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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B41J 審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B41J 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B41J 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B41J |
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管理番号 | 1368045 |
異議申立番号 | 異議2020-700042 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-01-28 |
確定日 | 2020-09-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6561193号発明「すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6561193号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし18〕について訂正することを認める。 特許第6561193号の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第6561193号((以下,「本件特許」という。)の請求項1ないし18に係る特許についての出願は,平成30年12月21日を出願日とする特願2018-239033号であって,令和1年7月26日に,その特許権の設定登録がされ,特許掲載公報が同年8月14日に発行され,その後,その請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許に対し,特許異議申立人松永健太郎(以下,「異議申立人」という。)により令和2年1月28日に特許異議の申立てがされた。 その後,当審において,同年3月27日付けで取消理由が通知され,これに対して,特許権者から,同年5月29日付けで訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という。)がなされるとともに,意見書(以下,「特許権者意見書」という。)の提出がなされ,当審より異議申立人に対して,訂正請求書等を送付して,期間を指定して,これに対する意見書の提出を求めたが,異議申立人からは,指定期間内に意見書の提出がされなかったものである。 第2 本件訂正請求について 1 本件訂正請求の内容について 本件訂正請求は,訂正請求書の記載によれば,その請求の趣旨を「特許第6561193号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?18について訂正することを求める。」とするものであり,訂正の内容はつぎのとおりのものである。(訂正事項1ないし13における下線は,訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記インクジェットプリンタを用いて,下記の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより,前記透明基材の主面上に前記複数のドットを形成する印刷工程を含む,装飾シート製造方法」と記載されているのを, 「前記紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用するとともに,前記インクジェットプリンタを用いて下記の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより,前記透明基材の主面上に,前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される前記複数のドットを形成する印刷工程を含む,装飾シート製造方法」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2及び請求項4乃至18も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に記載の「請求項1?3のいずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に記載の「請求項1?4のいずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に記載の「請求項1?5のいずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4又は5に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に記載の「請求項1?6いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至6いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に記載の「請求項1?7いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至7いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正し,当該請求項8の「当該紫外線硬化性インクの25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である,」の記載を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項11に記載の「請求項1?10いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至10いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項13に記載の「請求項1?12いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至12いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項14に記載の「請求項1?13いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至13いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項16に記載の「請求項1?15いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至15いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項17に記載の「請求項1?16いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至16いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項18に記載の「請求項1?17いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」を「請求項1又は2,若しくは4乃至17いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって,」に訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について (ア)請求項1に係る訂正について 訂正前の請求項1に係る特許発明は,特定のインクジェットプリンタを用いて,特定の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより,透明基材の主面上に複数のドットを形成する印刷工程を含む,装飾シート製造方法を特定している。 これに対して,訂正後の請求項1は,「前記紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用するとともに,前記インクジェットプリンタを用いて下記の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより,前記透明基材の主面上に,前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される前記複数のドットを形成する印刷工程を含む」との記載により,訂正後の請求項1に係る発明における装飾シート製造方法の印刷工程で形成される複数のドットを,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下という物性を備える紫外線硬化性インクを使用し,その硬化物で構成されるものに限定するものであるから,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 なお,訂正事項1の「前記透明基材の主面上に,前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される前記複数のドットを形成する印刷工程を含む」とする訂正事項については,訂正前の請求項1において「複数のドット」が「紫外線硬化性インクの硬化物で構成される」ことが特定されていたことから,訂正前の「前記透明基材の主面上に,前記複数のドットを形成する印刷工程」という特定事項における「複数のドット」が「紫外線硬化性インクの硬化物」で構成されるものであるか否かが明瞭でなかったものを,明瞭とするものと認められるから,訂正事項1のこの訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものというべきである。 (イ)訂正事項1による訂正後の請求項2,4ないし7,11ないし18に係る訂正事項について これらの請求項に係る訂正事項1についての訂正も,同様に特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項1による訂正後の請求項8ないし10について 訂正前の請求項8には,「紫外線硬化性インク」について「25℃で測定した表面張力が25N/m以下である」ことが特定されており,下記(7)で後述するように訂正事項1に伴い,当該特定事項を請求項8の記載から削除する訂正をしているものであるから,訂正事項1による訂正により,請求項8の特許請求の範囲は実質的に変更されていないものとなる。 そして,その訂正は,請求項8を引用する請求項9及び10についても連動して訂正されるものである。 してみると,訂正事項1による訂正後の請求項8ないし10についての訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものというべきである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと 上記アのとおり,訂正事項1は,装飾シート製造方法の印刷工程で形成される「複数のドット」という発明特定事項を「25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インク」の硬化物から構成されるものに限定するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではない。したがって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,それぞれを,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」,「本件特許図面」といい,これらをまとめて「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること (ア)本件特許明細書には,つぎの記載がある。 a 「【0019】 上記装飾シート200は,透明基材210と,透明基材210の主面220上の印刷領域230に形成された複数のドット240と,を有する,すりガラス調の装飾シートである。この複数のドット240は,紫外線硬化性インクの硬化物で構成される。」 b 「【0052】 上記紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下となるインクを用いることが好ましい。これにより,適度な光の拡散(ぼかし)効果を得ることができる。」 c 「【0055】 上記紫外線硬化性インクは,重合性モノマーと,表面調整剤と,を含むものである。この紫外線硬化性インクは,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下という特性を有する。 表面張力を25mN/m以下にすることによって,レベリング層がより少ないパス数で形成できるばかりでなく,レベリング層の形成後(硬化後)に吐出される液滴がそのレベリング層の上で弾かれる効果を発現させる。」 d 「【0071】 25℃における上記紫外線硬化性インクの表面張力は,25mNm/m以下である。これにより,また,上述の通り,すりガラス調の装飾シートを安定的に形成できる。上記表面張力の下限値は,特に限定されない。」 (イ)上記(ア)には,「複数のドット」が「紫外線硬化性インク」により構成されること,「紫外線硬化性インク」が「25℃で測定した表面張力が25mN/m以下という特性を有する」こと,当該特性により,「レベリング層がより少ないパス数で形成できる」とともに,「レベリング層の形成後(硬化後)に吐出される液滴がそのレベリング層の上で弾かれる効果を発現させる」ことが記載されている。 してみると訂正事項1は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては,訂正前の請求項1,2,4?7,11?18について特許異議申立てがされているので,訂正後の請求項1,2,4ないし7,及び11ないし18に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 また,訂正後の請求項8ないし10に係る発明については,請求項8に係る訂正事項1による訂正の目的が明瞭でない記載の釈明を目的とするものというべきであるから,独立特許要件は課されていない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は,訂正前の請求項3を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 また,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 そして,請求項3は削除されることから,請求項3に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は,訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項3に係る請求項4の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項4は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項4に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項4に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項4に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は,訂正前の請求項5が訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項4に係る請求項5の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,当該訂正事項4に係る請求項5の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項5は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項5に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項5に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項5に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は,訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5のいずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項5に係る請求項6の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項6は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項6に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項6に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項6に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は,訂正前の請求項7が訂正前の請求項1?6のいずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項6に係る請求項7の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項7は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項7に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項7に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項7に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は,訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?7のいずれか一項を引用する請求項であったところ,当該請求項3の削除に伴い,請求項3を引用しないものとするための訂正であり,くわえて,請求項1が訂正事項1により「前記紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用する」ものに訂正されたことに伴い,訂正後の請求項1を引用する請求項8において,訂正後の請求項1と重複するために不合理を生じている記載を削除するものである。 