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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1367973
審判番号 不服2019-8989  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-04 
確定日 2020-11-11 
事件の表示 特願2016-520574「バッテリによってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法および対応するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月24日国際公開、WO2014/202879、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530856〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2014年6月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年6月18日(以下,「優先日」という。) フランス)を国際出願日とする出願であって,
平成28年2月1日付けで特許法184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成30年3月22日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成30年9月27日に意見書が提出されたが,平成31年2月20日付けで審査官により拒絶査定がなされ(以下,「原査定」という。謄本送達;平成31年3月5日),これに対して令和1年7月4日に審判請求がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という。)は,平成28年2月1日付けで提出された,特許法第184条の4第1項の規定による請求の範囲の日本語による翻訳文の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「切り換えることができる複数のモジュールを備えるバッテリによってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法であって、コンデンサが前記バッテリと前記変換器との間に配置されている、方法において、
切換えコマンドが検出され(E01)、
切換えコマンドが検出された場合、前記変換器が前記負荷に低電力を供給し(E02)、
前記切換えが実行され(E03)、
前記切換えが実行された場合、前記変換器が前記負荷に正規の電力を供給する(E04)
ことを特徴とする方法。」


第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし10に係る発明は,本願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された事項に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

1.特開2003-88181号公報
2.特開昭50-88724号公報
3.特開2012-16097号公報
4.特開2010-220443号公報


第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
引用文献1には,以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下,同様。)

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力出力装置およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の動力出力装置としては、インバータ回路により変換された三相交流電力により回転駆動する電動機の電力供給源となる電源ユニットとして、複数のコンデンサとこの複数のコンデンサのうちの対となるコンデンサの直並列接続を切り替え可能な切り替えスイッチとを備えるものが提案されている(特開平11-215695号公報など)。この動力出力装置では、インバータ回路へ入力される電圧レベル(インバータ回路の正極母線と負極母線との間に作用する電位差)に応じて対となるコンデンサの直並列接続を切り替えることにより、電圧レベルを適正な状態に保持し、電動機の効率的な運転を実現しようとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした動力出力装置では、切り替えスイッチによる直並列切り替えの際に電圧レベルが急激に変化するため電動機に印加される電流も急激に変化し、電動機から意図しないトルクが出力されてしまう。こうした問題を解決するために、直並列切り替えの際の電圧レベルを電圧センサにより逐次検出し、この検出結果に応じて電動機に印加する電流を制御することも考えられる。この場合には、電圧センサにより検出された電圧は高周波成分を含むため、ローパスフィルタにより高周波成分を除去する必要がある。従って、ローパスフィルタの時定数が、電動機を駆動するインバータ回路のスイッチング素子のスイッチング周期(電流制御の間隔)に対して大きい場合には、上記直並列切り替えによる電圧レベルの急激な変化に対応できず、電動機に意図しないトルクが出力されるのを防止できない。
【0004】本発明の動力出力装置およびその制御方法は、複数の電力供給手段の直並列切り替えにより電圧を調節可能な電源ユニットを電力供給源として電動機から動力を出力する場合、直並列の切り替えの際にも電動機から意図しないトルクが出力されるのを防止することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびその制御方法は、複数の電力供給手段の直並列切り替えにより電圧を調節可能な電源ユニットを電力供給源として電動機から動力を出力する場合、直並列の切り替えの際にもより安定した動力を出力することを目的の一つとする。」

(2)「【0009】本発明の動力出力装置の制御方法は、複数の電力供給手段と該複数の電力供給手段のうちの対となる電力供給手段の直列接続と並列接続とを切り替え可能な切替手段とを有する電源ユニットと、該電源ユニットからの電力をスイッチング素子のスイッチングにより多相交流電力に変換して出力可能なインバータ回路と、該出力された多相交流電力により駆動する電動機と、前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された充放電可能な蓄電手段とを備える動力出力装置の制御方法であって、(a)前記切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定し、(b)該推定された電圧を用いて前記電動機に要求される動力を出力可能な電流が該電動機に印加されるよう前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御することを要旨とする。
【0010】この本発明の動力出力装置の制御方法では、切替手段に対する直並列の切り替えの信号と複数の電力供給手段の各電圧と蓄電手段の充放電特性とに基づいて蓄電手段の電圧を推定し、推定された電圧を用いて電動機に要求される動力を出力可能な電流が電動機に印加されるようインバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御する。こうすれば、切替手段の直並列の切り替えの際にもより正確に蓄電手段の電圧を導出でき、この電圧を用いて電動機に印加する電流を調節することができる。この結果、切替手段の直並列切り替えの際にも電動機から意図しないトルクが出力されるのを防止することができ、より安定した動力を出力することができる。
【0011】こうした本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(a)は、前記切替手段に対する直並列の切り替えの信号に応じた前記電源ユニットの内部抵抗と前記蓄電手段の容量とに基づいて該蓄電手段の充放電特性を算出するステップを備えるものとすることもできる。こうすれば、より正確に蓄電手段の充放電特性を算出することができる。」

