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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 発明同一 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1368052 |
異議申立番号 | 異議2019-700329 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-04-24 |
確定日 | 2020-09-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6430109号発明「外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6430109号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について訂正することを認める。 特許第6430109号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6430109号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25 年10月25日(優先権主張 平成24年11月2日)に出願され、平成30年11月9日にその特許権の設定登録がされ、同年11月28日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年 4月24日 : 特許異議申立人 藤井 正弘(以下、「申立人 」という。)による特許異議の申立て 令和 1年 8月28日付け: 取消理由通知書 同 年11月 1日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書 同 年12月18日付け: 申立人による意見書 令和 2年 3月 2日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 同 年 4月30日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書 同 年 6月29日付け: 申立人による意見書 なお、令和2年4月30日付け訂正請求がされたため、令和1年11月1日付け訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 上記令和2年4月30日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項である請求項1?7からなる本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。(下線は、訂正箇所を表す。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「(A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含み、(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH6.5以下である外用組成物{ただし、一般式(I)で表されるシステイン誘導体またはその塩: 【化1】 [式中、 X及びYは、それぞれ独立して、OR^(1)、NHR^(2)(式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示す。)であり; Zは、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示し; Wは、C_(1-22)アルキル基、C_(1-22)アルコキシ基またはC_(1-22)アルキルアミノ基を示す。] を含有する化粧料を除く}。」 と記載されているのを、 「(A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含み、(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH4.5以上6.5以下である外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。 (ア)一般式(I)で表されるシステイン誘導体またはその塩: 【化1】 [式中、 X及びYは、それぞれ独立して、OR^(1)、NHR^(2)(式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示す。)であり; Zは、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示し; Wは、C_(1-22)アルキル基、C_(1-22)アルコキシ基またはC_(1-22)アルキルアミノ基を示す。] を含有する化粧料 (イ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸1.0重量%、ニコチン酸アミド1.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0.4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (ウ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0.4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (エ)次の(a)?(c)を含む油中水型乳化化粧料 (a)トラネキサム酸またはその塩 1.0?5.0質量% (b)シリカ被覆酸化亜鉛 3.0?30.0質量% (c)水 10.0?40.0質量% (オ)エタノール7質量%、グリセリン5質量%、ジプロピレングリコール1質量%、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)-ジメチルエーテル1質量%、トラネキサム酸1質量%、サリチル酸0.2質量%、ジメチルポリシロキサン0.2質量%、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体0.15質量%、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル0.05質量%、クエン酸、クエン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エデト酸二ナトリウム、香料及び精製水を含有する化粧水}。」 に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に 「トラネキサム酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%である請求項1?4の何れかに記載の組成物。」 と記載されているのを 「トラネキサム酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%であり、pH4.6以上6.5以下であり、下記(カ)?(ク)を除く請求項1?4の何れかに記載の組成物。 (カ)ニコチン酸アミド及びグリコール酸を含有する組成物 (キ)トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (ク)(A)HLB5?9の非イオン性界面活性剤と、 (B)ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体アルキルエーテルと、 (C)ジメチルポリシロキサンと、 (D)エタノールと、 (E)0.1質量%未満のアニオン性界面活性剤と、 (F)トラネキサム酸1質量%と、サリチル酸0.2質量%を含有し、乳化粒子径が20?600nmである水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に 「トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して、5?50重量部である請求項1?5の何れかに記載の組成物。」 と記載されているのを、 「トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して、5?50重量部であり、pH5.0以上6.5以下であり、下記(ケ)?(サ)を除く請求項1?5の何れかに記載の組成物。 (ケ)ニコチン酸アミド及びα-ヒドロキシ酸を含有する組成物 (コ)トラネキサム酸2.0重量%及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (サ)トラネキサム酸1質量%及びサリチル酸0.2質量%を含有する組成物」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に 「サリチル酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?1重量%である請求項1?6の何れかに記載の組成物。」 と記載されているのを、 「サリチル酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?1重量%であり、下記(シ)を除く請求項1?6の何れかに記載の組成物。 (シ)トラネキサム酸1質量%を含有する組成物」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 まず、訂正事項1のうち、(イ)?(オ)を除くとする請求項1についての訂正は、令和1年8月28日付けで通知した取消理由の引用発明に関連して、新たに(イ)?(オ)を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1のうち、pH値の下限を4.5とする請求項1についての訂正は、表3の実施例13に基づくものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、新たに(イ)?(オ)を除くこと及びpH値の下限を4.5とすることにより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項に対し、何ら新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 (2) 訂正事項2 訂正事項2のうち、(カ)?(ク)を除く請求項5についての訂正は、令和1年8月28日付けで通知した取消理由の引用発明に関連して、新たに(カ)?(ク)を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2のうち、pH値をpH4.6以上6.5以下とする訂正は、表3の実施例10に基づくものであり、また、上限値は請求項1に基づくから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、新たに(カ)?(ク)を除くこと及びpH値をpH4.6以上6.5以下とすることにより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項に対し、何ら新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 (3) 訂正事項3 訂正事項3のうち、(ケ)?(サ)を除く請求項6についての訂正は、令和1年8月28日付けで通知した取消理由の引用発明に関連して、新たに(ケ)?(サ)を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3のうち、pH値をpH5.0以上6.5以下とする訂正は、pHの下限値のpH5.0は表3の実施例12に基づき、また、上限値は請求項1に基づくから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、新たに(ケ)?(サ)を除くこと及びpH値をpH5.0以上6.5以下とするにより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項に対し、何ら新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 (4) 訂正事項4 訂正事項4に係る請求項7についての訂正は、令和1年8月28日付けで通知した取消理由の引用発明に関連して、新たに(シ)を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、新たに(シ)を除くことにより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項に対し、何ら新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求によって訂正された請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1?7」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。)