカメラを用いることができる。
【0023】
なお、カメラ1はルームミラー50近傍に配設されているが、車両のメータ表示部、ダッシュボード部、ステアリングホイール部、ウィンドシールド部等の乗員P1、P2の顔を撮影できる車両の任意の位置に配設可能である。カメラ1により撮影された乗員P1、P2の顔の撮影画像は、ECU2に送信される。」

(6)「【0025】
ECU2は、乗員P1、P2がサングラスSを装着しているか否かの判定を行う装着判定部2aと、乗員P1、P2の視線方向を推定する視線方向推定部2bと、表示装置3の表示の輝度を制御する輝度制御部2cと、を有している。なお、これら装着判定部2a、視線方向推定部2b、輝度制御部2c、後述の色検出部12a、表示色変更部12c、及び反射率制御部22cは、例えば、ECU2のROMに記憶され、CPUによって実行されるプログラムにより実現されている。
【0026】
装着判定部2aは、カメラ1により撮影された乗員P1、P2の顔の画像に基づいて、乗員P1、P2がサングラスSを装着しているか否かを判定する。
【0027】
装着判定部2aは、例えば、予め記憶されたサングラスSのテンプレート画像と、乗員P1、P2の顔の画像と、を比較するテンプレートマッチング処理を行うことで、乗員P1、P2がサングラスS又はカラーコンタクトレンズを装着しているか否かを判定する。
なお、テンプレートマッチング処理は、周知の画像処理手法であることから詳細な説明は省略する。
【0028】
視線方向推定部2bは、カメラ1により撮影された乗員P1、P2の顔の画像に基づいて、乗員P1、P2の視線方向を推定する。視線方向推定部2bは、例えば、乗員P1、P2の顔の方向及び注視位置と、基づいて、乗員P1、P2の視線方向を推定する。
【0029】
輝度制御部2cは、表示装置3に対して輝度信号を送信することで、表示装置3における表示の輝度を制御する。例えば、輝度制御部2cは、表示装置3に対して、低輝度信号を送信することで、表示装置3における表示の輝度を低くする。一方、輝度制御部2cは、表示装置3に対して、高輝度信号を送信することで、表示装置3における表示の輝度を高くする。
【0030】
表示装置3は、車室内に配設され、乗員P1、P2に対して、各種の情報を表示する。表示装置3には、例えば、車両の速度、エンジンの回転数、走行距離、シフトポジション(例えば、ドライブ、バック)、制御状態(例えば、ハイブリッドの電力供給状態)等の車両の状態を表示するメータ表示装置3a、地図、走行経路等を表示するナビゲーション装置3b、現在時刻、年月日等をデジタル表示する時計表示装置3c、ウィンドシールドに各種の情報を投影して表示するヘッドアップディスプレイ(Head Up Display:HUD)装置3d、スイッチ装置(例えば、スイッチに表示される文字)3e、テレビ装置、複数のメディアを統合して表示するマルチメディア装置、等の乗員に対して、情報を表示する任意の表示装置が含まれる。
【0031】
また、表示装置3は、例えば、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等に内蔵される発光素子を発光させて、上記情報の表示を行う。表示装置3は、ECU2の輝度制御部2cから送信される輝度信号に基づいて、例えば、液晶ディスプレイに内蔵された発光素子の光量を増加又は減少させて、表示の輝度を調整する。
【0032】
ところで、従来、乗員がサングラスを装着している場合、サングラスを装着していない場合と比較し、当該乗員とって、表示装置の表示が暗く感じられる。これにより、表示装置の視認性が低下する虞がある。
【0033】
そこで、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10において、ECU2の装着判定部2aにより、乗員P1がサングラスSを装着していると判定されたとき、輝度制御部2cは視線方向推定部2bにより推定された、サングラスSを装着している当該乗員P1の視線方向に基づいて、当該乗員P1の視線方向に存在する表示装置3における表示の輝度を上げるよう制御を行う。これにより、サングラスSを装着している乗員P1に対する表示装置3の視認性を向上させることができる。」