(3)「【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の動力出力装置20は、図示するように、複数のコンデンサバンク24?28と複数のコンデンサバンク24?28のうちの対となるバンク26,28の直列接続と並列接続とを切り替え可能なスイッチSW1?SW3とからなる電源ユニット22と、電源ユニット22からの電力を三相交流電力に変換して出力可能なインバータ回路30と、この出力された三相交流電力により回転駆動するモータ36と、インバータ回路30の正極母線32と負極母線34とに接続された平滑用の平滑コンデンサ38と、装置全体をコントロールする制御ユニット60とを備える。
【0013】電源ユニット22を構成するコンデンサバンク24?28は、各々1個または複数個のコンデンサ(例えば、電気二重層コンデンサなど)を単位とするバンクとして構成されている。このコンデンサバンク24?28の直列接続と並列接続とを切り替え可能なスイッチSW1?SW3は、スイッチSW1,SW2をオンすると共にスイッチSW3をオフすれば、コンデンサバンク26,28を並列接続された状態とし、スイッチSW1,SW2をオフすると共にスイッチSW3をオンすれば、コンデンサバンク26,28を直列接続された状態とする。これは、コンデンサをモータ36を駆動するための電力供給源として用いると、電力の受給に伴いコンデンサの端子間電圧、即ちインバータ回路30の正極母線32と負極母線34との間に作用する電位差が大きく変動することに基づいている。従って、コンデンサバンク24?28の放電に伴って正極母線32と負極母線34との間に作用する電位差が下降すると、並列接続から直列接続の状態に切り替えて電位差を上昇させ、逆にコンデンサバンク24?28の充電に伴って正極母線32と負極母線34との間の電位差が上昇すると、直列接続から並列接続に切り替えて電位差を下降させることにより、正極母線32と負極母線34との間の電位差を所定範囲内に保つことができ、モータ36に安定した電力を供給することができるのである。」

(4)「

」 図1
上記図1から、平滑コンデンサ38が、電源ユニット22とインバータ回路30との間に配置されている態様が、読み取れる。

(5)「【0030】図4は、平滑コンデンサ38の充放電特性を考慮しない場合のコンデンサバンク26,28の並列から直列への切り替えの際にモータ36に印加される電流波形を示す図であり、図5は、平滑コンデンサ38の充放電特性を考慮した場合のコンデンサバンク26,28の並列から直列への切り替えの際にモータ36に印加される電流波形を示す図である。なお、図4(a)と図5(a)は、d-q軸における電流波形を示し、図4(b)と図5(b)は、モータ36の三相コイルのu相における電流波形を示す。図4(a),(b)に示すように、コンデンサの充放電特性を考慮しない場合には、q軸に流れる電流Iq(トルク)が指令電流Iq*(トルク指令)に一致しておらず、コンデンサバンク26,28の並列から直列への切り替えの際の平滑コンデンサ38の端子間電圧(母線間電圧)の急激な変化に対して対応できずにモータ36から意図しないトルクが出力されていることが分かる。一方、コンデンサの充放電特性を考慮する場合、即ち図6に例示するように平滑コンデンサ38の充放電特性に基づいて平滑コンデンサ38の端子間電圧を推定しこれをモータ36の駆動制御に用いる場合、q軸に流れる電流Iq(トルク)が指令電流Iq*(トルク指令)にほぼ一致しており、平滑コンデンサ38の端子間電圧の急激な変化に対してもモータ36から指令トルクどおりのトルクが出力されていることが分かる。」