は、令和2年4月30日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 (A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含み、(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH4.5以上6.5以下である外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。 (ア)一般式(I)で表されるシステイン誘導体またはその塩: 【化1】 [式中、 X及びYは、それぞれ独立して、OR^(1)、NHR^(2)(式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示す。)であり; Zは、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示し; Wは、C_(1-22)アルキル基、C_(1-22)アルコキシ基またはC_(1-22)アルキルアミノ基を示す。] を含有する化粧料 (イ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸1.0重量%、ニコチン酸アミド1.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0.4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (ウ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0. 4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (エ)次の(a)?(c)を含む油中水型乳化化粧料 (a)トラネキサム酸またはその塩 1.0?5.0質量% (b)シリカ被覆酸化亜鉛 3.0?30.0質量% (c)水 10.0?40.0質量% (オ)エタノール7質量%、グリセリン5質量%、ジプロピレングリコール1質量%、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)-ジメチルエーテル1質量%、トラネキサム酸1質量%、サリチル酸0.2質量%、ジメチルポリシロキサン0.2質量%、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体0.15質量%、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル0.05質量%、クエン酸、クエン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エデト酸二ナトリウム、香料及び精製水を含有する化粧水}。 【請求項2】 さらに有機酸を含む請求項1に記載の外用組成物。 【請求項3】 有機酸が、グルコン酸、乳酸、及びグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の外用組成物。 【請求項4】 有機酸の含有量が0.01?20重量%である請求項2又は3に記載の外用組成物。 【請求項5】 トラネキサム酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%であり、pH4.6以上6.5以下であり、下記(カ)?(ク)を除く請求項1?4の何れかに記載の組成物。 (カ)ニコチン酸アミド及びグリコール酸を含有する組成物 (キ)トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (ク)(A)HLB5?9の非イオン性界面活性剤と、 (B)ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体アルキルエーテルと、 (C)ジメチルポリシロキサンと、 (D)エタノールと、 (E)0.1質量%未満のアニオン性界面活性剤と、 (F)トラネキサム酸1質量%と、サリチル酸0.2質量%を含有し、乳化粒子径が20?600nmである水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物 【請求項6】 トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して、5?50重量部であり、pH5.0以上6.5以下であり、下記(ケ)?(サ)を除く請求項1?5の何れかに記載の組成物。 (ケ)ニコチン酸アミド及びα-ヒドロキシ酸を含有する組成物 (コ)トラネキサム酸2.0重量%及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (サ)トラネキサム酸1質量%及びサリチル酸0.2質量%を含有する組成物 【請求項7】 サリチル酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?1重量%であり、下記(シ)を除く請求項1?6の何れかに記載の組成物。 (シ)トラネキサム酸1質量%を含有する組成物 第4 取消理由の概要及び特許異議申立理由の概要 1 令和2年3月2日付け取消理由(予告)の概要 (1) 令和1年8月28日付け取消理由のうち、依然として理由があるとした理由の概要 「(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」 ・引用発明1-1 「本件発明1?4、7は、引用発明1-1並びに引用文献1及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 引用文献等 1.国際公開第2011/122840号(甲第1号証)(参考文献1:特表2013-523721号公報) 4.田村 健夫著「香粧品科学」、社団法人 日本毛髪科学協会発行、1976年12月1日、p188-189(甲第7号証) (2) 新たに通知した理由の概要 「1.(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」 ・「引用文献1に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明1-3) 「本件発明1?5、7は、引用発明1-3並びに引用文献1及び4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 ・「引用文献5に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明5) 「本件発明1?7は、引用発明5及び引用文献4?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 ・「引用文献6に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明6) 「本件発明1?7は、引用発明6並びに引用文献4及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 ・「引用文献8に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明8) 「本件発明1?7は、引用発明8並びに引用文献4、8及び9又は引用文献4及び8?11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 「引用文献等 1.国際公開第2011/122840号(甲第1号証)(参考文献1:特表2013-523721号公報) 4.田村 健夫著「香粧品科学」、社団法人 日本毛髪科学協会発行、1976年12月1日、p188-189(甲第7号証) 5.特開2002-37736号公報 6.特開平10-114642号公報 7.特開平1-93519号公報 8.特開2011-93835号公報 9.特開平8-53336号公報 10.特開平9-124878号公報 11.特開2009-235051号公報」 2 令和1年8月28日付け取消理由の概要 訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、当審が令和1年8月28日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 「1.(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 2.(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 3.(拡大先願) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願又は実用新案登録出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされた下記の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許又は実用新案登録出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。」 「理由1,2について(引用発明1-1に対して)」 本件発明1?5、7は、引用発明1-1、すなわち引用文献1に記載された発明であり、また、仮にそうでなくとも引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 「理由1、2について(引用発明1-2に対して)」 本件発明1?7は、引用発明1-2、すなわち引用文献1に記載された発明であり、また、仮にそうでなくとも引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、この発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 「理由1,2について(引用文献2を主引例とする場合)」 本件発明1、5?7は、引用発明2、すなわち引用文献2に記載された発明であり、また、仮にそうでなくとも引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 「理由3について」 本件発明1、2、5?7は、引用発明3、すなわち引用明細書3に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 「引用文献等一覧 1 国際公開第2011/122840号(特許異議申立人が提出した甲第1号証に相当)(参考文献1:特表2013-523721号公報) 2 特開2012-201660号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証に相当) 3 特願2012-58708号(特開2013-189417号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証に相当))」 3 特許異議申立ての理由 (1) 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2項)について ア 本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 イ 本件特許の請求項1、5?7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2) 特許法第29条第2項(同法第113条第2項)について ア 本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 イ 本件特許の請求項1、5?7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3) 特許法第29条の2(同法113条第2項)について 本件特許の請求項1、2、4?7に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願又は実用新案登録出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされた下記の特許出願又は実用新案登録出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明又は考案と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願又は実用新案登録出願に係る上記の発明又は考案をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許又は実用新案登録出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4) 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2011/122840号 甲第2号証:特開2012-201660号公報 甲第3号証:特開2013-189417号公報 甲第4号証:「グリコール酸とは・・・成分効果と毒性を解説」、化粧品成分オンライン、URL<https://cosmetic-ingredients.org/peeling/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%85%B8%E3%81%AE%E6%88%90%E5%88%86%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%A8%E6%AF%92%E6%80%A7/>、検索日:平成31年4月5日、インターネット 甲第5号証:「サリチル酸とは成分効果と毒性を解説」、化粧品成分オンライン、URL< https://cosmetic-ingredients.org/?s=%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%AB%E9%85%B8>、検索日:平成31年4月4日、インターネット 甲第6号証:田村 健夫著「香粧品科学」、社団法人 日本毛髪科学協会発行、1976年12月1日、pp.150-153 甲第7号証:田村 健夫著「香粧品科学」、社団法人 日本毛髪科学協会発行、1976年12月1日、pp.188-189 甲第8号証:「超純粋」、日本冷凍空調学会、URL<https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/98.html>、検索日:令和1年12月11日、インターネット 第5 当審の判断 令和2年3月2日付け取消理由(予告)、令和1年8月28日付け取消理由、特許異議申立ての理由の順で、当審の判断を示す。