(7)「【0034】
次に、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10の制御処理フローの一例について、説明する。図3は、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10の制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0035】
カメラ1により乗員P1、P2の顔が撮影され(S100)、当該顔の画像がECU2の装着判定部2aに対して送信される。
【0036】
装着判定部2aは、カメラ1により撮影された乗員P1、P2の顔の画像に基づいて、テンプレートマッチング処理を行い、乗員P1、P2がサングラスP1を装着しているか否かを判定する(S110)。
【0037】
装着判定部2aにより、乗員P1がサングラスSを装着していると判定されると(S110のYes)、視線方向推定部2bは、カメラ1により撮影された乗員P1の顔の画像に基づいて、乗員P1の視線方向を推定する(S120)。一方、装着判定部2aにより、乗員P1、P2がサングラスSを装着していないと判定されると(S110のNo)、本制御処理のルーチンを終了する。
【0038】
輝度制御部2cは、視線方向推定部2bにより推定された、サングラスSを装着している当該乗員P1の視線方向に基づいて、当該乗員P1の視線方向に存在する表示装置3(例えば、メータ表示装置3a、HUD装置3d)に対して、高輝度信号を送信する(S130)。
【0039】
当該乗員P1の視線方向に存在する表示装置3は、輝度制御部2cから高輝度信号を受信すると、所定値だけ、表示の輝度を上げる(S140)。ここで、所定値は、例えば、予め実験により最適な値が設定され、ECU2のROMに記憶されている。
【0040】
また、乗員P1がサングラスSを装着している場合と、サングラスSを装着していない場合とで、表示装置3の表示の明るさが略同じとなるように、所定値が設定されてもよい。これにより、乗員P1が、サングラスSを装着している場合でも、恰もサングラスSを装着していない場合と略同様に、表示装置3の表示を視認することができる。
【0041】
以上、第1の実施の形態に係る車両用制御装置10において、ECU2の装着判定部2aにより、乗員P1がサングラスSを装着していると判定されたとき、輝度制御部2cは視線方向推定部2bにより推定された、サングラスSを装着している当該乗員P1の視線方向に基づいて、当該乗員P1の視線方向に存在する表示装置3における表示の輝度を上げるよう制御を行う。これにより、サングラスSの装着に起因する表示装置3の表示から乗員P1の目に到達する反射光量の減少を、表示装置3の表示の輝度を上げることで、打ち消し、乗員P1にとって当該表示の明るさを最適な状態にすることができる。したがって、サングラスSを装着している乗員P1に対する表示装置3の視認性を向上させることができる。」

(8)上記(5)ないし(7)の記載事項及び図2の図示内容からみて、引用文献2記載の乗員P1は、前部座席に着座していることは明らかである。

(9)上記(5)及び(6)の記載事項、並びに、サングラスは眼部に装着するものであることが出願時の技術常識であることを踏まえると、引用文献2に記載されるサングラスは、ユーザーの眼部に装着されるものであるといえる。

上記(1)ないし(9)の記載事項及び図示内容を総合し、引用文献2に記載された「第1の実施例」に関する発明を、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

〔引用発明2〕
「車両用の表示装置3に用いられるECU2であって、
前記車両の前部座席に着座した乗員P1の顔がカメラ1により撮影された画像に対するテンプレートマッチング処理を実行することにより、前記前部座席に着座した乗員P1の眼部にサングラスSが装着されているか否かを判定する装着判定部2aと、
前記テンプレートマッチング処理を実行することにより、前記表示装置3に対する前記乗員P1の視線方向を推定する視線方向推定部2bと、
前記装着判定部2a及び前記視線方向推定部2bによる結果を用いて、前記表示装置3の発光素子の光量を増加又は減少させて表示の輝度を制御する輝度制御部2cと、
を備えるECU2。」