以上(1)ないし(5)の記載から,引用文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の電力供給手段と該複数の電力供給手段のうちの対となる電力供給手段の直列接続と並列接続とを切り替え可能な切替手段とを有する電源ユニットと,該電源ユニットからの電力をスイッチング素子のスイッチングにより多相交流電力に変換して出力可能なインバータ回路と,該出力された多相交流電力により駆動する電動機と,前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された充放電可能な蓄電手段とを備える動力出力装置の制御方法であって,
(a)前記切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定し,
(b)該推定された電圧を用いて前記電動機に要求される動力を出力可能な電流が該電動機に印加されるよう前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御する,ものであり,
前記ステップ(a)は,前記切替手段に対する直並列の切り替えの信号に応じた前記電源ユニットの内部抵抗と前記蓄電手段の容量とに基づいて該蓄電手段の充放電特性を算出するステップを備え,
前記電源ユニットは,複数のコンデンサバンクと複数のコンデンサバンクのうちの対となるバンクの直列接続と並列接続とを切り替え可能なスイッチとからなり,
前記電源ユニットを構成するコンデンサバンクは,各々1個または複数個のコンデンサ(例えば,電気二重層コンデンサなど)を単位とするバンクとして構成され,
前記インバータ回路の正極母線と負極母線とに接続された前記蓄電手段は,平滑用の平滑コンデンサであり,当該平滑コンデンサは,前記電源ユニットと前記インバータ回路との間に配置されており,
前記平滑コンデンサの充放電特性を考慮する,即ち,平滑コンデンサの充放電特性に基づいて平滑コンデンサの端子間電圧を推定しこれをモータの駆動制御に用いることで,平滑コンデンサの端子間電圧の急激な変化に対してもモータから指令トルクどおりのトルクが出力することができる,
動力出力装置の制御方法。」

2 引用文献2
引用文献2には,次の記載がある。

(1)「バッテリからの電流をチョッパ回路でオン・オフ制御して電動機に供給する電気車主回路において、アクセル開度に応じてバッテリの直並列切換えを行なうものがある。
このようなバッテリの直並列切換えの制御を行なう制御装置として、従来は集積回路やトランジスタ等からなる論理回路を用いたものがあるが、このような論理回路は使用素子数も多く、回路の組立や調整等も複雑であるという欠点があった。
また、バッテリを並列から直列に切換える際に外乱等による影響を受け、安定性の面でも問題があった。
本発明は、このような欠点を除去するために、アクセルの中間にスイッチを設け、このスイッチにより、直列並列を切換えるとともに、並列より直列に切換える時は、一度通流率を最小にまで下げ、その下がった状態でバッテリ直列運転を開始させるようにしたものである。」(第1頁左欄下から4行?右欄14行)

(2)「第1図は本発明に係る電気車主回路の一例を示す図で、バッテリ並列運転の時には、直並列切換サイリスタS3をオフ状態にし、バッテリB1およびB2をそれぞれダイオードD5およびD4を介して並列接続する。したがって、バッテリB1およびB2→チョッパ回路1直巻界磁コイル2→電機子3→電流検出シャント4の径路で電流が流れる。チョッパ回路1がオフ状態になれば、電動機電流はフライホイールダイオードD1を通して流れる。
次に、バッテリ直列運転の時は、サイリスタS3をオン状態にして、バッテリB1およびB2を直列接続する。それによってバッテリB1→チョッパ回路1→直巻界磁コイル2→電機子3→電流検出シャント4→バッテリB2の径路で電流が流れる。」(第1頁右欄下から5行?第2頁左上欄11行)


3 引用文献3
引用文献3には,次の記載がある。

(1)「【0001】
この発明は、3相交流ブラシレス式の駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する複数の電源と、前記駆動モータと前記複数の電源との間に配置されたインバータとを含む電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両やハイブリッド車両を含む電気自動車の開発が盛んである。電気自動車の中には、複数の電源からの電力を駆動モータに選択的に供給すると共に前記駆動モータからの回生電力を前記複数の電源に選択的に充電可能なものがある(特許文献1)。特許文献1では、車両の力行時には、複数のバッテリ(14)の中から一定電圧以上のものを選別し、さらにその中から最も電圧の低いものを選んで用いる(同文献の図2、段落[0031]?[0041]参照)。また、車両の回生時には、複数のバッテリの中から残容量が最も低いものを選択して充電する(同文献の図4、段落[0042]?[0050])。」