以下、下線は当審で付した。 1 令和2年3月2日付け取消理由(予告)に対する当審の判断 (1)引用文献に記載された事項 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1は外国語文献であるので、翻訳文により記載する。また、記載された事項の翻訳文の摘示においては、対応する日本語文献(参考文献1)の摘示箇所を合わせて括弧書きで示す。 (ア1) 「[請求項1] トラネキサム酸及びニコチン酸アミドを有効成分として含有するメラニン色素生成抑制剤。 [請求項3] α-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸よりなる群から選択された1種以上をさらに含むものであることを特徴とする請求項1に記載のメラニン色素生成抑制剤。 [請求項4] 上記α-ヒドロキシ酸とβ-ヒドロキシ酸とは、0.2:1?30:1の重量比で含まれるものであることを特徴とする請求項3に記載のメラニン色素生成抑制剤。 [請求項5] 上記α-ヒドロキシ酸は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項3に記載のメラニン色素生成 抑制剤。 [請求項6] 上記β-ヒドロキシ酸は、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシβ-メチルブチレート 、カルニチン、3-ヒドロキシプロピオン酸及びサリチル酸よりなる群から選択された1 種以上であることを特徴とする請求項3に記載のメラニン色素生成抑制剤。 [請求項7] 請求項1?6のいずれかに記載のメラニン色素生成抑制剤を有効成分として含む化粧料組成物。」(請求項1、3?7(参考文献1 請求項1、3?7)) (イ1) 「[36] [実施例1、2及び比較例1?4] [37] 下記表2に記載した組成によって実施例1、2及び比較例1?4の化粧料を製造した。その製造過程を詳しく見れば、原料1?9を混合し、70℃で溶解し、水相パートにした 。一方、原料10?16を70℃で溶解し、油相パートにした。油相パートを上記水相パートに添加し、ホモミキサー(日本国Tokushu Kika社)で撹拌して1次乳化し、原料17及び18を添加し、加香及び増粘した。気泡を除去した後、室温に冷却し、実施例1、2及び比較例1?4の化粧料を製造した(単位:重量%)。 [38] 表2 [39] [40][試験例2]人体皮膚に対する美白効果 [41] 人体皮膚に対する美白効果と皮膚刺激性を調べるために、平均年齢35.2才の元気な30名の男性及び女性を対象として被検者の上膊部に直径1.5cmの穴が6個穿設された不透明テープを付着した後、各被検者の最小紅斑量(Minimal Erythema Dose)の1.5?2倍程度の紫外線(UVB)を照射し、皮膚の黒化を誘導し、試験物質を塗布してから2ヶ月後に色差計を利用して皮膚の明暗を測定した。これらの被検者に上記実施例1、2及び比較例1?4の化粧料を朝、夕方2回ずつ毎日塗布するようにした。 [42] 効果の判定は、皮膚の明暗を示す“L”値を求めて決定した。参照として、人為的に焼いていない韓国人の皮膚色は、一般的に50?70の値を示す。色差計(ミノルタCR2002)を使用して皮膚の黒白程度を測定し、効果を判定した。色を表示するときには、L^(*)a^(*)b^(*) 表色系を使用するが、本発明では、主にL^(*)値(明度)を指標にした。L^(*)値は、標準白板で補正し、測定は、1個部位に5回以上測定を繰り返すことによって、色素沈着部を均等に測定した。塗布開始時点と完了時点での皮膚色の差(△L^(*))を下記数式2によって計算し、これを下記表3に示した。美白効果は、試料塗布部位と対照群部位の△L^(*)の比較により判定するが、△L^(*)値が2程度の場合は、沈着された色素の美白化が明らかな場合であり、1.5程度以上なら、美白効果があると判定することができる。 [43] [数式2] △L^(*)=塗布開始2ヶ月後のL^(*)値-塗布開始時のL^(*)値 [44] 試験物質を塗布し、効果がある場合は、L値が徐々に増加し、試験物質間の比較は、塗布開始時点と完了時点(塗布開始2ヶ月後)での皮膚色の差(△L)を上記数式2によって計算し、その結果を下記表3に示した。 [45] 表3 [46] 上記表3の結果から、トラネキサム酸及びニコチン酸アミドを一緒に使用した実施例1及び2の場合、これらを単独で使用した比較例1?4より美白効果が非常に優れていて、上記トラネキサム酸及びニコチン酸アミド以外に、α-ヒドロキシ酸であるグリコール酸と、β-ヒドロキシ酸であるサリチル酸とをさらに含有する実施例2の場合には、実施例1よりも美白効果がさらに優れていることを確認することができる。」([37]?[46](参考文献1:【0032】?【0039】)) (ウ1) 「[16] 本発明によるメラニン色素生成抑制剤は、上記トラネキサム酸及びニコチン酸アミドを全体重量に対して各々0.001?10.0重量%、好ましくは、各々3.0?5.0重量%で含有する。上記有効成分の含量が0.001重量%未満の場合には、顕著な効果を期待することができず、10.0重量%を超過する場合には、含有量の増加による顕著な効果の増加が認められず、皮膚刺激を誘発することがある。 [17] また、本発明によるメラニン色素生成抑制剤は、上記有効成分以外に、α-ヒドロキシ酸とβ-ヒドロキシ酸とを、0.2:1?30:1の重量比で混合してさらに含むことができ、より好ましくは、2:1?10:1で混合して使用することが好ましい。 ・・・ [19] 本発明の組成物において使用するα-ヒドロキシ酸は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸などを挙げることができるが、好ましくは、グリコール酸(OHCH_(2)COOH)が使用される。本発明では、上記α-ヒドロキシ酸をメラニン色素生成抑制剤の全体重量に対して0.0002?15重量%で含有することが好ましい。上記α-ヒドロキシ酸の含量が15重量%を超過する場合には、皮膚刺激が大きくなり、0.0002重量%未満の場合には、美白効果が非常に弱い。 ・・・ [22] 本発明では、上記β-ヒドロキシ酸をメラニン色素生成抑制剤の全体重量に対して0.001?5.0重量%で含有することが好ましい。上記β-ヒドロキシ酸の含量が5.0重量%を超過する場合には、皮膚刺激が大きくなり、0.001重量%未満の場合には、その効果が非常に弱い。」([16]?[22](参考文献1:【0016】?【0021】)) イ 引用文献5に記載された事項 (ア5) 「【請求項1】 サリチル酸、サリチル酸塩、α-ヒドロキシ酸およびα-ヒドロキシ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、エラグ酸系化合物とを含有するニキビ予防・治療剤。 【請求項2】 25℃におけるpHが3?7の範囲である請求項1に記載のニキビ予防・治療剤。」 (イ5) 「【0002】 【従来の技術】従来、ニキビを予防および改善する外用剤としては、サリチル酸などの殺菌剤を配合したもの(特開平06-279230号公報)、イオウなどの角質剥離剤を配合したもの(特開平08-92027号公報)、油溶性甘草エキスなどの5α-リダクターゼ阻害剤を配合したもの(特開平11-100324号公報)などが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ニキビ患者にとっては、ニキビそのものと同様に、ニキビ痕の色素沈着もまた精神的苦痛の一つである。しかしながら、上記従来のニキビ予防・治療剤には、ニキビ痕の色素沈着を予防、改善する効果は期待できなかった。 【0004】本発明は、ニキビを予防・改善する効果に優れ、且つ、ニキビ痕の色素沈着を予防・改善することができるニキビ予防・治療剤を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明のニキビ予防・治療剤は、サリチル酸、サリチル酸塩、α-ヒドロキシ酸およびα-ヒドロキシ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「A成分」という。)と、エラグ酸系化合物(以下、「B成分」という。)とを含有することを特徴とする。これらの成分を組み合わせることにより、優れたニキビ予防・改善効果と同時に、ニキビ痕の色素沈着防止・改善効果を達成することができる。」 (ウ5) 「【0008】α-ヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが挙げられる。なかでも、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が好ましい。 【0009】サリチル酸塩およびα-ヒドロキシ酸塩としては、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、ハロゲン化物、硫化物などが挙げられる。なかでも、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。 【0010】前記A成分の配合量は、ニキビ予防・治療剤全体に対して、例えば0.001?10.0質量%、好ましくは0.005?5.0質量%、更に好ましくは0.05?3.0質量%である。0.001?10質量%とすることにより、更に優れたニキビ予防・改善効果を得ることができる。」 (エ5) 「【0024】 また、本発明のニキビ予防・治療剤のpHは、25℃において、例えば3?7、好ましくは3.5?6.5、更に好ましくは3.5?5.5の範囲である。」 (オ5) 「【0031】 【表1】 ・・・ 【0034】 【表2】 ・・・ 【0039】 【表4】 ・・・ 【0044】 【表6】 ・・・ 【0049】 【表8】 【0050】 【表9】 」 ウ 引用文献6に記載された事項 (ア6) 「【請求項1】α-ヒドロキシ酸並びにトラネキサム酸及び/又はトラネキサム酸誘導体を含んでなる皮膚外用剤。 【請求項2】α-ヒドロキシ酸が、リンゴ酸,グリコール酸及び乳酸からなる群のα-ヒドロキシ酸から選ばれる1種又は2種以上のα-ヒドロキシ酸であるである請求項1記載の皮膚外用剤。 【請求項3】トラネキサム酸誘導体が、トラネキサム酸アルキルアミド及び/又はその塩である請求項1又は請求項2記載の皮膚外用剤。 【請求項4】トラネキサム酸アルキルアミド及び/又はその塩が、トラネキサム酸メチルアミド及び/又はその塩である請求項3記載の皮膚外用剤。」 (イ6) 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は皮膚外用剤に関する技術分野の発明である。さらに詳しくは、α- ヒドロキシ酸(AHA)と組み合わせて用いることにより、相乗的効果、具体的にはAHAの皮膚外用剤への配合に伴う皮膚刺激性を緩和すると共に、AHAによる過度の表皮のターンオーバー促進による皮膚の落屑を防ぎ、しかも肌のきめ,くすみ,荒れ等の改善効果に優れ、かつ美白効果にも優れる皮膚外用剤に関する発明である。」 (ウ6) 「【0010】 本発明皮膚外用剤に配合されるAHAとしては、炭素数が2以上,8以下のα-ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸,酒石酸,リンゴ酸,クエン酸,グリコール酸,グリセリン酸,ピルビン酸,マンデル酸等を例示することができる。 ・・・ 【0012】 また、その配合量は本発明皮膚外用剤の具体的な形態等に応じて決定されるべきものであり特に限定されないが、概ね皮膚外用剤中、0.01重量%以上,同15.0重量%以下が好ましく、同0.1重量%以上,同10.0重量%以下が特に好ましい。