第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、その機能、構成又は技術的意義からみて、引用発明1の「車両」は本願発明の「車両」に相当し、以下同様に、「ディスプレイ1」は「表示装置」に、「表示画面調整装置2」は「表示制御装置」に、「前部座席」は「第1前部座席」に、「ユーザー」は「第1搭乗者」に、「眼部」は「眼部」に、「サングラス」は「第1有色透明体」に、「サングラス装着判定手段22」は「有色透明体判定部」に、それぞれ相当する。

引用発明1の「サングラス装着判定手段22」はカメラ21で「前部座席に着座したユーザーの顔部分」を撮影していることから、「前部座席を含む領域」を撮影していることは明らかである。そして、引用発明1の「サングラス装着判定手段22」は、サングラスが装着されているか否かを判定する際に「カメラ21で撮影した画像の画像信号」を用いていることから、「画像」を認識して処理することを実行しているといえる。
したがって、引用発明1の「前記車両の前部座席に着座したユーザーの顔部分をカメラ21で撮影した画像の画像信号により、前記前部座席に着座したユーザーの眼部にサングラスが装着されているか否かを判定するサングラス装着判定手段22」は、本願発明の「前記車両の第1前部座席を含む領域が撮影された画像に対する画像認識処理を実行することにより、前記第1前部座席に着座した第1搭乗者の眼部に第1有色透明体が設けられているか否かを判定する有色透明体判定部」に相当する。

また、上記第4 1(6)及び(7)に摘記した、引用文献1の段落【0019】、【0023】の記載事項及び液晶ディスプレイにおける技術常識を踏まえると、引用発明1の「明るさを含む画質を調整する制御装置3」における「明るさ」は、「ディスプレイ1」の「発光輝度」を意味することが明らかであるから、引用発明1の「ディスプレイ1の明るさを含む画質を調整する制御装置3」は、本願発明の「発光輝度を制御する輝度制御部」に対応するものである。
してみると、引用発明1の「ユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知する生体センサ8と、この生体センサ8による検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定する、体調判定手段と、前記車両の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知する周囲環境センサと」、「前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて、前記ディスプレイ1の明るさを含む画質を調整する制御装置3と、を備える」と、本願発明の「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度又は前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部と」、「前記有色透明体判定部及び前記眼部情報判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部と、を備える」とは、「前記有色透明体判定部及びその他の判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部と、を備える」という限りにおいて一致する。

そうすると、引用発明1と本願発明とは、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「車両用の表示装置に用いられる表示制御装置であって、
前記車両の第1前部座席を含む領域が撮影された画像に対する画像認識処理を実行することにより、前記第1前部座席に着座した第1搭乗者の眼部に第1有色透明体が設けられているか否かを判定する有色透明体判定部と、
前記有色透明体判定部及びその他の判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部と、
を備えることを特徴とする表示制御装置。」

〔相違点〕
「前記有色透明体判定部及びその他の判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部」が、本願発明は、「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度又は前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部と」を備えることを前提とした、「前記有色透明体判定部及び前記眼部情報判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部」であるのに対し、引用発明1は、「ユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知する生体センサ8と、この生体センサ8による検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定する、体調判定手段と、前記車両の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知する周囲環境センサと」を備えることを前提とした、「前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果とに応じて、前記ディスプレイ1の明るさを含む画質を調整する制御装置3」である点。

第6 判断

1 相違点について
引用発明1は、上記第4 1(3)で示したように、ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境に合った画質、すなわち、ユーザーのおかれた環境を考慮した、当該ユーザーにとって望ましい画質、を自動的に調整できる表示画像調整装置を提供することを課題としたものである。
そして、引用発明1は、上記「ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境」以外の「ユーザーのおかれた環境」をさらに考慮するという行為を、何ら排除するものではなく、むしろ、引用発明1に接した当業者であれば、前記行為は通常行う行為というべきである。