(2)「【0004】
特許文献1では、バッテリの切替えタイミングについて考慮されていないため、バッテリの切替えに伴って発生した電圧変動がモータに伝達し、意図しないトルク変動が発生するおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、モータの意図しないトルク変動を防止することが可能な電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電気自動車は、電源電圧が変動する第1電源及び第2電源の少なくとも2つの電源を含む1次側と、車両を駆動する3相交流ブラシレス式のモータと、直列に接続された一対の上アーム素子と下アーム素子が3相並列に接続され、前記上アーム素子と下アーム素子の中間に前記モータの3相線がそれぞれ接続されたインバータとを含む2次側と、前記1次側と前記2次側を前記第1電源と前記第2電源が互いに並列になるように接続する第1電力系統及び第2電力系統と、前記モータの電源として前記第1電源と前記第2電源のいずれを使用するかを切り替えるスイッチと、前記インバータの上アーム素子が全てオンであり且つ下アーム素子が全てオフである、又は前記上アーム素子が全てオフであり且つ前記下アーム素子が全てオンである3相短絡状態において、前記スイッチを切り替える制御装置とを有する。」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「電源ユニット」は,「複数のコンデンサバンクと複数のコンデンサバンクのうちの対となるバンクの直列接続と並列接続とを切り替え可能なスイッチとからな」るものである。この場合の引用発明の「複数のコンデンサバンク」は,スイッチによって「切り替え可能な」ものであり,各「コンデンサバンク」は,「1個または複数個のコンデンサ(例えば,電気二重層コンデンサなど)を単位とするバンクとして構成され」ることから,切り替え可能で,かつ,1個または複数個のコンデンサを一単位として構成したものであって,本願発明の「切り換えることができる複数のモジュール」との間に実質的な相違はない。そして,引用発明の「電源ユニット」と本願発明の「バッテリ」とは,いずれも“電源供給手段”といえるから,引用発明の上記「複数のコンデンサバンク」を有する「電源ユニット」と,本願発明の「切り換えることができる複数のモジュールを備えるバッテリ」とは,“切り換えることができる複数のモジュールを備える電源供給手段”である点で共通するといえる。
そして,引用発明の「インバータ回路」,「電動機」,「蓄電手段」である「平滑コンデンサ」は,それぞれ本願発明の「変換器」,「負荷」,「コンデンサ」に対応するところ,
引用発明の「インバータ回路」は,「電源ユニットからの電力をスイッチング素子のスイッチングにより多相交流電力に変換して出力可能な」ものであり,これは「電源ユニット」から「電力」を給電される変換器といえるから,本願発明と引用発明とは,“切り換えることができる複数のモジュールを備える電源供給手段によってそれ自体給電される変換器”を有する点で共通し,
また,引用発明の「電動機」は,「電源ユニットからの電力をスイッチング素子のスイッチングにより多相交流電力に変換して出力可能な」ものであり,これは「電源ユニット」から「インバータ回路」を介して「電力」を給電される負荷といえるから,本願発明と引用発明とは,前記“変換器によって給電される負荷”を有する点で共通し,
そして,引用発明である「動力出力装置」の「制御方法」とは,「電動機」の「制御」方法に他ならないから,本願発明と引用発明とは,“切り換えることができる複数のモジュールを備える電源供給手段によってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法”である点で共通し,
さらに,引用発明の「蓄電手段」である「平滑コンデンサ」は,「前記電源ユニットと前記インバータ回路との間に配置されて」いることから,本願発明と引用発明とは,“コンデンサが前記電源供給手段と前記変換器との間に配置されている”点で共通する。

2 上記1での検討を踏まえると,後記する点で相違するものの,本願発明と引用発明とは,“切り換えることができる複数のモジュールを備える電源供給手段によってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法であって,コンデンサが前記電源供給手段と前記変換器との間に配置されている,方法”である点で共通するといえる。

3 引用発明は,「切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定」しているから,「切替手段」に係る「直並列の切り替え」のためのコマンドを当然に検出していると解され,よって,本願発明と引用発明とは,「切換えコマンドが検出され」る点で一致する。