また,訂正事項7により,連動して請求項9及び10も訂正されるものである。 したがって,当該訂正事項7に係る請求項8ないし10の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は,訂正前の請求項11が訂正前の請求項1?10いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正である。 また,訂正事項8により,連動して請求項12についても訂正されることになる。 したがって,当該訂正事項8に係る請求項11及び12の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項11及び12は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項11及び12に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項11及び12に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項11及び12に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は,訂正前の請求項13が訂正前の請求項1?12いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項9に係る請求項13の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項13は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項13に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項13に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項13に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10は,訂正前の請求項14が訂正前の請求項1?13いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項10に係る請求項14の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 また,訂正事項10により,連動して請求項15についても訂正がされることとなる。 なお,訂正後の請求項14及び15は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項14に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項14及び15に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項14及び15に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は,訂正前の請求項16が訂正前の請求項1?15いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項11に係る請求項16の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項16は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項16に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項16に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項16に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (12)訂正事項12について 訂正事項12は,訂正前の請求項17が訂正前の請求項1?16いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項12に係る請求項17の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項17は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項17に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項17に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項17に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (13)訂正事項13について 訂正事項13は,訂正前の請求項18が訂正前の請求項1?17いずれか一項を引用する請求項であったところ,訂正事項2によって請求項3が削除されたこととの整合をとるために請求項3を引用しないものとするための訂正であるから,当該訂正事項13に係る請求項18の訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合し,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 なお,訂正後の請求項18は,訂正事項1により連動して訂正されるものであり,請求項18に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものにも該当するが,請求項18に係る特許が特許異議の申立ての対象とされていることから,請求項18に係る発明については,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第3号に該当し,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから,結論のとおり,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1ないし18]について訂正することを認める。 第3 本件訂正特許発明について 本件異議申立ての対象となっている請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許についての各発明は,上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正が認められるから,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下,それぞれの特許発明を,「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明18」という。) 「【請求項1】 紫外線硬化性インクの液滴を吐出する複数のノズルを備えるヘッド部と, 前記ヘッド部の主走査方向に前記ヘッド部とともに移動するものであり,前記ノズルから吐出され透明基材の主面上に着弾した前記液滴に対して,紫外線を照射する紫外線照射部と, を備えるインクジェットプリンタを用いて, 前記透明基材と,前記透明基材の主面上の印刷領域内に形成された,前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される複数のドットとを有する,すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用するとともに,前記インクジェットプリンタを用いて,下記の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより,前記透明基材の主面上に,前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される前記複数のドットを形成する印刷工程を含む,装飾シート製造方法。 (印刷条件) (1)前記ノズルから吐出する液滴量が,1pl以上50pl以下。 (2)前記ノズルから吐出された液滴が主面上に着弾してから,前記紫外線照射部から紫外線が当該液滴に照射されるまでの待機時間が,10ms以上5.0s以下。 (3)前記ヘッド部を主走査方向に1回主走査したときの印刷領域内における液滴密度を,「上記(1)の液適量×主走査方向における出力解像度×副走査方向における出力解像度/前記インクジェットプリンタのパス数」と定義したときの,前記液滴密度が,0.1μl/in^(2)以上1.0μl/in^(2)以下。 【請求項2】 請求項1に記載の装飾シート製造方法であって, 前記印刷工程において,前記パス数が4以上である,装飾シート製造方法。 【請求項4】 請求項1又は2に記載の装飾シート製造方法であって, 前記印刷工程において,着弾した前記液滴に照射される紫外線の積算光量が,10mJ/cm^(2)以上である,装飾シート製造方法。 【請求項5】 請求項1又は2,若しくは4に記載の装飾シート製造方法であって, 前記透明基材が,光透過性の樹脂製フィルムで構成される,装飾シート製造方法。 【請求項6】 請求項1又は2,若しくは4又は5に記載の装飾シート製造方法であって, 前記印刷工程において,2パス目以降の液滴の少なくとも一部を,液滴の硬化物の上に着弾させる,装飾シート製造方法。 