ここで、引用発明2は「車両用の表示装置3に用いられるECU2」において「前記前部座席に着座した乗員P1の眼部にサングラスSが装着されているか否かを判定する装着判定部2a」を備え、当該「装着判定部2a」の判定結果を用いて、「前記表示装置3の発光素子の光量を増加又は減少させて表示の輝度を制御する輝度制御部2c」という点で、引用発明1と共通するものであることを踏まえ、上記引用発明2と本願発明とを対比する。
引用発明2の「車両」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「車両」に相当し、以下同様に、「表示装置3」は本願発明の「表示装置」に、「ECU2」は「表示制御装置」に、「前部座席」は「第1前部座席」に、「乗員P1」は「第1搭乗者」に、「テンプレートマッチング処理」は「画像認識処理」に、「眼部」は「眼部」に、「サングラスS」は「第1有色透明体」に、「装着判定部2a」は「有色透明体判定部」に、「表示の輝度」は「発光輝度」に、「輝度制御部2c」は「輝度制御部」に、それぞれ相当する。

引用発明2の「装着判定部2a」はカメラ1で「前部座席に着座した乗員P1の顔」を撮影していることから、「前部座席を含む領域」を撮影していることは明らかである。
したがって、引用発明2の「前記車両の前部座席に着座した乗員P1の顔がカメラ1により撮影された画像に対するテンプレートマッチング処理を実行することにより、前記前部座席に着座した乗員P1の眼部にサングラスSが装着されているか否かを判定する装着判定部2a」は、本願発明の「前記車両の第1前部座席を含む領域が撮影された画像に対する画像認識処理を実行することにより、前記第1前部座席に着座した第1搭乗者の眼部に第1有色透明体が設けられているか否かを判定する有色透明体判定部」に相当する。

引用発明2の「視線方向推定部2b」は、「前記表示装置3に対する前記乗員P1の視線方向」を推定するものであり、「乗員P1」の視線が表示装置3に対してどの方向にあるかを判定するものといえるから、引用発明2の「乗員P1の視線方向」は本願発明の「第1搭乗者の第1視線角度」に対応するものである。したがって、引用発明2の「前記テンプレートマッチング処理を実行することにより、前記表示装置3に対する前記乗員P1の視線方向を推定する視線方向推定部2b」は、本願発明の「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度又は前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部」と、「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置に対する前記第1搭乗者の第1視線角度を判定する眼部情報判定部」という限りで一致する。
さらに、引用発明2の「輝度制御部2c」は、「前記装着判定部2a及び前記視線方向推定部2bによる結果」を用いて、前記表示装置3の発光素子の光量を増加又は減少させて表示の輝度を制御するものであるから、引用発明2の「前記装着判定部2a及び前記視線方向推定部2bによる結果を用いて、前記表示装置3の発光素子の光量を増加又は減少させて表示の輝度を制御する輝度制御部2c」は、本願発明の「前記有色透明体判定部及び前記眼部情報判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部」に相当する。

そうすると、引用発明2は、上記相違点における本願発明の「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置に対する前記第1搭乗者の第1視線角度を判定する眼部情報判定部」を備えることを前提とした、「前記有色透明体判定部及び前記眼部情報判定部による判定結果を用いて、前記表示装置の発光輝度を制御する輝度制御部」を有するものといえる。
引用発明1と引用発明2とは、ともに、車両用の表示装置の表示制御装置であって、前部座席に着座した第1搭乗者の顔をカメラで撮影し、画像認識処理を実行することにより、第1搭乗者が眼部に有色透明体を装着しているか否かを判定する有色透明体判定部を備え、当該有色透明体判定部の結果により、表示装置の輝度を制御する輝度制御部を備える点で共通する発明であり、有色透明体を装着しているか否かに応じて適切に表示装置の輝度を制御することで、表示装置の視認性を向上させることができるという共通の作用・機能を備えるものである。