一般的に、皮膚外用剤中0.01重量%未満の配合量では、後述するトラネキサム酸類との相乗的な肌荒れ防止効果、肌荒れ改善効果及び美白効果を発揮することが困難であり好ましくなく、同15.0重量%を越えて配合しても配合量の増加に見合ったこの肌荒れ防止効果等の向上が期待されず好ましくない。」 (エ6) 「【0015】 本発明において配合されるトラネキサム酸は、融点386?390℃で、白色の結晶又は粉末で、臭いはなく、味は苦い。 また、本発明皮膚外用剤に配合されるトラネキサム酸には、薬学上許容される塩が含まれる。このトラネキサム酸塩としては、例えばマグネシウム塩,カルシウム塩,カリウム塩等の金属塩や硫酸塩、塩酸塩等を例示することができる。 さらに、トラネキサム酸誘導体としては、例えばビタミンAエステル,ビタミンEエステル,ビタミンCエステル,ビタミンDエステル等のビタミンエステル類;メチルアミド、エチルアミド等のアルキルアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのトラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸塩酸塩又はトラネキサム酸アルキルアミドが、特に安全性に優れており,かつ製剤化が容易である点で本発明皮膚外用剤における配合成分として好ましい。また、このトラネキサム酸アルキルアミドの中でも特にトラネキサム酸メチルアミドを選択することが、上に述べたトラネキサム酸アルキルアミドをトラネキサム酸誘導体として選択する利点を更に向上させることが可能になる故、好ましい。 【0016】 本発明皮膚外用剤中におけるこのトラネキサム酸類の配合量は、皮膚外用剤中、0.01重量%以上,同10.0重量%以下が好ましく、同0.1重量%以上,同7.0重量%以下が特に好ましい。皮膚外用剤中、0.01重量%未満の配合量では、十分な肌荒れ防止作用、肌荒れ改善作用及び美白効果が発揮されないだけではなく、上記AHAの配合に伴う皮膚刺激性を十分に緩和し、過度の皮膚のターンオーバー亢進による皮膚の落屑を防ぐことが困難であり好ましくない。また、皮膚外用剤中10.0重量%を越えて配合しても、配合量の増加に見合った効果の増強が見られなくなり好ましくない。」 (オ6) 「【0032】 また、安息香酸,サリチル酸,石炭酸,ソルビン酸,パラオキシ安息香酸エステル,パラクロルメタクレゾール,ヘキサクロロフェン,塩化ベンザルコニウム,塩化クロルヘキシジン,トリクロロカルバニリド,感光素,フェノキシエタノール等の抗菌剤等を本発明皮膚外用剤中に配合することができる。 また、必要に応じて適当な香料、色素等を本発明の所期の効果を損なわない範囲で本発明皮膚外用剤に配合することもできる。 【0033】 ここで、上記の基剤成分は例示であり、これらの基剤成分に本発明皮膚外用剤に配合可能な基剤成分が限定されるものではない。 これらの基剤成分は所望する形態に応じた処方に従い、適宜組み合わせて本発明皮膚外用剤に配合することができる。 本発明皮膚外用剤の具体的処方については、後述する実施例において記載する。」 エ 引用文献8に記載された事項 (ア8) 「【請求項1】 次の成分(A)および(B) (A)殺菌剤 (B)ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤 を含むことを特徴とする、皮膚外用剤。 【請求項2】 (A)殺菌剤がサリチル酸である、請求項1に記載の皮膚外用剤。 【請求項3】 ニキビ用である、請求項1に記載の皮膚外用剤。」 (イ8) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 一般的な抗生物質、抗菌剤等は、多く使用すると皮膚の有用な微生物まで死滅させたり、重度なる塗布によりニキビ周辺の皮膚にダメージを与えることが懸念され、これらを防止するために使用量を抑えると充分なニキビ改善効果が得られない。また、ニキビ用皮膚外用剤は、べたつきを抑えるため、保湿剤の添加をできるだけ抑えるのが一般的である。このため肌は乾燥し、保湿効果が物足りないなど、満足のいくものではなかった。そこで、殺菌効果を保持したまま、保湿効果の高いニキビ用皮膚外用剤の開発を行なった。 【課題を解決するための手段】 【0006】 殺菌剤と、ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤を含むことを特徴とする皮膚外用剤およびニキビ用皮膚外用剤を見出し、本発明を完成するに至った。」 (ウ8) 「【0020】 これらの各剤には、殺菌剤と、ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤の他に、その用途と必要に応じて、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪用化粧料および洗浄料等に通常配合される任意の成分、例えば水、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、ゲル化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、増粘剤、pH調整剤、キレート剤、薬剤(薬効成分)、香料、樹脂、防菌防かび剤、抗酸化剤、またはアルコール類等を適宜配合することができる。さらに本発明の効果を損なわない範囲において、他の殺菌剤あるいは保湿剤との併用も可能である。 【0021】 殺菌剤の皮膚外用剤への配合量は、種類や目的等によって調整することができるが、効果や安定性などの点から、全量に対して固形分換算で、好ましくは0.0001?5.0質量%であり、より好ましくは0.0001?1.0質量%であり、さらに好ましくは0.0001?0.5質量%である。」 (エ8) 「【0040】 [実施例11] アクネ用皮膚外用剤(ローションタイプ) (1)エタノール 5.0(質量%) (2)サリチル酸 0.1 (3)濃グリセリン 3.0 (4)1,3-ブチレングリコール 7.0 (5)グルコシルトレハロース 1.0 (6)トリメチルグリシン 1.0 (7)ソルビトール 1.0 (8)マルチトール 1.0 (9)トレハロース 1.0 (10)コメ醗酵液 1.0 (11)クエン酸 0.1 (12)精製水 100.0とする残部 製法:(1)?(4)を均一に溶解しアルコール相とする。これを、あらかじめ(12)に(5)?(11)を添加して均一にした水相に撹拌しながら均一に混合する。 【0041】 [実施例12] アクネ用皮膚外用剤(乳液タイプ) (1)トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 8.0(質量%) (2)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.5 (3)ベヘニルアルコール 0.5 (4)濃グリセリン 5.0 (5)精製水 100.0とする残部 (6)キサンタンガム(1重量%水溶液) 20.0 (7)1,3-ブチレングリコール 7.0 (8)グルコシルトレハロース 1.0 (9)トリメチルグリシン 1.0 (10)ソルビトール 1.0 (11)マルチトール 1.0 (12)トレハロース 1.0 (13)クエン酸 0.1 (14)エタノール 4.0 (15)サリチル酸 0.1 製法:(1)?(3)の油相と(4)?(6)の水相をそれぞれ80℃まで加熱溶解する。両相を混合し、ホモミキサーを用いて均一に乳化する。45℃まで冷却後(7)?(13)の水相と(14)、(15)を併せたアルコール相を各々加え、均一に撹拌する。 【0042】 [実施例13] アクネ用皮膚外用剤(クリームタイプ) (1)スクワラン 10.0(質量%) (2)ステアリン酸 2.0 (3)水素添加パーム核油 0.5 (4)水素添加大豆リン脂質 0.1 (5)セタノール 3.6 (6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0 (7)グリセリン 10.0 (8)サリチル酸 0.1 (9)1重量%カルボキシビニルポリマー水溶液 15.0 (10)精製水 100.0とする残部 (11)10重量%L-アルギニン水溶液 3.0 (12)1,3-ブチレングリコール 7.0 (13)グルコシルトレハロース 1.0 (14)トリメチルグリシン 1.0 (15)ソルビトール 1.0 (16)マルチトール 1.0 (17)トレハロース 1.0 (18)クエン酸 0.1 製法:(1)?(6)の油相成分を加熱溶解し、80℃とする。一方(7)?(10)を加熱溶解し、80℃とする。これに前記油相を撹拌しながら加えたあと、(11)を加えて、ホモジナイザーにより均一に乳化し45℃まで冷却後(12)?(18)を加え、均一に撹拌する。」 (オ8) 「【0046】 本発明の殺菌剤と、ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤を含むことを特徴とする組成物は、殺菌効果を保持しながら、適度な保湿効果を併せ持つ皮膚外用剤およびニキビ用皮膚外用剤として有用である。」 (2) 引用文献に記載された発明 ア 引用文献1に記載された発明 摘記事項(ア1)?(イ1)、特に(イ1)の[38]の表の実施例2の記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「精製水 残量 グリセリン 3.0重量% ブチレングリコール 5.0重量% ベータグルカン 5.0重量% ヒアルロン酸抽出物 3.0重量% カルボマー 0.1重量% トラネキサム酸 1.0重量% ニコチン酸アミド 1.0重量% グリコール酸 5.0重量% カプリリック/カプリックトリグリセライド 8.0重量% ハイドロゼネイティドポリデセン 5.0重量% セテアリールグルコシド 1.5重量% ソルビタンステアレート 0.4重量% セテアリールアルコール 1.0重量% サリチル酸 0.4重量% 防腐剤 適量 香料 適量 トリエタノールアミン 0.1重量% を配合した化粧料」(以下、「引用発明1-1」という。) また、摘記事項(ア1)の請求項1、3?6の記載、摘記事項(イ1)の表2の実施例2及び[46]の記載(トラネキサム酸及びニコチン酸アミド以外に、α-ヒドロキシル酸であるグリコール酸、β?ヒドロキシ酸であるサリチル酸をさらに含有する実施例2の場合に実施例1よりも美白効果が優れる旨の記載)からみて、以下の発明も記載されている。 「トラネキサム酸及びニコチン酸アミドを有効成分とし、 α-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸から選択される群から選択された1種以上をさらに含み、 α-ヒドロキシ酸とβ-ヒロドキシ酸とは、0.2:1?30:1の重合比で含まれ、 上記α-ヒドロキシ酸が、グリコール酸から選択され、 上記β-ヒドロキシ酸は、サリチル酸からなる選択される、 メラニン色素生成抑制剤。」(以下、「引用発明1-3」という。) イ 引用文献5に記載された発明 引用文献5には、特許請求の範囲の請求項2の記載からみて「サリチル酸、サリチル酸塩、α-ヒドロキシ酸およびα?ヒドロキシ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、エラグ酸系化合物とを含有し、25℃におけるpHが3?7の範囲であるニキビ予防・治療剤」の発明が記載されており、pHについては、摘記事項(エ5)(【0024】)に3?7、好ましくは3.5?6.5と記載されている。そして、実施例にはサリチル酸とエラグ酸を配合した処方(実施例1、5、19、23、27、30:pH3.5?5.0)や、さらにサリチル酸、エラグ酸に加えて、グリコール酸又はリンゴ酸を配合した処方(実施例5,8?12、16:pH3.5?4.5)が記載されており、これらの実施例の処方におけるpHは、好ましいとして記載されたpH3.5?6.5の範囲内である。 上記の摘記事項の記載からみて、引用文献5には、以下の発明が記載されている。 「サリチル酸又はサリチル酸塩と、 エラグ酸と、 α-ヒドロキシ酸としてグリコール酸又はリンゴ酸を配合した、 pH3.5?6.5のニキビ予防・治療剤」(以下、「引用発明5」という。) ウ 引用文献6に記載された発明 引用文献6には、リンゴ酸、グリコール酸及び乳酸から選ばれる1種以上のα-ヒドロキシ酸と、トラネキサム酸(誘導体)を配合した皮膚外用剤が記載され(摘記事項(ア6))、さらに、サリチル酸などの抗菌剤等を配合することもできることも記載されている(摘記事項(オ6))。 上記摘記事項の記載からみて、引用文献6には、以下の発明が記載されている。 「α-ヒドロキシ酸、トラネキサム酸を配合した皮膚外用剤。」(以下、「引用発明6」という。) エ 引用文献8に記載された発明 引用文献8には、殺菌剤と、ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤を含む皮膚外用剤が記載され、殺菌剤としてサリチル酸が記載されている(摘記事項(ア8))。 特に、摘記事項(ア8)からみて、引用文献8には、以下の発明が記載されている。 「次の成分(A)および(B) (A)殺菌剤 (B)ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤 を含むことを特徴とし、 (A)殺菌剤がサリチル酸である、皮膚外用剤。」