【請求項7】 請求項1又は2,若しくは4乃至6いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記印刷工程において,前記透明基材の主面上に前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成されるレベリング層と,前記レベリング層上に前記複数のドットを形成する,装飾シート製造方法。 【請求項11】 請求項1又は2,若しくは4乃至10いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクが, 紫外線吸収剤として二酸化チタンと, を含み, 前記二酸化チタンの含有量が,当該紫外線硬化性インク100重量%に対して,10重量%以下である,装飾シート製造方法。 【請求項12】 請求項11に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクにおいて, 前記二酸化チタンの平均粒子径が,5nm以上200nm以下である, 装飾シート製造方法。 【請求項13】 請求項1又は2,若しくは4乃至12いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, コーンプレート型粘度系を用いて測定される,25℃における当該紫外線硬化性インクの粘度が,20mP・s以上50mP・s以下である,装飾シート製造方法。 【請求項14】 請求項1又は2,若しくは4乃至13いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクが,光重合開始剤を含む,装飾シート製造方法。 【請求項15】 請求項14に記載の装飾シート製造方法であって, 前記光重合開始剤が,2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニルフェニル骨格を有する光重合開始剤を含む,装飾シート製造方法。 【請求項16】 請求項1又は2,若しくは4乃至15いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクが,酸化防止剤を含む,装飾シート製造方法。 【請求項17】 請求項1又は2,若しくは4乃至16いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクが,水を含まない,非水系の紫外線硬化性インクである,装飾シート製造方法。 【請求項18】 請求項1又は2,若しくは4乃至17いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって, 前記紫外線硬化性インクが,非反応性有機溶剤を含まない,非有機溶剤系の紫外線硬化性インクである,装飾シート製造方法。」 第4 取消理由の概要 令和2年3月27日付けで当審より通知した取消理由はつぎのとおりのものである。 1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反について) (1)本件特許発明1等は,「紫外線硬化性インクにおいて,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である」との発明特定事項を有していないため,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した,すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法も,その発明の範囲に含まれるものである。 (2)ここで,本件特許発明が解決しようとする課題は,本件特許明細書の【0004】の記載を踏まえると,「バンディングおよび生産性の点が改善されたすりガラス調の装飾シートの製造方法を提供する」ことにあると認められる。 (3)これに対して,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,【0054】?【0056】において,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した場合には,すりガラス調の装飾シートが得られない旨が記載されており,この点は,【表3】および【0121】の比較例12?15においても示されている。 そうすると,これらの記載に接した当業者であれば,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した場合には,「バンディングおよび生産性の点が改善されたすりガラス調の装飾シートの製造方法を提供する」という本件特許発明における課題を解決することができないものと認識するといえる。 (4)したがって,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用するものを含む本件特許発明1等は,発明の詳細な説明の記載から当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものである。 (5)以上のとおり,本件特許請求の範囲の請求項1,2,4?7,11?18の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないから,本件特許請求の範囲の請求項1,2,4?7,11?18に係る特許は,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号違反について) (1)上記1(1)で指摘したとおり,本件特許発明1等には,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した,すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法も,その発明の範囲に含むものであるところ,上記1(3)にて指摘したとおり,このような表面張力を有する紫外線硬化性インクでは,すりガラス調の装飾シートを製造することができないものである。 (2)したがって,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用して,すりガラス調の装飾シートを製造する方法について記載されておらず,当該製造方法が当業者における技術常識であるとも認められないから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件特許発明1等の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (3)以上のとおり,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないから,本件特許請求の範囲の請求項1,2,4?7,11?18に係る特許は,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反について) (1)上記第4の1のとおり,取消理由1は,「本件特許発明1等は,「紫外線硬化性インクにおいて,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である」との発明特定事項を有していないため,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した,すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法も,その発明の範囲に含まれるものである」ところ,本件特許明細書の記載に接した当業者であれば,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用した場合には,「バンディングおよび生産性の点が改善されたすりガラス調の装飾シートの製造方法を提供する」という本件特許発明における課題を解決することができないものと認識するから,本件特許発明1は,発明の詳細な説明の記載から当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識し得る範囲を超えるものであることから,本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないというものであり,また,「紫外線硬化性インクにおいて,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である」 との特定を有さない本件特許発明2,4ないし7及び11ないし18に係る発明も同様に,発明の詳細な説明に記載されたものということはできないというものである。 (2)これに対して,上記第3のとおり,本件訂正特許発明1において,「紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用」して当該「紫外性硬化性インクの硬化物」で「複数のドット」を形成することが特定されるものとなった。 また,本件訂正特許発明1を引用するものである本件特許発明2,4ないし7及び11ないし18についても,同様に,「紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用」して当該「紫外性硬化性インクの硬化物」で「複数のドット」を形成することが特定されるものとなった。 (3)そして,当該特定がされたことにより,本件訂正特許発明1,2,4ないし7及び11ないし18に係る発明が,発明の詳細な説明の記載から当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識し得るものであることは上記の理由から明らかである。 (4)以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから,上記取消理由は解消したから,本件特許の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許を同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものということはできない。 2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号違反について) (1)上記第4の2のとおり,取消理由2は,「本件特許明細書の発明の詳細な説明には,25℃で測定した表面張力が25mN/mより大きい紫外線硬化性インクを使用して,すりガラス調の装飾シートを製造する方法について記載されておらず,当該製造方法が当業者における技術常識であるとも認められないから,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件特許発明1等の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない」というものであるところ,本件訂正特許発明1,2,4ないし7及び11ないし18において「紫外線硬化性インクとして,25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用」して当該「紫外性硬化性インクの硬化物」で「複数のドット」を形成することが特定されるものとなったのであるから,当該取消理由2は解消している。 (2)以上のとおりであるから,本件特許明細書には,本件訂正請求による訂正後の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る発明を当業者が実施できる程度に記載されているものといえるから,本件特許の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許を同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものということはできない。 第6 むすび 以上検討したとおり,本件特許の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許については,取消理由通知書に記載した取消理由(特許異議申立書に記載された特許異議申立理由と同じ)によっては,取り消すことができない。 また,他に本件特許の請求項1,2,4ないし7及び11ないし18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 紫外線硬化性インクの液滴を吐出する複数のノズルを備えるヘッド部と、 前記ヘッド部の主走査方向に前記ヘッド部とともに移動するものであり、前記ノズルから吐出され透明基材の主面上に着弾した前記液滴に対して、紫外線を照射する紫外線照射部と、 を備えるインクジェットプリンタを用いて、 前記透明基材と、前記透明基材の主面上の印刷領域内に形成された、前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される複数のドットとを有する、すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクとして、25℃で測定した表面張力が25mN/m以下である紫外線硬化性インクを使用するとともに、前記インクジェットプリンタを用いて、下記の印刷条件(1)?(3)を満たすインクジェット印刷をマルチパス方式で行うことにより、前記透明基材の主面上に、前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成される前記複数のドットを形成する印刷工程を含む、装飾シート製造方法。 (印刷条件) (1)前記ノズルから吐出する液滴量が、1pl以上50pl以下。 (2)前記ノズルから吐出された液滴が主面上に着弾してから、前記紫外線照射部から紫外線が当該液滴に照射されるまでの待機時間が、10ms以上5.0s以下。 (3)前記ヘッド部を主走査方向に1回主走査したときの印刷領域内における液滴密度を、「上記(1)の液適量×主走査方向における出力解像度×副走査方向における出力解像度/前記インクジェットプリンタのパス数」と定義したときの、前記液滴密度が、0.1μl/in^(2)以上1.0μl/in^(2)以下。 【請求項2】 請求項1に記載の装飾シート製造方法であって、 前記印刷工程において、前記パス数が4以上である、装飾シート製造方法。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 請求項1又は2に記載の装飾シート製造方法であって、 前記印刷工程において、着弾した前記液滴に照射される紫外線の積算光量が、10mJ/cm^(2)以上である、装飾シート製造方法。 【請求項5】 請求項1又は2、若しくは4に記載の装飾シート製造方法であって、 前記透明基材が、光透過性の樹脂製フィルムで構成される、装飾シート製造方法。 【請求項6】 請求項1又は2、若しくは4又は5に記載の装飾シート製造方法であって、 前記印刷工程において、2パス目以降の液滴の少なくとも一部を、液滴の硬化物の上に着弾させる、装飾シート製造方法。 【請求項7】 請求項1又は2、若しくは4乃至6いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記印刷工程において、前記透明基材の主面上に前記紫外線硬化性インクの硬化物で構成されるレベリング層と、前記レベリング層上に前記複数のドットを形成する、装飾シート製造方法。 【請求項8】 請求項1又は2、若しくは4乃至7いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、 重合性モノマーと、 表面調整剤と、を含む、装飾シート製造方法。 【請求項9】 請求項8に記載の装飾シート製造方法であって、 前記重合性モノマーが、多官能モノマーを含む、装飾シート製造方法。 【請求項10】 請求項8または9に記載の装飾シート製造方法であって、 前記重合性モノマーが、単官能モノマーを含まない、装飾シート製造方法。 【請求項11】 請求項1又は2、若しくは4乃至10いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、 紫外線吸収剤として二酸化チタンと、 を含み、 前記二酸化チタンの含有量が、当該紫外線硬化性インク100重量%に対して、10重量%以下である、装飾シート製造方法。 【請求項12】 請求項11に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクにおいて、 前記二酸化チタンの平均粒子径が、5nm以上200nm以下である、 装飾シート製造方法。 【請求項13】 請求項1又は2、若しくは4乃至12いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 コーンプレート型粘度系を用いて測定される、25℃における当該紫外線硬化性インクの粘度が、20mP・s以上50mP・s以下である、装飾シート製造方法。 【請求項14】 請求項1又は2、若しくは4乃至13いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、光重合開始剤を含む、装飾シート製造方法。 【請求項15】 請求項14に記載の装飾シート製造方法であって、 前記光重合開始剤が、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニルフェニル骨格を有する光重合開始剤を含む、装飾シート製造方法。 【請求項16】 請求項1又は2、若しくは4乃至15いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、酸化防止剤を含む、装飾シート製造方法。 【請求項17】 請求項1又は2、若しくは4乃至16いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、水を含まない、非水系の紫外線硬化性インクである、装飾シート製造方法。 【請求項18】 請求項1又は2、若しくは4乃至17いずれか一項に記載の装飾シート製造方法であって、 前記紫外線硬化性インクが、非反応性有機溶剤を含まない、非有機溶剤系の紫外線硬化性インクである、装飾シート製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-08-25 |
出願番号 | 特願2018-239033(P2018-239033) |
審決分類 |
P
1
652・
853-
YAA
(B41J)
P 1 652・ 537- YAA (B41J) P 1 652・ 536- YAA (B41J) P 1 652・ 851- YAA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 馬渕 貴洋、村田 顕一郎 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
尾崎 淳史 河内 悠 |
登録日 | 2019-07-26 |
登録番号 | 特許第6561193号(P6561193) |
権利者 | 東京インキ株式会社 |
発明の名称 | すりガラス調の装飾シートを製造するための装飾シート製造方法 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 速水 進治 |