してみると、引用発明1において、上記「ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境」以外の「ユーザーのおかれた環境」をさらに考慮するための具体的技術として、引用発明2を採用することで、画像認識処理を実行することにより、第1搭乗者の第1視線角度を判定する眼部情報判定部を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明2における「表示装置3」に対する「乗員P1の視線方向」、すなわち、「表示装置の画面」に対する「第1搭乗者の第1視線角度」は、「表示装置3」に関する何らかの基準線ないし基準面と「乗員P1の視線」の方向とがなす角度として表現されるべきものであるところ、上記基準線ないし基準面を何とするかは当業者が適宜設定し得た設計的な事項であるから、上記基準線を「表示装置3」の画面に垂直な直線とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

ところで、本願発明は「前記画像認識処理を実行することにより、前記表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度又は前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部」を備えるものであり、「眼部情報判定部」について「第1搭乗者の第1視線角度」又は「第1眼部照度」のうち少なくとも一方を判定するという択一的な発明特定事項を備えるところ、前者については上記ですでに検討したとおりであるので、後者の「前記第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度」を判定するものについて、次に検討する。

上記したように、引用発明1は、上記「ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境」以外の「ユーザーのおかれた環境」をさらに考慮するという行為を、何ら排除するものではなく、むしろ、引用発明1に接した当業者であれば、前記行為は通常行う行為というべきである。

一方、車両用の表示装置に用いられる表示制御装置においては、ドライバの顔をカメラで撮影し、画像認識処理によって、ドライバの眼部を含む領域における眼部照度を判定し、ドライバにとって眩しい状態か否かを検出して、眩しい状態の場合は、表示装置の輝度を上げて視認性を向上させることが、本願出願前に当業者にとって周知の技術である(以下、「周知技術」という。例えば、特開2007-276766号公報の【請求項6】、【請求項8】、【請求項10】、段落【0033】、【0034】、【0050】、【0051】、【0053】、【0056】、【0069】、【0070】、【0135】ないし【0140】及び【0167】並びに図1ないし3、13及び14を参照。特開2007-245911号公報の【請求項1】、【請求項4】、【請求項6】、段落【0022】、【0023】、【0039】、【0040】、【0042】、【0045】、【0058】、【0059】、【0124】ないし【0129】及び【0156】並びに図1ないし3、13及び14を参照。)。
引用発明1において、ユーザーがサングラスを装着している場合は、通常、ドライバにとって眩しい状態であることが多いと考えられるし、車両用の表示装置の視認性をより向上させるために、表示制御装置の輝度制御を適切なものとするべく、ユーザーや周囲環境の状態をより詳細に把握して、視認する者にとって最適な画面表示とすることは、当業者であれば当然考慮することである。
そうすると、引用発明1において、表示装置の視認性を高めるべくより最適な条件を把握するために、ドライバにとって眩しい状態か否かを検出して、表示装置の輝度を制御する上記周知技術を採用して、ドライバの眼部照度を判定する眼部情報判定部を備えた表示制御装置とすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、引用発明1に、引用発明2及び、または、上記周知技術を採用することで、「ユーザーの体温や血圧などの生体情報を検知する生体センサ8と、この生体センサ8による検知結果に基づいて当該ユーザーの体調を判定する、体調判定手段と、前記車両の温度や明るさなどの周囲環境情報を検知する周囲環境センサと」を備えることに加え、「画像認識処理を実行することにより、ディスプレイ1の画面に垂直な直線に対するユーザーの第1視線角度又は前記ユーザーの眼部を含む領域における第1眼部照度のうちの少なくとも一方を判定する眼部情報判定部と」を備えることを前提とし、「前記体調判定手段による体調判定結果と前記周囲環境センサによる周囲環境検知結果と前記サングラス装着判定手段による判定結果」に加え、「前記眼部情報判定部による判定結果をも考慮して、前記ディスプレイ1の明るさを含む画質を調整する制御装置3」とすることで、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことというべきである。