(以下、「引用発明8」という。) (3) 対比・判断 ア 引用発明1-1に対して (ア) 本件発明1について a 対比 本件発明1と引用発明1-1を対比する。 引用発明1-1の「サリチル酸」、「トラネキサム酸」、「化粧料」は、本件発明1の「サリチル酸またはその塩」、「トラネキサム酸又はその塩」、「外用組成物」にそれぞれ相当する。 また、サリチル酸とトラネキサム酸の含有量について、引用発明1-1のトラネキサム酸の含有量は1.0重量%であり、サリチル酸の含有量は0.4重量%であるから、サリチル酸又はその塩を1重量部とした場合、トラネキサム酸は2.5重量部との換算となるので、本件発明の「トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上」であるとの条件に一致する。 そして、引用発明1-1は、本件発明1のただし書きで除かれている、(ア)、(ウ)?(オ)を含まないので、この点でも一致する。 さらに、引用発明1-1は、サリチル酸、トラネキサム酸以外の成分も含むが、本件発明1は両成分を含む外用剤組成物であって、本件特許明細書の段落【0016】?【0019】、【0024】?【0044】からみて、他に、有機酸、基剤又は担体、他の添加剤、他の有効成分を含み得るものであるから、この点は相違点とはならない。 そうすると、両発明は、 「(A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含み、(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上である外用組成物{ただし、下記(ア)、(ウ)?(オ)を除く。(省略)}。」 の発明の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1a) 本件発明1の外用組成物はpH4.5以上6.5以下であるのに対し、引用発明1-1の 化粧料はpHの特定がない点。 (相違点1b) 本件発明1は、引用発明1-1の構成を(イ)として除くとしており、本件発明1から引用発明1-1が除かれている点。 b 判断 (a) 相違点について 相違点1a、1bについて検討する。 本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものであり、さらに、本件発明1は、引用発明1-1の構成を除くものである。 一方、引用発明1-1は、トラネキサム酸とサリチル酸が配合されてはいるものの、防腐又は殺菌力に優れた組成物を得ることを目的とするものではなく、トラネキサム酸とニコチン酸アミドが配合され、メラニン色素抑制を目的とするものであって、サリチル酸は、角質層のターンオーバーを促進させるために、トラネキサム酸とニコチン酸アミドを含むメラニン色素抑制剤にさらに加えて配合される成分である。 そして、引用発明1-1において、メラニン色素抑制を目的として、サリチル酸、トラネキサム酸等の成分の配合量を引用発明1-1のごく近接範囲とすることは当業者であれば想起できるものの、引用発明1-1とは異なる、防腐又は殺菌力に優れた組成物を得ることを目的として、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸の配合割合と特定の範囲とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 また、引用文献4(甲第7号証:田村 健夫著「香粧品科学」、社団法人 日本毛髪科学協会発行、1976年12月1日、p188-189)には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載され、第34表には、pHの変化(pH3.0、4.5、5.5、6.0、6.5)とサリチル酸の抗菌力が示され、酸性側で抗菌力が強いことが記載されているものの(p.189 「a)pH」の項、p.188の第34表)、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もないから、引用発明1-1に引用文献4に記載された事項を組み合わせても、本件発明1の構成に至ることはできない。 (b) 効果について 本件発明1の効果について検討するに、本件特許明細書の実施例の結果に加え、特許権者から令和2年4月30日付け意見書に記載された実験例A?Dの結果を参酌すれば、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることにより、防腐又殺菌力に優れ、さらに良好な使用感を有する組成物を提供できるものであり、格別顕著な効果を奏するものと認められる。 (c) 申立人の主張について 申立人は、令和2年6月29日付け意見書(第1?4頁)において、以下の主張をしている。 (i) pH4.5以上とすることは、(当初)明細書に記載されていたとはいえない。 (ii) 平成30年7月31日付け提出データ(合議体注:令和2年4月30日付け意見書に記載された実験例A?Dと同じデータ)は(当初)明細書に記載がなく、後出しのデータであって、有機酸を含まないデータである。そして、有機酸を含まない組成物の実施例・処方例は明細書にはないから、「有機酸を含まない部分」について、サリチル酸とトラネキサム酸の併用効果も認識できない。 主張(i)について検討するに、確かに特許明細書に「pH4.5以上」との文言による記載ないものの、表3の実施例13にpH4.5の結果が記載され、他の実施例としてそれ以上のpH値の結果も散見されるから、「pH4.5以上」とすることが、特許明細書の記載に基づかず、全く記載されていないというものではない。 また、主張(ii)について検討するに、確かに、特許明細書には、平成30年7月31日付け意見書での提出データであって、令和2年4月30日付け意見書に記載されたデータでもある実験例A?Dのデータは記載されていないものの、本件特許明細書にも、トラネキサム酸によるサリチル酸の殺菌力の増強効果として表1?4の実験結果の記載がある。この本件特許明細書における実験結果は、本件発明1の増強効果(併用効果)が瞬時に理解できるものではないものの、確かに増強効果(併用効果)を示しており、併用効果を示す結果が全く示されていない、または、その理解が全くできないというほどのものでもない。そして、前記提出データは、有機酸を配合しているかは不明であるものの(「pH調整剤」として有機酸を用いることもある)、本件発明1において、有機酸の配合がなければその併用効果が成り立たないという具体的な説明が、申立人により根拠を伴ってされているものでもない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 よって、本件発明1は、引用発明1-1並びに引用文献1及び4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (イ) 本件発明2?4、7について 本件発明2?4、7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1が引用発明1-1から当業者が容易になし得たものではないと判断されることは上記(ア)bで述べたとおりであるから、同様に判断がされるものである。 よって、本件発明2?4、7は、引用文献1及び4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 イ 引用発明1-3に対して (ア) 本件発明1について a 対比 引用発明1-3を再掲する。 「トラネキサム酸及びニコチン酸アミドを有効成分とし、 α-ヒドロキシ酸及びβ-ヒドロキシ酸から選択される群から選択された1種以上をさらに含み、 α-ヒドロキシ酸とβ-ヒロドキシ酸とは、0.2:1?30:1の重合比で含まれ、 上記α-ヒドロキシ酸が、グリコール酸から選択され、 上記β-ヒドロキシ酸は、サリチル酸からなる選択される、 メラニン色素生成抑制剤。」 本件発明1と引用発明1-3を対比する。 引用発明1-3の「サリチル酸」、「トラネキサム酸」、本件発明1の「(A)サリチル酸又はその塩」、「(B)トラネキサム酸又はその塩」に相当し、摘記事項(ア1)の記載からみて、引用発明1-3の「メラニン色素生成抑制剤」は、美白効果のある化粧料であるから、本件発明1の「外用組成物」に相当する。 本件発明1は、上記以外の成分を含んでもよいから、ニコチン酸アミド及びグリコール酸を含む点は、本件発明1と引用発明1-3との相違点とはならない。 そして、引用発明1-3は、本件発明1で(ア)、(ウ)?(オ)として除く点は含んでおらず、また、(イ)の1点は引用発明1-3から除かれるものである。 そうすると、本件発明1と引用発明1-3は、 「(A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含む外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。((ア)?(オ)の内容については省略)}」 の発明の点で一致し、以下の点で両発明は相違する。 <相違点1A> 本件発明1では、「(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH4.5以上6.5以下である」と特定するのに対し、引用発明1-3では、このようなトラネキサム酸とサリチル酸の配合割合及びpH値の特定がない点。 b 判断 (a) 相違点について 上記相違点1Aについて検討する。 本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものであり、さらに、本件発明1は、引用発明1-1の構成を除くものである。 一方、引用発明1-3は、トラネキサム酸とサリチル酸が配合されてはいるものの、防腐又は殺菌力に優れた組成物を得ることを目的とするものではなく、トラネキサム酸とニコチン酸アミドが配合され、メラニン色素抑制を目的とするものであって、サリチル酸は、角質層のターンオーバーを促進させるために、トラネキサム酸とニコチン酸アミドを含むメラニン色素抑制剤にさらに加えて配合される成分である。 そして、引用発明1-3は、メラニン色素抑制を目的として、サリチル酸、トラネキサム酸等の成分の配合量を検討するものであるが、本件発明1は、これとは異なる、防腐又は殺菌力に優れた組成物を得ることを目的として、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸の配合割合と特定の範囲とするものであるから、引用発明1-3において、本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 また、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載され、第34表には、pHの変化(pH3.0、4.5、5.5、6.0、6.5)とサリチル酸の抗菌力が示され、酸性側で抗菌力が強いことが記載されているものの(p.189 「a)pH」の項、p.188の第34表)、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もないから、引用発明1-3に引用文献4に記載された事項を組み合わせても、本件発明1の構成に至ることはできない。 (b) 効果について 本件発明1の効果について検討するに、本件特許明細書の実施例の結果に加え、特許権者から令和2年4月30日に提出付け意見書に記載された実験例A?Dの結果を参酌すれば、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることにより、防腐又殺菌力に優れ、さらに良好な使用感を有する組成物を提供できるものであり、格別顕著な効果を奏するものと認められる。 (c) 申立人の主張について 申立人は、令和2年6月29日付け意見書(第5?6頁)において、上記(ア)b(c)の主張(i)、(ii)に加えて、以下の主張をしている。 (iii) トラネキサム酸とサリチル酸の配合割合について、表2の実施例2、比較例3、表3の美白効果から、トラネキサム酸がサリチル酸よりも多い化粧料が十分に認識される。 上記主張について検討するに、本件発明1は、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合で併用することによって、防腐又殺菌力に優れるという格別顕著な効果が奏されるものであるから、本件発明1の奏する当該効果は、それとは異なる美白効果に関する引用発明1-3からは予測可能とはいえず、申立人の主張は採用できない。 よって、本件発明1は、引用発明1-3並びに引用文献1及び4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (イ) 本件発明2?5、7について 本件発明2?5、7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1が引用発明1-3から当業者が容易になし得たものではないと判断されることは上記(ア)bで述べたとおりであるから、同様に判断されるものである。 よって、本件発明2?5、7は、引用文献1及び4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 ウ 引用発明5に対して (ア) 本件発明1について a 対比 引用発明5を以下に再掲する。 