4 引用発明は,「切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定し」,「該推定された電圧を用いて前記電動機に要求される動力を出力可能な電流が該電動機に印加されるよう前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御する」ものであり,それにより,「平滑コンデンサの端子間電圧の急激な変化に対してもモータから指令トルクどおりのトルクが出力することができる」ものであるところ,この場合の「切替手段に対する直並列の切り替え」に応じて出力される「指令トルクどおりのトルク」は,「平滑コンデンサの端子間電圧の急激な変化」を制御することによるものであって,対応する制御された電力が供給された結果であることは明らかである。そして,本願発明の「低電力」は文言上,低く制御された電力であれば足りるから,後記する点で相違するものの,本願発明と引用発明とは,“切換えコマンドが検出された場合,前記変換器が前記負荷に制御された電力を供給”する点で共通するといえる。

5 上記4のとおり,引用発明は,「切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定し」,「該推定された電圧を用いて前記電動機に要求される動力を出力可能な電流が該電動機に印加されるよう前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御する」ものであるから,本願発明と引用発明とは,「前記切換えが実行され」る点で一致するといえる。

6 上記4のとおり,引用発明は,「切替手段に対する直並列の切り替えの信号と前記複数の電力供給手段の各電圧と前記蓄電手段の充放電特性とに基づいて該蓄電手段の電圧を推定し」,「該推定された電圧を用いて前記電動機に要求される動力を出力可能な電流が該電動機に印加されるよう前記インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御する」ものであり,この場合の「推定された電圧」に対応する電力が「電動機」に供給されることは,「電動機」に対し正規の電力を供給することに他ならない。そうすると,本願発明と引用発明とは,「切換えが実行された場合,前記変換器が前記負荷に正規の電力を供給する」ものである点で一致する。

上記の検討から,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
切り換えることができる複数のモジュールを備える電源供給手段によってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法であって,コンデンサが前記電源供給手段と前記変換器との間に配置されている,方法において,
切換えコマンドが検出され,
切換えコマンドが検出された場合,前記変換器が前記負荷に制御された電力を供給し,
前記切換えが実行され,
前記切換えが実行された場合,前記変換器が前記負荷に正規の電力を供給する
ことを特徴とする方法。

(相違点1)
電源供給手段に関し,
本願発明は,「バッテリ」であるのに対して,
引用発明は,「コンデンサバンク」である点。

(相違点2)
切換えコマンドが検出された場合に供給される,制御された電力に関し,
本願発明は,「低電力」であるのに対して,
引用発明は,「低電力」であるとは特定されていない点。


第6 判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
切り替えて供給可能な電源供給手段として,複数の「バッテリ」を用いることは,例えば,引用文献2(上記第4の2(2)の記載参照),引用文献3(上記第4の3(1)の記載参照)にも記載のとおり当該技術分野における周知の技術であり,また,引用発明の「コンデンサバンク」は実質的に「バッテリ」としての機能を果たしているものであって,引用発明に対して上記周知の技術の適用を阻害する事情も認められないから,引用発明の電源供給手段として上記周知の技術を適用することで,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
引用発明では,「切替手段」に係る「直並列の切り替え」のための指令に応じて,「低電力」を供給するようにするとの記載はないものの,一般に,電源供給手段の切り替えの際に,切り替えの際の外乱等による影響を抑えるため,低電力を供給するよう制御することは,例えば,引用文献2(上記第4の2(1)の記載参照),引用文献3(上記第4の3(2)の記載参照)にも記載のとおり当該技術分野における周知の技術であり,また,引用発明は,「直並列切り替えによる電圧レベルの急激な変化に対応できず,電動機に意図しないトルクが出力されるのを防止できない」(【0003】)ことを課題とするものであって,「低電力」の供給となるよう電圧制御を行えば当該課題は解決することから,上記周知の技術を適用する動機付けがあるといえ,よって,引用発明の電力に係る制御方法として上記周知の技術を適用することで,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。


第7 むすび

以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明,引用文献2,3に記載された周知の技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-08 
結審通知日 2020-06-09 
審決日 2020-06-24 
出願番号 特願2016-520574(P2016-520574)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 孝治  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
仲間 晃
発明の名称 バッテリによってそれ自体給電される変換器によって給電される負荷を統御する方法および対応するシステム  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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