2 効果について
後記4(2)で詳述するように、本願発明は、全体としてみても、引用発明1、引用発明2及び、または、上記周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び、または、上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

4 審判請求人の審判請求書における主張について
審判請求人は、審判請求書の3.1.で、(1)「画像認識処理を実行することにより、」「第1搭乗者の眼部を含む領域における第1眼部照度」を判定する点(審判請求書の5ページ9行ないし6ページ7行)、及び、(2)「画像認識処理を実行することにより、」「表示装置の画面に垂直な直線に対する前記第1搭乗者の第1視線角度」を判定する点(同6ページ9行ないし7ページ3行)について、それぞれ、主張している。特に、(1)については、引用文献1に記載の発明に「眼部照度」を判定する構成を適用する動機付けに乏しいこと、(2)については、引用文献2に記載の発明において、表示装置の画面に垂直な直線に対する乗員の視線角度を求めるようにすることは何ら示唆がなく、また、引用文献2に記載の発明を仮に引用文献1に記載の発明に適用しようとしてもその動機付けもなく、本願発明のようにすることは容易に想到できるとは言えないこと等を主張しているが、これらの主張は以下に示すように、いずれも当を得たものではなく、採用できない。

(1)主張(1)について
上記1で示したように、引用発明1は、上記「ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境」以外の「ユーザーのおかれた環境」をさらに考慮するという行為を、何ら排除するものではなく、むしろ、引用発明1に接した当業者であれば、前記行為は通常行う行為というべきである。
また、引用発明1において、ユーザーがサングラスを装着している場合は、通常、ドライバにとって眩しい状態であることが多いと考えられるし、車両用の表示装置の視認性をより向上させるために、表示制御装置の輝度制御を適切なものとするべく、ユーザーや周囲環境の状態をより詳細に把握して、視認する者にとって最適な画面表示とすることは、当業者であれば当然考慮することである。
したがって、引用文献1には、搭乗者の眼部を含む領域における眼部照度を用いることが記載ないし示唆されていないことのみを理由として、引用発明に上記周知技術を採用する動機付けに乏しいとする審判請求人の主張は、当を得たものではない。

(2)主張(2)について
上記1で示したように、引用発明1において、上記「ユーザーの体調や表示装置周囲の周囲環境」以外の「ユーザーのおかれた環境」をさらに考慮するための具体的技術として、引用発明2を採用することで、画像認識処理を実行することにより、第1搭乗者の第1視線角度を判定する眼部情報判定部を備えることは、当業者が容易に想到し得たことであって、引用発明2における「表示装置3」に対する「乗員P1の視線方向」の基準線を「表示装置3」の画面に垂直な直線とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
さらに、本願発明において、視線角度を求める際に、表示装置の画面に垂直な直線を基準とすることについて、本願の明細書等には特段の効果が記載されているものでもなく、単に、視線角度に基づいて輝度を制御することの効果が記載されているにすぎないし、仮に画面に垂直な直線を基準とすることの効果があったとしても、上述のとおり、視線角度を求める際に画面に垂直な直線を基準とすること自体、ごくありふれたものにすぎないから、当該効果は格別なものとはいえない。そして、当該効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から予測し得た程度のものである。
したがって、表示装置の画面に垂直な線を基準として視線角度を求めようとする動機付けがなく視線角度をどのように用いるかの示唆もないとする審判請求人の主張は、当を得たものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-01 
結審通知日 2020-09-08 
審決日 2020-09-24 
出願番号 特願2018-527285(P2018-527285)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 京一村山 禎恒稲村 正義  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 金澤 俊郎
西中村 健一
発明の名称 表示制御装置及び表示制御方法  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 井上 和真  
代理人 中島 成  
代理人 濱田 初音  
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