「サリチル酸又はサリチル酸塩と、 エラグ酸と、 α-ヒドロキシ酸としてグリコール酸又はリンゴ酸を配合した、 pH3.5?6.5のニキビ予防・治療剤」 本件発明1と引用発明5を対比する。 引用発明5の「サリチル酸又はサリチル酸塩」は本件発明1の(A)成分に相当する。 引用発明5の「pH3.5?6.5」は、本件発明1の「pH4.5以上6.5以下」と「pH4.5以上6.5以下」の範囲において重複する。 引用発明5の「ニキビ予防・治療剤」は、本件発明1の「外用組成物」に相当する。 また、引用発明5は、本件発明1で除外された(ア)?(オ)の態様を含まない。 そうすると、本件発明1と引用発明5は、 「(A)サリチル酸又はその塩を含み、pH4.5以上6.5以下である外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。((ア)?(オ)の内容については省略)}。」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1B> 本件発明1は、「トラネキサム酸又は塩」を配合することを特定するのに対し、引用発明5は、「トラネキサム酸又は塩」を配合せず、「エラグ酸」を配合する点。 <相違点2B> 本件発明1は、「(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上)であることを特定するのに対し、引用発明5では、このような特定はない点。 b 判断 (a) 相違点について 相違点1B、2Bについて検討する。 引用文献5において、エラグ酸は、ニキビ痕の色素沈着の予防のために配合されるものであるところ(摘記事項(イ5))、引用文献6には、リンゴ酸やグリコール酸などのα?ヒドロキシ酸とともにトラネキサム酸(誘導体)を配合することにより、肌荒れ効果とともに美白効果が得られることが記載されており(引用文献6 特許請求の範囲、【0016】、第10表)、さらに、サリチル酸等の抗菌剤を配合しても良い旨の記載もされている(【0032】)。また、引用文献7には、トラネキサム酸が抗色素沈着外用剤として用いられることが記載されている(特許請求の範囲)。 しかしながら、本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものであり、そうすると、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするために、引用発明5のエラグ酸に代えて、トラネキサム酸を配合し、サリチル酸に対する好ましい配合量を調整することは当業者が容易になし得たこととはいえない。 (b)効果について 本件発明1の効果について検討するに、本件特許明細書の実施例の結果に加え、特許権者から令和2年4月30日付け意見書に記載された実験例A?Dの結果を参酌すれば、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることにより、防腐又殺菌力に優れ、さらに良好な使用感を有する組成物を提供できるものであり、格別顕著な効果を奏するものと認められる。 一方、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載され、第34表には、pHの変化(pH3.0、4.5、5.5、6.0、6.5)とサリチル酸の抗菌力が示され、酸性側で抗菌力が強いことが記載されてものの(p.189 「a)pH」の項、p.188の第34表)、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 そうすると、当該文献の記載を加味しても、本件発明の効果である、サリチル酸とトラネキサム酸の併用により奏される防腐又は殺菌力についての格別顕著な効果を否定することはできない。 よって、本件発明1は、引用発明5及び引用文献4?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (イ) 本件発明2?7について 本件発明2?7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1が引用発明5から当業者が容易になし得たものではないと判断されることは上記(ア)bで述べたとおりであるから、同様に判断されるものである。 よって、本件発明2?7は、引用文献5及び引用文献4?7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 エ 引用発明6に対して (ア) 本件発明1について a 対比 引用発明6を以下に再掲する。 「α-ヒドロキシ酸、トラネキサム酸を配合した皮膚外用剤。」 本件発明1と引用発明6を対比する。 引用文献6の「トラネキサム酸」、「皮膚外用剤」は、本件発明1の「(B)トラネキサム酸又はその塩」、「外用組成物」に相当する。 また、本件発明1は、上記以外の成分を含んでもよいから、「α-ヒドロキシ酸」を含む点は、本件発明1と引用発明6との相違点とはならない。 そして、引用発明6は、本件発明1で(ア)?(オ)として除かれる点を含むことは特定されていない。 そうすると、本件発明1と引用発明6は、 「(B)トラネキサム酸又はその塩を含む、外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。((ア)?(オ)の内容については省略)}。」 の発明で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1C> 本件発明1では、「サリチル酸」を配合し、「(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH4.5以上6.5以下である」と特定するのに対し、引用発明6では、サリチル酸を含むことの特定がなく、トラネキサム酸とサリチル酸の配合割合及びpH値の特定がない点。 b 判断 (a) 相違点について 上記相違点1Cについて検討する。 引用文献6には、抗菌剤としてサリチル酸を配合できることは記載されているが(摘記事項(オ6))、トラネキサム酸が防腐又は殺菌力を有することについての記載はない。 また、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載され、第34表には、pHの変化(pH3.0、4.5、5.5、6.0、6.5)とサリチル酸の抗菌力が示され、酸性側で抗菌力が強いことが記載されているものの(p.189 「a)pH」の項、p.188の第34表)、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 一方、本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものである。 そうすると、引用発明6において、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするために、サリチル酸を配合し、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (b) 効果について 本件発明1の効果について検討するに、本件特許明細書の実施例の結果に加え、特許権者から令和2年4月30日付け意見書に記載された実験例A?Dの結果を参酌すれば、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることにより、防腐又殺菌力に優れ、さらに良好な使用感を有する組成物を提供できるものであり、格別顕著な効果を奏するものと認められる。 一方、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載されているものの、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物を提供するためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 そうすると、引用発明6に、当該引用文献4の記載を加味しても、本件発明の効果である、サリチル酸とトラネキサム酸の併用により奏される防腐又は殺菌力についての格別顕著な効果を否定することはできない。 (c) 申立人の主張について 申立人は、令和2年6月29日付け意見書(第6頁下から第3行目?第10頁第11行)において、以下の主張をしている。 (iv) 引用文献6には、段落【0006】?【0007】、【0011】?【0013】、【0016】、【0032】?【0033】、実施例1、3、比較例1、7の記載からみて、 「α-ヒドロキシ酸、トラネキサム酸を配合し、抗菌剤としてサリチル酸を配合できる、pH6.5以下の皮膚外用剤」の発明が記載されており、本件発明は引用発明6と実質的に同一の発明であり、「pH4.5以上6.5以下」としてみても、当業者が容易に想到し得たものである。 (v) 本願明細書では、皮膚刺激性について、段落【0008】、【0009】にトラネキサム酸は皮膚刺激がないこと、トラネキサム酸により、サリチル酸の防腐殺菌力が増強されるためサリチル酸の配合量を少なくすることができ、皮膚刺激を抑えられること」が記載されるものの、実施例では皮膚刺激性の試験結果はなく、【0067】の産業上の利用可能性の欄に「本発明の組成物は、・・・刺激感が少なく」との記載があるのみであって、トラネキサム酸を含むことによるα?ヒドロキシ酸などの有機酸の皮膚刺激性について触れられていない。 (vi) 本件発明は、本件特許明細書に挙げられた特許文献1,2は、本件発明とは無関係で、「背景技術」ともいえないものであり、引用文献6の他、本来の適切な先行技術文献を避けた理由が説明されているわけではない。 上記申立人の主張について検討する。 主張(iv)について、引用文献6に、抗菌剤としてサリチル酸を配合できる旨の記載があったとしても、当該記載は、あくまでも可能性があることをいうのにすぎず、「サリチル酸を配合した」組成物が記載されていると認定することはできないから、本件発明1と申立人が主張するような発明は同一ではないし、pH値の特定のみが本件発明1との相違点となるものではない。合議体で認定したとおり、引用文献6に記載された発明の認定は上記(2)ウに記載したとおりであり、また、その発明に対する判断については、上記b(a)で検討したとおりであって、申立人の主張(iv)は採用できない。 主張(v)について、確かに、本件発明1は「良好な使用感を有する」組成物を提供することを課題としているにも関わらず(本件特許明細書の段落【0005】)、有機酸を配合した実施例において、良好な使用感(皮膚刺激性)に関する検討はされていない。しかしながら、引用文献6の段落【0013】に記載のとおり、αーヒドロキシ酸は皮膚刺激性を有するものの、当該段落には、トラネキサム酸の配合により皮膚刺激性を緩和できる旨の指摘もあるし、引用文献6の表1の実施例1と比較例1や、表2の実施例2と比較例4との対比をみればそれが理解できるものである。また、本件明細書の段落【0002】によれば、従来技術の問題は、水に難溶性のサリチル酸を溶解するためのエタノール溶媒によるもの、析出したサリチル酸によるものであって、本件特許明細書における「良好な使用感」については、製剤中のサリチル酸の配合量が減少することにより達成されるものと理解されるから、主張(v)も採用できない。 主張(vi)について、本件特許明細書の【背景技術】及び【先行技術文献】の認識や記載内容が十分でないとする申立人の気持ちは理解できないものではないが、今回の特許異議申立理由により、特許権者も今後は是正するであろうし、そもそも、本件特許明細書の背景技術に挙げられた文献の内容が引用文献6等などよりも本件発明との関係が薄いものであることが、進歩性の判断に関係するものではなく、この主張(vi)により、合議体による進歩性の判断が覆るものではない。 よって、本件発明1は、引用発明6並びに引用文献4及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (イ) 本件発明2?7について 本件発明2?7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1が引用発明5から当業者が容易になし得たものではないと判断されることは上記(ア)bで述べたとおりであるから、同様に判断されるものである。 よって、本件発明2?7は、引用発明6並びに引用文献4及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 オ 引用発明8に対して (ア) 本件発明1について a 対比 引用発明8を以下に再掲する。 「次の成分(A)および(B) (A)殺菌剤 (B)ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤 を含むことを特徴とし、 (A)殺菌剤がサリチル酸である、皮膚外用剤。」 本件発明1と引用発明8を対比する。 引用発明8の「サリチル酸」、「皮膚外用剤」は、本件発明1の「(A)サリチル酸又はその塩」、「外用組成物」に相当する。 また、本件発明1でも(A)、(B)成分以外の他の成分を含むことができるから、引用発明8で「(B)ソルビトール、トリメチルグリシン、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルチトール、および1,3-ブチレングリコールから選択される2種以上の保湿剤」を含む点は、相違点とはならない。 そうすると、本件発明1と引用発明8は、 「(A)サリチル酸又はその塩を含む外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。((ア)?(オ)の内容については省略)}。」 の発明の点で一致し、以下の点で両発明は相違する。 <相違点1D> 本件発明1では、「(B)トラネキサム酸又はその塩」を配合し、「(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり」と特定するのに対し、引用発明8では、(B)成分の配合について特定がなく、トラネキサム酸とサリチル酸の配合割合についての特定がない点。 <相違点2D> 本件発明1では、「pH4.5以上6.5以下である」と特定するのに対し、引用発明8では、pH値について特定がない点。 b 判断 (a) 相違点について 相違点1Dについて検討する。 引用文献8には、薬効成分を配合できることが記載されている(摘記事項(ウ8))。 また、引用文献9には、ニキビ治療用等に用いられる皮膚外用剤組成物において、トラネキサム酸またはトラネキサム酸誘導体をプロテアーゼ阻害剤として配合することが記載されており(特許請求の範囲)、その配合量は、組成物全量中0.0001?10%と記載されているものの(引用文献9の段落【0040】)、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 一方、本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものである。 そうすると、引用発明8に、当該引用文献9の記載を加味しても、本件発明の効果である、サリチル酸とトラネキサム酸の併用により奏される防腐又は殺菌力についての格別顕著な効果を否定することはできない。 また、相違点2Dについて検討する。 引用発明8では、pH値の特定はないが、サリチル酸により皮膚外用剤は抗菌性が付与されるものであるところ、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載され、第34表には、pHの変化(pH3.0、4.5、5.5、6.0、6.5)とサリチル酸の抗菌力が示され、酸性側で抗菌力が強いことが記載されている(p.189 「a)pH」の項、p.188の第34表)が記載されているように、サリチル酸の抗菌性は酸性で付与されるものであるから、引用発明8において抗菌剤であるサリチル酸が抗菌性を付与するので、引用発明8の皮膚外用剤は酸性である蓋然性が高いものである。 しかし、引用文献4には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 一方、本件発明1は、pH4.5以上6.5以下の特定のpH値をとり、かつ、トラネキサム酸(塩)の含有量がサリチル酸(塩)の1重量部に対して1重量部以上とすることにより、防腐又は殺菌力に優れた組成物となるものである。 そうすると、引用発明8において、引用文献4の記載された事項を加味したとしても、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするために、pH値を特定範囲とすることに加えて、サリチル酸にトラネキサム酸を特定の配合割合とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (b) 効果について 本件発明1の効果について検討するに、本件特許明細書の実施例の結果に加え、特許権者から令和2年4月30日付け意見書に記載された実験例A?Dの結果を参酌すれば、pH値を特定の範囲とし、かつ、トラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることにより、防腐又殺菌力に優れ、さらに良好な使用感を有する組成物を提供できるものであり、格別顕著な効果を奏するものと認められる。 一方、引用文献4には、サリチル酸等は酸性側ではpHが低いほど抗菌力が強く、アルカリ性側ではほとんど無効であることが記載されているものの、当該文献には、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物を提供するためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。また、引用文献9についても、トラネキサム酸の防腐又は殺菌力についての記載はなく、防腐又は殺菌力に優れた組成物とするためにトラネキサム酸とサリチル酸を特定の配合割合とすることについての記載もない。 そうすると、引用発明8に、引用文献4、9に記載された事項を加味しても、本件発明の効果である、サリチル酸とトラネキサム酸の併用により奏される防腐又は殺菌力についての格別顕著な効果を否定することはできない。 よって、本件発明1は、引用発明8並びに引用文献4、8及び9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (イ) 本件発明2?7について 本件発明2?7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに限定したものであるところ、本件発明1が引用発明5から当業者が容易になし得たものではないと判断されることは上記(ア)bで述べたとおりであるから、同様に判断されるものである。 よって、本件発明2?7は、引用発明6並びに引用文献4及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明2?7に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消すべきものではない。 (4) 小括 本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものはないから、同法第113条第2号に該当せず、令和2年3月2日付け取消理由において通知された理由により、取り消すべきものではない。 2 令和1年8月28日付け取消理由に対する当審の判断 (1) 引用文献に記載された事項 ア 引用文献1に記載された事項 上記1(1)アに記載したとおりの事項が記載されている。 イ 引用文献2に記載された事項 (ア2) 「【請求項1】 次の(a)?(c)を含むことを特徴とする油中水型乳化化粧料。 (a)トラネキサム酸またはその塩 1.0?5.0質量% (b)シリカ被覆酸化亜鉛 3.0?30.0質量% (c)水 10.0?40.0質量% 【請求項2】 前記シリカ被覆酸化亜鉛が、疎水化処理シリカ被覆酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。 【請求項3】 水の配合量がトラネキサム酸またはその塩に対して10?15倍(質量比)であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。 【請求項4】 トラネキサム酸またはその塩と酸化亜鉛とを含む油中水型乳化化粧料におけるトラネキサム酸の結晶析出防止方法であって、酸化亜鉛としてシリカ被覆酸化亜鉛を用いることを特徴とするトラネキサム酸の結晶析出防止方法。」 (イ2) 「【0004】 本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、トラネキサム酸と酸化亜鉛とを高濃度で共存させても結晶析出のない油中水型乳化化粧料を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者等は、このような現状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、酸化亜鉛表面を特定の材料で被覆することによりトラネキサム酸の結晶析出が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0006】 本発明は、次の(a)?(c)を含むことを特徴とする油中水型乳化化粧料である。 (a)トラネキサム酸またはその塩 1.0?5.0質量% (b)シリカ被覆酸化亜鉛 3.0?30.0質量% (c)水 10.0?40.0質量% 【0007】 また本発明は、トラネキサム酸またはその塩と酸化亜鉛とを含む油中水型乳化化粧料に おけるトラネキサム酸の結晶析出防止方法であって、 酸化亜鉛としてシリカ被覆酸化亜鉛を用いることを特徴とするトラネキサム酸の結晶析出防止方法である。 【発明の効果】 【0008】 本発明の油中水型乳化化粧料は、トラネキサム酸またはその塩が酸化亜鉛と共に安定的に共存していてトラネキサム酸の結晶析出がなく、トラネキサム酸による美白効果と酸化亜鉛による日焼け止め効果とを併せ有するもので、日焼け止め化粧料として最適なものである。」 (ウ2) 「【0025】 本発明の油中水型乳化化粧料には、上記必須成分の他に通常化粧料や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、・・・安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、ヘキサクロロフェン等の抗菌防腐剤、・・・香料等を配合することができる。」 (エ2) 「【0045】 実施例1(サンスクリーン) ジメチルポリシロキサン 5 質量% デカメチルシクロペンタシロキサン 25 トリメチルシロキシケイ酸 5 ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2 ジプロピレングリコール 5 ジメチコーン処理シリカ被覆酸化亜鉛 12 トラネキサム酸 3 グリチルリチン酸ジカリウム 0.02 サリチル酸 0.5 グルタチオン 1 チオタウリン 0.05 クララエキス 1 パラベン 適量 フェノキシエタノール 適量 エデト酸三ナトリウム 適量 パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5 イソステアリン酸ソルビタン 1 球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5 ブチルエチルプロパンジオール 0.5 精製水 残余 香料 適量」 ウ 引用明細書3に記載された事項 (ア3) 「【請求項1】 (A)HLB5?9の非イオン性界面活性剤と、 (B)ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体アルキルエーテルと、 (C)ジメチルポリシロキサンと、 (D)エタノールと、 (E)0.1質量%未満のアニオン性界面活性剤と、 (F)トラネキサム酸と、を含有し、乳化粒子径が20?600nmであること を特徴とする水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物。 【請求項2】 前記(C)ジメチルポリシロキサンを含む液状油分の含有量が0.1?3質量%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記(D)エタノールの配合量が1?30質量%であり、水を40?95質量%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 肌荒れ改善又は美白を目的とする化粧水又はエッセンスであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。」 (イ3) 「【0001】 本発明は、水中油型の液状皮膚外用剤組成物に関する。より詳しくは、トラネキサム酸 またはその誘導体を配合しながらも、べたつきがなく、みずみずしくなじみの良い使用感 の水中油型の微細乳化皮膚外用剤組成物に関する。」 (ウ3) 「【0032】 本発明にかかる水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物は、例えば、皮膚化粧料、頭髪洗浄料、皮膚洗浄料、整髪料等に用いることができる。また、本発明にかかる水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物には、上記必須成分の他に、通常、化粧品、医薬品等に用いられる任 意成分を、安定性に影響を及ぼさない範囲の配合量で配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。 【0033】 ・・・安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェンなどの抗菌防腐剤。・・・アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの有機酸。」 (エ3) 「【0049】 (処方例3) アクネ化粧水: 配合成分 処方量(質量%) 精製水 残余 エタノール 7 グリセリン 5 ジプロピレングリコール 1 エタノール 7 ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)-ジメチルエーテル 1 トラネキサム酸 1 サリチル酸 0.2 ジメチルポリシロキサン 0.2 ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.15 イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 0.05 クエン酸 適量 クエン酸ナトリウム 適量 フェノキシエタノール 適量 エデト酸二ナトリウム 適量 香料 適量」 (2) 引用発明 ア 引用文献1に記載された発明 摘記事項(ア1)?(イ1)、特に(イ1)の[38]の表の実施例2の記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「精製水 残量 グリセリン 3.0重量% ブチレングリコール 5.0重量% ベータグルカン 5.0重量% ヒアルロン酸抽出物 3.0重量% カルボマー 0.1重量% トラネキサム酸 1.0重量% ニコチン酸アミド 1.0重量% グリコール酸 5.0重量% カプリリック/カプリックトリグリセライド 8.0重量% ハイドロゼネイティドポリデセン 5.0重量% セテアリールグルコシド 1.5重量% ソルビタンステアレート 0.4重量% セテアリールアルコール 1.0重量% サリチル酸 0.4重量% 防腐剤 適量 香料 適量 トリエタノールアミン 0.1重量% を配合した化粧料」(以下、「引用発明1-1」という。) 同様に、摘記事項(ア1)?(イ1)、特に(イ1)の[38]の表の比較例3の記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「精製水 残量 グリセリン 3.0重量% ブチレングリコール 5.0重量% ベータグルカン 5.0重量% ヒアルロン酸抽出物 3.0重量% カルボマー 0.1重量% トラネキサム酸 2.0重量% グリコール酸 5.0重量% カプリリック/カプリックトリグリセライド 8.0重量% ハイドロゼネイティドポリデセン 5.0重量% セテアリールグルコシド 1.5重量% ソルビタンステアレート 0.4重量% セテアリールアルコール 1.0重量% サリチル酸 0.4重量% 防腐剤 適量 香料 適量 トリエタノールアミン 0.1重量% を配合した化粧料」(以下、「引用発明1-2」という。) イ 引用文献2に記載された発明 摘記事項(ア2)?(エ2)、特に(エ2)からみて、引用文献2には、以下の発明が記載されている。 「ジメチルポリシロキサン 5 質量% デカメチルシクロペンタシロキサン 25 トリメチルシロキシケイ酸 5 ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2 ジプロピレングリコール 5 ジメチコーン処理シリカ被覆酸化亜鉛 12 トラネキサム酸 3 グリチルリチン酸ジカリウム 0.02 サリチル酸 0.5 グルタチオン 1 チオタウリン 0.05 クララエキス 1 パラベン 適量 フェノキシエタノール 適量 エデト酸三ナトリウム 適量 パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5 イソステアリン酸ソルビタン 1 球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5 ブチルエチルプロパンジオール 0.5 精製水 残余 香料 適量 を配合したサンスクリーン」(以下、「引用発明2」という。) ウ 引用明細書3に記載された発明 摘記事項(ア3)?(エ3)、特に(エ3)からみて、引用明細書3には、以下の発明が記載されている。 「以下の成分からなるアクネ化粧水: 配合成分 処方量(質量%) 精製水 残余 エタノール 7 グリセリン 5 ジプロピレングリコール 1 エタノール 7 ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)-ジメチルエーテル 1 トラネキサム酸 1 サリチル酸 0.2 ジメチルポリシロキサン 0.2 ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.15 イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 0.05 クエン酸 適量 クエン酸ナトリウム 適量 フェノキシエタノール 適量 エデト酸二ナトリウム 適量 香料 適量」(以下、「引用発明3」という。) (3) 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について(引用発明1-1、引用発明1-2に対して) 本件発明1は、本件訂正請求により、引用発明1-1、1-2に対応する発明が(イ)、(ウ)として除かれている。 よって、本件発明1は、引用発明1-1又は1-2、つまり引用文献1に記載された発明ではなく、これらの発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2?7についても同様である。 (4) 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について(引用発明2に対して) 本件発明1は、本件訂正請求により、引用発明2に対応する発明が(エ)として除かれている。 よって、本件発明1は、引用発明2、つまり引用文献2に記載された発明ではなく、これらの発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明5?7についても同様である。 (5) 理由3(拡大先願)について 本件発明1は、本件訂正請求により、引用発明3に対応する発明が(オ)として除かれている。 よって、本件発明1は、引用発明3、つまり引用明細書3に記載された発明と同一ではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2、5?7についても同様である。 (6) 小括 本件発明1?7は、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項、同法第29条の2の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、令和1年8月28日付け取消理由において通知された理由により、取り消すべきものではない。 3 特許異議申立理由について 申立人が主張した特許異議申立理由は、令和1年8月28日付け取消理由として通知されており、その結果は上記2で述べたとおりであるから、特許異議申立理由により、本件発明1?7に係る特許が取り消されるものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件の請求項1?7に係る特許は、令和1年8月28日付け及び令和2年6月29日付けの取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に、本件の請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。 よって、結論の通り決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)サリチル酸又はその塩、及び(B)トラネキサム酸又はその塩を含み、(B)トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して1重量部以上であり、pH4.5以上6.5以下である外用組成物{ただし、下記(ア)?(オ)を除く。 (ア)一般式(I)で表されるシステイン誘導体またはその塩: 【化1】 [式中、 X及びYは、それぞれ独立して、OR^(1)、NHR^(2)(式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立して、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示す。)であり; Zは、水素原子またはC_(1-22)アルキル基を示し; Wは、C_(1-22)アルキル基、C_(1-22)アルコキシ基またはC_(1-22)アルキルアミノ基を示す。] を含有する化粧料 (イ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸1.0重量%、ニコチン酸アミド1.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0.4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (ウ)グリセリン3.0重量%、ブチレングリコール5.0重量%、ベータグルカン5.0重量%、ヒアルロン酸抽出物3.0重量%、カルボマー0.1重量%、トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、カプリリック/カプリックトリグリセライド8.0重量%、ハイドロゼネイティドポリデセン5.0重量%、セテアリールグルコシド1.5重量%、ソルビタンステアレート0.4重量%、セテアリールアルコール1.0重量%、サリチル酸0.4重量%、防腐剤、香料、トリエタノールアミン0.1重量%、及び精製水を含有する化粧料 (エ)次の(a)?(c)を含む油中水型乳化化粧料 (a)トラネキサム酸またはその塩 1.0?5.0質量% (b)シリカ被覆酸化亜鉛 3.0?30.0質量% (c)水 10.0?40.0質量% (オ)エタノール7質量%、グリセリン5質量%、ジプロピレングリコール1質量%、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)-ジメチルエーテル1質量%、トラネキサム酸1質量%、サリチル酸0.2質量%、ジメチルポリシロキサン0.2質量%、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体0.15質量%、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル0.05質量%、クエン酸、クエン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エデト酸二ナトリウム、香料及び精製水を含有する化粧水}。 【請求項2】 さらに有機酸を含む請求項1に記載の外用組成物。 【請求項3】 有機酸が、グルコン酸、乳酸、及びグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の外用組成物。 【請求項4】 有機酸の含有量が0.01?20重量%である請求項2又は3に記載の外用組成物。 【請求項5】 トラネキサム酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%であり、pH4.6以上6.5以下であり、下記(カ)?(ク)を除く請求項1?4の何れかに記載の組成物。 (カ)ニコチン酸アミド及びグリコール酸を含有する組成物 (キ)トラネキサム酸2.0重量%、グリコール酸5.0重量%、及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (ク)(A)HLB5?9の非イオン性界面活性剤と、 (B)ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体アルキルエーテルと、 (C)ジメチルポリシロキサンと、 (D)エタノールと、 (E)0.1質量%未満のアニオン性界面活性剤と、 (F)トラネキサム酸1質量%と、サリチル酸0.2質量%を含有し、乳化粒子径が20?600nmである水中油型乳化液状皮膚外用剤組成物 【請求項6】 トラネキサム酸又はその塩の含有量が、サリチル酸又はその塩の1重量部に対して、5?50重量部であり、pH5.0以上6.5以下であり、下記(ケ)?(サ)を除く請求項1?5の何れかに記載の組成物。 (ケ)ニコチン酸アミド及びα-ヒドロキシ酸を含有する組成物 (コ)トラネキサム酸2.0重量%及びサリチル酸0.4重量%を含有する組成物 (サ)トラネキサム酸1質量%及びサリチル酸0.2質量%を含有する組成物 【請求項7】 サリチル酸又はその塩の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?1重量%であり、下記(シ)を除く請求項1?6の何れかに記載の組成物。 (シ)トラネキサム酸1質量%を含有する組成物 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-09-07 |
出願番号 | 特願2013-221780(P2013-221780) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) P 1 651・ 113- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松元 麻紀子 |
特許庁審判長 |
佐々木 秀次 |
特許庁審判官 |
齋藤 恵 岡崎 美穂 |
登録日 | 2018-11-09 |
登録番号 | 特許第6430109号(P6430109) |
権利者 | ロート製薬株式会社 |
発明の名称 | 外用組成物 |
代理人 | 岩谷 龍 |
代理人 | 勝又 政徳 |
代理人 | 勝又 政徳 |
代理人 | 岩谷 龍 |